図1において、内視鏡システム10は、生体内の観察部位を撮像する内視鏡11と、撮像により得られた画像信号に基づいて観察部位の観察画像を生成するプロセッサ装置12と、観察部位を照射する照明光を内視鏡11に供給する光源装置13と、観察画像を表示するモニタ14とを備えている。プロセッサ装置12には、キーボードやマウス等の操作入力部15が接続されている。
内視鏡システム10は、照明光として白色光を使用し、白色光のもとで観察部位を観察するための通常光観察モードと、照明光として特殊光を利用して観察部位に存在する血管の性状を観察するための血管強調観察モードおよび酸素飽和度観察モードとを備えている。血管強調観察モードおよび酸素飽和度観察モードは、血管のパターンや酸素飽和度等の性状を把握して、腫瘍の良悪鑑別等の診断を行うための特殊光観察モードである。血管強調観察モードおよび酸素飽和度観察モードでは、特殊光として、血中ヘモグロビンに対する吸光度が高い波長域の狭帯域光が利用される。血管強調観察モードは、血管が強調された血管強調観察用の表示画像を表示する。酸素飽和度観察モードは、血中ヘモグロビンの酸素飽和度を示す酸素飽和度観察用の表示画像を表示する。
内視鏡11は、生体の消化管内に挿入される挿入部16と、挿入部16の基端部分に設けられた操作部17と、操作部17とプロセッサ装置12および光源装置13との間を連結するユニバーサルコード18とを備えている。
挿入部16は、先端から順に連設された、先端部19、湾曲部20、可撓管部21からなる。図2に示すように、先端部19の先端面には、観察部位に照明光を照射する照明窓22、観察部位の像を取り込むための観察窓23、観察窓23を洗浄するために送気・送水を行うための送気・送水ノズル24、鉗子や電気メスといった処置具を突出させて各種処置を行うための鉗子出口25が設けられている。観察窓23の奥には、撮像素子44や結像用の対物光学系51(ともに図3参照)が内蔵されている。
湾曲部20は、連結された複数の湾曲駒からなり、操作部17のアングルノブ26を操作することにより、上下左右方向に湾曲動作する。湾曲部20が湾曲することにより、先端部19の向きが所望の方向に向けられる。可撓管部21は、食道や腸等曲がりくねった管道に挿入できるように可撓性を有している。挿入部16には、撮像素子44を駆動する駆動信号や撮像素子44が出力する画像信号を通信する通信ケーブルや、光源装置13から供給される照明光を照明窓22に導光するライトガイド43(図3参照)が挿通されている。
操作部17には、アンブルノブ26の他、処置具を挿入するための鉗子口27、送気・送水ノズル24から送気・送水を行う際に操作される送気・送水ボタン28、静止画像を撮影するためのレリーズボタン(図示せず)等が設けられている。
ユニバーサルコード18には、挿入部16から延設される通信ケーブルやライトガイド43が挿通されており、プロセッサ装置12および光源装置13側の一端には、コネクタ29が取り付けられている。コネクタ29は、通信用コネクタ29aと光源用コネクタ29bからなる複合タイプのコネクタである。通信用コネクタ29aと光源用コネクタ29bはそれぞれ、プロセッサ装置12と光源装置13に着脱自在に接続される。通信用コネクタ29aには通信ケーブルの一端が配設されており、光源用コネクタ29bにはライトガイド43の入射端が配設されている。
図3において、光源装置13は、それぞれ発光波長が異なる4種類の光源部30、31、32、33と、これらを駆動制御する光源制御部34とを備えている。光源制御部34は、光源装置13の各部の駆動タイミングや同期タイミング等の制御を行う。
光源部30〜33は、特定の波長域の光をそれぞれ発光する半導体光源を有している。光源部30、31は、半導体光源として、青色光Bを発光する発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を有している。以下、光源部30、31が有する発光ダイオードを、発光ダイオードBLED1、BLED2という。発光ダイオードBLED1、BLED2は、同じ波長域の青色光を発するものであり、中心波長は、例えば445nmである。
光源部30は、発光ダイオードBLED1が発する青色光によって励起されて、緑色(G)領域から赤色(R)領域に渡る波長域の蛍光FLを発光する蛍光体35を有している。蛍光体35は、青色光Bの一部を吸収して蛍光FLを発光するとともに、吸収しない残りの青色光Bを透過させる。蛍光体35を透過する青色光Bは、蛍光体35によって拡散されて、蛍光体35から、蛍光FLとともに出射する。透過する青色光Bと励起される蛍光FLの混合光によって白色光が生成される。蛍光体35としては、例えば、YAG系、BAM(BgMgAl10O17)系等の蛍光体が使用される。
光源部30の蛍光体35が発する白色光のうち、青色光Bについては、後述する光路統合部36においてカットされて、内視鏡11には供給されない。その代わりに、光源部31の発光ダイオードBLED2が発光する青色光Bが内視鏡11に供給される。光源部30〜33の発光スペクトルを示す図4において、光源部31が発する青色光Bと、光源部30が発する蛍光FLが混合されて、混合により白色光が生成される。この白色光が内視鏡11に通常観察用の照明光として供給される。
光源部32、33は、半導体光源として、レーザダイオードLD(Laser Diode)1、LD(Laser Diode)2を有している。図4に示すように、レーザダイオードLD1は、青色領域において、例えば波長域が410±10nmに制限され、中心波長が405nmの狭帯域光N1を発光する。レーザダイオードLD2は、青色領域において、例えば波長域が470±10nmに制限され、中心波長が473nmの狭帯域光N2を発光する。レーザダイオードLD1、LD2としては、InGaN系、InGaNAs系、GaNAs系のものを用いることができる。また、レーザダイオードLD1、LD2としては、高出力化が可能なストライプ幅(導波路の幅)が広いブロードエリア型のレーザダイオードが好ましい。
光源部32は、血管強調観察用の光源である。血中ヘモグロビンの吸光スペクトルを表す図5において、血液のヘモグロビンの吸光係数μaは、波長依存性を有しており、波長が450nm以下の領域において急激に上昇し、405nm付近においてピークを有している。また、波長が450nm以下と比較すると低い値ではあるが、波長が530nm〜560nmにおいてもピークを有している。吸光係数μaが大きな波長の光を観察部位に照射すると、血管においては吸収が大きいので、血管とそれ以外の部分とのコントラストが大きな像が得られる。
また、図6に示すように、生体組織の光の散乱特性にも波長依存性があり、短波長になるほど散乱係数μSは大きくなる。散乱は生体組織内への光の深達度に影響する。すなわち、散乱が大きいほど、生体組織の粘膜表層付近で反射される光が多く、中深層に到達する光が少ない。そのため、短波長であるほど深達度は低く、長波長になるほど深達度は高い。こうしたヘモグロビンの吸光特性と生体組織の光の散乱特性を鑑みて、血管強調用の光の波長が選択される。
