JP2014173051A - 水性顔料分散液およびインクジェット記録用水性インクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 キナクリドン系顔料(a)、顔料誘導体(b)、塩基性化合物(c)、アニオン性基含有有機高分子化合物(d)を含有する混合物を混練し、固形分含有比率が50〜80質量%である常温で固練りの顔料混練物を作製する混練工程と、該顔料混練物に水溶性媒体を加えて希釈する工程と、を有する水性顔料分散液の製造方法において、
前記塩基性化合物(c)として、無機系塩基性化合物(c−1)、及び、20重量%の水溶液を調整した際にPHが10以上である常温で液状の有機系塩基性化合物(c−2)を使用することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
【選択図】 なし
Description
インクジェット記録に用いられるインクに必要な特性には、(1)記録媒体上ににじみのない高発色,高解像度、高濃度で均一な画像が得られること、(2)ノズル先端において、インクの乾燥による目詰まりが発生せず吐出安定性が良好であること、(3)記録媒体上でのインクの乾燥性が良好であること、(4)画像の堅牢性が良好であること、(5)長期保存安定性が良好であること、等が挙げられる。
従来、インクジェット記録用水性インクとしては、溶解安定性が高く、ノズル目詰まりが少なく良好な発色性を有し高画質の印刷を可能とすることから、着色剤として染料が用いられてきたが、染料を用いた画像は耐水性や耐光性が劣るという問題があった。
この、顔料粒子表面に樹脂層を形成して分散を安定化することが可能な方法として、顔料と高分子分散剤を予め混練する前処理工程を経由する分散方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。顔料と高分子分散剤を予め混練する前処理工程を経由し、より効率的に顔料粒子表面に樹脂層を形成することで、より分散を安定化させることができ、製造効率は向上し、顔料の微粒子化が可能となった。
しかしながら、微粒子化が達成されたとしても、顔料の分散安定性が不十分であったためインクの保存安定性に改良すべき点を残していた。特にマゼンタインク製造に使用されるキナクリドン系顔料は、分子間水素結合を通して顔料として機能する水素結合型顔料であり,顔料粒子が強固に凝集しているおり、分散しきれない粗大粒子がインク中に残りやすかった。また分散により微粒子化した顔料粒子が再凝集を起こしやすく分散の安定性の達成が一層困難であった。
これは、顔料誘導体の添加により、顔料の分散性は向上し、顔料から成る凝集物の発生は抑制できるものの、その効果を得るためには過剰量の顔料誘導体を加えねばならないことに起因するものと推定される。
この顔料誘導体は、前述の通り顔料に吸着するものと推定されるが、一方で、得られる水性顔料分散体中には、顔料に吸着されない余剰の顔料誘導体が存在すると推定される。これは、顔料誘導体の添加量と凝集物の発生量が比例することからも推定される。
本発明で使用するキナクリドン系顔料(a)の顔料種としては、公知慣用のものがいずれも使用でき、具体例としては、C.I.ピグメントレッド122等のジメチルキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッドレッド209等のジクロロキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19等の無置換キナクリドン、及びこれらの顔料から選ばれる少なくとも2種以上の顔料の混合物もしくは固溶体を挙げることができる。顔料の形態は粉末状、顆粒状あるいは塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
本発明で使用する顔料誘導体(b)は、顔料の技術分野において通常使用されるキナクリドン系、フタロシアニン系、アゾ系等の顔料誘導体を使用することができる。ここで顔料誘導体とは、顔料と同じような化学構造にジアルキルアミノメチル基、アリールアミドメチル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸基及びその塩、フタルイミド基等の、バインダーと結合あるいは親和性を有する基を導入した顔料の誘導体であり(有機顔料ハンドブック64ページ参照(2006年5月初版発行 発行所 カラーオフィス)、顔料あるいは顔料と同じような化学構造の部分が、顔料と水素結合やπ電子相互作用によって強固に結合する。
前記キナクリドン系顔料誘導体(b)の中でも、下記一般式(1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
さらに一般式(4)で表される基を有するキナクリドン系顔料誘導体(b)が好ましく、中でも、一般式(5)で表されるフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物がより好ましい。
前記一般式(4)で表される基を有するキナクリドン系顔料誘導体は、無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン等とフタルイミド及びホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドとを濃硫酸中で反応させることにより合成することができる。
