JP2014169920A - 血液凝固検出装置及び血液凝固検出方法 - Google Patents

血液凝固検出装置及び血液凝固検出方法 Download PDF

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智和 高瀬
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Abstract

【課題】新規な原理で血液凝固を検出する血液凝固検出装置を提供する。
【解決手段】この血液凝固検出装置100では、交流電源130及び電圧印加用電極132,134を備えた電界発生手段により、血液載置部Sに載置された血液の周囲及び/又は血液に、周期的に変化する電界を発生させることによって血液の形状を周期的に変化させ、インピーダンス測定装置及び検出用電極152,154を備えた検出手段により、血液の形状変化に伴う物理的性質(ここではインピーダンス)の変化を検出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、血液凝固検出装置及び血液凝固検出方法に関する。
従来、血液凝固検出装置として種々のものが知られている。例えば、トロンボプラスチンや基質が含まれる専用試験紙と血液との反応によって生成するフェニレンジアミンの酸化による電流を測定し、その電流が閾値を超えるまでの時間をプロトロンビン時間として求めるものが提案されている(非特許文献1)。また、血液中に圧電振動子を浸漬させて発振させ、凝固による発振周波数の変化を測定することにより凝固時間を測定するもの(特許文献1)、基板部材に形成された微小流路に血液を流し、血液が流れなくなる(凝固する)時間を計測するもの(特許文献2)などが提案されている。
特公平7−43388号公報 特表2004−522146号公報
コアグチェックXS添付文書(コアグチェックは登録商標) (http://www.eidia.co.jp/product/diagnose/attach/attach_pdf/ketueki/cogc.pdf)
しかしながら、非特許文献1のものでは、血液凝固の最終形態であるフィブリンを直接測定していないため、確実性に欠けることがあった。また、特許文献1,2のものでは、凝固する時間を直接測定しているものの、特許文献1では、圧電振動子を血液に浸漬させる必要があるため比較的多くの血液が必要であった。また、特許文献2では、毛管現象を利用しているため、脂質の多い血液などでは微小流路が詰まってしまい正確な測定が行えない場合があった。このように、それぞれの技術には長所と短所があるため、互いに補完できるよう、技術の豊富化が望まれていた。
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、これまでこの分野で採用されていないエレクトロウェッティングの原理を利用して血液凝固を検出する血液凝固検出装置を提供することを主目的とする。
本発明の血液凝固検出装置及び血液凝固検出方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の血液凝固検出装置は、
測定対象である血液を載置する血液載置部と、
前記血液載置部に載置された血液の周囲及び/又は血液に、周期的に変化する電界を発生させる電界発生手段と、
前記電界発生手段によって前記電界を発生させた状態で、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う物理的性質の変化を検出する検出手段と、
を備えたものである。
この血液凝固検出装置では、血液載置部に載置された血液の周囲及び/又は血液に周期的に変化する電界を発生させることによって血液の形状を周期的に変化させ、その形状変化に伴う物理的性質の変化を検出する。液体に電圧を印加する前後で液体の形状が変化する現象は、エレクトロウェッティングと呼ばれている(例えばJournal of Micromechanics and Microengineering, 16(2006)2053-2059参照)。本発明によれば、こうしたエレクトロウェッティングの原理を応用した新規な血液凝固検出技術を提供することができるため、技術の豊富化に資することができる。
本発明の血液凝固検出装置において、前記血液載置部は、誘電体層の表面側に設けられ、前記電界発生手段は、前記誘電体層の裏面に設けられた一対の電圧印加用電極の間、又は、前記血液載置部に載置された血液と前記誘電体層の裏面に設けられた電圧印加用電極との間に周期的に変化する電圧を印加する手段であるものとしてもよい。こうしたものでは、印加する電圧を変化させると、誘電体層の裏面に設けられた電圧印加用電極と血液載置部に載置された血液との間で形成されるキャパシタの静電エネルギーが変化した分だけ表面自由エネルギーが変化し、血液載置部に対する血液の接触角が変化し、血液の形状が変化する。このため、周期的に変化する電圧を印加することで、比較的容易に血液の形状を変化させることができる。
