JP2014181280A - ポリウレタン樹脂用組成物及びこれを用いたポリウレタン樹脂発泡体 - Google Patents

ポリウレタン樹脂用組成物及びこれを用いたポリウレタン樹脂発泡体 Download PDF

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Abstract

【課題】硬化時の発泡性に優れ、かつ、難燃性の高いポリウレタン樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】下記構造式(1)で表されるリン原子含有難燃剤とポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物とを必須の成分として含有とするポリウレタン樹脂用組成物。
Figure 2014181280

【選択図】なし

Description

本発明は、硬化時の発泡性に優れ、かつ、難燃性の高いポリウレタン樹脂発泡体、及びこれの原料として好適なポリウレタン樹脂用組成物に関する。
ポリウレタン樹脂は塗料や接着剤、構造体、繊維、合成皮革など様々な用途に用いられているが、中でもポリウレタン樹脂発泡体は断熱性が高く、弾性や機械的強度に優れ、加工し易いなどの特徴から、硬質のものは冷蔵庫や建築材料、自動車部材等における断熱材や軽量構造材等の用途に、軟質のものはクッション材や衝撃吸収材、防音材等の用途に広く利用されている。硬質・軟質何れの用途においても、前記各種性能に加え高い難燃性が要求されることが多いが、ポリウレタン発泡体自体は火炎に弱い材料であるため、難燃剤を添加することにより難燃性を付与している。
前記難燃剤には従来主に使われてきたハロゲン系難燃剤に替えて、現在は水酸化アルミニウムや三酸化アンチモン等の無機化合物、ホスファイトやホスフェート等の有機リン系化合物等の非ハロゲン系難燃剤が広く一般に用いられている。しかしながら、前記無機化合物は添加によりポリウレタン組成物の増粘や発泡性の低下等が生じてしまうため、複雑な配合組成や成形工程を要するものであった。一方、前記有機リン系化合物は高い難燃性を付与するために大量に添加する必要があることから、得られる発泡体の機械強度や復元性等の物性が低下したり、凝縮性排出物(フォギング)が生じたりするものであった。また、従来発泡剤として使用されてきたフロン化合物の使用禁止に伴い、現在は発泡剤として主に水が使われているが、発泡剤として水を含むポリウレタン組成物ではイソシアネート化合物の一部が水と反応するため、イソシアヌレート環の生成が減少してしまうことも難燃性の低下に影響している。従って、これまで以上に高い難燃性能を有し、増粘や発泡性の低下がなく、少量の添加でも効果を奏する難燃剤の開発が求められていた。
非ハロゲン系難燃剤を使用したポリウレタン発泡体用組成物の例として、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物からなるベース樹脂に、難燃剤として膨張性黒鉛とメラミンとを添加する技術(下記特許文献1参照)や、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物からなるベース樹脂に、難燃剤としてリン酸エステル、メラミン、及び膨張黒鉛を添加する技術(下記特許文献2参照)が知られている。これら特許文献1や2に記載された発泡体用組成物は、無機化合物やリン化合物を難燃剤として用いた場合と比較して発泡性は改善されるものの、その難燃性は十分なものではなかった。
特開2002−198679号公報 特開2011−252111号公報.
