JP2014159721A - 扉用閉鎖制動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 閉鎖時には扉の速度が極端に速くならない程度の閉鎖力を与え続け、そのまま停止することなく緩やかに閉鎖する動作を可能とし、閉鎖最終段階において閉鎖力を強くすることができ、より確実な閉鎖動作を可能とする扉用閉鎖制動装置を提供する。
【解決手段】 スライド部材をレール本体内で直線移動可能に配置した構成のレール装置と閉鎖装置をアーム部材にて連結する。閉鎖装置はケース内に柱状カムと押し込みビットとばね部材を組み付けて構成し、押し込みビットの先端突部を柱状カム側面の湾曲面や傾斜面に対向させた状態でばね部材により付勢させておく。そして軸心と柱状カムをアーム部材に固定すると、押し込みビットの先端突部が柱状カムの側面を押す動作により、その湾曲面の傾斜度合いによって柱状カムおよびアーム部材を回転させようとする力を得、その結果扉の閉鎖動作が実施可能になる。
【選択図】 図1

Description

本発明は扉用の閉鎖制動装置に関するものである。
従来の扉用の閉鎖制動装置は、アームの回転動作を制動装置内での比較的短い距離の直線運動に変換してその直線動作を制御する機構で、シリンダー内部に圧縮ばねとピストンを挿入し、扉の開閉に連動するアームの回転動作によりピニオンが回転し、ピニオンと係合しているラックの移動動作でピストンを直線運動させ、ピストンにより区切られた2室間をシリンダー内に充填されたオイルおよびエアーがオリフィスを通して流動することにより負荷をかける構成のものが多く、基本機構に油圧や空気圧を利用したものがほとんどである。この機構の特徴は扉を閉鎖したときに一旦確実に低速度にまで減速し、その後緩やかに最後まで閉じることができる点で、大きく扉を開けた状態からでも、僅かに扉を開けた状態からでも同様の閉鎖動作が得られる。また扉を開くときと閉じるときにオリフィスを流動する流量を変化させることにより、開くときには軽く、閉じるときには大きな負荷が得られるような機構も併せて有している。
これら従来のタイプでは、制動装置本体を扉に取り付け、2本のアームを折りたたんだような状態で連結し、連結した2本のアームの片端を上枠に、他端を制動装置本体に取り付け、扉の開閉とともに両方のアームの角度が変化する中で、制動装置側のアームの回転動作を制動装置内で直線移動動作に変換する構成と、上枠に配置された制動装置本体に1本のアームの端部を装着し、扉の開閉とともにアームが回転する動作を制動装置内で直線移動動作に変換し、アームの他端部は扉面に沿ってレール内を移動する構成との大きく分けて2タイプがある。前者に該当するタイプを基本としてさらに改良されたものが特開2001−303847公報等に多数開示されており、後者に該当するタイプのものが特開2003−193740公報等に多数開示されている。
しかしながら、前述の油圧式のタイプは優れた性能を有するものの、圧力の変わるオイルを確実に密封する必要があり、どうしても構造が複雑になり部品点数も多く、コスト面で高価になるという問題点を有している。また閉鎖動作としては制動装置本体側のアーム端部に連結されたピニオンを支点位置で回転させるため油圧等に負けない非常に力の強いばねが必要になり、上記強度に対応できる高強度のラックやピニオン等をも内蔵させなければならない。したがって制動装置全体としてはかなり大きな形状になり、サイズ面でコンパクト性に欠け、デザイン面でもあまり好ましくないことが挙げられる。また扉や枠体に内蔵させ外部に露出させないコンシールドタイプにはなおさら適応させにくいという点も最近では懸念されている。
また油圧を用いない扉の閉鎖装置も多数提案されており、単にばねの力のみで扉を引寄せる構成のものとしては、特開2000−45624公報や特開2001−288956公報等が開示されている。ところが閉鎖動作の駆動力にばねのみを用いる場合は、ばねの特性として扉を大きく開けたときほど引寄せ力は強く、僅かにのみ開けたときは引寄せ力が小さくなる傾向を有している。さらに閉鎖時に何ら負荷がかからない状態では閉鎖途中からは慣性力も加わることになる。したがって扉の開放度合いによって完全に閉じる最終段階での速度が変化してしまうものがほとんどであり、機能的に満足なものであるとは考えにくい。
したがって解決するべき最も重要な点としては、大きく開け放った状態からの閉鎖では速度が付きすぎるため最終段階での減速動作が必要になり、少しだけ開けた状態からの閉鎖では引寄せ力が小さいため減速動作を有すると閉まり切らない、この相反する現象に対応する機構が必要になってくると考えられる。そこでばねの特性として大きく撓ませた前後での負荷があまり変わらないぜんまいばねや等荷重ばね等を用いる構成が考えられ、本発明者によっても特開2005−273199に報告されている。しかしぜんまいばねや等荷重ばねは巻き込み機能が必要であり、サイズ面で大きくなることとコスト面で高価であるため、比較的コンパクトで安価に構成することを要求される室内ドア用の閉鎖制動装置には採用しにくい点が問題として残っている。
特開2001−303847公報 特開2003−193740公報 特開2000−45624公報 特開2001−288956公報 特開2005−273199公報
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、複雑な油圧の機構を用いず、比較的単純でかつコンパクトに形成できることを前提条件とし、約180度までの開放と所定の任意の位置での停止機能をも備え、閉鎖時には常に扉の速度が極端に速くならない程度の閉鎖力を与え続け、そのまま停止することなく緩やかに完全に閉鎖する動作を可能とし、かつ閉鎖最終段階においてはより確実に閉鎖させるために閉鎖力を強くすることができる扉の閉鎖制動装置を提供することを目的とする。
本発明では上記問題点を解決するために次の技術手段を設けた。まず閉鎖装置とア−ム部材と直線状のレ−ル本体内にスライド部材を移動可能な状態で配置したレール装置とを設け、扉と枠体に閉鎖装置とレ−ル装置を振り分けて装着し、両者をア−ム部材で回動可能に連結して扉の閉鎖制動装置を構成する。閉鎖装置はケース内に柱状カムと第一軸心と押し込みビットとばね部材を組み付けて構成し、第一軸心を柱状カムに固定しておき、押し込みビットの先端突部を柱状カムの側面にばね部材により付勢した状態で当接させておく。そしてスライド部材にも第二軸心を装着してレ−ル本体内を直線移動可能なように組みつけ、ア−ム部材にて第一軸心と第二軸心を連結固定する。
ここで、柱状カムの形状は横断面形状が同一の上下方向に長い柱状であり、中央位置に軸心挿入孔を有し、側面は軸心挿入孔の中心から外周表面までの距離が狭い開き角度範囲で比較的大きく変化する形状の傾斜面と、それに連続した同一単位開き角度に対して軸心挿入孔の中心から外周表面までの距離が徐々に変化していくように設定された湾曲面と、さらに連続された軸心挿入孔の中心から外周表面までの距離が一定である円周面から形成されている。
