JP2014192953A - 送電線保護装置、及び送電線保護システム - Google Patents

送電線保護装置、及び送電線保護システム Download PDF

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伸浩 佐藤
Sandayu Haga
三太夫 垪和
Masaaki Yasuhara
正明 安原
Hideki Ishitobi
英樹 石飛
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Abstract

【課題】送電線保護装置の動作を検出した場合に、試充電用整定へ自動変更することにより、送電線全体をカバーし、遮断時間を1段整定時間(瞬時)に同一化させる。
【解決手段】後備保護部13Aは、送電線1から検出された電圧及び電流に基づいて送電線1の方向距離に対応した短絡を検出処理するとともに、送電線1の短絡を検出した場合に所定の待ち時間後にトリップ指令を送電線1に設けられた遮断器CBに出力する。トリップ指令を出力した場合に、方向距離が最大になるように方向距離継電処理部44Sを制御し、短絡検出時の所定の待ち時間が零となるように方向距離継電処理部タイマ部44Tを制御する。この制御の後、所定時間60秒が経過した場合に、送電線への試充電を可能にする。
【選択図】図8

Description

本発明は、短絡事故等から送電線を保護する送電線保護装置、及び送電線保護システムに関する。
従来、送電線事故が発生して送電線が停電した1分程度後、変電所より自動復旧装置(ARE)にて送電線への試充電を実施する。
特許文献1には、対向端側での保護装置による遮断器の動作を検出した場合に電流変化を検出すると、後備保護の時限協調をオフにして、自端側に設けられている遮断器を動作させるという技術が開示されている。
特許文献2には、距離継電器の背後のインピーダンスを整定する手段と、保護範囲のインピーダンスを整定する手段とから背後インピーダンスと保護範囲のインピーダンスの比を算出し、このインピーダンスの比が予め設定した所定の範囲に従って動作遅延を行なうようにしたため、事故発生前後の電圧差が大きい場合でも事故相における距離継電器の過渡オーバーリーチによる誤動作の防止が図れるという技術が開示されている。
特開2011−254626公報 特開平09−93793号公報
特許文献1にあっては、対向端側での保護装置による遮断器の動作を検出した場合に、電流変化を検出すると後備保護の時限協調をオフにして、自端側に設けられている遮断器を動作させる点、保護区間の0[%]〜約85[%]の区間で発生した短絡事故等を検出する点が開示されている。
特許文献2には、オーバーリーチによる誤動作を防止する点が開示されている。
しかしながら、図10に示すように、事故点が相手至近端85%前後(線路70%〜100%地点)事故の場合、0.4s後の遮断となり電力系統へのショックを与えてしまい、脱調して同期運転ができず解列が発生する虞があり、または設備損壊を招く恐れがある。
特に、事故時の電流と、相手端子が切断されたことによる電流の変化により自区間故障を判定しているため、試充電時に正常に動作するか不明であった。また、隣回線が停電している場合(1回線の場合)は使用できないといった問題があった。
そこで、送電線保護装置の動作を検出した場合に、試充電用整定(1、2、3段リーチ最大(85%、150%、300%)、時限0s)へ自動変更することにより、送電線全体をカバーし、遮断時間を1段整定時間(瞬時)に同一化させることができることが切望されている。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的としては、送電線保護装置の動作を検出した場合に、試充電用整定へ自動変更することにより、送電線全体をカバーし、遮断時間を1段整定時間(瞬時)に同一化させることができる送電線保護装置、及び送電線保護システムを提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、送電線から検出された電圧及び電流に基づいて前記送電線の方向距離に対応した短絡を検出処理するとともに、前記送電線の短絡を検出した場合に所定の待ち時間後にトリップ指令を前記送電線に設けられた遮断器に出力する方向距離継電処理手段と、前記方向距離継電処理手段がトリップ指令を出力した場合に、前記方向距離が最大になるように前記方向距離継電処理手段を制御し、前記短絡検出時の前記所定の待ち時間が零となるように前記方向距離継電処理手段を制御する制御部手段と、を備え、前記制御手段による制御の後、所定時間が経過した場合に、前記送電線への試充電を可能にすることを特徴とする。
