JP2014156790A - エンジンの製造方法及び製造システム - Google Patents

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靖二 山田
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Abstract

【課題】低コストかつ異常燃焼の起こりにくいエンジンの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明によるエンジンの製造方法は、エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定工程S12と、燃焼室容積測定工程S12での測定結果が燃焼室容積の目標範囲内であるかに基づいて、燃焼室の容積の調整をするか否かを判断する判断工程S13と、判断工程S13で燃焼室の容積の調整をすると判断した場合に、測定結果に基づいて燃焼室に成膜をすることにより、燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整工程S14と、を有するものである。
【選択図】図1

Description

本発明はエンジンの製造方法及び製造システムに関し、特にエンジンの燃焼室容積を調整する、エンジンの製造技術に関する。
エンジンのシリンダヘッド(エンジンヘッド)の製造には、例えば、金属溶湯を成形キャビティ内に充填する金型鋳造法が用いられている。成形キャビティ内に充填された金属溶湯は、所定時間後に凝固してシリンダヘッド素材を形成する。シリンダヘッド素材は鋳造用金型から離型された後に、シリンダブロックとの合わせ面等の切削加工が施される。このような工程を経て、シリンダヘッドが製造される。
シリンダヘッドは上述の通り金型鋳造法で製造される。それ故、目標となる容積を備えた燃焼室を形成するための成形キャビティを、鋳造用金型により精度よく形成した場合であっても、気筒毎に金属溶湯の凝固傾向が異なることに起因した収縮誤差が発生し、気筒毎の燃焼室容積にばらつきが生じる。また、金型鋳造法以外の製造方法でシリンダヘッドが製造されたときも燃焼室容積にばらつきが生じる場合がある。このような気筒毎の燃焼室容積のばらつきは、ノッキング、プレイグニッション、デトネーション等の異常燃焼の原因となる。
上述した気筒毎の燃焼室容積のばらつきを抑制するために、燃焼室の側面に加工削り代を設け、その削り代を機械加工することで燃焼室容積の調整を行う多気筒エンジンの燃焼室容積調整方法が特許文献1に記載されている。
特開2011−256730号公報
特許文献1に記載の燃焼室容積調整方法は、燃焼室内に容積調整用の加工代を有するようなシリンダヘッド素材を鋳造する必要があり、コスト高につながるという問題点があった。
本発明は、このような問題点を解決するためなされたものであり、低コストかつ異常燃焼の起こりにくいエンジンの製造方法及び製造システムを提供することを目的とする。
本発明にかかるエンジンの製造方法は、エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定工程と、前記燃焼室容積測定工程での測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整工程と、を有するものである。
ここで、前記燃焼室容積調整工程における成膜で用いる材料の量を前記測定結果に基づいて算出してもよい。
本発明にかかる他の観点によるエンジンの製造方法は、エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定工程と、前記燃焼室容積測定工程での測定結果が燃焼室容積の目標範囲内であるかに基づいて、前記燃焼室の容積の調整をするか否かを判断する判断工程と、前記判断工程で前記燃焼室の容積の調整をすると判断した場合に、前記測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整工程と、を有するものである。
ここで、前記判断工程において、前記測定結果が前記目標範囲に入っていないことから前記燃焼室容積調整を行うと判断した場合に、前記燃焼室容積調整工程で燃焼室容積の調整をした後に前記燃焼室容積測定工程に戻り、燃焼室容積の測定結果が前記目標範囲に入るまで繰り返し前記燃焼室容積調整を行ってもよい。
上述の、燃焼室容積調整工程における成膜を溶射法で行ってもよい。
さらには、前記燃焼室容積調整工程における成膜をコールドスプレー法で行ってもよい。