顔料誘導体(b)はそのままでは粗大な凝集体を含み、それらは顔料(a)の分散工程において顔料(a)へ吸着せずそのまま粗大粒子として顔料(a)の水性分散液中に存在する可能性がある。あるいは後述の無機系塩基性化合物(c−1)によって分解される可能性もあり、該分解物が結晶化し凝集物を形成すると考えられる。
本発明においては、塩基性化合物(c)として、無機系塩基性化合物(c−1)、及び、20重量%の水溶液を調整した際にpHが10以上である常温で液状の有機系塩基性化合物(c−2)の両方を併用する。
無機系塩基性化合物(c−1)は、具体的には、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの炭酸塩;水酸化アンモニウムなどを例示することができる。これらの無機系塩基性化合物(c−1)の中で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムに代表されるアルカリ金属水酸化物は、水性顔料分散液の低粘度化に寄与し、インクジェット記録用インクの吐出安定性の面から好ましく、特に水酸化カリウムが好ましい。
このような目的から、無機系塩基性化合物(c−1)の添加量は、後述のアニオン性基含有有機高分子化合物(d)の酸価に基づき、中和率として80〜120%となる範囲であることが好ましい。中和率を80%以上と設定することが、顔料分散体から水性顔料分散液を作製するときの水性媒体中の分散速度の向上、水性顔料分散液の分散安定性、保存安定性の点から好ましい。水性顔料分散液、またはインクジェット記録用インクの長期保存時におけるゲル化を防ぐ点においても、インクによって作製した印字物の耐水性の点でも中和率120%以下とすることが好ましい。
なお本発明において、中和率とは塩基性化合物の配合量がスチレン−アクリル酸系共重合体(b)中の全てのカルボキシル基の中和に必要な量に対して何%かを示す数値であり、以下の式で計算される。
この観点から、顔料誘導体(b)は有機系塩基性化合物(c−2)を使用して予め分散させておくことが好ましく、顔料(a)への顔料誘導体(b)の吸着量を大きく増加させることができ好ましい。一方生産性を考慮する場合は、無機系塩基性化合物(c−1)及び有機系塩基性化合物(c−2)を同時に使用する方法が効率よく、その場合においては、顔料(a)への顔料誘導体(b)の吸着は、有機系塩基性化合物(c−2)を用いない場合に比べて大きく増加する。
有機系塩基性化合物(c−2)の具体的例を挙げれば、トリエタノールアミン(pH11.0)、N,N−ジメタノールアミン(pH11.9)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(pH12.0)、ジメチルエタノールアミン(pH11.9)、N−N−ブチルジエタノールアミン(pH11.4)などのアミノアルコール類、モルホリン(pH11.4)、N−メチルモルホリン(pH10.8)、N−エチルモルホリン(pH10.9)などのモルホリン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(pH11.8)、ピペラジンヘキサハイドレート(pH11.8)などのピペラジン類などがある(カッコ内は20重量%の水溶液を調整した際のpHである)。
これらの有機系塩基性化合物は、顔料誘導体(b)となじみが良いため、顔料誘導体(b)を適度に分散することができる。
本発明で使用するアニオン性基含有有機高分子化合物(d)は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基または燐酸基を含有する有機高分子化合物が挙げられる。この様なアニオン性基含有有機高分子化合物(d)としては、その調製や単量体品種の豊富さ入手し易さから、例えば、(メタ)アクリル酸とそれと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。尚、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸との総称を意味するものとする。(メタ)アクリル酸の各種エステルの場合も前記と同様に解釈される。
前記スチレン−アクリル酸系共重合体においてスチレン系モノマーとアクリル酸モノマーとメタクリル酸モノマーの共重合時の総和は、全モノマー成分に対して95質量%以上であることが好ましい。
重量平均分子量が5000以上であると、キナクリドン系顔料(a)の初期の分散小粒径化の容易さはやや低下するが、水性顔料分散液の長期保存安定性が良くなる傾向にあり、顔料の凝集などによる沈降が発生しにくい傾向がある。また前記スチレン−アクリル酸系共重合体の重量平均分子量が20000以下であると、これを用いた水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用インク組成物の粘度は極めて適正であって、インクの吐出安定性が向上する傾向にある。
ここでいう酸価とは、日本工業規格「 K 0070:1992. 化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、樹脂1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
酸価が低すぎる場合には顔料分散や保存安定性が低下し、また後記するインクジェット記録用水性インクを調製した場合に、印字安定性が悪くなるので好ましくない。酸価が高すぎる場合には、着色記録画像の耐水性が低下するのでやはり好ましくない。共重合体を該酸価の範囲内とするには、(メタ)アクリル酸を、前記酸価の範囲内となる様に含めて共重合すれば良い。
