以下、本発明に係る汚泥処理システムについて、このシステムを備えた処理施設との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
1.汚泥処理システムを備えた処理施設の構成の説明
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理システム10を備えた処理施設12の構成図である。本実施形態に係る汚泥処理システム10は、例えば、下水や工場排水等の有機性排水を活性汚泥処理する生物反応槽14と共に処理施設12を構成するものであり、生物反応槽14で活性汚泥処理された有機性排水を固液分離装置16によって固液分離し、固液分離後の濃縮汚泥を脱水装置18によって脱水処理するシステムである。
図1に示すように、処理施設12は、有機性排水を活性汚泥処理するための生物反応槽(曝気槽)14と、固液分離装置16及び脱水装置18を有し、生物反応槽14で活性汚泥処理された有機性排水を濃縮・脱水処理する汚泥処理システム10とを備える。生物反応槽14は、例えば、前段の最初沈殿池20と後段の最終沈殿池21との間に設置される。本実施形態では、固液分離装置16を、生物反応槽14の水面W付近で半没させ、該生物反応槽14の流出側(最終沈殿池21側)に寄せて設置した構成を例示しているが、固液分離装置16は生物反応槽14の外部に設置してもよい。
汚泥処理システム10を構成する固液分離装置16及び脱水装置18の具体的な構造は後述するが、固液分離装置16は、活性汚泥を含む処理液(処理水)を貯留可能な水槽24と、水槽24内に水没設置されるスクリュープレス型分離機26とを備える。脱水装置18は、固液分離装置16からの濃縮汚泥をろ布ベルト28の上面で搬送しながらさらに濃縮する二次濃縮機30と、二次濃縮機30から排出される汚泥を加圧脱水する脱水機32とを備える。
処理施設12において、生物反応槽14内の活性汚泥を含む処理液は、処理液流入口33からオーバーフローによって一次貯留槽34に流入する。一次貯留槽34は、その側壁に形成された流入路35により水槽24と連通しており、処理液は流入路35から水槽24内へと流入する。一次貯留槽34を設けたことにより、水槽24内に貯留された固液分離後の分離液と生物反応槽14内の処理液とが容易に混ざることを防止できる。なお、図1では、一次貯留槽34を水槽24の外部に設けた構成を例示しているが、例えば、水槽24内に図示しない仕切り壁を立設することで該水槽24内に一次貯留槽を形成した構成としてもよい。
固液分離装置16によって固液分離された分離液は、水槽24の側壁に形成された液体排出口36から該液体排出口36に連結された分離液樋37を介して生物反応槽14の外部に排水される一方、濃縮汚泥は、汚泥排出路38から水槽24に連結された濃縮液タンク(バッファタンク)39内へと排出される。
濃縮液タンク39内に貯留された濃縮汚泥は、図示しないポンプの作用によって返送汚泥ライン40へと流通される。返送汚泥ライン40は、途中の三方弁41で2方に分岐しており、一方のライン40aは生物反応槽14内の流入側(最初沈殿池20側)への戻りラインであり、他方のライン40bは生物反応槽14外への排出ラインとなっており、脱水装置18に接続されている。
2.汚泥処理システムの構成の説明
次に、汚泥処理システム10を構成する固液分離装置16及び脱水装置18の具体的な構成について説明する。
2.1 固液分離装置の説明
図2は、図1に示す固液分離装置16の全体構成図であり、一部を断面で示した側面図である。固液分離装置16は、水槽24内で水没するように設置されたスクリュープレス型分離機26を備え、生物反応槽14の内部や後段に設置されることにより、該生物反応槽14で得られる活性汚泥を含む処理液を固液分離する装置である。
図2に示すように、固液分離装置16は、活性汚泥を含む処理液を貯留可能な水槽24と、水槽24内に水没設置されるスクリュープレス型分離機26(以下、単に「分離機26」ともいう)とを備える。
先ず、スクリュープレス型分離機26の構成について説明する。
分離機26は、円筒形状のろ過体42と、ろ過体42の内部に回転可能に設けられた濃縮用スクリュー44とを備え、一端側の投入口42aからろ過体42の内部へと投入された処理液を、濃縮用スクリュー44の回転力によって他端側へと搬送しつつ濃縮汚泥と分離液とに固液分離する。分離機26で分離された濃縮汚泥は排出口42bから排出され、分離液は水槽24内に流出・貯留される。
濃縮用スクリュー44は、ろ過体42の軸心と同軸上に延在し、一端側(投入口42a側)から他端側(排出口42b側)に向かって漸次拡径するスクリュー軸45と、スクリュー軸45の外周面にらせん状に設けられたスクリュー羽根46とを有する。
スクリュー軸45は、例えば、軸受47a,47bによってその両端部が軸支され、一端側に設けられた駆動装置48からの回転駆動力によって回転する。駆動装置48は、例えば、スクリュー軸45の一端側に巻き掛けられた駆動ベルト48aと、該駆動ベルト48aを循環駆動することでスクリュー軸45を回転させるモータ48bとから構成される。図2では、スクリュー軸45及びこれを軸支する軸受47a,47bを水槽24内で水没させた構成を例示しているが、スクリュー軸45の一方又は両方の端部を水槽24の外部に突出させ、この突出部分を軸受47a等で軸支する構成等としてもよい。
スクリュー軸45は、上記のように、一端側から他端側に向かって漸次拡径するテーパ形状を有するため、該スクリュー軸45の外周面とろ過体42の内周面との間に形成される空間は、一端側(上流側)から他端側(下流側)に向かって次第に狭くなり、これにより処理液中の活性汚泥を圧搾し、固液分離する。
スクリュー軸45の他端側には、ろ過体42の内部で固液分離された濃縮汚泥を圧密するテーパコーン49が設けられている。テーパコーン49は、スクリュー軸45の外周面に該スクリュー軸45と同軸に設けられ、スクリュー軸45よりも大きな傾斜角度で拡径する傾斜面49aを有する。テーパコーン49は、例えば、スクリュー軸45の外周面に軸方向に移動可能に外挿され、図示しない油圧シリンダやエアシリンダ等の加圧装置によってろ過体42側に向かって付勢されている。
図3は、固液分離装置16のろ過体42の一部省略斜視図であり、図面の見易さを確保するため、周方向に複数配列されて当該ろ過体42の外周面を形成するプレート50のうちの一部のみを図示したものである。図4は、固液分離装置16のろ過体42を正面側から見た構成図である。
