JP2013255488A - 拡張期心不全非ヒトモデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

拡張期心不全非ヒトモデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であり、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる拡張期心不全モデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程を含み、前記工程における飲水が食塩水である拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法、前記製造方法により製造された拡張期心不全非ヒトモデル動物、非ヒト動物に、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と、被験物質を投与する工程とを含み、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程における飲水が食塩水である拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、拡張期心不全非ヒトモデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。
拡張期心不全とは、心臓左心室収縮能が保持されながらも機能不全に陥る心不全であり、心不全の患者の中に多数存在すると考えられる。拡張期心不全の患者の5年生存率は、30%程度と非常に悪い。このような状況において、拡張期心不全の有効な予防乃至治療方法は未だ確立していないという問題がある。
拡張期心不全の有効な予防乃至治療方法を確立するためには、拡張期心不全の過程を知ることが重要であり、そのために、拡張期心不全のモデル動物を用いることが考えられる。
前記拡張期心不全のモデル動物としては、例えば、ダール(Dahl)食塩感受性ラットを用いて作製された拡張期心不全のモデルラットが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。前記提案では、高血圧の遺伝的素因を有するラットに8%NaClを含有する高食塩食を7週齢から投与することにより、約19週齢で拡張期心不全が形成されることが記載されている。しかしながら、高食塩食の投与開始から拡張期心不全の形成までの期間が、約3ヶ月間という長期間であるという問題がある。
また、心不全を形成するモデル動物として、例えば、特定の遺伝子の機能が失われたノックアウト非ヒト動物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記提案では、IL27又はIL27Rの遺伝子の機能が失われたノックアウト非ヒト動物にβ1アドレナリン作動薬を投与することにより心不全を形成することができることが記載されている。しかしながら、心不全の形成までに長期間を必要とするという問題だけでなく、ノックアウト非ヒト動物の作製には、煩雑な作業が必要であるという問題や、費用面での問題がある。
したがって、現在までのところ、短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であり、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる拡張期心不全モデル動物は、未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
特開2011−92026号公報
Doi R et al., Development of different phenotypes of hypertensive heart failure:systolic versus diastolic failure in Dahl salt−sensitive rats., J Hypertens., 2000, 18(1), p.111−120
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であり、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる拡張期心不全モデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下のような知見を得た。即ち、非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与し、かつ、飲水を食塩水とすることにより、拡張期心不全が非常に短期間で形成されることを知見し、本発明の完成に至った。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程を含み、前記工程における飲水が食塩水であることを特徴とする拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法である。
<2> 拡張期心不全が形成されるまでの期間が、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与開始から1ヶ月間以内である前記<1>に記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法である。
<3> 拡張期心不全が形成されるまでの期間が、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与開始から2週間以内である前記<1>から<2>のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法である。
