JP2014161168A - 列車保安システム - Google Patents

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Abstract

【課題】列車の車上装置から誤った位置情報を地上装置へ送信し列車運行上の安全性が低下することを防止する列車保安システムを提供する。
【解決手段】列車の記録媒体に、列車位置情報や列車制御情報などの内部情報を記録した状態で、列車の走行や移動を検知した場合、車上装置は記録媒体に記録した内部情報を消去する。また、列車が走行中は、車上装置は記録媒体に列車位置情報や列車制御情報などを内部情報として記録をしない。
【選択図】図1

Description

本発明は、列車走行の安全性を高める列車保安システムに関する。
1区域に1列車のみの運転を許可する「閉そく方式」を用いて列車制御を行うために、これまでは軌道回路を用いた列車検知が行われてきた。しかしながら、近年は、車上と地上間の伝送に無線通信システムを導入することによって、列車からの位置報告による列車検知を実現し、鉄道通信システムのコスト低減を図ろうという動きがある。
米国や中国では、無線通信により列車制御を行うCBTC(Communication Based Train Control)システムの導入が進められている。一方欧州圏では国毎に異なる信号システムの共通化による相互運用性向上を目的としてERTMS(European Rail Traffic Management System)/ETCS(European Train Control System)と呼ばれるシステムが開発され、導入が進められている。ERTMS/ETCSでは、無線システムにGSM(Global System for Mobile Communications)(登録商標)網をベースとしたGSM−R(GSM−Railway)を使用している。
CBTC、ERTMS/ETCSでみられるような、鉄道保安システムは、列車内の車上装置と、列車外の地上装置にて構成され、車上装置と地上装置との間を無線にて伝送する。車上装置は、列車本体が地上に設置された地上子を検知することで、その地点の位置情報を認識し、この位置情報と列車の速度情報、地上装置から受信した走行許可などを基に速度照査を行い、列車速度が制限速度を超過した場合にはブレーキ指令を出力することで列車速度を制限速度以下に減速するというように、列車全体を制御する。
この制御を実現するために、車上装置は自列車の位置情報などの情報を地上装置へ送信し、地上装置は区間内の軌道回路や車上装置から受信した列車位置情報などを用いて各列車の走行許可などの情報を演算し、車上装置へこれらの制御情報を送信する。
また、無線方式の列車制御システムにおいて、車上装置は、電源立上時に、内蔵の記録媒体に記録していた前回電源を切断した時の位置情報を読み出し、地上装置に報告することで、車上装置が位置確定をするために地上子を検知するまで走行することなく、列車が電源を投入した位置に在線したままで、地上装置はこの列車の位置を検知することが可能である。
これを実現するためには、車上装置は電源が切断される前に、列車の位置情報などの内部情報を記録媒体に記録・保持する必要がある。そこで、車上装置を搭載する車両に、車両の電源が切断される一定時間前に、列車側から電源の切断を予告する信号を出力する機構を設け、車上装置は電源断予告信号を受信することで、次回の列車の電源投入時に列車制御に用いる各種内部情報を内蔵の記録媒体に記録する機構を設けている。
このような列車位置の検知や検知した列車位置情報を格納する関連技術として、特許文献1ないし特許文献2記載のものがある。
特開平9−301176号公報 特開2008−238888号公報
従来技術では、列車が運行を終了し、車上装置への電源が切断される際に、車上装置は電源切断の一定時間前に列車側から電源断予告信号を受信することで、記録媒体への内部情報の記録を行う。そして、車上装置の電源が投入されると、車上装置は記録媒体から前回動作における列車の内部情報を読み出し、地上装置への列車の列車位置情報の報告を実施する。
上記の構成では、車上装置が列車側から電源の切断を予告する信号を受信したが、誤って列車の電源が切断されずに列車が移動してしまった場合、一度記録媒体に記録した列車位置情報(在線位置情報)と実際に列車が在線している位置に差分が生じてしまう。更に、この差分データが車上装置の内部に記憶され、次回の電源投入時の読み出しで有効と判断されると、車上装置は地上装置に誤った位置報告を行ってしまう。
