JP2014156656A - 永久磁石、ならびにそれを用いたモータおよび発電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】高Fe濃度の組成域を主相とするSm−Co系磁石で大きな保磁力を再現性よく発現させることを可能にした永久磁石を提供する。
【解決手段】実施形態の永久磁石は、組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5(原子%))で表される組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする。主相中のCu濃度は5モル%以上とされている。
【選択図】図1
【解決手段】実施形態の永久磁石は、組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5(原子%))で表される組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする。主相中のCu濃度は5モル%以上とされている。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、永久磁石、ならびにそれを用いたモータおよび発電機に関する。
高性能な永久磁石としては、Sm−Co系磁石やNd−Fe−B系磁石等の希土類磁石が知られている。ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)のモータに永久磁石を使用する場合、永久磁石には耐熱性が求められる。HEVやEV用モータには、Nd−Fe−B系磁石のNdの一部をDyで置換して耐熱性を高めた永久磁石が用いられている。Dyは希少元素の一つであるため、Dyを使用しない永久磁石が求められている。また、高効率のモータや発電機として、可変磁石と固定磁石とを使用した可変磁束モータや可変磁束発電機が知られている。可変磁束モータや可変磁束発電機の高性能化や高効率化のために、可変磁石や固定磁石の保磁力や磁束密度を高めることが求められている。
Sm−Co系磁石はキュリー温度が高いため、Dyを使用しない系で優れた耐熱性を示すことが知られており、高温で良好なモータ特性等を実現することが可能である。Sm−Co系磁石のうちSm2Co17型磁石は、その保磁力発現機構等に基づいて、可変磁石として使用することもできる。Sm−Co系磁石においても、保磁力や磁束密度を高めることが求められている。Sm−Co系磁石の高磁束密度化にはFe濃度を高めることが有効であるものの、高Fe濃度の組成領域では保磁力が減少する傾向にある。そこで、高Fe濃度のSm−Co系磁石で大きな保磁力を発現させる技術が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、高Fe濃度の組成域を主相とするSm−Co系磁石で大きな保磁力を再現性よく発現させることを可能にした永久磁石とその製造方法、およびそれを用いたモータおよび発電機を提供することにある。
実施形態の永久磁石は、
組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5を満足する数である)
で表され、元素Rの50原子%以上がSmである組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする金属組織を備えている。金属組織は、元素Mの濃度が3モル%以上のCu−Mリッチ相を含み、金属組織を構成する全構成相に対するCu−Mリッチ相の体積分率は、0.01%以上5%以下の範囲である。
組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5を満足する数である)
で表され、元素Rの50原子%以上がSmである組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする金属組織を備えている。金属組織は、元素Mの濃度が3モル%以上のCu−Mリッチ相を含み、金属組織を構成する全構成相に対するCu−Mリッチ相の体積分率は、0.01%以上5%以下の範囲である。
以下、実施形態の永久磁石について説明する。この実施形態の永久磁石は、
組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s …(1)
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5を満足する数である)
で表される組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする金属組織を備えている。実施形態の永久磁石は、それを構成する金属組織の主相中のCu濃度が5モル%以上であることを特徴としている。
組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s …(1)
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5を満足する数である)
で表される組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする金属組織を備えている。実施形態の永久磁石は、それを構成する金属組織の主相中のCu濃度が5モル%以上であることを特徴としている。