<4> 非ヒト動物が、非病態モデル動物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法である。
<5> 非ヒト動物がラットであり、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を、1分間当たり、前記ラットの体重1kg当たり200ngの量で14日間投与する前記<1>から<4>のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒト動物の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法により製造されたことを特徴とする拡張期心不全非ヒトモデル動物である。
<7> 非ヒト動物に、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と、被験物質を投与する工程とを含み、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程における飲水が食塩水であることを特徴とする拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であり、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる拡張期心不全モデル動物及びその製造方法、並びに、拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法を提供することができる。
図1は、試験例1の各群の収縮期血圧の測定結果を示すグラフである。 図2Aは、実施例1の収縮期血圧の測定結果を示すグラフである。 図2Bは、実施例1の心拍数の測定結果を示すグラフである。 図2Cは、実施例1の体重の測定結果を示すグラフである。 図3Aは、実施例1の左心室駆出力の測定結果を示すグラフである。 図3Bは、実施例1の左心室拡張末期容量指数の測定結果を示すグラフである。 図3Cは、実施例1の左心室肥大指数の測定結果を示すグラフである。 図3Dは、実施例1の相対的左心室壁厚の測定結果を示すグラフである。 図4Aは、実施例1の拡張早期僧帽弁輪速度の測定結果を示すグラフである。 図4Bは、実施例1の左心室流入血流速度(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’)の測定結果を示すグラフである。 図4Cは、実施例1の拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A)の測定結果を示すグラフである。 図4Dは、実施例1の拡張早期左心室流入血流速度の減速時間の測定結果を示すグラフである。 図5Aは、実施例1の左心室圧波形の測定結果を示すグラフである。 図5Bは、実施例1の左心室拡張期末期圧の測定結果を示すグラフである。 図5Cは、実施例1の左心室収縮期末期圧の測定結果を示すグラフである。 図6は、実施例1のラットの体重当たりの心重量及び肺重量を測定した結果を示すグラフである。 図7Aは、実施例1のE群のラットの心臓全体のシリウスレッド染色像である。 図7Bは、実施例1のE群のラットの心臓の心内膜に近い心筋の間質部分のシリウスレッド染色像である。 図7Cは、実施例1のD群のラットの心臓全体のシリウスレッド染色像である。 図7Dは、実施例1のD群のラットの心臓の心内膜に近い心筋の間質部分のシリウスレッド染色像である。 図8は、実施例1の血漿中のBNP濃度を測定した結果を示すグラフである。
(拡張期心不全非ヒトモデル動物)
本発明の拡張期心不全非ヒトモデル動物は、拡張期心不全を形成している非ヒトモデル動物であり、本発明の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法により製造することができる。
以下、本発明の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法の説明と併せて本発明の拡張期心不全非ヒトモデル動物を説明する。
(拡張期心不全非ヒト動物の製造方法)
本発明の拡張期心不全非ヒト動物の製造方法は、非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程(以下、「アンジオテンシンII投与工程」と称することがある。)を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<アンジオテンシンII投与工程>
前記アンジオテンシンII投与工程は、非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与し、拡張期心不全を形成する工程である。前記アンジオテンシンII投与工程では、拡張期心不全が形成される前に、慢性高血圧の症状が生じる。
−非ヒト動物−
前記非ヒト動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、サル等が挙げられる。これらの中でもラットが、マウスよりも高血圧病態に対して強く、また、マウスに対して10倍程度大きく観察しやすい点で、有利である。
前記非ヒト動物は、例えば、市販品を購入して使用することができる。
前記非ヒト動物は、非病態モデル動物であってもよいし、病態モデル動物であってもよいが、非病態モデル動物が、費用や簡便さの点で、好ましい。
前記病態モデル動物とは、遺伝子改変による病態モデル動物や、病態の遺伝素因を有するモデル動物をいう。前記病態の遺伝素因を有するモデル動物としては、例えば、高血圧の遺伝素因を有するダール(Dahl)食塩感受性ラット等が挙げられる。
前記非病態モデル動物としては、例えば、通常の実験モデル動物であるSD(Sprague−Dawley)ラット等が挙げられる。
−アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩−