図2〜図4に示すように、ろ過体42は、濃縮用スクリュー44の一端側(小径側)が挿通された支持板51と、濃縮用スクリュー44の他端側(大径側)が挿通された支持板52とを備える。これら支持板51,52間に、その周方向に沿って複数(図4では14枚の構成を例示)のプレート50が配列され、各プレート50によってろ過体42の外周面が形成されている。ろ過体42は、例えば水槽24の底面に固定された図示しない基台等によって支持板51,52が支持されることで、水槽24内の所定位置に固定・設置される。
プレート50は、その長手方向がスクリュー軸45の軸方向と平行して配置されると共に、支持板51,52の両内面にそれぞれ突設された回転軸53,54により、長手方向両端面が軸支されている。すなわち、各プレート50は、回転軸53,54を軸中心として回転自由な状態で支持板51,52間に設置されている。一対の回転軸53,54は、互いの軸方向が同軸上となる位置に設けられ、その軸方向はスクリュー軸45の軸方向と平行している。
このような各プレート50は、図3及び図4に示すように、隣接するプレート50の一部同士、つまり短辺方向で一端側となる側方部位同士が、周方向に順に積層するように配置される。この積層により、各プレート50の回転軸53,54を中心とする回転範囲が規制されると共に、隣接するプレート50間に形成される隙間(クリアランス)56が、当該ろ過体42の内外面間を連通し、処理液からの分離液(ろ液)を外部(水槽24内)に排出するろ過孔(孔部)56として機能する。つまり、ろ過体42は、その外周面がルーバー構造とされたルーバー型ろ過体となっている。各プレート50が回転可能であるため、ろ過孔56の開度は可変に構成されており、その開度(プレート50の積層方向での隙間56の高さ)は、例えば、0.5mm〜5mm程度の範囲に設定される。
プレート50は、例えば、ステンレス鋼等からなる金属製で長方形の薄板(例えば、板厚2mm程度)で形成され、図4に示すように、各プレート50は、運転時の濃縮用スクリュー44の回転方向A1で前方方向に向かって順に積層されつつ、支持板51,52の周方向に沿って1周するように配置されている。
図3及び図4に示すように、各プレート50の一端側の略中央には、ろ過体42の周方向を向いて開口するリング部材57が設置されている。各プレート50の各リング部材57に対し、ろ過体42の周方向に沿ってワイヤ58が順に挿通されており、ワイヤ58の両端部はまとめられて巻上ロール59に巻き掛けられている。巻上ロール59の回転方向を制御することにより、ワイヤ58を巻き上げ及び送り出しすることができる。ワイヤ58によって形成される円の直径を変化させることにより、各プレート50を回転軸53,54を中心として回転させ、その回転位相、つまりろ過孔56の開度を制御することができる。図3では、ワイヤ58を1本のみ用いた構成を例示しているが、リング部材57をプレート50の長手方向に複数設置し、ワイヤ58を複数本用いた構成としてもよい。また、ワイヤ58は、チェーン等によって代替してもよい。
なお、回転軸53,54によるプレート50の回転位相を位置決めする位置決め手段は、リング部材57、ワイヤ58及び巻上ロール59を備えた構成以外であっても勿論よく、例えば、各プレート50の回転軸53,54を中心とする回転位相を個別に制御可能なモータ等を用いてもよい。
図3及び図4に示すように、各プレート50間の互いに重なり合う部位の端部には、コの字形のスペーサ60が着脱可能に取り付けられている。スペーサ60は、隣接するプレート50の表面に当接することで隙間56(ろ過孔56)の高さを規定するものである。つまり、スペーサ60は、分離機26の運転時における活性汚泥からの押圧力やワイヤ58の巻き上げにより、積層された各プレート50の対抗面(表面)同士が当接・密着し、ろ過孔56が閉塞されることを防止するものである。スペーサ60は、プレート50に対して着脱可能に構成されているため、該スペーサ60を所望の高さを持つものに交換するだけで、ろ過孔56の開度を容易に規定・制御することができ、処理液の性状や処理量等に応じた最適な開度のろ過孔56を容易に形成することができる。なお、スペーサ60は、コの字形のもの以外であってもよく、例えばプレート50の内面又は外面に着脱可能なボルト等によって突起等を設けてもよく、さらには、プレート50の表面自体に凹凸を設けてもよい。また、スペーサ60の表面のプレート接触部分に弾性材質を使用してもよい。
各プレート50は回転軸53,54によって回転自由に軸支されており、処理液からの押圧力によって揺動動作し、さらにワイヤ58によって互いに連係されているため、スペーサ60を設置しなくてもろ過孔56は十分に確保可能であるが、スペーサ60を設けることにより、ろ過孔56をより確実に確保することができ、しかも所望の開度(開口寸法、最小開度)に容易に規制することが可能となる。
回転軸53は、支持板51内面の外縁近傍に突設され、複数(プレート50の設置枚数と同数)が周方向に沿って配列されたピン形状の固定軸である。同様に、回転軸54は、支持板52内面の外縁近傍に突設され、複数(プレート50の枚数と同数)が周方向に沿って配列されたピン形状の固定軸である。
回転軸53の先端が、プレート50の長手方向の一端面に形成された軸穴61に回転可能な状態で挿入され、回転軸54の先端が、プレート50の長手方向の他端面に形成された軸穴62に回転可能な状態で挿入されることで、プレート50は、各回転軸53,54によって支持板51,52の対向面間で回転自由に軸支されている。本実施形態では、回転軸53,54が挿入される軸穴61,62をプレート50の端面の中心に形成した構成を例示したが(図4等参照)、回転軸53,54は、プレート50の端面において、該端面の長手方向で中心よりも両端側に寄った位置に設けられてもよい。
回転軸53,54は、プレート50の各端面にそれぞれ固定された状態で、各支持板51,52に形成された図示しない軸穴に回転可能な状態で挿入される構成であってもよく、また、プレート50の各端面及び各支持板51,52の内面にそれぞれ図示しない軸穴を設け、回転軸53,54の両端がそれぞれの軸穴に回転可能な状態で挿入される構成等であってもよい。
図1及び図2に示すように、ろ過体42の内部へと処理液を投入する投入口42aは、支持板51に開口形成されおり、水槽24の側壁を貫通する流入路35が連結されることで水槽24の外部にある一次貯留槽34へと連通している。投入口42aは、ろ過体42内の上流側に処理液を投入可能なものであれば、その設置位置や構造は特に限定されず、例えば、ろ過体42の一端側の上方から水槽24の水面上にロート状に開口する構成としてもよい。