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化時の発泡性に優れ、かつ、難燃性の高いポリウレタン樹脂発泡体、及びこれの原料となるポリウレタン樹脂用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)に代表されるリン原子含有化合物とo−ヒドロキシベンズアルデヒド系化合物とを反応させて得られる特定の分子構造を有するリン原子含有化合物をポリウレタン樹脂用組成物の難燃剤として用いることにより、硬化時の発泡性に優れ、かつ、硬化物における難燃性の高いポリウレタン樹脂用組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物(I)と、リン原子含有難燃剤(II)とを必須の成分として含有し、前記リン原子含有難燃剤(II)が下記構造式(1)
Figure 2014181280
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは水素原子又は下記構造式(x1)或いは(x2)
Figure 2014181280
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
で表される構造部位の何れかであり、nは0以上の整数である。]
で表されるリン原子含有化合物であることを特徴とするポリウレタン樹脂用組成物に関する。
本発明は、更に、前記ポリウレタン樹脂用組成物と、前記(I)成分のうち前記ポリウレタン樹脂組成物が含有するものの他の成分と、発泡剤とを混合し、発泡及び硬化させて得られるポリウレタン樹脂発泡体に関する。
本発明によれば、硬化時の発泡性に優れ、かつ、難燃性の高いポリウレタン樹脂発泡体、及びこれの原料として最適なポリウレタン樹脂用組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物は、前記の通り、ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物(I)と、リン原子含有難燃剤(II)とを必須の成分として含有する。即ち本発明は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン樹脂用組成物において、前記リン原子含有難燃剤(II)をポリオール成分、又はポリイソシアネート成分のどちらかに混合して用いるものであり、本発明のポリウレタン樹脂組成物が前記(I)成分としてポリオール化合物を含有する場合には、これに前記リン原子含有難燃剤(II)を予め添加し、硬化時にポリイソシアネート化合物と混合して用いる。他方、本発明のポリウレタン樹脂組成物が前記(I)成分としてポリイソシアネート化合物を含有する場合には、これに前記リン原子含有難燃剤(II)を予め添加し、硬化時にポリオール化合物と混合して用いる。
本発明の(I)成分として用いるポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の単量体ポリオール;
ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;
前記単量体ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等種々の環状エーテル化合物との開環重合により得られるポリエーテルポリオール;
前記単量体ポリオールと、ε−カプロラクトン等の種々のラクトン化合物との重縮合反応により得られるラクトン変性ポリオール;
前記単量体ポリオールやポリオキシアルキレングリコールと、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、等の多価カルボン酸との重縮合反応により得られるポリエステルポリオール;
前記単量体ポリオールやポリオキシアルキレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカルボニル化剤の重縮合反応により得られるポリカーボネートポリオール;
前記単量体ポリオールやポリオキシアルキレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールと、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物とを反応させて得られるアミン変性ポリオール;
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;
フェノール化合物、アルデヒド、及びアルカノールアミンを反応させて得られたマンニッヒ化合物と、プロピレンオキシド又はエチレンオキシドとを反応させて得られるマンニッヒポリオール等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
ポリオール化合物の水酸基価は、軟質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、復元性や耐衝撃性に優れる発泡体が得られることから10〜150mgKOH/gの範囲であるものが好ましく、20〜100mgKOH/gの範囲であることが好ましい。一方、硬質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、耐熱性や機械強度に優れる発泡体が得られることから150〜1,000mgKOH/gの範囲であることが好ましく、200〜900mgKOH/gの範囲であることが好ましい。また、軟質用と硬質用との中間の性能を持たせる目的で、軟質用ポリオール化合物と硬質用ポリオール化合物とを複数種併用しても良い。
