以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一の構成要素については同一の符号を付す。
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る印刷装置1の概略構成を示す垂直断面図である。本実施形態に係る印刷装置1は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の画像を互いに重ね合わせてフルカラーの画像を用紙の紙面に形成するカラープリンタである。
図1において、印刷装置1は、光走査装置118、感光体ドラム110a,110b,110c,110d、クリーニングユニット111a,111b,111c,111d、帯電装置112a,112b,112c,112d、現像ローラ113a,113b,113c,113d、トナーカートリッジ114a,114b,114c,114d、転写ベルト104、転写ローラ108、定着装置109、給紙コロ106、レジストローラ対107、排紙ローラ115、給紙トレイ105、排紙トレイ117、通信制御装置101、表面測定装置10、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置102を備えて構成される。なお、図1において、印刷装置1の筐体以外の上記各部のハッチングは省略されている。
図1の通信制御装置101は、印刷装置1と、ネットワークを介して通信制御装置101の端子101aに接続されたパーソナルコンピュータ等の上位装置との間の双方向通信を制御する。
プリンタ制御装置102は、CPU、当該CPUによって解読可能なコードで記述されたプログラム及び当該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路などを備えて構成される。ROMには、表面測定装置10からの出力信号に基づいてトナーの定着温度を決定するためのデータが格納されている。プリンタ制御装置102は、上位装置から受信した要求信号に基づいて、印刷装置1の各部を制御するとともに画像信号を光走査装置118に送信する。
各感光体ドラム110a〜110dの表面には感光層が形成されている。各感光体ドラム110a〜110dは、印刷装置1に設けられた回転機構(図示せず)によって図1に示される矢印の方向に回転される。当該回転に伴い、帯電装置112a〜112dはそれぞれ、感光体ドラム110a〜110dの表面を均一に帯電させる。
光走査装置118は、プリンタ制御装置102からの画像信号に基づいて変調されたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の像に対応する光束を、感光体ドラム110a〜110dの表面にそれぞれ照射して、感光体ドラム110a〜110dの表面における光が照射された部分に帯電した電荷を消失させ、各感光体ドラム110a〜110dの表面に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の画像にそれぞれ対応する潜像を形成させる。
トナーカートリッジ114a〜114dにはそれぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナーが格納されている。現像ローラ113a〜113dはそれぞれ、トナーカートリッジ114a〜114dに格納されているトナーを感光体ドラム110a〜110dの表面に付着させることによって、感光体ドラム110a〜110dの表面に形成された各潜像をトナー像に顕像化させる。顕像化された各色のトナー像は、感光体ドラム110a〜110dの回転に伴って転写ベルト104へそれぞれ移動する。
転写ベルト104は感光体ドラム110a〜110dの回転に伴って回転し、各感光体ドラム110a〜110dの表面に形成されたトナー像は転写ベルト104の表面に転写される。その結果、転写ベルト104の表面には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナー像が互いに重ね合わされて、フルカラーのトナー像が形成される。転写ベルト104の表面に形成されたフルカラーのトナー像は、転写ベルト104の回転に伴って転写ローラ108に搬送される。
給紙トレイ105には複数の用紙が積層されて格納されている。給紙コロ106は、給紙トレイ105の近傍に配置され、積層された複数の用紙の最も上の用紙を1枚ずつレジストローラ対107に搬送する。レジストローラ対107は、転写ベルト104と転写ローラ108との間隙に向けて用紙を送り出す。これにより、転写ベルト104の表面に形成されたフルカラーのトナー像が用紙の紙面に転写される。
本実施形態に係る表面測定装置10は、給紙トレイ105を含めた紙の搬送経路上に配置される。図1において、給紙トレイ105の最も上の用紙の上側に、当該最も上の用紙に近接するように表面測定装置10が配置される場合を示す。表面測定装置10は、平行光を出力して用紙の表面で反射させ、反射された反射光の光強度を測定することによって用紙の表面の状態を測定する。表面測定装置10は、測定された光強度を示す出力信号をプリンタ制御装置102に出力する。
プリンタ制御装置102は、表面測定装置10からの出力信号に基づいて、当該用紙に最適なトナー像の定着温度を決定する。トナー像の定着温度の決定は、プリンタ制御装置102が、ROMに格納されている光強度を示す表面測定装置10からの出力信号に基づいてトナーの定着温度を決定するためのデータを参照することによって実行される。プリンタ制御装置102は、決定された所定の定着温度でトナー像を用紙に定着させるための制御信号を定着装置109に送信する。