ここでまた、上述の成膜で用いる材料が金属であってもよい。
本発明にかかるエンジン製造システムは、エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定部と、前記燃焼室容積測定部での測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整部と、を有するものである。
本発明により、低コストかつ異常燃焼の起こりにくいエンジンの製造方法及び製造システムを提供することができる。
発明の実施の形態1にかかるエンジンの製造方法を示すフロー図である。 発明の実施の形態1にかかる燃焼室容積調整工程で用いられる溶射装置を示す図である。 発明の実施の形態1にかかるエンジンの製造システムを示すブロック図である。
発明の実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1を用いて、本発明の実施の形態1にかかるエンジンの製造方法について説明する。
本実施の形態1において製造されるエンジンは、典型的には自動車用のエンジンである。特に、燃焼室を有するエンジンが対象である。
図において、エンジン部材製造工程S11は、エンジンの製造に用いる部材を製造する工程である。燃焼室容積測定工程S12は、エンジン部材製造工程S11で製造されたエンジン部材を用いたエンジンの燃焼室容積を測定する工程である。判断工程S13は、燃焼室容積測定工程S12での測定値が目標範囲内に入っているか否かにより、エンジン組み立て工程S15か燃焼室容積調整工程S14に進むかを判断する工程である。燃焼室容積調整工程S14は、燃焼室内部に成膜を行うことにより燃焼室容積を目標値に近づける調整を行う工程である。エンジン組み立て工程S15は、エンジン部材を組み立ててエンジンを完成させる工程である。エンジン検査工程S16は、完成したエンジンが所望の性能を発揮しているかを検査する工程である。以下、各工程について説明する。
エンジン部材製造工程S11は、エンジンの製造に用いる部材を製造する工程である。エンジン部材の例としては、シリンダヘッド、シリンダブロック、ピストン、クランクシャフト等がある。
エンジン部材の製造工程の一例として、シリンダヘッドの製造工程を説明する。シリンダヘッド素材の製造は、例えば、鋳造工程、離型工程、及び加工工程により行われる。鋳造工程では、金属溶湯を成形キャビティ内に充填する金型鋳造法が用いられる。成形キャビティ内に充填された金属溶湯は、所定時間後に凝固してシリンダヘッド素材を形成する。離型工程では、シリンダヘッド素材が鋳造用金型から離型される。その後、加工工程においてシリンダブロックとの合わせ面等の切削加工が施され、シリンダヘッドが完成する。なお、シリンダヘッドの製造は鋳造以外の方法であってもよく、例えば、切削加工でもよい。
燃焼室容積測定工程S12は、エンジン部材製造工程S11で製造されたエンジン部材を用いたエンジンの燃焼室容積を測定する工程である。燃焼室容積測定工程S12における容積の測定は、容積を直接測定するに留まらず、間接的に測定してもよい。容積を直接測定するには、例えば、ビュレット等を用いてエンジンの燃焼室に液体を注入し、注入した液体の容積が燃焼室の容積と等しくなることを利用して測定する。
容積の間接測定の一例としては、燃焼室の形状を計測し、その形状から燃焼室の容積を計算する方法がある。形状の測定には、光切断法、パターン投影法、モアレ法等を用いることができる。光切断法、パターン投影法、及びモアレ法は、物体の位置・高さ等の三次元形状を非接触で計測する三次元形状計測方法の一種である。
光切断法では、被計測物にレーザスリット光を照射して、被計測物の表面に光切断線を形成する。光切断線は、被計測物表面の凹凸に応じて変形するので、光切断線をレーザスリット光の照射方向とは別の方向から撮像装置で撮像する。そして、撮像により得られた光切断線画像を用いて、三角測量の原理に基づき、被計測物表面の三次元形状を計測することができる。
パターン投影法では、被計測物表面にプロジェクタ等の投影機によりパターンを投影し、そのパターンの間隔の変化等から被計測物表面の三次元形状を計測することができる。
モアレ法では、被計測物に斜め方向から格子を投影することにより、被計測物形状に応じて変形した格子を作り、その格子を直線状の格子(基準格子)と重ねてモアレを作る。そして、モアレの等高線から物体形状を計測する。