前記アンジオテンシンIIは、血圧上昇、血管収縮等の生理活性を有するペプチドである。前記アンジオテンシンIIは、ペプチドそのものであってもよいし、薬理学的に許容し得る塩であってもよい。
前記アンジオテンシンIIは、前記非ヒト動物と同種由来のものであってもよいし、前記非ヒト動物と他種由来のものであってもよいが、前記非ヒト動物と同種由来のものが、前記非ヒト動物が本来有するものである点で、有利である。
前記薬理学的に許容し得る塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸塩等が挙げられる。
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩は、例えば、市販品を購入して使用することができる。
−投与−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩は、単独で投与してもよいし、他の成分と共に投与してもよい。
前記他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−投与経路−−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与経路としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非経口投与、経口投与、局所投与等が挙げられる。
前記非経口投与としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮内投与、経粘膜投与、経直腸投与等が挙げられる。
前記皮下投与の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができるが、浸透圧ポンプが、決められた流量で持続的に注入することができる点で、好ましい。
前記浸透圧ポンプの留置位置としては、特に制限はなく、投与経路に応じて適宜選択することができ、例えば、背部が挙げられる。
前記浸透圧ポンプとしては、例えば、Alzet model 2002(Durect Corporation社製)を用いることができる。
−−投与量−−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与量としては、特に制限はなく、投与対象の非ヒト動物に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記非ヒト動物がラットの場合には、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を、1分間当たり、前記ラットの体重1kg当たり200ngの量で14日間投与することが好ましい。前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与量が多いと、急性心不全や急性腎不全が生じることがあり、投与量が少ないと、十分な高血圧が得られないことがある。
−−投与間隔−−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、持続的に投与する方法、間隔を空けて投与する方法が挙げられる。これらの中でも、持続的に投与する方法が、安定した高血圧状態を得ることができる点で、好ましい。
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を持続的に投与する方法としては、例えば、皮下に浸透圧ポンプを埋め込む方法が挙げられる。前記浸透圧ポンプを用いる場合、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5μL/時間(前記浸透圧ポンプの容量は200μL)とすることができる。
一方、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容しうる塩を間隔を空けて投与する場合の投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−投与開始時期−−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与開始時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−投与期間−−
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与期間としては、特に制限はなく、非ヒト動物に拡張期心不全が形成されるまでの期間に応じて適宜選択することができる。
−飲水−
前記アンジオテンシンII投与工程における飲水は、食塩水である。食塩水を用いることにより、前記非ヒト動物に慢性高血圧の症状が生じる確率を高めることができ、拡張期心不全非ヒトモデル動物が生じる確率も高めることができる。
前記食塩水の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5%〜1%の塩化ナトリウムを含む食塩水であることが好ましく、0.8%〜1%の塩化ナトリウムを含む食塩水であることが更に好ましい(例えば、一般に塩化ナトリウムを約0.9%含有する食塩水(生理食塩水)は前記食塩水に含まれる)。なお、塩化ナトリウム含有量が多い食塩水を用いた場合は、血圧が高くなりすぎるおそれがあり、好ましくない。
前記飲水の投与経路、投与量、投与間隔、投与開始時期、及び投与期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自由摂取させる方法が挙げられる。
−拡張期心不全が形成されるまでの期間−