前記ポリオール化合物の一分子あたりの平均官能基数は、軟質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、復元性や耐衝撃性に優れる発泡体が得られることから2〜6個の範囲であるものが好ましく、2〜4個の範囲であることが好ましい。一方、硬質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、耐熱性や機械強度に優れる発泡体が得られることから2〜12個の範囲であることが好ましく、3〜8個の範囲であることが好ましい。また、軟質用と硬質用との中間の性能を持たせる目的で、軟質用ポリオール化合物と硬質用ポリオール化合物とを複数種併用しても良い。
前記ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、軟質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、復元性や耐衝撃性に優れる発泡体が得られることから2,000〜10,000の範囲であるものが好ましく、2,500〜5,000の範囲であることが好ましい。一方、硬質ポリウレタン発泡体用途に用いる場合には、耐熱性や機械強度に優れる発泡体が得られることから2,000以下であることが好ましく、300〜1,500の範囲であることが好ましい。また、軟質用と硬質用との中間の性能を持たせる目的で、軟質用ポリオール化合物と硬質用ポリオール化合物とを複数種併用しても良い。
また、本発明のポリウレタン樹脂用組成物は適宜必要に応じて、前記ポリオール化合物の末端水酸基の一部がアルキルエーテル化されたモノアルコール化合物を含有しても良い。
本発明の(I)成分として用いるポリイソシアネート化合物は、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;
1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の前記ジイソシアネート化合物のポリメリック体;
前記各種のジイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物;
前記各種のジイソシアネート化合物と、モノアルコールおよび/又はジオールとを反応させて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物;
分子構造中に尿素が2量化した構造を有するビウレット型ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
中でも、流動性及び成型性に優れることから前記各種のジイソシアネート化合物又はこれのポリメリック体が好ましく、更に反応性にも優れることから前記芳香族ジイソシアネート化合物又はこれのポリメリック体がより好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物が含有するリン原子含有難燃剤(II)は、下記構造式(1)
Figure 2014181280
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは水素原子又は下記構造式(x1)或いは(x2)
Figure 2014181280
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
で表される構造部位の何れかであり、nは0以上の整数である。]
で表されるリン原子含有化合物である。該リン原子含有化合物は、従来から知られている各種の難燃剤と比較して難燃効果が著しく高いため、少ない添加量でも十分に優れた難燃性を発現する。
ここで、前記構造式(1)中で表される化学構造のうち、Xが水素原子であるものは、具体的には、下記構造式(1−1)〜(1−4)の何れかで表されるものが挙げられる。
Figure 2014181280
前記構造式(1)中で表される化学構造のうち、Xが前記構造式(x1)で表される構造部位であるものは、具体的には下記構造式(1−5)〜(1−8)の何れかで表されるものが挙げられる。
Figure 2014181280
また、前記構造式(1)中で表される化学構造のうち、Xが前記構造式(x2)で表される構造部位であるものは、具体的には下記構造式(1−9)〜(1−12)の何れかで表されるものが挙げられる。
Figure 2014181280
本発明では、より高い難燃効果が得られることから前記構造式(1)中のXは前記構造式(x1)であることが好ましく、よって、前記構造式(1−5)〜(1−8)で表されるリン原子含有化合物が好ましい。
また、前記構造式(1)におけるR〜R及び前記構造式(x1)におけるR〜Rは、前記したとおり、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。ここで、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
中でも、難燃効果により優れることから前記構造式(1)におけるR〜R及び前記構造式(x1)におけるR〜Rが、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、これらすべての置換基が水素原子であることがより好ましい
