以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る媒体搬送装置(以下、搬送装置と記載する。)の概略構成を示す全体構成図である。
同図に示す搬送装置10は、第1スプロケット12A及び第2スプロケット12Bに一対の無端状のチェーン14(図1では一対(2本)のチェーンのうち、片側(一方)のチェーンのみを図示)が巻き掛けられた構造(移動手段)を有している。
チェーン14には、枚葉の媒体18の搬送方向(チェーン14の移動方向、矢印線により図示)と平行方向に一定間隔でグリッパ16(第1固定手段)が取り付けられている。
なお、本明細書における「平行」には、平行と実質的に同一の作用効果を得ることができる程度の誤差が含まれていてもよい。
グリッパ16によって先端側被固定部18Aを把持(固定)される媒体18は、先端側被固定部18Aから下方向へ湾曲して垂れ下がる。そして、媒体18は、媒体18の搬送方向の下流側から上流側へ向かって下向きに傾斜した状態で、グリッパ16よりも下方に配置され、グリッパ16との間に一定間隔を保って配置された搬送ガイド20(第2固定手段)の媒体固定面20Aに、後端側被固定部18Bが吸着保持(固定)され、図1の矢印線の示す方向へ搬送される。
搬送ガイド20は、媒体18の搬送方向に沿って複数の領域(符号20Bを付して図示)に区画(分割)されている。すなわち、搬送ガイド20は、媒体18の搬送方向に沿って複数の吸着部20Bが予め決められた間隔に並べられた構造を有している。
詳細は後述するが、搬送ガイド20は、吸着部20B(固定部)ごとに個別に吸着のオンオフを切り換え可能に構成されている。
図1に示すように、媒体18は、処理装置22の処理領域において、先端側被固定部18Aが把持され、かつ、媒体18の後端側被固定部18Bの裏面(搬送ガイド20側の面)が吸着保持されることで、たるみのない状態で搬送される。
ここで、「媒体18の先端側被固定部18A」とは、媒体18の搬送方向における中央(図2に符号18Eを付して図示)よりも先端18C側(媒体18の搬送方向下流側の端側)であり、グリッパ16によって把持される部分を意味している。また、「媒体18の後端側被固定部18B」とは、媒体18の中央よりも後端18D側(媒体18の搬送方向上流側の端側)であり、搬送ガイド20によって裏面を吸着される部分を意味している。
図1に図示した処理装置22には、インクジェット方式により画像(パターン)が形成された媒体18へ乾燥処理を施す乾燥処理装置、媒体18に形成された画像、パターンを定着させる定着処理装置などの各種処理装置を適用することができる。また、複数の処理装置を含む態様も可能である。
以下の説明における処理装置22は、インクジェット方式により画像が形成された媒体18に対して乾燥処理を施す乾燥処理装置、及び定着処理を施す定着処理装置とする。
乾燥処置装置の構成例として、ヒータ等の加熱手段、送風機等の送風手段を備える態様が挙げられる。また、定着処理装置の構成例として、ヒータ等の加熱手段、押圧ローラ等の押圧手段を備える態様、紫外線などの活性光線を照射する光源を備える態様が挙げられる。
図2は、図1に示す搬送装置10を上側から見た図である。同図に示すチェーン14には、連結部材14Aを介してベースフレーム16Aが連結される。ベースフレーム16Aは、2本のチェーン14の間に掛け渡され、かつ、2本のチェーン14に対して直交(交差)して固定される。
なお、本明細書における「直交」には、直交と実質的に同一の作用効果を得ることができる程度の誤差が含まれていてもよい。
図2では、連結部材14A及びベースフレーム16Aを一組だけ図示したが、チェーン14には、連結部材14A及びベースフレーム16Aの組が、媒体18の搬送方向(矢印線により図示)と平行方向に沿って予め決められた間隔で取り付けられている。
連結部材14A及びベースフレーム16Aの配置間隔は、使用される媒体18の搬送方向に沿う全長に対応している。
ベースフレーム16Aには、使用される媒体18(図2では破線により図示)の搬送方向と直交する幅方向(ベースフレーム16Aの長手方向、両矢印線により図示)に沿って複数のグリッパ16が予め決められた間隔で配置される。グリッパ16の配置間隔は、使用される媒体18の全幅(媒体18の搬送方向と直交する方向の全長)に対応している。
搬送ガイド20の媒体固定面20Aには、複数の吸着穴20Cが形成されている。吸着穴20Cは、搬送ガイド20の内部のチャンバ(不図示)と連通している。チャンバの内部を負圧(真空)にすることで、複数の吸着穴20Cのそれぞれに吸着圧力を発生させる。
媒体固定面20Aにおける吸着穴20Cの配設領域(図3に図示する吸着圧力発生領域20D)は、使用される媒体のサイズに対応している。図2には、媒体18の搬送方向、及び媒体18の幅方向のそれぞれについて、吸着穴20Cを等間隔に配置した態様が図示されている。
なお、吸着穴20Cの配置間隔は、図2に図示した態様に限定されない。例えば、千鳥配置、放射状の配置、同心円状の配置などを適用することが可能である。
先に説明したように、搬送ガイド20は、媒体18の搬送方向に沿って複数の吸着部20Bが配置されており、吸着部20Bごとに吸着のオンオフを切り換えることができる。すなわち、媒体18の搬送によって移動する媒体18の後端18Dの位置に対応して、媒体18の搬送方向上流側の吸着部20Bから下流側の吸着部20Bへ順に吸着が切り換えられる(詳細後述)。
図3は、搬送ガイド20の構成を模式的に図示したブロック図である。同図に示すように、搬送ガイド20の各吸着部20Bには、流路(支流)30の一方の端が接続される。各流路30にはバルブ32が取り付けられ、かつ、他方の端は流路(本流)34に接続され、さらに、流路(本流)34は、負圧(真空)の発生手段(吸着圧力発生手段)として機能するポンプ36(圧力発生手段)と接続される。
バルブ32は、制御(指令)信号によってオンオフの切り換えがされる電磁制御バルブが適用される。すなわち、媒体18(図2参照)の後端側被固定部18Bの位置に対応して、搬送ガイド20の各吸着部20Bに対応するバルブ32のオンオフを切り換えることで、常に媒体18の後端側被固定部18Bのみを搬送ガイド20の媒体固定面20Aに吸着保持(固定)することができる。
図3の一点破線によって囲まれた領域は、搬送ガイド20の吸着部20Bにおける吸着圧力発生領域20D(固定領域)である。吸着圧力発生領域20Dは、吸着穴20Cが配設されている領域であり、実際に媒体18の裏側を吸着することができる領域である。
吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長Lは、搬送装置10に使用される最小サイズの媒体18の同方向における全長の4分の1未満である。
吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長Lの最大値(上限)は、媒体18の同方向における中央位置よりも同方向の上流側を吸着するという観点から決められている。