また、電源断予告信号により列車の内部情報が記録媒体に記録され、次の車上装置への電源投入で地上装置へ内部情報を報告した後に、列車運行が実施され列車位置が移動した状態において、電源断予告信号が入力されずに車上装置の電源が切断されてしまった場合、記録媒体には移動前の内部情報が記憶されたままとなり、車上装置の次回の電源立上時には地上装置へ実際に在線している位置とは異なる位置の情報を報告してしまう。
更に、列車走行中に電源断予告信号が誤って入力された場合、車上装置は本来電源切断時に記録するべき内部情報を走行中という意図しないタイミングでも記録を行ってしまう。このような状況においては、列車は走行中であり、列車位置は変化しているため、走行中に誤って電源断予告信号が入力したことにより記録された位置情報は、次回の電源立上時の位置報告としては使用できない。
本発明の目的は、列車の車上装置から誤った位置情報を地上装置へ送信し列車運行上の安全性が低下することを防止する列車保安システムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の列車保安システムでは、列車の記録媒体に列車の内部情報を記録した状態で、列車の走行や移動を検知した場合、記録媒体に記録した内部情報を消去する。また、列車が走行中は記録媒体に列車の内部情報を記録をしない。
本発明では、位置情報などの列車の制御情報を正確に列車内部の記録装置へ記録できるので、記憶した位置情報と実際に列車が在線する位置情報とが異なることを防止でき、列車運行上の安全性を向上させることができる。なお、前述以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の列車保安システムの構成を示す図である。 図2は、従来の記録媒体への記録方法を示す図である。 図3は、記録媒体への記録タイミングと列車の位置との関係を説明する図である。 図4は、電源断予告信号の受信後に移動が発生した列車の状態を示す図である。 図5は、従来の記録媒体への内部情報の記録動作1を示す図である。 図6は、本発明の第1実施例での電源断予告信号の受信後に移動が発生した列車の状態を示す図である。 図7は、本発明の第1実施例での記録媒体への内部情報の記録動作1を示す図である。 図8は、記録媒体へ内部情報を保持したまま走行した場合の列車の状態を示す図である。 図9は、従来の記録媒体への内部情報の記録動作2を示す図である。 図10は、本発明の第2実施例での電源断予告信号の受信後に移動が発生した列車の状態を示す図である。 図11は、本発明の第2実施例での記録媒体への内部情報の記録動作2を示す図である。 図12は、従来の記録媒体への内部情報の記録動作3を示す図である。 図13は、本発明の第3実施例での記録媒体への内部情報の記録動作3を示す図である。
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
<システム構成>
図1は、本発明の列車保安システムの構成を示す図である。
列車1は、列車1の車輪から回転数を出力する速度信号発生器2と、地上装置3からの信号と速度信号発生器2から出力された列車速度から速度照査を行う機能などを有する車上装置4と、列車1に搭載された各装置に電源を供給するバッテリ5と、バッテリ5からの電源出力を切断する一定時間前に列車1から車上装置4へ電源切断を予告する電源断予告信号6と、列車1の位置情報や内部状態などの内部情報を記憶する記録媒体7と、地上装置3と車上装置4との通信を行う通信路9とを備える。列車1が走行する路線上には、車上装置4が列車1の位置を検知するための地上子8を有する。
また、車上装置4は、列車1の位置情報に加え、電源切断前の制御レベル、その位置で無線回線または有線回線を確立するために使用するチャネル情報や電話番号、通信相手である地上装置3のIDなどの制御情報を、列車1の電源が切断する前に記憶媒体7に記憶する。そして、列車1の電源投入時に記憶媒体7に記憶されていた位置情報や制御情報を読み出すことで、車上−地上間の通信確立を自動で行うことも可能となる。
更に、車上装置4には、電源断予告信号6以外に、バッテリ5からの電源入力15、速度信号発生器2からの速度信号16が入力される。加えて、車上装置4には、時刻情報を計測するタイマ10、各種情報の設定入力及び位置情報等の内部情報17の表示、異常発生時における音声での警告通知などを実行する入出力装置19を備える。
