JP2014172893A - Nrf2活性化剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 Nrf2発現促進効果を有し、生体の抗酸化防御、解毒能力を高める効果を発揮する医薬品、食品、化粧品等、或いはこれらに配合する素材の提供。
【解決手段】 下記一般式(1)〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕で示されるメトキシカルコンを有効成分とするNrf2活性化剤。

【選択図】なし

Description

本発明は、Nrf2活性化剤に関する。
紫外線照射や酸素呼吸の副産物として細胞内に発生するフリーラジカルや活性酸素等の活性酸素種は、生体の構成成分である脂質、タンパク質、DNAなどと容易に反応し、修飾や障害を与え、細胞機能障害や細胞死を引き起こすことが知られている。そして、活性酸素種に慢性的に曝露されることにより、癌、炎症、動脈硬化、高血圧症、肝機能障害、糖尿病、虚血再潅流障害、潰瘍、シミ・シワ等の種々の疾病を発症するリスクが高まることが知られている(例えば、非特許文献1、2)。
一方、近年、抗酸化タンパク質および第二相酵素と呼ばれる一連のタンパク質群が、生体の酸化ストレスからの防御や生体異物の解毒を連携して担っていることが明らかとなってきた。例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、NAD(P)H:キノン酸化還元酵素1(NQO1)、グルタミルシステインリガーゼ(GCLC)、ヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)、チオレドキシン還元酵素1(TXNRD1)等が知られている。GSTは生体内でグルタチオンと生体異物化合物との複合体の生成を触媒し、親電子性化学物質に対し防御に働く。また、NQO1はキノンの2電子還元反応に関与し、キノンの1電子還元に伴って生ずる酸化障害を回避することができる。一方、GCLCは、グルタチオン合成における律速酵素であり、抗酸化物質であるグルタチオン供給に重要である。さらに、HMOX1はヘム代謝に関わる酵素であり、ヘム分解によって生じるビリベルジンとビリルビンには強力な抗酸化作用がある。
これら抗酸化タンパク質および第二相酵素の遺伝子のプロモーターには、抗酸化応答配列(Antioxidant responsive element(ARE))と呼ばれる共通の配列が存在し、Nuclear factor (erythroid-derived 2)-like 2(Nrf2)によってその発現が誘導されることが明らかにされている(例えば、非特許文献3)。
Nrf2は、酸化ストレスのない定常状態では細胞質に存在するKEAP1(Kelch-like ECH-associated protein 1)と結合し、Cul3−KEAP1複合体によりユビキチン化され、プロテアソームで分解されるが、活性酸素種や親電子性物質に曝露されると、KEAP1はシステイン残基が修飾されて失活し、Nrf2のユビキチン化が停止する。その結果、Nrf2は安定化して核内へ移行してsmall Mafとヘテロ二量体を形成し、これが上述した酵素群の遺伝子のプロモーター領域にある抗酸化応答配列(ARE)に結合して、一連の第二相酵素群(解毒酵素群、抗酸化タンパク質群)の遺伝子発現を誘導する。その結果、活性酸素種の消去及び親電子性物質の解毒が促進され、生体は酸化ストレス状態から定常状態へと復帰することができる(例えば、非特許文献4)。斯様に、Nrf2は、活性酸素種や親電子性化合物への曝露に対する生体防御機構において中心的役割を果たしている。
したがって、Nrf2の活性化は、生体の抗酸化防御、解毒能力を高め、酸化ストレスが関与する種々の疾患の予防又は改善に有効であると考えられており、近年、Nrf2の活性化物質の探索が進められている。例えば、レスベラトロール、クルクミン、カテキン、エピガロカテキンガレート等にNrf2の活性化作用があることが報告されており(非特許文献5)、また、シソの抽出物に含まれる、2',3'−ジヒドロキシ−4',6'−ジメトキカルコン等の特定のカルコン体(非特許文献6)や、ベンゼン環上にメトキシ基やトリフルオロメチル基を有するカルコン誘導体(非特許文献7)に、Nrf2活性作用があることが報告されている。
Reuter S et al. (2010) Free Radic. Biol. Med. 49 1603-1616 Lee JM et al. (2005) FASEB 19 1061-1066 Rushmore TH (1991) J Biol Chem 266 11632-11639 Taguchi K et al. (2011) Genes Cells 16 123-140 Tkachev VO et al. (2011) Biochemistry (Moscow) 76 407-422 Izumi Y et al. (2012) Free Radic Biol Med 53 669-679 Kumar V et al. (2011) J Med Chem 54 4147-4159
本発明は、Nrf2活性化作用を有し、生体の抗酸化防御、解毒能力を高める効果を発揮する医薬品、食品、化粧品等、或いはこれらに配合する素材を提供することに関する。