すなわち、隣接する2つの吸着部20Bについて、両方が同時に媒体18を吸着することがあり得るので(詳細後述)、一方の吸着部20Bの吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長L1と、他方の吸着部20Bの吸着圧力発生領域20Dの同方向の全長L2と、これらの間の領域の同方向の全長L3との総和(L1+L2+L3)は、媒体18の同方向の全長L4の1/2未満(L1+L2+L3<L4/2)と決められている。
したがって、L3≪L1、L3≪L2、L1=L2の場合には、L1<L4/4、かつL2<L4/4となる。なお、L3≪L1、L3≪L2であればL3=0と取り扱って、各吸着部20Bの媒体搬送方向の全長L11を媒体18の同方向の全長L4の1/4未満(L11<L4/4)としてもよい。
また、吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の配置間隔は、吸着圧力発生領域20Dの同方向における長さと同一となっている。
媒体18が搬送ガイド20に吸着される同方向の長さLの最小値(下限)は、吸着穴20Cの直径となる。
すなわち、吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長Lの最小値は、媒体18が確実に吸着されるという観点から決められている。この値は媒体18の厚み、性質(剛性等)に依存するので、使用される媒体について実測を行って得られた実測値に基づいて決められる。
本例では、吸着圧力発生領域20Dに一列の吸着穴群が設けられる態様は、吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長Lが最小値となる場合であり、このときの吸着圧力発生領域20Dの媒体搬送方向の全長Lは吸着穴20Cの直径である。
かかる態様では、媒体18の吸着に必要な吸着圧力が一列の吸着穴群から発生するように、吸着穴20Cの直径、吸着穴20Cの配置間隔、ポンプ36の発生圧力(動作条件)が決められている。
媒体18の搬送が進むにつれて、媒体18が搬送ガイド20に吸着される同方向の長さ(吸着される面積)が小さくなると媒体18に作用する吸着圧力が減少して、媒体の吸着が不安定になる懸念がある。したがって、媒体18の被吸着部分が小さくなるに従ってポンプ36の発生圧力を上げることで、媒体18の吸着が不安定になることが回避される。
すなわち、本例に示す搬送装置10は、媒体18の搬送方向における中央18Eよりも上流側(後ろ側)であり、媒体18の後端に近い部分である後端近傍を、裏面(媒体固定面20Aと接触する面)側から吸着し、かつ、媒体18の先端側被固定部18Aをグリッパ16によって把持した状態で媒体18を搬送させる。
そうすると、媒体18の先端側被固定部18Aから後端側被固定部18Bまでがなだらかな勾配で固定され、媒体18の先端側被固定部18Aにおける急な勾配がなくなり、媒体18が搬送される際のしわやたるみの発生が防止される。
また、媒体18には、搬送方向への張力及び搬送方向と反対方向への張力が作用するので、媒体18は搬送方向と平行方向に伸ばされた状態で搬送される。
そうすると、媒体18は、しわが伸ばされた状態で搬送されるので、例えば、画像が形成された媒体18に定着処理が施される際の、媒体18の収縮に起因する媒体18の変形が防止される。
吸着圧力発生領域20Dの媒体18の搬送方向における全長Lをより小さくすることで、グリッパ16に把持される位置と、搬送ガイド20に吸着される位置の間隔がより長くなり、媒体18の傾斜をより小さくすることができる。
また、使用される媒体18の厚みの範囲は、紙媒体であれば0.3ミリメートル以下(いわゆる、薄紙)である。媒体18の厚みの条件は、媒体18の材料に応じて適宜決められる。
さらに、媒体18の後端側被固定部18Bを固定することで、媒体18の後端側被固定部18Bのばたつきを防止することができ、媒体18の後端側被固定部18Bが他の部分へ接触することが回避できる。
図4は、搬送装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、搬送装置10は、システムコントローラ100(固定制御手段の構成要素)と、通信部102と、メモリ106と、搬送制御部110と、グリッパ制御部112と、吸着制御部114(固定制御手段の構成要素)と、バルブ制御部116と、を含んで構成される。
システムコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)100A、ROM(Read Only Memory)100B、RAM(Random Access Memory)100C、等を含んで構成される。
システムコントローラ100は、装置各部を統括的に制御し、かつ、内蔵メモリ(ROM100B、RAM100C)、及び外付けのメモリ106のメモリコントローラとして機能する。
ホストコンピュータ104から送出される搬送装置10において使用される各種データは、通信部102を介して搬送装置10の内部へ取り込まれ、一旦、RAM100Cに記憶される。
システムコントローラ100は、RAM100Cに記憶されている各種データに基づいて装置各部の指令信号を生成し、装置各部に対して指令信号を送出する。
搬送制御部110は、システムコントローラ100から送出される指令信号に基づいて、搬送系13に含まれる不図示のモータ、アクチュエータなどの駆動するためのドライバー回路が含まれる。
図4に図示した搬送系13には、図1に図示した第1スプロケット12A(第2スプロケット12B)を回転させるモータ、ギア、連結部材が含まれる。
グリッパ制御部112は、システムコントローラ100から送出される指令信号に基づいて、図1に図示したグリッパ16を開閉させるグリッパ開閉機構17の動作を制御する。
図4に図示したグリッパ開閉機構17には、ベースフレーム16A(図1参照)に搖動自在に取り付けられた稼働爪(不図示)、稼働爪を搖動させる搖動機構(不図示)、搖動機構の駆動源となるモータ(不図示)が含まれる。
すなわち、グリッパ制御部112には、グリッパ開閉機構17の駆動源となるモータのドライバー回路が含まれる。
吸着制御部114は、システムコントローラ100から送出される指令信号に基づいて、ポンプ36の動作を制御する。すなわち、吸着制御部114は、ポンプ36のオンオフ、回転数(発生させる圧力)などを制御するポンプドライバとして機能する。
バルブ制御部116は、システムコントローラ100から送出される指令信号に基づいて、バルブ32のオンオフを制御する。
また、搬送装置10は、操作部120と、表示部122と、センサ124と、位置検出部(エンコーダ)126と、を含んで構成される。
操作部120は、キーボード、タッチパネル、マウス、ジョイスティックなどのユーザインターフェイスを含んでいる。ユーザ(操作者)は、操作部120を操作することで、必要な情報を入力することができる。
操作部120から送出される操作信号は、システムコントローラ100へ送られる。システムコントローラ100は、操作部120から取得した操作信号に基づいて、装置各部への指令信号を生成し、送出する。
表示部122は、搬送装置10の動作状況やエラー情報が表示される表示手段であり、液晶ディスプレイ(液晶モニタ)などが適用される。タッチパネル式の液晶ディスプレイ装置を適用することで、操作部120と表示部122とを一体構成とすることが可能である。