本発明の血液凝固検出装置において、前記検出手段は、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う電気的性質の変化を検出する手段であるものとしてもよい。電気的性質の変化を検出する場合、前記血液載置部は、前記測定対象である血液とそれぞれ異なる位置で接触する2つの検出用電極を含んで構成され、前記検出手段は、前記2つの検出用電極の間の電気的性質の変化を検出する手段であるものとしてもよい。また、前記血液載置部は、前記測定対象である血液を載置する1つの検出用電極であり、前記検出手段は、前記検出用電極のうち前記血液を挟んで対をなすように設けられた2つの端子部間の電気的性質の変化を検出する手段であるものとしてもよい。前記電気的性質は、インピーダンス又は静電容量であるものとしてもよい。
本発明の血液凝固検出装置において、前記検出手段は、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う光学的性質の変化を検出する手段であるものとしてもよい。前記光学的性質は、光の吸収強度又は散乱強度であるものとしてもよい。
本発明の血液凝固検出装置において、前記血液載置部の表面には、疎水性の膜が形成されているものとしてもよい。表面の疎水性を高めることで、電界が発生していない状態での表面自由エネルギーを大きくすることができ、血液の形状変化の割合を大きくできるため、血液凝固の検出感度を向上できる。
本発明の血液凝固検出方法は、
測定対象である血液の周囲に周期的に変化する電界を発生させた状態で、前記血液の形状変化に伴う物理的性質の変化を検出し、該物理的性質の変化がなくなるまでの時間に基づいて血液凝固時間を算出するものである。
この血液凝固検出方法では、血液の周囲及び/又は血液に周期的に変化する電界を発生させることによって血液の形状を周期的に変化させ、その形状変化に伴う物理的性質の変化を検出し、物理的性質の変化がなくなるまでの時間に基づいて血液凝固時間を算出する。本発明によれば、上述したエレクトロウェッティングの原理を応用した新規な血液凝固検出技術を提供することができるため、技術の豊富化に資することができる。
血液凝固検出装置100の概略を示す断面図。 血液凝固検出装置100を用いた血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャート。 印加電圧の波形の一例を示すグラフ。 インピーダンスの経時変化の一例を示すグラフ。 血液凝固検出装置200の概略を示す断面図。 血液凝固検出装置200を用いた血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャート。 血液凝固検出装置300の概略を示す断面図。 血液凝固検出装置400の概略を示す断面図。 血液凝固検出装置500の概略を示す断面図。 血液凝固検出装置500を用いた血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャート。 血液凝固検出装置100の別例の概略を示す断面図。 実施例の血液凝固検出装置100の作製手順を示す説明図。 実施例1〜4で測定した時間とインピーダンスとの関係を示すグラフ。
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の血液凝固検出装置100の概略を示す断面図である。図1(a)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生していない状態を示し、図1(b)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生している状態を示す。
血液凝固検出装置100は、図1に示すように、チップ110と、交流電源130と、インピーダンス測定装置150とを備えている。
チップ110は、基板120と、一対の電圧印加用電極132,134と、誘電体層140と、2つの検出用電極152,154とを備えており、2つの検出用電極152,154が配設された側の面が血液載置部Sを構成する。
基板120は、SiO2などの絶縁材料で形成された板状部材である。