本発明者らは、上記の課題に鑑みて検討したところ、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコン、或いは当該メトキシカルコンを含むメチルヘスペリジン加水分解物に優れたNrf2活性化作用があり、一連の抗酸化タンパク質群の遺伝子発現を誘導すること、更にはグルタチオンの産生促進作用及び細胞内活性酸素量の低減作用があり、これらが生体の抗酸化防御、解毒能力を高めるために有用であることを見出した。
すなわち本発明は、以下の1)〜3)に係るものである。
1)下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするNrf2活性化剤。
2)下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするグルタチオン産生促進剤。
3)下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とする酸化ストレス低減剤。
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
本発明のNrf2活性化剤、グルタチオン産生促進剤及び酸化ストレス低減剤によれば、Nrf2の活性化を介して、生体の抗酸化防御、解毒・代謝、異物排泄、ストレス応答能力の向上による生体防御が可能となり、酸化ストレスや生体異物の侵入に起因して発症する疾患や症状、例えば癌、炎症、動脈硬化、高血圧症、肝機能障害、糖尿病、皮膚障害等の予防、治療又は改善が可能となる。
ARE下流遺伝子の発現誘導活性を示すグラフ。 Nrf2の核移行促進作用を示すグラフ。 Nrf2を介した抗酸化遺伝子の発現誘導作用を示すグラフ。 抗酸化遺伝子の発現誘導作用を示すグラフ。 抗酸化遺伝子の発現誘導作用を示すグラフ。 グルタチオン量増加作用を示すグラフ。(A)はMHES加水分解物処理(実験1)の結果、(B)はMHES加水分解物処理+UVB照射(実験2)の結果。 細胞内活性酸素低減作用を示すグラフ。(A)はUVB照射(実験1)の結果、(B)はMHES加水分解物処理+UVB照射の結果、(C)はMHES加水分解物処理+過酸化水素処理(実験2)の結果。
一般式(1)で表されるメトキシカルコン(以下、単に「メトキシカルコン」とも称する)には、Rがメチル基である4'−ヒドロキシ−3,4,2',6'−テトラメトキシカルコンと、Rが水素原子である4',6'−ジヒドロキシ−3,4,2'−トリメトキシカルコンが含まれるが、本発明においては、これらを単独で用いてもよく2種を混合していて用いてもよい。
上記メトキシカルコンは、何れも公知の物質であり、例えば食品添加物等として用いられているメチルヘスペリジンの加水分解物(好ましくは、酸加水分解物)を分画・精製すること(崎浴、日本化學雑誌、1958、79(6)、736−740参照)、アセトフェノン類とベンズアルデヒド類のアルドール縮合反応等を用いて化学合成すること(Nishida J et al. (2007) Bioorg Med Chem 15 2396-2402)等により得ることができる。
また、本発明のNrf2活性化剤、グルタチオン産生促進剤及び酸化ストレス低減剤の有効成分として用いられるメトキシカルコンとしては、上記の如くメトキシカルコン単体を用いる場合の他、これらの化合物を包含するメチルヘスペリジンの加水分解物(メチルヘスペリジンアグリコン)を用いることもできる。
メチルヘスペリジンの加水分解物には、以下に示すフラバノン型化合物(A)とカルコン型化合物(B)が含まれることが知られている(崎浴、日本化學雑誌、79(6)、736−740(1958))。カルコン型化合物(B)は、本発明の一般式(1)で示されるメトキシカルコンを包含することから、本発明において用いられるメチルヘスペリジンの加水分解物は、カルコン型化合物(B)を多く含むものが好ましい。
〔式中、R1及びR2は独立して水素原子又はメチル基を示す。〕
後記実施例に示すとおり、本発明のメトキシカルコン及びメチルヘスペリジン加水分解物は、Nrf2遺伝子の発現を促進し、さらに、Nrf2が結合するAREの下流に位置する、HMOX1(ヘムオキシゲナーゼ1)、GCLC(グルタミルシステインリガーゼ)、NQO1(NAD(P)H:キノン酸化還元酵素1)等の発現を促進する。すなわち、本発明のメトキシカルコン及びメチルヘスペリジン加水分解物は、Nrf2によって制御される抗酸化防御、解毒・代謝、異物排泄、ストレス応答機構に関わる第二相酵素群の発現を誘導することができ、酸化ストレスからの防御(酸化ストレスの低減)や生体異物の解毒を亢進することができる。このことは、メチルヘスペリジン加水分解物にグルタチオンの産生が促進され、また、細胞内活性酸素量が低減されることにより確認されている(実施例6及び7参照)。そして、酸化ストレス防御系や異物代謝系が亢進されれば、酸化ストレスや生体異物の侵入により起因して発症する疾患や症状を予防、治療又は改善することが可能となる。斯かる疾患又は症状としては、例えば、炎症、癌、皮膚障害(シミ・シワ等)、加齢性黄斑変性症、ピロリ菌防御、神経変性疾患、環境化学物質解毒、肝機能障害、自己免疫疾患、糖尿病、動脈硬化、高血圧症、虚血再潅流障害、潰瘍等が挙げられる(前記非特許文献1、2参照)。