センサ124は、装置各部に配設される各種センサが含まれる。例えば、搬送ガイド20の吸着圧力を検出する圧力センサ、装置各部の温度や媒体18(図1参照)の温度を検出する温度センサなどが含まれる。
位置検出部126は、媒体18の搬送路上における媒体18の位置(後端位置)を検出し、媒体18の位置情報をシステムコントローラ100へ送出する。システムコントローラ100は、媒体18の位置情報に基づいて搬送ガイド20の吸着を切り換える指令信号を吸着制御部114へ送出する。
システムコントローラ100から送出される指令信号に基づいて、媒体18の後端側被固定部18Bを吸着する搬送ガイド20の吸着部20Bの切り換えがされる。
位置検出部126の一例として、チェーン14が巻き掛けられる第1スプロケット12A(又は、第2スプロケット12B)、又は第1スプロケット12A(又は、第2スプロケット12B)を回転させるモータに取り付けられたロータリーエンコーダ、媒体18の搬送路上に設けられたリニアスケール、媒体18の搬送路上に設けられた光学センサが挙げられる。
位置検出部126としてエンコーダやリニアスケールを備えた構成では、エンコーダ(リニアスケール)からの出力パルスをカウントすることで、媒体18の移動量を把握することができ、予め設定されたカウント値に応じて、搬送ガイド20の吸着部20Bを順次切り換えることが可能である。
本例では、媒体18に負圧(真空)を作用させて、媒体18の後端側被固定部18Bを媒体固定面20Aに固定させる真空吸着を例示したが、媒体固定面20Aに静電気力を発生させて、静電気力によって媒体18の後端側被固定部18Bを媒体固定面20Aに固定させる静電吸着を適用してもよいし、機械式の固定部材を用いた固定を適用してもよい。
〔搬送ガイドの吸着切換制御の説明〕
次に、搬送ガイド20の吸着切換制御について詳細に説明する。なお、以下の説明において、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図5(a),(b)では、図示の都合上、図3と吸着穴20Cの数及び吸着穴20Cの配置が異なっている。
図5(a),(b)は、搬送ガイド20の吸着切換制御の説明図であり、図5(a)は、吸着圧力を発生させる吸着部20Bが切り換えられる前の状態が模式的に図示されており、図5(b)は、吸着圧力を発生させる吸着部20Bが切り換えられた後の状態が模式的に図示されている。
図5(a)に示す媒体18の後端18Dが吸着部20B1(同図における右端の吸着部20B)の吸着圧力発生領域20D(図3参照)に位置している期間は、吸着部20B1の吸着がオンにされ、他の吸着部(吸着部20B,20B3,20B4,…)はオフにされる。
そうすると、媒体18の後端側被固定部18B(破線によってはさまれた領域)の裏面は、吸着部20B1に吸着される。
媒体18の搬送が進み、図5(b)に示すように、媒体18の後端18Dが吸着部20B1の吸着圧力発生領域20Dを抜け出す前(直前)に、吸着部20B2の吸着がオンにされ、媒体18の後端18Dが吸着部20B1の吸着圧力発生領域20Dを抜け出すと、吸着部20B1の吸着がオフにされる。
すなわち、媒体18の搬送方向に隣接する吸着部20Bについて、同方向上流側の吸着部20B(例えば、吸着部20B1)の吸着圧力発生領域20Dを媒体18の後端18Dが抜け出す前(直前)に、同方向下流側の吸着部20B(吸着部20B2)の吸着はオンにされる。
また、同方向上流側の吸着部20Bの吸着圧力発生領域20Dを媒体18の後端18Dが抜け出すと、この吸着部20Bの吸着がオフにされる。媒体18の搬送方向下流側の吸着部20Bの吸着がオンにされるタイミングと、同方向上流側の吸着部20Bの吸着がオフにされるタイミングとの時間差は、媒体18の搬送速度、媒体18の厚み(必要とされる吸着圧力値)等の搬送条件に応じて決められる。
さらに媒体18の搬送が進み、媒体18の後端18Dが吸着部20B2の吸着圧力発生領域20Dを抜け出す前(直前)に、吸着部20B3の吸着がオンにされ、媒体18の後端18Dが吸着部20B2の吸着圧力発生領域20Dを抜け出すと、吸着部20B2の吸着がオフにされる。
さらに、媒体18の搬送が進むと、媒体18の後端18Dの位置に応じて、吸着部20B3の吸着がオンにされ、吸着部20B2の吸着がオフにされ、さらにまた、吸着部20B4の吸着がオンにされ、吸着部20B3の吸着がオフにされる。
このようにして、媒体18の後端18Dの位置に応じて、媒体18の搬送方向に沿って並べられた複数の吸着部20Bを同方向の上流側から下流側へ向かって順に切り換えがされる。
このように、搬送ガイド20を構成する吸着部20Bのオンオフを、媒体18の後端18Dの位置に合わせて順次切り換えることで、媒体18の搬送方向における中央18Eよりも上流側の一部のみが固定され、媒体18にしわやたるみのない状態で、媒体18を搬送することができる。
本例に示す搬送ガイド20は、媒体18の搬送方向に隣接する吸着部20Bについて、同方向上流側の吸着部20Bの吸着圧力発生領域20Dを媒体18の後端18Dが抜け出す直前に、一列の吸着穴20Cの一群のみで媒体18の後端18Dを吸着することがあるので、一列の吸着穴20Cの一群のみで媒体18の後端18Dを吸着する場合でも、吸着圧力が不足して媒体18の吸着が外れてしまうことがないように、吸着穴20Cの直径、吸着穴20Cの配置間隔、ポンプ36(図3参照)の動作条件が決められている。
本例に示す搬送装置10に適用される媒体(使用される媒体)は、紙、金属フィルム、樹脂フィルムなど、枚葉の媒体であり、グリッパ16によって把持可能な厚みを有する媒体であればよい。
〔搬送ガイドの変形例の説明〕
次に、搬送ガイド20の変形例について説明する。
図6(a),(b)は、図1から図5を用いて説明した搬送ガイドの変形例の説明図である。図6(a)は、搬送ガイド21の平面図であり、図6(b)は、搬送ガイド21の立体構造を示す透視側面図である。
図6(a),(b)に示す搬送ガイド21は、吸着穴21Cが開けられた板状部材である吸着板21Eの下に、複数のチャンバ21Fが形成されたチャンバ部材21Gが、位置合わせをされて接合された構造を有している。
なお、図6(a)の破線は、チャンバ部材21Gを構成する各チャンバ21Fの仕切り位置を表している。
図7は、図1から図5を用いて説明した搬送ガイドの他の変形例の説明図であり、搬送ガイド121の媒体固定面121Aを図示した平面図である。
図7に図示した搬送ガイド121は、幅方向に沿って使用される媒体18の全幅に対応する長さの吸着溝121Cが形成されている。図7に図示した搬送ガイド121は、1つの吸着部121Bについて、同一の長さ、同一の幅を有する4本の吸着溝121Cが形成されている。
なお、吸着溝121Cの形状、構造、配置は、図7に図示した態様に限定されず、幅方向に複数の吸着溝121Cを備える態様、複数の吸着溝121Cが千鳥状に配置される態様など、適宜変更、追加、及び削除が可能である。
