JP2014181328A - 脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】色調と熱安定性に優れた高分子量の脂肪族ポリエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体と脂肪族ジオールとを主原料とし、重合触媒の存在下での重縮合反応を経て脂肪族ポリエステルを製造する方法であって、前記重合触媒として少なくともチタン化合物を用い、かつ、重縮合反応開始までの任意の段階で、前記脂肪族ジカルボン酸に対して0.0001モル%以上10モル%以下の下記一般式(1)で示される構造を持つ多価アルコールを反応系に加えることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
Figure 2014181328

(式中、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基を表す。但し、R〜Rのうち3個以上はヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。詳しくは、十分な固有粘度と熱安定性を有し、かつ、色調に優れた高分子量脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。
生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、環境問題に対する意識の高まりから、より環境負荷を回避し得る樹脂として、繊維、成形品、フィルムやシート等への応用がはかられている。例えば、生分解性を有するポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンアジペートは、ポリエチレンと似た力学特性を持つことからポリエチレン代替の汎用樹脂として開発されている。
一般に、経済的に有利なポリエステルの製造方法としては、触媒の存在下でのジカルボン酸とジオールとの直接エステル化反応、或いは、ジカルボン酸のアルキルエステルとジオールとのエステル交換反応によりエステル低重合体を製造後、これを加熱減圧下でエステル交換反応を行いながら、生成するジオールを反応系から留去して高重合度のポリエステルを製造する方法が古くから知られ、採用されている。
しかしながら、脂肪族ポリエステルの場合はその熱安定性が低い場合が多く、重縮合反応中に熱分解による分子量の低下が起こる為、実用上十分な強度を有する高重合度のポリエステルが容易には得られず、また、一旦熱分解が引き起こされると著しく着色する傾向があった。そのような背景から、その製造方法には種々の工夫がなされている。
一般に、高重合度のポリエステルの製造方法としては、例えば、チタン化合物やジルコニウム化合物を触媒として溶融重合を行い、鎖延長剤としてジイソシアネート(例えば、特許文献1参照)やジフェニルカーボネート(例えば、特許文献2参照)を添加してポリマー鎖長を延ばすことによりポリマーの溶融粘度を高める方法が提案されている。これらの鎖延長剤を添加する方法は、ポリエステルの分子量を容易に増大させることができるため、一見、脂肪族ポリエステルの有効な製造方法と考えられるが、通常、反応工程が2段階になり工程が煩雑になること、また、得られるポリエステルについては、その結晶性や融点が若干低下することに加えて、分子中のウレタン結合やカーボネート結合によって生分解性が低下する傾向にあること、などの問題がある。
また、分岐剤として、ジカルボン酸に対して0.5〜5モル%量の3官能オキシカルボン酸或いは0.1〜3モル%量の4官能オキシカルボン酸を添加してポリエステルの構造を分岐構造にする方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また上記以外にも分岐剤として、3官能以上の多価アルコールを添加したポリエステルの製造法が記載されている。(例えば、特許文献4、5、6参照)
特開平4−189822号公報 特開平8−301999号公報 特開平5−170885号公報 特開平8−259680号公報 特開平11−130852号公報 特開2005−247966号公報
しかし、特許文献3に記載の様に多官能オキシカルボン酸を導入して溶融粘度を向上させた脂肪族ポリエステルは色調が悪く、一方で色調が悪化しない程度に多官能オキシカルボン酸の添加量を抑えた脂肪族ポリエステルは、溶融粘度が十分でないという問題が明らかになった。
また、3官能以上の多価アルコールを分岐剤として用いた特許文献4,5,6はゲルマニウム化合物を重合触媒として用いたことが記載されている。ゲルマニウム化合物は重合中に反応系から系外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難であり、ポリエステルの熱酸化安定性が悪いという課題を有していた。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、色調に優れた高分子量の脂肪族ポリエステルを安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、脂肪族ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸成分からなる脂肪族ポリエステルの製造において、チタンを含有する重合触媒と、特定の構造を有する多価アルコールを用いることによって、色調に優れた高分子量の脂肪族ポリエステルを安定的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[8]に存する。
[1] 脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体と脂肪族ジオールとを主原料とし、重合触媒の存在下での重縮合反応を経て脂肪族ポリエステルを製造する方法であって、前記重合触媒として少なくともチタン化合物を用い、かつ、重縮合反応開始までの任意の段階で、前記脂肪族ジカルボン酸に対して0.0001モル%以上10モル%以下の下記一般式(1)で示される構造を持つ多価アルコールを反応系に加えることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
Figure 2014181328
(式中、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基を表す。但し、R〜Rのうち3個以上はヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[2] 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基である[1]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[3] 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基であり、Rが炭素数2のアルキル基
である[1]又は[2]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[4] 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基である[1]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[5] 重合触媒が、テトラ−n−ブチルチタネートを含む[1]〜[4]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[6] 脂肪族ポリエステルの黄色度(YI)が−5以上5以下であり、固有粘度が1.6dL/g以上である[1]〜[5]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[7] 前記脂肪族ジカルボン酸が、バイオマス資源から誘導される脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする[1]〜[6]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[8] 前記脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸であることを特徴とする[1]〜[7]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[9] [1]〜[8]に記載の方法で製造された、脂肪族ポリエステル。