本発明のリン原子含有難燃剤(II)は、前記構造式(1)で表されるリン原子含有化合物のうち一種類を単独で用いても良いし、式中の各構造部位やnの値が異なる複数種のリン原子含有化合物を含有しても良い。中でも、難燃性に優れる硬化物が得られることから、前記構造式(1)においてnの値が異なる複数種のリン原子含有化合物を含むことが好ましい。更に、より高い難燃性が発現することからリン原子含有難燃剤(II)中の前記構造式(1)においてnの値が1以上である成分の合計の含有率が、GPC測定におけるピーク面積比率で5〜90%の範囲であるリン原子含有オリゴマー組成物で得あることがより好ましく、nが1以上の成分の含有率が40〜75%となる範囲であることが特に好ましい。
ここで、本発明において前記構造式(1)におけるnが1以上の成分の含有率とは、下記の条件で測定されたGPCのチャートにおいて、36.0分未満のピーク面積の割合のことをいう。
<GPC測定条件>
4)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器 : RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件 : カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
前記リン原子含有難燃剤(II)のより好ましい組成は、具体的には、難燃性付与効果に優れることから、nが0の成分の含有率が95〜10%、nが1の成分の含有率が3〜50%、かつ、nが2以上の成分の含有率が2〜45%であることが好ましく、nが0の成分の含有率が60〜25%、nが1の成分の含有率が10〜45%、かつ、nが2以上の成分の含有率が10〜40%であることが更に好ましい。
また、前記リン原子含有難燃剤(II)中のリン原子含有率は、難燃効果が一層向上することから9〜12質量%の範囲であることが好ましい。かかるリン原子含有率は「JIS規格K0102 46」に準拠して測定した値である。
以上詳述したリン原子含有難燃剤(II)は、例えば、下記構造式(a1)又は(a2)
Figure 2014181280
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
の何れかで表されるリン原子含有化合物(A)と、下記構造式(b)
Figure 2014181280
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
で表されるモノヒドロキシベンジルアルデヒド化合物(B)との反応により得ることが出来る。
該反応は、具体的には、前記リン原子含有化合物(A)とモノヒドロキシベンズアルデヒド化合物(B)とを、両者のモル比[(A)/(B)]が0.01/1.0〜3/1.0となる割合で仕込み、酸触媒の存在下或いは無触媒下に、125〜150℃の温度条件で2〜5時間程度反応させ、次いで、155〜220℃の温度条件で4〜10時間程度反応させることが好ましい。この方法によれば、反応中間体の析出を良好に抑制でき、かつ、前記構造式(1)においてnの値が1以上であるオリゴマー成分が生成し易くなる。
ここで、リン原子含有化合物(A)を表す前記構造式(a1)又は(a2)中のR〜Rを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。中でも、より難燃効果に優れるリン原子含有化合物が得られることからR〜Rの全てが水素原子であるものが好ましく、前記構造式(a1)で表されるものがより好ましい。
他方、モノヒドロキシベンジルアルデヒド化合物(B)を表す前記構造式(b)中のRを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。これらのなかでも、前記リン原子含有化合物(A)との反応性及び難燃効果に優れることから、Rは水素原子であることが好ましい。
前記した通り、前記方法では触媒を用いても用いなくともよいが、目的物であるリン原子含有化合物を選択的に高収率で得られることから無触媒下に反応させることが好ましい。ここで、触媒を用いる場合に使用し得る触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。また、その使用量は仕込み原料の総重量に対して、0.1〜5.0質量%の範囲が挙げられる。
該反応は前記モノヒドロキシベンジルアルデヒド化合物(B)が液状であるため、これを基質兼有機溶媒として反応を行うことができるが、作業性等の向上という観点から他の有機溶媒を使用してもよい。ここで用いる有機溶媒としては、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒が挙げられ、具体的には、前記アルコール系有機溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、前記炭化水素系有機溶媒としてはトルエン、キシレン等が挙げられる。
反応終了後は減圧下で乾燥することにより、目的物であるリン原子含有難燃剤(II)を得ることができる。
前述の通り、本発明は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン樹脂用組成物において、前記リン原子含有難燃剤(II)をポリオール成分、又はポリイソシアネート成分のどちらかに混合したものであり、前記リン原子含有化合物はポリオール成分及びポリイソシアネート成分のどちらに添加しても良く、また、両方に添加しても良い。特に、ポリウレタン樹脂用組成物の経時安定性に優れることから、本発明のポリウレタン樹脂用組成物は、前記成分(I)がポリオール化合物であることが好ましく、即ち、ポリオール化合物(I)と、リン原子含有難燃剤(II)とを必須の成分として含有するものであることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物100質量部中の前記リン原子含有難燃剤(II)の含有量は、より高い難燃効果を奏することから0.5〜50質量部の範囲であることが好ましい。