上記の如く構成された搬送装置によれば、媒体18の先端側被固定部18Aがグリッパ16によって把持され、グリッパ16よりも下方に配置され、グリッパ16との間に一定間隔を保って配置された搬送ガイド20の媒体固定面20Aに、媒体18の搬送方向における中央18Eよりも上流側の一部が後端側被固定部18Bとして吸着保持されるので、搬送中における媒体18の傾斜をより小さくすることができ、搬送中における媒体18の変形(特に、被固定部18A,18Bの近傍における変形)が抑制される。
また、媒体18の先端側被固定部18Aを搬送方向へ移動させつつ、媒体18の後端側被固定部18Bの裏側を吸着することで、媒体18に対して搬送方向と反対向きの張力を作用させることになり、媒体18の姿勢をより平坦に近い状態に保つことができる。
このように、媒体18の変形を防止しながら媒体18を搬送させるので、搬送中の媒体18に対して乾燥処理や定着処理が施される場合でも、処理後の媒体18における、しわ、カール、カックルといった変形の発生が防止される。
〔搬送ガイドの他の態様の説明〕
次に、図8から図10を用いて、先に説明した搬送ガイド20の他の態様について説明する。図8は、搬送ガイド220の媒体固定面220Aを図示した平面図である。
図8に示す搬送ガイド220は、媒体18の搬送方向に隣接する吸着部220Bにおいて、同方向の上流側の吸着部220Bにおける同方向と直交する幅方向の中央部220Eが、同方向の下流側の吸着部220Bに入り込んだ構造を有している。
ここでいう「幅方向の中央部220E」とは、幅方向の中央220Fを含み、吸着穴220Cが1つ以上形成されている部分である。図8には、幅方向の中央部220Eとして、同方向の吸着穴220Cの全数のうち、3分の1の数の吸着穴220Cが含まれる態様が図示されている。
なお、図8に図示した一点破線は、各吸着部220Bの吸着圧力発生領域220Dを表している。
図9に図示した搬送ガイド221は、図8に図示した搬送ガイド220の吸着穴220Cに代わり、媒体18の搬送方向の上流側から下流側へ向かって放射状に吸着溝221Cが媒体固定面221Aに形成されている。
すなわち、図9に図示した吸着部221Bの媒体固定面221Aには、搬送ガイド221の幅方向の中央221Fから同方向の両端へ、媒体18の搬送方向上流側から下流側への斜め方向へ向かう吸着溝221Cが形成されている。
図10(a),(b)は、図8に図示した搬送ガイド220の吸着切換制御の説明図であり、図10(a)は、吸着圧力を発生させる吸着部220Bが切り換えられる前の状態が模式的に図示されており、図10(b)は、吸着圧力を発生させる吸着部220Bが切り換えられた後の状態が模式的に図示されている。
図10(a)に示すように、媒体18の後端18Dが、媒体18の搬送方向に隣接する吸着部220B(例えば、吸着部220B1と吸着部220B2)について、上流側の吸着部220B(吸着部220B1)と下流側の吸着部220B(吸着部220B2)とが重なり合う位置(上流側の吸着部220Bに属する吸着穴220Cと、下流側の吸着部220Bに属する吸着穴220Cが混在する位置)に到達すると、下流側の吸着部220B2の吸着がオンにされる。
また、図10(a)に示す状態において、上流側の吸着部220Bの吸着のオンは維持される。
さらに媒体18の搬送が進み、図10(b)に示すように、媒体18の後端18Dが、媒体18の搬送方向に隣接する吸着部220B(例えば、吸着部220B1と吸着部220B2)について、上流側の吸着部220B(吸着部220B1)と下流側の吸着部220B(吸着部220B2)とが重なり合う位置(上流側の吸着部220Bに属する吸着穴220Cと、下流側の吸着部220Bに属する吸着穴220Cが混在する位置)を抜け出すと、上流側の吸着部220B(吸着部220B1)の吸着がオフにされる。
このようにして、吸着圧力を発生させる領域の切り換えが行われるタイミングにおいて、媒体18の後端側被固定部18Bにおける幅方向の中央部18Fの吸着を維持しつつ、同方向における中央部18F以外(端部近傍)の吸着をオンにすることで、媒体18の幅方向における中央部18Fを先に固定しておき、その後、同方向の両端部へ固定される部分を広げることで、媒体18を同方向の中央部18Fから両端部18Gへ向かって伸ばす方向への張力が作用する。
そうすると、吸着圧力を発生させる領域の切り換え時において、媒体18のたるみを伸ばしながら、媒体18を搬送させることができる。
なお、図10を用いて説明した吸着切換制御は、図9に図示した搬送ガイド221にも応用することができる。また、図8から図10を用いて説明した搬送ガイド220,221についても、図6に図示した変形例を適用してもよい。
〔他の構成を有する搬送ガイドを具備する搬送装置の説明〕
次に、他の構成を有する搬送ガイドを具備する搬送装置について説明する。図11は、他の構成を有する搬送ガイド320を具備する搬送装置300の全体構成図である。なお、図11中、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図11に示す搬送ガイド320は、搬送ガイド320の各吸着部320Bが傾斜した媒体固定面320Aを具備している。
各吸着部320Bの媒体固定面320Aは、媒体18の搬送方向下流側から上流側へ向かって下向きに傾斜している。媒体固定面320Aの傾斜は、グリッパ16と媒体固定面320Aの最下部との距離Hを高さとし、使用される媒体18の全長Dを斜辺の長さとする三角形の斜辺の傾きと同一となっている。
図11に図示した搬送装置300によれば、媒体固定面320Aを媒体18の搬送方向下流側から上流側へ向かう下向きの傾斜面とすることで、搬送ガイド320の吸着圧力を発生させる吸着部320Bと、吸着圧力を発生させない吸着部320Bとの境界における媒体18の曲りが防止され、この媒体18に対して乾燥処理や定着処理が施された場合の媒体18のくせ(変形)の発生が防止される。
また、媒体18が媒体固定面320Aと接触している吸着部320Bのみが媒体18に対して吸着圧力を作用させることができるので、本来は吸着圧力がオフとされる吸着部320Bが誤動作しても、誤動作した吸着部320Bによって媒体18が吸着されない。
このような構成を適用することで、誤動作を防止するための構成、制御を用いる必要がなくなり、搬送ガイド320の構造をより簡単にすることができ、かつ、搬送ガイド320の吸着圧力切換制御を簡単にすることができる。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、先に説明した搬送装置が適用されるインクジェット記録装置(画像形成装置)について説明する。
図12は、図1から図11を用いて説明した搬送装置が、画像形成後の記録媒体の搬送に適用されるインクジェット記録装置の全体構成図である。
