JP2014162765A - (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を中和、洗浄した後、油水分離して得られた油相を軽沸分離塔、及び精製塔に順次送給して(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、軽沸分離塔における蒸留運転トラブルを防止して、長期に亘り安定かつ効率的に(メタ)アクリル酸エステルを製造する。
【解決手段】エステル化反応液を(メタ)アクリル酸分離塔で中和、洗浄し、中和・洗浄処理液を静置槽で静置して油水分離する際、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽内における油層と水層の界面領域の油水混合液を抜き出し、貯槽に送給して所定時間静置した後、油相を重質分解器で処理し、重質分解器の分解留出物を反応器及び/又は(メタ)アクリル酸分離塔に返送する。
【選択図】図1

Description

本発明は(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に係り、特に、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を中和、洗浄した後、油水分離して得られた油相を軽沸分離塔、及び精製塔に順次送給して(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、軽沸分離塔における蒸留運転トラブルを防止して、長期に亘り安定かつ効率的に(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法に関する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸との総称であり、そのいずれか一方でもよく双方でもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは重合性を有する化合物であって、得られる重合体に優れた特性を付与することができることから、種々の用途、例えば塗料、接着剤、粘着剤、合成樹脂、繊維などの原料として幅広く用いられている。
(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、酸触媒の存在下、(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法が一般に広く用いられている。更に、得られたエステル化反応液から酸触媒及び未反応の(メタ)アクリル酸を除去するために、水で抽出後、アルカリ水溶液で処理し、その後、(メタ)アクリル酸エステルを含有する油層(有機層)と、このような洗浄、中和処理で生じる水及び中和塩を含有する水層とを静置槽で静置分離することが一般的に行われている(例えば特許文献1)。
図2は、従来の一般的なアクリル酸エステルの製造プロセスを示す系統図であって、アクリル酸、アルコールは、酸触媒の存在下、エステル化反応器1を経てエステル化反応し、エステル化反応で生成する水は、エステル化反応器1から系外へ排出される。エステル化反応液は、抽出塔(触媒回収塔)2で水と向流接触して酸触媒が抽出分離、回収され、回収された触媒の一部はエステル化反応器1の入口側へ循環されて再利用され、残部は後段の重質分解器7に送給され、重質分解器7における重質分の分解に使用される。抽出塔2からの反応液は、アクリル酸分離塔3でアルカリ水溶液が添加されて中和されると共に、水で洗浄される。アクリル酸分離塔3からの中和・洗浄処理液は、静置槽4で油水分離され、水相は系外へ排出され、油相は次の軽沸分離塔5に送給されて未反応のアルコール等の軽沸分が蒸留分離され、塔頂より抜き出される。軽沸分離塔5の塔底液は、次の精製塔6に送給されて重質分が蒸留分離され、製品の高純度アクリル酸エステルが塔頂より取り出される。精製塔6の塔底液は、重質分解器7に送給され、重質分の分解、蒸留でアクリル酸やアクリル酸エステルやアルコールを生成させ、これら有価物は反応器に循環させ、この重質分解器7の塔底液は廃油として系外へ排出される。
図3は、従来の一般的なアクリル酸エステルの製造プロセスを示す別の系統図であって、アクリル酸、アルコールは、固体酸触媒の存在下、エステル化反応器1を経てエステル化反応し、エステル化反応で生成する水は、エステル化反応器1から系外へ排出される。エステル化反応液は、アクリル酸分離塔3でアルカリ水溶液が添加されて中和されると共に、水で洗浄される。アクリル酸分離塔3からの中和・洗浄処理液は、静置槽4で油水分離され、水相は系外へ排出され、油相は次の溶媒回収塔(溶媒分離塔)8に送給されて溶媒が蒸留分離され、その後軽沸分離塔5に送給されて未反応のアルコール等の軽沸分が蒸留分離され、塔頂より抜き出される。軽沸分離塔5の塔底液は、次の精製塔6に送給されて重質分が蒸留分離され、製品の高純度アクリル酸エステルが塔頂より取り出される。精製塔6の塔底液は、重質分解器7に送給され、重質分の分解、蒸留でアクリル酸やアクリル酸エステルやアルコールを生成させ、これら有価物は反応器に循環させ、この重質分解器7の塔底液は廃油として系外へ排出される。
