JP2014180234A - 急性心不全モデル、これを用いた急性心不全治療薬の評価方法、及び、急性心不全モデルの作製方法 - Google Patents

急性心不全モデル、これを用いた急性心不全治療薬の評価方法、及び、急性心不全モデルの作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】急性心不全の新規治療薬の評価に利用可能な小動物の急性心不全モデル、これを用いた急性心不全治療薬の評価方法、及び、急性心不全モデルの作製方法を提供する。
【解決手段】ウサギなどの小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することにより急性心不全モデルを作製する。輸液により体液量を増加させつつ、アドレナリンα1受容体刺激薬及びアンジオテンシンIIにより血圧を上昇させて、前負荷と後負荷を適度なバランスに調節して加え、小動物に肺水腫を伴う急性心不全を発症させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、実験動物であるウサギなどの小動物を利用可能である急性心不全モデル、これを用いた急性心不全治療薬の評価方法、及び、急性心不全モデルの作製方法に関する。
急性心不全は、放置した場合、生命が危険さらされることから、救命のため早期の治療が必要とされる疾患である。急性心不全の主な症状は呼吸困難であるが、この機序としては、心臓に対する前負荷と後負荷が増大することによって、心臓から血液が拍出されにくくなり、肺うっ血、肺水腫が発生するものと考えられている。急性心不全は、現行の治療薬により一定の治療効果が得られているものの、一時的に退院した後に、再び急性心不全の発症を繰り返すことで病態が進行していくため、医学的見地のみならず医療経済的にも大きな問題となっている。このように発症が繰り返される原因としては、急性心不全の発症時における肺水腫の改善が不十分である可能性や、神経体液性因子などの病態の増悪因子が関与する可能性などが考えられ、急性心不全に対する新しい治療薬の開発が望まれている。
新規薬剤の薬理作用及び薬物の新規薬理作用を評価する試験は、一般に、小動物及び大動物を用いて行われ、それぞれの目的となる疾患毎の動物モデルを作製する必要がある。これまでの急性心不全の試験では、冠動脈の結紮、大動脈の狭窄、大動脈弁の破壊若しくは心臓のペーシングなどの1以上の手術、又は、薬物の慢性的な投与を組み合わせることにより、動物に心不全を発症させる動物モデルが利用されてきた。しかし、これらのモデルは慢性心不全を特徴とするため、急性心不全の病態を必ずしも反映しているわけではないという問題があった。また、これらのモデル作製の手術には高度な手技を要するため、安定した試験を実施するには手技の習得と習熟に時間を要するという問題もあった。更に、心不全を発症するまでには数日から数ヶ月程度の長期の期間が必要であることから、容易には試験を行えず、新しい急性心不全治療薬の研究開発の障害となっていた。
例えば、非特許文献1には、イヌの冠動脈を結紮し、乳酸リンゲル液及びメトキサミンを持続的に投与することで作製した心不全モデルが報告されている。しかし、この心不全モデルでは、上記の問題に加え、イヌは入手や飼育管理のコストが高く、また、体重が重いためモデル作製に使用する薬剤及び評価に供する新規治療薬の候補化合物が大量に必要であるなどの課題がある。しかも、このモデル作製方法及び手技をそのまま小動物に適用しようとしても、心臓の大きさの相違や血管反応の種差により、手術による心臓障害の程度や前負荷、後負荷への応答が異なるため難しい。
また、特許文献1には、ラットに塩化カルシウムを含む5%ブドウ糖溶液及びノルエピネフリンを持続的に投与した心不全モデルが開示されている。しかし、このモデルでは、肺水腫や肺うっ血などの病態や、呼吸困難の症状などに対する検討は行われておらず、ヒトの急性心不全の病態を十分反映したモデルとはいえない。更に、このモデルは病態の作製と並行して治療薬を投与にすることによって、病態の発現、進行を抑制できるか否かを評価している。これにより治療薬の急性心不全に対する予防効果を検証することは可能であるが、予め完成した病態に対して、治療薬を追加することによる治療効果の判定が可能であるかは明らかではない。実際の急性心不全では、呼吸困難を訴えるレベルまで病態が進行した後に、医療機関を訪れて治療が開始されるものと考えられ、完成した病態に対する治療効果の検証が重要である。
従って、急性心不全の治療薬評価に適した動物モデル、中でも小動物の利用に適した急性心不全モデルは知られておらず、開発が望まれていた。
国際公開WO2005/104833号
日本薬理学雑誌、社団法人日本薬理学会、1995年、105巻(4号)、p.243−61.