したがって、本発明のメトキシカルコン及びメチルヘスペリジン加水分解物は、Nrf2の活性化のため、Nrf2によって制御される第二相酵素群の発現誘導のため、生体内のグルタチオン産生を促進するため、生体内の酸化ストレスを低減するため、更には酸化ストレスまたは生体異物の侵入により起因して引き起こされる疾患を予防、治療又は改善するために使用することができる。ここで、当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。尚、「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
すなわち、本発明のメトキシカルコン及びメチルヘスペリジン加水分解物は、Nrf2の活性化のため、Nrf2によって制御される第二相酵素群の発現誘導のため、生体内のグルタチオン産生を促進するため、生体内の酸化ストレスを低減するため、更には酸化ストレスまたは生体異物により引き起こされる疾患を予防又は改善するための医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、食品又は飼料として、或いはこれらへ配合するための素材又は製剤とすることができ、また、これらの剤を製造するために使用することができる。
ここで、「Nrf2活性化」とは、Nrf2の転写促進によりNrf2の発現を促進すること、Nrf2の翻訳を促進すること、Nrf2のmRNAや蛋白質の分解を抑制すること、Keap1との結合を阻害することや乖離を促進すること、Nrf2の核移行を促進すること、Nrf2の標的DNA配列への結合を促進することなどにより、Nrf2に発現が制御される遺伝子の発現を促進することを意味する。
「グルタチオン産生の促進」とは、生体内のグルタチオン産生を促進することを意味する。グルタチオンは、生体内でNADPやNADなどを介して、生体の酸化−還元反系に関与しエネルギー産生に寄与し、また、その分子内にチオール基を有することから、自ら酸化されることにより、生体内に及ぼされる酸化ストレスから生体を保護する働きを有する。更に、グルタチオンは、生体内における各種抱合解毒反応に関与する酵素活性を高め、優れた解毒作用を発揮する。したがって、グルタチオン産生促進は、細胞の増殖、代謝、修復などの機能の活性化、酸化ストレス又は異物侵入により起因して引き起こされる疾患の予防、治療又は改善を図ることができる。
「酸化ストレスの低減」とは、生体内に発生するフリーラジカルや活性酸素等の活性酸素種を低減し、タンパク、脂質、DNA等の過酸化物量を低減することを意味する。 タバコや加齢によって発生する活性酸素種は、細胞・組織障害、炎症などを引き起こし、各種疾患の悪化や皮膚老化等を招く。酸化ストレスを低減することにより、皮膚老化(しみ、シワ、たるみ等)、糖尿病・動脈硬化等の酸化ストレス関連疾患の予防、治療又は改善を図ることができる。
本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を含有する上記医薬品(医薬部外品又はサプリメントも含む)の剤型は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、静脈内注射剤、筋肉注射剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤、湿布剤、バップ剤、軟膏、ローション、クリーム、チンキ剤、リニメント剤、懸濁液、ローション、バップ、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル又はオイル剤、口腔用製剤(歯磨剤、液状歯磨剤、洗口液、歯肉マッサージクリーム、口腔用軟膏、うがい用錠剤、トローチ、のど飴等)等のいずれでもよい。医薬品、医薬部外品、或いはサプリメントとして用いる場合の投与形態としては、例えば経口投与非経口投与、又は局所投与などいずれの経路によっても使用することができる。
このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤、浸透圧調整剤、流動性促進剤、吸収助剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、湿潤剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、固着剤、香料、被膜剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
また、当該製剤には既知の薬効成分を適宜配合することもできる。斯かる成分としては、例えば、ビタミンC、Eなどビタミン類、アミノ酸やペプチド及びその誘導体、核酸及びその誘導体、糖類及びその誘導体、その他、カロチノイド、大豆イソフラボン、カテキン類、クロロゲン酸等の抗酸化剤等が挙げられる。
上記製剤における、有効成分の含有量は、メトキシカルコンとして、製剤全質量中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。また、好ましくは0.001〜90質量%、より好ましくは0.01〜60質量%である。