そして扉が閉鎖しているときは、扉とレ−ル装置とア−ム部材は一直線にて重なった状態であり、扉を開放するにつれてア−ム部材が閉鎖装置の第一軸心を中心に回転しながらレール装置ではスライド部材がレ−ル本体内を移動する動作になり、レ−ル本体内のスライド部材の第二軸心に対してもア−ム部材は回転動作することになる。また第一軸心と柱状カムがア−ム部材に同時に固定されているためアーム部材と共に柱状カムも回転し、したがってばね部材を撓ませながら押し込みビットがスライド部材内を移動することになる。そして開放動作を停止させると、押し込みビットの先端突部が柱状カム側面の湾曲面や傾斜面を押す動作になり、その側面の傾斜度合いによって柱状カムを回転させようとする動作を得、柱状カムと第一軸心と共にア−ム部材を回転させようとする力につながり、その結果扉の閉鎖動作が実施可能になる。
つまり、扉の開放操作による閉鎖装置内での動作においては、扉が閉鎖しているときは押し込みビットの先端突部は柱状カムの傾斜面と面対した状態になっている。そして扉を少し開放した段階では押し込みビットが傾斜面により押されてばね部材を撓ませながらその先端突部は同一単位開き角度に対して軸心挿入孔からの外周までの距離が徐々に増加していく形状の湾曲面に面対する位置に移動する。さらに続けて扉を開放すると湾曲面によりさらにばね部材を撓ませながら所定の角度以降は押し込みビットの先端突部が円周面に面対する位置に移動することになる。したがって、押し込みビットの先端突部が傾斜面と湾曲面に面対している状態においては閉鎖力が発生しており、押し込みビットの先端突部が柱状カムの円周面と面対している状態では扉はそのままの位置を保持しようとすることになる。
また逆に扉を大きく開放した状態から閉鎖していく段階においては、押し込みビットの先端突部が柱状カムの円周面と面対している開放角度範囲では扉はそのままの位置を保持しようとする動作になり、湾曲面に差し掛かった状態で閉鎖力が発生することになる。そしてこの段階でのばね部材の撓みが最も大きくなっているため、湾曲面の接線の傾斜に対して大きな力がかかり、通常の扉を開閉するときに必要な丁番等の摩擦力を上回った力が得られると閉鎖動作を始めることになる。また通常の通行にて扉を開放する角度を75度程度と想定すると、それより大きく開放したときにそのまま停止させようとするなら、湾曲面から円周面に変わる境目である所定位置を扉の開放角度が80度から85度位置付近でのアーム部材の角度位置における柱状カムの側面と押し込みビットの先端が当接している位置に設定しておくとよいことになる。さらにこの所定位置に凹部を設けておくと、押し込みビットの先端突部が凹部に入り込むことになり、クリック感を有した停止動作を得ることも可能である。
また、この押し込みビットの先端突部が所定位置を越えて湾曲面に差し掛かったときの閉鎖力を、丁番等の扉の回動保持部材自体の摩擦抵抗より僅かに強くしておくことで、比較的ゆっくりの動作にて扉は閉鎖し始め、湾曲面の接線方向への傾き度合いに比した力で柱状カムに固定されたア−ム部材の回転力が引き続き発生し、その低速度を維持したまま扉の閉鎖動作を連続させることができる。またばね部材の力は撓み量が減少していくにつれて少しずつ弱くなっていくため、その分湾曲面の接線の傾斜を調整しておいて極端に閉鎖力が小さくならないように設定しておくとよい。
ここで柱状カムの湾曲面と連続している傾斜面は、第一軸心の中心からの距離が急激に小さくなるように設定されている。つまり完全に閉鎖する直前の位置にて押し込みビットの先端突部が湾曲面から傾斜面に移動した段階でより大きな閉鎖力を得るように構成したものであり、ラッチが掛かる扉の閉鎖最終段階においてもより確実に扉を閉じきることが可能になる。その結果扉を任意の位置まで開放して放置すると、押し込みビットの先端突部が湾曲面に当接している角度範囲においてはそのまま自然に閉鎖動作を開始し、その後も停止すること無くかつ極端に速度が付き過ぎることもなく連続して閉鎖し、押し込みビットの先端突部が傾斜面に差し掛かった段階からはより強く確実に扉を閉鎖する動作が得られることになる。
また扉を閉鎖させるために必要な力は扉の重量やサイズにより異なるため、各種扉に対して閉鎖力が調整できることが重要である。そこで閉鎖装置のケース内に斜面を有した2個のばね力調整部材を設け、ばね部材を間に挟んだ状態で押し込みビットを配置しておく。そしてばね力調整部材の片方に設けた雌ねじ部分に螺合させた状態でばね力調整ねじを組みつけておく。すると施工後にばね力調整ねじを回すことでばね部材を押し込む動作が得られ、ばね部材の初期撓みを変更することで扉の閉鎖力を調整できることになる。
しかしながら、さらに重い扉等においては当然強い閉鎖力が必要になり、上記の構成での閉鎖力のみでは足らないことも想定される。そこでスライド部材の第二軸心にも側面が傾斜面と湾曲面から形成される別形状の柱状カムを設けてア−ム部材に固定しておくとよい。そして同様にばね部材と押し込みビットを共に組み付けて、ばね部材の力で押し込みビットの先端突部を湾曲面に押し付けることでスライド部材側においてもア−ム部材に回転力を与えることが可能になる。この構成においては、扉の開閉動作全域を通じてレール本体とアーム部材の角度はそれほど大きくならないため、比較的極端に湾曲面の接線の傾斜を設けることができ、追加の閉鎖力を得るには非常に有効である。
また上記のように、第一軸心と第二軸心の両方に湾曲面と傾斜面を有する柱状カムを設けた場合では全体としてかなり大きな最終閉鎖段階での閉鎖力が得られると想定される。すると確実に閉じ切るという点においては確実性が増すのであるが、慣性力により閉鎖速度が付き過ぎることも懸念される。また扉の解放後に手で軽く閉じ放つような操作をした場合などにおいても閉鎖速度が付き過ぎることになる。そこで閉鎖した状態でのレ−ル本体内のスライド部材が配置される側の端部にシリンダー型のダンパーを設け、扉の閉鎖最終段階でスライド部材の端面がダンパーの出没ピンに当接するように配置しておくとよい。このシリンダー型のダンパーは瞬時の強い出没ピンを押し込む動作に対しては比較的大きな抵抗を発生させ、ゆっくりとした押し込み動作に対しては抵抗力は小さく徐々に没する機構を有しているものが好ましく、閉鎖操作や慣性力により大きくなりすぎた扉の速度を最終段階で減速させることで扉の閉鎖動作を制御可能とすることができる。