定着装置109は、プリンタ制御装置102からの制御信号に基づいて、プリンタ制御装置102により決定された定着温度及び所定の圧力を用紙に加えることによって、フルカラーのトナー像を紙面に定着させる。排紙ローラ115は、フルカラーのトナー像が定着した状態の用紙を排紙トレイ117に搬送し、当該用紙を排紙トレイ117上に順次積層させる。
クリーニングユニット111a〜111dはそれぞれ、感光体ドラム110a〜110dの表面の残留トナーを除去する。各感光体ドラム110a〜110dの表面において残留トナーが除去された部分は、感光体ドラム110a〜110dの回転によって再び帯電装置112a〜112dに対向する位置に戻る。
なお、図1の印刷装置1はカラープリンタであるが、モノクロプリンタ、複写機等であってもよい。
図2は、図1の表面測定装置10に設けられた主要な構成要素の垂直断面図である。本実施形態に係る表面測定装置10は、用紙からの反射光を偏向することによって、搬送中の用紙20の紙面のシフトに起因する反射光のシフトの幅を縮小させる光学偏向素子16を備えること特徴とする。
図2において、表面測定装置10は、光源13と、コリメート光学系15と、光学偏向素子16と、光検出器17とを備えて構成される。
図2の光源13は光源光を出射し、コリメート光学系15は当該光源光を平行光に変換する変換手段である。コリメート光学系15からの平行光は、印刷媒体かつ被測定物体である用紙20の紙面に入射光として入射して正反射する。正反射された正反射光は光学偏向素子16へ進行する。
光学偏向素子16は、空気に対する所定の屈折率及び所定の全反射の臨界角γを有する、例えば透明なガラス製または樹脂製のプリズムなどの光学材料で構成されている。光学偏向素子16は、正反射光を偏向することによって、当該正反射光を光検出器17に入射させる。
光学偏向素子16の表面は、好ましくは光の反射を抑制するために無反射コーティングされる。なお、光学偏向素子16の表面は必ずしも空気に接する必要はなく、他の物質が光学偏向素子16の表面に接しても良い。この場合、光学偏向素子16の表面において光の所望の屈折作用が得られるように、光学偏向素子16及び当該他の物質で構成される光学材料はそれぞれ互いに異なる屈折率を有するように選択される。
光検出器17は、光学偏向素子16からの出力光の光強度、すなわち用紙の紙面からの正反射光の光強度を検出する。検出された正反射光の強度を示す出力信号は、プリンタ制御装置102に出力される。
図3(a)は、図1の表面測定装置10の構成を示す表面測定装置10の垂直断面図であり、図3(b)は図3(a)の光学偏向素子16による光の偏向を説明するための垂直断面図である。図4は、図3(a)の表面測定装置10のI−I’線についての断面図である。
本実施形態に係る表面測定装置10は、基板11と、筐体12と、光源13を制御する光源制御回路14と、信号取得回路18とをさらに備えて構成される。なお、図3(a)、図7、図9、図10、図11、及び図12などの図面において、光源13、コリメート光学系15、及び光検出器17のハッチングは省略されている。表面測定装置10による測定対象の用紙20の紙面20aは、搬送による紙面20aのシフトが無視された理想的な状態において、基準面Sに位置する。
図3(a)及び図4において、筐体12は、遮光性の材料から構成され、筐体12の紙面20aに対向する側の底面12aにおいて開口部19a,19bをそれぞれ有する空洞121,122を形成する。これら開口部19a,19bは、筐体12の底面12aにおいて互いに連結して1つの開口19を形成する。空洞121,122は上方及び側方から筐体12によって囲まれ、かつ、開口部19a,19bは用紙20に対向するために、空洞121,122は外部の光学的な環境から隔離され、従って、空洞121,122における外乱光が抑制される。
図3(a)の基板11は筐体12の底面12aの反対側の上面に固定され、光源制御回路14及び信号取得回路18が基板11に配置される。光源制御回路14は、光源13が光源光を出射するように制御する。
図3(a)の光源13は空洞121の最奥部に設けられ、光源制御回路14による制御に基づいて光源光を出射する。コリメート光学系15は開口15a及びレンズ15bを備え、空洞121内において光源光の光路上に設けられ、光源光を平行光に変換する。当該平行光は、空洞121の開口部19aを通過して、図3(a)に示される入射光Aとして所定の入射角αで紙面20a上の位置Pに入射して正反射する。ここで、入射角αは、入射光Aの進行方向と紙面20aの法方向との間の角度である。入射光Aは、言い換えると紙面20aに対して角度θ=90−αで紙面20aに入射する。位置Pからの正反射光Bは、紙面20a上の位置Pから反射角αで進行して、光学偏向素子16へ進行する。ここで、反射角αは、正反射光Bの進行方向と紙面20aの法方向との間の角度である。入射光A及び正反射光Bは表面測定装置10の図3(a)の垂直断面に沿って進行し、用紙20は給紙コロ106によって図3(a)における右方向へ搬送される。光学偏向素子16は、開口部19b内に設けられる。
光学偏向素子16は、空気に対する所定の屈折率及び所定の全反射の臨界角γを有する。光学偏向素子16は、正反射光Bが入射する平坦な底面である入射面16aと、光学偏向素子16によって偏向された出力光Cが出力される平坦な上面である出力面16bとを有する。光学偏向素子16は、入射面16aが用紙20の紙面20aと平行であるように配置されている。光学偏向素子16の出力面16bは、入射面16aに対して所定の傾斜角φだけ傾斜する。