組成式(1)において、元素Rとしてはイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素が使用される。元素Rはいずれも永久磁石に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与するものである。元素Rとしては、サマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)およびプラセオジム(Pr)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、特にSmを使用することが望ましい。元素Rの50原子%以上をSmとすることで、永久磁石の性能、とりわけ保磁力を再現性よく高めることができる。さらに、元素Rの70原子%以上がSmであることが望ましい。
元素Rの含有量pは10原子%以上13.5原子%以下の範囲とする。元素Rの含有量pが10原子%未満であると、多量のα−Fe相が析出して十分な保磁力を得ることができない。一方、元素Rの含有量が13.5原子%を超えると、飽和磁化の低下が著しくなる。元素Rの含有量pは10.3〜13原子%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは10.5〜12.5原子%の範囲である。
鉄(Fe)は、主として永久磁石の磁化を担う元素である。Feを多量に含有させることによって、永久磁石の飽和磁化を高めることができる。ただし、Feをあまり過剰に含有させると、α−Fe相が析出したり、また後述する所望の2相組織が得られにくくなるため、保磁力が低下するおそれがある。このため、Feの含有量qは28原子%以上40原子%以下の範囲とする。Feの含有量qは29〜38原子%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは30〜36原子%の範囲である。
元素Mとしては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種の元素が用いられる。元素Mを配合することで、高いFe濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる。元素Mの含有量rは0.88原子%以上7.2原子%以下の範囲とする。元素Mの含有量rを0.88原子%以上とすることによって、高Fe濃度の組成を有する永久磁石に大きな保磁力を発現させることができる。一方、元素Mの含有量rが7.2原子%を超えると、磁化の低下が著しくなると共に、後述するCu−Mリッチ相が生成しにくくなる。元素Mの含有量rは1.3〜4.3原子%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは1.5〜2.6原子%の範囲である。
元素MはTi、Zr、Hfのいずれであってもよいが、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高める効果をさらに向上させることができる。一方、元素Mの中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少なくすることが好ましい。Hfの含有量は元素Mの20原子%未満とすることが好ましい。
銅(Cu)は、永久磁石に高い保磁力を発現させるための元素である。Cuの配合量sは4原子%以上13.5原子%以下の範囲とする。Cuの配合量sが4原子%未満であると、高い保磁力を得ることが困難になる。さらに、主相中のCu濃度を5モル%以上とすることが困難になる。Cuの配合量sを4原子%以上とした場合には、Cu量が少ない異相の生成等により主相中のCu濃度を5モル%以上とすることができる。また、Cu−Mリッチ相の生成についても同様である。一方、Cuの配合量sが13.5原子%を超えると、磁化の低下が著しくなる。Cuの配合量sは4.2〜9原子%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは4.5〜7.2原子%の範囲である。
コバルト(Co)は、永久磁石の磁化を担うと共に、高い保磁力を発現させるために必要な元素である。さらに、Coを多く含有させるとキュリー温度が高くなり、永久磁石の熱安定性が向上する。Coの含有量が少なすぎると、これらの効果を十分に得ることができない。ただし、Coの含有量が過剰になると、相対的にFeの含有割合が下がって磁化が低下する。従って、Coの含有量は元素R、Zr、元素M、およびCuの含有量を考慮した上で、Feの含有量が上記範囲を満足するように設定される。
Coの一部は、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)から選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換してもよい。これらの置換元素Aは磁石特性、例えば保磁力の向上に寄与する。ただし、元素AによるCoの過剰な置換は磁化の低下を招くおそれがあるため、元素Aによる置換量はCoの20原子%以下とすることが好ましい。
この実施形態の永久磁石は、Fe濃度が28モル%以上の組成域を主相としている。さらに、主相中のCu濃度は5モル%以上とされている。ここで、Sm−Co系磁石の保磁力発現機構は、一般的に磁壁ピニング型であることが知られている。Sm2Co17型磁石は、熱処理により主相をTh2Zn17型結晶相(Th2Zn17型構造を有する結晶相/2−17相)とCaCu5型結晶相(CaCu5型構造を有する結晶相/1−5相)とに相分離させることで、磁壁ピニング型の保磁力発現機構を得ている。相分離後の金属組織は、セル構造と呼ばれる二次構造となる。すなわち、2−17相(セル相)の粒界相として1−5相(セル壁相)が析出することで、セル相がセル壁相で区切られた構造となる。
