JP2014153396A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成で発熱体の長手方向端部の発熱効率を向上させて、端部の発熱量が中央部に対して小さくならない定着装置を提供する。
【解決手段】発熱層を有する回転体51と、前記発熱層を電磁誘導加熱する励磁コイル62と、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記回転体に導く磁性体コア63,64,65と、前記励磁コイル及び前記磁性体コアを保持する保持体61とを有する定着装置40において、前記励磁コイルの長手方向端部の折り返し部に、2つ以上のアーチ形コア65が配置されることで解決される。
【選択図】図4

Description

本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ又はそれらの複合機等の画像形成装置に用いられる未定着トナー画像を定着させる定着装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、装置の立ち上がり時間を低減して省エネルギー化することを目的として、電磁誘導加熱方式の定着装置を用いたものが広く知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1等において、電磁誘導加熱方式の定着装置は、発熱体としての支持ローラ(加熱ローラ)、定着補助ローラ(定着ローラ)、支持ローラと定着補助ローラとによって張架された定着ベルト、支持ローラに定着ベルトを介して対向する誘導加熱部(誘導加熱手段)、定着補助ローラに定着ベルトを介して当接する加圧ローラ、等で構成される。誘導加熱部は、長手方向に巻き回されたコイル部(励磁コイル)や、コイル部に対向するコア(励磁コイルコア)等で構成される。
定着ベルトは誘導加熱部との対向位置で加熱される。加熱された定着ベルトは、定着補助ローラ及び加圧ローラの位置に搬送される記録媒体上のトナー像を加熱して定着させる。
詳しくは、コイル部に高周波の交番電流を流すことで、コイル部の周囲に交番磁界が形成されて、支持ローラ表面近傍に渦電流が生じる。支持ローラに渦電流が生じると、支持ローラ自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、支持ローラに巻装された定着ベルトが加熱される。
このような電磁誘導加熱方式の定着装置は、発熱体が電磁誘導によって直接的に加熱されるため、従来のハロゲンヒータ方式等に比べて熱変換効率が高く、少ないエネルギー消費で短い立ち上げ時間にて定着ベルトの表面温度(定着温度)を所望の温度まで昇温できるものとして知られている。
しかしながら、電磁誘導加熱方式による加熱では、主に2つの原因のために発熱体をその長手方向に均一に加熱することが難しい。1つ目の原因は発熱体に流れる渦電流の挙動である。例えばコイル形状による渦電流の挙動の変化が挙げられる。電磁誘導加熱では、磁束発生手段であるコイル部から発生する磁束により発熱体に渦電流が流れ、その際に発生するジュール熱により発熱体が発熱する。このとき、発熱体に流れる渦電流は基本的にはコイル形状に沿って流れる。
従って、発熱体に対向して配置されたコイルが直線部分しか有しなければ、発熱体に流れる渦電流も直線となり、発熱体は略均一に加熱される。しかし、実際にはコイルはどこかで折り返さなければならない。一般的には、発熱体の端部部分はコイルの折り返し部に対応し、発熱体端部に流れる渦電流がその中央部と異なるため、発熱体の長手方向の発熱分布は均一にならない。
2つ目の原因はコイル形状である。
磁束発生手段であるコイルから発生する磁束により発熱体を加熱するため、コイルから発生する磁束が長手方向で均一であれば、発熱体を略均一に加熱することができる。しかし、前述したようにコイルはどこかで折り返さなければならない。コイルの折り返し部に相対する発熱体の端部部分では発熱体を鎖交する磁束がその中央部と異なるため、発熱体の長手方向の発熱分布が均一にならない。
上記2つの原因により、電磁誘導加熱方式の定着装置では、発熱体の長手方向端部の発熱が中央部に対して小さく又は大きくなるという問題がある。
特許文献2は、励磁コイルの幅方向端部を覆う1つのエンドコアを設ける等して、発熱体の発熱効率を向上させている。しかし、エンドコアの形状は比較的複雑であり、エンドコアを他のコアと連結する必要もある。
本発明は、より簡易な構成で発熱体の長手方向端部の発熱効率を向上させて、端部の発熱量が中央部に対して小さくならない定着装置を提供することを課題とする。
この課題を解決するため、本発明は、発熱層を有する回転体と、前記発熱層を電磁誘導加熱する励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記回転体に導く磁性体コアと、前記励磁コイル及び前記磁性体コアを保持する保持体とを有する定着装置において、前記励磁コイルの長手方向端部の折り返し部に、2つ以上のアーチ形コアが配置されることを特徴とする定着装置を提案する。
本発明によれば、励磁コイルの長手方向における端部の折り返し部に2つ以上のアーチ形コアを配置するという簡便な構成により、回転体の端部に対向するアーチ形コアの面を増やして、回転体の発熱効率を向上させ、長手方向の温度分布を均一化させることができる。短時間に立ち上がり、良好な定着が可能となる定着装置及び画像形成装置が得られる。