光学偏向素子16の出力面16bの傾斜角φは、出力光Cの出力面16bからの出射角δが正反射光Bの入射面16aへの入射各αよりも大きくように、すなわち関係式α<δ<90が成り立つように選択されている。具体的には、正反射光Bが入射角αで入射面16aに入射することによって生じた屈折光Baは、屈折角β1で入射面16aから光学偏向素子16内を進行して、光学偏向素子16の出力面16aに入射角β2=β1+φで入射する。そこで、上記傾斜角φは0<φ<γ−β1を満たすように選択される。その結果、関係式β1<β2<γが成り立ち、この関係式はスネルの法則により上記関係式α<δ<90を導く。すなわち、光学偏向素子16は、出力面16bに対する出力光Cの出射角δを、光学素子16の入射面16aに対する正反射光Bの入射角αよりも浅くするように偏向する。
本発明者は、紙面20aへの入射光Aの散乱特性の実測評価を行った結果、上記角度θが5度から15度の範囲内にある場合に、正反射光Bの光強度と紙面20aの平滑度とが互いに高い相関を有することを発見した。このため、本実施形態において、紙面20aに対する入射光Aの上記角度θは所定の小さい角度(以下、「小角」という)であって、例えば5度から15度の間の角度に設定される。すなわち、入射光Aの紙面20aへの入射角α=90−θは、75度から85度の間の角度に設定される。このように角度θ及び入射角αを設定することによって、角度θが15度よりも大きく設定された場合と比較すると、用紙20の内部における入射光Aの散乱がより抑制されて、正反射光Bの測定感度の低下が防止される。例えば、光学偏向素子16は、出射角δが89度以上90度未満となるように、例えば傾斜角φが約1度であるように構成される。この例では、光検出器17へ向かって進行する出力光Cの進行方向は、光学偏向素子16の出力面16bにほぼ接する。
図3(a)の検出器17は受光部17aを備え、出力光Cが受光部17aに入射する位置に配置される。光検出器17は、受光部17aに入射した出力光Cの光強度、すなわち正反射光Bの光強度を検出する。光検出器17は出力光Cの検出信号を出力して、当該検出信号は信号取得回路18へ送信される。信号取得回路18は、光検出器17からの検出信号に基づいて、出力光Cの光強度、すなわち正反射光Bの光強度を取得する。このようにして表面測定装置10は、正反射光Bの光強度を測定する。光検出器17及び信号取得回路18は、正反射光Bの光強度を検出する光検出手段である。
図3(a)を参照しながら、以上のように構成された表面測定装置10の動作について、以下説明する。
光源制御回路14による制御に基づいて光源13から出射された光源光は、コリメート光学系15によって平行光に変換される。当該平行光は筐体12の開口部19aを通過して、入射光Aとして入射角αで用紙20の紙面20aの位置Pに入射して正反射する。正反射された正反射光Bは位置Pから光学偏向素子16へ進行して、光学偏向素子16の入射面16aへ入射角αで入射する。正反射光Bは光学偏向素子16の偏向作用によって偏向されて、偏向された出力光Cが出射角δで出力面16bから光検出器17へ進行する。光検出器17は、受光部17aの当該出力光Cの入射によって出力光Cの光強度を検出する。光検出器17は出力光Cの検出信号を信号取得回路18に出力する。信号取得回路18は、光検出器17からの検出信号に基づいて、出力光Cの光強度、すなわち正反射光Bの光強度を取得する。表面測定装置10は、測定した正反射光Bの光強度を示す出力信号をプリンタ制御装置102に出力する。
図5は、図3(a)の紙面20a上に形成される入射光Aのビームスポットの幅wを説明するための用紙20の断面図である。図5において、入射光A及び正反射光Bの光軸はそれぞれ一点鎖線によって表され、入射光A及び正反射光Bの光束の輪郭はそれぞれ、各光軸に平行な2つの破線によって表される。入射光Aの紙面20aへの入射によって、紙面20aの位置Pを中心とするビームスポットが形成される。当該ビームスポットは、用紙20aの進行方向に沿って幅wを有する。
図5で説明したように、紙面20aが基準面Sに位置する理想的な状態において、入射光Aは紙面20a上の位置Pに入射する。しかしながら、実際には、図5と異なり、印刷装置1内では用紙20を高速で搬送する必要があるために、搬送中の用紙20の紙面20aがシフトして、紙面20aと表面測定装置10との間の距離が一定に保たれないことがある。この場合、以下説明するように、図5の位置Pとは異なる位置を中心とするビームスポットが形成される。
図6は、図3(a)の紙面20aの位置のシフトに伴うビームスポットの位置P1,P2への変位と、紙面20a上の位置P1,P2からの正反射光B1,B2を説明するための用紙20の断面図である。なお、図6において、紙面20aが面S1に位置するときの用紙20が示され、紙面20aが面S2に位置するときの用紙20の図示は省略されている。
図6において、面S1は紙面20aが表面測定装置10から最も離れた場合の紙面20aの位置を表し、この場合、入射光Aは紙面20a上の位置P1で正反射して、正反射された正反射光B1は反射角αを有する。面S2は紙面20aが表面測定装置10に最も近づいた場合の紙面20aの位置を表し、この場合、入射光Aは紙面20a上の位置P2で正反射して、正反射されて正反射光B2は反射角αを有する。紙面20aの位置が高さhを有する面S1と面S2との間で変位する場合、入射光Aの紙面20aへの照射位置は、紙面20aの位置P1と位置P2との間で変位する。
例えば、入射光Aの紙面20aに対する角度θが上記小角に設定される場合には、正反射光B1及びB2のシフトの幅d1は高さhの約2倍である。例えば、入射光Aの紙面20aに対する角度θが10度(入射角α=80度)であり、かつ、面S1,S2の間の高さhが1mmであるとき、入射光Aの紙面20aへの照射位置の変位幅vは例えば約5.7mmであり、正反射光B1及びB2のシフトの幅d1は例えば約1.97mmである。