なお、従来、(メタ)アクリル酸エステルの製造に当たり、ポリマーやスラッジ等の副生物を分離除去するために、エステル化反応液の中和、洗浄工程及び油水分離工程における油水界面の油水混合液を抜き出すことが、特許文献2で提案されているが、特許文献2では、抜き出した油水混合液を(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスに返送することは行っていない。
特開2003−231665号公報 特開2003−226672号公報
(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスにおいては、エステル化反応液の中和に用いた水酸化ナトリウム等に由来するアルカリ金属塩や反応器で生成したポリマーが持ち込まれることで、後段の軽沸分離塔等の蒸留塔が汚染され、蒸留性能が悪化するという問題があった。
即ち、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物を用いて(メタ)アクリル酸を中和することにより(メタ)アクリル酸ナトリウム等のアルカリ金属塩が生成し、これが後段の蒸留系統に持ち込まれると、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩が蒸留塔内の充填物等に固着して蒸留塔の安定運転を阻害する。具体的には、アクリル酸エステルの製造プロセスでは、軽沸分離塔におけるアルコール等の蒸留分離性能が悪化し、製品のアクリル酸エステルにアルコール等が混入するようになる。また、エステル化反応器で生成したポリマーが持ち込まれた場合にも同様の運転悪化を引き起こす。
この場合には、運転を停止して軽沸分離塔内を洗浄したり充填物を交換したりする必要があり、長期連続運転を行えず、生産性は著しく低下することとなる。
本発明は上記従来の問題点を解決し、このような(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスにおいて、軽沸分離塔におけるアルカリ金属塩及びポリマーに起因する蒸留運転トラブルを防止する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルカリ金属は、中和、洗浄工程や油水分離工程において、油層と水層の界面領域にポリマーが共存すると、ポリマーと共に油相に含まれて軽沸分離塔に持ち込まれること、従って、この油層と水層の界面領域の油水混合液を抜き出し、抜き出した油水混合液を所定時間静置した後、油相を重質分解器で分解処理した後プロセスに返送することにより、軽沸分離塔へのアルカリ金属及びポリマーの持ち込みを防止して、アルカリ金属及びポリマーに起因する軽沸分離塔の蒸留運転トラブルを防止することができることを見出した。
なお、特許文献2のように、中和、洗浄工程や油水分離工程から油水混合液を抜き出すことによっても軽沸分離塔へのアルカリ金属及びポリマーの持ち込みを防止することはできるが、このように油水混合液を抜き出すのみでは、油水混合液中に含まれる(メタ)アクリル酸エステルや未反応アルコール等の有価物が排液として廃棄されることとなり、原単位の悪化を招く。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 反応器内で(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を、(メタ)アクリル酸分離塔で中和、洗浄し、中和・洗浄処理液を静置槽で静置して油水分離し、得られた油相を軽沸分離塔に導入してアルコールを含む軽沸分を除去する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、該(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は該静置槽内における油層と水層の界面領域の油水混合液を抜き出し、該油水混合液を別途設けた貯槽に送給して所定時間静置して油水分離した後、油相を重質分解器で処理し、該重質分解器の分解留出物を前記反応器及び/又は(メタ)アクリル酸分離塔に返送することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[2] 前記貯槽において、前記油水混合液を2時間以上静置することを特徴とする[1]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[3] 前記軽沸分離塔で軽沸分を除去して得られた液を精製塔に送給して重質分を蒸留分離する工程を含み、該重質分が前記重質分解器で処理されることを特徴とする[1]又は[2]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