前記非ヒト動物に拡張期心不全が形成されるまでの期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1ヶ月間以内が好ましく、3週間以内がより好ましく、2週間以内が特に好ましい。前記期間が1ヶ月を超えると、高血圧負荷が長期間となり、心臓以外の病態が生じることがあり、該病態が心不全と関連する可能性がある。
−拡張期心不全の確認−
前記アンジオテンシンII投与工程により、非ヒト動物に拡張期心不全が形成されたことを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、心臓超音波検査による確認方法、血行動態による確認方法、組織学的研究による確認方法が挙げられる。
前記心臓超音波検査による確認方法としては、例えば、リモデリングの指標として左心室拡張末期容量指数(LVEDVI)、左心室肥大の指標として左心室肥大指数(LVMI)、相対的左心室壁厚(RWT)を測定する方法が挙げられる。この場合、通常の非ヒト動物と比較して、LVEDVIが低下していたり、LVMIが増加していたり、RWTが増加したりしていた場合には、拡張期心不全が形成されたと判断することができる。
また、例えば、心臓超音波検査において、組織ドップラー法を用いて拡張早期僧帽弁輪速度(e’)を測定する方法、ドップラー法を用いて左心室流入血流速度(E)を測定し、前記拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’)を算出する方法、ドップラー法を用いて拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A)を測定する方法、ドップラー法を用いて拡張早期左心室流入血流速度の減速時間(DT)を測定する方法が挙げられる。この場合、通常の非ヒト動物と比較して、e’が低下していたり、E/e’が上昇していたり、E/Aが低下していたり、DTが上昇したりしていた場合には、拡張期心不全が形成されたと判断することができる。
前記心臓超音波検査による確認方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HD11XE with 12MHz transducer(Philips社製)等が挙げられる。
前記血行動態による確認方法としては、例えば、観血的データにより、左心室拡張期末期圧(LVEDP)を測定する方法が挙げられる。この場合、通常の非ヒト動物と比較して、LVEDPが上昇していた場合には、拡張期心不全が形成されたと判断することができる。
前記観血的データの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、頚動脈からカテーテルを左心室内に挿入し、左心室圧波形記録を取る方法が挙げられる。
前記左心室圧波形記録を取る装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ML866 Power Lab(ADInstruments社製)等が挙げられる。
前記組織学的研究による確認方法としては、例えば、シリウスレッドを用いてフォルマリン固定した心臓を染色する方法が挙げられる。この場合、通常の非ヒト動物の心臓と比較して強く染色された場合には、拡張期心不全が形成されたと判断することができる。
前記シリウスレッドを用いて染色するための手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−その他の飼育環境−
前記アンジオテンシンII投与工程における、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する以外の非ヒト動物の飼育環境としては、非ヒト動物が拡張期心不全を形成する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、非ヒト動物がラットの場合には、室温(20℃付近)で飼育し、餌は自由給餌とすることが挙げられる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血圧測定工程等が挙げられる。
前記血圧測定工程は、前記非ヒト動物の血圧を測定する工程であり、高血圧か否かを診断することにより、拡張期心不全が形成される時期を予測できる場合がある。
前記非ヒト動物の血圧の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非観血的にtail cuff法で測定する方法が挙げられる。
前記その他の工程は、前記アンジオテンシンII投与工程と同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
<用途>
前記拡張期心不全非ヒトモデル動物は、短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であるので、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる。前記拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究には、拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニングや、薬の適切な投与時期の研究も含まれる。
(拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法)
本発明の拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法は、非ヒト動物に、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と、被験物質を投与する工程(以下、「被験物質投与工程」と称することがある。)とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<非ヒト動物>