本発明によれば、トリップ指令を出力した場合に、方向距離が最大になるように制御し、短絡検出時の所定の待ち時間が零となるように制御しておき、この制御の後、所定時間が経過した場合に、送電線への試充電を可能にすることで、送電線全体をカバーし、遮断時間を1段整定時間(瞬時)に同一化させることができる。
これにより、自区間線路の試充電に対して、全ての事故点で瞬時遮断が期待できるため、系統ショックを抑えることができ、設備の損壊を防げるため系統の信頼度を向上することができる。
本発明の実施形態が適用されている送電系統の一例を示す構成図である。 保護継電器の構成を示す構成図である。 短絡事故電流を説明する説明図であり、(a)は短絡事故直後の短絡事故電流を示す図、(b)は対向端側の遮断器が動作したときの短絡事故電流を示す図、(c)は自端側および対向端側の遮断器が動作したときの短絡事故電流を示す図である。 別の短絡事故電流を説明する説明図であり、(a)は短絡事故直後の短絡事故電流を示す図、(b)は対向端側の遮断器が動作したときの短絡事故電流を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る後備保護部と自動復旧装置との関係を示す図である。 後備保護部の詳細な構成を示す構成図である。 (a)〜(c)は本発明の実施形態に係る送電線保護装置の動作の様子を示す図である。 本発明の実施形態に係る送電線保護装置の動作について説明するための手順フロー図である。 本発明の第1実施形態に係る送電線保護装置の動作について説明するための手順フロー図である。 (a)(b)は従来の保護継電器と遮断器の動作の様子を示す図である。
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に本実施形態が適用されている送電系統の一例を示す。この送電系統では、電気所が設置されている自端および対向端の間に、2回線の送電線1、2が敷設されている。また、自端側には、送電電圧を測定用に降圧する計器用変圧器(VT)11が備えられている。さらに、自端側の互いに隣接する送電線1、2には、送電電流を測定用に小さくする変流器12A、12Bと、事故等が発生したとき、この事故等を検出する保護継電器13A、13Bと、保護継電器13A、13Bの指示により、事故の影響が拡大しないように送電線1、2を遮断する遮断器14A、14Bとが備えられている。同様に、対向端には、計器用変圧器(VT)21と、変流器(CT)22A、22Bと、保護継電器23A、23Bと、遮断器24A、24Bとが備えられている。
本実施形態では、自端側において送電線1を保護する送電線保護装置が計器用変圧器11と変流器12Aと保護継電器13Aと遮断器14Aとで構成され、送電線2を保護する送電線保護装置が計器用変圧器11と変流器12Bと保護継電器13Bと遮断器14Bとで構成されている。
同様に、対向端において、送電線1を保護する送電線保護装置が計器用変圧器21と変流器22Aと保護継電器23Aと遮断器24Aとで構成され、送電線2を保護する送電線保護装置が計器用変圧器21と変流器22Bと保護継電器23Bと遮断器24Bとで構成されている。
自端側の遮断器14A、14Bは、保護継電器13A、13Bからの遮断指示であるハイレベルの遮断信号により、それぞれ切(開路)になる。これにより、遮断器14A、14Bは、自端側で送電線1、2をそれぞれ遮断する。同様に、対向端の遮断器24A、24Bは保護継電器23A、23Bからのハイレベルの遮断信号により、対向端で送電線1、2をそれぞれ遮断する。
本実施形態では、各送電線保護装置はすべて同じであるので、以下では自端側で送電線1を保護する送電線保護装置について説明し、残りの送電線保護装置の説明を省略する。
自端側に設置されている送電線保護装置の保護継電器13Aは、図2に示すように、入力部13Aと、主保護部13Aと、出力部13Aと、後備保護部13Aとを備えている。
入力部13A1は、計器用変圧器11からの計測電圧と変流器12Aからの計測電流とを受け取り、これらのレベルを調整して主保護部13Aと後備保護部13Aとに出力する。主保護部13Aは、送電線1を保護区間とし、自端を基にした、保護区間の0[%]〜約85[%]の区間で発生した短絡事故等を検出する。そして、主保護部13Aは、自端側で発生した事故を検出すると、遮断信号を出力部13Aに出力する。出力部13Aは、主保護部13Aからの遮断信号や、後備保護部13Aからの遮断信号を受け取ると、信号のレベル等を調整した遮断信号を遮断器14Aに出力する。