さらには風によるあおり等のより強い閉鎖速度にも対応するには上記のシリンダー型のダンパーでは制動力としては不足すると考えられる。そこでレ−ル本体内の閉鎖した状態でスライド部材が配置される側の端部にラックを装着し、レ−ル本体内を移動するスライド部材に歯車が回転することにより負荷が発生する構成の減速部材を組み付けておくとよい。すると扉の閉鎖最終段階で減速部材の歯車とラックが係合することにより、大きくなりすぎた扉の閉鎖力を減速させることで、閉鎖速度を制御可能とすることができる。
また上記の構成で減速後に扉を最後まで確実に閉鎖するためには、レ−ル本体に配置されたラックとスライド部材に装着された減速部材の歯車の係合による制御動作として、扉が所定位置にまで閉鎖した段階で強制的に両者が噛み合う係合手段と、扉が減速部材の負荷により減速されながらさらに閉じ、所定の低速度になった段階で歯車がラックから外れる離脱手段とを有する係脱機構を有していることが必要であると考えられる。
前記係合手段と離脱手段とを有する係脱機構としては、まず歯車が回転することにより負荷が発生する構成のロータリーダンパー等の減速部材に回転軸と昇降部分を設け、減速部材がスライド部材に対して一定の角度範囲にて首振り動作するように両者を回転軸で連結しておく。そしてラックに対して歯車が常に離れようとする方向に力がかかるような離脱用ばねによる離脱手段を組みつけておく。そしてさらにレール本体内のラック端部から一定距離隔てた位置に山型片を形成し、扉の閉鎖にともなうスライド部材の移動により、所定位置にて山型片に減速部材の昇降部分が乗り上げ、歯車がラック側に回動して互いが係合することにより減速動作を開始するように構成しておく。すると昇降部分が山型片位置を通過後、ラックと歯車に発生する摩擦力が離脱手段による力より小さくなった段階で、離脱用ばねの力により歯車がラックから離脱し、その後は残っている閉鎖装置による閉鎖力にて扉が最後まで閉鎖する構成が最も適している。
アーム部材に傾斜面と湾曲面を側面に備えた柱状カムを固定し、ばね部材にて押し込みビットの先端突部を柱状カムの側面に押し付ける機構にて閉鎖力を得る新しい構成であり、高価な引き込み装置や油圧式の制動装置を用いることなく、扉の解放後に自然に閉鎖動作を開始し、その後停止することも極端に速度が付き過ぎることもなく閉鎖動作を続け、最終段階においてはより強く確実に扉を閉鎖する動作をも得ることが可能になる。
柱状カムの湾曲面を過ぎた部分に円周面を設けることにより、所定の角度以上に開放した段階では扉は閉鎖せずその位置を保持することが可能になる。また所定角度位置に凹部を設けることにより、押し込みビットの先端突部が凹部に嵌り込む動作でより確実にその位置を保持させることができ、その後の閉鎖動作に移る段階ではクリック感を伴った閉鎖操作が可能になる。
アーム部材両端の第一軸心と第二軸心の両方に柱状カムを設けた構成では、ばね力調整部材とばね力調整ねじによる閉鎖強さが調整可能な閉鎖装置での閉鎖力と、レ−ル装置のスライド部材側での閉鎖力を併せて用いることができ、様々なサイズや重量の扉に適応させた閉鎖制動装置として展開させることが可能である。
柱状カムの側面形状として湾曲面に続く傾斜面を設けたことにより、ばね部材による付勢力がどうしても弱まる最終閉鎖段階においてもより大きな閉鎖力を得ることができ、ラッチが掛かる直前に停止してしまうような扉が閉じきらないことによる誤動作を無くすことが可能になる。
レール本体の閉鎖した状態でスライド部材が配置される側の端部にシリンダー型のダンパーを装着し、全体の閉鎖力を強めにして解放後の閉鎖速度が速くなるように設定することにより、閉鎖最終段階でダンパーによる減速動作を用いた制御機構にて一旦低速度に減速してからゆっくりとそのまま完全に閉鎖する閉鎖制動装置に発展させることが可能である。
レール本体の閉鎖した状態でスライド部材が配置される側の端部にラックを装着し、レ−ル本体内を移動するスライド部材に歯車が回転することにより負荷が発生する構成の減速部材を組み付け、扉が所定位置にまで閉鎖した段階で強制的に歯車がラック方向に移動してラックと噛み合う係合手段と、扉が減速部材の負荷により減速されながらさらに閉じ、所定の低速度になった段階で歯車がラックから外れる離脱手段とを有する係脱機構を設けたことにより、より大きな減速量とその後の確実な閉鎖動作が可能になり、風によるあおり等の急激な閉鎖時にも最適な閉鎖制御動作を実現することができる。
扉と枠体に閉鎖装置とレール本体を振り分けて配置して両者をアーム部材で連結する構成においては、閉鎖装置を上枠にレール本体を扉の上部に配置する構成と、その逆の閉鎖装置を扉の上部に、そしてレール本体を上枠に配置する構成が可能であり、その両方の構成において上枠や扉に掘り込んでアーム部材のみが露出するデザイン性に優れた内蔵型と、両者を面付けに配置する施工後にも取り付け可能な外付け型が可能であり、様々な構成にて発展させることができる。
ケース内に押し込みビットとばね力調整部材とばね部材と柱状カムを挿入した構成の閉鎖装置と、スライド部材とレール本体からなるレール装置と、両者を連結するためのアーム部材のみの簡単な構成であり、部品点数も少なく安価に提供可能である。またレール本体内に単純な形状のストッパーを装着することで任意の開き角度にてそれ以上扉が開放しないようにすることができ、ドアストッパーの役割も簡単に追加することが可能である。
以下図面に基づいて本発明に関する扉用閉鎖制動装置の実施の形態を説明する。図1は本発明の閉鎖制動装置をドアの上枠31と扉30の上部に内蔵させた状態で取り付け、30度程度扉を開放したときの斜視図であり、図2はその状態での納まり上面図である。そして図3は扉30の閉鎖状態での閉鎖制動装置の正面図であり、図4は扉30の開閉による閉鎖制動装置の動作軌跡を示す上面図である。まず本発明においては、図1に示すように上枠31の下部内面に閉鎖装置aを、扉30の上部厚み方向面にスライド部材2とレール本体1からなるレール装置bを共に埋め込んだ内蔵状態で配置し、閉鎖装置aとスライド部材2をアーム部材3にて連結しておく。したがって扉30の開閉時の閉鎖制動装置の動作としては、扉30の上部厚み方向面と上枠31の下部内面との隙間部分にアーム部材3が配置され、図4に示すように扉30の開閉に従ってスライド部材2がレール本体1内を移動しながらアーム部材3が水平方向に回転移動する動作になる。
図5は閉鎖装置aの斜視図であり、ケース4内に第一柱状カム5と第一軸心7と押し込みビット6とばね部材12を組み付けて構成し、第一軸心7を第一柱状カム5に固定しておき、押し込みビット6先端の先端突部11を第一柱状カム5の側面に対向させた状態でばね部材12により付勢させておく。そして第一軸心7の先端を太鼓形状にカットしておき、アーム部材3の片端に同様に太鼓形状の軸心取り付け孔14を設け、両者を互いに嵌め込んでねじにて連結する。図6は図5の状態の閉鎖装置aを下から見上げたときの平面図であり、ばね部材12の付勢力で押し込みビット6の先端突部11が第一柱状カム5の側面に押し付けられた状態になっている。