本発明によれば、生分解性を維持しつつ、色調に優れた高分子量の脂肪族ポリエステルを安定的に製造する方法を提供することを目的とする。加えて安価な触媒を用いることが可能であるため、本発明は脂肪族ポリエステルの製造コスト面からも極めて有利な効果を有する。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
本発明は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを主原料とし、重合触媒の存在下で行う重縮合反応を経て脂肪族ポリエステルを製造する方法であって、上記重合触媒として少なくともチタン化合物を用い、かつ、特定の構造を持つ多価アルコールを所定の割合で加えることを特徴とする。
本発明において、「脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを主原料とする」とは、製造される脂肪族ポリエステルの全単量体単位100モル%に対して、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位の和が80モル%以上となるように原料を設定することを意味する。また、脂肪族ジカルボン酸に対してとは、原料とした脂肪族ジカルボン酸に対しての量を意味する。
<脂肪族ジオール>
本発明に係る脂肪族ジオールとしては、2個のヒドロキシ基を有する脂肪族化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリエステルが得られる理由から炭素数が偶数の脂肪族ジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ル、及びこれらの混合物が好ましく、更には、1,4−ブタンジオ−ルを主成分とするもの、又は、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。ここでいう主成分とは、全脂肪族ジオール単位に対して、通常60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を占める成分をさす。
また、両末端ヒドロキシポリエーテルを脂肪族ジオールとして使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数の下限値が通常4以上、好ましくは10以上であり、上限値が通常1000以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下で
あるものが挙げられる。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、ポリエステル中の両末端ヒドロキシポリエーテル単位の含量として、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換してもよい。
例えば発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水素添加して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
<脂肪族ジカルボン酸>
本発明に係る脂肪族ジカルボン酸としては、2個のカルボキシル基を有する脂肪族化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限が2以上であり、上限が通常12以下、好ましくは6以下の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常、炭素数が2以上12以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の炭素数1〜4のアルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物も使用することができる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの内、炭素数2以上6以下の鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸、コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物が好ましい。
これらの脂肪族ジカルボン酸は、石油資源誘導品を出発原料として製造することができるが、再生可能な植物資源から誘導される炭素源を出発原料としても製造することができる。植物資源から誘導される炭素源としては、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、グリセロールが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物由来原料としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。また、上記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液、糖蜜なども使用される。これらの発酵性糖質は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの脂肪族ジカルボン酸の製造方法としては、植物資源から誘導される炭素源を微生物変換する方法も採られるが、その際、用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属 (USP 51438
33)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(USP−5504004)、Escherichia属
(USP−5770435)等の通性嫌気性細菌、Corynebacterium属(JP11113588)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593)、Bacteroides ruminicola、Bacteroides amylophilus等の嫌気性ルーメン細菌、E.coli(J.Bacteriol.,57:147-158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333、USP−6159738)を用いることができる。
<多価アルコール>
本発明においては、下記一般式(1)で表される多価アルコール化合物を用いる必要がある
Figure 2014181328
(式中、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基を表す。但し、R〜Rのうち3個以上はヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基である。)
本発明で用いる多価アルコールは、4級炭素を中心に炭素数1〜4のアルキル基、及び/又は、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基からなり、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基を3つ以上有することを特徴とする。