後備保護部13Aは、保護区間の約85[%]〜300[%]までの区間で、後備保護動作を行う。後備保護部13Aは、対向端側で短絡事故等が発生した場合に、対向端側で遮断器が動作したときに、自端側で検出した電流変化を検出し、検出結果を基にして遮断信号を出力する。このために、保護継電器13Aは、事故発生前から電流を監視しており、事故発生と共に短時間間隔毎の電流IS(1)、IS(2)をその前後で比較して、電流変化を検出している。
ここで、こうした電流変化が発生する様子について説明する。保護継電器13Aは、対向端側の事故点で短絡事故等が発生した場合に、対向端側で遮断器が動作したときに、先に述べたように自端側での電流変化を検出する。送電線1および送電線2を並用状態とした送電形態において、送電線1または送電線2に短絡事故が発生すると、
各回線の単位長さ当たりのインピーダンス×事故点距離
を変数とする関数によって、図3(a)に示すように、自端側の発電機から供給される例えば事故電流ISA(1)、ISB(1)は、それぞれの回線に分流する。なお、図3(a)では、自端側から事故点に向けて送電線1を流れる事故電流を符号Aで表し、対向端側から事故点に向けて送電線1を流れる事故電流を符号Bで表している。
事故点が対向端から全送電線距離の15[%]以内の地点つまり自端から全送電線距離の85%以上の地点である場合、自端側ではこの地点が時限協調時間T1をもった2段動作範囲になる。なお、図3(a)では、値T0が誤動作を防止するための誤動作防止時間である。
この状態のとき、送電線の単位長さ当たりのインピーダンスZ、送電線全体の長さLから、送電線全体の長さ当たりのインピーダンスは、ZLになる。
また、全体の送電長に対する、自端から事故点までの割合x、係数Kから、全電流と事故電流とは、
ΣIS(1)=K/(ZB+x・(2−x)・ZL/2・ZL)
ISA(1)=ΣIS(1)・(2−x)/2
となる。なお、ZBは自端から発電機までのインピーダンスである。
対向端側の保護継電器23Aは、誤動作防止時間T0で瞬時保護動作をする1段動作範囲内であるので、図3(b)に示すように、この短絡事故を検出し、遮断器24Aに遮断信号出力する。これにより、対向端側の遮断器24Aは遮断つまり切(開路)になる。この結果、事故回線でない回線(送電線2)には事故電流ISB(1)が流れなくなる。このときの事故回線(送電線1)の事故電流ISA(2)は、次ぎのようになる。
ΣIS(2)=ISA(2)=K/(ZB+x・ZL)
従って、
ISA(2)/ISA(1)=(2・ZB+x・(2−x)・ZL)/((ZB+x・ZL)・(2−x))
となる。例えば、
ZB:ZL=1:3
の割合で想定する。このとき、x=85[%]の場合、
ISA(2)/ISA(1)=1.2082
となる。また、x=100[%]の場合、
ISA(2)/ISA(1)=1.2500
となる。つまり、事故点が85[%]〜100[%]の範囲である場合、電流変化が120[%]〜125[%]となり、電流値が増えることになる。このとき、位相は変化しない。
こうして、短絡事故等により電流変化が発生する。なお、通常であれば、図3(c)に示すように、時限協調時間T1が経過すると、自端側では保護継電器13Aが短絡事故を検出して、後備保護部13Aが遮断器14Aに遮断信号を送る。
自端と対向端とが逆になった場合にも同様にして、電流変化が発生する。具体的には、図4(a)に示すように、短絡の事故点が対向端から全送電線距離の15[%]以内の地点つまり自端から全送電線距離の85%以上の地点である場合、全電流と事故電流とは、
ΣIS(1)=K/(ZB+(1−x)・(1+x)・ZL/2・ZL)
ISB(1)=ΣIS(1)・(1−x)/2
となる。
対向端側の保護継電器13Aは、1段動作範囲内であるので、この短絡事故を検出し、遮断器14Aに遮断信号を出力する。これにより、図4(b)に示すように、対向端側の遮断器14Aは遮断つまり切(開路)になる。この結果、対向端側の回線(送電線1)には事故電流ISA(1)が流れなくなり、事故回線の事故電流ISA(2)は次ぎのようになる。
ΣIS(2)=ISB(2)=K/(ZB+(1+x)・ZL)
従って、
ISA(2)/ISA(1)=((1−x)・(1+x)・ZL+2・ZB)/
((ZB+(1+x)・ZL)・(1−x))
となる。例えば、
ZB:ZL=1:3
の割合で想定する。このとき、x=85[%]の場合、
ISB(2)/ISB(1)=2.8830
となる。また、x=99[%]の場合、
ISB(2)/ISB(1)=29.5509
となる。
つまり、事故点が85[%]〜100[%]の範囲である場合、電流変化が280[%]〜∞[%]となり、電流値が増えることになる。このとき、位相は変化しない。