また、車上装置4と記録媒体7との間は、記録媒体7へ記録するデータや記録媒体7からの読み出しデータの送受信を行うデータバス13とそれらを制御する書き込み信号11、読み出し信号12を備える。そして、本発明の特徴である消去信号14を更に備える。
まず、無線を用いた列車保安システムにおける基本的な動作について図1で説明する。列車1が、地上に設置された地上子8上を通過することで、車上装置4は地上子8を検知し、地上子8から地点の位置情報を受信する。車上装置4は、この地上子8による位置情報と速度信号発生器2からの速度情報、地上装置3から得た走行許可などの制御情報を基に速度照査を行い、列車速度が制限速度を超過した場合にブレーキ出力指令を行う。更に、車上装置4は、地上装置3に列車1の位置情報などの内部情報17を通信路9経由して送信する。
また、地上装置3は、区間内の軌道回路や車上装置4から受信した列車位置情報などを用いて線区内の列車1の走行許可などの情報を演算し、通信路9を介して車上装置4へこれらの制御情報を送信する。通信路9は、無線に限らず、有線での伝送線も適用可能である。
車上装置4の電源投入直後、車上装置4内の列車位置情報は未知であり、車上装置4が地上子8を検知することで列車位置が確定するまで、地上装置3は列車1の在線位置を検知できない。この課題を解決するため、列車1に電源断予告信号6を設け、列車1の電源が切断される際、列車1は車上装置4に電源断予告信号6を出力し、車上装置4は電源断予告信号6を受信すると、車上装置4は列車1の列車位置情報などの内部情報17を記録媒体7に記録する。
列車1の次回の電源立上時、車上装置4は記録媒体7に記録した内部情報17を読み出し、地上装置3に内部情報17に含まれる列車位置情報を送信し報告する。そして、地上装置3は、車上装置4からの列車位置情報を基に列車1の在線位置の検知を行う。
以上のように車上装置4は、地上装置3に電源切断前の内部情報17を報告する。しかし、この構成では、列車1の移動により、記録媒体7へ記録した列車1の列車位置情報を記録した位置以外で報告してしまう場合や、車上装置4が誤った位置での位置情報を記録媒体7に記録することが発生する場合が考えられる。そこで、本発明では、そのような異常な状態の発生を防止する装置及び方法を提案する。
<課題1>
次に、図2から図4を用いて、従来の列車内部情報の記録方式での課題1について詳細に説明する。図2は、従来の記録媒体7への記録方法を示す図である。課題1のケースは、電源断予告信号6により車上装置が記録媒体7への列車位置情報などの内部情報17の記録を行った後に、列車1が走行してしまい、車上装置4から地上装置3への列車位置情報などの内部情報17の報告で実際の列車位置情報と異なる列車位置情報を地上装置3へ報告する場合である。
車上装置4は、電源切断の一定時間前に列車1側からの電源断予告信号6を受信することで、記録媒体7へ内部情報17を記録する。そして、車上装置4の電源が再度投入されると、車上装置4は記録媒体7から列車1の運行終了時に記憶した内部情報17を読み出し、地上装置3へ列車1の列車位置情報を報告する。
図2に示すように、列車1が運行を終了した後、運転士の操作によりバッテリ5から車上装置4への電源入力15が切断される(符号401:電源入力15が「ON」から「OFF」に変化)。
電源入力15が切断される一定時間前に、列車1は車上装置4へ電源断予告信号6(符号402のパルス信号)を送信する。電源断予告信号6を入力された車上装置4は、電源断予告信号6の立ち上がりを契機に、記録媒体7への内部情報17の書き込みを開始する(符号403)。車上装置4は、データバス13で書き込みを行う内部情報のデータを送信し、書き込み信号11で内部情報17として記録媒体7に記録する。
再度、車上装置4の電源が投入される(符号405:電源入力15が「OFF」から「ON」に変化)と、車上装置4は記録媒体7から、前回の電源切断前に記録媒体7に記憶した内部情報17(符号404)を、読み出し信号12とデータバス13を用いて読み出する(符号406)。そして、読み出した内部情報17を通信路9経由で地上装置3へ送信し、列車1の列車位置情報を報告する(符号407)。
以上の構成によると、車上装置4が列車1側から電源断予告信号6を受信した状態において、列車1の電源が切断されずに列車1が移動してしまった場合、記録媒体7に記録した列車位置情報と実際に列車1が在線している位置に差分が生じる。この差分が発生しているデータを次回の電源投入時に車上装置4が読み出してしまうと、車上装置4は地上装置3に誤った位置情報を報告してしまう。