図7は、図3(a)の正反射光B及び図6の正反射光B1,B2のそれぞれの光学偏向素子16による偏向を説明するための表面測定装置10の垂直断面図である。図8は、図3(a)の正反射光Bと、図6の正反射光B1,B2とのそれぞれの光学偏向素子16による偏向を説明するための光学偏向素子16の垂直断面図である。
図7及び図8において、光学偏向素子16は、正反射光B1,B2のそれぞれを、互いに幅d2だけ離れた出力光C1,C2に偏向する。正反射光B1の屈折光B1aは光学偏向素子16内を進行し、図3(b)の屈折光Baと同様に、入射面16aにおいて屈折角β1を有し、かつ、出力面16bにおいて入射角β2を有する。また、正反射光B2の屈折光B2aも光学偏向素子16内を進行し、入射面16aにおいて屈折角β1を有し、かつ、出力面16bにおいて入射角β2を有する。従って、出力光C1,C2のそれぞれは、図3(a)の出力光Cと同様に光学偏向素子16の出力面16bで出射角δを有する。すなわち、正反射光B,B1,B2の入射位置にかかわらず、出力光C,C1,C2は互いに同一の方向に進行して、光検出器17の受光部17aに入射する。紙面20aが面S1と面S2の間のいかなる位置に位置する場合においても、この場合に出力面16bから光検出器17へ向かって進行する出力光の光路は、図7に示す幅d2を有する出力光C1,C2の光路の間に位置する。
本実施形態の構成を有する光学偏向素子16によれば、正反射光B,B1,B2のシフトの幅d1と出力光C,C1,C2のシフトの幅d2とは、関係式d2<d1の関係を有する。実際、比率d2/d1は(cosδ/cosα)×(cosβ1/cosβ2)と表され、傾斜角φが屈折角β1及び入射角β2に比較して小さいことを考慮すると、比率d2/d1はcosδ/cosαに近似的に等しい。従って、関係式α<δ<90はd2/d1≒cosδ/cosα<1を導き、すなわち関係式d2<d1が得られる。さらに、出射角δが90度に近いほど、言い換えると出力光C,C1,及びC2の進行方向が光学偏向素子16の出力面16bに沿う方向に近づくほど、幅d2は幅d1と比較してより小さくなる。つまり、幅d2が受光部17aのサイズ以下になるように光学偏向素子16の出力面16bの傾斜角φを選択可能である。
好ましくは、出力光C,C1,C2は、85度以上90度未満の出射角δを有して出力面16bから出力されるように、出力面16bの傾斜角φが選択される。この場合、正反射光Bの入射面16aへの入射角αが小角に設定されると、α<δであるために幅d2は幅d1より小さいという効果を有する。より好ましくは、出力光C,C1,C2は、88度以上90度未満の出射角δを有して出力面16bから出力されるように出力面16bの傾斜角φが選択される。この場合、出力光C,C1,C2の幅d2はさらに縮小され、より確実に出力光C,C1,C2が受光部17aに入射可能である。
本実施形態の一実施例として、空気に対して屈折率1.5及び全反射の臨界角41.8度を有するガラス製のプリズムが光学偏向素子16として用いられ、入射光Aの紙面20aへの入射角αは80度(角度θ=10度)に設定され、かつ、受光部17aのサイズが0.5mmである光検出器17が用いられる。正反射光B,B1,B2の紙面20aに沿った方向に関するシフトの幅2×v(図7参照)が約30mmである場合、出力光C,C1,C2のシフトの幅d2を受光部17aのサイズの0.5mm以下にするためには、傾斜角φが約1度である出力面16bを有する光学偏向素子16が用いられる。この構成において、出力光Cの出力面16bからの出射角δはおよそ89度以上90度未満である。
以上のように構成された本実施形態に係る図3(a)の表面測定装置10によれば、平行光を用紙20の紙面20aで正反射させ、反射された正反射光B,B1,B2を光学偏向素子16を介して通過させた後、当該正反射光B,B1,B2の光強度を検出する光検出器17を備える。ここで、当該光強度に基づいて用紙20の紙面20aの状態を測定する表面測定装置10において、光学偏向素子16は、所定の屈折率を有し、正反射光B,B1,B2を偏向することにより、当該光学偏向素子16から出力される出力光C,C1,C2が光検出器17に入射するように、出力光C,C1,C2を出力する。具体的には、光学偏向素子16は、出力面16bにおける出力光C,C1,C2の出射角δが、入射面16aにおける正反射光B,B1,B2の入射角αよりも大きくなるように反射光B,B1,B2を偏向する。このように偏向された後の出力光C,C1,C2が出力面16bから出力されることによって、正反射光B,B1,B2の入射面16aへの入射位置にかかわらず、出力光C,C1,C2のシフトの幅d2は、正反射光B,B1,B2のシフトの幅d1よりも小さく、受光部17aのサイズ未満に設定される。よって、正反射光B,B1,B2の入射面16aへの入射位置にかかわらず、用紙20の紙面20aからの正反射光B,B1,B2のシフトの幅d1を出力光C,C1,C2のシフトの幅d2に縮小でき、従来技術と比較して小型化が可能な表面測定装置10及び当該表面測定装置10を備えた印刷装置1を実現できる。表面測定装置10を小型化できることによって、表面測定装置10の印刷装置1への設置の自由度が向上する。なお、上記の「入射位置にかかわらず」は、理想的には、入射位置にかかわらず、偏向する偏向素子を利用してもよいが、所定の位置の範囲内に限定して偏向できる偏向素子を利用してもよい。
なお、被測定物体は、用紙に限らず例えば樹脂製、木製等の各種の印刷媒体であってもよく、あるいは、表面に印刷媒体が形成された板、立体構造物などでもよい。
実施形態2.
