JP2014169251A - 乳化組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】界面活性剤を添加せずに、油相の粒子径が微細で、安定性に優れたゲル組成物及びO/W型乳化組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】
以下の(A)〜(D)を含有するゲル組成物。
(A)トコフェリルリン酸エステルの塩
(B)グリセリン
(C)1,2−ペンタンジオール
(D)油剤
【選択図】なし

Description

本発明は、トコフェリルリン酸エステルの塩を含有するゲル組成物およびこれを用いて調製されるO/W型乳化組成物に関する。
トコフェロールのリン酸エステル(トコフェリルリン酸エステル)の塩は、水に溶解性を示すことから使用勝手のよいトコフェロール原料として種々の医薬品や化粧品に配合されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、2価の金属塩が溶存している乳化系等に配合すると乳化ミセルの凝集が発生し、沈殿が生じる事が指摘されている。このような凝集沈殿の発生を抑制するために多価アルコールとリン酸水素二カリウムなどのリン酸塩を併用することでエマルションの安定化を図る方法が提案されている(特許文献3)。またトコフェリルリン酸のナトリウム塩(トコフェリルリン酸ナトリウム)はアニオン性の両親媒性物質であり、界面活性機能を有することが知られている(非特許文献1)。このトコフェリルリン酸ナトリウムの界面活性能を利用して乳化組成物を調製する試みがなされている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、非特許文献1)。
一方、化粧料は肌に直接塗布するものであり、肌に与える負担を考慮し、肌に供給しようとする成分以外の添加物の配合を極力減量するか、又は無添加とする組成にする努力がなされている。トコフェロールのリン酸エステルの塩を配合した乳化組成物で、界面活性剤を使用しない、安定な化粧料用乳化組成物として、本出願人は先に特許文献7の技術を提案した。この技術はトコフェリルリン酸エステルの塩と、特定の油剤と多価アルコールを含有した乳化組成物であって、乳化粒子径がトコフェリルリン酸エステルの塩単独で乳化した時よりも小さくなり安定化するという技術である。
また微細な水中油型の乳化物が得られる、界面科学的手法を用いた乳化技術として、D相乳化法(非特許文献2)が知られている。D相乳化法は水 と多価 アルコールを含んだ界面活性剤等方性溶液から出発し、油相をこの界面活性剤溶液に分散させることによってO/Dゲルエマルションを形成させ、このゲルエマルションに水相を添加することによりO/Wエマルションとする方法である(非特許文献3)。
特許第3035742号公報 特許第3950216号公報 特許第3186763号公報 特開平09−309813号公報 特開2007−160287号公報 特開2011−016761号公報 特開2012−206956号公報
坂 貞徳ほか、2006年6月20日発行、日本化粧品技術者会誌140頁、2006年 Fragrance Journal,4,34-41(1993) 鷺谷広道ほか、油化学、第40巻第11号、988-994頁、1991年
界面活性剤を添加せずに、油相の粒子径が微細なゲル組成物及び油相粒子が微細で安定な乳化組成物を得ることを課題とする。
本発明者は、グリセリンおよび1,2−ペンタンジオールと、トコフェリルリン酸エステル塩の混合溶液に油剤を分散させて調製したゲル組成物の油相粒子径、および該ゲル組成物を水または水相で希釈して得られる乳化組成物の乳化粒子径(油相の粒子径)が微細になることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)以下の(A)〜(D)を含有するゲル組成物。
(A)トコフェリルリン酸エステルの塩
(B)グリセリン
(C)1,2−ペンタンジオール
(D)油剤
(2)グリセリンと1,2−ペンタンジオールの配合質量の比率が16:1〜2.75:1である(1)に記載のゲル組成物。
(3)油相の粒子径が300nm未満である(1)又は(2)に記載のゲル組成物。
(4)トコフェリルリン酸エステルの塩がトコフェリルリン酸ナトリウムである(1)〜(3)のいずれかに記載のゲル組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル組成物を、さらに水または水相で希釈して得られるO/W型乳化組成物。