図3は、記録媒体7への記録タイミングと列車1の位置との関係を説明する図である。前述のように、車上装置4は列車1からの電源断予告信号6により記録媒体7に内部情報17を記録する。図3の場合、車上装置4が認識する列車1の位置情報は地点Aのものであり、電源断予告信号6が列車1から車上装置4へ入力された場合、車上装置4はこの地点Aでの列車位置情報「地点A」を内部情報17として記録媒体7に、書き込み信号11とデータバス13を用いて記録する。
図4は、電源断予告信号6の受信後に移動が発生した列車の状態を示す図である。この場合では、列車移動103が発生し、列車位置は地点Aから地点Bに移動してしまっている。しかし、記録媒体7に記録されている内部情報17での列車位置情報は地点Aのままであるため、この状態で列車1の電源が切断された後、次回の車上装置4の電源が立上げられると、車上装置4は記録媒体7から地点Aの列車位置情報を読み出し信号12とデータバス13を用いて読み出し処理を行う。
そして、車上装置4は、読み出した地点Aの列車位置情報を通信路9経由で地上装置3へ報告する。このため、地上装置3は、列車1の在線位置を本来であれば地点Bと認識すべきところ、地点Aと誤認してしまう。
以上の動作を図5のタイミングチャート図を用いて説明する。図5は、従来の記録媒体7への内部情報17の記録動作1を示す図である。まず、列車1から電源断予告信号6を受信した場合(符号21)、車上装置4は記録媒体7に内部情報17の書き込み処理11/13を実施する(符号22)。これにより、記録媒体7の内部情報17には「地点A」という列車位置情報が記録される。
この後、列車1の電源が切断されず電源入力15が「ON」状態のままで、列車1の速度信号16が入力され(符号24)、列車1が図4の符号103のように地点Aから地点Bへ走行した場合、記録媒体7の内部情報17には「地点A」という内容が保持されたまま残ってしまう(符号22)。
この状態で、電源断予告信号6が入力されずに列車1の電源入力が切断された場合(符号25)、記録媒体7の内部情報17には「地点A」という内容が保持されたまま残ってしまう(符号22)。そのため、次回の列車1の電源立上時(符号26)、車上装置4は記録媒体7の内部情報17、すなわち列車位置情報「地点A」(符号23)を読み出し(符号27)、地上装置3に報告してしまう(符号28)。本来は、車上装置4は、地上装置3へ列車位置情報として「地点B」を報告すべきであるが「地点A」と報告するため、地上装置3は、誤った列車1の列車位置情報を取得してしまい、列車1や他の列車の運行を制御する列車運行システムに影響を与えてしまう。
<解決方法1>
次に、上述した課題1に対する解決方法の一実施例を図6及び図7を用いて説明する。
図6は、本発明の第1実施例での電源断予告信号6の受信後に移動が発生した列車1の状態を示す図である。図7は、本発明の第1実施例での記録媒体7への内部情報17の記録動作1を示す図である。
実施例1での解決方法は、記録媒体7に内部情報17が記録されている状態で、車上装置4が速度信号発生器2から速度信号16を受信し列車1の走行を検知した場合、記録媒体7に内部情報17として記録した列車位置情報を消去するものである。
図6に示すように、地点Aにて列車1が停止し、車上装置4に電源断予告信号6が入力された場合、車上装置4は記録媒体7に地点Aでの列車位置情報を内部情報17として記録する。その後、符号203のように列車1が移動した場合、車上装置4は速度信号発生器2からの速度入力16により列車1の移動を検知し、記録媒体7に記録された「地点A」という内部情報17を消去信号14により消去する。この消去処理により記録媒体7の内部情報17を「不定」とし、誤った情報が保持された状態となることを防ぐ。
これにより、車上装置4が記録した列車位置情報と実際の列車1の在線位置に差分が生じた場合でも、車上装置4が誤った列車位置情報を地上装置3に報告することを防止できる。
つまり、記録媒体7の内部情報17を消去した状態で車上装置4の電源が再度立ち上がる時に記録媒体7から読み出すと、「不定」という情報が読み出される。そのため、車上装置4は列車位置情報とそれに関わる内部情報は「不定」であると判断し、車上装置4は通信路9経由で地上装置3に「不定」として報告する。
この場合において、地上装置3が認識する列車1の列車位置情報は「不定」となるが、地上装置3側で列車1及び他の列車が走行する路線の安全を確認し、安全を確保した制御指示を車上装置4へ出すことで、列車1の安全運行を達成できる。