判断工程S13は、燃焼室容積測定工程S12での測定値が目標範囲内に入っているか否かにより、エンジン組み立て工程S15か燃焼室容積調整工程S14に進むかを判断する工程である。燃焼室容積の目標値がA、目標範囲の下限がA1、目標範囲の上限がA2(A1<A<A2)の場合を例として、判断工程S13における次工程の判断方法を説明する。燃焼室容積測定工程S12での燃焼室容積の測定値VがA1≦V≦A2となる場合には、判断工程S13において、次はエンジン組み立て工程S15に進むと判断する。燃焼室容積の測定値Vが、V<A1又はV>A2となる場合には、判断工程S13において、次は燃焼室容積調整工程S14に進むと判断する。
燃焼室容積調整工程S14は、燃焼室内部に成膜を行うことにより燃焼室容積を目標値に近づける調整を行う工程である。燃焼室内部への成膜は溶射法で行うことが好ましい。溶射法とは、金属やセラミックス、サーメットなどの材料を加熱・溶融させた状態又はそれに準ずる状態で母材表面に吹き付け、皮膜を形成する表面改質技術の一つである。
溶射法は数μmからの緻密な膜の形成が可能なので膜厚の制御がしやすいという特徴がある。よって、燃焼室容積を決まった量だけ減少させることができ、容積調整の精度が向上する。したがって、溶射法を用いることにより、定量的に精度よく燃焼室容積を減少させることができる。燃焼室容積測定工程S12での燃焼室容積の測定値がVで、燃焼室容積の目標値がA(A>V)の場合には、溶射する材料の体積Dは、D=A−Vと決定できる。
また、溶射する材料の特性によってエンジンの性能向上が可能である。断熱効果のあるセラミックス(ジルコニア等)を成膜した場合には、エンジンの燃焼性能の向上が期待できる。それに対して、熱伝導率の高い金属を成膜した場合には、エンジンの冷却性能の向上が可能である。
燃焼室内面への成膜は、溶射法の中でも特に、コールドスプレー法で行うことがより好ましい。コールドスプレー法とは、原料粉末の融点又は軟化点よりも低い温度の作動ガスを超音速流とし、作動ガス中に原料粉末を投入してノズルより噴射し、固相状態のまま金属部材に衝突させて皮膜を形成する溶射方法である。言い換えれば、コールドスプレーとは、金属、合金、金属間化合物またはセラミックス等の原料粉末を超音速で金属表面に固相状態で衝突させて皮膜を形成するものである。
本発明の実施の形態1にかかる燃焼室容積調整工程S14で用いられる溶射装置200について、図2を用いて説明する。図2では、溶射装置200を用いて、シリンダヘッド220上で燃焼室の一部を形成する凹部221に成膜を行っている。凹部221はシリンダヘッド220上に4箇所設けられている。凹部221内には、吸気ポート222と排気ポート223が設けられている。
溶射装置200は、作動ガスを超音速流とし、原料粉末と共にノズル210から噴射体として噴射し、固相状態のまま凹部221に衝突させて皮膜を形成する。溶射装置200は、ノズル210と、ガス加熱装置211と、粉末供給装置212と、を具備している。
ガス加熱装置211は、ガス導入管213より導入される窒素ガスを加熱し、ガス導入管214よりノズル210に供給する装置である。コールドスプレー法を用いる場合には、作動ガスを原料粉末の融点未満又は軟化温度以下の所定温度に加熱する。粉末供給装置212は、粉末導入管215よりノズル210に供給する装置である。
ノズル210は、ガス導入管214より導入される作動ガスを超音速流とするとともに、粉末導入管215より導入される原料粉末を作動ガス中に投入することにより、原料粉末を作動ガスとともに超音速流として噴射して凹部221に衝突させるものである。コールドスプレー法では、原料粉末は固相状態のまま凹部221に衝突することとなる。なお、溶射の際に材料が飛散することにより意図しない部位にまで成膜することを防ぐため、シリンダヘッド220には、マスキング治具を設けることも可能である。この場合にはマスキング治具が設けられた箇所以外の部分、すなわち凹部221の必要な部分のみに皮膜が形成される。
本実施形態の溶射装置200では、原料粉末として、例えば、銅、アルミニウム又はニッケルを用いることができる。また、本実施形態の溶射装置200では、作動ガスとして、例えば、空気又は窒素ガスを用いることができる。
コールドスプレー法で成膜された皮膜は熱変形が小さいので、熱負荷がかかった際の熱歪みや亀裂を防ぐことができる。また、コールドスプレーを用いることで、燃焼室内部の金属の変形や歪みが小さくでき、皮膜中の酸化を最小限にすることができる。さらに、コールドスプレー装置は構成がシンプルで成膜が速いので、インラインでの使用が可能である。
エンジン組み立て工程S15は、エンジン部材を組み立ててエンジンを完成させる工程である。組み立ては人間が行ってもよいし、ロボットが行ってもよい。