また、より詳細には、2液硬化型ポリウレタン樹脂用組成物として用いるポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及びその他添加剤を含むポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中の前記リン原子含有難燃剤(II)の含有量が0.5〜30質量部の範囲であることが好ましい。なお、本発明で用いる前記リン原子含有難燃剤(II)は難燃剤として非常に高い性能を有することから、ポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中における前記リン原子含有難燃剤(II)の含有量が20質量部以下の場合であっても十分に高い難燃性を発揮する。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物は、更に、その他のノンハロゲン系難燃剤や、硬化触媒、酸化防止剤、安定剤、光安定剤、相溶化剤、滑剤、充填材、接着助剤、防錆剤等の各種添加剤を含有していても良い。また、これをポリウレタン樹脂発泡体用として用いる場合には発泡剤を必須成分として含有し、必要に応じて整泡剤を添加しても良い。
前記ノンハロゲン系難燃剤について、本発明で難燃剤として用いる前記リン原子含有難燃剤(II)はそれ単独でも十分に高い難燃性を発現するものであるが、所望に応じて更に他の難燃剤を併用しても良い。この場合、全難燃剤成分の合計100質量部中の前記リン原子含有化合物の割合は、より難燃性に優れる硬化物が得られることから、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。
ここで用いるノンハロゲン系難燃剤は、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム等の金属水酸化物、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硼酸、硼酸亜鉛化合物等の硼素含有化合物、シリカ、石炭灰(フライアッシュ)、ゼオライト、ケイ酸塩、ポリオルガノシロキサン、シルセスキオキサン、シリコーン樹脂等の珪素含有化合物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、フェニルクレジルホスフェート、フェニルキシレニルホスフェート、クレジルキシレニルホスフェート等のリン酸エステル化合物、ビエスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシンハイドロキノン等で架橋された縮合リン酸エステル、トリアリールホスフィンやトリアルキルホスフィン等の三級ホスフィンやそれらの酸化物、硫化物、熱膨張性黒鉛、メラミン、メチロールメラミン、メラミン樹脂、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロン等のメラミン化合物等が挙げられる。
中でも、本発明が奏する高い難燃効果を損なわず、かつ、本発明のポリウレタン樹脂用組成物を発泡体用途に用いる場合に、添加による増粘や発泡の減少や発泡体における物性の低下を生じ難いことから、前記熱膨張性黒鉛とメラミン化合物とを併用することが好ましい。
前記熱膨張性黒鉛は、例えば、天然黒鉛を濃硫酸、硝酸、セレン酸等と、強酸化剤である濃硝酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩等で処理して得られるものが挙げられる。このようにして得られる熱膨張性黒鉛は鱗片上の層構造を有するものであり、加熱により該層構造が膨張して不燃の層を形成する。膨張黒鉛は、上述した炭化層の形成を促進すると同時に、難燃性樹脂組成物に耐火能力を付与する。
熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は130℃〜300℃の範囲であることが好ましく、より具体的には、170〜200℃の温度に加熱した際の嵩膨張率が2倍以上であり、かつ、膨張容積が10〜300mL/gの範囲であることが、難燃効果がより優れることから好ましい。また、熱膨張性黒鉛の粒径は30〜500μmの範囲であることが好ましく、高い難燃性が得られることから、粒径の異なる複数種の熱膨張性黒鉛を併用することがより好ましい。
前記メラミン化合物は、具体的には、前記したメラミン、メチロールメラミン、メラミン樹脂、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロン等が挙げられるが、より難燃効果に優れることから、メラミン、メチロールメラミン、メラミン樹脂が好ましく、メラミンがより好ましい。
前記熱膨張性黒鉛と前記メラミン化合物との使用量は、本発明が奏する効果を妨げず、より高い難燃性が発現することから、前記リン原子含有難燃剤(II)、前記熱膨張性黒鉛、及び前記メラミン化合物の合計の質量が、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中5〜50質量部の範囲となるように用いることが好ましい。前述の通り、本発明で用いる前記リン原子含有難燃剤(II)は難燃剤として非常に高い性能を有することから、ポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中におけるこれら難燃剤の合計の含有量が20質量部以下の場合であっても十分に高い難燃性を発揮する。
