JP2014189448A - 固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法 - Google Patents

固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法 Download PDF

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尚弘 竹田
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Abstract

【解決課題】シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され、高濃度の固体成分を含む廃液から、凝集剤を用いることなく、また、特段の後処理を用いることなく、金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分を分離して回収し、当該金属シリコン及び冷却剤を効果的に再利用し得る技術を提供する。
【解決手段】シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離する(固液分離工程)。
【選択図】なし

Description

本発明は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、化合物半導体及び/又はセラミック等のシリコンインゴットの固定砥粒方式を用いたスライス工程において、排出される廃液を処理する方法に関する。
従来から、半導体や太陽電池分野におけるシリコンウェハー製造のためのシリコンインゴットのスライス方式として、研磨砥粒を使用した遊離砥粒方式が用いられており、冷却剤を含む液体成分と、研磨剤(研磨砥粒)及びスライスで発生する金属シリコン屑を含む固体成分と、を含むスラリー状の廃液が排出されている。この固体成分はほとんどを粒径が比較的大きい研磨砥粒が占めており、濃度は50〜60重量%と高い。
これに対し、昨今、遊離砥粒方式に代わって、ワイヤーに研磨剤を塗布した固定砥粒方式のスライス方式が使用されるようになってきた。この固定砥粒方式から排出されるスラリー状の廃液には、冷却剤と金属シリコン屑が主成分として含まれており、研磨砥粒は含まれておらず、固体成分の濃度は数重量%〜十数重量%である。ただし、金属シリコン屑は研磨砥粒に比べて粒径が小さく、従ってこの廃液の固体成分はほとんどが微粒子となる。
遊離砥粒方式からの廃液処理には通常遠心分離が用いられており、これらと同様の技術として、例えば特許文献1(特開2010−29998号公報)において、遠心分離機を用いて冷却剤と金属シリコン屑とに固液分離し、冷却剤を再利用する技術が提案されている。
より具体的には「固定砥粒ワイヤソー21において切断対象ワークを切断するときに使用したクーラントを遠心分離機25に導いて、粗大な切削屑を主とする異物と、微細な切削屑を含有する切削屑含有液体とに分離し、粗大な切削屑を主とする異物を遠心分離機の長手方向の一方の端部の開口から排出して切削屑回収タンク23に回収し、切削屑含有液体を遠心分離機25の長手方向の他方の端部のオーバーフロー開口から排出してクーラントとして再使用する」ことが提案されている(特許文献1、要約及び図3等参照)。
また、例えば特許文献2(特開2002−187000号公報)においては、固定砥粒方式からの廃液について、フィルタープレス法等を用いた濾過によって固液分離を行い、金属シリコン屑を再利用する技術が提案されている。
より具体的には「まず濾過装置102を使って原水タンク101の原水105を高濃度にする。そして、原水タンクに移載装置120を横付けし、パイプにより取り付けられた濾過装置121を使って、原水105を濾過する。濾過装置121は、目の粗いフィルタで濾過し、その濾液は原水タンク101へ戻す。こうすることにより、原水タンク101の濃度を下げられ、且つ濾過装置121でケーキとして被除去物を回収できる。そして、回収されたケーキ状の固形物は金属がラミネートされた袋に入れて回収され、太陽電池等の材料として再利用される。」との記載がある(特許文献2、要約及び図1等参照)。
特開2010−29998号公報 特開2002−187000号公報
しかしながら、上記特許文献1に示される遠心分離処理のみでは、遊離砥粒方式に使用されている粒径の大きい研磨砥粒は回収することが容易であるが、固定砥粒方式からの廃液中に含まれる、微粒子の金属シリコンを完全に回収することは困難であり、その結果、回収される冷却剤中には微粒子の金属シリコンが残存しており、再利用の際のスライス工程の精度が低下してしまったり、固定砥粒のワイヤーの寿命が短くなったりするという問題がある。
また、上記特許文献2において提案されている技術は、溶媒として水を想定し、かつ、固体成分の濃度が最大40,000ppmのスラリー状の廃液を対象としており、基本的に、更に高濃度の廃液に使用することは想定されておらず、溶媒として粘度が水よりも高い炭化水素を含有し、かつ、高濃度の廃液の処理に使用した場合には、必ずしも効率的に金属シリコンを回収できないという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記のような従来の問題に鑑み、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され、微粒子の固体成分を高濃度に含む廃液から、凝集剤を用いることなく、また、特段の後処理を用いることなく、金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分を分離して回収し、当該金属シリコン及び冷却剤を効果的に再利用し得る技術を提供することにある。
本発明者らは、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され、微粒子の固体成分を高濃度に含む廃液から、金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分をより確実に分離して回収するためには、特定の構成を有する濾過装置を用いれば効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、上記の課題を解決すべく、
シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離すること(固液分離工程)、
を特徴とする固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法を提供する。
このような構成を有する本発明の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法によれば、凝集剤を用いることなく、また、特段の後処理を用いることなく、前記廃液から、金属シリコンを主成分とする固体成分、及び、固体成分が残存していない冷却剤を主成分とする液体成分を分離して回収し、当該金属シリコン及び冷却剤を効果的に再利用することができる。
ここで、本発明における濾布の「通気度」とは、JIS L 1096に準ずる方法により測定され、濾布の試験片を単位時間あたり単位面積あたり通過する空気量を表すものであり、その単位はcm3/cm2/minである。通気度の値が大きければ大きいほど、その濾布の目が粗く多量の空気を通すことができ、通気度の値が小さければ小さいほど、その濾布の目が細かく少量の空気しか通さない。
また、本発明における濾布の「平均細孔径」とは、濾布の試験片を用いて、JIS K 3832に準ずるバブルポイント法によって測定されるものであり、その単位はμmである。
上記の本発明の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法においては、前記濾布が、マルチフィラメントヤーンからなる織り糸又はマルチフィラメントヤーン及びスパンヤーンからなる混合織り糸で構成された二重織組織を有すること、が好ましい。
このような本発明の構成によれば、前記濾布によって、前記廃液から、金属シリコンを主成分とする固体成分、及び、固体成分が残存していない冷却剤を主成分とする液体成分を、より確実に分離して回収し、当該金属シリコン及び冷却剤を効果的に再利用することができる。
更に、上記本発明の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法においては、前記濾過装置がフィルタープレス機であることが好ましい。
このような本発明の構成によれば、上記の固液分離工程において、前記廃液を前記濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離する際に、前記金属シリコンを主成分とする固体成分をケーキとして分離することができ、その後の取扱いが容易である。
また、本発明の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法においては、上記の固液分離工程の後、前記金属シリコンを主成分とする固体成分(又はそのケーキ)に酸を添加することによって、前記固体成分(又はそのケーキ)中の前記金属シリコン以外の不純物成分を溶解させ、前記固体成分(又はそのケーキ)の金属シリコン純度を高める溶解工程を含むこと、が好ましい。
このような本発明の構成によれば、上記の固液分離工程により得られた金属シリコンを主成分とする固体成分(又はそのケーキ)中の金属シリコン以外の不純物成分を溶解させて、よって固体成分(又はそのケーキ)の金属シリコン純度を高めることができるため、上記の固液分離工程後の固体成分(又はそのケーキ)を金属シリコンとしての再利用のために有効に用いることができる。
本発明によれば、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され、微粒子の固体成分を高濃度に含む廃液から、凝集剤を用いることなく、また、特段の後処理を用いることなく、金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分を分離して回収し、当該金属シリコン及び冷却剤を効果的に再利用し得る技術を実現することができる。
以下、本発明の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法の実施形態について工程順に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
本発明は、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離すること、を特徴とする。
まず、本発明の回収方法においては、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離する(固液分離工程)。
ここで、本発明の処理の対象となる廃液は、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出されるものであり、少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む。
固定砥粒方式のスライス方式では、ダイヤモンド砥粒が表面に固定されたワイヤーを用い、冷却剤をシリコンインゴット及びワイヤーに吹きかけながら、シリコンインゴットを数十〜数百μmの厚さのウェハーにスライスする。この際、シリコンインゴットの切削屑が発生し、スライス終了後、この切削屑と冷却剤が混ざったスラリー状の混合液が廃液として排出され、この廃液が本発明の回収方法に供される。
従って、上記廃液は、固体成分と液体成分とを含み、固体成分は、主成分として切削屑である金属シリコンを含みとともに、微量成分として鉄、アルミニウム、炭素及び/又は二酸化ケイ素等を含んでいる。上記廃液における固体成分の濃度は、種々の範囲をとり得るが、概ねは数重量%〜十数重量%である。
上記廃液に含まれる金属シリコンは、平均粒径(D50)が1.0〜2.0μmの微粒子の状態であるのが好ましい。即ち、本発明の回収方法は、平均粒径(D50)が1.0〜2.0μmの微粒子の金属シリコンを含む廃液の処理に効果的である。なお、この平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱法により測定されるものであり、具体的には、例えば日機装(株)製のMicrotracを用いて測定することができる。また、研磨砥粒の平均粒径の測定方法はJISに規定されている電気抵抗法を用いればよい。