本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を医薬品として、或いは医薬品に配合して使用する場合の投与量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与の場合の成人1人当たりの1日の投与量は、通常、メトキシカルコンとして、好ましくは0.001g以上、より好ましくは0.01g以上であり、好ましくは10g以下、より好ましくは3g以下である。また、好ましくは0.001〜10g、より好ましくは0.01〜3gである。上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回〜数回に分け、数週間〜数ヶ月間継続して投与することが好ましい。投与又は摂取対象としては、生体の抗酸化防御や解毒能力の亢進を必要としている若しくは希望しているヒト、例えば癌、炎症、動脈硬化、高血圧症、肝機能障害、糖尿病、皮膚障害等の患者やそれらの予備軍などが挙げられる。
本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を含有する上記医薬部外品や化粧品は、皮膚外用剤、洗浄剤、メイクアップ化粧料等の態様とすることができ、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の医薬部外品や化粧料は、本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を単独で、又は、その効果に影響を与えない範囲で、医薬部外品、皮膚化粧料、洗浄料等に配合されうる各種成分、薬効成分等を配合して調製することができる。例えば各種油剤、樹脂、界面活性剤、ゲル化剤、防腐剤、酸化防止剤、溶剤、アルコール、水、キレート剤、増粘剤、紫外線吸収剤、乳化安定剤、pH調整剤、色素、粉体、香料、可溶化剤、洗浄剤、植物抽出物や、セラミド等の保湿成分、皮膚老化防止剤、美白剤等を適宜組み合わせることにより調製することができる。
上記製剤における、有効成分の含有量は、メトキシカルコンとして、全量中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を含有する上記食品としては、一般飲食品のほか、例えば、抗酸化防御や解毒能力の亢進、例えば、紫外線に伴う皮膚炎症、しみ、しわ、たるみの形成抑制、あるいはタバコなどによって引き起こされる酸化ストレス障害の抑制 をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品等の機能性食品が包含される。
上記食品の形態は、固形、半固形又は液状であり得る。食品の例としては、パン類、麺類、クッキー等の菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、でんぷん加工製品、加工肉製品、その他加工食品、コーヒー飲料等の飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等、及びそれらの原料が挙げられる。また、上記の経口投与製剤と同様、錠剤形態、丸剤形態、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等であってもよい。
斯かる食品は、メトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物の他、他の飲食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、湿潤剤等を適宜組み合わせて配合し、調製することができる。
また、各種ビタミン類、アミノ酸やペプチド及びその誘導体、核酸及びその誘導体、糖類及びその誘導体、その他、カロチノイド、大豆イソフラボン、カテキン類、クロロゲン酸等の抗酸化成分等も適宜配合することができる。
食品中における有効成分の含有量は、その使用形態により異なるが、メトキシカルコンとして、通常好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。そして好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また好ましくは0.0001〜50質量%であり、より好ましくは0.001〜10質量%である。
本発明のメトキシカルコン又はメチルヘスペリジン加水分解物を含有する上記飼料としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫等に用いるペットフード等の飼料等が挙げられ、上記食品と同様の形態に調製できる。
当該飼料中における有効成分の含有量は、メトキシカルコンとして、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするNrf2活性化剤。
<2>下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするグルタチオン産生促進剤。
<3>下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とする酸化ストレス低減剤。
<4>Nrf2活性化剤を製造するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンの使用。
<5>グルタチオン産生促進剤を製造するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンの使用。