前記硬化触媒は、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノプロプル)ヘキサヒドロトリアジン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ピリジン等のアミン化合物;テトラエチルヒドロキシルアンモニウム等の4級アンモニウム塩;イミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド又はフェノキシド;テトラフェニル錫、トリブチルアンチモンオキサイド等の有機金属化合物;酢酸ナトリウム、オクチル酸スズ、オクチル酸カリウム、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチルチンジラウレート等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これら硬化触媒の使用量は、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中0.01〜5質量%の範囲であることが好ましい。
前記酸化防止剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス(メチレン)−3−(ドデシルチオプロピオネート)メタン等が挙げられる。
前記安定剤は、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤;ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤;エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物;ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物;ハイドロタルサイト類やゼオライト類等が挙げられる。
前記光安定剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
前記相溶化剤は、例えば、アクリルオルガノポリシロキサン共重合体、シリカとオルガノポリシロキサンの部分架橋物、シリコーンパウダー、無水マレイン化グラフト変性ポリオレフィン、カルボン酸化グラフト変性ポリオレフィン、ポリオレフィングラフト変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
前記接着助剤は、例えば、各種のアルコキシシラン等が挙げられる。
前記充填材は、例えば、ケイ酸、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、カオリンクレー、焼成クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、バライト等が挙げられる。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物を発泡体用に用いる場合には発泡剤を必須成分として含有する。当該発泡剤について、本発明のポリウレタン樹脂用組成物では、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の一部が空気中の水分と反応してウレア結合を形成する際に生じる炭酸ガスを発泡源としても良いし、別途発泡剤を添加しても良い。ここで用いる発泡剤は、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、水を単独で用いるか、又は、水とプロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素化合物とを併用して用いることが好ましい。これら発泡剤の使用量は発泡剤の種類により最適値が異なるが、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中0.1〜10質量部の範囲であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物を発泡体用に用いる場合、前記ポリオール化合物や発泡剤として用いる水が含有する活性水素のモル数と、前記ポリイソシアネート化合物が含有するイソシアネート基のモル数との比率は、硬化性が高く、靱性や強度等に優れる成形体が得られることから、活性水素のモル数に対し、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数が0.95〜3.00の割合であることが好ましい。即ち、イソシアネートインデックスは95〜300の範囲であることが好ましい
前記整泡剤は、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル化合物とのブロック共重合体等のシリコーン化合物等が挙げられ、一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。整泡剤の使用量は、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂の全原料成分の合計100質量部中0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物は、ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物の少なくとも一方を必須の成分とするものである。より具体的には、ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物のどちらか一方又は両方に、前記リン原子含有難燃剤(II)を必須とする難燃剤他、各種添加剤成分を混合してポリウレタン樹脂用のポリオール原料とポリイソシアネート原料とを調整し、成形体を製造する際に前記ポリオール原料とポリイソシアネート原料とを混合して用いる。