このように、自端と対向端とが逆になった場合でも、同様にして電流変化が発生する。
保護継電器13Aの後備保護部13Aは、こうした初期の事故電流IS(1)と、対向端遮断器が1段保護動作により遮断した後の事故電流IS(2)との電流変化を検出し、検出結果に基づいて1段動作範囲と同様に、つまり瞬時(零秒)に遮断信号を遮断器14Aに出力する。
また、後備保護部13Aは、自回線の遮断器14Aが切(開路)である場合に、試充電するときに、保護区間の85%以上の地点に短絡事故があっても、1段動作範囲と同様に、つまり瞬時に遮断信号を遮断器14Aに出力する。
図5は、本発明の第1実施形態に係る後備保護部13Aと自動復旧装置31との関係を示す図である。
後部保護部13Aは、計器用変圧器11、変流器12Aから入力部13A(図示しない)を介して入力された電流値、電圧値をA/D変換器13Aaにおいてサンプリングクロックでサンプリングして検出データに変換しており、CPU13AbはRAM(図示しない)上に展開されたプログラムに従って保護処理を行っている。
送電線1の箇所Pにおいて、例えば地絡事故が発生した場合、後部保護部13AからCB遮断信号を送電線1に設けられた遮断器CBに出力すると共に、自動復旧装置31に向けてリレー動作信号を出力する。
自動復旧装置31は、後部保護部13Aからリレー動作信号を受信すると、一定時限(例えば、60秒)後に遮断器CBへCB投入信号を出力する。次いで、自動復旧装置31は、送電線に試験用変圧器を介して試充電を行う。
図6は、後備保護部13Aの詳細な構成を示す構成図である。
後部保護部13Aには、自動復旧装置31から出力されるCB投入信号、主保護部13Aから出力部13Aを介して出力されるCB遮断信号、OR4から出力されるトリップ指令[S8]、遠方に設けられた保護継電器(図示しない)から出力される43試充電使用信号および43試充電不使用信号が入力されている。
後部保護部13Aには、自動復旧装置31から出力されるCB投入信号が入力された場合に所定の時間(例えば、1〜2秒)後にCB投入パルスを出力するCB入確認タイマCBTが設けられ、CB投入パルスは方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。
主保護部13Aから出力部13Aを介して出力されるCB遮断信号、OR4から出力されるトリップ指令[S8]が同時にAND1に入力されている場合に、AND1はCB遮断パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。
遠方に設けられた保護継電器(図示しない)から出力される43試充電使用信号がBUFF1に入力され、BUFF1のオープンコレクタ出力がAND1の出力端子に結合され、方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。同様に、遠方に設けられた保護継電器(図示しない)から出力される43試充電不使用信号がBUFF2に入力され、BUFF2のオープンコレクタ出力がCB入確認タイマCBTの出力端子に結合され、方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。
方向距離継電処理部44Sは、常時整定処理モジュール44Sa、試充電整定処理モジュール44Sbを備えている。方向距離継電処理タイマ部44Tは、常時処理モジュール44Ta、試充電処理モジュール44Tbを備えている。
方向距離継電処理部44Sは、超高圧の送電線に生じる短絡から送電線1を保護する機能を有しており、計器用変圧器(VT)と変流器(CT)とから検出された信号に基づいて、第1段が送電線の85%、第2段が送電線の150%、第3段が300%の方向距離に対応して短絡を検出し、夫々に検出信号[S1]、[S2]、[S3]を出力する。方向距離継電処理部44Sが検出信号[S1]、[S2]、[S3]を出力すると、シーケンス部13Acはトリップ指令[S8]を出力部13Aに出力する。
方向距離継電処理部44Sは、送電線に配置されている遮断器CBの近傍領域に夫々に配置された1対の変流器(CT)12と計器用変圧器(VT)11とにより検出された電流値Inと電圧値VnによりインピーダンスZn(Zn=Vn/In)を算出しておき、このインピーダンスZnが送電線の距離に比例することを利用して事故点判定を行う。
常時整定処理モジュール44Saは、内部に、インピーダンスを実数軸と虚数軸とで表すとき、実数軸に対して平行な直線から、実数軸までの範囲を動作特性とする第1処理モジュール(図示しない)を備える。