光源部32が発する405nmの狭帯域光N1は、深達度が低いので、表層血管による吸収が大きい。このため狭帯域光N1は表層血管強調用の光として用いられる。狭帯域光N1を用いることにより、観察画像において表層血管を高コントラストで描出することができる。また、中深層血管強調用の光としては、光源部31が発する白色光の緑色成分が用いられる。図5に示す吸光スペクトルにおいて、450nm以下の青色領域と比較して、530nm〜560nmの緑色領域においては、吸光係数は緩やかに変化するので、中深層血管強調用の光は、青色領域ほど狭帯域であることは要求されない。そのため、後述するように、中深層血管強調用には、撮像素子44のG色のマイクロカラーフイルタによって白色光から色分離した緑色成分が用いられる。
光源部33は、酸素飽和度観察用の光源である。図5において、実線の吸光スペクトルHbは酸素と結合していない還元ヘモグロビンの吸光スペクトルを示し、一点鎖線の吸光スペクトルHbO2は、酸素と結合した酸化ヘモグロビンの吸光スペクトルを示す。このように還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンは、異なる吸光特性を持っており、同じ吸光係数μaを示す等吸収点(各スペクトルHb、HbO2の交点)を除いて、吸光係数μaに差が生じる。吸光係数μaに差があると、同じ光強度かつ同じ波長の光を照射しても、酸素飽和度が変化すれば、反射率が変化する。酸素飽和度観察モードにおいては、吸光係数μaに差がある波長として、光源部33が発する波長473nmの狭帯域光N2が用いられ、酸素飽和度が測定される。
図3において、光源制御部34は、発光ダイオードBLED1、BLED2、レーザダイオードLD1、LD2にそれぞれ接続されたドライバ37、38を介して、発光ダイオードBLED1、BLED2、及びレーザダイオードLD1、LD2の点灯、消灯の制御を行う。また、光源制御部34は、プロセッサ装置12から受信する露出制御信号に基づいて、光源部30〜33の光量を制御する。
ドライバ37Aは、発光ダイオードBLED1を駆動するためのドライバであり、ドライバ37Bは、発光ダイオードBLED2を駆動するためのドライバである。光源制御部34の制御の下、駆動電流を連続的に与えることにより発光ダイオードBLED1、BLED2を点灯させる。そして、駆動電力値として、駆動電流値を変化させることにより、青色光Bの光量を制御する。発光ダイオードBLED1の青色光Bは、蛍光体35の励起光として使用されるため、発光ダイオードBLED1の青色光Bの光量を制御することにより、蛍光体35が発する蛍光FLの光量が制御される。
内視鏡11に対して供給される白色光は、上述のとおり、発光ダイオードBLED1により励起発光される蛍光FLと、発光ダイオードBLED2が発する青色光Bが混合されて生成される。白色光のG成分とR成分を含む蛍光FLと、B成分に対応する青色光Bの色バランス(光量比)が変わると、観察部位の色味が変化してしまう。光源制御部34は、露出制御において、ドライバ37A、37Bを通じて発光ダイオードBLED1、BLED2に与える駆動電流値を独立に変化させることで、蛍光FLと青色光Bの光量比を一定に保ちながら、発光ダイオードBLED1、BLED2の光量を増減させる。
ドライバ38A、ドライバ38Bは、光源制御部34の制御の下、駆動パルスを与えることによりレーザダイオードLD1、LD2を点灯させる。そして、駆動パルスのデューティ比を制御するPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、駆動電力値を変化させて各狭帯域光N1、N2の光量を制御する。駆動電力値の制御は、駆動パルスの振幅を変えるPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御等でもよい。
光路統合部36は、各光源部30〜33の光路を1つの光路に統合する。光路統合部36の光出射部は、光源用コネクタ29bが接続されるレセプタクルコネクタ42の近傍に配置されている。光路統合部36は、各光源部30〜33から入射された光を、内視鏡11のライトガイド43の入射端に出射する。なお、図示は省略するが、光源用コネクタ29bとレセプタクルコネクタ42にはそれぞれ保護ガラスが設けられている。
内視鏡11は、ライトガイド43、撮像素子44、アナログ処理回路45(AFE:Analog Front End)、撮像制御部46を備えている。ライトガイド43は、複数本の光ファイバをバンドル化したファイババンドルである。光源用コネクタ29bが光源装置13に接続されたときに、光源用コネクタ29bに配置されたライトガイド43の入射端が光路統合部36の出射端と対向する。先端部19に位置するライトガイド43の出射端は、2つの照明窓22に光が導光されるように、照明窓22の前段で2本に分岐している。
照明窓22の奥には、照射レンズ48が配置されている。光源装置13から供給された光はライトガイド43により照射レンズ48に導光されて照明窓22から観察部位に向けて照射される。照射レンズ48は凹レンズからなり、ライトガイド43から出射する光の発散角を広げる。これにより、観察部位の広い範囲に照明光を照射することができる。
観察窓23の奥には、対物光学系51と撮像素子44が配置されている。観察部位の像は、観察窓23を通して対物光学系51に入射し、対物光学系51によって撮像素子44の撮像面44aに結像される。
撮像素子44は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等からなり、フォトダイオード等の画素を構成する複数の光電変換素子がマトリックスに配列された撮像面44aを有している。撮像素子44は、撮像面44aで受光した光を光電変換して、各画素においてそれぞれの受光量に応じた信号電荷を蓄積する。信号電荷はアンプによって電圧信号に変換されて読み出される。電圧信号は画像信号として撮像素子44からAFE45に出力される。
撮像素子44は、カラー撮像素子であり、撮像面44aには、図7に示すような分光特性を有するB、G、Rの3色のマイクロカラーフイルタが各画素に割り当てられている。マイクロカラーフイルタによって、光源部31が発光する白色光がB、G、Rの3色に分光される。マイクロカラーフイルタの配列は例えばベイヤー配列である。
図8に示すように、撮像素子44は、1フレームの取得期間内で、画素に信号電荷を蓄積する蓄積動作と、蓄積した信号電荷を読み出す読み出し動作を行う。図8(A)に示すように、通常光観察モードにおいては、撮像素子44の蓄積動作のタイミングに合わせて光源部30、31の発光ダイオードBLED1、BLED2が点灯し、照明光として青色光Bと蛍光FLの混合光からなる白色光(B+FL)が観察部位に照射され、その反射光が撮像素子44に入射する。撮像素子44は、白色光をマイクロカラーフイルタで色分離する。青色光Bに対応する反射光をB画素が受光し、蛍光FLの中のG成分に対応する反射光をG画素が、蛍光FLの中のR成分に対応する反射光をR画素がそれぞれ受光する。撮像素子44は、読み出しタイミングに合わせて、B、G、Rの各画素の画素値が混在した1フレーム分の画像信号B、G、Rをフレームレートに従って順次出力する。こうした撮像動作は、通常光観察モードが設定されている間、繰り返される。