以上の動作を、図7のタイミングチャート図を用いて説明する。図7に示すように、列車1から電源断予告信号6を受信した場合(符号501)、車上装置4は記録媒体7に内部情報17の書き込み処理11/13(書き込み信号11/データバス13)を実施する(符号502)。この状態で、記録媒体7の内部情報17には列車位置情報「地点A」という情報が記録されている(符号503)。
この記録媒体7への列車位置情報の記録後、列車1の電源が切断されず速度信号16が入力され、列車1が走行していることを車上装置4が検知した場合(符号504)、車上装置4は記録媒体7に記録された内部情報17(符号503)を消去信号14で消去する(符号505)。
このように、電源断予告信号6が出力された後に、車上装置4への電源切断が実行されずに列車1が走行してしまった場合でも、列車1の走行(符号504)を検知することで、記録媒体7へ記録された内部情報17を消去することができる。
電源断予告信号6が再度入力されないまま電源が切断された場合(符号506)でも、次回の電源立上時(符号507)に、車上装置4は記録媒体7の内部情報17(符号508)を読み出す処理12/13(読み出し信号12/データバス13)は実施される(符号509)。
しかし、事前に記録媒体7の内部情報17を消去しているので、車上装置4は内部情報17を「不定」であると判断する(符号508)。そのため、車上装置4は地上装置3に列車1の列車位置情報を「不定」として報告する(符号510)。
以上のように、図3から図5で示した課題1にあるように電源断予告信号6の入力後、電源入力15が「OFF」になる前に列車1が再び走行してしまった場合(符号24)でも、現在の列車位置情報と異なる列車位置情報は消去されるため、記録媒体7で保持されることはない。そのため、次回の電源立上時(符号26)、車上装置4が誤った列車位置情報を地上装置3に報告することを防ぐことができる。
<課題2>
次に、図8及び図9を用いて、従来の列車内部情報の記録方式での課題2について説明する。課題2のケースは、列車1の電源が切断される際、電源断予告信号6が故障等で車上装置4に入力されないことにより、現在の列車位置情報を正しく記録媒体7に記録することができず、前回電源切断時の列車位置情報が記録媒体7に保持されたままとなり、次回電源切断時に地上装置3に報告してしまう場合である。この事象を図8及び図9を用いて説明する。
図8は、記録媒体7へ内部情報17を保持したまま走行した場合の列車の状態を示す図である。図8のように、地点Cで列車1から車上装置4へ電源断予告信号6が入力されると、車上装置4は記録媒体7に「地点C」の列車位置情報を内部情報17として記録する書き込み処理11/13(書き込み信号11/データバス13)を実行する。
その列車位置情報の記録後、再度車上装置4の電源の立ち上げが実施された場合、車上装置4は記録媒体7から「地点C」の列車位置情報を読み出す読み出し処理12/13(読み出し信号12/データバス13)を実行する。そして、車上装置4は、記録媒体7から読み出した列車位置情報「地点C」を通信路9を経由して地上装置3に報告を行う。
その列車位置情報の報告後、記録媒体7に地点Cでの列車位置情報を内部情報17として保持したまま、列車1が地点Dまで走行する(符号110)。地点Dにて列車1が電源を切断する際、車上装置4が列車1から電源断予告信号6を得られなかった場合、車上装置4は記録媒体7に列車位置情報「地点D」を内部情報17として記録はできない。そのため、記録媒体7の内部情報17には、列車位置情報「地点C」が保持されたままの状態となっている。
そのため、地点Dでの電源立上時に車上装置4は、記録媒体7から前回の電源立上時に地上装置3へ報告した列車位置情報「地点C」を読み出し、地上装置3に誤った列車位置情報「地点C」を報告してしまう。
以上の動作を、図9のタイミングチャート図を用いて説明する。図9は、従来の記録媒体7への内部情報17の記録動作2を示す図である。
列車1の電源入力15が切断(符号30)される一定時間前に、車上装置4は列車1から電源断予告信号6を符号31のように受信し、記録媒体7に地点Cでの列車位置情報を含む内部情報17の書き込み処理(符号32)を実施する。記録媒体7には内部情報17として「地点C」が記憶される。そして、次回の電源立上時(符号34)、車上装置4は記録媒体7の内部情報17(符号33)の読み出し処理(符号35)を実施し、地上装置3に列車位置情報「地点C」を報告する(符号36)。