<6>酸化ストレス低減剤を製造するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンの使用。
<8>Nrf2活性化に使用するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコン。
<9>グルタチオン産生促進に使用するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコン。
<10>酸化ストレス低減に使用するための、下記一般式(1)で示されるメトキシカルコン。
<11>上記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを、ヒト若しくは動物に投与するNrf2活性化方法。
<12>上記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを、ヒト若しくは動物に投与するグルタチオン産生促進方法。
<13>上記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを、ヒト若しくは動物に投与する酸化ストレス低減方法。
<14><1>〜<13>において、メトキシカルコンは、メチルヘスペリジン加水分解物である。
<15><8>〜<10>において、使用は非治療的使用である。
<16><11>〜<13>において、方法は非治療的方法である。
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例1 評価サンプルの調製
メチルヘスペリジン加水分解物及びメトキシカルコンの調製
(i)メチルヘスペリジン加水分解物の調製
メチルヘスペリジン(MHES)(アルプス薬品工業社製)5.0gを50%EtOH250mLに溶解させ、濃塩酸15mLを加え、16時間、加熱還流した。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。エバポレーターでエタノールを留去後、酢酸エチルで抽出し、洗浄、乾燥、ろ過、濃縮を経て、粗生成物(MHES加水分解物)を得た。
(ii)4'−ヒドロキシ−3,4,2',6'−テトラメトキシカルコン及び4',6'−ジヒドロキシ−3,4,2'−トリメトキシカルコンの調製
(i)で得られたMHES加水分解物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−メタノール)で分画した。更に、目的の画分を再結晶し、4'−ヒドロキシ−3,4,2',6'−テトラメトキシカルコン(化合物1)156mg、及び4',6'−ジヒドロキシ−3,4,2'−トリメトキシカルコン(化合物2)112mgを単離した。
(iii)2',4',6'−トリヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコンの調製
2',4',6'−トリヒドロキシアセトフェノン・一水和物2.0gをTHF50mLに溶解させ、0℃に冷却した。そこにジイソプロピルエチルアミン19mL及びクロロメチルメチルエーテル3.3mLを加え、室温で9.5時間攪拌した。再び冷却後、水を加え、有機層を酢酸エチルで抽出し、洗浄、ろ過、濃縮を経て、粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、2'−ヒドロキシ−4',6'−ビスメトキシメトキシアセトフェノン1.7gを得た。
上記で得た2'−ヒドロキシ−4',6'−ビスメトキシメトキシアセトフェノン1.1gをメタノール20mLで溶解させ、それにベラトルアルデヒド728mg及び水酸化カリウム2.9gを2mLの水に溶かしたものを加え、室温で55時間攪拌した。その後塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出、洗浄、乾燥し、粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、6'−ヒドロキシ−3,4−ジメトキシ−2',4'−ビスメトキシメトキシカルコン1.1gを得た。
この6'−ヒドロキシ−3,4−ジメトキシ−2',4'−ビスメトキシメトキシカルコン1.1gをメタノール60mLに溶解させ、1M塩酸30mLを加え、50分間、加熱還流した。冷却後、水を加えて希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄、乾燥させ、粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、2',4',6'−トリヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン(比較化合物1)585mgを得た。
(iv)5,7−ジヒドロキシ−3',4'−ジメトキシフラバノン及び7−ヒドロキシ−5,3',4'−トリメトキシフラバノンの調製
(i)で得られたメチルヘスペリジン加水分解物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−メタノール)で分画した。更に、目的の画分を再結晶し、5,7−ジヒドロキシ−3',4'−ジメトキシフラバノン(比較化合物2)865mg、及び7−ヒドロキシ−5,3',4'−トリメトキシフラバノン(比較化合物3)476mgを単離した。