血管強調観察モードにおいては、図8(B)に示すように、光源部30、31に加えて、撮像素子44の蓄積動作のタイミングに合わせて光源部32が点灯する。光源部30〜32が点灯すると、通常光観察モードと同様の白色光とともに、狭帯域光N1が追加されて、これらの混合光(B+FL+N1)が照明光として観察部位に照射される。
通常光観察モードと同様に、白色光に狭帯域光N1が追加された照明光は、撮像素子44のB、G、Rのマイクロカラーフイルタで分光される。撮像素子44のB画素は、青色光Bに加えて、狭帯域光N1を受光する。G画素は、蛍光FLのG成分を受光する。R画素は、蛍光FLのR成分を受光する。血管強調観察モードにおいても、撮像素子44は、読み出しタイミングに合わせて、画像信号B、G、Rをフレームレートに従って順次出力する。こうした撮像動作は、血管強調観察モードが設定されている間、繰り返される。
酸素飽和度観察モードにおいては、図8(C)に示すように、まず、撮像素子44の蓄積動作のタイミングに合わせて光源部30、31が点灯する。光源部30、31が点灯すると、通常光観察モードと同様に白色光が観察部位に照射される。次のフレームにおいては、光源部30、31が消灯したうえで光源部33が点灯して、狭帯域光N2が観察部位に照射される。酸素飽和度観察モードにおいても、撮像素子44は、読み出しタイミングに合わせて、画像信号B、G、Rをフレームレートに従って順次出力する。
ただし、酸素飽和度観察モードでは、通常光観察モードや血管強調観察モードと異なり、白色光と狭帯域光N2が交互に照射されるので、最初のフレームで白色光に対応する画像信号B、G、Rが出力され、次のフレームでは狭帯域光N2に対応する画像信号B、G、Rが出力されるというように、各照明光に対応して画像信号B、G、Rが担持する情報も1フレームおきに変化する。こうした撮像動作は、酸素飽和度観察モードが設定されている間、繰り返される。
図3において、AFE45は、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、およびアナログ/デジタル変換器(A/D)(いずれも図示省略)から構成されている。CDSは、撮像素子44からのアナログの画像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、信号電荷のリセットに起因するノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された画像信号を増幅する。A/Dは、AGCで増幅された画像信号を、所定のビット数に応じた階調値を持つデジタルな画像信号に変換してプロセッサ装置12に入力する。
撮像制御部46は、プロセッサ装置12内のコントローラ56に接続されており、コントローラ56から入力される基準クロック信号に同期して、撮像素子44に対して駆動信号を入力する。撮像素子44は、撮像制御部46からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで画像信号をAFE45に出力する。
プロセッサ装置12は、コントローラ56の他、DSP(Digital Signal Processor)57と、画像処理部58と、フレームメモリ59と、表示制御回路60とを備えている。コントローラ56は、CPU、制御プログラムや制御に必要な設定データを記憶するROM、プログラムをロードして作業メモリとして機能するRAM等からなり、CPUが制御プログラムを実行することにより、プロセッサ装置12の各部を制御する。
DSP57は、撮像素子44が出力する画像信号を取得する。DSP57は、B、G、Rの各画素に対応する信号が混在した画像信号を、B、G、Rの画像信号に分離し、各色の画像信号に対して画素補間処理を行う。この他、DSP57は、ガンマ補正や、B、G、Rの各画像信号に対してホワイトバランス補正等の信号処理を施す。
また、DSP57は、画像信号B、G、Rに基づいて露出値を算出して、画像全体の光量が不足している場合(露出アンダー)には照明光の光量を上げるように、一方、光量が高すぎる場合(露出オーバー)には照明光の光量を下げるように、コントローラ56を介して光源装置13に対して露出制御信号を送信する。
フレームメモリ59は、DSP57が出力する画像データや、画像処理部58が処理した処理済みのデータを記憶する。表示制御回路60は、フレームメモリ59から画像処理済みの画像データを読み出して、コンポジット信号やコンポーネント信号等のビデオ信号に変換してモニタ14に出力する。
図9(A)に示すように、通常光観察モードにおいては、画像処理部58は、DSP57によってB、G、Rの各色に色分離された画像信号B、G、Rに基づいて、通常光観察用の表示画像を生成する。この表示画像が観察画像としてモニタ14に出力される。画像処理部58は、フレームメモリ59内の画像信号B、G、Rが更新される毎に、表示画像を更新する。
図9(B)に示すように、血管強調観察モードにおいては、画像処理部58は、画像信号B、G、Rに基づいて、血管強調観察用の表示画像を生成する。血管強調観察モードにおける画像信号Bには、白色光のB成分に加えて、狭帯域光N1の情報が含まれているため、表層血管が高コントラストで描出される。癌等の病変においては、正常組織と比較して、表層血管の密集度が高くなる傾向がある等血管のパターンに特徴があるため、腫瘍の良悪鑑別を目的とする血管強調観察においては、表層血管が鮮明に描出されることが好ましい。
また、より表層血管を強調する場合には、例えば、画像信号Bに基づいて表層血管の領域を抽出して、抽出した領域に対して輪郭強調処理等を施す。そして、輪郭強調処理が施された画像信号Bを、画像信号B、G、Rから生成したフルカラー画像に合成する。こうすることで、より表層血管が強調される。表層血管に加えて中深層血管に対しても同様の処理を行ってもよい。中深層血管を強調する場合には、中深層血管の情報が多く含まれている画像信号Gから中深層血管の領域を抽出して、抽出した領域に対して輪郭強調処理を施して、強調処理済みの画像信号Gを、画像信号B、G、Rから生成したフルカラー画像に合成する。
血管強調観察用の表示画像は、通常光観察用と同様に、三色の画像信号B、G、Rに基づいて生成されるため観察部位をフルカラーで表示することが可能となるが、血管強調観察モードにおける画像信号Bは、通常光観察モードにおける画像信号Bと比較すると、青色の濃度が高い。そのため、血管強調観察用の表示画像を生成する場合には、通常光観察用の表示画像と同様の色味になるように色補正を行ってもよい。画像処理部58は、フレームメモリ59内の画像信号B、G、Rが更新される毎に、血管強調観察用の表示画像を生成する。
なお、血管強調観察用の表示画像を生成する方式としては、画像信号Rを使わずに、画像信号B、Gの二色のみで生成して、画像信号Bをモニタ14のBチャンネルおよびGチャンネルに、画像信号Gに対応する信号をモニタ14のRチャンネルに割り当てる方式等、観察部位を疑似カラーで表示する方式を採用してもよい。