(6)化粧料または皮膚外用剤である(5)に記載のO/W型乳化組成物。
本発明のゲル組成物および乳化組成物の油相の粒子は、高圧乳化装置などの特別な乳化装置を使用しなくても、微細となる。また、本発明のゲル組成物および乳化組成物は微細で均一な乳化粒子のため、安定性に優れている。
本発明のゲル組成物及び乳化組成物は、従来技術で述べたO/Dゲルエマルション及びD相乳化法の技術を応用して調製する。本発明のゲル組成物は所謂合成の界面活性剤を必要としない。本発明の実施にあたっては、以下に説明する(A)トコフェリルリン酸エステルの塩、(B)グリセリン、(C)1,2−ペンタンジオール、(D)油剤の4成分から、水相に即座に分散してO/W型乳化溶液となるゲル組成物を得る。
必須成分
(A)トコフェリルリン酸エステルの塩
本発明で用いられるトコフェリルリン酸エステルの塩類は何れでも良いが、塩はナトリウム塩、ジナトリウム塩、カリウム塩、ジカリウム塩等の金属塩が良い。特に好ましくはトコフェリルリン酸ナトリウムである。トコフェリルリン酸エステルの塩類の配合量は特に限定されないが、ゲル組成物を100質量%とした場合に、0.2〜5質量%、好ましくは0.2〜2質量%、さらに好ましくは0.2〜1.5質量%配合することが好ましい。
トコフェリルリン酸ナトリウムは、白色または微黄色の粉末状態を呈し、室温で水に容易に溶解する。トコフェリルリン酸ナトリウムの出発物質であるトコフェロールはビタミンE機能を有する。ビタミンEは脂溶性ビタミンとして有用なビタミンであり、ビタミンCなどの水溶性抗酸化化合物と協同して紫外線などにより惹起される酸化ストレスから皮膚を守る働きを持つ。
トコフェリルリン酸ナトリウムは、ビタミンE(トコフェロール)が化学的に不安定なため、これを改善するために誘導体化した化合物である。トコフェリルリン酸ナトリウムは、皮膚内の脱リン酸化酵素によりビタミンEに変換され、抗酸化作用や抗炎症作用を発揮して肌荒れを改善するので、その美容効果を期待して化粧料などの皮膚外用剤に配合される。酸化防止作用も有するので酸化防止剤としても配合される。トコフェリルリン酸ナトリウムは、親水性と親油性の両方の性質を有する両親媒性のビタミンE誘導体であり、皮膚への浸透性が高い。トコフェリルリン酸ナトリウムは、昭和電工株式会社製の「ビタミンEリン酸ナトリウム」を例示できる。
(B)グリセリン
本発明で用いるグリセリンは化粧料で用いることができる規格のものであれば何れでも使用可能である。
(C)1,2−ペンタンジオール
本発明で用いる1,2−ペンタンジオールは化粧料で用いることができる規格のものであれば何れでも使用可能である。
(B)グリセリンと(C)1,2−ペンタンジオールの比率(ゲル組成物中の質量比率)は16:1〜2.75:1であることが好ましい。グリセリンと1,2−ペンタンジオールの質量比率を16:1〜2.75:1の範囲にすると、ゲル組成物中の油相の粒子径を300nm未満にすることができる。得られたゲル組成物を、希釈せずにそのまま化粧料とする場合や、水相で希釈して化粧料とする場合であっても一時的にゲルの状態で長期保存する場合には、グリセリンと1,2−ペンタンジオールの質量比率を16:1〜3:1の範囲にすることが好ましい。グリセリンと1,2−ペンタンジオールの質量比率を16:1〜3:1の範囲にすると、油剤の粒子径をほぼ300nm未満に調整できるだけでなく、ゲル組成物が安定になる。安定なゲル組成物は、長期間保管することができるので好ましい。
(B)グリセリンと(C)1,2−ペンタンジオールの合計量は、ゲル組成物を100質量%とした場合に、40〜50質量%であることが好ましい。
本発明のゲル組成物、あるいはゲル組成物を用いて調製されるO/W型乳化組成物にはグリセリンと1,2−ペンタンジオール以外の多価アルコールを本発明の効果を阻害しない範囲で任意に配合することができる。このような多価アルコールとしては、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等が例示できる。
グリセリンと1,2−ペンタンジオール以外の多価アルコールは、ゲル組成物を希釈してO/W型の乳化組成物とする際の、水相に配合することが好ましい。
(D)油剤