2−17相(セル相)の粒界に析出した1−5相(セル壁相)の磁壁エネルギーは、2−17相の磁壁エネルギーに比べて大きく、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動の障壁となる。つまり、磁壁エネルギーの大きい1−5相がピンニングサイトとして働くことによって、磁壁ピニング型の保磁力が発現するものと考えられる。ここで、磁壁エネルギーの差は主にCuの濃度差により生じていると考えられる。セル壁相(粒界相)のCu濃度がセル相内のCu濃度より高ければ、十分な保磁力が発現するものと考えられる。
上述したように、CuはSm2Co17型磁石に高い保磁力を発現させるために必須の元素である。すなわち、Cuは熱処理により生成するセル壁相(粒界相)に富化され、これによりセル壁相が磁壁のピンニングサイトとして働くことで、保磁力が発現すると考えられる。しかし、Sm2Co17型磁石のFe濃度が高くなると、そのような保磁力が発現しにくくなる傾向にある。その原因としては、Fe濃度が高くなると熱処理時(時効処理時)に2−17相と1−5相への主相の相分離が十分に進行しないことが考えられる。
本発明者らはこの原因について鋭意検討した結果、Fe濃度が高い組成域においては焼結体磁石の主相中のCu濃度が仕込みのCu濃度よりも低くなる傾向にあることを見出した。つまり、保磁力の改善を狙ってCuを添加しても、Cuが十分に主相中に含まれていないことを見出した。Sm2Co17型磁石においては、時効処理中に形成されるセル相とセル壁相との間に十分なCu濃度差が現れないと、セル壁相が磁壁ピニングサイトとして十分に機能しないことが考えられる。主相中に十分なCu量が確保されていないと、セル相とセル壁相との間に十分なCu濃度がつきにくくなったり、もしくは相分離自体が生じにくくなるといったことが保磁力の発現を妨げていると考えられる。
この点について鋭意研究、検討を行った結果、主相中のCu濃度を5モル%以上とすることによって、十分な保磁力が得られることを見出した。すなわち、高Fe濃度の組成域を主相とする永久磁石、特にFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする永久磁石においては、Cuおよび元素Mがリッチな異相(Cu濃度が5モル%以上で、かつ元素Mの濃度が3モル%以上であり、残部が元素R、FeおよびCoである異相/Cu−Mリッチ相)が析出しやすくなる。このCu−Mリッチ相(異相)にCuが富化することで、主相中のCu濃度が低下すると考えられる。つまり、Cu−Mリッチ相の生成を抑制することによって、主相中のCu濃度を5モル%以上に維持することができる。
上述したように、この実施形態の永久磁石はCu−Mリッチ相の生成を抑制することによって、Fe濃度が28モル%以上の主相中のCu濃度を5モル%以上に維持することを可能にしたものである。Cu濃度が5モル%以上の主相によれば、時効処理時にセル相(2−17相)とセル壁相(1−5相等)への相分離が十分に進行すると共に、セル相とセル壁相との間に十分なCu濃度差を生じさせることができる。従って、Fe濃度が28モル%以上の主相に基づいて磁化を向上させたSm−Co系磁石に、上述した磁壁ピニング型の保磁力発現機構に基づく十分な保磁力を付与することが可能となる。
Cu−Mリッチ相(異相)は、合金インゴットの作製時に生成する元素M、特にZrがリッチな相を出発相として生成すると考えられる。合金インゴットの作製時に生じるMリッチ相は融点が低いため、このような相を含む合金インゴットをジェットミルやボールミル等で粉砕すると、粉砕後の粉末はMリッチな低融点微粉末を含むこととなる。この低融点のMリッチ相が焼結中に液相になると、Cuは液相中に濃縮される傾向にあるため、焼結体中にCu−Mリッチ相を生じ、主相中のCu濃度が低下してしまうと考えられる。従って、合金粉末の圧粉体を低融点のMリッチ相の融解開始温度TMより低い温度で焼結することによって、焼結体中のCu−Mリッチ相の生成量を低減することができる。合金粉末の圧粉体の焼結温度については、後に詳述する。
図3は従来のSm−Co系磁石の金属組織を拡大して示すSEM像(走査型電子顕微鏡像)である。図3から明らかなように、従来のSm−Co系磁石はFe濃度が28モル%以上の主相に加えて、Cu−Mリッチ相(Cu−Zrリッチ相)を比較的多く含んでいることが分かる。このため、主相中のCu濃度が低下する。図4は図3に示す永久磁石の主相の微細組織を拡大して示すTEM像(透過型電子顕微鏡像)である。図4から明らかなように、Cu−Mリッチ相を多く含む焼結体に熱処理を施した場合には、2相分離が不十分であることが分かる。このため、十分な保磁力を得ることができない。
図1はこの実施形態のSm−Co系磁石の金属組織を拡大して示すSEM像である。図1から明らかなように、例えば圧粉体の焼結温度等を制御することによって、Cu−Mリッチ相(Cu−Zrリッチ相)の析出を抑制することができる。これによって、主相中のCu濃度を5モル%以上とすることが可能となる。図2は図1に示す永久磁石の主相の微細組織を拡大して示すTEM像である。図2から明らかなように、Cu−Mリッチ相の析出を抑制した焼結体に熱処理を施した場合、主相の2相分離が十分に進行することが分かる。従って、Sm−Co系磁石に大きな保磁力を付与することが可能となる。