列車位置情報「地点C」の報告完了後に、列車1が地点Dまで走行(符号37)した後、電源断予告信号6が入力されずに車上装置4の電源が切断された場合(符号38)、記録媒体7への書き込み処理は行われず、内部情報17は、地点Dでの列車位置情報「地点D」ではなく地点Cでの列車位置情報「地点C」のままである。
本来であれば、点線で表記した符号31−2のように電源断予告信号6が車上装置4へ入力され、記録媒体7へ内部情報17として、地点Dでの列車位置情報「地点D」の書き込み処理が実施されるはずである。ところが、その書き込み処理は、電源断予告信号6が車上装置4に入力されないので実行されない。そのため、次回の電源立上時(符号39)に、車上装置4は記録媒体7から前回の列車位置情報「地点C」(符号33)を読み出し(符号40)、地上装置3へ報告する(符号41)。
以上のように、課題2でも課題1と同様、地上装置3は、誤った列車1の列車位置情報を取得してしまい、列車1や他の列車の運行を制御する列車運行システムに影響を与えてしまう。
<解決方法2>
次に、上述した課題2に対する解決方法の一実施例を図10及び図11を用いて説明する。図10は、本発明の第2実施例での電源断予告信号6の受信後に移動が発生した列車1の状態を示す図である。図11は、本発明の第2実施例での記録媒体7への内部情報17の記録動作2を示す図である。
課題2に対する解決方法の特徴は、図10に示すように、車上装置4が記録媒体7に記録された内部情報17を地上装置3に報告した後、車上装置4は記録媒体7に記録した内部情報17を消去することにある。
図10にて、列車1が地点Cに停止し、車上装置4に電源断予告信号6が入力されると、車上装置4は記録媒体7へ地点Cでの列車位置情報を内部情報17として書き込む処理を実行する。
この状態で車上装置4の電源が立ち上げられると、車上装置4は記録媒体7から地点Cの内部情報を読み出し、地上装置3に報告を行う。この報告後、車上装置4は記録媒体7に記録された地点Cでの列車位置情報である内部情報17を消去する。この消去処理14により記録媒体7の内部情報17は「地点C」から「不定」となる。
列車1が再び運行され、在線位置が地点Cから地点Dに移動する。この移動完了後、図9での例と同様に、地点Dにて電源が切断される際、車上装置4が列車1側から電源断予告信号6を得られなかった場合、車上装置4は記録媒体7に地点Dでの列車位置情報の記録を実施しない。
この状態で、車上装置4が再度立ち上がり、記録媒体7から内部情報17を読み出した場合、車上装置4は列車位置情報とそれに関わる内部情報17は「不定」であると判断し、列車位置情報を「不定」として地上装置3へ報告する。
以上の構成により、図9のように記録媒体7が地点Cの内部情報17を保持し続けることがなくなり、車上装置4は、地点Dに在線している列車1の列車位置情報を誤った「地点C」と地上装置3に報告することを防ぐことができる。
また、記録媒体7の記録を消去した状態で電源断予告信号6が得られなかった場合、前述のように車上装置4から地上装置3への報告は「不定」となるが、この場合は、地上装置3側で安全を確保した制御指示を車上装置4に出すので、列車1の安全運行上支障はない。
以上の動作を、図11のタイミングチャート図を用いて説明する。列車1の電源が切断(符号601)される一定時間前に、車上装置4は列車1から電源断予告信号6を受信し(符号602)、記録媒体7に内部情報17の書き込み処理を実施する(符号603)。
次回の電源の立上時(符号605)、車上装置4は記録媒体7の内部情報17(符号604)の読み出し処理を実施し(符号606)、地上装置3に列車位置情報を報告する(符号608)。そして、車上装置4は地上装置3への列車位置情報「地点C」の報告が完了すると、記録媒体7に記録された内部情報17を消去信号14(または消去処理14と称す)で消去する(符号607)。
この状態で、再び列車1が地点Dまで走行(符号600)し、車上装置4への電源入力が再度切断(符号610)される前に、電源断予告信号6が入力されない場合、地点Dでの列車位置情報は内部情報17として記録媒体7に記録されないため、記録媒体7の内部情報17は「不定」となる。
この後、次回の電源立上時(符号611)に、車上装置4は記録媒体7の内部情報17を読み出す(符号612)が、内部情報17は消去され「不定」(符号614)となっていることから、列車位置情報を「不定」として地上装置3に報告を行う(符号613)。