前記非ヒト動物は、上述した拡張期心不全非ヒト動物の製造方法における非ヒト動物と同様の動物を用いることができる。
<工程の順序>
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と、前記被験物質投与工程とは、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
例えば、拡張期心不全の予防活性を有する物質のスクリーニングを行う場合には、前記被験物質投与工程を、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程の前乃至前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と共に行うことができる。
また、例えば、拡張期心不全の症状を改善する活性を有する物質のスクリーニングを行う場合には、前記被験物質投与工程を、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程の後に行うことができる。
<アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程>
前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程は、前記非ヒト動物に、通常、拡張期心不全が形成される程度にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程である。
前記スクリーニング方法における前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程は、前記拡張期心不全非ヒト動物の製造方法における前記アンジオテンシンII投与工程と同様に行うことができる。
<被験物質投与工程>
前記被験物質投与工程は、非ヒト動物に被験物質を投与する工程である。
−被験物質−
前記被験物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化合物、ペプチド、タンパク質、細胞抽出物、細胞培養上清、植物抽出物、微生物産生物等が挙げられる。
−投与−
前記被験物質の投与経路、投与量、投与間隔、投与開始時期、及び投与期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、投与対象の非ヒト動物の種類、前記被験物質の種類等に応じて適宜選択することができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被験物質の投与により拡張期心不全が予防されたか否かを評価する工程(以下、「予防評価工程」と称することがある。)、前記被験物質の投与により拡張期心不全の症状が改善されたか否かを評価する工程(以下、「改善評価工程」と称することがある。)等が挙げられる。
−予防評価工程−
前記予防評価工程は、前記被験物質の投与により拡張期心不全が予防されたか否かを評価する工程である。
前記予防評価工程において、前記被験物質が、前記拡張期心不全を予防したか否かを評価する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程は同様に行い、前記被験物質を投与しなかった場合(対照)と比較して、前記被験物質を投与した場合に、前記非ヒト動物に拡張期心不全が形成されないか、拡張期心不全の形成が遅れたときに、前記被験物質は、前記拡張期心不全を予防する活性を有すると評価することができる。
−改善評価工程−
前記改善評価工程は、前記被験物質の投与により拡張期心不全の症状が改善されたか否かを評価する工程である。
前記改善評価工程において、前記被験物質が、前記拡張期心不全の症状を改善したか否かを評価する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程を行うことにより拡張期心不全が形成された拡張期心不全非ヒト動物に、前記被験物質を投与することにより、前記拡張期心不全非ヒト動物が示す拡張期心不全の症状の程度が低減(緩和)されたときに、前記被験物質は、拡張期心不全の症状を改善する活性を有すると評価することができる。
以上により、前記スクリーニング方法を行うことができる。前記スクリーニング方法によれば、高い精度で、かつ、効率的に、拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質をスクリーニングすることができる。
以下、試験例及び実施例を挙げて、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(試験例1:高血圧の誘導)
試験例1では、非ヒト動物としてラットを用い、以下の各群のラットを14日間飼育し、収縮期高血圧の推移を調べ、効率良く高血圧を誘導することができる方法を試験した。
・ A群 : アンジオテンシンIIを投与し、飲水を生理食塩水とした群。
・ B群 : アンジオテンシンIIを投与し、飲水を水とした群。
・ C群 : アンジオテンシンIIを投与せず、飲水を生理食塩水とした群。
<非ヒト動物>
試験例1では、非ヒト動物として、雄性Sprague−Dawley(SD)ラットを用いた。
・ A群 : 7週齢、オス、体重220g、n=11
・ B群 : 7週齢、オス、体重220g、n=11
・ C群 : 7週齢、オス、体重220g、n=12
<アンジオテンシンIIの投与>
前記A群及びB群のSDラットへのアンジオテンシンIIの投与は、以下のようにして行った。まず、水に溶解させたアンジオテンシンII(Sigma−Aldrich社製)を浸透圧ポンプ(Alzet model 2002、Durect Corporation社製;2週間持続的にポンピングするタイプ)に注入した。次いで、イソフルレン吸入麻酔下で前記SDラットの背部を約1cm切開し、該切開した箇所を通じて皮下へ前記浸透圧ポンプを留置する手術を行った。そして、前記留置手術を行った日を0日目とし、14日目まで連続して、1分間当たり、アンジオテンシンIIを前記SDラットの体重1kg当たり200ng(200ng/kg/分)投与した。