一方、排出口42bは、スクリュー軸45の下流側の拡径した外周面から連続するテーパコーン49の傾斜面49aと、支持板52の開口部52aとの間に形成された環状の隙間を管状のカバー部材63で塞ぐことで形成されており、カバー部材63の下部に、水槽24の側壁を貫通する汚泥排出路38が連結されることで水槽24の外部にある濃縮液タンク39へと連通している。排出口42bについても、ろ過体42内の下流側から濃縮汚泥を排出可能なものであれば、その設置位置や構造は特に限定されない。
次に、水槽24の構成について説明する。
図2に示すように、水槽24は、例えば直方体に形成されたプール状の容器であり、分離機26を水没可能な形状を有する。水槽24の一側壁の上部には、内部の液体を水槽24の外部へと連なる分離液樋37にオーバーフローによって流出(排出)させるための液体排出口(分離液排出口)36が開口形成されている。換言すれば、液体排出口36によって水槽24の水面Wが規定されており、貯留された処理液等の上澄み部分が、該液体排出口36からオーバーフローによって連続的に排出される。液体排出口36は、オーバーフローを用いた以外の構成であっても勿論よく、例えば、配管やポンプによって水槽24内の上澄み部分を排出する構成としてもよい。
水槽24の底部には、該底部に沈殿した汚泥(沈殿汚泥)を外部へと引き抜き、排出するための汚泥排出手段64が設けられている。汚泥排出手段64は、水槽24の底部に連通する配管64aと、該配管64aを介して汚泥を引き抜くためのポンプ64bとを備える。
2.2 脱水装置の説明
図5は、図1に示す脱水装置18の全体構成を示す側面図であり、図6は、図5に示す脱水装置18を構成する二次濃縮機30の平面図である。脱水装置18は、上段の二次濃縮機30で汚泥(本実施形態では、固液分離装置16からの濃縮汚泥)を重力ろ過した後、下段の脱水機32で加圧脱水することにより脱水ケーキとして排出する装置である。
図5に示すように、脱水装置18は、無端軌道で走行するろ布ベルト(ろ布)28の上面28aで汚泥を重力ろ過(重力濃縮)するろ過部70を備えた二次濃縮機30と、二次濃縮機30で濃縮された汚泥を一対のろ布ベルト(ベルト)71,72間で挟持しながら搬送し、加圧脱水する脱水機32とを備える。二次濃縮機30の直前には、当該脱水装置18の前段設備である固液分離装置16からライン40bを経て搬送された汚泥中に、高分子凝集剤(第1の薬剤)F1を混合するための凝集混和槽73が設けられている。高分子凝集剤F1としては、一般に公知のものを用いればよく、例えば、アニオン性高分子凝集剤やカチオン性高分子凝集剤が挙げられる。
2.2.1 二次濃縮機の説明
先ず、二次濃縮機30について説明する。
図5及び図6に示すように、二次濃縮機30は、凝集混和槽73からろ布ベルト28の上面28aに投入された汚泥を重力ろ過するろ過部70と、ろ過部70で重力ろ過された汚泥を1次脱水ローラ74によって加圧脱水して下段の脱水機32へと排出する加圧部75とを備える。ろ過部70の途中には、ろ布ベルト28による搬送方向と交差(図6では直交)する方向に汚泥を移動させる移動機構76が設けられている。
ろ過部70は、複数のローラ77a,77b,77c,77d,77eに巻き掛けられ、一方向に周回駆動される無端状のろ布ベルト28の上面(外周面)28aで構成され、ローラ77a,77e間に張られたろ布ベルト28の上面28aに汚泥が載置されることで、該汚泥に含まれる水分を重力によってろ過分離する手段である。
ろ布ベルト28は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト28は、十分な張力で各ローラ77a〜77eに巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図5中に示す矢印の方向(図5では反時計方向)に走行可能である。すなわち、図5及び図6において、右側(上流側)から左側(下流側)に向かう方向が二次濃縮機30での汚泥の搬送方向となる。
従って、ろ過部70の上流位置に凝集混和槽73の出口ポート73aから投入された汚泥は、ろ布ベルト28によって下流側へと搬送されつつ、水分のみが重力によってろ布ベルト28を透過してろ過脱水され、ろ過された水分(分離液、ろ液)は、ろ液受皿78a,78bによって回収される(図5参照)。
ろ過部70を構成するろ布ベルト28の上面28aには、複数本(図6では、移動機構76の前後に合計12本の構成を例示)の棒体79が立設されている。棒体79は、ろ布ベルト28上を搬送される汚泥に当接して分散させ、その水切りを促進するための障害物であり、その設置位置や本数、形状等は、適宜変更可能である。なお、移動用スクリュー80a,80bの上流側に設置されている棒体79については、その一部を1次脱水ローラ74と同様なローラ(図示せず)に置き換えてもよい。その場合、該ローラとろ布ベルト28の間には若干の隙間を設けるとよく、該ローラは脱水用としてではなく簡易的な水切り用として用いられる。該ローラは複数あっても構わない。
ろ過部70における移動機構76の上流側には、搬送される汚泥に対して鉄系の無機凝集剤(第2の薬剤)F2を添加する第2薬注装置(薬注装置、薬剤添加装置)81が設けられている。第2薬注装置81は、無機凝集剤F2を貯留する薬品タンク81aと、薬品タンク81aの出口から2方弁81bで分岐した第1ライン81c及び第2ライン81dとを備える。無機凝集剤F2としては、一般に公知のものを用いればよく、例えば、鉄系やアルミ系のものが挙げられる。
図6に示すように、本実施形態では、第1ライン81cをさらに並列に2本に分岐させ、これら2本の第1ライン81c,81cを移動機構76の上流位置でろ布ベルト28の幅方向に渡って延在させることにより、ろ布ベルト28の両側部近傍にそれぞれ添加ノズル81eを設けている。勿論、第1ライン81cを分岐させずに1本のままで用いてもよい。図5中に破線で示すように、第2ライン81dは、凝集混和槽73へと投入される汚泥に無機凝集剤F2を添加可能に配設されており、図示はしないが第1ライン81cの添加ノズル81eと同様な構成でよい。本実施形態の通常の運転状態では、図示しない制御装置の制御下に、2方弁81bは第1ライン81c側に切換制御されている。