本発明に用いる油剤としては、トリグリセリド、液体蝋、エステル油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油などが例示できる。
トリグリセリドとしてはオリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ種子油、アボカド油、サフラワー油、米糠油、米胚芽油、小麦胚芽油、ヒマシ油、ブドウ種子油、アーモンド油、ヤシ油、パーム油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等、液体蝋としてはホホバ油等が例示できる。
エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3−ブチレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸1,3−ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリル等が例示できる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が例示できる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が例示できる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が例示できる。
シリコーン油として、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン、シクロペンタシロキサン等が例示できる。
本発明においては、油剤として、ネオペンタン酸イソステアリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリル、スクワラン、マカデミアナッツ油、ヒマワリ種子油を用いることが特に好ましい。
(E)水
本発明のゲル組成物を得るためには水は必須成分ではない。
ゲル組成物からO/W型の乳化組成物を得るためには水は必須成分である。
本発明のO/W型の乳化組成物を得るためには、上記したようにグリセリンおよび1,2ペンタンジオールと、トコフェリルリン酸エステル塩とによるゲル組成物をまず調製する(本発明においては界面活性剤を使用しないため、D相ではないが、便宜上本明細書においてもこの溶液を「D相」と略記することがある)。
次にこのD相溶液中に、油剤を分散させてO/Dゲルに相当するゲル組成物を調製する(なおこのゲル組成物は、本発明においては界面活性剤を使用しないため、O/Dゲルではないが、便宜上「O/Dゲル組成物」と本明細書においても略記することがある)。このO/Dゲル組成物を水相で希釈してO/W型の乳化組成物を調製する。
O/W型の乳化組成物を調製する時の水は、水相成分として必須である。また、水の一部をあらかじめD相に配合しても構わない。D相に水を配合する場合には、水の配合量は5質量%を超えないことが好ましい。5質量%を超えて配合すると、O/Dゲル組成物の油剤(油相)の粒子径が大きくなり本発明の好ましい特性(油相の粒子径が300nm未満)を阻害する。
本発明の乳化組成物の水相には、任意成分として化粧料に通常配合される多価アルコール、エタノール、増粘剤、防腐剤、美容成分、薬効成分などを含んでも良い。
本発明のO/W型の乳化組成物は化粧水、美容液、乳液、ジェル、クリーム、パック、日焼け止め等の化粧料として使用することができる。また医薬品、医薬部外品として承認されている成分を配合することで、医薬部外品や医薬品などの皮膚外用剤としても使用することができる。
任意成分
本発明のゲル組成物、O/W型の乳化組成物である皮膚外用剤(医薬、医薬部外品)、化粧料には、任意成分として発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、保香剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
本発明のO/W型の乳化組成物に配合する増粘剤は、本発明において乳化組成物の安定性を向上させる。また、増粘剤を配合することで乳化組成物の剤型のバリエーションを増やすことができる。本発明に使用する増粘剤としては、水溶性高分子が好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよい。