なお、前記C群のSDラットについては、アンジオテンシンIIを投与せず、また、浸透圧ポンプの留置も行わなかった。
<飼育条件>
試験例1における前記A群からC群のSDラットの飼育条件は、以下の通りである。
・ 飼料 : EF(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由摂取させた(A群からC群)。
・ 床敷 : αドライを使用した(A群からC群)。
・ 飲水 : 生理食塩水(塩化ナトリウムを0.9%含有する食塩水)を自動給水ノズルにより自由摂取させた(A群及びC群)。
水を自動給水ノズルにより自由摂取させた(B群)。
・ ケージ : プラスチック製、外寸:縦345mm、横403mm、高さ177mm(A群からC群)。
・ 収容匹数 : 3匹/ケージ(A群からC群)。
・ 温度 : 21℃±1℃乃至2℃、湿度:40℃〜60℃(A群からC群)。
・ 換気 : 14回/日(A群からC群)。
・ 照明時間 : 7時〜19時(A群からC群)。
<収縮期血圧の測定>
試験例1では、0日目、3日目、7日目、及び14日目にtail cuff法により各SDラットの収縮期血圧を測定した。
結果を図1に示す。図1中、「■」は、A群(アンジオテンシンIIを投与し、飲水を生理食塩水とした群)の結果を示し、「▲」は、B群(アンジオテンシンIIを投与し、飲水を水とした群)の結果を示し、「●」は、C群(アンジオテンシンIIを投与せず、飲水を生理食塩水とした群)の結果を示す。
図1より、収縮期血圧が、A群では、3日目に177mmHg、7日目に198mmHg、14日目に234mmHgとなり、B群では、3日目に142mmHg、7日目に162mmHg、14日目に182mmHgとなり、C群では、3日目に116mmHg、7日目に118mmHg、14日目に116mmHgとなっていた。
図1に示す結果から、生理食塩水のみ(C群)では血圧の変化が認められず、アンジオテンシンIIのみ(B群)では血圧の値が低かったのに対し、アンジオテンシンIIを投与し、飲水を生理食塩水としたA群では、有意(P<0.05)に高血圧を誘導できることがわかった。また、B群では、高血圧となるSDラットの歩留まり(高血圧を誘導できる率)も低かったのに対し、A群では3日目から、80%以上のSDラットの高血圧を誘導することができた。以上から、アンジオテンシンIIを投与し、飲水を生理食塩水とすることで、効率良く高血圧を誘導することができることがわかった。
(実施例1:拡張期心不全モデルラットの製造)
実施例1では、非ヒト動物としてラットを用い、以下の各群のラットを14日間飼育した。前記実施例1では、後述するように、ラットの収縮期血圧、心拍数、及び体重をアンジオテンシンIIの投与開始から0日目、3日目、7日目及び14日目に測定した。また、14日目には、心臓超音波検査、観血的な血行動態の測定、血液採取、組織摘出、心重量及び肺重量の測定、並びに臓器のフォルマリン固定を行った。そして、組織像の作製及び血漿中のBNP濃度の測定を行った。これらにより、拡張期心不全モデルラットを製造することができることを確認した。
・ D群 : アンジオテンシンIIを投与し、飲水を生理食塩水とした群(以下、「Ang II群」と称することがある。)。
・ E群 : アンジオテンシンIIを投与せず、飲水を生理食塩水とした群(以下、「Sham群」と称することがある。)。
<アンジオテンシンII投与工程>
−非ヒト動物−
実施例1では、非ヒト動物として、雄性Sprague−Dawley(SD)ラットを用いた。
・ D群 : 7週齢、オス、体重220g、n=11
・ E群 : 7週齢、オス、体重220g、n=12
−アンジオテンシンIIの投与−
前記D群(Ang II群)のSDラットへのアンジオテンシンIIの投与は、以下のようにして行った。まず、水に溶解させたアンジオテンシンII(Sigma−Aldrich社製)を浸透圧ポンプ(Alzet model 2002、Durect Corporation社製;2週間持続的にポンピングするタイプ)に注入した。次いで、イソフルレン吸入麻酔下で前記SDラットの背部を約1cm切開し、該切開した箇所を通じて皮下へ前記浸透圧ポンプを留置する手術を行った。そして、前記留置手術を行った日を0日目とし、14日目まで連続して、1分間当たり、アンジオテンシンIIを前記SDラットの体重1kg当たり200ng(200ng/kg/分)投与した。
なお、前記E群(Sham群)のSDラットについては、アンジオテンシンIIを投与せず、また、浸透圧ポンプの留置も行わなかった。
<飼育条件>
試験例1における前記D群及びE群のSDラットの飼育条件は、以下の通りである。
・ 飼料 : EF(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由摂取させた(D群及びE群)。
・ 床敷 : αドライを使用した(D群及びE群)。
・ 飲水 : 生理食塩水(塩化ナトリウムを0.9%含有する食塩水)を自動給水ノズルにより自由摂取させた(D群及びE群)。
・ ケージ : プラスチック製、外寸:縦345mm、横403mm、高さ177mm(D群及びE群)。
・ 収容匹数 : 3匹/ケージ(D群及びE群)。
・ 温度 : 21℃±1℃乃至2℃、湿度:40℃〜60℃(D群及びE群)。
・ 換気 : 14回/日(D群及びE群)
・ 照明時間 : 7時〜19時(D群及びE群)。
−収縮期血圧、心拍数、及び体重の測定−