上述したように、Sm−Co系磁石の金属組織へのCu−Mリッチ相(異相)の析出は、主相中のCu濃度を維持する上では避けるべきである。ただし、焼結体の主相のFe濃度が28モル%以上で、かつCu濃度が5モル%以上という条件を満たす範囲であれば、微量のCu−Mリッチ相を含むことが好ましい。Cu−Mリッチ相がセル相の粒界に存在することで結晶粒径の粗大化を防いだり、Cu−Mリッチ相が磁壁のピニングサイトとして働く等の理由から、保磁力等の磁石特性の改善をもたらすことがある。このような点から、Sm−Co系磁石の金属組織は、Cu濃度が5モル%以上で、かつ元素Mの濃度が3モル%以上のCu−Mリッチ相を、金属組織を構成する全構成相に対するCu−Mリッチ相の体積分率が0.01%以上5%以下の範囲となるように含むことが好ましい。
金属組織を構成する全構成相に対するCu−Mリッチ相の体積分率が5%を超えると、主相のCu濃度の低下が顕著になり、前述した理由から保磁力が低下する。一方、Cu−Mリッチ相の体積分率が0.01%未満の場合には、上記した結晶粒径の粗大化の抑制効果や磁壁のピニングサイトとして働くことによる保磁力等の向上効果を十分に得ることができない。金属組織を構成する全構成相に対するCu−Mリッチ相の体積分率は0.5%以上3.5%以下の範囲であることがより好ましい。
Sm−Co系磁石の金属組織(焼結体の組織)は、上述したようにFe濃度が28モル%以上で、かつCu濃度が5モル%以上の組成域を主相とし、それ以外にCu−Mリッチ相等の異相を含むものである。Sm−Co系磁石の金属組織は、Cu−Mリッチ相以外の異相を含んでいてもよい。異相とは金属組織を構成する全構成相のうち、主相以外の相を指すものとする。Cu−Mリッチ相以外の異相としては、Sm2(Co,Fe,Zr,Cu)7相、Sm(Co,Fe,Zr,Cu)3相、Zr2(Fe,Co,Cu)11相等が挙げられる。ただし、Cu−Mリッチ相を含む異相の量が多すぎると相対的に主相の量が減少し、磁化や保磁力等の磁石特性が低下するおそれがあるため、異相の全体量は体積分率で10%以下とすることが好ましい。
この実施形態の永久磁石は、上述したように時効処理後に主相がセル相(2−17相)とセル壁相(1−5相等)との2相分離組織を有している。セル壁相はセル相である2−17相のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有していることが好ましい。これによって、セル壁相を磁壁のピンニングサイトとして十分に機能させることができる。言い換えると、主相中のCu濃度を5モル%以上とすることによって、セル壁相のCu濃度を再現性よくセル相の1.2倍以上とすることができる。ただし、セル壁相のCu濃度が高すぎると上述したようにCu−Mリッチ相の生成量が減少しすぎるため、セル壁相のCu濃度はセル相のCu濃度の14倍以下、さらに10倍以下とすることが好ましい。
セル相の粒界に存在するセル壁相(粒界相)の代表例としては、上述した1−5相が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。セル壁相がセル相のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有している場合に、セル壁相を磁壁のピンニングサイトとして十分に機能させることができる。従って、セル壁相はこのようなCuリッチな相であればよい。1−5相以外のセル壁相としては、高温相(相分離前の組織)であるTbCu7型結晶相(TbCu7型構造を有する結晶相/1−7相)や、1−7相の2相分離の初期段階に生じる1−5相の前駆体相等が挙げられる。
この実施形態の永久磁石において、主相中のFe濃度やCu濃度、またCu−Mリッチ相中のCu濃度やM濃度(Zr濃度等)は、SEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)により測定することができる。SEM−EDX観察は焼結体の内部に対して行う。焼結体内部の測定とは、以下に示す通りである。まず、最大の面積を有する面における最長の辺の中央部において、辺に垂直(曲線の場合は中央部の接線と垂直)に切断した断面の表面部と内部とで組成を測定する。
測定箇所は、上記断面において各辺の1/2の位置を始点として辺に対し垂直に内側に向けて端部まで引いた基準線1と、各角部の中央を始点として角部の内角の角度の1/2の位置で内側に向けて端部まで引いた基準線2とを設け、これら基準線1、2の始点から基準線の長さの1%の位置を表面部、40%の位置を内部と定義する。なお、角部が面取り等で曲率を有する場合には、隣り合う辺を延長した交点を辺の端部(角部の中央)とする。この場合、測定箇所は交点からではなく、基準線と接した部分からの位置とする。
測定箇所を以上のようにすることによって、例えば断面が四角形の場合、基準線は基準線1および基準線2でそれぞれ4本の合計8本となり、測定箇所は表面部および内部でそれぞれ8箇所となる。この実施形態においては、表面部および内部でそれぞれ8箇所全てが上記した組成範囲内であることが好ましいが、少なくとも表面部および内部でそれぞれ4箇所以上が上記した組成範囲内となればよい。この場合、1本の基準線での表面部および内部の関係を規定するものではない。このように規定される焼結体内部の観察面を研磨して平滑にした後、倍率2500倍でSEM観察を行う。加速電圧は20kVとすることが望ましい。SEM−EDXの観察場所は結晶粒内の任意の10〜20点とし、これら各点で測定を行って平均値を求め、この平均値を各元素の濃度とする。