図9は、本発明の実施形態2に係る表面測定装置10Aの光学偏向素子16Aの構成を示す垂直断面図である。本実施形態に係る表面測定装置10Aは、実施形態1に係る図3(a)の表面測定装置10と比較して、光学偏向素子16に代えて、出力光C,C1,C2が光検出器17に集光されるように、出力面16Abから素子外側に向かう方向で凸面である出力面16Abを有する光学偏向素子16Aを備えたことが異なる。以下、相違点について詳細説明する。
図9において、入射面16aに対する出力面16Abの傾斜角は光検出器17から遠いほど大きく、光検出器17に近いほど小さい。従って、本実施形態に係る光学偏向素子16Aは、いわゆる出力面16Abの凸レンズにより、出力光C,C1,及びC2を集光する作用を有する。正反射光B,B1,B2にそれぞれ対応する各屈折光Ba,B1a、B2aの出力面16Abでの入射角β2,β21,β22は、入射面16aでの屈折角β1よりも大きく、全反射の臨界角γよりも小さい。このため、関係式α<β21<β2<β22<γが成り立つ。この構成のために、出力光C,C1,C2がそれぞれ出力される各位置における出力面16Abの各傾斜角φ0,φ1,φ2は、関係式φ1<φ0<φ2が成り立つ。
それ故、図9の光検出器17の受光部17aは、光学偏向素子16Aの凸面である出力面16Abによる集光作用によって、出力光C,C1,C2が実質的に集光される位置の近傍に配置される。この場合、受光部17aの近傍における出力光C,C1,C2のシフトの幅d2aは実質的にゼロである。
以上のように構成された実施形態2に係る表面測定装置10Aによれば、出力光C,C1,C2が光検出器17に集光されるように、出力面16Abから素子外側に向かう方向で凸面である出力面16Abを有する光学偏向素子16Aを備えたので、上記実施形態1と比較して、出力光C,C1,C2がより確実に光検出器17の受光部17aに入射して、出力光C,C1,C2の検出感度が向上する。また、出力光C,C1,及びC2の光路が出力面16Ab側の近傍に位置することによる射影効果、すなわち光スポットの縮小効果とが得られる。さらに、紙面20aの位置の変動に対するロバスト性が向上する。
実施形態3.
図10は、本発明の実施形態3に係る表面測定装置10Bの構成を示す垂直断面図である。
本実施形態に係る図10の表面測定装置10Bは、上記実施形態1に係る図3(a)の表面測定装置10と比較して、光学偏向素子16に代えて光学偏向素子16Bを備えた点が異なる。光学偏向素子16Bは、コリメート光学系15からの平行光A1を偏向させた後に用紙20に出力する平板部161を追加部分としてさらに備える。当該平板部161は上記実施形態1に係る光学偏向素子16と同じ光学材料で構成され、上記実施形態1に係る図1(b)の光学偏向素子16の端部16cに一体的に延在するように構成されている。平板部161は開口部19a内に設けられる。従って、光学偏向素子16Bは開口19の全体に設けられ、光学偏向素子16Bは、空洞121,122を表面測定装置10Bの外気から遮断する。平板部161の底面である平行光の出力面161bは正反射光B,B1,B2の入力面16aと面一であり、紙面20aに平行である。コリメート光学系15を通過した後の平行光A1は平板部161の出力面である入射面161aに入射角αで入射し、平板部161の内部を通過して出射角αで出力面161bから出力されて、入射光Aとして紙面20aに入射する。紙面20aが基準面S,面S1,及び面S2に位置するそれぞれの場合において、入射光Aは、各場合に対応して紙面20a上の位置P,P1,及びP2に入射する。
光学偏向素子16Bは、上記実施の形態1に係る図3(a)の光学偏向素子16と同様に、位置P,P1,P2からの正反射光B,B1,B2を偏向することによって、正反射光B,B1,B2の入射面16aへの入射位置にかかわらず、光学偏向素子16Bの出力面16Bbからの出力光C,C1,C2を光検出器17に入射させる。
以上のように構成された表面測定装置10Bによれば、光学偏向素子16Bがさらに、上記所定の屈折率を有し、平行光A1を偏向させた後に用紙20に出力する追加部分である平板部161を備える。これにより、上記実施形態1と同様の効果が得られるのみならず、光学偏向素子16Bが空洞121,122を表面測定装置10Bの外気から遮断することによって、表面測定装置10の外部の紙粉などの汚物が空洞121,122内に侵入することが防止される。
また、実施形態1では図3(a)の光学偏向素子16が端部16cを有することによって、ビーム幅を有する入射光にケラレが発生する恐れがあるが、本実施形態では、光学偏向素子16Bはそのような端部を有さないためにケラレの発生が抑制される。なお、本実施形態は上記実施形態2にも適用可能であり、この場合、本実施形態に係る平板部161と上記実施形態2に係る図9の光学偏向素子16Aとが接続されて一体的に形成される。
実施形態4.