一方、上記した高分子凝集剤F1は、本実施形態の通常の運転状態では、第1薬注装置(薬剤添加装置)82によって凝集混和槽73に投入される直前の汚泥に添加される。第1薬注装置82は、高分子凝集剤F1を貯留する薬品タンク82aと、薬品タンク82aの出口から2方弁82bで分岐した第1ライン82c及び第2ライン82dとを備える。
図5に示すように、第1ライン82cは、凝集混和槽73へと投入される汚泥に対し、第2薬注装置81の第2ライン81dの下流位置で高分子凝集剤F1を添加可能に配設されている。図6中に破線で示すように、第2ライン82dは、第2薬注装置81の第1ライン81cの上流位置でろ布ベルト28の幅方向に渡って延在し、ろ布ベルト28の両側部近傍にそれぞれ添加ノズル82eが設けられている。本実施形態の通常の運転状態では、図示しない制御装置の制御下に、2方弁82bは第1ライン82c側に切換制御されている。
通常の運転時、第1薬注装置82からの高分子凝集剤F1が添加された汚泥が導入される凝集混和槽73は、汚泥が貯留されるタンク73bと、タンク73b内の汚泥をモータ73cを駆動源として攪拌する攪拌羽根73dとを備える。攪拌羽根73dによってタンク73b内で高分子凝集剤F1が十分に混合された汚泥は、出口ポート73aからろ布ベルト28の上面28aに投入される。
次に、このようなろ過部70の途中に設けられる移動機構76は、ろ布ベルト28上を搬送される汚泥を交差方向に移動させつつ、その幅方向寸法を縮小すると同時に汚泥高さを高くすることで圧密し、第2薬注装置81によって添加された無機凝集剤F2を十分に混練する。これにより、二次濃縮機30及び脱水機32での汚泥のろ過効率を向上させ、汚泥濃度を高めることを可能とする。
移動機構(スクリューコンベア)76は、ろ布ベルト28の上面28aの上流側全面に向かって開口して汚泥を受け入れ可能となっており、ろ布ベルト28による搬送方向と直交する方向に汚泥を移動させる一対の移動用スクリュー80a,80bと、移動用スクリュー80a,80bの下流側に近接配置され、ろ布ベルト28の幅方向両端側にそれぞれ起立配置された一対の案内板84a,84bとを備える。移動機構76では、案内板84a,84b間の隙間(各移動用スクリュー80a,80b間の隙間と略同一)が、当該移動機構76から下流側へと汚泥を排出するための通路(汚泥通路85)となっている。
移動用スクリュー80a,80bは、ろ布ベルト28による汚泥の搬送方向と直交する方向に延びて該ろ布ベルト28を幅方向に渡るスクリュー軸86と、スクリュー軸86の中央付近を除く両側方の外周面にそれぞれらせん状に設けられたスクリュー羽根87a,87bとを有する。
スクリュー軸86は、図示しない軸受によって両端部がろ布ベルト28の幅方向外側位置で軸支され、例えば、ろ布ベルト28を巻き掛けたローラ77aに対し、チェーンやベルト等の可撓性動力伝達部材88(図5中の2点鎖線参照)によって連係されることで、ろ布ベルト28の走行に伴って回転可能である。ろ布ベルト28の走行動作とスクリュー軸86の回転動作とを同期させる構成とすると、可撓性動力伝達部材88を巻き掛ける各軸の径を適宜設計し又は図示しない減速装置等を搭載することにより、ろ布ベルト28による汚泥の搬送速度と、スクリュー軸86の回転速度(つまり、移動用スクリュー80a,80bによる汚泥の移動速度)との関係を容易に設定・制御することができる。勿論、スクリュー軸86を独自に回転駆動するモータ等の駆動源を設けてもよい。
各移動用スクリュー80a,80bを構成するスクリュー羽根87a,87bは、ろ布ベルト28の幅方向両側方に寄った位置でスクリュー軸86の外周面にそれぞれ設けられ、互いの先端同士が案内板84a,84b間の隙間と同程度の隙間を介して対向している。各スクリュー羽根87a,87bのらせんの方向は、ろ布ベルト28の中心線で対照形状(逆向き)となっており、各移動用スクリュー80a,80bによる汚泥の移動方向は、それぞれ反対方向に設定されている。このため、各移動用スクリュー80a,80bは、互いにろ布ベルト28の幅方向で外側から内側(中央)に向かって汚泥を移動させ、その先端同士が前記隙間を介して離間した中央部では、両外側から移動された汚泥同士が互いに押し合って圧密され、無機凝集剤F2が汚泥中で十分に混練される。各移動用スクリュー80a,80bは、共通のスクリュー軸86を用いた構成ではなく、それぞれ個別のスクリュー軸を用いた構成としてもよい。
本実施形態の場合、スクリュー軸86の中央部、つまり各移動用スクリュー80a,80b間で露出したスクリュー軸86の外周面に、ろ布ベルト28の幅方向中央側を搬送されてきた汚泥と、一対の移動用スクリュー80a,80bによって中央に圧密された汚泥とを下流側へと円滑に排出するためのパドル89が複数枚設けられている。パドル89は、例えば、スクリュー軸86の外周面に周方向に沿って数枚一組で設けられた羽根車である。
案内板84a,84bは、移動用スクリュー80a,80bの下流側であって該移動用スクリュー80a,80bと近接する位置で起立した壁部90と、壁部90の下端をろ布ベルト28による汚泥の搬送方向で上流側へと湾曲させて突出させることで移動用スクリュー80a,80bの下方略半分を覆う底部91とを有する。各案内板84a,84bの中央側の端部には、ろ布ベルト28による汚泥の搬送方向に沿って下流側へと延びた一対の通路板92a,92bがそれぞれ設けられている。各案内板84a,84b間の隙間は、各移動用スクリュー80a,80bによる汚泥の移動方向で前方側に位置しており、この隙間が下流側へと汚泥を排出するための汚泥通路85を形成している。
壁部90は、移動用スクリュー80a,80bの高さと同程度の高さに設定される板状部材であり、その高さは適宜変更可能である。底部91は、図5に示すように、壁部90の下端から搬送方向で上流側に向かって、移動用スクリュー80a,80bの略中心となる位置まで突出形成される板状部材であり、その長さは適宜変更可能である。案内板84a,84bを構成する壁部90や底部91には、微細な孔部を多数形成したスクリーン等を用いてもよい。
各通路板92a,92bは、スクリュー羽根87a,87b間や案内板84a,84b間に形成される隙間と同幅の隙間を挟んで互いに対面するように起立設置されている。通路板92a,92bは、移動用スクリュー80a,80bによってろ布ベルト28の中央付近に圧密された汚泥を、下流側への円滑に排出するための通路を形成する壁部材であり、壁部90と同程度の高さに設定される。なお、実際上、移動用スクリュー80a,80bによって中央に圧密された汚泥は、ろ布ベルト28の走行により、一対の案内板84a,84b(壁部90)間に形成された汚泥通路85から下流側へと搬送されるため、通路板92a,92bは省略することもできるが、通路板92a,92bを設けると、中央に圧密され、高さを増した汚泥を下流側へとより円滑に搬送することができる。