本発明によれば、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を中和、洗浄した後、油水分離して得られた油相を軽沸分離塔、及び精製塔に順次送給して(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、軽沸分離塔におけるアルカリ金属塩及びポリマーに起因する蒸留運転トラブルを防止し、長期に亘り、安定かつ効率的な(メタ)アクリル酸エステルの製造を行える。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の実施の形態を示すアクリル酸エステルの製造プロセスの系統図である。 一般的なアクリル酸エステルの製造プロセスの一例を示す系統図である。 一般的なアクリル酸エステルの製造プロセスの別の例を示す系統図である。
以下に本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、反応器内で(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を、(メタ)アクリル酸分離塔で中和、洗浄し、中和・洗浄処理液を静置槽で静置して油水分離し、得られた油相を軽沸分離塔に導入してアルコールを含む軽沸分を除去する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽内における油層と水層の界面領域の油水混合液を抜き出し、抜き出した油水混合液を別途設けた貯槽(以下単に「貯槽」と称す場合がある。)に送給して所定時間静置して油水分離した後、油相を重質分解器で処理し、該重質分解器の分解留出物を反応器及び/又は(メタ)アクリル酸分離塔に返送することを特徴とする。
即ち、エステル化反応液中には、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル化反応で副生するポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等のポリマーが含まれており、これらのポリマー、例えば、ポリアクリル酸ブチルは疎水基であるブチル基を有し、ポリアクリル酸は親水基であるカルボキシル基を有するため、これらが共存している場合や、共重合体を形成している場合には、アクリル酸分離塔での中和、洗浄時や、静置槽で油水分離を行う際に、油層と水層との界面領域に存在する。この油水界面領域のポリマーの一部は水相に含有されて排水として系外に排出されるが、大部分は親水基であるカルボキシル基部分に水滴を包含した形で油相に含まれて軽沸分離塔に持ち込まれる。そして、このポリマーが包含する水滴中にナトリウム等のアルカリ金属が含有されて軽沸分離塔内に持ち込まれることにより、軽沸分離塔内の特に充填材表面にアルカリ金属塩が析出し、これが堆積することで軽沸分離塔の安定運転を阻害する。また、ポリマーそのものの軽沸分離塔への持ち込みも安定運転の阻害要因となる。
このため、本発明では、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽内における油水界面領域の油水混合液を抜き出す。抜き出した油水混合液は、貯槽で所定時間静置すると再び油水分離されるので、分離された油相を更に重質分解器で処理し、分解留出物を反応器及び/又は(メタ)アクリル酸分離塔に返送する。即ち、アルカリ金属は油水分離された水相や油水界面付近に多く含まれ、上記のポリマーは油水分離された油相や油水界面付近に多く含まれる。一方、油相には(メタ)アクリル酸エステルや未反応アルコール、反応副生物のうち重質分解器で分解して有価物として回収することができるアルコキシプロピオン酸アルキルのようなミカエル付加物が含まれている。静置によりアルカリ金属塩を含む水相及びアルカリ金属塩とポリマーを含む界面相を除き、油相を重質分解器で処理することにより油相中のポリマーや一部のアルカリ金属塩を除くことができ、処理後の油相を(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスに返送することにより、有価物を回収する。
本発明において、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽から抜き出す油水混合液の量が少な過ぎると、この油水混合液を抜き出すことによる本発明の効果を十分に得ることができず、逆に多過ぎてもそれ以上の効果の向上は得られず、抜き出し液を静置するための貯槽として大容量のものが必要となり、また、液の循環エネルギーの面でも好ましくない。従って、(メタ)アクリル酸分離塔からの油水混合液の抜き出し量は、(メタ)アクリル酸分離塔に供給されるエステル化反応液(通常は抽出塔で酸触媒の抽出分離が行われたエステル化反応液)に対して0.05〜10重量%、特に0.1〜5重量%とすることが好ましい。同様の理由から、静置槽からの油水混合液の抜き出し量も、(メタ)アクリル酸分離塔に供給されるエステル化反応液に対して0.05〜10重量%、特に0.1〜5重量%とすることが好ましい。