本発明のポリウレタン樹脂用組成物を発泡体用途に用いる場合、用いるポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物により硬質用、半硬質用、軟質用のいずれにも用いることが出来る。該ポリウレタン樹脂用組成物を用いて発泡体を製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば、羽根付き撹拌機等により混合されたのち、所望の形状に成形したり、所定の表面に塗布したり、吹付により塗工する方法が挙げられる。成形する場合には、例えば、容器に流し込んでシート状若しくはフィルム状に成形する方法や、ダイスを用いて押出注型して成形する方法が挙げられる。一方、表面塗布の場合には、例えば、漬け込み法、刷毛塗り法、ハンドロール法、スプレー法、ロールコーター法、フローコーター法等により所望の塗膜厚に塗布する方法が挙げられる。
このようにして得られる発泡体は、ポリウレタン発泡体が有する断熱性や弾性、機械的強度、遮音性等に加え、非常に高い難燃性を有することから、例えば、建築、冷蔵・冷凍設備、土木、船舶、車両、航空機等の用途における外張り断熱材、充填断熱材、天井断熱材、床下断熱材、壁断熱材、間仕切り断熱材、ドアー芯材、パネル材、断熱対火マット、耐火シート、クッション材、鉄骨耐火被覆、配管保温材、液密・気密シール材、寝具、精密機器等の包装材、インストルメントパネルやアームレスト等の船舶、車両、航空機内容用途など様々な用途に用いることが出来る。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、軟化点、リン含有量、GPC、粘度は以下の条件にて測定した。
軟化点測定法 : JIS K7234
リン含有量測定法 : JIS K0102−46に準拠
GPC :測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
前述した構造式(1)におけるnの値が1以上(以下、「n=1以上」と略す。)の成分比率は、GPCチャートの36.0分未満のピーク面積を基に算出した。
粘度 : E型回転粘度計(東機産業株式会社製「RE80U」)を使用し、25℃条件下で測定した。
合成例1
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを324.0質量部(1.5モル)、o−ヒドロキシベンズアルデヒド122質量部(1.0モル)を仕込み、40℃下、窒素を吹き込みながら撹拌した。140℃に加熱し4時間撹拌後、180℃に加熱し8時間撹拌した。その後、水を加熱減圧下で除去して下記構造式
Figure 2014181280

であらわされるリン原子含有オリゴマー組成物(1)を410重量部得た。得られたリン原子含有オリゴマー組成物(1)の水酸基当量は428グラム/当量、軟化点は140℃、リン原子含有量は10.5%であり、GPC測定から算出されるn=1以上の成分比率は46.7%であった。
実施例・比較例で用いた各種成分は以下の通りである。
ポリオール化合物(1)
グリセリンのプロピレンオキサイド付加物。水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量(Mn)3,000、粘度500mPa・s(25℃)
ポリオール化合物(2)
グリセリン、ポリプロピレングリコール、テレフタル酸、及びイソフタル酸から合成されるポリエステルポリエーテルポリオール。水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量(Mn)3,000、粘度15,000gPa・s(25℃)
ポリオール化合物(3)
ポリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、テレフタル酸、及びイソフタル酸から合成されるポリエステルポリエーテルポリオール。水酸基価200mgKOH/g、粘度3,500mPa・s(25℃)
ポリオール化合物(4)
エチレンジアミンにプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオール。水酸基価450mgKOH/g、粘度1,200mPa・s(25℃)
ポリオール化合物(5)
マンニッヒポリオール(旭硝子株式会社製「エクセノールFB800」)水酸基価305mgKOH/g、粘度1,200mPa・s(25℃)
ポリオール化合物(6)
ポリオキシアルキレンポリオール(三井化学株式会社製「アクトコールT880」)数平均分子量(Mn)220、水酸基価880mgKOH/g
ポリオール化合物(7)
ジエタノールアミン
ポリオール化合物(8)
ジエチレングリコール
モノアルコール化合物(1)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(ライオン株式会社製「レオソルブ703B」)水酸基価259mgKOH/g、粘度9mPa・s(25℃)
難燃剤(1)
合成例1で得たリン原子含有オリゴマー組成物(1)
難燃剤(2)
膨張黒鉛(三洋貿易株式会社製「SYZR502FP」
難燃剤(3)
メラミン樹脂粉末(三井化学社製)
難燃剤(4)
トリスモノクロロプロピルホスフェート
発泡剤(1)

発泡剤(2)
ペンタン
触媒(1)
トリエチレンジアミン
触媒(2)
ペンタメチルジエチレントリアミン
触媒(3)
N,N,N’−ジメチルアミノエチルエタノール
触媒(4)