本発明におけるアルキル基とは、一価の飽和炭化水素からなる置換基であり、アルキレン基とは、二価の飽和炭化水素からなる置換基である。ヒドロキシル基末端を有するアルキレン基とは、その二つの置換炭素のうち4級炭素に接していない炭素がヒドロキシル基を有していることを意味する。
一般式(1)で表される多価アルコールの具体例として、例えば、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造法における、多価アルコールの添加量は、原料として用いた脂肪族ジカルボン酸に対して0.0001モル%以上10モル%以下である。好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは0.2モル%以上であり、一方上限は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。多価アルコールの添加量が多すぎると製造される脂肪族ポリエステルにゲル化が生じ、成形性が悪くなり、少なすぎると十分な固有粘度を持った脂肪族ポリエステルが得られず、十分な耐加水分解性や熱安定性を得ることができない。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、重合触媒としてチタン化合物を用いることに加え、特定の構造を持つ多価アルコールを規定量添加することで、固有粘度が上昇し、色調に優れたポリエステルを得ることができた詳細な作用は不明であるが、二つの要因が考えられる。
1点目は、チタン化合物はゲルマニウム化合物に比べて反応系外への流出が少ないこと
から、反応系の触媒濃度が安定し、熱酸化安定性の高い脂肪族ポリエステルを安定的に得られた。
2点目は、多価カルボン酸化合物のカルボン酸末端部が重合反応中に熱分解することで生じる官能基の減少や熱分解由来化合物によって、色調や固有粘度の悪化が生じていたが、末端部の熱安定性が高い多価アルコールを分岐剤に用いることで、末端部の熱分解を抑制し、色調や固有粘度の向上に繋がったことである。
<その他の共重合成分>
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法においては、さらにその他の共重合成分を加えることで、固有粘度や色調が向上する場合がある。
その他の共重合成分の具体的な例としては、架橋構造を形成するために2官能以上のオキシカルボン酸や、3官能以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等が挙げられ、オキシカルボン酸のエステルやカプロラクトン等のラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であってもよい。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸又はグリコール酸が特に好ましい。その入手形態としては、30〜95重量%の水溶液のものが容易に入手することができる点で好ましい。
上記2官能のオキシカルボン酸を用いる場合の使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して下限としては、通常0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上である。一方、使用量の上限は、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸ならびにその混合物が好ましい。
3官能以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸;メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸、また、これらの炭素数1〜4のアルキルエステル誘導体、無水物等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常3モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、通常0.0001モル%以上、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。
<脂肪族ポリエステルの製造方法>
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法としては、従来の公知の方法を使用することができ、例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合でポリエステルを製造する方法が好ましい。
また、重縮合反応は、チタン化合物を含む重合触媒の存在下で行う必要がある。重合触媒の添加時期は、特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
本発明に係る重合触媒として用いられるチタン化合物は限定されないが、具体例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が挙
げられ、中でもテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)等がより好ましい。
これらの重合触媒としてチタン化合物を含む重合触媒を用いる際の触媒添加量は、原料脂肪族ジカルボン酸に対する金属量として、下限値が通常、0.1重量ppm以上、好ましくは1重量ppm以上であり、上限値が通常、30000重量ppm以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは500重量ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、残留触媒濃度の増大によりポリマーの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリマーが得られにくい傾向がある。
またチタン化合物を用いる際の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、0.1重量ppm以上、好ましくは1重量ppm以上であり、上限値が通常、20000重量ppm以下、好ましくは500重量ppm以下、より好ましくは250重量ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、残留触媒濃度の増大によりポリマーの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリマーが得られにくい傾向がある。
本発明に用いる重合触媒として、チタン化合物に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲内でポリエステルの重縮合触媒として従来から使用されている触媒を加えて用いることができる。例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ-n-ブトキシド等のゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物;ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、n−酪酸マグネシウム、n−吉草酸マグネシウム、n−カプロン酸マグネシウム、n−カプリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物が挙げられる。これらの触媒は、単独で或いは複数組み合わせて用いることが出来る。
本発明においては、更に安定剤を用いることが出来る。安定剤としては、リン酸、亜リ
ン酸、次亜リン酸およびそれらのエステル類、ポリリン酸などのリン化合物等があげられる。具体的には、リン酸、亜リン酸のほか、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類があげられる。中でもエチルアシッドホスフェートが好ましく用いられる。このようなリン化合物の添加量は、生成するポリエステル収量に対して通常10〜1000ppmとなる量で用いられる。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法における温度、時間、圧力などの条件は、従来公知の範囲を採用することができる。
脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0
.03×103Pa以上であり、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.6×103Pa以下、更に好ましくは0.3×103Pa以下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常1時間以上であり、好ましくは2時間以上、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、特定の構造を持つ多価アルコールを添加する必要がある。上記多価アルコールを添加するタイミングは、重縮合反応以前であれば特に限定されない。例えば、第1として、原料のモノマーと一括に反応槽に入れて反応することもできるし、第2として、脂肪族ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸成分をエステル化反応又はエステル交換反応させた後の任意の時点で添加し、更に重縮合反応させてもよい。
本発明の脂肪族ポリエステルを製造する反応装置は限定されないが、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、従来の、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法を用いてもよい。後者の場合、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物環状体の除去は、通常、上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反
応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物環状体になりやすいため、酸無水物環状体の状態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、脂肪族ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸成分とジオール成分の環状単量体を共に留去させる方法は、重合速度が向上するため、好ましい態様である。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去する方法により高重合度の脂肪族ポリエステルを製造する方法を用いる場合には、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管の反応容器側排気口の温度を、脂肪族ジカルボン酸無水物環状体の融点、或いは重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物環状体の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持すると、生成する酸無水物環状体が効率よく反応系から除去でき、目的の高重合度の脂肪族ポリエステルが短時間で製造できるため好ましい。更には、反応容器側排気口から凝縮器までの配管温度を酸無水物環状体の融点、或いは重縮合反応時の真空度での沸点のいずれか低い方の温度以上に保持するとより好ましい。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステルを得るための脂肪族ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上、特に好ましくは0.95モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下である。
<脂肪族ポリエステル及びその用途>
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの固有粘度(IV)値は通常1.60dL/g以上である。
上記固有粘度(IV)値は、重合度の尺度であり、製造したポリエステルが実用上十分な力学特性が得られる理由から、成型に不都合が起きない範囲であれば、一般に高いほどよいと言われている。この因子は、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度にも影響を与える因子であるが、ポリマーの粘度が上昇することにより疎水性が増して耐加水分解性が向上する場合がある。尚、本発明でいう固有粘度(IV)の測定条件は後述する。
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV)は、通常、20eq/トン以下、好ましくは18eq/トン以下、より好ましくは16eq/トン以下である。このようなポリエステルは、熱安定性に優れ、成形時の品質の低下が少ない、即ち、溶融成形時に末端基の切断や、主鎖の切断等の副反応が少ないという特徴を有する。尚、本発明でいう末端カルボキシル基量(AV)の測定条件は後述する。
一方、カルボキシル基末端が実質存在しないようなポリエステルの製造は、従来の製造法では、重合速度が極めて遅く、極めて高額の超高真空設備投資を要する。それに対し、生成するポリエステル及び/又はオリゴエステル中にカルボキシル基末端が存在すると重合速度が早く、容易に高重合度のポリエステルが得られる理由から、本発明における脂肪族ポリエステルには、通常、0.1eq/トン以上、好ましくは0.5eq/トン以上、特に1eq/トン以上の末端カルボキシル基量が存在することが好ましい。
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの黄色度(YI)は5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0以下であり、一方下限は、通常−5以上、好ましくは−2.5以上である。黄色度(YI)が上記範囲にある場合、透明なフィルムやシートなどの用途に好適に用いられる。尚、上
記黄色度はJIS K7103に準拠して測定を行うものとする。
黄色度(YI)が高い程、ポリエステルの黄色みが強くなり、低い程、ポリエステルの青みが強くなることから黄色度(YI)が0に近い程、透明性が高く色調が優れていることの指標となる。
本発明の製造方法において、特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤及び紫外線吸収剤等を重合時又は得られたポリエステルに添加してもよい。
また、成形時に上に示した各種の添加剤の他に、ガラス繊維、炭素繊維、チタンウィスカー、マイカ、タルク、CaCO3、シリカ等の強化剤及び増量剤を添加して成形するこ
ともできる。尚、TiO2は触媒としてのみならず添加剤として、別途用いることが出来
る。
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルは物性及び色調に優れ、しかも安価に製造できるので、各種のフィルム用途や射出成形品の用途に適している。
成形方法は特に限定されず、圧縮成形、積層成形、射出成形、押出成形、真空成型、圧空成型、ブロー成形等の公知の方法を用いることができる。
上記成形方法を用いて作られる成型体としては、フィルム、シート、発泡体、板、繊維、容器等が挙げられる。より具体的には、ラミネートフィルム、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、スプリットヤーン、複合繊維等が挙げられる。