貯槽での油水混合液の静置時間は、通常2時間以上、例えば2〜72時間とすることが好ましい。貯槽での静置時間が短か過ぎると、油水分離を十分に行うことができないが、この静置時間を過度に長くしてもそれに見合う効果の向上は認められず、徒に静置のための貯槽容量が増大し、好ましくない。
貯槽から重質分解器への油相の送給は油相のみ行う必要があり、そのためにはあらかじめ下部の水層をタンク下部のノズル等から排出した上で上部の油相のみを返送する。排出される水相の量は、貯槽に、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽の油水界面から抜き出された油水混合液のみが導入される場合と、他の箇所、例えば反応器や精製塔等からの油相を主成分とする液が導入されている場合とで異なり、(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は静置槽の油水界面から抜き出された油水混合液中の油水比率によっても異なるため、状況に応じて適宜調節する。
以下に、本発明の(メタ)アクリル酸エステルのより具体的な製造方法について図1を参照して説明する。
図1は本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の実施の形態を示すアクリル酸エステルの製造プロセスの系統図である。図1に示す製造プロセスは、貯槽10を設けた点が図2に示す製造プロセスと異なり、その他は同様の構成とされている。図1において、図2に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。ただし、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、図2に示す製造プロセスに限らず、図3に示す製造プロセス、その他、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を中和、洗浄した後、油水分離して得られた油相を軽沸分離塔、及び精製塔に順次送給して(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、図1に示すように貯槽を設けて実施することができる。
本発明で製造される(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルの製造では、一般的には(メタ)アクリル酸とアルコールとから酸触媒の存在下、エステル化反応器1を経てエステル化反応させて対応するエステルを製造する。通常原料である(メタ)アクリル酸とアルコールとは、モル比1.0:0.5〜1.0:2.0の割合で反応器に供給される。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、あるいは、メタンスルホン酸等の有機酸や硫酸、塩酸等の鉱酸が用いられる。酸触媒は反応液に対し、0.1〜5.0重量%、好ましくは1.0〜2.5重量%の割合で添加される。反応は70〜180℃の温度で、蒸留や共沸蒸留によりエステル化反応で生成する反応生成水を除去しながら行われる(反応蒸留方式)。生成水の除去を容易にするために、反応に不活性な共沸剤が添加されることがある。共沸剤としては、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素が用いられることが多い。反応生成水は蒸気分離膜、ベーパーレイション膜などの膜分離や、蒸留以外の方法で除去される場合もある。
また、反応系には、通常、ポリマーの生成を防止するために、重合防止剤が添加される。重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅、酢酸マンガン等の重金属塩、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、テトラメチルピペリジノオキシル誘導体等のアミノキシル類が知られている。重合防止剤の添加量は、エステル化反応液中の重合防止剤濃度が20〜1000ppm程度となる量とすることが好ましい。
エステル化反応液は、抽出塔(触媒回収塔)2で水と向流接触して酸触媒が抽出分離、回収され、回収された酸触媒の一部はエステル化反応器1の入口側へ循環され再利用され、残部は重質分解器7に送給され、後段の重質分解器7における重質分の分解に使用される。抽出塔2からの反応液は、アクリル酸分離塔3でアルカリ水溶液が添加されて中和されると共に、水で洗浄された後、アクリル酸分離器3の塔頂から静置槽4に送給されて油水分離される。
抽出塔2でエステル化反応液と向流接触させる水の比率は、エステル化反応液に対して0.5(重量比)以下が好ましく、最適には0.05〜0.2(重量比)である。水は、新しく添加されても良いが、エステル化反応器1から得られる反応生成水を用いることもでき、この場合には、排水量を少なくすることができる利点がある。
