JP7304773B2 - 疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法 - Google Patents
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Description
OCT装置の応用として、OCT Angiography(OCTA)と呼ばれる技術が開発されている。OCTAは、非侵襲的に血液の流動に基づいて、血管構造を抽出することができる技術である。OCTAの原理は、OCTで眼底の同一部位を複数枚撮影して、変化のあるシグナルのみを画像化するものであり、血液が流れている部位ではOCT画像間に変化が生じ、この動きのある部分のみを血流情報として描出して血管像が構築される。
そこで、本発明は、前記従来の状況に鑑み、簡単な構成で疑似血流を発生させることができる疑似血流発生装置を開発することを目的とする。
(1) 第1の発明は、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生装置に関するものであり、
疑似血液及び前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を収容する液体容器と、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加する電界印加装置と
を有し、
前記液体容器の少なくとも一部が管状の疑似血管となっており、
前記電界印加装置により前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする。
(2) 第1の発明の疑似血流発生装置においては、前記液体容器が、前記疑似血管と、前記疑似血管の少なくとも一方の端に設けられた液溜め部とを有することが好ましい。
(3) 前記(2)の疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、鉛直方向又は水平方向に延びる中空管であることが好ましい。
(4) 前記(3)の疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、前記疑似血管との連結部から鉛直上向き方向及び鉛直下向き方向に延びる中空管とすることができる。
(5) 前記(2)~(4)のいずれかの疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、前記疑似血管の両端に設けられていることが好ましい。
(6) 前記いずれかの疑似血流発生装置においては、前記液体容器が、前記疑似血液と前記非相溶性液体とを内部に密封して収容する容器であることが好ましい。
(7) 前記いずれかの疑似血流発生装置においては、前記電界印加装置が、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧装置とを有することが好ましい。
(8) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、前記電極を、一対の平板電極とすることができる。
(9) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、前記電極を、複数に分割され、それぞれの電極について個別にオン・オフを制御できるアレイ電極とすることができる。
(10) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、少なくとも2方向に電界を印加する、2以上の電極対を有することにより、同一平面上の任意の方向に電界を印加することもできる。
(11) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、少なくとも3つの異なる方向に電界を印加する、3以上の電極対を有することにより、任意の3次元方向に電界を印加することもできる。
(12) 前記(7)~(11)のいずれかの疑似血流発生装置においては、前記電圧装置が、直流電圧及び/又は交流電圧を発生させる装置とすることができる。
(13) 前記(5)の疑似血流発生装置においては、前記疑似血管の両端に設けられた前記液溜め部のそれぞれに対して、個別に電界を印加する電界印加装置を有することが好ましい。
(14) 第2の発明は、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生方法に関するものであり、
疑似血管内で流動させる疑似血液に、前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を加えて、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする。
(15) 第2の発明の疑似血流発生方法においては、前記電界が、直流電界又は交流電界とすることができる。
本発明の疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法は、疑似血液を疑似血管内で流動させる装置及び方法であり、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血流を発生させることを特徴としている。
エレクトロウェッティングとは、液滴に電界を印加すると、液滴の表面自由エネルギーが変化することにより、液滴の接触角が変化する現象である。
図2は、エレクトロウェッティングの原理を示す模式図である。図2(A)に示されるように、表面に誘電膜を有する電極上に液滴を形成すると、大気と接する液滴の表面自由エネルギーにより、液滴は盛り上がった形状となる。液滴の盛り上がりの程度は、接触角により表すことができる。接触角とは、図2(A)のθで示されるとおり、液滴の端面が水平面となす角度である。
次に図2(B)に示されるように、液滴に電界を印加すると、液滴の表面自由エネルギーが変化することにより、液滴の盛り上がりの程度、すなわち接触角が変化する。
図2では、液滴が大気と接触している場合を示したが、互いに相溶性のない2種類以上の液体を接触させて、液体と液体の間に界面を生じさせた場合でも、同様に、表面自由エネルギーの変化を利用して、エレクトロウェッティングにより液体をマニピュレーションすることが可能である。
本発明の疑似血流発生装置では、疑似血液と、疑似血液とは相溶性が無い液体である非相溶性液体とを、同じ液体容器内に収容し、疑似血液と非相溶性液体とを接触させて両者の間に界面を生じさせる。
ここで、液体容器の少なくとも一部は管状に形成されており、その管状部分を疑似血管として使用する。
そして、電界印加装置を用いて、液体容器内の疑似血液及び/又は非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、液体をマニピュレーションして、疑似血液を疑似血管内で流動させることができる。
図1に示されるとおり、疑似血流発生装置1は、液体容器2と電界印加装置3とを有している。液体容器2は、管状の疑似血管201と、2つの液溜め部202,203と、連通部204とを有している。疑似血管201の内部には、逆流を防止するための逆流防止弁205が設けられている。
液体容器2の内部には、疑似血液4と非相溶性液体5が密封して収容されている。疑似血液4と非相溶性溶液5とは互いに相溶性がないため、両者は分離しており、比重の重い疑似血液4は底面側に存在し、比重の軽い非相溶性液体5は上面側に存在している。