次に図7は第一柱状カム5の上面図であり、その形状は横断面が同一の上下方向に長い柱状であり、中央位置に軸心挿入孔13を有し、側面は同一単位開き角度に対して軸心挿入孔13からの外周までの距離が徐々に変化していくように設定された湾曲面8と、さらに小さな段差を超えて連続した軸心挿入孔13に対しての距離が一定である円周面10から形成しておく。そして湾曲面8の形状としては、湾曲面8を軸心挿入孔13の中心位置から等角度毎ごとに分割し、その各々の湾曲面8の表面位置と軸心挿入孔13の中心までの距離をA〜Fとすると、その長さがA>B>C>D>E>Fとなるように設定しておく。そしてさらにFの表面位置から連続するように狭い角度範囲での傾斜面9を設け、傾斜面9の終点と軸心挿入孔13の中心までの距離Gが極端に小さくなるように設定しておく。またAの表面位置から逆の側面方向に小さな段差を有してその後は軸心挿入孔13の中心からの距離が一定の円周面10を形成しておくとよい。
図8は閉鎖装置aの正面図であり、ケース4内に第一柱状カム5と第一軸心7と押し込みビット6を配置し、ばね部材12にて押し込みビット6の先端突部11を第一柱状カム5の側面に押し付ける構成に、さらに斜面を有した2個のばね力調整部材15を互いに斜面を面対させた状態で配置し、片方のばね力調整部材15に雌ねじ部分16を設けておく。そしてばね力調整ねじ17を雌ねじ部分16に螺合させた状態で空転するようにケース4に対して組み付け、ばね力調整ねじ17の頭部を下向きに配置しておく。すると図8(a)に示す状態からばね力調整ねじ17を回すと、他方のばね力調整部材15が横方向に移動することになり、図8(b)に示すようにばね部材12を押し込むことで押し込みビット6の第一柱状カム5側面への付勢力を調整することが可能になる。
次に図4で示した扉30の開閉による閉鎖装置aの動作を図9に示す軌跡図にて説明する。ここで扉30の開閉によりアーム部材3も閉鎖装置aの第一軸心7を中心に回転動作するのであるが、アーム部材3は一定の長さであるため図4に示すようにレール本体1内をスライド部材2が移動しながら開閉することになる。ここで図4は扉30の開放角度が15度毎での開閉位置を0度から180度まで連続して重ね合わせて表示しており、したがって扉30の開放角度に対してのアーム部材3の閉鎖装置aに対する回転角度がわかることになる。そして図9はその主要角度位置の閉鎖装置a付近のみを別々に抜粋し、第一柱状カム5と押し込みビット6の先端突部11との動作がよりわかりやすくなるように拡大表記している。
図9(a)は扉30が閉じている0度の位置を示しており、扉30とレール本体1とアーム部材3は一直線に重なった配置になっている。そして第一柱状カム5の傾斜面9に押し込みビット6の先端突部11が押し付けられており、この状態で既にばね部材12はある程度撓んでおり、押し込みビット6に対しては十分な付勢力を有しているように設定しておく。次に閉鎖状態から徐々に扉30を開放していく動作においては、まず図9(b)に示す扉30が少しだけ開放した位置で既にアーム部材3も回転動作しており、先端突部11は傾斜面9に押されて図7に示すFとGの差額の距離だけばね部材12を圧縮しながらケース4内で押し込みビット6が移動することになる。つまり前述のようにこの距離を比較的大きく設定しておくとよいことになる。そして先端突部11が第一柱状カム5の湾曲面8に移動した図9(c)の段階からは、扉30の開放にしたがって図7に示すA>B>C>D>E>Fの条件により、アーム部材3の回転動作でさらにばね部材12を圧縮させながら押し込みビット6を移動させる動作になる。
そして図9(f)に示す押し込みビット6の先端突部11が湾曲面8から円周面10に移動する位置までは益々ばね部材12を圧縮する動作になり、その後は押し込みビット6の先端突部11は円周面10に当接することになるためばね部材12のそれ以上の圧縮動作は無くなり、そのまま図9(g)に示すように扉30は最後まで開放する。また、押し込みビット6の先端突部11がばね部材12により第一柱状カム5の側面を押し込むことにより発生する回転力はその接点の接線方向の傾斜の度合いによって変わることになる。したがって図9(f)から完全に開放するまでの図9(g)の間は押し込みビット6先端の先端突部11は円周面10を垂直方向に押す動作になるため回転力は生まれず、開放動作を中断すると扉30はそのままの位置で停止することになる。ここで上記の押し込みビット6の先端突部11がアーム部材3に固定された第一柱状カム5の湾曲面8と円周面10との境目に当接しているときの扉30の角度位置を所定角度位置とする。
次に大きく扉30を開放した状態から閉鎖していくときの動作について説明する。前述のように図9(g)から所定角度位置である図9(f)までは扉30はそのままの位置を保持する動作になり、所定角度位置を越えると押し込みビット6の先端突部11が湾曲面8に移動するため、ばね部材12の付勢力によりアーム部材3と共に第一柱状カム5を湾曲面8の接線方向に回転させようとする力が発生する。例えば図9(e)の状態においては第一柱状カム5とアーム部材3を時計回り方向に回転させる力になり、その結果図9(d)を経て図9(c)に示すように引き続きアーム部材3を回転させる力が発生することになる。そしてこのアーム部材3を回転させる力はそのまま図4に示すように扉30を閉鎖させる力となる。
また人が通常のドアを通行するときの扉30の開放角度を75度程度と想定すると、通行後そのまま放置すると扉30は自動的に閉鎖し、意図的にそれより大きく開放したときにはそのままの位置で停止する動作を得ることが望まれる。そのためには図4における扉30の開放角度が75度から90度に至る中間付近の位置で、押し込みビット6の先端突部11が第一柱状カム5の湾曲面8から円周面10に変わる境目に当接するように設定しておくとよいことになる。そして図9における図9(f)の位置がほぼそれに相当し、その位置に小さい段差を設けて乗り越え感覚程度にて保持するように設定しておく。また図示はしないが、第一柱状カム5の湾曲面8から円周面10に変わる境目の位置の縦方向に段差よりももう少し大きめの凹部を設けておくと、押し込みビット6の先端突部11が凹部に入り込むことになり、扉30を大きく開けたままの状態でより確実に停止保持することができ、その後の開閉動作においてもさらにクリック感を有した動作を得ることが可能である。