加圧部75は、ろ布ベルト28に対してその外周面が圧接配置される1次脱水ローラ74を備える。ろ過部70でろ過濃縮されると共に、移動機構76で無機凝集剤F2が十分に混練され、圧密によって高さを増した汚泥は、加圧部75で1次脱水ローラ74とろ布ベルト28との間で加圧脱水された後、加圧部75の出口(二次濃縮機30の出口)から排出・落下され、次工程の脱水機32に投入される。加圧部75は、移動機構76で圧密されて中央に集合させられた汚泥を潰し、ろ布ベルト28の幅方向に再び拡大させた状態で脱水機32に送り出すことで、該脱水機32に投入される汚泥の脱水面積を拡大させ、ここでの脱水効率を向上させる機能も有する。
図5に示すように、加圧部75と、その下方の脱水機32との間には、傾斜板93が配設されている。傾斜板93は、二次濃縮機30から排出・落下した汚泥を、脱水機32の投入位置となるろ布ベルト71上へと円滑に導くためのガイドである。
2.2.1 脱水機の説明
次に、脱水機32について説明する。
図5に示すように、脱水機32は、二次濃縮機30の出口から傾斜板93を介して投入された汚泥を一対のろ布ベルト71,72間で搬送しながら加圧脱水する脱水部94と、脱水部94で脱水された汚泥をさらに加圧し圧搾する圧搾部95とを備え、一般的なベルトプレス型脱水機と略同様な構成である。
下側のろ布ベルト71は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト71は、十分な張力で複数のローラ96a,96b,96c,96d,96e,96f,96g,96h,96i,96j,96k,96l,96m,96n間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図5中に示す矢印の方向(図5では時計方向)に走行可能である。
略同様に、上側のろ布ベルト72についても、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト72は、十分な張力で複数のローラ96o,96b,96c,96d,96e,96f,96g,96h,96i,96j,96p,96q間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図5中に示す矢印の方向(図5では反時計方向)に走行可能である。
ローラ96b〜96i間での下のろ布ベルト71と上のろ布ベルト72との外周面(表面)同士を上下に蛇行させながら当接(又は近接)配置した部分が、脱水部94を構成しており、この間で汚泥は十分に加圧脱水される。また、ローラ96j,96p間での下のろ布ベルト71と上のろ布ベルト72との外周面(表面)同士を当接(又は近接)配置した部分が、圧搾部95を構成しており、圧搾ローラとなるローラ96j,96p間で汚泥はさらに加圧されて圧搾され、所望の水分率の脱水ケーキとなって外部に排出される。
脱水機32の入口付近には、二次濃縮機30の出口からろ布ベルト71上へと落下・投入された汚泥の高さをある程度均一化させ、ろ布ベルト71,72間に形成された脱水部94の入口94aへと円滑に導入するための均し板97が設けられている。均し板97は、二次濃縮機30からろ布ベルト71上への汚泥の落下位置のやや下流側上方に配置され、入口94aに向かって次第に下方に傾斜したプレート部材であり、汚泥を下方に押さえつける方向に付勢された板ばね部材で形成してもよい。
脱水機32の出口には、ローラ96jの外周面を走行するろ布ベルト71に近接するように、後端下がりの傾斜姿勢で排出トレイ98が設置されている。脱水ケーキは排出トレイ98上を滑りながら排出される。排出トレイ98の上方には、ローラ96pの外周面を走行するろ布ベルト72に近接するように、後端上がりの傾斜姿勢でスクレバ(掻き取り板)99が設置されている。ローラ96j,96p間から排出トレイ98へと排出されず、上のろ布ベルト72に付着したままの汚泥は、スクレバ99によって掻き取られて排出トレイ98へと排出される。なお、下のろ布ベルト71に付着したままの汚泥は、排出トレイ98によって掻き取られ、そのまま排出トレイ98上を滑り落ちる。
このような脱水機32では、二次濃縮機30からろ布ベルト71上に投入された汚泥は、入口94aから脱水部94を構成するろ布ベルト71,72間に引き込まれて挟持・加圧された状態で下流側へと搬送される。この間、水分のみが両ろ布ベルト71,72による加圧力によってろ布ベルト71を透過してろ過脱水され、さらに圧搾部95で圧搾された後、脱水ケーキとして排出トレイ98上に排出される。これら脱水部94及び圧搾部95でろ過された水分は、ろ布ベルト71を透過して落下し、ろ液受皿100によって回収される。
図5に示すように、このような脱水装置18では、従来より一般的に用いられているベルトプレス型脱水機を用いたシステムと異なり、二次濃縮機30のろ布ベルト28と脱水機32のろ布ベルト71,72とを兼用とせず、それぞれを独立した無端軌道で走行させる構成としている。このため、前段の二次濃縮機30のろ布ベルト28の走行速度と、後段の脱水機32のろ布ベルト71,72の走行速度とを異なる速度に容易に制御することができる。この場合、二次濃縮機30のろ布ベルト28の走行速度よりも、脱水機32のろ布ベルト71,72の走行速度を遅く設定制御することが好ましい。すなわち、脱水装置18では、二次濃縮機30に移動機構76を搭載しているため、従来の濃縮装置に比べて脱水率が大幅に高まっており、その結果、脱水機32に投入される汚泥の量(ケーキ量)を大幅に減少させることができ、脱水機32でのろ布ベルト71,72の走行速度を遅くしても、投入される汚泥全量を十分に脱水処理することが可能となっている。そして、脱水機32でのろ布ベルト71,72の走行速度を遅くすることにより、その脱水時にろ布ベルト71,72間を通る時間を長くすることができ、脱水機32をコンパクトな構成としつつも、高い脱水性能を得ることができる。
3. 汚泥処理システムの動作及び作用効果の説明
次に、以上のように構成される汚泥処理システム10の動作及び作用効果について、汚泥処理システム10を図1に示すように処理施設12に適用した場合を例示して説明する。