Cu−Mリッチ相の体積分率は、EPMA観察の視野中におけるCu−Mリッチ相の面積比率で定義することができる。Cu−Mリッチ相の面積比率は、以下のようにして求めることができる。まず、フィールドエミッション(FE)タイプのEPMAにより2500倍のBSE像を撮影する。市販の画像解析ソフト等で、撮影した画像を二つのしきい値を使用して特定のコントラスト抽出を行った後、面積計算する。コントラスト抽出とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対して、ある“しきい値”を2つ設け、しきい値A以下もしくはしきい値B以上ならば“0”、しきい値A以上でしきい値B以下ならば“1”として、領域を区別することである。しきい値は抽出を行いたい輝度がその分布の両側で最小となる値を使用し、その領域を選択する。別のコントラストと輝度の分布が重なる場合は、両者の輝度が最小となる値をしきい値として使用し、その領域を選択する。
この実施形態の永久磁石は、例えば以下のようにして作製される。まず、所定量の元素を含む合金粉末を作製する。合金粉末は、例えばストリップキャスト法でフレーク状の合金薄帯を作製した後に粉砕して調製される。ストリップキャスト法では、合金溶湯を周速0.1〜20m/秒で回転する冷却ロールに傾注し、連続的に厚さ1mm以下に凝固させた薄帯を得ることが好ましい。冷却ロールの周速が0.1m/秒未満であると薄帯中に組成のばらつきが生じやすく、周速が20m/秒を超えると結晶粒が単磁区サイズ以下に微細化し、良好な磁気特性が得られない。冷却ロールの周速は0.3〜15m/秒の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜12m/秒の範囲である。
合金粉末はアーク溶解法や高周波溶解法による溶湯を鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して調製してもよい。合金粉末の他の調製方法としては、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、還元拡散法等が挙げられ、これらの方法で調製した合金粉末を用いてもよい。このようにして得られた合金粉末または粉砕前の合金に対し、必要に応じて熱処理を施して均質化してもよい。フレークやインゴットの粉砕はジェットミルやボールミル等を用いて実施される。粉砕は合金粉末の酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中や有機溶媒中で行うことが好ましい。
次に、電磁石等の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することによって、結晶軸を配向させた圧粉体を作製する。この圧粉体を適切な条件下で焼結することによって、大きな保磁力を有する焼結体を得ることができる。すなわち、圧粉体を低融点のMリッチ相の融解開始温度TM未満の温度TSで焼結することによって、異相量の少ない焼結体を得ることができる。ただし、焼結温度TSが低すぎると焼結体の相対密度を十分に高めことができないため、永久磁石の磁化が低下する。
このため、圧粉体の焼結温度TSは、低融点のMリッチ相の融解開始温度TMより50℃低い温度(TM−50℃)を超える温度とすることが好ましい。永久磁石を構成する焼結体の密度は、実用的には8.2g/cm3以上とすることが好ましい。圧粉体の焼結温度TSを、Mリッチ相の融解開始温度TMより50℃低い温度(TM−50℃)を超えてMリッチ相の融解開始温度TM未満の温度範囲(TM−50<TS<TM(℃))とすることによって、上記したような密度を実現した上で、Cu−Mリッチ相等の異相の量が少ない焼結体を再現性よく得ることが可能となる。焼結温度TSは(TM−40℃)以上の温度(TM−40≦TS)とすることがより好ましく、さらに(TM−20℃)以上の温度(TM−20≦TS)とすることが望ましい。
ここで、低融点のMリッチ相の融解開始温度TMは、示差熱分析により求めることができる。示差熱分析に用いる試料形状は、必ずしも粉末形状でなくともよい。すなわち、低融点のMリッチ相および主相は合金作製時に生成すると考えられるため、ストリップキャスト法により得られたフレーク状合金薄帯やアーク溶解により作製された合金インゴット等を用いてもよい。
図5に、この実施形態で永久磁石の作製に用いる合金粉末の示唆熱分析結果の一例を示す。図5において、最も大きな吸熱ピークが主相の融解による吸熱ピークである。主相の吸熱反応によるピークよりも低温側に、主相の吸熱反応のピークよりも小さいピークが観察される。これがMリッチ相の融解による吸熱ピークである。このピークの頂点温度付近において、低融点のMリッチ相の融解が顕著となる。このMリッチ相の融解による急熱ピークの頂点温度を、Mリッチ相の融解開始温度TMと定義する。