図11は、本発明の実施形態4に係る表面測定装置10Cの構成を示す垂直断面図である。
本実施形態に係る図11の表面測定装置10Cは、上記実施形態1に係る図3(a)の表面測定装置10と比較して、以下の点が異なる。
(1)筐体12が、当該基板11の周囲を固定するように構成された筐体12Aに置き換えられたこと。
(2)光源13が基板11に設けられたこと。
(3)光学偏向素子16が、コリメート光学系15からの平行光A2を偏向させた後に用紙20に出力する追加部分である偏向部162を有する光学偏向素子16Cに置き換えられたこと。
(4)光検出器17が、基板11上に配置されたこと。
(5)光学偏向素子16Cの出力面16Cbに近接して配置され、光学偏向素子16Cの出力面16Cbからの出力光C,C1,C2を光検出器17へ反射するミラー171をさらに備えたこと。
図11において、基板11が筐体12Aに固定された状態において、光源13及び光検出器17はそれぞれ、紙面20a側の基板11の面に配置される。光源13は紙面20aへ向けて当該紙面20aに直交する方向に光源光を出射する。光源13からの光源光はコリメート光学系15によって平行光A2に変換され、紙面20aに直交する方向に進行する。光学偏向素子16Cは上記実施形態1に係る図3(a)の光学偏向素子16と同一の光学材料で構成されている。偏向部162は、平行光A2の光路上に設けられ、上面である平行光A2の入射面162aと、側面162bと、底面である入射光Aの出力面162cとを有する。入射面162aは出力面162c及び紙面20aと平行であり、平行光A2は入射角0度で入射面162aに入射する。入射面162aに入射した後の光A3は偏向部162内において平行光A2と同一の方向へ進行して側面162bに入射する。入射面162aに入射した後の光A3の側面162bへの入射角は全反射の臨界角γよりも大きく、したがって、当該光A3は側面162bで全反射し、全反射した後の反射光A4は出力面162cに入射する。偏向部162の出力面162cは光学偏向素子16Cの入射面16aと同じ高さに位置し、紙面20aに平行である。反射光A4は出力面162cを出射角αで通過し、入射光Aとして用紙20へ入射角αで入射する。
図11の光学偏向素子16Cの出力光C,C1,C2の出力面16Cbは正反射光B,B1,B2を偏向して、シフトの幅d2を有する出力光C,C1,C2が出射各δで出力面16Cbから出力される。
図11のミラー171は、出力光C,C1,C2を光検出器17へ反射する。ミラー171により反射された、出力光C,C1,C2のそれぞれに対応する各反射光D,D1,D21は、紙面20aに直交する方向へ進行し、光検出器17の受光部17aに入射する。つまり、ミラー171は、出力光C,C1,C2を受光部17aにガイドする。光検出器17の受光部17aには、反射された光D,D1,D2が入射し、光D,D1,D2の受光部17aへの入射によって光検出器17は光D,D1,D2の光強度、すなわち正反射光B,B1,B2の光強度を検出する。
出力光C,C1,C2の進行方向はミラー171によって約90度だけ偏向されるために、図11に示す反射された光D,D1,D2のシフトの幅d3は、出力面16Cbからの出力光C,C1,C2の幅d2にほぼ等しい。従って、当該幅d3は正反射光B,B1,及びB2のシフトの幅d1よりも小さい。
以上のように構成された本実施形態に係る表面測定装置10Cによれば、光学偏向素子16Cの偏向部162は、入射面162aに入射した後の光A3をさらに全反射する。この構成によれば、上記実施形態1と同様の効果が得られるのみならず、光源13及びコリメート光学系15は、必ずしも平行光が偏向部162の入射面162aに角度αの入射角で入射するように配置される必要がなく、従って、光源13及びコリメート光学系15の表面測定装置10内での配置の自由度が向上する。
また、本実施形態に係る表面測定装置10Cは、出力光C,C1,C2を反射して光検出器17に出力するミラー171をさらに備えたことを特徴とする。この構成によって、従って、光検出器17は、必ずしも出力光C,C1,C2の光路上に配置される必要がなく、よって、光検出器17の表面測定装置10内での配置の自由度が向上する。
さらに、本実施形態に係る表面測定装置10Cによれば、光源13と光検出器17は、同一の基板11上に設けられる。光源13、光源制御回路14、光検出器17、及び信号取得回路18を同一の基板11上に配置することが可能になることによって、表面測定装置10Cの実装が容易になる。例えば電気配線等の表面測定装置10の部品実装を簡略化でき、基板11の筐体12への装着が容易になる。さらに、表面測定装置10のサイズを、用紙20の搬送方向、すなわち入射光Aの紙面20aの走査方向に関して縮小できる。
なお、本実施形態は上記実施形態1,2にも適用可能であり、すなわち、本実施形態に係る偏向部162と、上記実施形態1に係る図3(a)の光学偏向素子16又は上記実施形態2に係る図9の光学偏向素子16Aとが互いに接続されて一体的に形成されることができる。
また、本実施形態において、光源13及び光検出器17は表面測定装置10の基板11上に設けられたが、光源13及び光検出器17のうちの少なくとも一方が表面測定装置10の外部の基板に設けられても良い。
実施形態5.