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、急性心不全の新規治療薬の評価に利用可能な小動物の急性心不全モデル、これを用いた急性心不全治療薬の評価方法、及び、急性心不全モデルの作製方法を提供することを目的とする。
本発明の急性心不全モデルは、小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することにより得られたものである。
本発明の急性心不全治療薬の評価方法は、小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することにより得た急性心不全モデルに、治療薬を投与して左室拡張末期圧及び乾湿肺重量比を測定し、治療薬を投与していない急性心不全モデルの左室拡張末期圧及び乾湿肺重量比と比較するものである。
本発明の急性心不全モデルの作製方法は、小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与するものである。
本発明によれば、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与するようにしたので、輸液により体液量を増加させつつ、アドレナリンα1受容体刺激薬及びアンジオテンシンIIにより血圧を上昇させることができる。よって、前負荷と後負荷とを適度なバランスで調節して加えることができ、肺水種を伴う急性心不全を発症させることができる。よって、高度な手技を必要とする手術を行わなくても簡単に、かつ、数十分から数時間と短時間で急性心不全モデルを作製することができ、簡単かつ迅速に急性心不全治療薬の評価を行うことができる。
また、手術により急性心不全モデルを作製しないので、心臓や身体が小さく、手術などの実験操作が難しくてばらつきを生じやすい小動物を使用することができる。よって、急性心不全モデル用の動物の入手や取り扱いを容易とすることができると共に、飼育スペースも小さくすることができ、かつ、治療薬の投与量を少なくすることができる。
更に、輸液の種類や投与量、及び、アドレナリンα1受容体刺激薬とアンジオテンシンIIの投与量を調整することにより、使用する動物種や試験の目的、治療薬に合わせて、急性心不全の重篤度を調節することができる。
治療薬投与体群、治療薬非投与体群、及び、偽処置体群の各群における左心室拡張末期圧の時間変化を示した図である。 治療薬投与体群、治療薬非投与体群、及び、偽処置体群の各群における乾湿肺重量比を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本実施の形態に係る急性心不全モデルは、本実施の形態に係る急性心不全モデルの作製方法により得られたものであり、小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬(以下、α1刺激薬と言う)と、アンジオテンシンII(以下、AngIIと言う)とを投与することにより、肺水腫を伴う急性心不全の病態を生ぜしめたものである。具体的には、例えば、小動物に対し、輸液を持続的に静脈内投与すると共に、α1刺激薬及びAngIIを持続的に静脈内投与することにより得ることができる。これは、輸液の持続的投与により体液量を増加させつつ、これに並行してα1刺激薬及びAngIIを投与して小動物の血圧を上昇させることで、前負荷と後負荷を適度なバランスに調節して加え、小動物に肺水腫を伴う急性心不全を発症させることを可能としたものである。
小動物というのは、一般的に実験使用される動物の中で、体重が4kg以下の動物を意味している。小動物は、入手や取扱いが容易で、治療薬の投与量も少なく、必要な飼育スペースも小さいなど実験コストの面でも有利である。その一方で、心臓や身体のサイズが小さいことから、手術などの実験操作が難しくばらつきを生じやすい。このため、手術による方法では、病態が制御され、薬物の治療効果の評価に利用可能な急性心不全のモデルを作製することは困難であるが、本実施の形態によれば、急性心不全モデルに使用することが可能である。小動物としては、例えば、ウサギ、モルモット、ラット、又は、マウスが挙げられる。中でも、ラット又はウサギが好ましく、特にウサギが好ましい。小動物の中でも、多くの血行動態指標を比較的精度良く測定することができるからである。