なお、合金組成によっては主相の融点とMリッチ相(低融点相)の融点が近く、明瞭な低融点相の吸熱反応ピークが検出されない場合がある。そのような場合には、最も大きな吸熱ピークの立ち上がりの接線(図6中のL1)とバックグラウンドの接線(図6中のL2)との交点を、Mリッチ相の融解開始温度TMと見なすことができる。主相の融解による吸熱ピークおよびMリッチ相(Zrリッチ相等)の融解による吸熱ピークは1000℃から1300℃の温度範囲にあるのが通常である。
上記した温度による焼結時間は0.5〜15時間とすることが好ましい。これによって、緻密な焼結体が得られる。焼結時間が0.5時間未満の場合、焼結体の密度に不均一性が生じる。また、焼結時間が15時間を超えると、合金粉末中のSm等が蒸発することによって、良好な磁気特性を得ることができないおそれがある。より好ましい焼結時間は1〜10時間であり、さらに好ましくは1〜4時間である。圧粉体の焼結は酸化を防止するために、真空中やアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
次に、得られた焼結体に溶体化処理および時効処理を施して結晶組織を制御する。溶体化処理は相分離組織の前駆体である1−7相を得るために、1100〜1200℃の範囲の温度で0.5〜8時間熱処理することが好ましい。1100℃未満の温度および1200℃を超える温度では、溶体化処理後の試料中の1−7相の割合が小さく、良好な磁気特性が得られない。溶体化処理温度は1120〜1180℃の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1120℃〜1170℃の範囲である。
溶体化処理時間が0.5時間未満の場合には、構成相が不均一になりやすい。また、8時間を超えて溶体化処理を行うと、焼結体中のSm等の希土類元素が蒸発する等して、良好な磁気特性が得られないおそれがある。溶体化処理時間は1〜8時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜4時間の範囲である。溶体化処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
次に、溶体化処理後の焼結体に時効処理を施す。時効処理は結晶組織を制御し、磁石の保磁力を高める処理である。時効処理は、700〜900℃の温度で0.5〜80時間保持した後、0.2〜2℃/分の冷却速度で400〜650℃の温度まで徐冷し、引き続いて室温まで冷却することが好ましい。時効処理は二段階の熱処理により実施してもよい。すなわち、上記熱処理を一段目とし、その後に二段目の熱処理として所定の温度で一定時間保持した後、引き続き炉冷により室温まで冷却することが好ましい。時効処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
時効処理温度が700℃未満または900℃を超える場合には、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。時効処理温度は750〜880℃であることがより好ましく、さらに好ましくは780〜850℃である。時効処理時間が0.5時間未満の場合には、1−7相からセル壁相の析出が十分に完了しないおそれがある。一方、保持時間が80時間を超える場合には、セル壁相の厚さが厚くなることでセル相の体積分率が低下したり、また結晶粒が粗大化することで、良好な磁石特性が得られないおそれがある。時効処理時間は4〜60時間であることがより好ましく、さらに好ましくは8〜40時間である。
また、時効熱処理後の冷却速度が0.2℃/分未満の場合には、セル壁相の厚さが厚くなることでセル相の体積分率が低下したり、また結晶粒が粗大化することで、良好な磁気特性が得られないおそれがある。時効熱処理後の冷却速度が2℃/分を超えると、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。時効熱処理後の冷却速度は0.4〜1.5℃/分の範囲とすることより好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.3℃/分の範囲である。
なお、時効処理は二段階の熱処理に限らず、より多段階の熱処理としてもよく、さらに多段の冷却を実施することも有効である。また、時効処理の前処理として、時効処理よりも低い温度でかつ短時間の予備的な時効処理(予備時効処理)を施すことも有効である。これによって、磁化曲線の角型性の改善が期待される。具体的には、予備時効処理の温度を600〜750℃、処理時間を0.5〜4時間、時効処理後の徐冷速度を0.5〜1.5℃/分とすることで、永久磁石の角型性の改善が期待される。
この実施形態の永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機の固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。この実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。この実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。
次に、実施形態のモータと発電機について、図面を参照して説明する。図7は実施形態による永久磁石モータを示している。図7に示す永久磁石モータ1において、ステータ(固定子)2内にはロータ(回転子)3が配置されている。ロータ3の鉄心4中には、実施形態の永久磁石5が配置されている。実施形態の永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ1の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。