たとえば、天然高分子としては、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、グアガム、カチオン化グアガム、アニオン化グアガム、タラガム、アラビアガム、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、クインスシード、デキストラン、等が例示できる。
半合成高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト等が例示できる。
合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ジアルキルポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド、ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、合成スメクタイト、等が例示できる。
増粘剤は二種以上を組み合わせてもよい。
これらの増粘剤を配合する場合、配合量は、好ましくはO/W型の乳化組成物当たり0.01〜3質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。配合量が0.01質量%に満たないと、目的とする増粘効果が十分でなく、3質量%を超えると、化粧料にぬるつき感やべたつき感を与えるので好ましくない。
以下に比較例、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
1.ゲル組成物(O/Dゲル組成物)の調製と油相粒子測定試験
本発明のゲル組成物を調製し、ゲル組成物(O/Dゲル)の油相粒子を測定した。
(1)ゲル組成物の調製手順
表1の組成の比較例1〜8のゲル組成物、表2の組成の実施例1〜18のゲル組成物を調製する。尚、各表において組成の配合量の単位は質量%である。調製手順は以下のとおりである。
(A)トコフェリルリン酸エステル塩と、(B)グリセリンおよび(C)1,2−ペンタンジオール、水(任意成分)を混合しD相とする。次に(D)油性成分を徐々に添加して撹拌し、最後に残余の水を加えてO/Dゲル組成物を調製した。ゲル組成物の調製は室温で行った。尚、配合組成によっては加熱して調製しても構わない。
Figure 2014169251
Figure 2014169251
(2)ゲル組成物中の油相の粒子径測定及び均一性の確認
(油相の粒子径)
表1、表2の組成のO/Dゲル組成物1質量%を90質量%の水に希釈分散させて測定しこれをゲル組成物中の油相の粒子径とみなした。
油相の粒子径(体積平均)はレーザー回折式粒度分布計により測定した。
(均一性)
均一性は、油相の体積平均粒子径を求める際に得られる半値幅を均一性の指標とした。なお半値幅とは、求められた粒度分布の体積ピークを半分にした時の粒度分布幅のことである。レーザー回折式粒度分布計を用いて乳化組成物中の粒度分布を測定し、半値幅を求めることができる。
半値幅の値が小さいほど油剤の粒子の粒径分布幅が狭いことを意味し、均質化されていることを表す。半値幅の値が小さいほど安定性が高いという指標ともなる。
(3)結果
表1の下段に示すとおり、本発明の必須成分である(C)1,2−ペンタンジオールを含まずに、(A)トコフェリルリン酸ナトリウムと(B)グリセリンとを混合した中に(D)油性成分を混合して調製した比較例1〜6のO/Dゲル組成物中の油相の粒子径は、比較例1 1.172μm、比較例2 0.46μm、比較例3 0.389μm、比較例4 0.324μm、比較例5 0.63μm、比較例6 0.456μmであった。いずれも0.3μm(300nm)よりも大きかった。
(B)グリセリンを含まずに(A)トコフェリルリン酸ナトリウムと(C)1,2−ペンタンジオールとを混合した中に、(D)油性成分を混合して調製した比較例7は、すぐに分離しゲル組成物が得られなかった。
また、本発明の必須成分である(C)1,2−ペンタンジオールを1,3−ブチレングリコールに置換した比較例8の油相の粒子径は0.384μmであり、0.3μm(300nm)よりも大きかった。