以上の内部情報17の消去処理14により、図9で示すように、列車1の走行完了と車上装置4への電源入力切断の間に電源断予告信号6が車上装置4へ入力されない場合においても、記録媒体7へ過去に報告した列車位置情報を保持したままとなることを防ぎ、更に、誤った列車位置情報を地上装置3へ報告することも防止できる。
<課題3>
次に、電源断予告信号6が誤入力されるケースを図12で説明する。図12は、従来の記録媒体7への内部情報17の記録動作3を示す図である。
列車1が走行中に電源断予告信号6が誤って入力された場合、車上装置4は本来電源切断時に記録するべき内部情報17を記録しないタイミングでも記録媒体7へ記録してしまう。つまり、このような状況において、列車1は走行中であり、列車位置は時々刻々と変化するので、走行中に誤って電源断予告信号6が入力したことに伴って記録された列車位置情報は無効であり、次回の電源立上時の列車位置報告としては使用できない。
図12では、走行中など意図しないタイミングにおいて電源断予告信号が入力された場合の列車位置情報の記録状況を示している。本来、列車1の電源が切断される状態で内部情報17の記録を実施する必要があるが、列車走行中(符号701)においても、車上装置4が列車1からの不正な電源断予告信号6を受信した場合(符号702)、車上装置4は記録媒体7に内部情報17を記録してしまう(符号703)。そして、記録媒体7は列車位置が変化する中、記録した地点Eの列車位置情報(符号704)を保持し続けることになる。
<解決方法3>
次に、上述した課題3に対する解決方法の一実施例を図13を用いて説明する。図13は、本発明の第3実施例での記録媒体7への内部情報17の記録動作3を示す図である。
この図13のタイミングチャート図で、列車1が走行中に電源断予告信号6が入力された際の記録媒体7への記録動作を説明する。本実施例では、記録媒体7への内部情報17の書き込み処理を
(1)列車1の速度が0km/hである。
(2)電源断予告信号6が車上装置4へ入力される。
という2つの条件も満足した場合のみ行う。これにより、車上装置4は、列車1の走行中に不正な情報を記録媒体7へ書き込むことを防止できる。
図13に示すように、列車1の速度が0km/hより大きい状態(符号801)で、電源断予告信号6が車上装置4へ入力されても(符号802)、車上装置4は記録媒体7への書き込みを実施しない(符号803)。列車1の速度が0km/hとなる列車停止状態(符号804)においては、電源入力15が切断(符号805)される前に電源断予告信号6が入力された場合(符号806)は、列車位置情報や列車制御情報などを内部情報17として記録媒体7へ書き込む(符号807)。図13の例では、記録媒体7の内部情報17には、列車位置情報「地点G」が記録される(符号808)。
これにより、図12で説明したように、列車走行中(符号701)に車上装置4が電源断予告信号6を受信した場合(符号702)でも、車上装置4は記録媒体7に内部情報17を記録(符号703)すること、及び記録媒体7が不正な列車位置情報(地点E)を保持し続けることの2点を防止できる。
また、車上装置4は電源断予告信号6が入力される度に記録媒体7へ位置情報の書き込みを実施することがなくなるため、車上装置4での処理量を低減し負荷を軽減できる。更に、記録媒体7の書き込み回数も低減できるため、書き込み回数に制限があるフラッシュメモリなど不揮発性メモリで構成した記録媒体7の寿命を延ばすことができるという効果もある。
また、電源断予告信号6については、列車が停止し、速度信号16が0となったことを契機にタイマ10で時間計測を開始し、一定時間経過後に車上装置4内部で電源断予告信号(符号802−2)を生成し、外部からの電源断信号予告6の入力がなければ生成した内部の電源断予告信号で記録媒体7へ内部情報17として列車位置情報の書き込み処理を実行してもよい(符号803−2)。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
各機能や処理を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置いてもよい。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1 列車
2 速度信号発生器
3 地上装置
4 車上装置
5 バッテリ
6 電源断予告信号
7 記録媒体
8 地上子
9 通信路
10 タイマ
11 書き込み信号
12 読み出し信号
13 データバス
14 消去信号
15 電源入力
16 速度信号
17 内部情報
19 入出力装置

Claims (11)