一対の電圧印加用電極132,134は、基板120の表面に離間して形成されている。この電圧印加用電極132,134は、例えば、スパッタにより形成されたPt電極である。こうした電圧印加用電極132,134の間には、所定の周波数で電圧を0(V)とV(V)の間で変化させる交流電源130が接続されている。
誘電体層140は、一対の電圧印加用電極132,134を覆うように基板120上に形成された層であり、例えば、化学気相成長法(CVD)により形成された厚さ数μm〜数100μm程度のセラミック層(例えばSi34層、AlN層、Al23層、SiO2層、TiO層、TiO2層、BaTiO3層、SrTiO3層など)あるいは樹脂層(フッ素樹脂層、パリレン層、アクリル樹脂層、塩化ビニール樹脂層、エポキシ樹脂層など)である。
2つの検出用電極152,154は、誘電体層140の表面に設けられており、例えば、Pt粒子を含むペーストを塗布乾燥して得られたPt電極である。この検出用電極152,154は、端子部152a,154aを備えている。この端子部152a,154aには、インピーダンス測定装置150が接続され、端子部152a,154a間のインピーダンス変化を測定できるようになっている。
次に、こうして構成された本実施形態の血液凝固検出装置100を用いた血液凝固検出処理の一例について説明する。図2は、本実施形態の血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャートである。
まず、交流電源130及びインピーダンス測定装置150を接続したチップ110の血液載置部Sに、測定対象である血液を滴下する(ステップS100)。なお、血液としては、動物から採血した新鮮血液に抗凝固剤としてのアルセバー液やクエン酸ナトリウム水溶液を添加して低温保存した保存血液などを用いることができる。
続いて、血液にCaCl水溶液などの凝固試薬を滴下し、交流電源130のスイッチをONにして一対の電圧印加用電極132,134間に交流電圧を印加する。図3に、こうした交流電圧の一例を示す。この交流電圧は、所定の周波数で電圧が0(V)からV(V)の間で変化している。さらに、インピーダンス測定装置150を用いて、2つの検出用電極152,154間のインピーダンスの測定を開始する(ステップS110)。電圧印加用電極132,134間に交流電圧を印加すると、印加電圧の周期的な変化に応じて、測定対象である血液の電荷状態や表面自由エネルギーが周期的に変化し、血液の形状が周期的に変化する。具体的には、電圧が0(V)のときには、図1(a)に示すように血液載置部Sとの接触角θが大きくなり(θ=θ0)、血液載置部Sとの接触面積が小さくなり、高さが高くなる。一方、電圧がV(V)のときには、図1(b)に示すように血液載置部Sとの接触角θが小さくなり(θ=θV)、血液載置部Sとの接触面積が大きくなり、高さが低くなる。2つの検出用電極152,154間のインピーダンスは、こうした血液の周期的な形状の変化に応じて、周期的に変化する。図4は、ステップS110で得られた、2つの検出用電極152,154間のインピーダンスの経時変化の一例を示すグラフである。
続いて、ステップS110で得られたインピーダンスの経時変化のグラフ(例えば図4)から、インピーダンスの測定開始から周期的な変化がなくなるまでの時間Tを、算出する(ステップS120)。血液が凝固すると、電圧の変化による血液の形状変化がなくなるため、インピーダンスの変化が無くなる。このため、時間に対するインピーダンスの変化がなくなった時点つまり時間Tが経過した時点で血液が凝固したとみなすことができる。こうしたことから、時間Tを血液凝固時間とすることができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の交流電源130、一対の電圧印加用電極132,134が本発明の電界発生手段に相当し、インピーダンス測定装置及び2つの検出用電極152,154が検出手段に相当し、インピーダンスが物理的性質に相当する。なお、本実施形態では、血液凝固検出装置を用いた血液凝固検出処理を説明することにより、本発明の血液凝固検出方法の一例も明らかにしている。
以上説明した本実施形態の血液凝固検出装置100によれば、エレクトロウェッティングの原理を応用した新規な血液凝固検出技術を提供することができるため、技術の豊富化に資することができる。
また、この血液凝固検出装置100では、誘電体層140の裏面に設けられた電圧印加用電極132,134間の電圧を変化させると、電圧印加用電極132,134と血液載置部に載置された血液との間で形成されるキャパシタの静電エネルギーが変化した分だけ表面自由エネルギーが変化し、血液載置部Sに対する血液の接触角が変化する。このため、電圧印加用電極132,134間に交流電源130によって交流電圧を印加することで、比較的容易に血液の形状を変化させることができる。