したがって押し込みビット6の先端突部11が第一柱状カム5の湾曲面8に当接している状態においては常に閉鎖動作になり、その閉鎖力は図9(f)から少し閉鎖した段階でのばね部材12の撓みが最も大きくなっている状態のときが強くなる。そしてこの湾曲面8に差し掛かったときの閉鎖力を、丁番等の扉30の回動保持部材自体の摩擦抵抗より強くしておくことにより、最初は比較的ゆっくりの動作にて閉鎖し始め、湾曲面8の接線方向への傾き度合いに比した力で第一柱状カム5に固定されたアーム部材3の回転力が引き続き発生し、その結果扉30の閉鎖動作を連続させることが可能になる。またばね部材12の力は撓み量が減少していくにつれて少しずつ弱くなっていくため、その分湾曲面8の接線の傾斜を調整しておいて極端に閉鎖力が小さくならないように設定しておくと、途中で止まらない程度の低速度を維持したままの条件のよい閉鎖動作を得ることができる。
次に図9(c)に示す状態からさらに完全に閉鎖していく段階で押し込みビット6の先端突部11が傾斜面9に当接することになり、この傾斜面9は図7に示すように第一軸心7の中心からの距離であるFとGの差が大きくなるように設定されているため、この閉鎖最終段階でアーム部材3のより大きな回転力を得ることができる。そして図9(a)に示す完全に閉鎖した状態にまで確実に至ることになる。これはラッチが掛かる扉30の閉鎖最終段階において重要な、扉30が閉じきらないことによる誤作動を防止するためにも非常に有効である。以上全体の閉鎖動作をまとめると、扉30を任意の位置まで開放して放置すると、押し込みビット6の先端突部11が湾曲面8に当接している角度範囲においてはどの位置においてもそのまま自然に閉鎖動作を開始し、その後も極端に速度が付き過ぎることなく連続して閉鎖動作を続け、先端突部11が傾斜面9に差し掛かった最終閉鎖段階からはより強く確実に扉30を閉鎖する動作が得られ、意図的に大きく開放するとそのままの位置を保持する動作になる。
また扉30の開閉動作においては必ず通行できる程度まで一旦開放するとは限らず、ほんの少し開放したまま通行せずにそのまま放置するような場合も当然有り得、どのような開放条件でも確実に閉鎖させることが必要である。その条件としては、ばね部材12の撓み量と湾曲面8の傾斜度合いから最も回転力が弱いとされる図9(c)の位置付近で扉30を放置したときにも丁番等の摩擦力を上回った閉鎖力が得られ、確実に閉鎖動作を始めるようにばね部材12と湾曲面8の形状を設定しておくとよい。また扉30を閉鎖させるために必要な力は扉30の重量やサイズにより異なり、各種様々な扉30に対して適応させるためには施工後に閉鎖力が調整できることが重要と考えられる。そこで前述の図8に示すばね部材12の付勢力を調整可能な構成が有効であり、施工後にばね部材12の初期撓みを変更することで扉30の閉鎖力を調整し、さらに最適な閉鎖動作を得ることができる。
しかしながら、より重い扉30等においては当然強い閉鎖力が必要になり、上記の構成での閉鎖力のみでは不足することも十分考えられる。そこで図2や図3にも示すようにレール本体1内のスライド部材2の第二軸心18にも側面が傾斜面9と湾曲面8から形成される別形状の第二柱状カム19を設け、同様にばね部材12と押し込みビット6をスライド部材2内に配置し、ばね部材12の力で押し込みビット6の先端突部11を第二柱状カム19側面に押し付けるように構成することでレール装置b側においてもアーム部材3に回転力を与えることが可能になる。図10はレール装置b側で閉鎖力を与える構成の正面図であり、図11は上面図である。そして図10に示すように第二軸心18と第二柱状カム19を固定し、第二軸心18の先端を第一軸心7と同様に太鼓形状にしておき、図2に示す状態でアーム部材3の他端に設けた太鼓形状の軸心取り付け孔14に連結しておくとよい。
この構成においては、図4に示すように扉30を開放するにつれてアーム部材3が閉鎖装置aの第一軸心7を中心に回転しながら、同時にスライド部材2がレール本体1内を移動する動作になり、スライド部材2に対してもアーム部材3は回転動作する。すると押し込みビット6の先端突部11が第二柱状カム19の側面を押す動作になり、その側面の傾斜の度合いによってアーム部材3を回転させようとする力により扉30の閉鎖動作が実施可能になる。図12はこのスライド部材2とアーム部材3の相互角度関係を示す軌跡図であり、扉の開放における30度毎での両者の状態を図12(a)から図12(g)にて表記している。すると図12からわかるように扉30とアーム部材3との角度は図12(a)の0度の状態から扉30の開放にしたがって徐々に大きくなっていくが、扉30が約90度開いている図12(d)の位置付近を最大にその後は再度小さくなっていく動作になる。つまり扉30の開閉動作におけるスライド部材2に対するアーム部材3の最大回転角度は約40度未満であり、したがってこの範囲内のみにおいて第二柱状カム19の側面に湾曲面8と傾斜面9を設定するとよいことになる。
図13は第二柱状カム19の平面図であり、その形状は第一柱状カム5と同様に横断面が同一の上下方向に長い柱状で中央位置に軸心挿入孔13を有し、側面には同一単位開き角度に対して軸心挿入孔13からの外周までの距離が徐々に変化していくように設定された湾曲面8を設ける。そしてその湾曲面8の形状としては、湾曲面8を軸心挿入孔13の中心位置から等角度毎ごとに分割し、その各々の湾曲面8の表面位置と軸心挿入孔13の中心までの距離をA〜Fとすると、その長さがA>B>C>D>E>Fとなるように設定しておく。そしてさらにFの表面位置から連続するように狭い角度範囲での傾斜面9を設け、傾斜面9の終点と軸心挿入孔13の中心までの距離Gが極端に小さくなるように設定しておく。またこのレール装置b側での構成においては、扉面と平行に移動するスライド部材2とアーム部材3の角度はそれほど大きく開かないため、比較的極端な湾曲面8の接線の傾斜度を設けることができ、追加の閉鎖力を得るには非常に有効である。
また上記のように、アーム部材3の両端に配置された第一軸心7と第二軸心18の両方に湾曲面8と傾斜面9を有する柱状カムを設けた場合では全体としては比較的大きな閉鎖力が得られると想定され、特に最終閉鎖段階においては両柱状カムの傾斜面9による閉鎖力が発生するため扉30を確実に閉じ切るという点においては優れていると考えられる。しかし一方では閉鎖途中で慣性力により閉鎖速度が付き過ぎることも懸念される。また扉30の解放後に手で軽く閉じ放つような操作をした場合などにおいても閉鎖速度が付き過ぎることになる。その結果閉鎖速度が付き過ぎた場合の制御機能も必要と考えられる。そこで制御機能を有する比較的簡易な構成としては、図14に示すように扉30が閉鎖した状態でのレール本体1内の、スライド部材2が配置される側の端部にシリンダー型ダンパー20を配置し、扉30の閉鎖最終段階で図14(a)に示すようにスライド部材2の端面がシリンダー型ダンパー20の出没ピン21に当接し、そのまま出没ピン21を押し込みながら図14(b)に示すように最終閉鎖位置にまで移動するように構成しておくとよい。