図12は、本発明の実施形態5に係る表面測定装置10Dの構成を示す垂直断面図である。図13は、図12の光学偏向素子16Dの出力面16Dbの拡大垂直断面図である。
本実施形態に係る図12の表面測定装置10Dは、上記実施形態1に係る図3(a)の表面測定装置10と比較して、光学偏向素子16に代えて、光学偏向素子16Dを備えた点が異なる。図12の光学偏向素子16Dは、図3(a)の光学偏向素子16の出力面16bに代えて、巨視的には光学偏向素子16Dの入射面16aに平行な出力面16Dbを形成するが微視的には図13に示すブレーズド回折格子構造を有する出力面16Dbを有する点が異なる。図13において、例えば図12の領域R,R1,R2における出力面16Dbの近傍における回折格子構造が示されている。
図13において、出力面16Dbは、格子面部163と格子壁面部164とを有する。格子面部163は、光学偏向素子16Dの入射面16aに垂直な方向に対して光検出器17の方向へ所定の傾斜角μ1だけ下降した勾配を有し、すなわちブレーズ角90−μ1を有する。格子壁面部164は、光学偏向素子16Dの上方から見て出力光C,C1,C2の進行方向とは逆の方向に面して切り立つように設けられている。格子面部163と格子壁面部164は、一定の間隔で互いに交互に配置されている。巨視的には、光学偏向素子16D内を進行する屈折光Ba,B1a,及びB2aは、巨視的には入射角β2で、すなわち入射面16aに平行な方向に対して入射角β2で出力面16Dbに入射する。
図13に示すように、微視的には屈折光Ba,B1a,及びB2aは、傾斜角μ1で傾斜した勾配を有する格子面部163に入射する。この勾配に基づいて、出力光C,C1,及びC2の出力面16Dbからの出射角δは、正反射光B,B1,及びB2の入射面16aへの入射角αよりも大きい。本実施形態に係る出力光C,C1,及びC2のシフトの幅d2と正反射光B,B1,及びB2のシフトの幅d1との比率d2/d1はcosδ/cosαである。このため、出力光C,C1,C2のシフトの幅d2が所望の幅に縮小されるように、出射角δはα以上90度未満の範囲内で設定されるように傾斜角度μ1が選択される。この結果、出力光C,C1,及びC2のシフトの幅d2は受光部17aのサイズよりも小さく、出力光C,C1,及びC2は受光部17aに入射する。
以上のように構成された本実施形態に係る表面測定装置10Dによれば、光学偏向素子16Dの出力面16Dbには回折格子が設けられているので、当該回折格子によって屈折光Ba,B1a,B2aが偏向されることによって、光学偏向素子16Dは、出力面16Dbにおける出力光C,C1,C2の出射角δが、入射面16aにおける正反射光B,B1,B2の入射角αよりも大きくなるように反射光B,B1,B2を偏向する。このように偏向された後の出力光C,C1,C2が出力面16Dbから出力されることによって、正反射光B,B1,B2の入射面16aへの入射位置にかかわらず、出力光C,C1,C2のシフトの幅d2bは、正反射光B,B1,B2のシフトの幅d1よりも小さくなり、受光部17aのサイズ未満に設定される。その結果、偏向された後の出力光C,C1,及びC2は光検出器17の受光部17a内に入射する。また、平面光学素子構造によって偏向光学系を構成できることによって光学偏向素子16Dの作成精度を緩和できる。なお、光学偏向素子16Dの出力面16Dbに形成される回折格子構造は矩形構造であっても良いが、回折効率を高めるためには矩形構造よりもブレーズド回折格子構造が好ましい。
なお、上記16Dbは、巨視的に見て、上記実施形態1に係る図3(a)の光学偏向素子16と同様に、所定の傾斜角φを有しても良い。この場合、屈折光Ba,B1a,B2aの格子面部163への入射角が全反射の臨界角γよりも小さくなるように、かつ、屈折光Ba,B1a,B2aの出力面16Dbへの入射角が屈折角β2よりも大きくなるように、光学偏向素子16Dが構成される。また、上記16Dbは、上記実施形態2に係る図9の光学偏向素子16Bと同様に凸面であってもよい。
また、本実施形態に係る光学偏向素子16Dの構成は、上記実施形態3,4と組み合わせられてもよく、すなわち、本実施形態に係る光学偏向素子16Dが、上記実施形態3に係る図10の平板部161又は上記実施形態4に係る図11の偏向部162に一体的に接続されてもよい。
実施形態6.