本発明においては、必要に応じて水溶性有機溶剤(e)を加えることもできる。しかしながら前述の通り、有機系塩基性化合物(c−2)は顔料誘導体(b)を分散させる役目を果たすため、水溶性有機溶剤(e)は有機系塩基性化合物(c−2)の効果を損なわない範囲程度に加えることが望ましい。使用できる水溶性有機溶剤(e)としては、特に限定はなく公知のものを使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
一方、前記樹脂に対する量は任意であるが、質量比で前記樹脂の1/2〜5/1程度、好ましくは1/1〜4/1となるように仕込むことが好ましい。
本発明で使用する溶解度パラメータは、ハンセン(Hansen)溶解度パラメータを用いる。ハンセン(Hansen)溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δd,極性項δp,水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本発明においては、δh成分のみに言及する。
水素結合項δhが7〜13である水溶性有機溶剤(e)としては、アセトン(7.0)、酢酸エチル(7.2)、N−メチルー2−ピロリドン(7.2)、ポリエチレングリコール(分子量=200、300、400、600、1,000。δhはそれぞれ7.3、7.4、7.6、7.8)、m−ブチロラクトン(7.4)、酢酸メチル(7.6)、テトラヒドロフラン(8.0)、1,4−ジオキサン(9.0)、グリセリンのポリオキシプロピレン付加物(分子量=600。δhは9.2)、グリセリンのポリエチレン付加物(分子量=600、1300。δhはそれぞれ12.5、9.7)、ジオキソラン(9.3)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(9.8)、グリセリンのポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレン付加物(分子量=600。δhは10.0)、ジメチルスルホキシド(10.2)、ジアセトンアルコール(10.8)、ジメチルホルムアミド(11.3)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(11.6)、などがある。
なお、カッコ内は各水溶性有機化合物の水素結合項δhを示し、単位はcal0.5/cm1.5である。
本発明の製造方法における混練工程においては、キナクリドン系顔料(a)、顔料誘導体(b)、無機系塩基性化合物(c−1)、20重量%の水溶液を調整した際にpHが10以上である常温で液状の有機系塩基性化合物(c−2)、アニオン性基含有有機高分子化合物(d)、及び水溶性有機溶剤(e)を含有する混合物を混練し常温で固練りの顔料混練物を作製する。
有機系塩基性化合物(c−2)、必要に応じて水溶性有機溶剤(e)は、混練工程で混練する混合物の固形分濃度をこのように高く保つことができるように調整される。前記混練工程における前記キナクリドン系顔料(a)と前記キナクリドン系顔料誘導体(b)の合計質量に対する前記有機系塩基性化合物(c−2)、あるいは、前記有機系塩基性化合物(c−2)プラス水溶性有機溶剤(e)の質量比((c−2)+e)/(a+b)は、30〜80質量%の範囲内であることが好ましい。前記有機系塩基性化合物(c−2)、あるいは、前記有機系塩基性化合物(c−2)プラス水溶性有機溶剤(e)が上記範囲にあると、固形物同士を容易に融合状態とすることができ、混練時に十分な剪断力を負荷することができる。
前記混練工程によって得られた常温で固体の顔料分散体に、水性媒体を混合して希釈し、水性顔料分散液を製造する。具体的には、前述のように撹拌槽を有する混練機で常温で固練りの顔料混練物を製造した後,該撹拌槽に水性媒体を添加、混合し、必要に応じて撹拌して直接希釈することにより水性顔料分散液を製造できる。また,撹拌翼を備えた別の攪拌機で固体の顔料分散体と水性媒体を混合し,必要に応じて撹拌して水性顔料分散液を調製できる。
水性媒体の混合に関しては、顔料混練物に対して必要量を一括混合してもよいが、連続的あるいは断続的に必要量を添加して混合を進めた方が、水性媒体による希釈が効率的に行われ、より短時間で水性顔料分散液を作製することができる。また,この様にして得られた水性顔料分散液を、更に分散機により分散処理しても良い。
前記水性媒体としては、従来よりインクジェット記録用水性インクの調製に用いられているものをいずれも使用できる。具体的には、以下のような水溶性有機溶剤が挙げられる。例えば、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、酢酸エチル、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミドプロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これらは、単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
水性顔料分散体液中の水性媒体の総量は,1〜50質量%であることが好ましく3〜40質量%であることがより好ましい。この下限未満では、乾燥防止効果が不十分となる傾向にあり、上記上限を超えると分散液の分散安定性が低下する傾向にある。