エンジン検査工程S16は、完成したエンジンが所望の性能を発揮しているか又は異常がないかを検査する工程である。検査項目の例として、組み立てたエンジンを動作させて、水漏れ、油漏れ、又は異音の有無を目視又は聴覚で検査したり、排気ガス中の有害物質の濃度が基準値以下であるかを検査したりする。
本発明の実施の形態1にかかるエンジンの製造システムの構成について、図3を用いて説明する。エンジン部材製造部310は、エンジンの製造に用いる部材を製造する部分である。燃焼室容積測定部320は、エンジン部材製造部310で製造されたエンジン部材を用いたエンジンの燃焼室容積を測定する部分である。判断部330は、燃焼室容積測定部320での測定値が目標範囲内に入っているか否かにより、燃焼室容積調整部340又はエンジン組み立て部350に進むかを判断する部分である。燃焼室容積調整部340は、燃焼室内部に成膜を行うことにより燃焼室容積を目標値に近づける調整を行う部分である。エンジン組み立て部350は、エンジン部材を組み立ててエンジンを完成させる部分である。エンジン検査部360は、完成したエンジンが所望の性能を発揮しているかを検査する部分である。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、エンジンは必ずしも自動車用のエンジンに限定されず、航空機等のエンジンであってもよい。また、燃焼室内部に成膜する方法は、溶射法やコールドスプレー法に限らず、他の成膜方法を用いてもよい。また、燃焼室内部の成膜位置は、適宜、成膜材料や成膜方法の特性に応じて選択される。
S11 エンジン部材製造工程
S12 燃焼室容積測定工程
S13 判断工程
S14 燃焼室容積調整工程
S15 エンジン組み立て工程
S16 エンジン検査工程
310 エンジン部材製造部
320 燃焼室容積測定部
330 判断部
340 燃焼室容積調整部
350 エンジン組み立て部
360 エンジン検査部

Claims (8)

  1. エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定工程と、
    前記燃焼室容積測定工程での測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整工程と、
    を有するエンジンの製造方法。
  2. 前記燃焼室容積調整工程における成膜で用いる材料の量を前記測定結果に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの製造方法。
  3. エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定工程と、
    前記燃焼室容積測定工程での測定結果が燃焼室容積の目標範囲内であるかに基づいて、前記燃焼室の容積の調整をするか否かを判断する判断工程と、
    前記判断工程で前記燃焼室の容積の調整をすると判断した場合に、前記測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整工程と、
    を有するエンジンの製造方法。
  4. 前記判断工程において、前記測定結果が前記目標範囲に入っていないことから前記燃焼室容積調整を行うと判断した場合に、
    前記燃焼室容積調整工程で燃焼室容積の調整をした後に前記燃焼室容積測定工程に戻り、燃焼室容積の測定結果が前記目標範囲に入るまで繰り返し前記燃焼室容積調整を行うことを特徴とする請求項3に記載のエンジンの製造方法。
  5. 前記燃焼室容積調整工程における成膜を溶射法で行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のエンジンの製造方法。
  6. 前記燃焼室容積調整工程における成膜をコールドスプレー法で行うことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のエンジンの製造方法。
  7. 前記成膜で用いる材料が金属であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のエンジンの製造方法。
  8. エンジンの燃焼室の容積を測定する燃焼室容積測定部と、
    前記燃焼室容積測定部での測定結果に基づいて前記燃焼室に成膜をすることにより、前記燃焼室の容積の調整をする燃焼室容積調整部と、
    を有するエンジン製造システム。
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