実施例1では、0日目、3日目、7日目、及び14日目にtail cuff法により各SDラットの収縮期血圧及び心拍数を測定し、また、各SDラットの体重を測定した。
結果を図2A(収縮期血圧)、図2B(心拍数)、及び図2C(体重)に示す。前記図2Aから図2C中、「●」は、D群(Ang II群)の結果を示し、「○」は、E群(Sham群)の結果を示す。
図2Aより、D群のSDラットの収縮期血圧は、約3日目よりE群のSDラットに比べて有意(P<0.01)に上昇していることがわかり、また、実験終了時(14日目)には、約220mmHgとなっていた。一方、図2B及び図2Cより、心拍数及び体重については、両群間に有意差は認められなかった。
なお、収縮期血圧は、D群では、3日目に177mmHg、7日目に198mmHg、14日目に234mmHgとなり、E群では、3日目に116mmHg、7日目に118mmHg、14日目に116mmHgとなっていた。
心拍数は、D群では、3日目に340回/分間、7日目に320回/分間、14日目に330回/分間となり、E群では、3日目に345回/分間、7日目に330回/分間、14日目に335回/分間となっていた。
体重は、D群では、3日目に242g、7日目に270g、14日目に290gとなり、E群では、3日目に250g、7日目に278g、14日目に310gとなっていた。
−心臓超音波検査1−
実施例1では、14日目にイソフルレン吸入麻酔下にて、HD11XE with 12MHz transducer(Philips社製)を用いて、非浸襲的に心臓超音波検査を行い、以下の項目を測定した。
・ 左心室駆出力(LVEF) : 収縮能の指標
・ 左心室拡張末期容量指数(LVEDVI) : リモデリングの指標
・ 左心室肥大指数(LVMI) : 左心室肥大の指標
・ 相対的左心室壁厚(RWT) : 左心室肥大の指標
結果を図3A(左心室駆出力)、図3B(左心室拡張末期容量指数)、図3C(左心室肥大指数)、及び図3D(相対的左心室壁厚)に示す。前記図3Aから図3D中、左から順に、E群(Sham群)、D群(Ang II群)の結果を示す。
図3Aより、左心室駆出力(LVEF)は、両群間で有意な差が認められなかった。一方、図3Bより、左心室拡張末期容量指数(LVEDVI)は、D群において有意(P<0.05)な低下が認められ、また、図3C及び図3Dより、左心室肥大指数(LVMI)及び相対的左心室壁厚(RWT)は、D群において有意(P<0.05)な増加が認められた。これらの結果から、D群のSDラットの心臓は、収縮能の低下を来さずに肥大したことが示された。
なお、左心室駆出力は、E群では、70%、D群では、66%であり、左心室拡張末期容量指数は、E群では、1.72、D群では、1.05であり、左心室肥大指数は、E群では、1.76、D群では、3.37であり、相対的左心室壁厚は、E群では、0.24、D群では、0.58であった。
−心臓超音波検査2−
また、14日目にイソフルレン吸入麻酔下にて、HD11XE with 12MHz transducer(Philips社製)を用いて、非浸襲的に心臓超音波検査を行い、以下の項目を測定した。なお、以下の各項目は、いずれも左心室拡張能を示す指標である。
・ 拡張早期僧帽弁輪速度(e’) : 組織ドップラー法により測定。
・ 左心室流入血流速度(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’) : 左心室流入血流速度(E)は、ドップラー法により測定。
・ 拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A) : いずれもドップラー法により測定。
・ 拡張早期左心室流入血流速度の減速時間(DT) : ドップラー法により測定。
結果を図4A(拡張早期僧帽弁輪速度(e’))、図4B(左心室流入血流速度(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’))、図4C(拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A))、及び図4D(拡張早期左心室流入血流速度の減速時間(DT))に示す。前記図4Aから図4D中、左から順に、E群(Sham群)、D群(Ang II群)の結果を示す。
図4Aから図4Dより、D群は、E群と比べて、拡張早期僧帽弁輪速度(e’)及び拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A)では有意(P<0.05)な低下が認められ、左心室流入血流速度(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’)及び拡張早期左心室流入血流速度の減速時間(DT)では有意(P<0.05)な上昇が認められた。これらの結果から、D群のSDラットの心臓は、左心室拡張の障害を伴った心肥大を形成していたことが示された。
なお、拡張早期僧帽弁輪速度は、E群では、5.4m/sec、D群では、3.1m/secであり、左心室流入血流速度(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e’)との比(E/e’)は、E群では、18.0、D群では、23.2であり、拡張早期左心室流入血流速度と心房収縮左心室流入血流速度(A)との比(E/A)は、E群では、1.4、D群では、1.1であり、拡張早期左心室流入血流速度の減速時間(DT)は、E群では、38msec、D群では、72msecであった。
−観血的な血行動態の測定−
実施例1では、14日目に前記心臓超音波検査1及び2を行った後、吸入麻酔下にて、カテーテルを頚動脈から左心室内に挿入し、ML866 Power Lab(ADInstruments社製)を用いて、左心室圧波形記録を取り、左心室拡張期末期圧(LVEDP)及び左心室収縮期末期圧(LVESP)を測定した。