電界印加装置3は、電圧装置301と、液溜め部202に電界を印加するための電極302,303と、液溜め部203に電界を印加するための電極304,305とを有している。電圧装置301は、対となる電極302,303の間に電圧を印加することができ、これとは個別に、他の対となる電極304,305の間に電圧を印加することができる。電圧装置301は、直流電圧のみならず交流電圧を印加することもできる。
これとは逆向きの血流を発生させる場合には、逆流防止弁205の向きを反対側とし、電極304,305により液溜め部203に変動する電界を印加すると、今度は液溜め部203でポンプのような振動が生じ、液溜め部203内に存在する疑似血液4を疑似血管201へ押し出して、疑似血流を発生させることができる。
本発明の疑似血流発生装置で用いる液体容器は、少なくとも一部が管状の疑似血管となっている容器であれば、いかなる容器でも用いることができる。液体容器は、全体が管状の疑似血管となっている容器を用いることもできるが、疑似血管以外の部分を有することが好ましく、例えば、疑似血管の少なくとも一方の端に液溜め部を有することが好ましい。
液溜め部は、疑似血管よりも容積の大きな形状となっているものであれば、如何なる形状のものでも用いることができ、これらに限定されるわけではないが、円筒状、角柱状、球状等とすることができる。
液溜め部は、より多くの量の疑似血液及び非相溶性液体を収容することで、エレクトロウェッティングにより疑似血液を流動させる効率を向上させることができる。
液溜め部は、鉛直方向又は水平方向に延びる中空管とすることができる。ここで、疑似血管を直線状とすれば、疑似血管と液溜め部によりHの字状の液体容器とすることもできる。
液体容器を形成する材料としては、どのような材料を用いてもよいが、疑似血管とする部分には、光透過性のある材料を用いることが好ましい。光透過性のある材料としては、これらに限定されるわけではないが、ガラス、樹脂等を用いることができる。光透過性を有する材料とは、ガラスのような透明な材料に限らず、光を少しでも透過できるものであれば、どのような材料であってもよい。
疑似血管を網状に分岐した形状にする場合には、ヒトの網膜表層毛細血管層、網膜深層毛細血管層、網膜外層又は脈絡膜毛細血管板等の血管構造を疑似した構造としてもよく、又は、碁盤目状に分岐した人工的な構造としてもよい。
疑似血管は、疑似血管がむき出しとなった状態のものでもよく、眼底組織を疑似した材料に埋め込んだ状態としたものでもよい。眼底組織を疑似した材料としては、光透過性のある材料を用いることが好ましい。
疑似血管内には、疑似血液のみを流動させることもできるが、疑似血管中を疑似血液の層と非相溶性溶液の層が2層に分かれて流動させるようにしてもよい。
電極は、1対の平板電極でもエレクトロウェッティングを行うことが可能であるが、エレクトロウェッティングの自由度を高め、より複雑な疑似血流の制御を行うためには、様々なパターンの電界を印加することができる電極とすることが好ましい。
そのような電極としては、例えば、これらに限定されるわけではないが、電極が、複数に分割され、それぞれの電橋について個別にオン・オフを制御できるアレイ電極を用いることができる。また、少なくとも2方向に電界を印加する、2以上の電極対を使用することにより、同一平面上の任意の方向に電界を印加することもできる。さらに、少なくとも3つの異なる方向に電界を印加する、3以上の電極対を使用することにより、任意の3次元方向に電界を印加することもできる。
本発明の疑似血流発生方法は、疑似血管内で流動させる疑似血液に、疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性溶液を加えて、疑似血液及び/又は非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血液を疑似血管内で流動させる方法である。
本発明の疑似血流発生方法で使用する疑似血液、非相溶性溶液、疑似血管等は、上記したものと同じものを用いることができ、印加する電界としては、直流電界、交流電界、任意の信号により変動する電界等を用いることができる。
Claims (15)
- 疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生装置において、
疑似血液及び前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を収容する液体容器と、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加する電界印加装置と
を有し、
前記液体容器の少なくとも一部が管状の疑似血管となっており、
前記電界印加装置により前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする、疑似血流発生装置。 - 前記液体容器が、前記疑似血管と、前記疑似血管の少なくとも一方の端に設けられた液溜め部とを有することを特徴とする、請求項1に記載の疑似血流発生装置。
- 前記液溜め部が、鉛直又は水平方向に延びる中空管であることを特徴とする、請求項2に記載の疑似血流発生装置。
- 前記液溜め部が、前記疑似血管との連結部から鉛直上向き方向及び鉛直下向き方向に延びる中空管であることを特徴とする、請求項3に記載の疑似血流発生装置。
- 前記液溜め部が、前記疑似血管の両端に設けられていることを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の疑似血流発生装置。
- 前記液体容器が、前記疑似血液と前記非相溶性液体とを内部に密封して収容する容器であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の疑似血流発生装置。
- 前記電界印加装置が、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧装置とを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の疑似血流発生装置。
- 前記電極が、一対の平板電極であることを特徴とする、請求項7に記載の疑似血流発生装置。
- 前記電極が、複数に分割され、それぞれの電極について個別にオン・オフを制御できるアレイ電極であることを特徴とする、請求項7に記載の疑似血流発生装置。
- 少なくとも2方向に電界を印加する、2以上の電極対を有することにより、同一平面上の任意の方向に電界を印加することができる、請求項7に記載の疑似血流発生装置。
- 少なくとも3つの異なる方向に電界を印加する、3以上の電極対を有することにより、任意の3次元方向に電界を印加することができる、請求項7に記載の疑似血流発生装置。
- 前記電圧装置が、直流電圧及び/又は交流電圧を発生させる装置であることを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の疑似血流発生装置。
- 前記疑似血管の両端に設けられた前記液溜め部のそれぞれに対して、個別に電界を印加する電界印加装置を有することを特徴とする、請求項5に記載の疑似血流発生装置。
- 疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生方法であって、
疑似血管内で流動させる疑似血液に、前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を加えて、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする、疑似血流発生方法。 - 前記電界が、直流電界又は交流電界であることを特徴とする、請求項14に記載の疑似血流発生方法。
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