図8は実施形態による可変磁束モータを示している。図8に示す可変磁束モータ11において、ステータ(固定子)12内にはロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、実施形態の永久磁石が固定磁石15および可変磁石16として配置されている。可変磁石16の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石16はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ13には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石16に作用する構造となっている。
実施形態の永久磁石によれば、前述した製造方法の各種条件を変更することによって、例えば保磁力が500kA/mを超える固定磁石15と保磁力が500kA/m以下の可変磁石16とを得ることができる。なお、図8に示す可変磁束モータ11においては、固定磁石15および可変磁石16のいずれにも実施形態の永久磁石を用いることが可能であるが、いずれか一方の磁石に実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ11は、大きなトルクを小さい装置サイズで出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等のモータに好適である。
図9は実施形態による発電機を示している。図9に示す発電機21は、実施形態の永久磁石を用いたステータ(固定子)22を備えている。ステータ(固定子)22の内側に配置されたロータ(回転子)23は、発電機21の一端に設けられたタービン24とシャフト25を介して接続されている。タービン24は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン24に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト25を回転させることも可能である。ステータ22とロータ23には、各種公知の構成を採用することができる。
シャフト25はロータ23に対してタービン24とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ23の回転により発生した起電力が発電機21の出力として相分離母線および主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機21は、通常の発電機および可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ23にはタービン2からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機21はロータ23の帯電を放電させるためのブラシ26を備えている。
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1〜3)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対して示唆熱分析を行い、前述した方法にしたがってZrリッチ相の融解開始温度TMを求めた。測定にはアルバック理工社製の示唆熱分析装置・TGD7000型を使用し、測定温度範囲は室温から1650℃、加熱速度は10℃/分とし、雰囲気はArガス(流量:100mL/分)とした。試料の量はおよそ300mgとし、容器にアルミナを使用し、リファレンスにアルミナを用いた。このようにして求めた合金インゴットの温度TMを表2に示す。
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対して示唆熱分析を行い、前述した方法にしたがってZrリッチ相の融解開始温度TMを求めた。測定にはアルバック理工社製の示唆熱分析装置・TGD7000型を使用し、測定温度範囲は室温から1650℃、加熱速度は10℃/分とし、雰囲気はArガス(流量:100mL/分)とした。試料の量はおよそ300mgとし、容器にアルミナを使用し、リファレンスにアルミナを用いた。このようにして求めた合金インゴットの温度TMを表2に示す。
次に、上記した合金インゴットを粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。合金粉末を磁界中でプレスして圧粉体とした後、Arガス雰囲気中にて表2に示す温度TSで2時間焼結し、引き続いて1130℃で3時間熱処理(溶体化処理)して焼結体を作製した。得られた焼結体を790℃で40時間保持した後、室温まで冷却することによって、目的とする焼結磁石を得た。焼結磁石の組成は表1に示す通りである。各磁石の組成はICP法により確認した。また、前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
(実施例4〜7)
表1に示す組成を適用する以外は、実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。各例の焼結温度TSは、実施例1と同様にしてZrリッチ相の融解開始温度TMを求めた上で設定した。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