これら成型体の用途は限定されず、具体的には食品用フィルム、生鮮食品のトレーやファーストフードの容器、野外レジャー製品、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート、コーティング資材、農業量マルチフィルム、肥料用コーティング材、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材及び合成紙などに利用可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
<固有粘度(IV)>
ウベローデ型粘度計を使用し、次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(2)より求めた。
IV=((1+4KHηSP)0.5−1)/(2KHC)・・・(2)
(ただし、ηSP=η/η−1であり、ηは試料溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
<ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV)>
ペレット状ポリエステルを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させた。次いで、クロロホルム5cmを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフ
ェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を加えずに同様の操作を実施し、以下の式(3)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
末端カルボキシル量 =(a−b)×0.1×f/w・・・(3)
ここで、aは、滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
尚、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は以下の方法で求めた。試験管にメタノール5cmを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.lmol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4cmで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1mol/Lの塩酸水溶液を標準液として0.2cm採取して加え、再度、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。そして、以下の式(4)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1mol/Lの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)/0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)・・・(4)
<黄色度(YI)>
YI値は、ペレット状脂肪族ポリエステル樹脂を内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Color Meter ZE2000(日本電色工業(株))を使用して、JIS K7105の方法に基づいて測定した。反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
[製造例1 触媒の調製]
撹拌装置付き500mlのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム四水和物を62.0g入れ、更に250gの無水エタノール(純度99%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合重量比は45:55)を35.8g加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを75.0g添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。
この混合溶液を1Lのナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。約1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、0.7kPaの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から粉体状へと徐々に変化し、約2時間後には完全に粉体化した。その後、窒素を用いて常圧に戻し、室温まで冷却し、淡黄色粉体108gを得た。
得られた触媒に含まれる金属元素を、試料0.1gをケルダールフラスコ中で硫酸存在下、過酸化水素で湿式分解の後、蒸留水にて定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES ULtrace JY−138U型)を用いて定量分析した結果、チタン原子(T)含有量が10.3重量%、Mg原子(M)含有量が6.8重量%、リン原子(P)含有量が8.7重量%であり、モル比としては、T/P=0.78、M/P=1.0であった。更に、粉体状の触媒を、チタン原子含有
量が34000重量ppmとなるように、1,4−ブタンジオールに溶解させた。1,4−ブタンジオール中における触媒の保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は、少なくとも40日間析出物の生成は認められなかった。
[実施例1]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100重量部、1,4−ブタンジオール99.2重量部、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン1.14重量部を投入し、減圧−窒素置換によって系内を窒素雰囲気下にした。系内を撹拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、製造例1の触媒溶液を0.215重量部添加した。添加量は、得られる脂肪族ポリエステル樹脂の重量に対して、チタン原子が50ppmとなる量とした。次に、系内を150rpmで撹拌しながら30分かけて250℃まで昇温し、同時に70Paまで減圧し、減圧後の攪拌装置の攪拌回転数は150rpm、60rpm、40rpm、20rpmと段階的に下げた。重合反応時間を目標粘度に到達するまでとし、脂肪族ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステルを230℃で反応槽の底部からストランドとして抜き出し、10℃の水中を潜らせた後、真空下、60℃で8h加熱乾燥させカッターでストランドをカットすることにより白色のペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.56dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は12.4eq/ton、黄色度(YI)は−2.2、重合時間は191分であった。
尚、上記目標粘度は、コハク酸と1,4ブタンジオールから得られる脂肪族ポリエステルを同様に製造した際の、IV 1.65dL/gとなる攪拌装置のトルク値(N・m)とした。
[実施例2]
原料として、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを0.568重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から221分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.67dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は13.0eq/ton、黄色度(YI)は−0.2であった。