実施例1 ARE−Luc活性
(1)方法
1)プラスミド作製
ヒトにおいてARE配列として機能検証のされている配列(GCLC: TCCCCGTGACTCAGCGCTTTG(配列番号1)、NQO1: GATTCTGCTGAGTCACTGTGA(配列番号2))をpGL3−promoter vector(Promega)に組み込んだプラスミドを以下のように作製した。
NheIおよびXhoI認識サイトを末端に付加し、リンカーを入れた3×AREタンデムリピート配列のオリゴを設計し合成した。アニーリング後、あらかじめNheIおよびXhoIで処理したpGL3−promoter vectorとライゲーションし、大腸菌(ECOSTM Competent E. coli DH5α)に形質転換した。アンピシリン選択培地のコロニーからプラスミドを抽出し、配列を確認した。
GCLC 3xARE F
CTAGCTCCCCGTGACTCAGCGCTTTGCCCTCCCCGTGACTCAGCGCTTTGCCCTCCCCGTGACTCAGCGCTTTGC(配列番号3)
GCLC 3xARE R
TCGAGCAAAGCGCTGAGTCACGGGGAGGGCAAAGCGCTGAGTCACGGGGAGGGCAAAGCGCTGAGTCACGGGGAG(配列番号4)
NQO1 3xARE F
CTAGCCAGTCACAGTGACTCAGCAGAATCTCCCCAGTCACAGTGACTCAGCAGAATCTCCCCAGTCACAGTGACTCAGCAGAATCTC(配列番号5)
NQO1 3xARE R
TCGAGAGATTCTGCTGAGTCACTGTGACTGGGGAGATTCTGCTGAGTCACTGTGACTGGGGAGATTCTGCTGAGTCACTGTGACTGG(配列番号6)
2)ルシフェラーゼアッセイ
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を24wellプレートに播種し、サブコンフルエントになったところでARE−Lucプラスミドおよび内部標準としてphRL−TK(Promega)をSuperFect Transfection Reagent(QIAGEN)にてトランスフェクションした。その後、MHES加水分解物を最終濃度が3.3,6.6,16.5μg/ml(約10,20,50μM)で処理し、16時間後にDual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。ARE−Luc活性(ホタルルシフェラーゼ活性)はphRL−TK活性(ウミシイタケルシフェラーゼ活性)によって補正した。
(2)結果
MHES加水分解物濃度依存的なGCLC−Luc、NQO1−Lucの活性上昇が認められた(図1)。
実施例2 Nrf2核移行促進作用
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を10 cmディッシュに播種し、サブコンフルエントになったところで、MHES加水分解物を最終濃度16.5μg/ml(約50μM)で16時間処理した。細胞をPBS wash後、Nuclear Extract Kit (Active Motif)を用いて、細胞質画分と核画分に分けた。核タンパク10μgをウエスタンブロッティングに供した。一次抗体はanti−Nrf2(Santa Cruz:sc−722)、anti−Histon H1(Santa Cruz:sc−10806)を、二次抗体はAnti Rabbit IgG,HRP Linked(GEヘルスケア)を用いた。
(2)結果
MHES加水分解物処理により核内NRF2量の増加が認められた(図2)。
実施例3 抗酸化遺伝子発現(1)
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を12wellプレートに播種し、サブコンフルエントになったところでNrf2 siRNA(Santa Cruz:sc−37030)もしくはControl siRNA(Santa Cruz:sc−37007)をHiPerFect Transfection Reagent (QIAGEN)にてトランスフェクションした。翌日に、MHES加水分解物を最終濃度16.5μg/ml(約50μM)で10時間処理した。細胞からRNAを抽出し、定量RT−PCRにて遺伝子発現量を解析した。
(2)結果
MHES加水分解物処理によりHMOX1(heme oxygenase(decycling) 1)、GCLC(glutamate−cysteine ligase,catalytic subunit)、NQO1(NAD(P)H dehydrogenase, quinone 1)などの抗酸化遺伝子発現が誘導された(図3)。また、MHES加水分解物による抗酸化遺伝子発現誘導作用はNrf2ノックダウンにより見られなくなった(図3)。このことからMHES加水分解物はNrf2を介して抗酸化遺伝子発現を亢進することが明らかとなった。
実施例4 抗酸化遺伝子発現(2)