輸液は、小動物に対し一般的に使用できるものであれば特に限らないが、例えば、生理食塩水、5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液、又は、酢酸リンゲル液が挙げられる。中でも
、大量に投与した場合にも生体内の電解質バランスが維持されることから、乳酸リンゲル液、又は、酢酸リンゲル液が好ましい。
また、輸液は、電解質及び糖質のうちの少なくとも1種を適宜含んでいてもよい。電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、若しくは、リンなどの無機成分の水溶性塩、例えば、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、又は、グリセロリン酸塩が挙げられる。糖質としては、例えば、ソルビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、マルトース、又は、デキストランが挙げられる。中でも、糖質を含むことが好ましく、ソルビトールを含んでいればより好ましい。電解質及び糖質を加え輸液の浸透圧比を高くすることにより、輸液による前負荷の効果を増加することができ、少ない輸液量でも十分な前負荷を得られるからである。特に糖質を添加した場合、α1刺激薬及びAngIIの投与による血圧上昇に影響しにくいことから、好ましい。糖質としてソルビトールを含む場合、小動物に肺水腫を伴う急性心不全の病態を発症させる目的で、α1刺激薬及びAngIIの投与による後負荷と合わせて、十分な前負荷を得やすい。市販品として入手しやすいことと合わせ、輸液としては、例えば、乳酸リンゲル液にソルビトールを加えたものが最も好ましい。
なお、糖質は、例えば、約25g/Lから75g/Lの範囲内、更には45g/Lから55g/Lの範囲内となるように配合することが好ましい。糖質の配合量が25g/Lより小さい場合、浸透圧比を高くして前負荷を増加する効果を十分に得ることができず、一方、75g/Lより大きい場合、前負荷が過剰となり症状が重篤になりすぎて動物が死亡したり、目的とする病態を得られない可能性があるからである。糖質を45g/Lから55g/Lの範囲内で配合とした場合、α1刺激薬及びAngIIの投与による後負荷とのバランスを調節しやすい。
α1刺激薬は、目的とする小動物において昇圧効果が得られれば特に限定されない。α1刺激薬としては、例えば、メトキサミン、ノルエピネフリン、又は、フェニレフリンが挙げられ、メトキサミンが特に好ましい。メトキサミンはアドレナリンα1受容体への選択性が高く、実験上不都合な副反応を生じにくいからである。
AngIIは、目的とする小動物において昇圧効果が得られれば特に限定されない。AngIIとしては、例えば、ヒトAngII、ラットAngII、又は、マウスAngIIが挙げられる。また、AngIIには、AngII受容体に対しアゴニスト作用を有するAngIIアナログも含む。
なお、血圧を上昇させる薬剤としてα1刺激薬とAngIIとを投与することにより、手術を伴わず、輸液による前負荷との組み合わせだけで急性心不全モデルを作製するのに十分な後負荷を得ることができる。一方のみを用いる場合、十分な血圧上昇を得るには過量の薬剤を投与する必要があり、オフターゲットの影響による不都合な副反応を生じやすい。生体内の2つの異なる血圧制御機構を介するα1刺激薬とAngIIとを組み合わせることで、副反応の影響が少ない薬剤量の範囲で十分な血圧上昇を得られるだけでなく、適切な血圧範囲に調整しやすい。さらに、臨床の心不全では、交感神経系とレニン-アンギオテンシン系が亢進していることが知られているため、より臨床を反映したモデルとなっている。
輸液の種類や投与量、並びに、α1刺激薬及びAngIIの投与量は、使用する動物種、試験の目的、被験薬物に合わせた急性心不全の重篤度に応じて調節することが好ましい。例えば、輸液の投与量としては、モデル作製直後のヘマトクリット値が25%から32%の範囲となるよう調節することが好ましい。また、α1刺激薬の投与量としては、投与後の収縮期血圧の上昇が10mgから50mgの範囲となるよう調節することが好ましい。更に、AngIIの投与量としては、α1刺激薬に追加して投与した場合に、投与後の収縮期血圧の上昇が10mgから40mgの範囲となるよう調節することが好ましい。