表1に示す組成を適用する以外は、実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。各例の焼結温度TSは、実施例1と同様にしてZrリッチ相の融解開始温度TMを求めた上で設定した。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
(比較例1)
焼結温度を表2に示す温度に変更する以外は、実施例1と同組成の合金粉末を用いると共に、同一条件で焼結磁石を作製した。比較例1は焼結温度TSをZrリッチ相の融解開始温度TM以上の温度に設定したものである。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
焼結温度を表2に示す温度に変更する以外は、実施例1と同組成の合金粉末を用いると共に、同一条件で焼結磁石を作製した。比較例1は焼結温度TSをZrリッチ相の融解開始温度TM以上の温度に設定したものである。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
(比較例2、3)
表1に示す組成を適用する以外は、実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。比較例2は合金組成中のFe濃度を28原子%未満としたものであり、比較例3は合金組成中のSm濃度を10原子%未満としたものである。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
表1に示す組成を適用する以外は、実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。比較例2は合金組成中のFe濃度を28原子%未満としたものであり、比較例3は合金組成中のSm濃度を10原子%未満としたものである。前述した方法にしたがって主相中のFe濃度とCu濃度、Cu−Mリッチ相の体積分率を測定した。さらに、焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。これらの結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜7の焼結磁石はいずれも高磁化で、かつ高保磁力であり、磁石特性に優れていることが分かる。なお、実施例1、2と実施例3との比較から、Cu−Mリッチ相の体積分率は5%以下であることが好ましいことが分かる。比較例1の焼結磁石は主相中のCu濃度が低いため、十分な保磁力が得られていない。また、比較例2はFe濃度が低いために磁化が低く、比較例3はSm濃度が低いために、保磁力および磁化が共に低いことが分かる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…永久磁石モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…鉄心、5…永久磁石、11…可変磁束モータ、12…ステータ、13…ロータ、14…鉄心、15…固定磁石、16…可変磁石、21…可変磁束発電機、22…ステータ、23…ロータ、24…タービン、25…シャフト、26…ブラシ。
Claims (7)
- 組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.5、28≦q≦40、0.88≦r≦7.2、4≦s≦13.5を満足する数である)
で表され、前記元素Rの50原子%以上がSmである組成を有し、かつFe濃度が28モル%以上の組成域を主相とする金属組織を備える永久磁石であって、
前記金属組織は、元素Mの濃度が3モル%以上のCu−Mリッチ相を含み、
前記金属組織を構成する全構成相に対する前記Cu−Mリッチ相の体積分率が0.01%以上5%以下の範囲であることを特徴とする永久磁石。 - 請求項1記載の永久磁石において、
前記Cu−Mリッチ相は、Cu濃度が5モル%以上であることを特徴とする永久磁石。 - 請求項1または請求項2記載の永久磁石において、
前記主相は、Th2Zn17型結晶相と、前記Th2Zn17型結晶相中のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有する粒界相とを有することを特徴とする永久磁石。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の永久磁石において、
前記組成式における前記元素Mの50原子%以上がZrであることを特徴とする永久磁石。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の永久磁石において、
前記組成式におけるCoの20原子%以下が、Ni、V、Cr、Mn、Al、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換されていることを特徴とする永久磁石。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の永久磁石を具備することを特徴とするモータ。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の永久磁石を具備することを特徴とする発電機。
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