更に、電界発生手段を構成する電圧印加用電極132,134がいずれも誘電体層140の裏面に設けられており、チップ110の上方には電界発生手段を構成する電極がないため、操作性やメンテナンス性がよいし、チップ110の上方の装置構成(例えば検出手段など)の設計自由度が高い。また、電圧印加用電極132,134の電極配置の設計自由度が高い(例えば、Journal of Micromechanics and Microengineering, 16(2006)2053-2059に記載のように、電圧印加用電極132,134をくし歯状とし、その歯が互い違いに配置されるようにすることなども可能である)ため、血液形状の変化量を調整しやすい。
更にまた、離間して設けられた2つの検出用電極152,154を用いて電気的性質の変化を検出するため、電流が確実に血液中を流れる。このため、電気的性質の変化の検出が容易である。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の血液凝固検出装置200の概略を示す断面図である。図5(a)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生していない状態を示し、図5(b)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生している状態を示す。なお、第2実施形態の血液凝固検出装置200のうち、第1実施形態の血液凝固検出装置100と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
血液凝固検出装置200は、図5に示すように、チップ210と、交流電源130と、インピーダンス測定装置150とを備えている。
チップ210は、基板120と、電圧印加用チップ側電極232と、電圧印加用血液側電極234と、誘電体層140と、2つの検出用電極152,154とを備えており、2つの検出用電極152,154が配設された側の面が血液載置部Sを構成する。
電圧印加用チップ側電極232は、基板120の表面を覆うように形成されており、例えば、スパッタにより形成されたPt電極である。電圧印加用血液側電極234はチップ210とは独立して形成されており、例えば、針状のPt電極である。こうした電圧印加用チップ側電極232と電圧印加用血液側電極234との間には、所定の周波数で電圧を0(V)とV(V)の間で変化させる交流電源130が接続されている。
次に、こうして構成された本実施形態の血液凝固検出装置200を用いた血液凝固検出処理の一例について説明する。図6は、本実施形態の血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャートである。なお、第2実施形態の血液凝固検出処理のうち、第1実施形態の血液凝固処理と同じステップについては同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
ステップS205では、電圧印加用血液側電極234を血液に突き刺す。このとき、電圧印加用血液側電極234がチップ210に接触しないようにする。
ステップS210では、血液にCaCl水溶液などの凝固試薬を滴下し、交流電源130のスイッチをONにして電圧印加用チップ側電極232と電圧印加用血液側電極234との間に交流電圧(図3参照)を印加する。さらに、インピーダンス測定装置150を用いて、2つの検出用電極152,154間のインピーダンスの測定を開始する。なお、第2実施形態の血液凝固検出装置200のような構成でも、電圧印加用チップ側電極232と電圧印加用血液側電極234との間の電圧を周期的に変化させると、印加電圧の周期的な変化に応じて、測定対象である血液の電荷状態や表面エネルギーが周期的に変化し、血液の形状が周期的に変化する。具体的には、電圧が0(V)のときには電極との接触角が大きくなるし(図5(a)参照)、電圧がV(V)のときには電極との接触角が小さくなる(図5(b)参照)。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の交流電源130、電圧印加用チップ側電極232及び電圧印加用血液側電極234が本発明の電界発生手段に相当し、インピーダンス測定装置及び2つの検出用電極152,154が検出手段に相当し、インピーダンスが物理的性質に相当する。なお、本実施形態では、血液凝固検出装置を用いた血液凝固検出処理を説明することにより、本発明の血液凝固検出方法の一例も明らかにしている。