例えば、小動物としてウサギを用いる場合であれば、輸液を0.3mL/kg/分から0.8mL/kg/分で90分間から210分間、α1刺激薬を10μg/kg/分から30μg/kg/分で60分間から120分間、AngIIを0.01μg/kg/分から0.05μg/kg/分で40分間から90分間投与することが好ましい。また、輸液、α1刺激薬、及び、AngIIは、各薬剤の投与終了が同時となるよう投与するようにすれば、その後の試験を行いやすいので好ましい。
この急性心不全モデルは、急性心不全治療薬の評価に用いることができる。具体的には、例えば、小動物に対し、輸液と、α1刺激薬と、AngIIとを投与することにより得た急性心不全モデルに、輸液、α1刺激薬、若しくは、AngIIを投与しながら、又は、これらの投与を終了した後に、治療薬を投与することにより行う。
治療薬の急性心不全に対する治療効果は、急性心不全により上昇した左心室拡張末期圧(以下、LVEDPと言う)の低下や、試験終了後に摘出した肺の摘出直後の湿重量に対する乾燥後の重量の割合(以下、乾湿肺重量比と言う)の減少により、評価することができる。具体的には、例えば、急性心不全モデルに治療薬を投与した治療薬投与体のLVEDP及び乾湿肺重量比を測定すると共に、急性心不全モデルに治療薬を投与していない治療薬非投与体のLVEDP及び乾湿肺重量比を測定し、それらを比較する。また、小動物に、輸液、α1刺激薬、AngII、及び、治療薬を投与しないことを除き、他は治療薬投与体と同様の処置を行った偽処置体を作製し、偽処置体についても、LVEDP及び乾湿肺重量比を測定して参照することが好ましい。
このように本実施の形態によれば、輸液と、α1刺激薬と、AngIIとを投与するようにしたので、輸液により体液量を増加させつつ、α1刺激薬及びAngIIにより血圧を上昇させることができる。よって、前負荷と後負荷とを適度なバランスで調節して加えることができ、肺水種を伴う急性心不全を発症させることができる。よって、高度な手技を必要とする手術を行わなくても簡単に、かつ、数十分から数時間と短時間で急性心不全モデルを作製することができ、簡単かつ迅速に急性心不全治療薬の評価を行うことができる。
また、手術により急性心不全モデルを作製しないので、心臓や身体が小さく、手術などの実験操作が難しくてばらつきを生じやすい小動物を使用することができる。よって、急性心不全モデル用の動物の入手や取り扱いを容易とすることができると共に、飼育スペースも小さくすることができ、かつ、治療薬の投与量を少なくすることができる。
更に、輸液の種類や投与量、及び、α1刺激薬とAngIIの投与量を調整することにより、使用する動物種や試験の目的、治療薬に合わせて、急性心不全の重篤度を調節することができる。
(実施例)
本実施例においては、小動物として、2.5kgから3.5kgの日本白色種雄性ウサギを用いた。まず、ウサギに麻酔を行った。具体的には、ウサギの耳静脈内に麻酔薬であるペントバルビタール(30mg/kg)を投与した後、気管に人工呼吸用のカニューレを挿入し、人工呼吸器により換気量5mL/kgから9mL/kg、30回/分から50回/分にて呼吸管理を行った。人工呼吸器には吸入麻酔器を連結させ、吸入麻酔薬であるセボフルランを含む空気ガス(2.0%から2.5%)を換気させ吸入麻酔を行った。
次いで、麻酔したウサギの左右大腿静脈に投与用カニューレをそれぞれ挿入した。続いて、右大腿動脈には採血用カニューレを挿入し、各時点における動脈血中のヘマトクリット(以下、Hctと言う)を測定した。また、左大腿動脈には動脈血圧測定用カニューレを挿入し、最大値として収縮期血圧(以下、SBPと言う)を測定した。更に、左心室内圧測定用カテーテルを右頚動脈より挿入して左心室内に留置することで、左心室内圧及びLVEDPを測定した。各指標を増幅させた信号を測定用機器(PowerLab、ADInstruments社製)に入力して連続的に測定し、コンピューターに取り込ませて記録した。