[実施例3]
原料として、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを0.341重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から257分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.59dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は19.1eq/ton、黄色度(YI)は−1.0であった。
[実施例4]
原料として、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを0.114重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から282分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.65dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は18.9eq/ton、黄色度(YI)は−0.7であった。
[実施例5]
原料として、ペンタエリスリトールを0.576重量部加え、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを加えなかった以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から228分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.75dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は12.5eq/ton、黄色度(YI)は−1.1であっ
た。
[実施例6]
原料として、ペンタエリスリトールを0.231重量部加え、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを加えなかった以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から277分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.58dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は14.5eq/ton、黄色度(YI)は−2.3であった。
[実施例7]
原料として、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを0.568重量部に変更し、さらにリンゴ酸を0.114重量部加えた以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から228分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.65dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は16.4eq/ton、黄色度(YI)は−1.8であった。
[比較例1]
原料として、リンゴ酸を0.375重量部加え、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを加えなかった以外は、実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。減圧開始から244分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.69dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は22.7eq/ton、黄色度(YI)は6.0であった。
[比較例2]
原料として、リンゴ酸を0.114重量部加え、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンを加えなかった以外は実施例1と同様の条件でポリエステルペレットを製造した。目標粘度に到達しなかったため、減圧開始から300分で反応を終了させ実施例1と同様の方法でポリエステルペレットを得た。得られたペレットの固有粘度(IV)は1.56dL/g、末端カルボキシル基量(AV)は18.7eq/ton、黄色度(YI)は−2.0であった。
Figure 2014181328
実施例1〜6に示した様に1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトールを分岐剤として用いた場合、十分な固有粘度(IV)有し、かつ、優れた黄色度(YI)を示した。また実施例7に示した様に、リンゴ酸共存下でも同等の効果が得られた。
対して、分岐剤にリンゴ酸を単独で用いた比較例1では、十分な固有粘度(IV)を示したが、黄色度(YI)が高く、比較例2では、リンゴ酸を少量とした結果、黄色度(YI)は減少したが、重合速度が遅く、300分経過時点で規定粘度に到達しなかった。

Claims (9)

  1. 脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体と脂肪族ジオールとを主原料とし、重合触媒の存在下での重縮合反応を経て脂肪族ポリエステルを製造する方法であって、前記重合触媒として少なくともチタン化合物を用い、かつ、重縮合反応開始までの任意の段階で、前記脂肪族ジカルボン酸に対して0.0001モル%以上10モル%以下の下記一般式(1)で示される構造を持つ多価アルコールを反応系に加えることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
    Figure 2014181328
    (式中、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基を表す。但し、R〜Rのうち3個以上はヒドロキシル基末端を有する炭素数1〜4のアルキレン基である。)
  2. 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基である請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  3. 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基であり、Rが炭素数2のアルキル基である請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  4. 前記式(1)において、R〜Rがヒドロキシメチル基である請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  5. 重合触媒が、テトラ−n−ブチルチタネートを含む請求項1〜4の何れか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  6. 脂肪族ポリエステルの黄色度(YI)が−5以上5以下であり、固有粘度が1.6dL/g以上である請求項1〜5の何れか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  7. 前記脂肪族ジカルボン酸が、バイオマス資源から誘導される脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  8. 前記脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載の方法で製造された、脂肪族ポリエステル 。
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