図9(C)に示すように、酸素飽和度観察モードにおいては、画像処理部58は、白色光のもとで取得された画像信号G1、R1と、狭帯域光N2のもとで取得された画像信号B2に基づいて、酸素飽和度算出処理を行う。画像信号B2の画素値には、酸素飽和度に加えて血液量の情報も含まれている。より正確に酸素飽和度を求めるためには、画像信号B2の画素値から血液量の情報を分離する必要がある。画像処理部58は、血液量に対して高い相関を示す画像信号Rを利用して、画像信号Bとの間で画像間演算を行って、酸素飽和度と血液量の情報を分離する。
具体的には、画像処理部58は、各画像信号B2、G1、R1の同じ位置の画素値を照合して、画像信号B2の画素値と画像信号G1の画素値の信号比B2/G1と、画像信号R1の画素値と画像信号G1の画素値の信号比R1/G1を求める。画像信号G1は、画像信号B2と画像信号R1の画素値を規格化するために、観察部位の明るさレベルを表す参照信号として用いられる。そして、予め作成された、信号比B2/G1およびR1/G1と酸素飽和度および血液量との相関関係を記憶したテーブルに基づいて、血液量の情報が分離された酸素飽和度を算出する。そして、画像信号B1、G1、R1に基づいて生成されるフルカラー画像に対して、算出した酸素飽和度の値に応じた色変換を行って、酸素飽和度観察用の表示画像を生成する。
図10に示すように、光源部30は、発光ダイオードBLED1と、発光ダイオードBLED1が実装される基板66aと、基板66a上に形成され、発光ダイオードBLED1を収容するキャビティが形成されたモールド66bと、キャビティに封入された蛍光体35とを有している。発光ダイオードBLED1は配線によって基板66aと導通可能に接続される。このような発光ダイオードBLED1の実装形態は、一般的に表面実装型と呼ばれる。
蛍光体35は、発光ダイオードBLED1を封止する封止樹脂内に、蛍光物質や、光を拡散する拡散剤を分散したものである。発光ダイオードBLED1が発光する青色光Bは、蛍光体35に入射して一部が蛍光FLの励起に消費され、残りが蛍光体35を透過して出射する。キャビティの内面は光を反射するリフレクタとして機能する。蛍光FLは、蛍光体35の全面から出射するため、発光ダイオードBLED1が発する青色光Bよりも、光の発散角(広がり角)が広い。発散角が異なると、青色光Bと蛍光FLの間で、観察部位に照射される照射範囲(照射スポットの大きさ)が変わってしまうので色ムラの原因になる。しかし、発光ダイオードLED1の青色光Bも、拡散剤やリフレクタの作用により、発散角(広がり角)が広げられて出射する。
図11に示すように、光源部31も、光源部30と同様に、発光ダイオードBLED2を表面実装型でパッケージングしたものである。発光ダイオードBLED2の発光波長は、発光ダイオードBLED1と同様である。光源部31は、光源部30と同様に、基板67aとモールド67bを有しており、光源部30との相違点は、モールド67bのキャビティには、蛍光物質は分散されず、拡散材のみが分散された封入樹脂67cが設けられている点である。そのため、光源部31は、蛍光FLを励起発光せず、発光ダイオードLED2が発光する青色光Bのみを出射する。
なお、本例の光源部30、31の形態は1例であり、他の形態でもよい。例えば、蛍光体35や封止樹脂67cの光出射面に発散角を調整するマイクロレンズを設けてもよいし、あるいは表面実装型でなく、発光ダイオードを、マイクロレンズが形成された砲弾型のケースに収容した形態でもよい。また、光源部30について、発光ダイオードLED1に加えて蛍光体35も基板66aに設けた例で説明したが、蛍光体35を基板66aに設けずに別体で構成してもよい。この場合には、レンズや光ファイバなどを導光部材として追加して、それらを介して発光ダイオードLED1の青色光Bを蛍光体に導光する。
発光ダイオードBLED1、LED2は、周知のようにP型半導体とN型半導体を接合したものである。そして、電圧を掛けるとPN接合部付近においてバンドギャップを超えて電子と正孔が再結合して電流が流れて、再結合時にバンドギャップに相当するエネルギーを光として放出する。
図12に示すように、発光ダイオードBLED1、BLED2は、駆動電流値を増加させると、青色光Bの光量が増加する。発光ダイオードBLED1と蛍光体35を組み合わせた光源部30においては、蛍光体35は、発光ダイオードBLED1の青色光Bの光量の増加に応じて蛍光FLに含まれるG成分及びR成分の光量も増加する。G成分及びR成分については、青色光Bと対応させて、以下、緑色光G、赤色光Rという。
図13は、光源部30の白色光を用いて、消化管の大腸を撮像したときの撮像信号44の出力特性を示すグラフである。グラフの横軸は、発光ダイオードBLED1の駆動電流値I1であり、縦軸は、内視鏡11の撮像素子44が出力する信号値である。図13において、撮像素子44の信号値は、内視鏡11の照明窓22から光源部30の白色光を照射し、その反射光を撮像素子44のB、G、Rの各色の画素で受光したときに撮像素子44が出力する画像信号B、G、Rの信号値である。大腸は白色光の下では赤味を帯びているため、画像信号B、G、Rの信号値は、R、G、Bの順に高い。画像信号B、G、Rの信号値は、大腸で反射する、発光ダイオードBLED1の青色光B、蛍光FLに含まれる緑色光G及び赤色光Rのそれぞれの光量に対応する。
図13のグラフに示すように、駆動電流値I1を上げていくと、青色光B、蛍光FLに含まれる緑色光G及び赤色光Rの光量は増加する。図14に、図13のグラフに基づいて、横軸に、青色光B及び蛍光FL(G+R)の光量を合計した白色光の光量を、縦軸に、青色光Bと蛍光FL(G+R)との光量比を取ったグラフを示す。図14に示すように、駆動電流値I1を上げると、光量比は、駆動電流値I1が比較的低い低出力領域ではほぼ一定である。しかし、駆動電流値I1が比較的高い高出力領域になると、蛍光FL(G+R)の増加率(傾き)が低下する。これは、特許文献1に記載されているように、蛍光体35の発熱が原因と考えられる。すなわち、駆動電流値I1を上げると、青色光B及びそれによって励起される蛍光FLの光量が増加するため、蛍光体35の温度が上昇し、蛍光FLの増加率が低下する。
さらに、高出力領域においては、蛍光FLの増加率が低下するのに対して、図13に示すように、青色光Bの増加率は上昇する。これは、蛍光体35において温度上昇が生じると、青色光Bの透過率が上昇することが原因と考えられる。このように、駆動電流値I1を上げていくと、蛍光体35の温度が上昇して、蛍光FLの増加率が低下する一方、青色光Bの増加率は上昇する。そのため、図14に示すように、白色光の光量を増加させていくと、低出力領域においては、青色光Bと蛍光FL(G+R)の光量比は一定であるが、高出力領域においては、蛍光FLの増加率の低下及び青色光Bの増加率の上昇が生じて、光量比が変化する。もちろん、青色光Bの増加率の上昇がなくても、蛍光FLの増加率が低下すれば、光量比は変化するが、青色光Bの増加率が上昇すると、光量比の変化はより大きなものとなる。