抽出塔2の形式としては、通常のものを用いることができる。一般的な抽出塔は、塔下部よりエステル化反応液、塔上部より抽出用の水を供給し、塔頂より酸触媒などが抽出除去された反応液を、塔底より酸触媒、(メタ)アクリル酸等を含む水溶液を得る型式のものであるが、特に制限されるものではない。抽出塔としては、充填塔、棚段塔などが一般的に用いられるが、液液接触効率の高い装置が好ましい。抽出塔は、一段でも多段に設けてもよい。
アクリル酸分離塔3としては抽出塔2と同様のものを用いることができる。中和に用いるアルカリ水溶液としては、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を挙げることができる。酸性の水溶性不純物を含有するエステル化反応液を中和してこれらの不純物を完全に除去するために、中和後のアクリル酸含有液のpHが9以上となるようにアルカリ水溶液を供給することが好ましい。
アクリル酸分離塔3で中和、洗浄して(メタ)アクリル酸等の酸性の水溶性不純物を除去した後のエステル化反応液(以下、「中和・洗浄処理液」と称す場合がある。)は、アクリル酸分離塔3の塔頂から抜き出され、中和、洗浄に用いた水は塔底より排水として系外へ排出される。アクリル酸分離塔3からの中和・洗浄処理液には、中和・洗浄処理液中のアルカリ金属の除去効率を高めるために、更に水が添加される場合もあり、その後静置槽4に送給される。この中和・洗浄処理液への水の添加量は、少な過ぎるとアルカリ金属の除去効率の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎてもそれ以上の効果の向上は望めず、徒に液量が増大して工業的に不利である。従って、添加する水の量は、中和・洗浄処理液に対して通常、0〜100重量%、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは2〜6重量%である。
中和・洗浄処理液に添加する水は、金属成分などの新たな汚染源となるものを高濃度に含まないものであれば良く、工水、純水、蒸気凝縮水などを用いることができる。
必要に応じて水が添加された中和・洗浄処理液は、次いで静置槽4で静置されて油水分離され、水相は排水として系外へ排出され、油相は軽沸分離塔5に送給されてアルコール等の軽沸分が塔頂より蒸留分離され、塔頂留出物は反応器1へ循環される。一方、塔底液は更に精製塔6で高沸分が蒸留分離され、塔頂より製品のアクリル酸エステルが分離される。精製塔6の塔底液は重質分解器7へ送給される。
軽沸分離塔5、精製塔6としては通常蒸留塔として用いられるものであれば、どのようなものでも良く、好ましくは充填塔が用いられる。また、重質分解器7は通常蒸留装置として用いられるものであればどのようなものでも良く、好ましくは単蒸留用のドラムが用いられる。
アルカリ酸分離塔3及び静置槽4からは、それぞれ、油層と水層の界面領域から油水混合液が抜き出され、抜き出された油水混合液は貯槽10に送給されて所定時間静置されて油水分離される。貯槽10で分離された油相は、重質分解器7に送給され、精製塔6の塔底液と共に分解、蒸留分離される。
即ち、精製塔6の塔底液及び貯槽10で分離された油相には、アクリル酸とアルコールとのエステル化反応工程で副生したアルコキシプロピオン酸アルキル等のミカエル付加物が含まれているため、精製塔6の塔底液と貯槽10からの油相を重質分解器7に送給し、酸触媒、アクリル酸を添加してこれらを分解すると共に蒸留分離してアルコール、アクリル酸エステル等の有価物を回収し、これらを反応系に循環させる。
なお、重質分解器7に供給する酸触媒としては、図1に示す通り、抽出塔2で抽出された回収触媒液の一部を用いることが好ましい。
重質分解器7の塔頂から得られる有価物は、エステル化反応器1及びアクリル酸分離塔3のうちのいずれか一方又は双方に返送されるが、一般的にはアクリル酸分離塔3に返送した際には界面の変動を引き起こす恐れがあることから、エステル化反応器1に返送することが好ましい。
なお、上記の運転時に、中和・洗浄・静置時に抜き出される有機層及び/又は水層が発生し、また、反応開始時には、規格外プロセス液が、反応停止時にはプロセス抜き出し液等などが発生し、これらは、プロセス(ストリーム)外に抜き出される。これらのプロセス外抜き出し液には未反応原料などの有価物が含まれる一方、有機層中にポリマー、水層中にアルカリ金属塩が含まれ、有機層/水層界面には双方が濃縮していると考えられ、該抜き出し液のプロセスへの循環でこれらがプロセスに再持ち込みされた場合には運転悪化の原因ともなりうるため、該抜き出し液のプロセスへの循環の際には注意が必要である。
本発明においては、この抜き出し液を、貯槽10で静置して油水分離し油層を重質分解器で処理した後循環してもよい。