  1. 列車位置情報を含む列車制御情報を基に地上装置にて列車の位置検知を行う列車保安システムにおいて、
    前記列車は、
    前記列車全体を制御し前記地上装置との通信を行う車上装置と、
    前記列車全体に電力を供給し、前記車上装置への電力供給を切断することを予告する電源断予告信号を生成する電源装置と、
    前記列車の位置情報を記憶する記憶装置と、
    前記列車の速度を計測する速度計測装置と
    を備え、
    前記電源断予告信号の発生により、前記列車制御情報を前記記憶装置に記憶し、
    前記車上装置への電力供給の開始時に、前記記憶装置に記録された前記列車位置情報を前記地上装置に送信し、
    所定条件を満足すると、前記記憶装置に記憶された前記列車制御情報を消去する
    ことを特徴とする列車保安システム。
  2. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記所定条件は、
    前記記憶装置に前記列車制御情報が記憶された状態で、前記電力供給が遮断される前に前記列車の走行を前記速度計測装置が検知した場合である
    ことを特徴とする列車保安システム。
  3. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記所定条件は、
    前記記憶装置に前記列車制御情報が記憶された状態で、前記列車への電力供給が再開され記憶された前記列車制御情報を前記記憶装置から読み出した場合であることを特徴とする列車保安システム。
  4. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記所定条件は、
    前記記憶装置に前記列車制御情報が記憶された状態で、前記列車への電力供給が再開され記憶された前記列車制御情報を前記記憶装置から読み出し、前記地上装置へ送信した場合であることを特徴とする列車保安システム。
  5. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記車上装置と前記地上装置の通信は、
    無線または有線で行うことを特徴とする列車保安システム。
  6. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記列車制御情報は、
    前記列車位置情報に加え、電源切断前の制御レベル、前記列車の在線位置で無線回線または有線回線を確立するために使用するチャネル情報や電話番号、地上装置の識別情報であることを特徴とする列車保安システム。
  7. 請求項1記載の列車保安システムにおいて、前記列車は、
    更に、前記列車を制御する情報を設定する入力装置と、前記記憶装置への記憶した情報を表示する出力装置とを備えたことを特徴とする列車保安システム。
  8. 列車位置情報を含む列車制御情報を基に地上装置にて列車の位置検知を行う列車保安システムにおいて、前記列車は、
    前記列車全体を制御し前記地上装置との通信を行う車上装置と、
    前記列車全体に電力を供給し、前記車上装置への電力供給を切断することを予告する電源断予告信号を生成する電源装置と、
    前記列車の位置情報を記憶する記憶装置と、
    前記列車の速度を計測する速度計測装置と
    を備え、
    前記電源断予告信号により、前記列車制御情報を前記記憶装置に記憶し、
    前記車上装置への電力供給の開始時に、前記記憶装置に記録された前記列車位置情報を前記地上装置に送信し、
    前記列車の走行を前記速度計測装置が検知している状態では、前記記憶装置に前記列車制御情報を記憶させないことを特徴とする列車保安システム。
  9. 請求項8記載の列車保安システムにおいて、前記列車の走行を前記速度計測装置が検知している状態では、前記電源断予告信号が発生しても前記記憶装置に前記列車制御情報を記憶させないことを特徴とする列車保安システム。
  10. 請求項8記載の列車保安システムにおいて、前記列車の走行を前記速度計測装置が検知していない状態では、前記記憶装置に前記列車制御情報を記憶させることを特徴とする列車保安システム。
  11. 請求項8記載の列車保安システムにおいて、前記列車は、
    更に、前記列車を制御する情報を設定する入力装置と、前記記憶装置への記憶した情報を表示する出力装置とを備えたことを特徴とする列車保安システム。
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