以上説明した本実施形態の血液凝固検出装置200では、電界発生手段の構成が異なることによる効果以外は、概ね第1実施形態の効果と同様の効果を有する。このため、以下では、電界発生手段の構成が異なることによる効果についてのみ説明する。
この血液凝固検出装置200では、誘電体層140の裏面に設けられた電圧印加用チップ側電極232と血液に突き刺して電圧印加用血液側電極234との間の電圧を変化させると、電圧印加用チップ側電極232と血液載置部Sに載置された血液との間で形成されるキャパシタの静電エネルギーが変化した分だけ表面自由エネルギーが変化し、血液載置部Sに対する血液の接触角が変化する。このため、電圧印加用チップ側電極232と電圧印加用血液側電極234との間に交流電源130によって交流電圧を印加することで、比較的容易に血液の形状を変化させることができる。
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の血液凝固検出装置300の概略を示す説明図である。図7(a)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生していない状態を示し、図7(b)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生している状態を示す。
血液凝固検出装置300は、第1実施形態における2つの検出用電極152,154の代わりに1つの検出用電極353を用いたこと、この検出用電極353のうち血液を挟んで対をなすように設けられた2つの端子部353a、353bの間のインピーダンスを測定すること以外は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態の血液凝固検出装置100と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。こうした血液凝固検出装置300でも、図2のフローチャートにしたがって血液凝固処理の作業を行うことにより、血液凝固時間を測定することができる。但し、第3実施形態では、検出用電極353と血液とが並列接続されているのに対し、第1実施形態では検出用電極152と血液と検出用電極154とが直列接続されているため、第1実施形態の方が血液のインピーダンスの測定精度が高い。
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態の血液凝固検出装置400の概略を示す説明図である。図8(a)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生していない状態を示し、図8(b)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生している状態を示す。
血液凝固検出装置400は、第2実施形態における2つの検出用電極152,154の代わりに1つの検出用電極453を用いたこと、この検出用電極453のうち血液を挟んで対をなすように設けられた2つの端子部453a、453bの間にインピーダンスを測定すること以外は、第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態の血液凝固検出装置200と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。こうした血液凝固検出装置400でも、図6のフローチャートにしたがって血液凝固処理の作業を行うことにより、血液凝固時間を測定することができる。但し、第4実施形態では、検出用電極453と血液とが並列接続されているのに対し、第2実施形態では検出用電極152と血液と検出用電極154とが直列接続されているため、第2実施形態の方が血液のインピーダンスの測定精度が高い。
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態の血液凝固検出装置500の概略を示す説明図である。図9(a)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生していない状態を示し、図9(b)は血液の周囲及び/又は血液に電界が発生している状態を示す。なお、第5実施形態の血液凝固検出装置500のうち、第1実施形態の血液凝固検出装置100と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
血液凝固検出装置500は、図9に示すように、チップ510と、交流電源130と、光学系ユニット570とを備えている。