図12に示すインクジェット記録装置410は、枚葉の用紙(記録媒体)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型インク、活性光線硬化型液体)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置410は、主として、用紙Pを給紙する給紙部412と、給紙部412から給紙された用紙Pの表面(画像形成面)に処理液を付与する処理液付与部414と、処理液付与部414で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部416と、処理液乾燥処理部416で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像形成部418と、画像形成部418で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部420と、インク乾燥処理部420で乾燥処理された用紙PにUV光(活性光線)の照射を行って画像を定着させるUV照射処理部422と、UV照射処理部422でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部424と、を含んで構成される。
用紙Pは、オフセット印刷機などで使用される汎用の印刷用紙を用いられる。汎用の印刷用紙の例として、塗工紙(アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙など)が挙げられる。塗工紙は、表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。
〈給紙部〉
給紙部412は、主として、給紙台430と、サッカー装置432と、給紙ローラ対434と、フィーダボード436と、前当て438と、給紙ドラム440を含んで構成され、給紙台430に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部414へ給紙する。
給紙台430の上に積載された用紙Pは、サッカー装置432(サクションフィット432A)によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対434(上下一対のローラ434A,434Bの間)に給紙される。
給紙ローラ対434に給紙された用紙Pは、上下一対のローラ434A,434Bによって前方に送り出され、フィーダボード436の上に載置される。フィーダボード436の上に載置された用紙Pは、フィーダボード436の搬送面に設けられたテープフィーダ436Aによって搬送される。
そして、その搬送過程でリテーナ436Bによってフィーダボード436の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード436によって搬送された用紙Pは、先端が前当て438に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム440に受け渡される。そして、その給紙ドラム440によって処理液付与部414へと搬送される。
〈処理液付与部〉
処理液付与部414は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム442と、処理液付与ドラム442によって搬送される用紙Pの表面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット444と、を含んで構成され、用紙Pの表面に処理液を付与(塗布)する。
用紙Pの表面に塗布される処理液は、後段の画像形成部418で用紙Pに打滴される水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。用紙Pの表面に処理液を塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いても着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
給紙部412の給紙ドラム440から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム442に受け渡される。処理液付与ドラム442は、用紙Pの先端をグリッパ442Aで把持して(咥えて)回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。ここでいう「用紙Pの先端」とは、グリッパ442A(後述する他のグリッパ)に把持される部分、及びその近傍が含まれる。
この搬送過程で、塗布ローラ444Aを用紙Pの表面に押圧当接させることで、用紙Pの表面に処理液が塗布される。なお、処理液を塗布する形態はローラ塗布に限定されず、インクジェット方式、ブレードによる塗布なと、他の形態を適用することも可能である。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部416は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム446と、用紙Pの裏面を支持(ガイド)する用紙搬送ガイド448と、処理液乾燥処理ドラム446によって搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット450と、を含んで構成され、表面に処理液が付与された用紙Pに対して乾燥処理を施す。
処理液付与部414の処理液付与ドラム442から処理液乾燥処理ドラム446へ受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム446に具備されるグリッパ446Aによって先端を把持される。
また、用紙Pは、表面(処理液が塗布された面)を内側に向けた状態で裏面を用紙搬送ガイド448によって支持される。この状態で処理液乾燥処理ドラム446を回転させることにより用紙Pを搬送させる。
処理液乾燥処理ドラム446によって搬送される過程で、処理液乾燥処理ドラム446の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット450から熱風が用紙Pの表面に吹き当てられて、用紙Pに乾燥処理が施され、処理液中の溶媒成分が除去されて、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
〈画像形成部〉
画像形成部418は、主として、用紙Pを搬送する画像形成ドラム452と、画像形成ドラム452によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像形成ドラム452の周面に密着させる用紙押さえローラ454と、用紙PにC,M,Y,Kの各色のインク液滴を吐出するインクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ458と、インクミストを捕捉するミストフィルタ460と、ドラム冷却ユニット462と、を含んで構成され、処理液層が形成された用紙Pの表面にC,M,Y,Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの表面にカラー画像を描画する。
本例に適用されるインクジェットヘッドには、圧電素子のたわみ変形を利用してインクを吐出させる圧電方式、インクを加熱して膜沸騰現象を発生させてインクを吐出させるサーマル方式、帯電させたインクを静電気力によって記録媒体へ着弾させる静電方式など、様々な吐出方式を適用することができる。