分散処理を行う際の分散機としては、公知慣用の機器が使用でき、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。なお本発明における、分散機、分散装置とは分散処理を行う工程に専用に用いられる装置であって、通常の混合、撹拌等にも広く使用される汎用の混合機、攪拌機等は含まないものとする。
混合工程または混合工程後の分散処理終了後に作製された水性顔料分散液の顔料濃度は10〜20質量%であることが好ましい。
本発明で得た水性顔料分散液を使用したインクジェット記録用水性インク組成物は、水性顔料分散液を水性媒体に希釈し必要に応じて各種添加剤を添加して、常法により調製することができる。インクジェット記録用水性インク組成物を調製する場合は、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去しても良い。
本発明で得た水性顔料分散液を用いてインクジェット記録用インク組成物を調製する場合、インクの乾燥防止を目的として、水溶性有機溶剤(e)、あるいは先に例示した湿潤剤を添加することができる。乾燥防止を目的とする水溶性有機溶剤(e)と湿潤剤のインク中の総含有量は3から50質量%であることが好ましい。
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01から10質量%であることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
本発明で得た水性顔料分散液から調製するインクジェット記録用インク組成物に占める、キナクリドン系顔料(a)と顔料誘導体(b)の総量は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での分散粒子の分散安定性を確保するために、1から10質量%であることが好ましい。
本発明の製造方法によって製造されたインクジェット記録用インク組成物は、加温された場合にも分散安定性を良好に維持し、種々の方式のインクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知のものを例示することができる。
なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
また、本実施例、比較例において用いた樹脂は以下のとおりのものである。
尚,重量平均分子量はGPC(ゲルパークロマトグラフ)を用いて測定したポリスチレン換算の数値である。
樹脂Aを12部、キナクリドン系顔料(a)として「クロモフタールジェットマジェンタDMQ(BASF SE社製)」を39部、顔料誘導体(b)として「フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数 1.4)」を1部を、プラネタリーミキサー(商品名:ケミカルミキサーACM04LVTJ−B 株式会社愛工舎製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が80℃に達した後、自転回転数:80回転/分、公転回転数:25回転/分で混練を行った。
5分後、無機系塩基性化合物(c−1)としてKOH(34質量%水酸化カリウム水溶液)を6部、有機系塩基性化合物(c−2)としてトリエタノールアミン(三井化学社製 pH11.0)22部を加えた。
市販のジューサーミキサーに顔料誘導体(b)フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン8部、有機系塩基性化合物(c−2)としてトリエタノールアミン176部、水13部をいれ、ミキサーに1分間かけ、顔料誘導体の混合液Zを得た。
次に、下記組成のうち粉状原料の混合物を、プラネタリーミキサー(商品名:ケミカルミキサーACM04LVTJ−B 株式会社愛工舎製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が80℃に達した後、中速(自転回転数:80回転/分,公転回転数:25回転/分)で混練を行い、5分後、下記組成のうち液体原料を加えさらに混練を継続した。
キナクリドン系顔料(a)としてクロモフタールジェットマジェンタDMQ(BASF SE社製:39部
顔料誘導体分散液Z:24.6部
無機系塩基性化合物(c−1)としてKOH(34質量%水酸化カリウム水溶液):6部
有機系塩基性化合物(c−2)としてトリエタノールアミンの代わりにN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(和光純薬社製 pH12.0)を使用したこと以外は実施例1と同じにして水性顔料分散液Cを得た。
有機系塩基性化合物(c−2)としてトリエタノールアミンの代わりにN−N−ブチルジエタノールアミン(ヒドラス化学社製 pH11.4)を使用したこと以外は実施例1と同じにして水性顔料分散液Dを得た。
実施例1で使用した有機系塩基性化合物(c−2)トリエタノールアミンを使用せず、代わりにジエチレングリコール(20%水溶液のpH=3.71)(丸善石油化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして水性顔料分散液HAを得た。
実施例1で使用いた有機系塩基性化合物(c−2)トリエタノールアミンを使用せず、代わりにEG−1(グリセリンのポリオキシエチレン付加物;20%水溶液のpH=4.16)(リポケミカル社製)を用いた以外は実施例1と同様にして水性顔料分散液HBを得た。