結果を図5A(左心室圧波形)、図5B(左心室拡張期末期圧)、及び図5C(左心室収縮期末期圧)に示す。前記図5Aから図5C中、左から順に、E群(Sham群)、D群(Ang II群)の結果を示す。
図5A及び図5Bより、D群のSDラットの左心室拡張期末期圧(LVEDP)は、E群のSDラットの左心室拡張期末期圧(LVEDP)と比べて、有意(P<0.01)な上昇が認められた。これらの結果から、観血的データにおいても、D群のSDラットの心臓は、左心室拡張能障害が生じていることが確認された。
なお、左心室拡張期末期圧は、E群では、4mmHg、D群では、13mmHgであり、左心室収縮期末期圧は、E群では、94mmHg、D群では、202mmHgであった。
−血液採取、組織摘出、心重量及び肺重量の測定、及び臓器のフォルマリン固定−
実施例1では、前記観血的な血行動態の測定を行った後、過量麻酔にて無痛状態で血液を採取し、次いで組織を摘出し、屠殺した。その後、直ちに心臓及び肺の重量を測定した。そして、臓器をフォルマリン固定した。
SDラットの体重当たりの、心重量及び肺重量の測定結果を図6に示す。前記図6中、左から順に、E群(Sham群)のSDラットの体重当たりの心重量、D群(Ang II群)の体重当たりの心重量、E群のSDラットの体重当たりの肺重量、D群の体重当たりの肺重量の結果を示す。
図6より、体重当たりの心重量、及び肺重量は、いずれもD群において有意(P<0.05)な増加が認められた。体重当たりの肺重量がD群において有意に増加していたことから、左心室機能障害が生じていることが示された。
なお、E群のSDラットの体重当たりの心重量は、3.1mg/gであり、D群の体重当たりの心重量は、4.7mg/gであり、E群のSDラットの体重当たりの肺重量は、3.6mg/gであり、D群の体重当たりの肺重量は、4.9mg/gであった。
−組織像の作製−
実施例1では、前記フォルマリン固定した心臓のシリウスレッド染色(コラーゲンを染色するための染色方法)を行った。前記シリウスレッドは、Polysciences Inc社製のものを用いた。
結果を図7Aから図7Dに示す。図7Aは、E群(Sham群)のSDラットの心臓全体の染色像を示し、図7Bは、E群のSDラットの心臓の心内膜に近い心筋の間質部分の染色像を示し、図7Cは、D群(Ang II群)のSDラットの心臓全体の染色像を示し、図7Dは、D群のSDラットの心臓の心内膜に近い心筋の間質部分の染色像を示す。
図7Dより、D群のSDラットでは、圧の影響を受け易い心内膜に近い心筋の間質で明らかに強いコラーゲン染色が確認された。この結果から、D群のSDラットに左心室拡張能障害が生じていることが確認された。
−血漿中のBNP濃度の測定−
実施例1では、前記採取した血液を用い、心不全の指標の1つである血漿中のBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide)濃度をELISAキット(ELISA BNP−32 kit、Phoenix Pharmaceuticals製)により測定した。
結果を図8に示す。前記図8中、左から順に、E群(Sham群)、D群(Ang II群)の結果を示す。
図8より、D群において有意(P<0.01)な上昇が認められた。この結果から、D群のSDラットでは、左心室機能障害が生じていることが示された。
なお、血漿中のBNP濃度は、E群が1.3ng/mLであり、D群が3.1ng/mLであった。
以上より、ラットにアンジオテンシンIIを投与し、かつ、飲水を食塩水とすることにより、高血圧の症状を示し、心肥大を形成するとともに左心室拡張障害に起因する左心室機能障害に陥ることが確認され、拡張期心不全非ヒトモデル動物を製造することができることが示された。
本発明の拡張期心不全非ヒトモデル動物は、短期間で作製することができ、また、費用が安く、作製作業が容易であるので、拡張期心不全の発症メカニズム乃至発症後の経過や、予防乃至治療法の研究に好適に利用できる。

Claims (6)

  1. 非ヒト動物にアンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程を含み、前記工程における飲水が食塩水であることを特徴とする拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法。
  2. 拡張期心不全が形成されるまでの期間が、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与開始から1ヶ月間以内である請求項1に記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法。
  3. 拡張期心不全が形成されるまでの期間が、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩の投与開始から2週間以内である請求項1から2のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法。
  4. 非ヒト動物が、非病態モデル動物である請求項1から3のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の拡張期心不全非ヒトモデル動物の製造方法により製造されたことを特徴とする拡張期心不全非ヒトモデル動物。
  6. 非ヒト動物に、アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程と、被験物質を投与する工程とを含み、前記アンジオテンシンII又はその薬理学的に許容し得る塩を投与する工程における飲水が食塩水であることを特徴とする拡張期心不全の予防乃至症状改善活性を有する物質のスクリーニング方法。
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