つまり、第1処理モジュールは、第1段において、保護区間の約0[%]〜85[%]までの区間で送電線に事故が発生すると、インピーダンスの変化を基に事故を検出して、ハイレベルの検出信号[S1]をAND8に出力する。
また、第1処理モジュールは、第2段において、保護区間の約85[%]〜150[%]までの区間で送電線に事故が発生すると、インピーダンスの変化を基に事故を検出して、ハイレベルの検出信号[S2]をAND9に出力する。さらに、第1処理モジュールは、第3段において、保護区間の約150[%]〜300[%]までの区間で送電線に事故が発生すると、インピーダンスの変化を基に事故を検出して、ハイレベルの検出信号[S3]をAND2〜AND7に出力する。
一方、常時処理モジュール44Taは、実数軸と虚数軸との交点(原点)を通る円の範囲を動作特性とする第2処理モジュール(図示しない)とを備える。
つまり、第2処理モジュールは、送電線に事故が発生すると、インピーダンスの変化を基に事故を検出して、ハイレベルの検出信号[S4]をAND2〜AND7に出力する。
CB遮断信号、OR4から出力されるトリップ指令[S8]が同時にAND1に入力されている場合、AND1はCB遮断パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力され、このCB遮断パルスの入力に応じて方向距離継電処理部44Sの試充電整定処理モジュール44Sb側へスイッチ44Sc、方向距離継電処理タイマ部44Tの試充電処理モジュール44Tb側へスイッチ44Tcが切り替る。
一方、CB投入信号がCB入確認タイマCBTに入力され、CB入確認タイマCBTからCB投入パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力された場合、方向距離継電処理部44Sに設けられたスイッチ44Scは常時整定処理モジュール側に、方向距離継電処理タイマ部44Tに設けられたスイッチ44Tcは常時処理モジュール44Ta側に切り替る。
なお、送電線1に発生した事故に対する除去作業を確実に行うためには、試充電整定処理を保持させるため、上述したCB入確認タイマCBTを具備しており、任意整定(1秒程度)に変更可能とする。
方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tでは、1ショットのパルス信号を受け付けた場合、それまで保持していたスイッチ状態を保持する。例えば、トリップ指令とCB切信号とがAND1の入力端子に夫々入力されるように接続されており、トリップ指令とCB切信号とが同時にHighレベルのときにAND1から1ショットのパルス信号が試充電整定処理モジュール44Sb側に入力されると、試充電整定処理モジュール44Sbの出力側へ切替り、試充電整定処理を保持する。一方、CB投入信号を受信し、CB入確認タイマCBTからCB投入パルスが常時整定処理モジュール44Sa側に入力されると、常時整定処理モジュール44Saの出力側へ切り替り常時整定処理を保持する。方向距離継電処理タイマ部44Tも同様の動作を行う。
また、方向距離継電処理部44Sの試充電整定処理モジュールには、1段、2段、3段ともにリーチ最大整定処理を行うソフトウエアモジュールが格納されている。
次に、図6に示す後備保護部13Aに設けられたシーケンス部13Acの構成について説明する。
上述したように、方向距離継電処理部44Sは、超高圧の送電線に短絡が生じた場合、計器用変圧器(VT)および変流器(CT)を介して検出された電圧および電流に基づいて、常時整定処理モジュール44Saからスイッチ44Scの接点を介して、第1段が送電線の85%、第2段が送電線の150%、第3段が300%の方向距離に対応して短絡を検出し、夫々に検出信号[S1]、[S2]、[S3]を出力する。
検出信号[S1]は、AND8の一端に入力され、検出信号[S2]はAND9の一端に入力され、検出信号[S3]は、AND2〜7の夫々の一端に入力されている。
方向距離継電処理タイマ部44Tの出力信号[S4]は、AND2〜7の夫々の他端に入力されている。
AND2の出力端はタイマ44ST11(0秒)を介してOR1の一端に接続され、AND3の出力端はOR1の他端に接続されている。AND4の出力端はタイマ44ST21(0.4秒)を介してOR2の一端に接続され、AND5の出力端はOR2の他端に接続されている。AND6の出力端はタイマ44ST31(1.5秒)を介してOR3の一端に接続され、AND7の出力端はOR3の他端に接続されている。