光源制御部34は、プロセッサ装置12から送信される露出制御信号に基づいて、光量を増減させる露出制御を行う。露出制御において、光量が低い低出力領域と光量が高い高出力領域で光量比の変化は、表示画像において観察部位の色味の変化として現れる。
発光ダイオードBLED2を有する光源部31は、露出制御における光量比を一定に保つことを目的として設けられる。光源部30の青色光Bは光路統合部36においてカットされ、その代わりに光源部31の青色光Bが蛍光FLと混合される青色光Bとして利用される。光源部31は、蛍光体35の発熱の影響を受けずに、かつ、蛍光FLの光量とは独立に青色光Bの光量を制御することが可能である。そのため、光源部30と光源部31を組み合わせることにより、蛍光FLの光量に合わせて青色光Bの光量を調節することが可能となり、その結果、蛍光FLと青色光Bの光量比を一定に保ちながら、白色光の光量を制御することができる。
図15に示すように、光源制御部34には、LUT(ルックアップテーブル)34aを有しており、LUT34aには、図16に示すように、光源部30、31の各駆動電流値I1、I2の関係が記憶されている。図13に示したように、光源部30の駆動電流値I1を上げていくと、駆動電流値I1が比較的高い高出力領域では、低出力領域と比較して蛍光FL(G+R)の増加率は低下する。光源部31は、蛍光体35が設けられていないため、駆動電流値I2と青色光Bの光量の関係は、図12のようになる。LUT34aには、駆動電流値I1の増加に応じた光源部30による蛍光FLの光量の変化に対応して、光源部31による青色光Bの光量が変化するように、駆動電流値I1と駆動電流値I2の関係が記憶される。
光源制御部34は、プロセッサ装置12から露出制御信号を受信すると、受信した露出制御信号に応じて駆動電流値I1を決定し、LUT34aを参照して、決定した駆動電流値I1に対応する駆動電流値I2を決定する。そして、決定した駆動電流値I1、I2で光源部30、31を駆動する。これにより、図17に示すように、白色光の光量を増減させる露出制御において、白色光に含まれる青色光Bと蛍光FLの光量比が一定に保たれる。
図18において、光路統合部36の具体的な構成、及び光源部30〜33を光路統合部36に入射させる入射光学系の具体的な構成を示す。光路統合部36は、例えば、光源部30〜33から入射した光をコリメートするコリメータレンズ66〜68と、2枚のダイクロイックミラー71、72と、光路統合部36から出射する光をライトガイド43に集光する集光光学系73とで構成されている。集光光学系73は、例えば2枚の集光レンズ73a、73bで構成される。
また、光源部30及び光源部31のそれぞれと、光路統合部36の間には、光源部30、31が発する光を導光する導光ロッド76、77が設けられている。導光ロッド76、77は、光源部30、31を光路統合部36に入射させる入射光学系として機能する。また、光源部32、33と光路統合部36の間には入射光学系78が配置されている。光源部32、33が発する狭帯域光N1、N2は、入射光学系78において1つの光路に統合されて、光路統合部36に入射する。光源部30、31の導光ロッド76、77の光軸は平行に配置され、光源部32、33の入射光学系78は、その光軸が導光ロッド76、77の光軸と直交した姿勢で配置される。
コリメータレンズ66は、光源部30から入射する白色光(青色光B+蛍光FL(G、R))をコリメートする。コリメータレンズ66の後段には、ダイクロイックミラー71が配置されている。ダイクロイックミラー71は、図19に示すように、約490nm未満の青色領域の光を反射し、それ以上の光を透過する透過特性を有している。ダイクロイックミラー71は、光源部30から入射する青色光Bをカットし、蛍光FL(G,R)を透過させる。また、ダイクロイックミラー71は、導光ロッド76の光軸に対して45度傾斜した姿勢で配置されている。集光光学系73は、ダイクロイックミラー71の後段において、集光光学系73の光軸と導光ロッド76の光軸が一致するように配置されている。そのため、ダイクロイックミラー71を透過した蛍光FL(G、R)は、集光光学系73に入射する。
コリメータレンズ67は、光源部31から入射する青色光Bをコリメートする。コリメータレンズ67は、コリメータレンズ67の後段には、ダイクロイックミラー72が配置されている。ダイクロイックミラー72は、図20に示すように、約415nmから約460nmの光を反射し、それ以外の光を透過する透過特性を有している。そのため、ダイクロイックミラー72は、光源部31から入射する青色光Bを反射する。
ダイクロイックミラー72は、ダイクロイックミラー71と同様に、導光ロッド77の光軸に対して45度傾斜した姿勢で配置されている。ダイクロイックミラー72は、反射した光がダイクロイックミラー71に入射する位置に配置されている。そのため、ダイクロイックミラー72で反射した光源部31の青色光Bは、ダイクロイックミラー71に入射し、ダイクロイックミラー71で反射して、集光光学系73に入射する。
ダイクロイックミラー71は、蛍光FLを透過して集光光学系73に入射させるので、ダイクロイックミラー71において、光源部30の蛍光FLと、ダイクロイックミラー72から入射した光源部31の青色光Bが混合される。このように、ダイクロイックミラー71、72は、光源部30の蛍光FLと光源部31の青色光Bを混合する光混合部として機能する。
また、ダイクロイックミラー72は、図20に示す透過特性を有しているので、光源部31、32から入射する狭帯域光N1、N2を透過する。ダイクロイックミラー71は、図19に示す透過特性を有しているので、ダイクロイックミラー72から入射した狭帯域光N1、N2を集光光学系72に向けて反射する。このようなダイクロイックミラー71、72の作用により、光源部30〜33の光路が1つに統合される。
図21に示すように、導光ロッド76は、光源部30の光の発散角を補正する発散角補正部として機能する。導光ロッド76は、光源部30の光が入射する入射端面76aと、入射端面76aに入射した光を出射する出射端面76bと、入射端面76aと出射端面76bを結ぶ側面76cとを有する。導光ロッド76は、中実な透明ガラス等で形成され、光軸Cと直交する断面形状が正方形で、正方形の各辺に対応する4つの側面76cを有する。側面76cは、入射端面76aよりも出射端面76bの面積が大きくなるように光軸Cに対して傾斜したテーパ形状を有している。
導光ロッド76は、入射端面76aから入射した光を、空気との界面となる4つの側面76cで全反射させながら、入射した光の発散角を小さくしつつ光軸Cの方向に伝播して出射端面76bから出射する。例えば、発散角β1で入射端面76aから入射した光は、側面76cにおいて入射角γ1、γ2で2回全反射し、β1よりも小さい発散角β2(β2<β1)で出射端面76bから出射する。このように、側面76cがテーパ形状になっているため、導光ロッド76に入射した光は、側面76cにおいて反射する毎に、発散角βが絞られながら光軸C方向に伝播する。
側面76cにおける反射回数が多いほど発散角は小さくなり、また、導光ロッド76の光軸C方向の長さ(全長)が長いほど、入射した光の側面76cにおける反射回数は増える。さらに、側面76cの光軸Cに対する傾斜角度(テーパ角度)が大きいほど、1回の反射による発散角の縮小量は大きくなる。