チップ510は、基板120と、一対の電圧印加用電極132,134と、誘電体層140と、疎水性膜560とを備えており、疎水性膜560が敷設された側の面が血液載置部Sを構成する。
疎水性膜560は、誘電体層140を覆うように敷設された疎水性の膜であり、例えばフッ素樹脂膜である。
光学系ユニット570は、発光部572と、受光部574とを備えており、発光部572から照射された照射光の強度や受光部574で受光した透過光の強度に基づき、光の吸収強度を算出するように構成されている。
発光部572は、測定対象である血液の側方に設けられており、照射光(ここではレーザー光)を水平方向に出力することによって、測定対象である血液に照射光を照射するように配置されている。
受光部574は、測定対象である血液の側方で、発光部572とは反対側に設けられており、発光部572から照射され血液を透過してきた透過光を受光するように配置されている。
次に、こうして構成された本実施形態の血液凝固検出装置500を用いた血液凝固検出処理の一例について説明する。図10は、本実施形態の血液凝固検出処理の作業手順を示すフローチャートである。なお、第5実施形態の血液凝固検出処理のうち、第1実施形態の血液凝固処理と同じステップについては同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
ステップS510では、血液にCaCl水溶液などの凝固試薬を滴下し、交流電源130のスイッチをONにして一対の電圧印加用電極132,134間に交流電圧(図3参照)を印加する。さらに、光学系ユニット570によって光の吸収強度の測定を開始する。このとき、電圧印加用電極132,134間の電圧を周期的に変化させると、印加電圧の周期的な変化に応じて、測定対象である血液の電荷状態や表面エネルギーが周期的に変化し、血液の形状が周期的に変化する(図9(a)(b)参照)。そして、こうした血液の形状の周期的な変化に伴い、受光部574が受光する光量に基づいて求められる吸収強度が周期的に変化する。
ステップS520では、ステップS510で得られた吸収強度の経時変化から、これらの測定開始から周期的な変化がなくなるまでの時間Tを算出する。血液が凝固すると、電圧の変化による血液の形状変化がなくなるため、光の吸収強度の変化が無くなる。このため、時間に対するインピーダンスの変化がなくなった時点つまり時間Tが経過した時点で血液が凝固したとみなすことができる。こうしたことから、時間Tを血液凝固時間とすることができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の交流電源130及び一対の電圧印加用電極132,134が本発明の電界発生手段に相当し、光学系ユニット570が検出手段に相当し、光の吸収強度が物理的性質に相当する。なお、本実施形態では、血液凝固検出装置を用いた血液凝固検出処理を説明することにより、本発明の血液凝固検出方法の一例も明らかにしている。
以上説明した本実施形態の血液凝固検出装置500では、疎水性膜560が設けられていること及び検出手段の構成が異なることによる効果以外は、概ね第1実施形態の効果と同様の効果を有する。このため、以下では、疎水性膜が設けられていること及び検出手段の構成が異なることによる効果についてのみ説明する。
この血液凝固検出装置500では、血液載置部Sの表面に疎水性膜560が形成されて疎水性が高められているため、電界が発生していないときの、血液載置部に対する血液の接触角θが大きくなる。このため、電界が発生しているときと電界が発生していないときの血液の形状の変化が大きくなり、検出感度を高めることができる。ところで、一般的に、疎水性の膜は導電性が低い傾向にある。このため、第1〜第4実施形態のように、検出用電極152,154,353,453などを用いる態様では、検出用電極が露出した血液載置部Sの表面に疎水性の膜を敷設すると、検出用電極の検出感度が落ちてしまう。しかし、本実施形態では、こうした検出用電極が必要ないため、疎水性膜を設けたとしても検出感度に悪影響を及ぼすことがない。
[その他の実施形態]
上述した実施形態では、電界を周期的に変化させるにあたり、周期的に電圧を0(V)からV(V)の間で変化させたが、その代わりに周期的に極性を変化させてもよいし、周期的に印加電圧の高低を変化させてもよい。また、印加電圧の波形は、正弦波としたが、矩形波や三角波としてもよいし、パルス波としてもよい。
第1〜4実施形態では、インピーダンス測定装置150を用いてインピーダンスを測定するものとしたが、その他の電気的性質を測定するものとしてもよい。例えば、誘電率や電気抵抗率などを測定するものとしてもよい。