また、本例に適用されるインクジェットヘッドは、用紙Pの全幅(用紙Pの搬送方向と直交する主走査方向の全長)に対応する長さにわたってノズルが形成されるライン型ヘッドを適用してもよいし、用紙Pの全幅に満たない短尺のシリアルヘッドを適用してもよい。
処理液乾燥処理部416の処理液乾燥処理ドラム446から画像形成ドラム452へ受け渡された用紙Pは、画像形成ドラム452に具備されるグリッパ452Aによって先端を把持される。さらに、用紙Pを用紙押さえローラ454の下を通過させることで、用紙Pは画像形成ドラム452の周面に密着する。
画像形成ドラム452の周面に密着させた用紙Pは、画像形成ドラム452の周面に形成された吸着穴に発生させた負圧によって吸着されて、画像形成ドラム452の周面に吸着保持される。
画像形成ドラム452の周面に吸着保持され搬送される用紙Pは、各インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kの直下のインク打滴領域を通過する際に、各インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456KからC,M,Y,Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。
用紙Pの表面に打滴されたインクは、用紙Pの表面に形成されたインク凝集層と反応し、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく用紙Pの表面に定着し、用紙Pの表面には高品位な画像が形成される。
インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kによって画像が形成された用紙Pは、インラインセンサ458の読取領域を通過する際に、表面に形成された画像が読み取られる。
インラインセンサ458による画像の読み取りは必要に応じて行われ、画像の読取データから吐出不良、濃度むら等の画像欠陥(画像異常)の検査が行われる。インラインセンサ458の読取領域を通過した用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部420へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部420(乾燥処理手段)は、チェーングリッパ464によって搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施すインク乾燥処理ユニット468を含んで構成され、画像形成後の用紙Pに対して乾燥処理を施し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。
インク乾燥処理ユニット468の構成例として、ハロゲンヒータ、赤外線(IR)ヒータ等の熱源と、熱源によって熱せられた空気(気体、流体)を用紙Pへ吹き付けるファンと、を具備する態様が挙げられる。
画像形成部418の画像形成ドラム452からチェーングリッパ464(記録媒体搬送手段の構成要素、詳細後述)へ受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ464に具備されるグリッパ464Dによって先端を把持される。
また、用紙Pの後端の裏面は、チェーングリッパ464との間の一定の距離を離して配置されたガイドプレート472の用紙保持面に吸着保持される。ここでいう「用紙Pの後端」とは、吸着保持される領域、及びその近傍が含まれる。
用紙Pの後端の裏面を用紙保持面に吸着保持させることで、インク乾燥処理ユニット468からの空気流によって用紙Pの後端のばたつきが防止されるとともに、用紙Pの後端のばたつきによる用紙Pの後端のインク乾燥処理ユニット468等への接触が防止される。
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部422(活性光線照射手段)は、UV照射ユニット474を含んで構成され、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線を照射して、用紙Pの表面に画像を定着させる。
UV照射ユニットの構成例として、UV光を発生させる紫外線光源と、UV光を集光する手段、UV光を偏向させる手段等として機能する光学系と、を含む態様が挙げられる。
チェーングリッパ464によって搬送される用紙PがUV照射ユニット474のUV光照射領域に到達すると、チェーングリッパ464の内部に設置されたUV照射ユニット474によりUV照射処理が施される。
すなわち、先端をグリッパによって把持され、後端の裏面を用紙保持面に吸着保持されてチェーングリッパ464によって搬送される用紙Pは、用紙Pの搬送経路において用紙Pの表面と対応する位置に配置されたUV照射ユニット474からUV光が照射される。UV光が照射された画像(インク)は、硬化反応が発現して用紙Pの表面に定着する。
UV照射処理が施された用紙Pは、傾斜搬送経路470Bを経由して排紙部424へ送られる。傾斜搬送経路470Bを通過する用紙Pに対して、冷却処理を施す冷却処理部を備えてもよい。
〈排紙部〉
一連の画像形成処理が行われた用紙Pを回収する排紙部424は、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台476を含んで構成される。
チェーングリッパ464(グリッパ464D)は、排紙台476の上で用紙Pを開放し、排紙台476の上に用紙Pをスタックさせる。排紙台476は、チェーングリッパ464から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。排紙台476には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、不図示の用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる。
また、排紙台476は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台476にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台476を昇降させる。
〈制御系の説明〉
図13は、図12に示すインクジェット記録装置410の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置410は、システムコントローラ500、通信部502、画像メモリ504、搬送制御部510、給紙制御部512、処理液付与制御部514、処理液乾燥制御部516、画像形成制御部518、インク乾燥制御部520、UV照射制御部522、排紙制御部524、操作部530、表示部532等が備えられる。
システムコントローラ500は、インクジェット記録装置410の各部を統括制御する制御手段として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ500は、CPU(Central Processing Unit)500A及び、ROM(Read Only Memory)500B、RAM(Random Access Memory)500Cを内蔵している。