N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノプロプル)ヘキサヒドロトリアジン
触媒(5)
オクチル酸カリウム
触媒(6)
オクチル酸スズ
整泡剤(1)
シリコーン系樹脂(信越化学株式会社「F701」)
整泡剤(2)
シリコーン系樹脂(信越化学株式会社製「F501」)
整泡剤(3)
シリコーン系樹脂(東レダウコーニング株式会社製「SH−193」)
ポリイソシアネート化合物(1)
トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製「T80」)
ポリイソシアネート化合物(2)
ジフェニルメタンジイソシアネートの一部ポリメリック体混合物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネート1130」)イソシアネート基含有率31.6質量%、粘度110mPa・s(25℃)
実施例1〜3、比較例1、2
下記表1に示す組成で配合し、ポリウレタン樹脂用組成物を得た。これをA液とする。得られたA液とポリイソシアネート化合物を含むB液とを混合撹拌し、ポリウレタン樹脂発泡体を得た。得られたポリウレタン樹脂発泡体につき、下記条件で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
発泡体密度の測定
得られた発泡体のコア部分から100mm×100mm×25mmの試験片を切り出し、質量とノギスで測定した寸法を元に発泡体のコア密度を求めた。同様の試験を3回繰り返し、3回の測定値の平均値にて評価した。
難燃性評価(1)
UL94試験法に準拠して難燃性の評価を行った。
難燃性評価(2)
得られた発泡体をバーナーの火元から20cmの距離にて20分間火炎放射し、燃焼の有無を評価した。
有炎燃焼の判定
○:まったく燃焼しないもの
△:一部燃焼するものの、難燃性を有するもの
×:激しく燃焼し、難燃性を有しないもの
難燃性評価(3)
得られた発泡体から幅290m×290mm×30mmの試験片を切り出し、45度メッケルバーナー法に基づき2分加熱し、試験片表面の難燃性評価をおこなった。
残炎時間:10秒以下であるものを○、10秒を超えるものを×とした。
残じん時間:30秒以下であるものを○、30秒を超えるものを×とした。
凝縮性排出物:凝縮性排出物が確認されなかったものを○、確認されたものを×とした。
Figure 2014181280
表1中の脚注
(1)イソシアネートインデックスは、ポリオール化合物と発泡剤(1)として用いた水との活性水素の合計モル数を(H)、ポリイソシアネート化合物が含有するイソシアネート基の合計モル数を(NCO)とした場合に、[(NCO)/(H)]×100で求められる値である。
(2)難燃剤含有量はA液とB液との合計質量に対する難燃剤の含有量(質量%)である。

Claims (6)

  1. ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物(I)と、リン原子含有難燃剤(II)とを必須の成分として含有し、前記リン原子含有難燃剤(II)が下記構造式(1)
    Figure 2014181280
    [式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは水素原子又は下記構造式(x1)或いは(x2)
    Figure 2014181280
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
    で表される構造部位の何れかであり、nは0以上の整数である。]
    で表されるリン原子含有化合物であることを特徴とするポリウレタン樹脂用組成物。
  2. 前記リン原子含有難燃剤(II)が、前記構造式(1)においてnの値が異なる複数種の化合物を含有し、前記構造式(1)においてnが1以上である成分の合計の含有率がGPC測定におけるピーク面積比率で5〜90%の範囲である請求項1記載のポリウレタン樹脂用組成物。
  3. 前記リン原子含有難燃剤(II)のリン原子含有率が9〜12質量%である請求項2記載のポリウレタン樹脂用組成物。
  4. 前記リン原子含有難燃剤(II)が、下記構造式(a1)又は(a2)
    Figure 2014181280
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
    の何れかで表されるリン原子含有化合物(A)と、下記構造式(b)
    Figure 2014181280
    (式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基の何れかを表す。)
    で表されるモノヒドロキシベンジルアルデヒド化合物(B)との反応生成物である請求項1〜3の何れか一つに記載のポリウレタン樹脂用組成物。
  5. ポリウレタン樹脂用組成物100質量部中における前記リン原子含有難燃剤(II)の含有量が0.5〜50質量部の範囲である請求項1〜4の何れか一つに記載のポリウレタン樹脂用組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか一つに記載のポリウレタン樹脂用組成物と、前記(I)成分のうち前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれるものの他の成分と、発泡剤とを混合し、発泡及び硬化させて得られるポリウレタン樹脂発泡体。
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