本発明によれば、アルカリ金属の軽沸分離塔5への持ち込みを防止できるだけでなく、エステル化反応で副生するポリマーの持ち込みをも防止することができる。このポリマーもまた、軽沸分離塔5における安定運転を阻害するものであるので、本発明によれば、ポリマーによる蒸留運転トラブルも防止して、長期に亘り、安定かつ効率的な(メタ)アクリル酸エステルの製造を行える。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下において、アクリル酸ブチル、n−ブタノール、ブトキシプロピオン酸ブチルの濃度はガスクロマトグラフィーにより測定した。
[実施例1]
重合防止剤としてフェノチアジンとハイドロキノンを併用し、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を用い、図1に示す製造装置により、アクリル酸ブチルの製造を行った。
アクリル酸とn−ブタノールとは1:1のモル比で用いた。また、p−トルエンスルホン酸は反応液に対して1.3重量%用い、反応温度は95℃とした。
エステル化反応器1の出口液13t/hrを抽出塔2に送給し、水1200kg/hrで洗浄抽出処理した後、13t/hrでアクリル酸分離塔3に送給し、25重量%水酸化ナトリウム水溶液150kg/hrと水400kg/hrで中和、水洗した。抽出塔2からアクリル酸分離塔3に供給された反応液の組成は、アクリル酸ブチル87重量%、n−ブタノール6重量%、ブトキシプロピオン酸ブチル4重量%であった。アクリル酸分離塔3の中和・洗浄処理液13t/hrに水400kg/hrを添加して静置槽4で油水分離し、油相を軽沸分離塔5、精製塔6で順次蒸留して製品のアクリル酸ブチルを得た。また、精製塔6の塔底液800kg/hrは重質分解器7に送給した。
アクリル酸分離塔3及び静置槽4からは、それぞれ油層と水層の界面領域の油水混合液を30kg/hrで抜き出して貯槽10に送給した。貯槽10では、この油水混合液及び反応開始時の規格外プロセス液、反応停止時のプロセス抜き出し液などのプロセス外抜き出し液が50t蓄積した時点で2時間静置した後、油相を200kg/hrで重質分解器7に送給し、水相は貯槽10の下部に設けたノズルから抜き出し、排水として系外へ排出した。
貯槽10から重質分解器7に送給した油相の組成は、アクリル酸ブチル89重量%、n−ブタノール6重量%、ブトキシプロピオン酸ブチル3重量%であった。
重質分解器7には、精製塔6の塔底液が800kg/hで供給されるとともに、原料タンクからアクリル酸を110kg/hrで導入し、抽出塔2で得られる回収触媒液(p−トルエンスルホン酸18重量%、水75重量%、ブタノール3重量%)を110kg/hrで導入した。重質分解器7の塔頂から得られた有価物980kg/hrはエステル化反応器1に循環し、塔底液240kg/hrは系外へ排出した。
このようにして運転を行ったところ、90日間、軽沸分離塔5の蒸留運転トラブルを引き起こすことなく、安定に連続運転を行うことができた。
[比較例1]
実施例1において、アクリル酸分離塔3及び静置槽4から抜き出した油水混合液を静置後そのままエステル化反応器1に循環したこと以外は同様に反応を行ったところ、運転開始から11日で軽沸分離塔5の運転状況が悪化し、運転停止となった。
1 エステル化反応器
2 抽出塔
3 アクリル酸分離塔
4 静置槽
5 軽沸分離塔
6 精製塔
7 重質分解器
8 溶媒回収塔
10 貯槽

Claims (3)

  1. 反応器内で(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒の存在下に反応させて得られた(メタ)アクリル酸エステルを含有するエステル化反応液を、(メタ)アクリル酸分離塔で中和、洗浄し、中和・洗浄処理液を静置槽で静置して油水分離し、得られた油相を軽沸分離塔に導入してアルコールを含む軽沸分を除去する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
    該(メタ)アクリル酸分離塔及び/又は該静置槽内における油層と水層の界面領域の油水混合液を抜き出し、該油水混合液を別途設けた貯槽に送給して所定時間静置して油水分離した後、油相を重質分解器で処理し、該重質分解器の分解留出物を前記反応器及び/又は(メタ)アクリル酸分離塔に返送することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  2. 前記貯槽において、前記油水混合液を2時間以上静置することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  3. 前記軽沸分離塔で軽沸分を除去して得られた液を精製塔に送給して重質分を蒸留分離する工程を含み、該重質分が前記重質分解器で処理されることを特徴とする請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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