さらに、OR1の出力端はAND8の他端に接続され、OR2の出力端はAND9の他端に接続されている。また、AND8の出力端はOR4の一端に接続され、AND9の出力端はOR4の他端に接続され、OR3の出力端はOR4の別の他端に接続されている。OR4の出力端は出力部13Aに接続されているとともに、AND1の一端に接続されている。
なお、図6に示すCB入確認タイマCBT、AND1、BUFF1、BUFF2が処理の移行を制御する制御部(制御手段)の役割を果たしている。
次に、図8に示す手順フローを参照して、本発明の第1実施形態に係る送電線保護装置の動作について説明する。
まず、ステップTJ1では、図7(a)に示す送電線1上の地点Pにおいて、例えば短絡事故が発生したこととする。
送電線1上の地点Pに事故が発生した場合、ステップTJ2では、図7(b)に示すように、方向距離継電処理部44Sは、計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を介して検出された電圧および電流に基づいて、常時整定処理モジュール44Saからスイッチ44Scの接点を介して、第1段が時限0秒で送電線の0%〜85%までの範囲、第2段が時限0.4秒で送電線の85%〜150%までの範囲、第3段が時限1.5秒で150%〜300%までの範囲の方向距離に対応して短絡を検出した場合に、検出信号[S1]、[S2]、[S3]の何れか1つを出力する。
一方、送電線に事故が発生した場合に、常時処理モジュール44Taからスイッチ44Tcの接点を介して、インピーダンスの変化を基に事故を検出して、ハイレベルの検出信号[S4]をAND2〜AND7に出力する。
例えば、常時整定処理モジュール44Saは、第1段が時限0秒で送電線の0%〜85%までの範囲において、短絡を検出した場合に、ハイレベルの検出信号[S1]を出力する。一方、常時処理モジュール44Taは、ハイレベルの検出信号[S4]をAND2〜AND7に出力する。
この結果、AND8からハイレベルの検出信号[S5]をOR4に出力するので、OR4からトリップ指令[S8]が出力部13Aに出力される。
後備保護部13Aは、A(変電所)−B(変電所)間に設けられた遮断器に対してCB遮断信号を出力し、事故点Pに対して送電線1を遮断する。なお、事故遮断については、通常リレー整定値によって動作する。
次いで、ステップTJ3では、自端側の遮断器14AからCB遮断信号が後備保護部13Aに入力される。
CB遮断信号と、OR4から出力されるトリップ指令[S8]が同時にAND1に入力されている場合、AND1はCB遮断パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力され、このCB遮断パルスの入力に応じて方向距離継電処理部44Sの試充電整定処理モジュール44Sb側へスイッチ44Sc、方向距離継電処理タイマ部44Tの試充電処理モジュール44Tb側へスイッチ44Tcが切り替る。
後備保護部13Aは、自動でリーチを変更して1段、2段、3段ともに方向距離が最大になるようにリーチ最大整定処理を行う。後備保護部13Aは、自端側の遮断器14Aに切断信号を出力して遮断し、自動で時限を変更して1段、2段、3段ともに待ち時間が零秒となるように瞬時処理を行う。なお、自端側の遮断器14Aが投入されるまで、(試充電まで)変更した状態を保持する。
なお、リーチとは保護可能な範囲を示す。基本的な整定の考え方では、1段は該当送電線の0〜85%、2段は85%〜150%、3段は150%〜300%の範囲を保護するようにしている。リーチ最大とは1段、2段、3段のそれぞれを整定可能な範囲いっぱい(最大整定)に保護することを意味する。従って、リーチ最大に設定した場合、1段は0〜300%、2段は0〜300%、3段は0〜300%のそれぞれを整定可能な範囲となる。
時限零秒とは、1段、2段、3段のそれぞれに時限を整定して次区間の送電線等と協調をとっており、その時限を0秒(最小整定)として、全ての範囲を瞬時遮断とするように設定する。本実施形態では、図7(c)に示すように、リーチ最大、時限最小とすることで、あらゆる系統条件によるリレー運用でも試充電時は瞬時時限で全ての範囲を保護できるようにする。
例えば、試充電整定処理モジュール44Sbは、第1段が時限0秒で送電線の0%〜300%までの範囲において、短絡を検出した場合に、ハイレベルの検出信号[S1]を出力する。また、第2段が時限0秒で送電線の0%〜300%までの範囲において、短絡を検出した場合に、ハイレベルの検出信号[S2]を出力する。さらに、第3段が時限0秒で送電線の0%〜300%までの範囲において、短絡を検出した場合に、ハイレベルの検出信号[S3]を出力する。一方、試充電処理モジュール44Tbは、ハイレベルの検出信号[S4]をAND2〜AND7に出力する。