上記の微量成分は、スライスに使用する金属ワイヤーが摩耗して混入したものや、ワイヤーに固定されているダイヤモンド砥粒由来の炭素、金属シリコンが反応して発生した二酸化ケイ素等である。
また、液体成分は、水溶性炭化水素を含む冷却剤を含んでいる。冷却剤に用いられる水溶性炭化水素としては、従来公知の種々のものが使用され得るが、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、その他のポリアルキレングリコール、その他のグリコール及びポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(分子量100〜2000)等が挙げられ、水を含んでいてもよい。
なお、一般的には、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)又はポリエチレングリコール(PEG)等のグリコールを主成分とし、水を添加した冷却剤が使用されている。
上記の固液分離工程では、上記の廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過する。本発明者らは、上記のような廃液を処理して金属シリコンの回収をするためには、特に0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いることが効果的であることを実験を鋭意繰り返すことによって見出したものである。
濾過に用いる濾布としては、上記の通気度及び平均細孔径を有していれば、種々の材質や組織等からなる構成を有する濾布を用いることができる。濾布としては、織り糸の種類及びび織物組織の違いにより多種多様な種類のものが存在する。織り糸には、その原糸の形態により、モノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン及びスパンヤーンの3種類があり、それぞれ処理量、捕集性、ケーキ剥離性及び目詰まり抵抗性等に違いがある。
一般的には、モノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン及びスパンヤーンの順に、処理量、ケーキ剥離性及び目詰まり抵抗性が低下する傾向にある一方、捕集性は高まる傾向にある。従って、上記のような廃液に含まれる微粒子の金属シリコンを捕捉するためには、捕集性に優れるマルチフィラメントヤーン及び/又はスパンヤーンを用いるのが効果的である。即ち、本発明においては、前記濾布が、マルチフィラメントヤーンからなる織り糸又はマルチフィラメントヤーン及びスパンヤーンからなる混合織り糸で構成されているのが好ましい。
また、濾布の織物組織としては、三原組織といわれる平織、綾織及び朱子織が代表的であるが、それ以外にも様々な組織が存在する。緯畝織とは、平織の一種であり、緯糸1本に対して経糸を数本引き揃えて編んだ組織であり、縦方向に畝ができることを特徴とする。二重織とは、織物組織が表と裏で二重の立体構造を持つものである。
なかでも、より確実に本発明の効果(特に上記のような金属シリコンの効率良い回収)を得るためには、二重織組織を有し、更には、緯畝織組織を有するものが効果的であることを、本発明者らは実験により確認している(後述の実施例参照)。
次に、上記のような濾布を用いる濾過装置としては、金属シリコンを主成分とする固体成分と、冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離できるものであれば、従来公知の種々のものを用いることができる。これらの金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分は、それぞれ効果的に再利用に供することが可能である。
なお、濾過時間等の濾過の条件は、本発明の効果が得られるように常法により決定すればよく、例えば、濾液の流出量(流出速度)から濾過の終了を判断し、これにより濾過時間を決定すればよい。
ここで、本発明の回収方法は、金属シリコンを主成分とする固体成分に酸を添加することによって、固体成分中の前記金属シリコン以外の不純物成分を溶解させ、前記固体成分の金属シリコン純度を高める溶解工程を含むこと、が好ましい。
このような本発明の構成によれば、上記の固液分離工程により得られた金属シリコンを主成分とする固体成分中の金属シリコン以外の不純物成分を溶解させて、よって固体成分の金属シリコン純度を高めることができるため、上記の固液分離工程後の固体成分を金属シリコンとしての再利用のために有効に用いることができる。
この溶解工程において用いることのできる酸としては、金属シリコン以外の不純物成分を溶解し得るものであれば種々のものを用いることができるが、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸を希釈したもの等が挙げられる。なかでも、取扱い上の観点から、硫酸を用いるのが好ましい。
本発明においては、前記濾過装置としてフィルタープレス機であること、が好ましい。フィルタープレス機を用いると、金属シリコンを主成分とする固体成分を、いわゆるケーキとして回収することができる。
即ち、上記の廃液を、通気度及び平均細孔径を制御した濾布を使用したフィルタープレス機を用いて濾過を行うと、濾液(固体成分が除去された冷却剤)と、金属シリコンが濃縮されたケーキと、に固液分離をすることができる。この濾液はそのまま特段の処理を必要とせず、再生冷却剤として、次のスライス工程に使用することができる。また、ケーキは、金属シリコン濃度が高いため、これを原料として、シーメンス法等の既存のシリコン精製技術を用いて再生利用することができる。
また、フィルタープレス機では、上記の廃液に圧力をかけて濾布に通して濾過を行い、濾液とケーキとを分離して回収する。分離後、濾布内に濃縮されたケーキを、水等の洗浄液を用いて洗浄することができる。この洗浄液として酸を用いれば、不純物成分として含まれている鉄等の金属成分を洗浄液中に抽出し、ケーキ中から除去することができる。即ち、より金属シリコン濃度の高いケーキを得ることができる。