図14は、本発明の実施形態6に係る表面測定装置10Eの構成を示す垂直断面図である。
本実施形態に係る図14の表面測定装置10Eは、上記実施形態4に係る図11の表面測定装置10Cと比較して、光学偏向素子16Cに代えて光学偏向素子16Eを備えた点が異なる。図14の光学偏向素子16Eは、図9の光学偏向素子16Cと比較して、以下の点が異なる。
(1)図9の光学偏向素子16Cの出力面16Cbが、巨視的には光学偏向素子16Cの入射面16aと平行でありかつ微視的にはブレーズド回折格子構造を有する出力面16Ebに置き換えられたこと。
(2)図9の平板部161が、コリメート光学系15からの平行光を偏向して通過させる、上面である平行光A2の入射面165aに回折格子構造を有する偏向部165に置き換えられたこと。ここで、偏向部165の入射面165aと、底面である入射光Aの出力面165bはそれぞれ、図14に示すように、光学偏向素子16Eの出力面16Eb及び入射面16aと面一に形成されている。
図15は、図14の偏向部165の入射面165a上の平行光A2が照射される領域Qの拡大垂直断面図である。図16は、図14の光学偏向素子16Eの出力面16Ebの拡大垂直断面図である。図15において、偏向部165の格子面部166は、光学偏向素子16Eの入射面16aに垂直な方向に対して光源13の方向へ所定の傾斜角μ2だけ下降した勾配を有し、すなわちブレーズ角90−μ2を有する。格子壁面部167は、一定の距離間隔で、光学偏向素子16Eの上方から見て出力光C,C1,C2の進行方向に面して切り立つように設けられている。巨視的には、コリメート光学系15からの平行光A2は、入射角0度で偏向部165の入射面165aに入射する。微視的には、平行光A2は格子面部166において屈折して、屈折光A5が偏向部165内を進行する。当該屈折光A5は偏向部165の出力面165bに入射角β1で入射して出力面165bを通過し、入射光Aとして入射角αで紙面20aに入射する。
図16において、出力面16Ebは、図13の光学偏向素子16Dの出力面16Dbと同じ構成の回折格子構造を有し、格子面部163と格子壁面部164とを有する。格子面部163は、光学偏向素子16Eの入射面16aに垂直な方向に対して光検出器17の方向へ所定の傾斜角μ1だけ下降した勾配を有し、すなわちブレーズ角90−μ1を有する。格子壁面部164は、一定の距離間隔で、光学偏向素子16Eの上方から見て出力光C,C1,C2の進行方向とは逆の方向に面して切り立つように設けられている。巨視的には、光学偏向素子16E内を進行する屈折光Ba,B1a,及びB2aは、入射面16aに平行な方向に関して入射角β2で出力面16Ebに入射する。
図16に示す屈折光Ba,B1a,及びB2aは、微視的には、傾斜角μ1で傾斜した勾配を有する格子面部163に入射する。この勾配に基づいて、出力光C,C1,及びC2の出力面16Ebからの出射角δは、正反射光B,B1,及びB2の入射面16aへの入射角αよりも大きい。本実施形態に係る出力光C,C1,及びC2のシフトの幅d2と正反射光B,B1,及びB2のシフトの幅d1との比率d2/d1はcosδ/cosαである。このため、出力光C,C1,C2のシフトの幅d2が所望の幅に縮小されるように、出射角δはα以上90度未満の範囲内で設定されるように傾斜角度μ1が選択される。この結果、出力光C,C1,及びC2のシフトの幅d2は受光部17aのサイズよりも小さく、出力光C,C1,及びC2は受光部17aに入射する。
以上のように構成された表面測定装置10Eによれば、光学偏向素子16Eの入射面165aには、平行光を偏向する回折格子が設けられる。これにより、上記光A2の進行方向が紙面20aに対して垂直になるように配置することが可能になり、上記実施形態4と同様の効果を有する。
なお、本実施形態に係る表面測定装置10Eによれば、平行光A2が入射する偏向部165の入射面165aと、出力光C,C1,C2が出力される出力面16Ebとの両方に、回折格子が設けられている。しかしながら、平行光A2が入射する偏向部165の入射面165aと、出力光C,C1,C2が出力される出力面16Ebとうちのいずれか一方に回折格子が設けられてもよい。よって、平行光A2が入射する偏向部165の入射面165aと、出力光C,C1,C2が出力される出力面16Ebとうちの少なくとも一方に回折格子が設けられてもよい。