血行動態指標の安定時間を設けた後、輸液、α1刺激薬、及び、AngIIを投与し、病態の作製を開始した。その際、病態を作製した後に治療薬を投与する治療薬投与体群を6体、病態を作製した後に治療薬を投与しない治療薬非投与体群を8体作製した。また、実際には病態を作製しない偽処置体群を2体から3体作製した。投与は、左大腿静脈より、輸液として糖質であるソルビトールを加えた乳酸リンゲル液(以下、ソルビトール加乳酸リンゲル液と言う)を0.5mL/kg/分で150分間、α1刺激薬としてメトキサミンを30μg/kg/分で90分間、AngIIとしてヒトAngIIを0.01μg/kg/分から0.05μg/kg/分で60分間実施した。
なお、ソルビトール加乳酸リンゲル液、メトキサミン、及び、ヒトAngII、各薬剤の投与終了が同時となるよう投与した。すなわち、ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始60分後からメトキサミンの投与を開始し、ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始90分後かつメトキサミンの投与開始30分後からヒトAngIIの投与を開始した。
各群における投与開始前のHctは32%から38%の範囲、SBPは124mmHgから127mmHgの範囲であった。ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始後は、ソルビトール加乳酸リンゲル液投与による前負荷の増大により、治療薬投与体群及び治療薬非投与体群では、Hctが29%から35%の範囲まで減少し、SBPは約5mmHgの微増していた。次いで、ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始90分後かつメトキサミンの投与開始30分後には、SBPが治療薬投与体群では156.8mmHg、治療薬非投与体群では154.8mmHgまで上昇した。続いて、ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始120分後、メトキサミンの投与開始60分後、かつ、ヒトAngIIの投与開始30分後には、SBPが治療薬投与体群では182.1mmHg、治療薬非投与体群では186.1mmHgまで上昇し、Hctは共に25%から32%の範囲まで減少していた。
これにより病態を作製したのち、治療薬投与体群では、ヒトAngIIの投与開始30分後から、治療薬であるニトロプルシドナトリウムを50μL/分の投与速度で30μg/kg/分となるように生理食塩水で溶解させ、30分間投与した。また、治療薬非投与体群では、ヒトAngIIの投与開始30分後から、治療薬の溶媒である生理食塩水を50μL/分で30分間投与した。
全ての実験終了後、各群について、ペントバルビタールによる過麻酔にて安楽死させ、開胸し、左右の全肺を採取して、乾湿重量比を測定した。乾湿重量比は採取直後の肺重量を70℃で48時間以上乾燥させた重量で除することにより算出した。得られた結果を図1、図2、及び、表1に示す。図1は各群におけるLVEDPの時間変化を表したものであり、図2は各群の乾湿肺重量比を表したものであり、表1は各群における実験終了時のHct、SBP、LVEDP、及び、乾湿肺重量比を表したものである。全ての結果は平均値を示した。
Figure 2014180234
実験終了時のLVEDPは、偽処置体群では1.3mmHg、治療薬非投与体群では26.1mmHgであった。一方で、治療薬投与体群では、ニトロプルシドナトリウムの投与開始から10分以内に速やかに8mmHgまで低下した後、安定して維持されており、実験終了時には10.4mmHgであった。実験終了直後の肺重量は、偽処置体群、治療薬非投与体群、治療薬投与体群でそれぞれ9.60g、10.37g、9.29gであった。乾燥後の重量は、偽処置体群、治療薬非投与体群、治療薬投与体群でそれぞれ2.02g、1.95g、1.84gであった。乾湿肺重量比について、偽処置体群、治療薬非投与体群、治療薬投与体群でそれぞれ4.76、5.33、5.06であった。
このように、本発明の急性心不全モデルである治療薬非投与体群では、偽処置体群に比べ、LVEDPの大幅な上昇が認められた。また、治療薬非投与体群では、心拍出量の低下も認められたことから、心機能が低下した急性心不全状態にあることが確認できた。加えて、治療薬非投与体群では、乾湿肺重量比が上昇していることから、肺水腫の発症を伴った急性心不全様の血行動態を達成していることも分かった。