この結果、OR4からトリップ指令[S8]が出力部13Aに出力される。
次いで、ステップTJ4では、60秒後、A(変電所)自動復旧装置31、又は変電所の職員により送電線1に対して試充電を行う。この試充電時はリーチ最大、時限最小の試充電整定により実施が可能となる。
ここで、試充電について説明する。例えば、交流電源(図示しない)から計器用変圧器(図示しない)の3次側巻線に対して試充電を行う。計器用変圧器の1次側巻線に発生する数万Vの交流電圧を送電線1に対して印加しておき、2次側巻線に発生する交流電圧を監視し、各相(R、S、T)に発生する交流電圧値のバランスから短絡事故を検知する。短絡事故が発生した事故点Pでは、例えば1つの相の電圧が異常低下(例えば、0V)しているので、電圧低下が生じている相に注目して最も電圧が低下した箇所を事故点とすればよい。
事故点Pでの短絡事故が復旧した場合、ステップTJ5では、遮断器14AにCB投入信号を送信する。遮断器が復帰し、常時リーチ・時限に戻す。なお、確実に事故除去を行うため、タイマにより数秒(1秒程度)の時間を待って、常時整定処理及び常時処理に処理を戻す。
このように、トリップ指令を出力した場合に、方向距離が最大になるように制御し、短絡検出時の所定の待ち時間が零となるように制御しておき、この制御の後、所定時間が経過した場合に、送電線への試充電を可能にすることで、送電線全体をカバーし、遮断時間を1段整定時間(瞬時)に同一化させることができる。
これにより、自区間線路の試充電に対して、全ての事故点で瞬時遮断が期待できるため、系統ショックを抑えることができ、設備の損壊を防げるため系統の信頼度を向上することができる。例えば、発電器の脱調を未然に防ぐことができ、同期運転から解列するのを防止することができる。
次に、図9に示すフロー図を参照して、本発明の第1実施形態に係る送電線保護装置の動作について説明する。なお、図9に示す手順フローは変電所の職員による作業手順を示すものである。
まず、ステップTJ11では、図7(a)に示す送電線1上の地点Pにおいて、例えば短絡事故が発生したこととする。
次いで、ステップTJ12では、後備保護部13Aは、出力部13Aへトリップ指令を出力する。この結果、ステップTJ13では、保護継電器13Aは、A(変電所)−B(変電所)間に設けられた遮断器24Aに対してCB遮断信号を出力し、送電線1を遮断する。
ここで、ステップTJ12でトリップ指令が出力されている期間、かつ、ステップTJ13でCB遮断信号が遮断器に出力されている期間、図6に示すAND1から論理「1」のCB遮断パルスが出力される。
この結果、このCB遮断パルスの入力に応じて、方向距離継電処理部44Sの試充電整定処理モジュール44Sb側へスイッチ44Scが切り替り、方向距離継電処理タイマ部44Tの試充電処理モジュール44Tb側へスイッチ44Tcが切り替る。
また、後部保護部13Aは、上述したように、CB遮断信号を送電線1に設けられた遮断器CBに出力すると共に、後備保護部13Aが動作したことを示すリレー動作信号を自動復旧装置31に向けて出力する。
次いで、ステップTJ14では、後部保護部13Aからリレー動作信号を受信すると、自動復旧装置31が起動する。
次いで、ステップTJ15では、自動復旧装置31は、送電線に試験用変圧器を介して試充電を行う。この試充電時は方向距離のリーチを最大、時限が最小となる零秒の試充電整定により実施が可能となる。
このように、送電線に試充電を行う自動復旧装置を備え、例えば60秒(所定時間)が経過した場合に、自動復旧装置31により送電線1へ試充電を行うことで、自区間線路に対する試充電への移行を速やかに行え、設備の損壊を防げるため系統の信頼度を向上することができる。
次いで、ステップTJ16では、自動復旧装置31は、一定時限(例えば、60秒)後に遮断器CBへCB投入信号を出力する。
このように、自動復旧装置31から遮断器投入信号を受信した場合には、試充電監視状態から常時監視状態に復帰するように制御することで、試充電から通常状態への移行を速やかに行え、系統の信頼度を向上することができる。
次いで、ステップTJ17では、後部保護部13Aは、自動復旧装置31からCB投入信号が入力された場合に所定の時間(例えば、1〜2秒)後にCB入確認タイマCBTからCB投入パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。次いで、CB入確認タイマCBTからCB投入パルスが方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力された場合、方向距離継電処理部44Sに設けられたスイッチ44Scは常時整定処理モジュール側に、方向距離継電処理タイマ部44Tに設けられたスイッチ44Tcは常時処理モジュール44Ta側に切り替り、通常状態に復帰する。