このシリンダー型ダンパー20は出没ピン21が没するときに負荷が発生する構成のもので、瞬時の強い出没ピン21を押し込む動作に対しては比較的大きな抵抗を発生させ、ゆっくりとした弱い押し込み動作に対しては抵抗力は小さく、そのまま徐々に没していく機構を有しているタイプのものがよい。そしてゆっくりと扉30が閉じてきた最終段階の状態においても、両押し込みビット6と両傾斜面9により出没ピン21を没することができる以上の閉鎖力を設けておくとよい。すると比較的速い速度で閉鎖してきたときにおいてはシリンダー型ダンパー20による負荷が発生して急激なバタンと閉じる動作を回避することが可能になる。その結果様々な閉鎖操作や慣性力により大きくなりすぎた扉30の速度を最終段階で減速させることで扉30の閉鎖動作を制御可能とすることができる。
しかし上記のシリンダー型ダンパー20においては、どうしても制御機能のための負荷と閉鎖力が互いに相殺してしまうことになり、最終閉鎖力との兼ね合わせにおいては比較的制動力が弱いタイプのものを用いて僅かに減速させる程度が限界と想定される。したがって風によるあおり等のより強い閉鎖速度にも対応するには上記のシリンダー型ダンパー20では制動力としては不足することも考えられる。そこで図15に示すように、レール本体1の閉鎖した状態でスライド部材2が配置される側の端部にラック22を装着し、レール本体1内を移動するスライド部材2に歯車24が回転することにより負荷が発生する構成のロータリーダンパー23を減速部材として組み付けておく構成がよく、扉30の閉鎖最終段階でロータリーダンパー23の歯車24とラック22が係合することにより、大きくなりすぎた扉30の閉鎖力を減速させることで、幅広い閉鎖速度においても制御可能とすることができる。
このラック22とロータリーダンパー23を用いて制動する構成は多々実現可能であるが、ここで重要な点としては減速後に扉30を最後まで確実に閉鎖することができることである。そこでその手段としては、レール本体1に配置されたラック22とスライド部材2に装着されたロータリーダンパー23の歯車24の係合による制御動作として、扉30が所定位置にまで閉鎖した段階で強制的に歯車24がラック22方向に移動してラック22と噛み合う係合手段と、扉30がロータリーダンパー23の負荷により減速されながらさらに閉じ、所定の低速度になった段階で歯車24がラック22から外れる離脱手段とを有する係脱機構を備えていることが必要であると考えられる。すると離脱後にはロータリーダンパー23による負荷は既に排除されているため、前述の押し込みビット6と傾斜面9による閉鎖力のみが残った状態になり、そのまま最後まで確実に扉30を閉鎖することが可能になる。
また上記で用いる減速部材の歯車24が回転することにより一定の負荷を発生させる機構は、ハウジング内に粘性の高いシリコンオイルと羽根状の部材とを収容して0リングにて密封されており、歯車24が回転するとこの羽根状の部材が連動して回転し、オイルを押しのけながら回転することで負荷をかけるロータリーダンパー23のような構成が適している。しかしロータリーダンパー23に限らずその他のものであっても良く、耐磨耗性能に優れた材質のワッシャ状の部材にて複数の皿ばね座金を挟み込んで歯車24と連動して回転するように組付けた、ばねの押し圧力と摩擦力とを利用して回転時に負荷をかけるトルクヒンジ(スイーベルヒンジ)のような構成でも可能である。
またこの係合手段と離脱手段を有する係脱機構が非常に重要なのであるが、様々な機構にて係脱動作を得ることが可能であるためその一例としての構成を図16にて説明する。図16は図4に示す扉30が15度程度開放している状態からさらに閉鎖したときのレール本体1端部付近とスライド部材2の動作を連続的に表記した正面図である。まず昇降部分26を設けたロータリーダンパー23をスライド部材2に対して一定の角度範囲にて首振り動作するように両者を回転軸28で連結し、レール本体1の上端部にラック22を、その少し手前の下部位置に山型片27を配置しておく。そしてロータリーダンパー23がラック22に対して歯車24が常に離れようとする方向に力がかかるように離脱用ばね25を組みつけておく。したがって図16(a)に示す扉30が一定以上開放された状態ではロータリーダンパー23の歯車24とラック22は離れているため両者は何ら影響していない。
次に図16(a)の状態からさらに扉30が閉鎖していくと、スライド部材2と共にロータリーダンパー23もレール本体1内を移動し、扉30が完全に閉鎖するより一定角度手前にてロータリーダンパー23の昇降部分26が山型片27に当たり、離脱用ばね25を撓ませながら山型片27に乗り上げるようにして上方に首振り動作し、ロータリーダンパー23の歯車24がラック22側に移動して図16(b)に示す状態になる。そしてそのままさらに閉鎖すると図16(c)に示すように歯車24とラック22が強制的に係合し、この段階から減速動作を得ることになる。ところがロータリーダンパー23の昇降部分26が山型片27の上面に乗っているのはこの状態からは極僅かな範囲のみであり、図16(c)の状態から僅かに移動した図16(d)に示す位置においては、既に昇降部分26が山型片27から外れており、強制的に歯車24とラック22を係合させる構成は終了している。したがって図16(d)の状態では、扉30が閉鎖する力すなわちスライド部材2の移動しようとする力により歯車24とラック22間に発生する摩擦力と離脱用ばね25の力が存在していることになる。
つまり扉30を減速させるための負荷によりラック22と歯車24間に発生する摩擦力が離脱用ばね25によるロータリーダンパー23を下方に戻そうとする力より大きい間は減速動作を連続させ、その力が小さくなった段階で離脱用ばね25の力が上回って歯車24がラック22から離脱して減速動作が終了することになる。そしてこの摩擦力は扉30の閉鎖速度が速い時ほど大きく、速度が遅くなるにつれて小さくなっていく。したがってある程度減速されてもまだ扉30の閉鎖速度つまりスライド部材2の移動速度が速いときには摩擦力はまだ残っており、歯車24はラック22から離脱することは無い。そして図16(e)は閉鎖速度が所定の低速度になり歯車24がラック22から離脱する動作をロータリーダンパー23を重ねて表示しており、歯車24とラック22に発生する摩擦力が離脱用ばね25の付勢力よりも小さくなった段階で歯車24はラック22から離脱して減速動作が終了する。
また歯車24がラック22から離脱した図16(e)の段階においても、押し込みビット6を付勢するばね部材12と柱状カムの湾曲面8や傾斜面9とによる閉鎖力は残っているため、図16(g)に示すようにそのまま最後まで扉30は閉鎖することになる。したがってこの歯車24とラック22が離脱するときの条件を任意に設定することにより、扉30を比較的遅い所定速度にまで一旦減速し、引き続きそのまま緩やかに閉じる制御動作が得られることになる。つまり非常に扉30の速度が速いときには歯車24とラック22が噛み合っている距離が長くなり、その分全体の減速量も大きくなり、逆に扉30の速度が遅いときは歯車24とラック22が噛み合っている距離が短く、全体の減速量も少なくなるためである。その結果閉鎖速度の大小に比例した減速量が得られることになり、風での強いあおり等による閉鎖動作であっても最終段階での速度を一定にできるため、非常に優れた扉30の閉鎖制御動作が実現できることになる。