処理施設12では、図1に示すように、処理対象となる有機性排水が所定の下水道管等から最初沈殿池20を経て生物反応槽14へと供給され、この生物反応槽14で活性汚泥処理すると共に、汚泥処理システム10で汚泥の濃縮・脱水を行う。
この際、本実施形態に係る汚泥処理システム10では、固液分離装置16を生物反応槽14の内部に少なくともその一部が水没するように設置している。このため、生物反応槽14内の活性汚泥を含む処理液は、処理液流入口33からオーバーフローによって一次貯留槽34に流入し、そこから流入路35及び投入口42aを介して固液分離装置16のろ過体42内へと導入される。
3.1 固液分離装置の動作の説明
先ず、固液分離装置16での汚泥の固液分離処理動作を具体的に説明する。
図7は、ろ過体42を構成する各プレート50の動作説明図であり、図7(A)は、スクリュープレス型分離機26が停止状態にある場合の各プレート50の状態の一例を示す説明図であり、図7(B)は、スクリュープレス型分離機26が運転状態にある場合の各プレート50の状態の一例を示す説明図である。
なお、固液分離装置16では、運転開始前に水槽24内に活性汚泥を含む処理液又は水を注入し、分離機26の全体が水没する程度まで水槽24内に処理液が貯留されているものとする。
固液分離装置16では、分離機26の運転が開始されると、駆動装置48によって濃縮用スクリュー44が回転駆動されると共に、流入路35から投入口42aを介して生物反応槽14からの活性汚泥を含む処理液がろ過体42の内部に投入される。ろ過体42内に投入された処理液は、回転する濃縮用スクリュー44のスクリュー羽根46によって回転力を受けつつ、ろ過体42の内周面、つまり周方向に並んだ各プレート50の内面に押圧されることで、排出口42bに向かって搬送され、同時にろ過体42によってろ過されて固液分離される。
ここで、固液分離装置16では、分離機26(ろ過体42)を水槽24内で水没させているため、ろ過体42の内外が処理液や水で満たされている。従って、図4に示すように、ろ過体42内に投入された活性汚泥(処理液)W1は、ろ過体42の内外を満たすように予め貯留された処理液(水)W2中で浮遊するようにろ過体42内に滞留することになり、この状態で濃縮用スクリュー44が駆動されるため、ろ過体42内の処理液を円滑に搬送しながら固液分離することができる。なお、一般的な活性汚泥(を含む処理液)の比重は、1.05程度であることから、上記のように水槽24内に最初に処理液ではなく水を貯留させておいたとしても、ろ過体42内に活性汚泥を滞留させておくことは十分可能である。
一方、従来一般的に用いられているスクリュープレス型分離機(図示せず)のように、固液分離を気中で行う構成の場合、活性汚泥は水と同様な緩い状態にあることから、投入するそばからろ過孔を通して漏れ出してしまい、スクリューで搬送及び固液分離することは不可能である。これに対して、当該固液分離装置16では、液体中に分離機26を水没させて用いることにより、ろ過体42内に投入された活性汚泥が投入するそばからろ過孔56から漏れ出すことを防止でき、濃縮用スクリュー44によって円滑に搬送し固液分離することが可能となっている。
このような固液分離運転の運転開始前、分離機26では、巻上ロール59を駆動してワイヤ58を送り出しておくことにより、各プレート50間の隙間56(ろ過孔56)は、例えば、図7(A)に示すように、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。
一方、運転時には、巻上ロール59を逆方向に駆動してワイヤ58を巻き上げておくことにより、各プレート50間の隙間56(ろ過孔56)を、例えば、図7(B)に示すように、回転軸53,54よりも処理液の移動方向A2で上流側の上流側部位50bに設けられたスペーサ60が、重なり合って隣接するプレート50の下流側部位50aの外面と当接する開度となるように規制する。
このように開度が規制されたろ過孔56は、図7(B)に示すように、ろ過体42の内側から外側に向かう方向で、濃縮用スクリュー44の回転方向A1(処理液の移動方向A2)と反対方向を向いて開口している。このため、ろ過孔56に処理液に含まれる固形分が詰まることや、該ろ過孔56から前記固形分が外部に排出されることを抑制しつつ、処理液がプレート50の内面に押圧力Pで押し付けられる。
従って、ろ過体42の内容積の減少によって圧搾された処理液中の液体分である分離液は、ろ過孔56から水槽24内へと円滑に流出されて貯留され(図7(B)中の矢印L参照)、固形分である濃縮汚泥は、排出口42bから汚泥排出路38を介して濃縮液タンク39へと排出される。この際、ろ過体42のろ過孔56から該ろ過体42外へと流出され、水槽24内に貯留された分離液は、液体排出口36からオーバーフローによって連続的に分離液樋37へと排水されるため、水槽24内の液体は次第に清浄化され、この分離液中の固形分や予め水槽24内に投入された処理液中の固形分は、水槽24の底部に沈殿し、沈殿汚泥として汚泥排出手段56によって引き抜き処理される。
所定量の処理液の固液分離運転が完了し、濃縮用スクリュー44の回転を停止した場合には、再び巻上ロール59を駆動してワイヤ58を送り出し、ろ過孔56の開度を拡大させる(図7(A)参照)。これにより、運転時に、仮にろ過孔56に固形物等が詰まった場合であっても、ろ過孔56の開度の拡大によって該固形物は容易に該ろ過孔56から脱落するため、従来のスクリーンのような目詰まりを除去するメンテナンス作業をなくすことができ、又は大幅に軽減することができる。このメンテナンス時、濃縮用スクリュー44を逆回転させると、各プレート50が逆方向に回転され、ろ過孔56の開度が変動するため、詰まった固形物を一層確実に落とすことができる。
当該固液分離装置16では、運転時に、ろ過孔56への固形分等の目詰まりが生じた場合には、該運転を一時停止し、内部に処理液が滞留している状態のままで、濃縮用スクリュー44の回転停止又は逆回転を行うことで、詰まった固形分を容易に除去し、すぐに脱水運転を再開することも可能である。換言すれば、例えば1日に1回等、所定のタイミングで濃縮用スクリュー44を回転停止又は逆回転させると、ろ過孔56での目詰まりを定期的に除去することができるため、実質的にメンテナンスフリーな状態で当該固液分離装置16を稼動させることができる。