「顔料誘導体(b)/(顔料誘導体(b)+顔料(a))(質量比)」を0.025から0.075にした以外は比較例1と同様にして水性顔料分散液HCを得た。
実施例1で用いた無機系塩基性化合物(c−1)KOHを使用しないこと以外は実施例1と同様にして水性顔料分散液HDを得た。
〔インクジェットインクの作製〕
実施例1及び2、比較例1〜4で作製した水性顔料分散液を純水で希釈して、キナクリドン系顔料濃度6質量%の水性顔料分散液の希釈液を作り、該希釈液に対して以下を配合し、インクジェット記録用水性インクを作成した。
水性顔料分散液の希釈液:50部
2−ピロリジノン:8部
トリエチレングリコール モノ−n−ブチルエーテル:8部
精製グリセリン:3部
サーフィノール440 (エアープロダクツ社製):0.5部
純水:30.5部
20度光沢がSTD(比較例3)の+15%以上のもの・・・◎◎、
20度光沢がSTD(比較例3)の+15%未満〜+5%以上のもの・・・◎、
20度光沢がSTD(比較例3)の+5%未満〜―5%以上のもの・・・○、
20度光沢がSTD(比較例3)の−5%未満〜―20%以上のもの・・・△、
上記以外のもの・・・×
として評価した。
保存安定性については、実施例、比較例で作製した水性顔料分散液を60℃条件下で保管して評価した。試験開始前の初期の粒径と試験開始8週間後の粒径との増加量が、
20%以下のものを・・・○、
21〜30%のものを・・・△、
31%以上のものを・・・・×
として評価した。
凝集物の発生は、粗大粒子数の増加の有無で判断した。すなわち、実施例、比較例で作製した水性顔料分散液を室温で保存し、粗大粒子数を1週間毎に測定した。粗大粒子数は、AccuSizer 780 (Particle Sizing Systems, Inc.)を用いて測定した。その際、粗大粒子数測定サンプルとしては、各サンプルともに200〜10000倍のイオン交換水を加えてキナクリドン系顔料濃度を低下させ、検出器をサンプルが毎秒1ml通過する際に、粒子径が0.5μm以上の粗大粒子のカウント数が1000から4000となるように希釈を行ったものを用いた。
粗大粒子数を測定後に希釈倍率を考慮して、キナクリドン系顔料濃度12.5%の水性顔料分散液1ml中に存在する粗大粒子数に換算した。
分散液作製直後の粗大粒子数と試験開始8週間後の粗大粒子数を比較した際の増加率が、
20%以下のものを・・・・○、
それ以外のものを・・・・×
として評価した。
これに対して、比較例1は、凝集物の発生を減らす目的で、顔料誘導体(b)の添加量を減らした例である。比較例1は、凝集物の発生は見られないが、保存安定性、印刷物の光沢は得られない。
一方、実施例1〜2は、顔料誘導体(b)の添加量を減らし、且つ、有機系塩基性化合物(c−2)を使用した例である。混練工程において有機系塩基性化合物(c−2)を用いることにより、顔料誘導体(b)を凝集物が発生しない程度に減少させても水性顔料分散液の安定性を確保でき、かつその分散液を用いて作製したインクジェット用インクは光沢の非常に高い(比較例3を上回る)印刷物が得られることがわかる。これは、有機系塩基性化合物(c−2)を用いることにより、顔料誘導体(b)の顔料への吸着率が増加し、顔料分散液としての機能が向上したと考えられる。
さらに実施例2は、前記脂肪族塩基性化合物(c−1)と顔料誘導体(b)との混合液を使用した例であるが、実施例1を上回る光沢を示すインクジェット用インクが得られた。
Claims (6)
- キナクリドン系顔料(a)、顔料誘導体(b)、塩基性化合物(c)、アニオン性基含有有機高分子化合物(d)を含有する混合物を混練し、固形分含有比率が50〜80質量%である常温で固練りの顔料混練物を作製する混練工程と、該顔料混練物に水溶性媒体を加えて希釈する工程と、を有する水性顔料分散液の製造方法において、
前記塩基性化合物(c)として、無機系塩基性化合物(c−1)、及び20重量%の水溶液を調整した際にPHが10以上である常温で液状の有機系塩基性化合物(c−2)を使用することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。 - 無機系塩基性化合物(c−1)がアルカリ金属水酸化物であり、前記有機系塩基性化合物(c−2)が脂肪族塩基性化合物である請求項1に記載の水性顔料分散液の製造方法。
- 前記脂肪族塩基性化合物(c−1)と顔料誘導体(b)との混合液を、キナクリドン顔料(a)、アルカリ金属水酸化物(c−1)、及び前記アニオン性基含有有機高分子化合物(d)を含有する混合物に加え混練する請求項1に記載の水性顔料分散液の製造方法。
- 前記顔料誘導体(b)がキナクリドン系顔料誘導体である請求項1〜3のいずれかに記載の水性顔料分散液の製造方法。
- 前記アニオン性基含有有機高分子化合物(d)がスチレン−アクリル酸系共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の水性顔料分散液の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水性顔料分散液の製造方法によって製造された水性顔料分散液を、水性媒体で希釈する工程を有するインクジェット記録用水性インクの製造方法。
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