また扉30を開放する操作においては、まず扉30が閉じているときは確実にラック22と歯車24は離脱状態にあり、扉30を開放する最初の時点ではロータリーダンパー23の負荷はかからない。ところが次の段階で昇降部分26が山型片27に当接してロータリーダンパー23が一旦持ち上がって歯車24とラック22が係合することになる。そこでロータリーダンパー23の歯車24を片方向の回転動作にのみ負荷が発生し逆方向はフリーになるワンウエイクラッチ付のタイプを使用しておき、逆方向の歯車24の回転では負荷が発生しないようにしておくとよい。また別の手段としては、山型片27が片側方向にのみスライド移動するように配置し、開放時に昇降部分26が山型片27に当接した段階で山型片27が横方向にスライド移動し、歯車24とラック22が係合しない位置までずれてから昇降部分26が山型片27を乗り越えるように構成しておいてもよい。そして上記のような設定を追加することにより、開放動作においてはロータリーダンパー23による負荷がかからないように構成することができ、常に軽い開放操作が実現可能となる。
次に扉30を大きく開け放ったときに壁面にハンドル等が衝突しないするために、一般的には床面にドアストッパーが設けられているものが多い。そこで図17に示すような細長いストッパー29を設け、レール本体1の第二軸心18が移動する長孔からストッパーを挿入するとよい。そして扉30の開放と共にレール本体1をスライド部材2が移動し、ストッパー29の端面にスライド部材2の端面が当接した状態で停止するように配置後固定するとよい。図18は扉30が85度程度開放した段階でスライド部材2の端面がストッパー29に当接してこれ以上扉30が開放できない状態を示した上面図であり、非常に簡単な構成で本発明の閉鎖制動装置にストッパー機能を追加することも可能である。
また実施形態では上枠31に閉鎖装置aを、扉30の上部にレール装置bを共に掘り込んだ納まりにて内蔵させ、両者をアーム部材3で連結した構成にて表記しているが、その逆の上枠31にレール装置bを、扉30の上部に閉鎖装置aを配置する構成も可能である。さらにはレール装置bや閉鎖装置aを上枠31と扉30の上部正面に振り分けて取り付ける面付けタイプも可能であり、どのような配置においても基本動作は同じである。
本発明の扉用閉鎖制動装置の納まり斜視図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の納まり上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の納まり正面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、開閉動作における扉とアーム部材の一定角度毎の上面軌跡図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、閉鎖装置の斜視図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、閉鎖装置の上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、第一柱状カムの上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、閉鎖装置の正面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、閉鎖装置に対するアーム部材の回転動作を示す軌跡図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、スライド部材に閉鎖機構を組み込んだ構成の正面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、スライド部材に閉鎖機構を組み込んだ構成の上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、スライド部材に閉鎖機構を組み込んだ構成の、開閉動作における扉とアーム部材の一定角度毎の上面軌跡図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、第二柱状カムの上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、制動機構にシリンダー型のダンパーを用いた構成の上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、制動機構に歯車を有したロータリーダンパーとラックによる係脱機構を用いた構成の上面図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、制動機構に歯車を有したロータリーダンパーとラックによる係脱機構を用いた構成の正面軌跡図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置のストッパーの斜視図である。 本発明の扉用閉鎖制動装置の、ストッパーを設けて85度程度にて扉の開放を制限した状態の上面図である。
a 閉鎖装置
b レール装置
1 レール本体
2 スライド部材
3 アーム部材
4 ケース
5 第一柱状カム
6 押し込みビット
7 第一軸心
8 湾曲面
9 傾斜面
10 円周面
11 先端突部
12 ばね部材
13 軸心挿入孔
14 軸心取り付け孔
15 ばね力調整部材
16 雌ねじ部分
17 ばね力調整ねじ
18 第二軸心
19 第二柱状カム
20 シリンダー型ダンパー
21 出没ピン
22 ラック
23 ロータリーダンパー
24 歯車
25 離脱用ばね
26 昇降部分
27 山型片
28 回転軸
29 ストッパー
30 扉
31 上枠

Claims (12)

  1. スライド部材を直線状のレ−ル本体内で移動可能に配置した構成のレ−ル装置とア−ム部材と閉鎖装置を有し、扉と枠体に閉鎖装置とレ−ル装置を振り分けて装着し、両者をア−ム部材で連結した構成の扉の閉鎖制動装置であって、柱状カムと第一軸心と押し込みビットとばね部材をケース内に組み付けて閉鎖装置を構成し、柱状カムは側面に軸心の中心位置からの距離が徐々に変化する形状の湾曲面を有しており、押し込みビットの先端突部を柱状カムの湾曲面に当接させた状態でばね部材により付勢させておき、第一軸心と柱状カムをアーム部材の片端に固定し、さらにスライド部材に第二軸心を装着してア−ム部材の他端を第二軸心に固定し、押し込みビットの先端突部がばね部材の付勢力により柱状カムの湾曲面を押す動作により、その湾曲面の接線の傾斜の方向に柱状カムを回転させようとする動作を得、柱状カムと共にア−ム部材を回転させようとする力を用いて扉の閉鎖動作を実施可能としたことを特徴とする扉用閉鎖制動装置。