第1,2実施形態では、2つの検出用電極152,154が血液載置部Sの表面に露出したものとしたが、電極152,154の表面には、疎水性の膜が敷設されていてもよい。疎水性の膜が敷設されていれば、電界が発生していないときの血液載置部Sに対する血液の接触角θが大きくなるため、電界が発生しているときと電界が発生していないときの血液の形状の変化が大きくなり、検出感度を高めることができる。このとき、疎水性の膜は、導電性の高いものであることが好ましい。なおこのとき、図11に示すように、電極152,154の表面に検出用誘電体層152b,154bが設けられ、その上に疎水性膜152c,154cが敷設されているものとしてもよい。こうしたものでは、血液載置部Sに対する血液の接触面積が大きくなると検出用電極152,154と血液との間で形成されるキャパシタの静電容量が大きくなり、接触面積が小さくなると静電容量が小さくなる。このため、検出用電極152,154間の静電容量の変化を検出するのに適している。なお、血液の接触面積が大きくなると、血液の左端から右端までの距離が長くなり血液を誘電体とするキャパシタ部分の電極間距離が長くなる分静電容量が小さくなるし、血液の接触面積が小さくなると、その分だけ静電容量が大きくなるものの、その影響は微小と考えられる。
第3,4実施形態では、1つの検出用電極353又は453が血液載置部Sの表面に露出したものとしたが、検出用電極353や453の表面には、疎水性の膜が形成されていてもよい。この場合も、疎水性の膜は、導電性の高いものが好ましい。
第5実施形態では、電界発生手段は、第1実施形態と同様のものとしたが、第2実施形態と同様のものとしてもよい。
第5実施形態では、疎水性膜560を備えたものとしたが、疎水性膜560を備えていなくてもよい。この場合、誘電体層140として、疎水性の高いものを用いることが好ましい。
第5実施形態では、光の吸収強度を測定するものとしたが、その他の光学的性質を測定するものとしてもよい。例えば、測定対象である血液の上方にフォトセルを配置して、光の散乱強度を測定するものとしてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下では、第1実施形態の血液凝固検出装置100を具体的に作製した例について、実施例として説明する。
[血液凝固検出装置の作製]
図12は、実施例の血液凝固検出装置100の作製手順を示す説明図である。まず、5mm×5mmのSiO2製の基板120を用意した(図12(a))。そして、基板120の表面に、幅1mmのマスキングテープ122を貼り、それぞれ5mm×2mmの領域に分割した(図12(b))。続いて、スパッタを行い300μmのPt層(電圧印加用電極132,134)を形成し(図12(c))、マスキングテープ122をはがすことによって、それぞれ5mm×2mm×厚さ300μmの一対の電圧印加用電極132,134を形成した(図12(d))。そして、電圧印加用電極132,134を覆うように、基板120の表面にCVDにてSi34からなる誘電体層140を2μmの厚さとなるように形成した(図12(e))。さらに、誘電体層140の上に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルにPt粉末を分散させたPtペーストをそれぞれ5mm×2mmで1mmの間隔を開けて2箇所塗布して乾燥させ、厚さ100μm程度の一対の検出用電極152,154を形成した(図12(f))。こうして得られたチップ110に、交流電源130及びインピーダンス測定装置150を接続して、血液凝固検出装置100を得た(図12(g))。
[インピーダンス測定]
チップ110の血液載置部Sに4μlの馬保存血液(コージンバイオ社製)を滴下後、凝固試薬(50mM CaCl2水溶液)2μlを滴下し、血液と電極の間に図3に示す正弦波の交流電圧を印加し、そのときのインピーダンスの変化をインピーダンスアナライザで測定した。なお、交流電圧条件は、実施例1では0V−50V,1Hz、実施例2では0V−30V,1Hz、実施例3では0V−10V,1Hz、実施例4では0V−50V,10Hzとした。
[結果]
図13(a)〜(d)に実施例1〜4のインピーダンス測定結果を示す。実施例1〜4では、いずれも12〜13秒で周期的な変化がなくなっている。このように周期的な変化がなくなったのは、血液が凝固したことによって形状変化しなくなったことを示すもの推察された。よって、この方法では、血液の凝固を検出できることがわかった。なお、実施例1〜4では、いずれも時間の経過とともにインピーダンスが増加したが、これは、水分が蒸発したことや血液凝固の進行に起因するものと推察された。