光源部30は、例えば、導光ロッド76の入射端面76aに接着剤などにより光学的に接合される。もちろん、光源部30を導光ロッド76に接合させなくてもよく、集光レンズなどを介して光源部30の光を導光ロッド76に入射させる構成でもよい。
導光ロッド77についても、導光ロッド76と機能は同様である。また、光源部32、33の入射光学系78にも、同様の導光ロッド79が設けられている。このように光源部30〜33に対して導光ロッド76、77、79が設けられることにより、各光源部30〜33の発散角の均一化が可能になる。
光源部30、31は光源として同じ発光ダイオードBLEDを使用しているが、光源部30の青色光Bはカットされて蛍光体35が発光する蛍光FLのみが照明光として利用されるのに対して、光源部31は青色光Bが照明光として利用される。蛍光FLと青色光Bでは発散角が異なる。発散角は、観察部位に照射される照射スポットの大きさに影響するため、蛍光FLと青色光Bで発散角が異なると、それぞれの照射スポットの大きさが変わるため、照射スポットの周縁において色ムラが生じるおそれがある。また、光源部32、33の光源はレーザダイオードLD1、LD2であり、発光ダイオードBLEDとは光の発散角が異なる。そのため、光源部32、33の光と光源部30、31の光では、照射スポットの大きさに違いが生じ、色ムラが生じるおそれがある。
導光ロッド76、77、79は、光源部30〜33の光の発散角が均一になるように、それぞれの発散角を補正することにより、照射スポットにおける色ムラを解消する。光源部30〜33の光の発散角の違いに応じて、導光ロッド76、77、79の発散角補正量は異なるので、発散角補正量に応じて、導光ロッド76、77、79の仕様(入射端及び出射端の大きさ、全長、テーパ角度など)が選択される。
なお、本例の導光ロッドは、入射端に対して出射端が太くなる形状であるが、その反対に、入射端に対して出射端が細くなる導光ロッドを用いると、発散角を拡大することができる。どのような導光ロッドを使用するかは、光源の発散角や光学系の構成に応じて適宜選択される。
図22に示すように、光源部32は、発光素子81と集光レンズ82とを有する。発光素子81は、支持体となる円板状の基板の一面に半導体光源であるレーザダイオードLD1がそれぞれ取り付けられて、樹脂製の円筒状の透明キャップ83でレーザダイオードLD1を覆ったものである。発光素子81と集光レンズ82はケース84に収容されており、ケース84には光ファイバ86の入射端が接続される接続部84aが設けられている。このような形態の光源部32は、一般にレセプタクル型と呼ばれる。
レーザダイオードLD1は、P型半導体からなるP層とN型半導体からなるN層が活性層を挟んで接合された半導体チップであり、レーザ発振により活性層からレーザ光を発する。レーザ光は直進性が高いが、ビーム形状が発光点から略円錐状に広がる発散光である。集光レンズ82は光ファイバ86の入射端と対向配置されており、レーザダイオードLD1から発せられたレーザ光は集光レンズ82によって光ファイバ86の入射端に集光される。光源部33は、発光素子81の代わりに、レーザダイオードLD2を有する発光素子87が設けられている点を除いて、光源部32と同様の構成であるので説明を省略する。レーザダイオードLD2も、発光波長が異なる点を除いて、レーザダイオードLD1と同様である。
光源部30、31に接続された各光ファイバ86の出射端は、光カプラ88に接続されている。光カプラ88は、各光ファイバ86から入射する光を光ファイバ89に出射する2in1タイプのカプラである。光ファイバ89の後段には、集光レンズ90が配置されている。集光レンズ90は、光ファイバ89から出射した光を導光ロッド79の入射端に集光する。
以下、上記構成による作用について説明する。内視鏡診断を行う場合には、内視鏡11をプロセッサ装置12と光源装置13に接続し、プロセッサ装置12と光源装置13の電源を入れて、内視鏡システム10を起動する。
内視鏡11の挿入部16を被検者の消化管内に挿入して、消化管内の観察が開始される。通常光観察モードでは、光源部30、31が点灯する。光源制御部34は、LUT34aを参照して、光源部30の駆動電流値I1の初期値に対応する、光源部31の駆動電流値I2を読み出して、光源部30及び光源部31の駆動電流値I1、I2を決定し、決定した駆動電流値I1、I2で光源部30、31の駆動及び光量制御を開始する。
図18に示すように、光源部30は、発光ダイオードBLED1による青色光Bと、蛍光体35において青色光Bによって励起される蛍光FL(G、R)を発する。青色光B及び蛍光FLは、導光ロッド76を介して、光路統合部36に入射する。光源部31は、発光ダイオードBLED2による青色光Bを発する。光源部31の青色光Bは、導光ロッド77を介して光路統合部36に入射する。
ダイクロイックミラー71は、光源部30の青色光Bをカットして、蛍光FL(G、R)のみを透過する。蛍光FLは、ダイクロイックミラー71から集光光学系73に入射する。ダイクロイックミラー72は、光源部31の青色光Bを反射してダイクロイックミラー71に入射させる。光源部31の青色光Bはダイクロイックミラー71で反射して、集光光学系73に入射する。これにより、光源部30の蛍光FL(G、R)と光源部31の青色光Bが混合されて白色光が生成される。集光光学系73は、白色光を内視鏡11のライトガイド43の入射端に集光し、白色光を内視鏡11に供給する。
光路統合部36において、ダイクロイックミラー71は、光混合部として機能するとともに、青色光Bをカットする青色カットフイルタとしても兼用されているので、光学系の構成を簡略化できる。
内視鏡11において、白色光はライトガイド43を通じて照明窓22に導光されて、照明窓22から観察部位に照射される。各光源部30、31の光は、導光ロッド76、77によって発散角が補正されているので、観察部位に照射される照射スポットの大きさは一致しており、色ムラは生じない。
観察部位で反射した反射光は、観察窓23から撮像素子44に入射する。撮像素子44は画像信号B、G、Rをプロセッサ装置12に出力する。プロセッサ装置12において、DSP57は画像信号B、G、Rを色分離して、画像処理部58に入力する。撮像素子44による撮像動作は所定のフレームレートで繰り返される。画像処理部58は、入力される画像信号B、G、Rに基づいて通常観察用の表示画像を生成する。表示画像は表示制御回路60を通じてモニタ14に出力される。表示画像は、撮像素子44のフレームレートに従って更新される。
また、DSP57は、画像信号B、G、Rに基づいて露出値を算出し、算出した露出値に応じた露出制御信号を光源装置13に送信する。光源装置13において、光源制御部34は、受信した露出制御信号に基づいて、光源部30の駆動電流値I1を決定し、LUT34aを参照して駆動電流値I2を決定する。そして、決定した駆動電流値I1、I2で光源部30、31を駆動する。これにより、光源部30の蛍光FL、光源部31の青色光Bの光量比を一定に保ちながら、白色光の光量が制御される。そのため、露出制御を行っても、表示画像において観察部位の色味が変化することは無い。