また、洗浄液として酸を用いた場合、洗浄後に更に水を用いて洗浄することが好ましい。
なお、回収した固体成分は金属シリコンの濃度が高いため、回収後に別途溶融処理等を行いシリコンインゴットを作成する場合、酸による洗浄工程まで必要としないこともある。また、他の回収金属シリコンと混合して一括して精製処理を行う場合も同様である。
また、冷却剤の回収を優先したい場合、回収したケーキを水を用いて洗浄して得られる洗浄液を蒸留により冷却剤と水を分離して冷却剤を回収するようにしても良い。
以下において、実施例及び比較例を含む実験例を用いて本発明の回収方法をより具体的に説明する。
≪実験例1≫
固定砥粒方式のシリコンインゴットスライス工程から排出され、ジエチレングリコール(DEG):74重量%、水:18重量%、固体成分濃度:8重量%(Si:80重量%、SiO2:14重量%、C:4重量%、Fe:0.03重量%)からなるスラリー状の廃液を、準備した。
この廃液1kgを、中尾フィルター工業(株)製の濾布(型番:PPG930B11K、マルチフィラメントヤーン・スパンヤーン、通気度:2.5cm3/cm2/min、平均細孔径:1.5μm)を固定したフィルタープレス機にて、濾過圧力:0.4MPa、濾過面積:100cm2、濾室容積:150cm3、濾室厚さ:15mm、及び、廃液面数:1面の条件下、で処理した(固液分離工程)。濾過時間は90分間とし、微粒子の混入がない濾液を回収した。
≪実験例2≫
濾布として林福加工(株)製の濾布(型番:P89C、マルチフィラメントヤーン単独、通気度:2cm3/cm2/min、平均細孔径:4μm)を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾過時間は100分間とし、微粒子の混入がない濾液を回収した。
≪実験例3≫
固定砥粒方式のシリコンインゴットスライス工程から排出され、ジエチレングリコール(DEG):70重量%、水:16重量%、固体成分濃度:14重量%(Si:80重量%、SiO2:14重量%、C:4重量%、Fe:0.03重量%)からなるスラリー状の廃液を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾過時間は120分間とし、微粒子の混入がない濾液を回収した。
≪実験例4≫
固定砥粒方式のシリコンインゴットスライス工程から排出され、ジエチレングリコール(DEG):74重量%、水:23重量%、固体成分濃度:3重量%(Si:80重量%、SiO2:14重量%、C:4重量%、Fe:0.03重量%)からなるスラリー状の廃液を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾過時間は40分間とし、微粒子の混入がない濾液を回収した。
≪実験例5≫
濾布として中尾フィルター工業(株)製の濾布(型番:PP934K、マルチフィラメントヤーン・スパンヤーン、通気度:13cm3/cm2/min、平均細孔径:3μm)を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾液には若干の微粒子が混入していた。
≪実験例6≫
濾布として中尾フィルター工業(株)製の濾布(型番:PP132K、マルチフィラメントヤーン単独、通気度:40cm3/cm2/min、平均細孔径:8.5μm)を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾液には微粒子が混入していた。
≪実験例7≫
濾布として林福加工(株)製の濾布(型番:T89−1C、マルチフィラメントヤーン単独、通気度:15cm3/cm2/min、平均細孔径:9μm)を用いた以外は、実験例1と同様にして、上記廃液1kgを処理した。濾液には若干の微粒子が混入していた。
上記の実験例1〜7の条件及び効果を表1にまとめた。
表1に示す結果から、本発明によれば、濾液の清浄性が高いため、シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され、微粒子の固体成分を高濃度含む廃液から、凝集剤を用いることなく、また、特段の後処理を用いることなく、金属シリコンを主成分とする固体成分及び冷却剤を主成分とする液体成分を分離して回収することができ、特に冷却剤を効果的に再利用することができることがわかる。

Claims (4)

  1. シリコンインゴットの固定砥粒方式によるスライス工程から排出され少なくとも金属シリコンと水溶性炭化水素を含む冷却剤とを含む廃液を、0.5〜3cm3/cm2/minの通気度及び0.1〜5.0μmの平均細孔径を有する濾布を用いた濾過装置で濾過することによって、前記金属シリコンを主成分とする固体成分と、前記冷却剤を主成分とする液体成分と、に分離すること、
    を特徴とする固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法。
  2. 前記濾布が、マルチフィラメントヤーンからなる織り糸又はマルチフィラメントヤーン及びスパンヤーンからなる混合織り糸で構成された二重織組織を有すること、
    を特徴とする請求項1に記載の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法。
  3. 前記濾過装置がフィルタープレス機であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法。
  4. 前記金属シリコンを主成分とする固体成分に酸を添加することによって、前記固体成分中の前記金属シリコン以外の不純物成分を溶解させ、前記固体成分の金属シリコン純度を高める溶解工程を含むこと、
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固定砥粒方式による廃液からの金属シリコン及び冷却剤の回収方法。
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