ところで、ステップTJ11〜TJ17とは別に、後部保護部13Aは、遠方に設けられた保護継電器(図示しない)からの信号にも応答する。
すなわち、遠方に設けられた保護継電器(図示しない)から出力される43試充電使用信号がBUFF1に入力され、BUFF1のオープンコレクタ出力がAND1の出力端子に結合され、方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。ステップTJ21では、BUFF1からの43試充電使用信号に応じて、方向距離継電処理部44Sの試充電整定処理モジュール44Sb側へスイッチ44Scが切り替り、方向距離継電処理タイマ部44Tの試充電処理モジュール44Tb側へスイッチ44Tcが切り替る。
このように、遠方に設けられた送電線保護装置から試充電使用信号を受信した場合には、所定時間が経過したときに、送電線への試充電を可能にすることで、遠方に設けられた送電線保護装置との連携動作を速やかに行うことができる。
一方、遠方に設けられた保護継電器(図示しない)から出力される43試充電不使用信号がBUFF2に入力され、BUFF2のオープンコレクタ出力がCB入確認タイマCBTの出力端子に結合され、方向距離継電処理部44S、方向距離継電処理タイマ部44Tに出力される。ステップTJ22では、BUFF2からの43試充電不使用信号に応じて、方向距離継電処理部44Sに設けられたスイッチ44Scは常時整定処理モジュール側に、方向距離継電処理タイマ部44Tに設けられたスイッチ44Tcは常時処理モジュール44Ta側に切り替り、通常状態に復帰する。
このように、遠方に設けられた送電線保護装置から試充電不使用信号を受信した場合には、試充電監視状態から常時監視状態に復帰することで、遠方に設けられた送電線保護装置との連携動作を速やかに行うことができる。
1、2…送電線、11、21…計器用変圧器、12A、12B、22A、22B…変流器、13A、13B、23A、23B…保護継電器、13A…入力部、13A…主保護部、13A…出力部、13A…後備保護部、13Ac…シーケンス部、14A、14B、24A、24B…遮断器、31…自動復旧装置44S…方向距離継電処理部、44T…方向距離継電処理タイマ部

Claims (5)

  1. 送電線から検出された電圧及び電流に基づいて前記送電線の方向距離に対応した短絡を検出処理するとともに、前記送電線の短絡を検出した場合に所定の待ち時間後にトリップ指令を前記送電線に設けられた遮断器に出力する方向距離継電処理手段と、
    前記方向距離継電処理手段がトリップ指令を出力した場合に、前記方向距離が最大になるように前記方向距離継電処理手段を制御し、前記短絡検出時の前記所定の待ち時間が零となるように前記方向距離継電処理手段を制御する制御部手段と、を備え、
    前記制御手段による制御の後、所定時間が経過した場合に、前記送電線への試充電を可能にすることを特徴とする送電線保護装置。
  2. 遠方に設けられた送電線保護装置から試充電使用信号を受信した場合には、前記制御手段による制御の後、所定時間が経過したときに、前記送電線への試充電を可能にすることを特徴とする請求項1記載の送電線保護装置。
  3. 前記制御手段は、遠方に設けられた送電線保護装置から試充電不使用信号を受信した場合には、試充電監視状態から常時監視状態に復帰するように制御することを特徴とする請求項1記載の送電線保護装置。
  4. 前記送電線に試充電を行う自動復旧装置を備え、
    請求項1記載の送電線保護装置は、前記制御手段による制御の後、所定時間が経過した場合に、前記自動復旧装置により前記送電線へ試充電を可能とすることを特徴とする送電線保護システム。
  5. 前記制御手段は、前記自動復旧装置から遮断器投入信号を受信した場合には、試充電監視状態から常時監視状態に復帰するように制御することを特徴とする請求項4記載の送電線保護システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016135088A (ja) * 2015-01-22 2016-07-25 中国電力株式会社 距離継電装置
JP2019068645A (ja) * 2017-10-02 2019-04-25 中国電力株式会社 地絡保護継電システム

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