また、青色光Bを発する発光ダイオードBLED1と蛍光体35を組み合わせた光源部30の青色光Bをカットし、その代わりに、光源部30とは独立に制御可能な光源部31を用いて青色光Bを補完して、白色光を生成している。そのため、蛍光FL(G、R)のうち、緑色光を発する補助光源のみを追加する特許文献1と比較して、より正確な白色光(B、G、R)の色バランスを確保することができる。また、蛍光体35の発熱の影響を受ける光源部30の青色光Bをカットし、蛍光体35の影響を受けない光源部31の青色光Bで補完しているため、光量制御も簡便である。
また、特許文献1のように、狭帯域の緑色光を使用しないため、粘膜表面の凹凸など被写体の表面形状の視認性が低下することもない。
また、図13に示したように、光源部30においては、蛍光体35の発熱が大きくなる高出力領域においては、蛍光FL(G、R)の増加率が低下するのに対して、青色光Bの増加率が上昇する。観察部位によっては、蛍光FLに対して青色光Bの光量が突出する懸念もあり、そうなると、撮像素子44の青色光Bを受光するB画素だけが飽和してしまうという問題も生じる。しかし、本発明では、光源部30の青色光Bはカットし、光源部31の青色光Bを用いて、蛍光FLと青色光Bの光量比を一定に保つ光量制御を行うため、蛍光体35の発熱が大きくなる高出力領域においても、蛍光FLに対して青色光Bの光量が突出することがなくなり、B画素の飽和も抑制される。
血管強調観察モードでは、図9(A)に示すように、光源部30、31に加えて光源部32が点灯する。光源部30の蛍光FLと光源部30の青色光Bは、上述した光路統合部36の作用によって白色光となり、内視鏡11に供給される。光源部32の狭帯域光N1は、入射光学系78を介して光路統合部36に入射する。狭帯域光N1はダイクロイックミラー72を透過して、ダイクロイックミラー71で反射されて集光光学系73を介して内視鏡11に供給される。これにより、光源部30、31による白色光と光源部31による狭帯域光N1が同時に観察部位に照射される。光源部32の狭帯域光N1の発散角も導光ロッド79によって補正されているので、観察部位の照射スポットにおける色ムラは生じない。
撮像素子44は、観察部位で反射した白色光及び狭帯域光N1を受光し、DSP57にB、G、Rの画像信号を出力する。DSP57は、画像信号B、G、Rを分離して、画像処理部58に入力する。血管強調観察モードにおいては、画像処理部58は、B、G、Rの画像信号に基づいて、血管強調観察用の表示画像を生成し、生成された表示画像がモニタ14に表示される。
血管強調観察モードにおいては、光源制御部34は、光源部30、31に加えて光源部32の光量制御も行う。光源部30、31の光量制御については、通常観察モードと同様に行われる。そのため、通常観察モードで説明したのと同様の効果が得られる。さらに、血管強調観察モードにおいては、光源部31の青色光Bに加えて、青色領域の狭帯域光N1が照射されるため、通常観察モードに比べて、撮像素子44のB画素の飽和はより問題となる。そのため、本発明によるB画素の飽和を抑制するという効果は、血管強調観察モードにおいてより有効である。
酸素飽和度観察モードでは、光源部30、31と光源部33とが、1フレーム毎に交互に点灯し、白色光と狭帯域光N2が交互に観察部位に照射される。撮像素子44は、白色光および狭帯域光N2に対応する画像信号をDSP57に順次出力する。DSP57は、白色光の元で取得した画像信号に基づいて、B1、G1、R1の各色の画像信号を生成して、狭帯域光N2の元で取得した画像信号に基づいて、B2の画像信号を生成する。画像処理部58は、画像信号B2、G1、R1の画像間演算を行うことにより、酸素飽和度を算出する。そして、画像信号B1、G1、R1に基づいて生成されるフルカラー画像に対して、算出した酸素飽和度の値に応じた色変換を行って、酸素飽和度観察用の表示画像を生成する。
酸素飽和度観察モードにおいては、光源制御部34は、光源部30、31に加えて、光源部33の光量制御を行う。光源部30、31の光量制御については、通常観察モードと同様に行われる。そのため、通常観察モードで説明したのと同様の効果が得られる。なお、酸素飽和度観察モードでは、B1の画像信号は表示画像の生成に用いられないので、光源部31を点灯しなくてもよい。この場合には、光源制御部34は、光源部30と光源部33について光量制御を行う。
血管強調観察モードや酸素飽和度観察モードなど血管情報観察を行う場合には、狭帯域光N1、N2などの特殊光に加えて、光源部30の蛍光FLや光源部31の青色光Bが用いられる。そして、B、G、Rの画像合成や画像間演算を行って表示画像が生成される。この場合、光量に応じて、B、G、Rの白色光の色バランスが変動すると、表示画像の信頼性が低下するおそれもある。そのため、通常観察に加えて、血管情報観察を行う場合にも、本発明は有効である。
上記実施形態では、光源部30、31の半導体光源として発光ダイオードBLEDを用いた例で説明したが、光源部32、33に用いられるレーザダイオードLDでもよい。レーザダイオードLDを用いる場合には、光源制御部は、光量制御をするための駆動電力値として、駆動電流値の代わりに、駆動パルスのデューティ比などを変化させる。
また、本発明は、半導体光源としてレーザダイオードLDを用いてもよいが、レーザダイオードLDよりも発光ダイオードBLEDを用いる場合に特に有効である。理由は次のとおりである。発光ダイオードBLEDは、レーザダイオードLDと比較して半導体チップにおける発光面積が大きいため、内視鏡11のライトガイド43への入射効率が悪い。入射効率が悪い理由は、ライトガイド43のNA(開口数:Numerical Aperture)と、光源の発光面積S1及び発散角Ω1の積であるエタンデューS1・Ω1との関係から説明することができる。
ライトガイド43は光ファイバをバンドルしたものであり、光ファイバにおいては光はコアとクラッドの境界において全反射しながら伝播する。そのため、ライトガイド43内で光を伝播させるためには、光ファイバの入射端に全反射条件を満たす入射角で光を入射させることが必要である。NAは、光ファイバがどれだけ光を集めることができるかを表す指標であり、最大受光角θmaxの正弦で定義される(NA=sinθmax)。最大受光角θmaxが大きいほどNAの値は大きい。光ファイバに入射する光線の入射角が最大受光角θmax以下であれば、光ファイバ内においてコアとクラッドの境界で全反射が生じるため、入射光はライトガイド43内を伝播して導光される。入射角が最大受光角θmaxを越えると、入射光は全反射せずに透過してしまうため、ライトガイド43内を導光されない。導光されない入射光線は光伝達損失となる。そのため、ライトガイド43への入射効率を上げるためには、光源の光の発散角は最大受光角θmax以内に収まっている方がよい。