分離機26では、ワイヤ58やこれを挿通させるリング部材57等を省略することも可能である。この場合、運転開始前では、各プレート50に外力が作用していないことから、各プレート50の回転軸53,54を中心とする回転位相は自由位置にある。このため、各プレート50間の隙間56(ろ過孔56)は、例えば、図7(A)に示すように、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。
一方、運転が開始されると、図7(B)に示すように、スクリュー羽根46が回転方向A1に回転されるのに伴い、らせん状のスクリュー羽根46からの回転力を受けて、処理液も回転方向A1と同一の移動方向A2に向かって濃縮用スクリュー44の回転速度よりも多少遅い速度で移動しつつ、ろ過体42の直径方向外方へと向かう方向の押圧力Pでプレート50内面に押し付けられる。この際、処理液は、移動方向A2の移動力と押圧力Pとを受けて、プレート50の内面のうち、回転軸53,54よりも移動方向A2で下流側に位置した下流側部位50aの内面を強く加圧し、該プレート50を図7(B)で反時計方向に回転させる。
つまり、運転中には、全てのプレート50が処理液によって同一方向の回転力を受けるため、各プレート50は、回転軸53,54よりも処理液の移動方向A2で上流側の上流側部位50bに設けられたスペーサ60が、重なり合って隣接するプレート50の下流側部位50aの外面と当接し、該スペーサ60の高さ分の開度に一律に規定されたろ過孔56(隙間56)が複数形成されることになる。
3.2 脱水装置の動作の説明
次に、脱水装置18での汚泥の濃縮・脱水処理動作を具体的に説明する。
処理施設12では、汚泥処理システム10を構成する固液分離装置16で固液分離された濃縮汚泥は、返送汚泥ライン40からライン40bを経て、脱水装置18の二次濃縮機30へと導入される。
ライン40bから脱水装置18へと供給された濃縮汚泥は、先ず、第1薬注装置82の第1ライン82cによって所定の高分子凝集剤F1が添加された状態で凝集混和槽73に導入される。凝集混和槽73のタンク73b内に導入された汚泥は、攪拌羽根73dによって十分に攪拌・混合されてフロック化し、出口ポート73aからろ布ベルト28の上面28aの上流側、つまり二次濃縮機30の入口へと投入される。
二次濃縮機30に投入された汚泥は、走行するろ布ベルト28によってろ過部70を搬送され、途中で棒体79による水切り促進作用を受けながら重力ろ過(重力脱水)される。この間、図6及び図8に示すように、ろ布ベルト28の幅方向で両側方を搬送される汚泥に対し、第2薬注装置81の添加ノズル81eから所定の無機凝集剤F2が滴下されつつ、該汚泥は移動機構76に到達する。
図8に示すように、移動機構76では、ろ布ベルト28の幅方向で両側方を搬送され、無機凝集剤F2が搬送方向に連続する帯状に添加された汚泥は、各移動用スクリュー80a,80bの回転に巻き込まれると、案内板84a,84bによって案内されつつ、中央部に向かって押し込まれながら移動する。この際、回転するスクリュー羽根87a,87bによって一定間隔で切断されつつ移動される小さな汚泥の各塊には、それぞれ無機凝集剤F2が付着している。
無機凝集剤F2を伴いながら移動用スクリュー80a,80bで移動された汚泥は、ろ布ベルト28の中央部(中心部)を搬送されてきた汚泥と混合される。同時に、各移動用スクリュー80a,80bによる押出力によってろ布ベルト28の中央部で汚泥同士が押し潰され合って圧密される。これにより、汚泥は、その幅方向寸法が縮小して高さ(嵩)が増加した状態で、パドル89の回転力も付与されながら汚泥通路85を通って通路板92a,92b間から下流側へと排出され、この間にも、ろ布ベルト28による重力ろ過が継続されて所望の濃縮濃度まで濃縮される。なお、移動用スクリュー80a,80bの前後位置においてもろ布ベルト28が走行しているため、パドル89を省略した構成としても、移動用スクリュー80a,80bによって圧密された汚泥を、案内板84a,84b間の開口部である汚泥通路85から下流側へと円滑に排出することは勿論可能である。
このような二次濃縮機30による濃縮過程において、例えば、図5及び図6に示すように、ろ過部70の入口側にろ布ベルト28の幅方向で幅W1に広がって高さh1で投入された汚泥は、移動機構76から排出される際には、幅W1より狭い幅W2に縮小されるため、その平面視での表面積の低下分だけ高さ方向寸法が増して高さh2となり、十分に圧密された状態となっている。このため、汚泥の濃縮濃度は、一般的な濃縮装置で通常の重力ろ過のみを受けた場合に比べて大幅に高まる。また、移動機構76より下流側では汚泥高さが増しているため、その自重によって重力ろ過の効率が一層向上し、しかも無機凝集剤F2が移動用スクリュー80a,80bによって十分に混練されている。従って、移動機構76までの時点で十分に脱水され濃縮された汚泥であっても、さらに重力ろ過による濃縮を促進することができる。しかも、移動用スクリュー80a,80bで汚泥を中央部へと移動させる際に、案内板84a,84bとスクリュー羽根87a,87bの回転力とによって汚泥が移動しながら圧搾されるため、汚泥の濃縮がさらに高まることになる。この際、移動用スクリュー80a,80bによって圧搾された汚泥の水分は、壁部90から底部91を伝って流れ、ろ布ベルト28によってろ過される。
移動機構76によって圧密された汚泥は、その下流側の棒体79による水切り促進作用を受けつつ、さらに下流側へと搬送されて加圧部75に導入される。加圧部75に導入された汚泥は、1次脱水ローラ74とろ布ベルト28との間で挟持加圧されることで幅W2から幅W3へと広がり、高さh2より低い高さh3となりながら加圧脱水されて排出・落下し、傾斜板93上を滑って脱水機32に投入される。移動機構76で一旦圧密された汚泥を再び加圧部75で扁平に広げることにより、後工程である脱水機32での汚泥の脱水面積を拡大し、その脱水効率を向上させることができる。
脱水機32の入口側に落下・投入された汚泥は、走行するろ布ベルト71で搬送されつつ均し板97で均された後、先ず、入口94aから脱水部94へと導入される。脱水部94において、汚泥は、蛇行する上下一対のろ布ベルト71,72間で挟持・加圧されて効率よく脱水されながら搬送され、次に圧搾部95に導入される。圧搾部95において、汚泥は、一対のろ布ベルト71,72間に挟持されつつ、圧搾ローラとなるローラ96j,96p間で強く加圧されて圧搾されて所望の水分率の脱水ケーキとなり、排出トレイ98からシステム外部へと排出される。