システムコントローラ500は、ROM500B、RAM500C、不図示のメモリへのデータの書き込み、これらのメモリからのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとしても機能する。
図2には、システムコントローラ500にROM500B、RAM500C等のメモリを内蔵する態様を例示したが、ROM500B、RAM500C等のメモリは、システムコントローラ500の外部に設けられていてもよい。
通信部502は、所要の通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ503との間でデータの送受信を行う。
画像メモリ504は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ500を通じてデータの読み書きが行われる。通信部502を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、一旦画像メモリ504に格納される。
搬送制御部510は、インクジェット記録装置410における用紙Pの搬送系411の動作(給紙部412から排紙部424までの用紙Pの搬送)を制御する。搬送系411には、図12に図示した給紙部412におけるテープフィーダ436A、前当て438、給紙ドラム440、処理液付与部414における処理液付与ドラム442、処理液乾燥処理部416における処理液乾燥処理ドラム446、画像形成部418における画像形成ドラム452、インク乾燥処理部420、UV照射処理部422及び排紙部424で共通して用いられるチェーングリッパ464が含まれる。
給紙制御部512は、システムコントローラ500からの指令に応じて、給紙ローラ対434の駆動、テープフィーダ436Aの駆動等の給紙部412の各部の動作を制御する。
処理液付与制御部514は、システムコントローラ500からの指令に応じて、処理液付与ユニット444の動作等の処理液付与部414の各部の動作(処理液の付与量、付与タイミング等)を制御する。
処理液乾燥制御部516は、システムコントローラ500からの指令に応じて、処理液乾燥処理部416の各部の動作を制御する。すなわち、処理液乾燥制御部516は、は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、処理液乾燥処理ユニット450(図12参照)の動作を制御する。
画像形成制御部518は、システムコントローラ500からの指令に応じて、画像形成部418(インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456K)からのインク打滴(吐出)を制御する。
すなわち、図13の画像形成制御部518は、入力画像データからドットデータを形成する画像処理部と、駆動電圧の波形を生成する駆動波形生成部と、駆動電圧の波形を記憶する駆動波形記憶部と、インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kのそれぞれに対して、ドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を供給するドライバー回路(ヘッドドライバー)と、を含んで構成される。
画像処理部では、入力画像データ(0から255のデジタル値で表されるラスターデータ)に対してRGBの各色に分解する色分解(分版)処理、RGBをCMYKに変換する色変換処理、ガンマ補正、むら補正等の補正処理、M値の各色のデータをN値(M>N、Mは3以上の整数、Nは2以上の整数)の各色データに変換するハーフトン処理が施される。
画像処理部による処理を経て生成されたドットデータに基づいて、各画素位置の打滴タイミング、インク打滴量が決められ、各画素位置の打滴タイミング、インク打滴量に応じた駆動電圧が生成され、この駆動電圧がインクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kへ供給され、インクジェットヘッド456C,456M,456Y,456Kから打滴されたインク液滴によって各画素位置にドットが形成される。
インク乾燥制御部520は、システムコントローラ500からの指令に応じて、インク乾燥処理部420の動作を制御する。すなわち、インク乾燥制御部520は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、インク乾燥処理ユニット468(図12参照)の動作を制御する。
UV照射制御部522は、システムコントローラ500からの指令に応じて、UV照射処理部422によるUV光の照射光量(UV光の強度(照射量))を制御し、かつ、UV光の照射タイミングを制御する。
排紙制御部524は、システムコントローラ500からの指令に応じて、排紙台476に用紙Pがスタックされるように、排紙部424の動作を制御する。
操作部530は、操作ボタン、キーボード、タッチパネル等の操作部材(操作手段)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ500に送出する。システムコントローラ500は、この操作部530から送出された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部532は、LCDパネル等の表示装置を備え、システムコントローラ500からの指令に応じて、装置の各種設定情報、異常情報などの情報を表示装置に表示させる。
なお、図4における制御系と、図13における制御系において、同一又は類似する名称を付された処理部、実質的に同一の機能を有する処理部は、適宜共通化をすることができる。
以上説明した搬送装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。また、上記に示した搬送装置と処理装置(図1,11参照)とを組み合わせて、処理装置とすることも可能である。
また、上記に示した搬送装置は、枚葉の媒体の先端側被固定部を把持する第1固定工程、複数の吸着部が媒体の搬送方向に沿って並べられた搬送ガイドによって、媒体の後端側の被固定部固定する第2固定工程、後端側被固定部が固定された状態で媒体の先端側被固定部を搬送方向へ移動させて、媒体を搬送させる搬送工程を含む媒体搬送方法において、第2固定工程は、媒体の後端位置に応じて吸着部のオンオフが媒体の搬送方向上流側から下流側へ順に切り換えられる媒体搬送方法を実現することができる。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):枚葉の媒体の搬送方向に搬送させる媒体搬送装置において、媒体の搬送方向における中央よりも下流側の先端側被固定部を把持する第1固定手段と、第1固定手段を搬送方向に沿って移動させる移動手段と、第1固定手段の下方に一定間隔を離して配置された媒体固定面を具備する複数の固定部が搬送方向に沿って並べられた構造を有し、媒体固定面における固定領域の搬送方向における長さが、媒体搬送装置において使用される最小サイズの媒体の搬送方向における全長の4分の1未満である構造を有し、搬送される媒体の搬送方向における中央よりも上流側の後端側被固定部を固定する第2固定手段と、搬送される媒体の搬送方向の上流側端の位置に対応して、複数の固定部による固定及び固定の解除を搬送方向の上流側から下流側へ順に切り換える固定制御手段と、を備えた媒体搬送装置。