比較例に対して、表2に示す実施例1〜18のゲル組成物の油相の粒子径は、0.213μm(実施例1)、0.23μm(実施例2)、0.268μm(実施例3)、0.225μm(実施例4)、0.200μm(実施例5)、0.189μm(実施例6)、0.196μm(実施例7)、0.223μm(実施例8)、0.191μm(実施例9)、0.246μm(実施例10)、0.251μm(実施例11)、0.211μm(実施例12)、0.219μm(実施例13)、0.219μm(実施例14)、0.369μm(実施例15)、0.240μm(実施例16)、0.187μm(実施例17)、0.186μm(実施例18)であり、実施例15の組成物を除き、いずれも0.3μm(300nm)よりも小さかった。また、実施例1〜18のゲル組成物はいずれも半値幅が小さく均一性に優れていた。
実施例15のゲル組成物は、成分(A)であるトコフェリルリン酸ナトリウムの配合量が0.2質量%と(A)成分の配合量が最も少ない組成である。
成分(A)であるトコフェリルリン酸ナトリウムの配合量が少なめのため、やや油相の粒子径が大きくなったが、半値幅は0.291と小さく、室温保存でのゲル組成物の安定性は良好であった。
尚、比較例5は成分(A)トコフェリルリン酸ナトリウムの配合量が実施例15と同じ0.2質量%であり、本発明に必須の成分(C)1,2−ペンタンジオールは含まずに実施例15で配合される1,2−ペンタンジオールの10質量%分をグリセリンに置き換えて成分(B)グリセリンを49.8質量%とした組成であるが、前述したとおり比較例5の油相成分の粒子径は0.63μm、半値幅0.468である。実施例15の結果が示すとおりグリセリンの一部を1,2−ペンタンジオールに置き換えただけで、油相成分の粒子径は0.369μmと小さくなっていることがわかる。また実測値から計算すると実施例15の油性成分の粒子径は比較例5の油性成分の粒子径の約0.58倍と小さい。また、均一性の指標である半値幅の値も計算すると比較例5の0.62倍と小さくなっている。成分(A)トコフェリルリン酸ナトリウムの配合量が0.2質量%と少なめの場合でもグリセリンの一部を1,2−ペンタンジオールに置き換えることで油相成分の粒子径は小さくなることが確認できた。
また、ゲル組成物の安定性については、実施例3〜8は、成分(B)グリセリンと成分(C)1,2−ペンタンジオールの合計配合量を49質量%とし、成分(B)と成分(C)の配合比率を16(15.3):1〜2.75(2.76):1にしたゲル組成物であるが、実施例8のゲル組成物が室温(25℃)保存で2週間後に分離し、実施例18のゲル組成物が室温(25℃)保存で1ヶ月後に分離した以外は、室温で数か月間保存後も油浮きせずに安定であった。本発明のO/W型乳化組成物は、本発明のゲル組成物を調製後に水相成分をただちに添加してO/W型乳化組成物としてもよく、その場合に実施例8および実施例18の分離は全く問題とならない。しかしながら、得られたゲル組成物を、希釈せずにそのまま軟膏つぼに充填して化粧料とする場合や、一時的にゲルの状態で室温で長期間保存した後に水相で希釈してO/W型乳化化粧料とする場合には、保存安定性の観点から、成分(A)トコフェリルリン酸ナトリウムの配合量を0.2〜1.5質量%にし、成分(B)グリセリンと成分(C)1,2−ペンタンジオールの配合比率を16:1〜3:1の範囲にすることが好ましいと言える。
2.O/W型乳化組成物の調製と安定性試験
次に、実施例6、比較例4のゲル組成物を水相で希釈してO/W型乳化組成物を調製し、本発明と比較例のゲル組成物から得られるO/W型乳化組成物の安定性を試験し目視観察にて評価した。
実施例19
あらかじめ調製した水相(1,3−ブチレングリコール5質量%、ジプロピレングリコール5質量%、キサンタンガム0.05質量%、カルボキシビニルポリマー0.08質量%、水酸化カリウム0.015質量%、水69.855質量%)溶液に、実施例6のゲル組成物20質量%を加え、均一になるまで撹拌混合してO/W型乳化組成物(乳液)を得た。
得られたO/W型乳化組成物(乳液)の乳化粒子径(平均)を測定したところ、0.206μmであった。また、50℃に1ヶ月間保管後に外観を観察したところ、油分の分離などの異常は認められず、安定なO/W型乳化組成物(乳液)であることを確認した。
比較例9
実施例19と同様に調整した水相溶液に比較例4のゲル組成物を用いてO/W型乳化組成物を調製した。
得られた乳化組成物を50℃に1ヶ月間保管後に外観を観察したところ、油分の分離が認められた。
比較例9のゲル組成物は、O/W型の乳化組成物としたとき、高温安定性が不良であることが確認できた。
さらに、実施例6、15〜18のゲル組成物を用いて表3に示す組成のO/W型乳化組成物(乳液)を調製した例を示す。尚、表3において組成の配合量の単位は質量%である。