以上のように、本実施形態に係る汚泥処理システム10によれば、生物反応槽14で活性汚泥処理された有機性排水を固液分離する固液分離装置16と、固液分離装置16から排出される濃縮汚泥を脱水処理する脱水装置18とを備える。そして、固液分離装置16は、濃縮用スクリュー44と、濃縮用スクリュー44の周囲にプレート50を周方向に積層して形成されるろ過体42とを備え、脱水装置18は、ろ布ベルト28の上面で固液分離装置16からの濃縮汚泥を搬送しながらさらに濃縮する二次濃縮機30と、二次濃縮機30から排出される汚泥を加圧脱水する脱水機32とを備える。
従って、当該汚泥処理システム10では、生物反応槽14からの活性汚泥を含む処理液を、濃縮用スクリュー44とプレート50を周方向に積層して形成したろ過体42とを備えた固液分離装置16によって固液分離し、続いて、二次濃縮機30と脱水機32とを備えた脱水装置18によってさらに濃縮・脱水することができる。このため、生物反応槽14の後段に設けられる最終沈殿池21へと導入される処理液中の汚泥濃度を低減することができ、該最終沈殿池21での処理負荷を低減することができる。さらに、従来一般的な下水処理設備のように、最終沈殿池からの汚泥を濃縮する大型の濃縮装置や脱水装置が不要となるため、設備を省スペース化して薬品添加量を低減しつつ、排出されるケーキの含水率を大幅に低下させることができる。
特に、固液分離装置16では、濃縮用スクリュー44の周囲にプレート50を周方向に積層することでろ過体42を形成しているため、ろ過孔56での汚泥の目詰まり等を大幅に低減し、汚泥の濃縮濃度を大幅に高めることができる。しかも、固液分離装置16の脱水装置18には、ろ布ベルト28の上面で汚泥を搬送しながら濃縮する二次濃縮機30と、二次濃縮機30から排出される汚泥を加圧脱水する脱水機32とを備えたため、固液分離装置16で十分に濃縮された汚泥であってもさらに濃縮・脱水することができ、最終的な脱水ケーキの含水率を大きく低下させることができる。
汚泥処理システム10では、固液分離装置16は、生物反応槽14の内部に少なくとも一部が水没するように設置され、ろ過体42によって分離されたろ液を貯留可能な水槽24を備え、濃縮用スクリュー44及びろ過体42の少なくとも一部を水槽24の内部で水没するように設置している。このため、活性汚泥を含む処理液をろ過体42内の液中で浮遊させながら固液分離することができる。従って、処理される処理液がろ過体42内への投入後すぐにろ過孔56から漏れ出してしまうことを防止して、スクリュープレス型分離機26によって円滑に固液分離することができる。しかも、固液分離装置16を生物反応槽14内に設置しているため、その設置スペースが実質的に不要となり、汚泥の処理効率も高い。なお、上記では、図2に示すように、分離機26(ろ過体42)の全体を水槽24内で水没させた構成からなる固液分離装置16を例示したが、分離機26(ろ過体42)は、必ずしもその全体を水没させなくてもよく、例えば、投入口42aを含む一部のみを水槽24内で水没させた構成としてもよい。
脱水装置18において、二次濃縮機30は、第1の薬剤である高分子凝集剤F1が添加された汚泥を重力ろ過するろ過部70と、ろ過部70を搬送される汚泥に第2の薬剤である無機凝集剤F2を添加する第2薬注装置81と、無機凝集剤F2が添加された汚泥をろ布ベルト28による搬送方向と交差する方向に移動させる移動機構76とを有する。このため、前段の固液分離装置16で濃縮された後、第1の薬剤が添加され、ろ過部70で重力ろ過されることである程度濃縮された汚泥に第2の薬剤を添加した後、移動機構76でろ布ベルト28の搬送方向と交差する方向に汚泥を移動させることにより、この移動時に汚泥を第2の薬剤と十分に混練し、さらに圧密することができる。特に、汚泥中への適正添加量が少量に設定される鉄系の無機凝集剤F2を用いた場合であっても、該少量の無機凝集剤F2を容易に且つ十分に汚泥中に混ぜ込むことができる。これにより、二次濃縮機30での汚泥の濃縮・脱水率を向上させ、濃縮濃度を一層高めることができる。
しかも、第1の薬剤を添加して濃縮した後に、第2の薬剤を添加する第2薬注装置81と、この第2の薬剤を混練する移動機構76とを二次濃縮機30に設け、その後段に汚泥を加圧脱水する脱水機32を設けたことにより、高分子凝集剤F1や無機凝集剤F2の使用量を少なくしながらも、コンパクトな構成で汚泥の含水率を大幅に低下させ、汚泥の濃縮濃度をさらに高めることが可能となっている。
この場合、移動機構76は、ろ布ベルト28による汚泥の搬送方向と交差する方向に延び、その回転によって汚泥を移動させる移動用スクリュー80a,80bを有し、ろ布ベルト28による汚泥の搬送方向で移動用スクリュー80a,80bの下流側であって該移動用スクリュー80a,80bと近接する位置に、移動用スクリュー80a,80bによる汚泥の移動を案内する案内板84a,84bを起立させている。従って、案内板84a,84bでせき止めながら汚泥を移動用スクリュー80a,80bによって移動させることができ、汚泥を圧搾し、その濃縮濃度を一層高めることができる。
汚泥処理システム10において、固液分離装置16は、複数のプレート50を濃縮用スクリュー44の軸方向と平行する回転軸53,54によって軸支した状態で周方向に順に積層することにより、該積層した各プレート50間の隙間によってろ過孔56を形成したろ過体42を有し、該ろ過体42の内部に回転可能に設けられた濃縮用スクリュー44の回転によって投入口42aからろ過体42の内部へと投入された有機性排水を搬送すると同時に固液分離するスクリュープレス型分離機26とを備える。これにより、プレート50を回転軸53,54によって回転させることで、ろ過孔56の開度を可変とすることができるため、運転時にはろ過孔56の開度を狭くすることで、処理液中の固形分を通さず、分離液のみを円滑に流出させることができる一方、運転停止時やメンテナンス時にはろ過孔56の開度を広くすることで、該ろ過孔56に詰まった固形分等を容易に除去することができ、メンテナンス性が向上し、オーバーホール費用等も低減することができる。
汚泥処理システム10では、脱水機32として、上下一対のろ布ベルト71,72間で二次濃縮機30から排出された汚泥を加圧脱水するベルトプレス型脱水機を用いている。このため、二次濃縮機30で濃縮された汚泥の濃度を一層確実に高めることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。