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を12wellプレートに播種し、サブコンフルエントになったところで実験を行った。MHES加水分解物及び化合物1、化合物2、比較化合物1−3を最終濃度50μMとなるように処理し、8時間後に細胞を回収した。それぞれRNAを抽出し、定量RT−PCRに供した。
(2)結果
MHES加水分解物及び化合物1及び2に高いHMOX1、GCLC遺伝子発現誘導作用が認められた(図4)。
実施例5 抗酸化遺伝子発現(3)
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を12wellプレートに播種し、サブコンフルエントになったところで実験を行った。MHES加水分解物、化合物1、化合物2の他、Nrf2活性化作用を有する成分として公知(前記非特許文献5)の、スルフォラファン、クルクミン、レスベラトロール、カテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、クロロゲン酸を最終濃度20μMとなるように処理し、8時間後に細胞を回収した。それぞれRNAを抽出し、定量RT−PCRに供した。
(2)結果
MHES加水分解物、化合物1、化合物2の抗酸化遺伝子発現誘導作用は、スルフォラファン、クルクミン、レスベラトロール等と同等以上の活性を示すことが明らかとなった(図5)。
実施例6 グルタチオン産生促進作用
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)を12wellプレートに播種し、サブコンフルエントになったところで実験を行った。
(実験1)MHES加水分解物を最終濃度16.5μg/ml(約50μM)で0,4,8,24時間処理した。
(実験2)MHES加水分解物を最終濃度16.5μg/ml(約50μM)で16時間処理後、UVB照射(20mJ/cm2)を行い、0,3,6時間後に細胞を回収した。
細胞をPBS洗浄後、5% MPA (Metaphosphoric acid)を添加し、凍結融解操作により細胞を壊した。1.5 mlチューブに回収し遠心操作により除タンパクを行い、上清をGSH測定に用いた。ペレットはRIPAで再懸濁し、タンパク定量を行い、GSHの補正値に用いた。グルタチオン測定キット(JaICA)を用いて総グルタチオン(tGSH =GSH+GSSG)を定量した。
(2)結果
MHES加水分解物処理後、時間依存的なグルタチオン量の増加が認められた(図6(A))。UVB照射により細胞内グルタチオン量は低下するが、あらかじめMHES加水分解物処理をしておくことで細胞内グルタチオン量を維持できることが明らかとなった(図6(B))。
実施例7 細胞内活性酸素低減作用
(1)方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(Invitrogen)をBiocoat Poly−D−Lysine 96well Black/Clear plateに播種し、サブコンフルエントになったところで実験を行った。MHES加水分解物を最終濃度16.5μg/ml(=約50μM)で16時間処理した。H2DCFDA(2’,7’−dichlorodihydbrofluorescein diacetate)(Invitrogen)を最終濃度10μMに調製したHBSS(Hank’s Balanced salt solution)(Invitrogen)に置換し、37℃、20分処理した。
(実験1)H2DCFDA処理後、UVB(0,20,60mJ/cm2)照射を行い、15分後に蛍光マイクロプレートリーダーにより蛍光強度を測定した。
(実験2)H2DCFDA処理後、30%過酸化水素水(Sigma)をH22最終濃度が0,100,200,500μMとなるように処理し、30分後に蛍光マイクロプレートリーダーにて蛍光強度を測定した。
(2)結果
UVB照射により細胞内活性酸素量は増加した(図7(A))。MHES加水分解物をあらかじめ処理しておくことによりUVB誘導の細胞内活性酸素量は低減した(図7(B))。また、MHES加水分解物はH22処理細胞における細胞内活性酸素量も低減させた(図7(C))。以上のことから、MHES加水分解物は酸化ストレス低減作用を有することが明らかとなった。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするNrf2活性化剤。
    〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
  2. 下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とするグルタチオン産生促進剤。
    〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
  3. 下記一般式(1)で示されるメトキシカルコンを有効成分とする酸化ストレス低減剤。
    〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
  4. メトキシカルコンがメチルヘスペリジン加水分解物である請求項1記載のNrf2活性化剤、請求項2記載のグルタチオン産生促進剤又は請求項3記載の酸化ストレス低減剤。
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