Figure 2014169251
実施例20〜実施例24の油中水型乳化組成物(乳液)の乳化粒子径、半値幅、粘度を測定し結果を表3に示した。なお、粘度は、B型粘度計、3号ローターを用いて室温(25℃)条件で30秒間測定した。表中の粘度の単位はmPa・Sである。
実施例20〜24のO/W型乳化組成物(乳液)はいずれも乳化粒子径が小さく、50℃の保存試験でも安定であった。また粘度も乳液としての要件を満たしていた。
以上、表1〜3の結果から、トコフェリルリン酸塩とグリセリンと1,2−ペンタンジオールと油剤とにより、特別な乳化装置を使用しなくても油剤(油相)の粒子径が微細なゲル組成物が得られることが分かった。また、さらにグリセリンと1,2−ペンタンジオールを特定の配合比率にしたり、トコフェリルリン酸塩の配合量を特定することで油剤の粒子径が300nm未満でありかつ室温で長期保存が可能なゲル組成物が得られることが分かった。
さらに、本発明のゲル組成物を希釈して得られるO/W型乳化組成物は微細な粒子径をほぼ維持し、O/W型乳化組成物として安定であることがわかった。したがって、微細な乳化粒子径の乳化化粧料が容易に得られるので、本発明のゲル組成物は乳液をはじめ様々な化粧料に応用可能な汎用性の高い発明であると確信する。
以下に本発明のゲル組成物を利用した化粧料の処方例および使用特性の評価を示す。
〔処方例1〕
(1)乳液の処方
成分 配合量(質量%)
1. トコフェリルリン酸ナトリウム 0.4
2. グリセリン 20
3. 1,2−ペンタンジオール 2
4. ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 10
5. ヒマワリ種子油 5
6. マカデミアナッツ油 5
7. ベタイン 3
8. キサンタンガム 0.1
9. ローカストビーンガム 0.1
10.カルボキシビニルポリマー 0.1
11.水酸化カリウム 0.03
12.フェノキシエタノール 0.2
13.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
14.精製水 残余

混合した成分1〜4の中に、成分5〜7を徐々に加えて混合しゲル組成物とする。次に成分8〜14を加えて乳液とした。
(2)特性
得られた乳液は、使用感、保存安定性ともに優れていた。
〔処方例2〕
(1)美容ジェルの処方
成分 配合量(質量%)
1. トコフェリルリン酸ナトリウム 0.2
2. グリセリン 10
3. 1,2−ペンタンジオール 2
4. ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 6
5. 水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリル 2
6. ネオペンタン酸イソステアリル 2
7. カルボキシビニルポリマー 0.15
8. 水酸化カリウム 0.05
9. 1,3−ブチレングリコール 5
10.ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 2
11.精製水 残余

混合した成分1〜4の中に、混合した成分5〜7を徐々に加えて混合しゲル組成物とする。次に成分8〜11を加えて美容ジェルとした。
(2)特性
得られた美容ジェルは、塗布時にべたつかず、保存安定性に優れていた。

Claims (6)

  1. 以下の(A)〜(D)を含有するゲル組成物。
    (A)トコフェリルリン酸エステルの塩
    (B)グリセリン
    (C)1,2−ペンタンジオール
    (D)油剤
  2. グリセリンと1,2−ペンタンジオールの配合質量比率が16:1〜2.75:1である請求項1に記載のゲル組成物。
  3. 油剤の粒子径が300nm未満である請求項1又は2に記載のゲル組成物。
  4. トコフェリルリン酸エステルの塩がトコフェリルリン酸ナトリウムである請求項1〜3のいずれかに記載のゲル組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のゲル組成物を、さらに水相成分で希釈して得られる乳化組成物。
  6. 化粧料または皮膚外用剤である請求項5に記載の乳化組成物。
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