第1態様によれば、枚葉の媒体の先端側被固定部を把持して搬送させる際に、媒体の搬送方向における中央よりも上流側の後端側被固定部が、先端側被固定部の固定位置よりも下方の媒体保持面に固定され、搬送される媒体の搬送方向上流側の端の位置に対応して、後端側被固定部の固定及び固定の解除が切り換えられるので、搬送時における媒体の傾斜が急勾配になることが防止され、搬送時における媒体の変形が防止される。
また、媒体の後端側被固定部を固定することで、搬送される媒体へ搬送方向と反対方向への張力を作用させることができ、搬送時における媒体の変形が防止される。
(第2態様):第1態様に記載の媒体搬送装置において、固定制御手段は、搬送方向に隣接する固定部について、搬送方向の上流側の固定部の固定領域を搬送される媒体の搬送方向の上流側の端が抜け出すと、搬送方向の上流側の固定部による搬送される媒体の固定を解除させる。
第2態様によれば、搬送される媒体が固定領域を通過した後の固定部の固定を解除させることで、搬送される媒体の後端側被固定部の固定が順に切り換えられる。
搬送される媒体の搬送方向上流側の端の位置を検出する検出手段を備える態様や、搬送される媒体の位置を検出して、媒体の搬送速度、媒体の全長に基づいて媒体の搬送方向上流側の端の位置を算出する算出手段を備える態様が好ましい。
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載の媒体搬送装置において、固定制御手段は、搬送方向に隣接する固定部について、搬送方向の下流側の固定部における固定領域に搬送される媒体の後端側被固定部が到達すると、下流側の固定部による搬送される媒体の固定を開始させる。
第3態様によれば、搬送される媒体の後端側被固定部が固定領域に到達すると、この固定部による固定を開始させることで、搬送される媒体の後端側被固定部の固定が順に切り換えられる。
固定開始のタイミングを、搬送方向上流側の固定部による固定解除のタイミングと同時、又は搬送方向上流側の固定部による固定解除のタイミングよりも前とする態様が好ましい。
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれかに記載の媒体搬送装置において、第2固定手段は、搬送される媒体の裏側に吸着圧力を作用させて吸着する吸着手段を含んでいる。
第4態様において、吸着圧力(負圧)を発生させる吸着圧力発生手段と、吸着圧力発生手段と各固定部との接続を切り換える接続切換手段を備える態様が好ましい。
(第5態様):第1態様から第4態様のいずれかに記載の媒体搬送装置において、第2固定手段は、搬送方向に隣接する固定部について、搬送方向の上流側の固定部における中央部が搬送方向の下流側の固定領域に入り込む構造を有している。
第5態様によれば、固定部を、搬送方向の上流側の固定部における中央部が搬送方向の下流側の固定領域に入り込む構造とすることで、媒体の後端側被固定部の固定の切れ目をなくすことができる。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載の媒体搬送装置において、媒体固定面に吸着圧力を発生させる圧力発生手段を備え、媒体固定面は、圧力発生手段と接続され、搬送される媒体へ吸着圧力を作用させる複数の吸着穴が二次元状に形成される。
第6態様において、吸着穴の配置として、正方格子状の配置、放射状の配置、同心円状の配置などを適用することができる。
第6態様において、固定制御手段は、複数の吸着部による吸着のオンオフを切り換える切換制御手段として機能する。
(第7態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載の媒体搬送装置において、媒体固定面は、吸着圧力を発生させる複数の吸着溝が固定領域の搬送方向と直交する方向の中央から両端に向かって放射状に形成される。
第7態様によれば、媒体が搬送方向と直交する方向の中央から両端へ伸ばされるので、媒体の変形、しわの発生等を防止することができる。
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれかに記載の媒体搬送装置において、固定部ごとの媒体固定面は、搬送方向の下流側から上流側に向かう下向きの傾斜面である。
第8態様によれば、媒体固定面を斜面とすることで、先端側被固定部の近傍及び後端側被固定部の近傍における媒体の変形が防止される。
(第9態様):枚葉の媒体へ画像を形成する画像形成手段と、画像形成手段によって画像が形成された媒体を搬送方向へ搬送させる媒体搬送装置と、搬送される媒体へ処理を施す処理手段と、を備え、前記媒体搬送装置は、第1態様から第8態様のいずれかに記載の媒体搬送装置を含む画像形成装置。
第9態様によれば、枚葉の媒体へ画像を形成する画像形成装置において、第1態様から第8態様のいずれかに記載の媒体搬送装置と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、搬送時における媒体の傾斜が急勾配になることが防止され、媒体の後端側被固定部を固定することで、搬送される媒体へ搬送方向と反対方向への張力を作用させることができ、搬送時における媒体の変形が防止される。
(第10態様):第9態様に記載の画像形成装置において、処理手段は、搬送される媒体へ乾燥処理を施す乾燥処理部を含んでいる。
第10態様によれば、画像形成後の乾燥処理における媒体の変形が防止される。
(第11態様):第9態様又は第10態様に記載の画像形成装置において、処理手段は、画像形成手段によって画像が形成された媒体へ画像の定着処理を施す定着処理部を含んでいる。
第11態様によれば、画像形成後の定着処理における媒体の変形が防止される。
(第12態様):第11態様に記載の画像形成装置において、画像形成手段は、活性光線の照射によって硬化する液体を用いて画像を形成し、定着処理部は、画像形成手段によって画像が形成された媒体へ活性光線を照射させる活性光線照射部を含んでいる。
第12態様によれば、活性光線の照射によって硬化する液体が硬化する際の、媒体の収縮やカールが防止される。
(第13態様):枚葉の媒体の搬送方向に搬送させる媒体搬送方法において、搬送させる媒体の搬送方向における中央よりも下流側の先端側被固定部を把持して、把持された媒体を搬送方向に沿って移動させる際に、先端側被固定部が把持される位置の下方に一定間隔を離して配置された媒体固定面を具備し、使用される最小サイズの媒体の搬送方向における全長の4分の1未満の長さを有し、搬送方向に沿って並べられた複数の固定部の各固定領域に、搬送される媒体の搬送方向における中央よりも上流側の後端側被固定部を固定し、搬送される媒体の搬送方向の上流側端の位置に対応して、複数の固定部による固定及び固定の解除を搬送方向の上流側から下流側へ順に切り換える媒体搬送方法。