一方、光源におけるエタンデューS1・Ω1は光学系において保存されるため、ライトガイド43の入射端の受光面積をS2、受光角をΩ2とすると、S1・Ω1=S2・Ω2が成り立つ。そのため、光源の発光量をライトガイド43で損失なく受光するためには、ライトガイド43の受光面積S2に対して光源の発光面積S1が大きいほど、受光角Ω2を大きくする必要がある。しかし、上述のとおり、ライトガイド43にはNAの制約があるため、受光角Ω2を大きくすると入射損失が多くなってしまう。こうした理由から、光源の発光面積が大きな発光ダイオードBLEDは、相対的に発光面積の小さいレーザダイオードLDと比較して、ライトガイド43への入射効率が悪くなる。
そのため、内視鏡11から照射される照明光量を同じにするには、レーザダイオードLDの場合と比べて、発光ダイオードBLEDでは駆動電流値Iを高くする必要がある。駆動電流値Iが高くなる高出力領域では、上述のとおり、蛍光体35の発熱の影響を受けやすい。したがって、本発明は、レーザダイオードLDと比較して発光ダイオードBLEDを用いる場合に特に有効であると言える。
また、特許文献1に記載されている、蛍光体と半導体光源を分離して、蛍光体を内視鏡に設ける形態の光源装置と比べて、本発明は、蛍光体35及び半導体光源を有する光源部30を設ける形態の光源装置13において特に有効である。光源装置13に蛍光体35及び半導体光源を設ける場合には、蛍光FLと青色光Bはすべて、内視鏡11のライトガイド43を介して照明窓22に導光されることになる。ライトガイド43を介して導光する場合には、ライトガイド43において光伝達損失が生じるため、その分、光源部30をより高出力領域で駆動する必要がある。上述のとおり、高出力領域では蛍光体35の影響を受けやすい。そのため、本発明は、蛍光体が光源装置内に設けられている場合に、特に有効である。
上記実施形態では、光源制御部34において、光源部30、31の光量制御を、LUT34aを用いて行う例で説明しているが、LUT34aの代わりに、駆動電流値I1、I2の関係を規定した関数式に基づいて制御してもよい。また、光源部30の蛍光FLと、光源部31の青色光Bの光量を検知する光量センサを設けて、光量センサが出力する光量信号に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。
この場合には、例えば、図23に示すように、光路統合部36の後段に、導光ロッド91が設けられる。導光ロッド91は、断面が円形の中実な透明ガラス等で形成され、導光ロッド76などと同様に、入射した光を側面91aで全反射させながら光軸方向に導光する。導光ロッド91の出射端は、ライトガイド43の入射端と対向する位置に配置され、出射した光がライトガイド43に入射される。
導光ロッド91の側面91aには、青色光B、蛍光FLに含まれる緑色光G及び赤色光Rのそれぞれに感度を持つ光量センサ92B、92G、92Rが設けられており、光量センサ92B、92G、92Rは、受光面を側面91aと対面させた姿勢で側面91aに接着剤で接着されている。
側面91aにおいて、光量センサ92B、92G、92Rが接着された部分は、空気との界面ではなくなるため、入射した光は全反射せずに光量センサ92B、92G、92Rに入射する。これにより、光源部30の蛍光FL(G、R)と光源部31の青色光Bのそれぞれの光量を検知することができる。光量センサ92B、92G、92Rは、各色の光量信号を光源制御部34に出力する。光源制御部34は、光量信号に基づいて、光源部30、31のそれぞれの駆動電流値I1、I2を制御する。
上記実施形態では、光源部30、31の半導体光源として同じ波長域の青色光Bを発光する発光ダイオードを用いる例で説明したが、光源部30、31の各半導体光源の波長域は、完全に同じでなくてもよい。光源部30の青色光Bはカットされて、蛍光FLと混合される青色光Bとしては、光源部31の青色光Bのみが用いられるため、光源部31の青色光Bと蛍光FLの光量比が一定に保たれればよいからである。
上記実施形態における光路統合部36の構成は1例であり、種々の構成が可能である。例えばダイクロイックミラー71を光混合部と青色光カットフイルタとして兼用させているが、ダイクロイックミラー71の前段に青色光カットフイルタを別に設けてもよい。また、ダイクロイックミラーを利用して、光路統合機能を実現しているが、ダイクロイックミラーの代わりに、ダイクロイックプリズムなどを利用してもよい。また、ダイクロイックミラーの代わりに、例えば、入射端が複数有り、出射端が1つの分岐型ライトガイドなどを用いて光路を統合してもよい。分岐型ライトガイドは、光ファイバをバンドル化したファイババンドルであり、一端において光ファイバを所定本数ずつ複数に分割して、入射端を複数に分岐させたものである。この場合には、分岐した各入射端のそれぞれに対応させて光源部30〜33を配置する。そして、光源部30と分岐型ライトガイドの入射端の間に青色カットフイルタを配置する。
上記実施形態では、発散角補正部として導光ロッドを例に説明したが、発散角補正部として、導光ロッドの代わりに、又はそれに加えて1枚以上のレンズで構成した光学系を用いてもよい。
また、上記実施形態では、生体組織内の血管情報観察を行うための特殊光を発する特殊光光源部として、狭帯域光N1、N2を発する2つの光源部32、33を設けた例で説明したが、光源部32、33はいずれか1つでもよいし、さらに別の光源部を追加してもよい。もちろん、血管情報観察を行わない場合には特殊光光源部は設けなくてもよい。ただし、上記実施形態で説明したように、血管情報観察を行うための特殊光としては、狭帯域光N1、N2のように青色領域の光を利用する場合が多い。上述のとおり、青色領域の光を利用する場合には、撮像素子44のB画素の飽和を抑制する必要性が高いので、本発明は、血管情報観察に用いられる光源装置に対して特に有効である。
また、光源部32、33の半導体光源としてレーザダイオードを用いた例で説明したが、発光ダイオードでもよい。また、半導体光源としては、発光ダイオードやレーザダイオードの他に、有機EL(Electro-Luminescence)素子を用いてもよい。
上記実施形態では、撮像素子44として、B、G、Rのマイクロカラーフイルタによって白色光を色分離するカラー撮像素子を有し、カラー撮像素子によってB、G、Rの画像信号を同時に取得する同時式の内視鏡システム及びそれに用いられる光源装置を例に説明したが、モノクロ撮像素子を有し、B、G、Rの光を順次照射して、B、G、Rの画像信号を面順次で取得する面順次式の内視鏡システム及びそれに用いられる光源装置に本発明を適用してもよい。ただし、面順次式の場合には、B、G、Rの画像信号をそれぞれ別々のタイミングで取得できるため、B、G、Rの各画像信号の取得タイミングに合わせて、B、G、Rの光量を制御することで、光量比を一定にすることが可能である。そのため、本発明は同時式の場合に特に有効である。もちろん、面順次式に本発明を適用すれば、取得タイミングに合わせた光量制御が不要になるという効果は得られる。
上記実施形態では、光源装置とプロセッサ装置が別体で構成される例で説明したが、2つの装置を一体で構成してもよい。また、本発明は、撮像素子と超音波トランスデューサが先端部に内蔵された超音波内視鏡を用いた内視鏡システム及びそれに用いられる光源装置にも適用することができる。