また、交流電圧条件を10Hzとした実施例4では、交流電圧条件を1Hzとした実施例1〜3に比して、分解能が高いため周期的な変化がなくなるタイミングを精度よく判定することができた。このことから、印加する交流電圧の周波数は大きい方がよいと推察された。一方で、周波数が大きすぎる場合(例えば1kHzなど)、電気的性質や光学的性質の変化を検出する検出系が追従しなくなるおそれがあるため、周波数は、1Hz以上100Hz以下程度が好適であると推察された。
また、周波数が同じで印加電圧の振幅を変えた場合、実施例1〜3から明らかなように、印加電圧の振幅が大きいほど、周期的な変化がなくなるタイミングの判断が容易であった。これは、印加電圧が大きいほど、血液の形状の変化量が大きくなるためと推察された。印加電圧の振幅としては、例えば、1V以上200V以下が好適であると推察された。
本発明は、生物実験、モニタリング若しくは診断または医薬の創成などのバイオ産業の分野において利用可能である。
100 血液凝固検出装置、110 チップ、120 基板、122 マスキングテープ、130 交流電源、132,134 電圧印加用電極、140 誘電体層、142,144 凹部、150 インピーダンス測定装置、152,154 検出用電極、152a,154a 端子部、152b,154b 検出用誘電体層、152c,154c 疎水性膜、200 血液凝固検出装置、210 チップ、232 電圧印加用チップ側電極、234 電圧印加用血液側電極、300 血液凝固検出装置、310 チップ、353 検出用電極、353a,353b 端子部、400 血液凝固検出装置、410 チップ、453 検出用電極、453a,453b 端子部、500 血液凝固検出装置、510 チップ、560 疎水性膜、570 光学系ユニット、572 発光部、574 受光部、S 血液載置部、T 血液凝固時間。

Claims (10)

  1. 測定対象である血液を載置する血液載置部と、
    前記血液載置部に載置された血液の周囲及び/又は血液に、周期的に変化する電界を発生させる電界発生手段と、
    前記電界発生手段によって前記電界を発生させた状態で、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う物理的性質の変化を検出する検出手段と、
    を備えた血液凝固検出装置。
  2. 前記血液載置部は、誘電体層の表面側に設けられ、
    前記電界発生手段は、前記誘電体層の裏面に設けられた一対の電圧印加用電極の間、又は、前記血液載置部に載置された血液と前記誘電体層の裏面に設けられた電圧印加用電極との間に周期的に変化する電圧を印加する手段である、
    請求項1に記載の血液凝固検出装置。
  3. 前記検出手段は、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う電気的性質の変化を検出する手段である、
    請求項1又は2に記載の血液凝固検出装置。
  4. 前記血液載置部は、前記測定対象である血液とそれぞれ異なる位置で接触する2つの検出用電極を含んで構成され、
    前記検出手段は、前記2つの検出用電極の間の電気的性質の変化を検出する手段である、
    請求項3に記載の血液凝固検出装置。
  5. 前記血液載置部は、前記測定対象である血液を載置する1つの検出用電極であり、
    前記検出手段は、前記検出用電極のうち前記血液を挟んで対をなすように設けられた2つの端子部間の電気的性質の変化を検出する手段である、
    請求項3に記載の血液凝固検出装置。
  6. 前記電気的性質は、インピーダンス又は静電容量である、
    請求項4又は5に記載の血液凝固検出装置。
  7. 前記検出手段は、前記血液載置部に載置された血液の形状変化に伴う光学的性質の変化を検出する手段である、
    請求項1又は2に記載の血液凝固検出装置。
  8. 前記光学的性質は、光の吸収強度又は散乱強度である、
    請求項7に記載の血液凝固検出装置。
  9. 前記血液載置部の表面には、疎水性の膜が形成されている、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液凝固検出装置。
  10. 測定対象である血液の周囲に周期的に変化する電界を発生させた状態で、前記血液の形状変化に伴う物理的性質の変化を検出し、該物理的性質の変化がなくなるまでの時間に基づいて血液凝固時間を算出する、
    血液凝固検出方法。
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