  2. 前記柱状カムは横断面形状が同一の上下方向に長い柱状であり、中央位置に軸心挿入孔を有し、側面は軸心挿入孔からの外周までの距離が狭い開き角度範囲にて極端に変わる傾斜面と、それに連続した同一単位開き角度に対して軸心挿入孔からの外周までの距離が徐々に変化していくように設定された湾曲面と、さらに連続された軸心挿入孔までの距離が一定である円周面から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の扉用閉鎖制動装置。
  3. ケース内のばね部材の付勢力にて押し込みビットが柱状カムの側面を常に押し付けるように構成し、扉が閉鎖しているときは押し込みビットの先端突部は柱状カムの傾斜面と当接しており、扉を少し開放した段階でアーム部材の回転動作により押し込みビットが傾斜面により押されてばね部材を撓ませながら先端突部は湾曲面に当接するように移動し、続けて扉を開放すると軸心挿入孔からの外周までの距離が徐々に増加していく形状の湾曲面に当接しながらさらにばね部材を徐々に撓ませ、扉の開放角度が所定角度位置に達した以降は押し込みビットの先端突部が円周面に当接し、それ以上の開放動作においてはばね部材は撓まず、そのまま完全に扉が開放するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の扉用閉鎖制動装置。
  4. 扉を大きく開放した状態から閉鎖していく段階において、押し込みビットの先端突部が柱状カムの円周面と当接している状態では扉はそのままの位置を保持しようとし、扉の角度が所定角度位置を越えて押し込みビットの先端突部との当接位置が湾曲面に差し掛かると、ばね部材の付勢力と湾曲面の接線方向への傾き度合いに比した力で柱状カムに固定されたア−ム部材に対する回転力が発生して扉の閉鎖動作が開始し、そのまま止まることなく低速度で閉鎖動作を継続し、完全に閉鎖する直前の位置にて押し込みビットの先端突部の当接位置が湾曲面から傾斜面に移動した段階でより大きな閉鎖力が発生し、扉を確実に閉鎖できるように構成したことを特徴とする請求項1及至3いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  5. スライド部材に装着する第二軸心にも側面が傾斜面と湾曲面から形成される別形状の柱状カムを設けてア−ム部材に固定し、ばね部材と押し込みビットを共に組み付けてスライド部材側においてもア−ム部材に回転力を与えることにより扉を閉鎖する構成を設けたことを特徴とする請求項1及至4いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  6. ケース内に斜面を有した2個のばね力調整部材を設け、その片方に設けた雌ねじ部分にばね力調整ねじをケースに対して空転する状態で螺合し、施工後にばね力調整螺子を回す操作で他方のばね力調整部材を移動させてばね部材を押し込むことにより、ばね部材の初期撓みを変更することで扉の閉鎖力を調整できる構成を設けたことを特徴とする請求項1及至5いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  7. 柱状カム側面の湾曲面と円周面との境付近に凹部分を形成し、押し込みビットの先端突部が凹部分に入り込む動作により、扉を所定角度位置にて一定の力で停止保持できるように構成したことを特徴とする請求項1及至6いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  8. 扉が閉鎖するときにスライド部材が移動してくる方向のレ−ル本体内の端部に出没ピンが没するときに負荷が発生する構成のシリンダー型のダンパーを設け、扉の閉鎖最終段階でスライド部材の端面がダンパーの出没ピンに当接するように配置し、閉鎖時に大きくなりすぎた速度を減速させることで扉の閉鎖動作を制御可能としたことを特徴とする請求項1及至7いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  9. 扉が閉鎖するときにスライド部材が移動してくる方向のレ−ル本体内の端部にラックを装着し、レ−ル本体内を移動するスライド部材に歯車が回転することにより負荷が発生する構成の減速部材を組み付け、扉の閉鎖最終段階で減速部材の歯車とラックが係合することにより、閉鎖時に大きくなりすぎた速度を減速させることで扉の閉鎖動作を制御可能としたことを特徴とする請求項1及至8いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  10. 前記レ−ル本体に配置されたラックと、スライド部材に装着された減速部材の歯車との係合による制御動作として、扉が所定位置にまで閉鎖した段階で強制的に歯車がラック方向に移動してラックと噛み合う係合手段と、扉が減速部材の負荷により減速されながらさらに閉じ、所定の低速度になった段階で歯車がラックから外れる離脱手段とを有する係脱機構を備えていることを特徴とする請求項1及至9いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  11. 前記係合手段と離脱手段とを有する係脱機構が、歯車を有した減速部材に昇降部分と回転軸を設け、減速部材がスライド部材に対して一定の角度範囲にて首振り動作するように両者を回転軸で連結し、ラックに対して歯車が常に離れようとする方向に力がかかるような離脱手段を具備させ、さらにレール本体内のラック端部から一定距離隔てた位置に山型片を形成し、扉の閉鎖にともなうスライド部材の移動により、所定位置にて山型片に減速部材の昇降部分が当接し、歯車がラック側に回動して互いが係合することで減速動作を得、昇降部材が山型片を通過後、ラックと歯車間に発生する摩擦力が離脱手段による力より小さくなった段階で歯車がラックから離脱する構成であることを特徴とする請求項1及至10いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
  12. レール本体内にストッパーを配置し、扉の開放時にストッパーとスライド部材が所定の開放角度で当接することでそれ以上の扉の開放を規制するように構成したことを特徴とする請求項1及至11いずれか1項に記載の扉用閉鎖制動装置。
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