更に、治療薬投与体群において、ニトロプルシドナトリウムを投与することによりLVEDP及び乾湿肺重量比が改善されたことから、急性心不全症状及び肺水腫が解除されたことが分かる。これにより、輸液、α1刺激薬、及び、AngIIを投与することにより得た急性心不全モデルによれば、急性心不全治療薬の効果を評価可能であることが明らかとなった。以上の結果より、本発明は、被験薬物の検査において作用効果の判定が十分可能であり、有用な急性心不全モデル及び急性心不全治療薬の評価方法であると言える。
(比較例)
上記実施例と同様に、小動物として2.5kgから3.5kgの日本白色種雄性ウサギを用い、ウサギに麻酔を行った。次いで、麻酔したウサギの左右大腿静脈に投与用カニューレをそれぞれ挿入した。続いて、左大腿動脈には動脈血圧測定用カニューレを挿入し、SBPを測定した。更に、左心室内圧測定用カテーテルを右頚動脈より挿入して左心室内に留置することで、左心室内圧及びLVEDPを測定した。データはペンレコーダーにより記録し、各指標はノギスを用いて計測した値から算出した。
血行動態指標の安定時間を設けた後、輸液及びα1刺激薬を投与し、病態の作製を開始した。投与は、左大腿静脈より、輸液としてソルビトール加乳酸リンゲル液を0.5mL/kg/分で120分間、α1刺激薬としてメトキサミンを17μg/kg/分で60分間実施した。その際、ソルビトール加乳酸リンゲル液の投与開始60分後からメトキサミンの投与を開始し、それらの投与終了が同時となるようにした。輸液の投与を開始してからのSBP及びLVEDPの時間変化を表2に示す。
Figure 2014180234
また、比較のために、上記実施例の治療薬非投与体群における輸液の投与を開始してからのSBPの平均値の時間変化を表3に示す。
Figure 2014180234
表2及び表3に示したように、上記実施例も比較例も共に、α1刺激薬を投与することにより、SBP及びLVEDPが同じように上昇したが、上記実施例では、AngIIを投与することによりSBP及びLVEDPが大幅に上昇したのに対して、AngIIを投与しない比較例では、わずかな上昇しか見られなかった。すなわち、α1刺激薬に加えてAngIIを投与するようにすれば、より高い効果を得られることが分かった。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施例では、投与する各薬剤の種類及び投与量を具体的に説明したが、上記実施の形態で説明した他の薬剤および投与量の範囲においても同様の効果を得ることができる。
本発明は、薬物が急性心不全の治療薬として十分な薬理作用を有するか否かを生体で検査することが容易となるため、新規有効成分の新たな急性心不全治療薬としての開発を助けることとなる。また、既存の動物モデル及び評価方法とは異なり、急性心不全様の血行動態増悪と肺水腫を同時に検査可能であるため、既知の医薬品を再評価することにより、新たな長所或いは欠点の発見に繋がる可能性がある。したがって、急性心不全の薬物治療に貢献できるものである。

Claims (4)

  1. 小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することにより得られたことを特徴とする急性心不全モデル。
  2. 小動物としてウサギを用いたことを特徴とする請求項1記載の急性心不全モデル。
  3. 小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することにより得た急性心不全モデルに、治療薬を投与して左室拡張末期圧及び乾湿肺重量比を測定し、治療薬を投与していない急性心不全モデルの左室拡張末期圧及び乾湿肺重量比と比較することを特徴とする急性心不全治療薬の評価方法。
  4. 小動物に対し、輸液と、アドレナリンα1受容体刺激薬と、アンジオテンシンIIとを投与することを特徴とする急性心不全モデルの作製方法。
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