画像形成装置全体の概略構成図である。 第1実施形態に係る定着装置の概略構成図である。 定着ベルトの断面図の一例である。 本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱コイルの構成を示す概略平面図である。 図4における電磁誘導加熱コイルの概略断面図である。 コアにより導かれる励磁コイルから発生した磁束を示す概略図である。 第2実施形態に係る定着装置の概略断面図である。 実施例1に係る電磁誘導加熱コイルの構成を示す概略図である。 実施例2に係る電磁誘導加熱コイルの構成を示す概略図である。 エンドコア先端により伝達される磁束のイメージを示す図である。 比較例に係る電磁誘導加熱コイルの構成を示す概略図である。 定着ベルトのニップ前温度の測定結果の一例を示す図である。 長手方向中央部に設置された温度センサが180℃まで昇温した直後の定着ベルトのニップ前温度分布を示す図である。 本発明の効果を得るのに必要な理想的な1つのエンドコアを示す図である。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。先ず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像をそれぞれ対応した像担持体としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkの表面上に形成するために電子写真方式の4組の像形成手段としての画像形成部10Y、10M、10C、10Bkを備えている。
これら画像形成部10Y、10M、10C、10Bkの下方には、各画像形成部を通して用紙(記録材)Pを搬送するための搬送ベルト20が張架されている。
各画像形成部10Y、10M、10C、10Bkの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkは、搬送ベルト20にそれぞれ転接配置され,用紙Pは搬送ベルト20の表面に静電的に吸着される。
4組の画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、略同じ構造を有する。よって、ここでは用紙Pの搬送方向最上流側に配設されたイエロー用の画像形成部10Yについて代表して説明し、他の色用の画像形成部10M、10C、10Bkについては同一符号を付して詳細な説明を省略する。
画像形成部10Yは、その略中央位置に搬送ベルト20に転接された感光体ドラム1Yを有する。感光体ドラム1Yの周囲には、感光体ドラム1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電装置2Y、帯電されたドラム表面を色分解された画像信号に基づいて露光し、ドラム表面上に静電潜像を形成する露光装置3Y、ドラム表面上に形成された静電潜像にイエロートナーを供給して現像する現像装置4Y、現像したトナー像を搬送ベルト20を介して搬送される用紙上に転写する転写装置としての転写ローラ5Y、転写されずにドラム表面に残留した残留トナーを除去するクリーナ6Y、及び図示しないドラム表面に残留した電荷を除去する除電ランプが、感光体ドラム1Yの回転方向に沿って順に配設されている。
搬送ベルト20の図中右下方には、用紙Pを搬送ベルト20上に給紙するための給紙機構30が配設されている。
搬送ベルト20の図中左側には、後述する本発明の実施形態に係る定着装置40が配設されている。搬送ベルト20によって搬送された用紙Pは、搬送ベルト20から連続して定着装置40を通って延びた搬送路を搬送され、定着装置40を通過する。
定着装置40は、搬送された用紙P、すなわちその表面上に各色のトナー像が転写された状態の用紙Pを加熱及び加圧する。そして、各色のトナー像を溶融して用紙に浸透させて定着させる。また、定着装置40の搬送経路下流側に排紙ローラを介して排紙する。
次に、図2を用いて第1実施形態に係る定着装置40を説明する。
この定着装置40はベルト定着装置として構成されている。定着装置40は、発熱体・回転体である加熱ローラ(支持ローラ)51、定着ローラ52、加熱ローラと定着ローラとによって張架された定着ベルト53、加熱ローラに定着ベルトを介して対向する電磁誘導加熱コイル54、定着ローラに定着ベルトを介して当接する加圧ローラ55等からなる。
加熱ローラ51には非磁性のステンレス鋼(SUS)であって、芯金層の厚さ0.2〜1mm程度を有するものを用いる。芯金表面には発熱層としての銅(Cu)を厚さ3〜20μm程度形成し、発熱効率を高めている。この場合、Cu表層には防錆目的でニッケルめっきを施すことも好適である。また、発熱効率を高めるために、ローラ内部にフェライトコアを配置することも可能である。
ステンレス鋼以外の例として、キュリー点160〜220℃程度を有する整磁合金を用いることもできる。このとき、整磁合金内部にはアルミ部材を配置し、これによってキュリー点近傍での昇温停止が可能となる。整磁合金を用いた場合もローラ表面にはCuめっき層を形成することで発熱効率を高めることができる。
定着ローラ52は、例えばステンレス、炭素鋼等の金属製の芯金52aと、耐熱性を有するシリコーンゴム等をソリッド状又は発泡状にして芯金52aを被覆した弾性部材52bとからなる。そして、加圧ローラ55からの押圧力で加圧ローラ55と定着ローラ52の間に所定幅の接触部(定着ニップ部N)を形成する。定着ローラ52の外径は30〜40mm程度、その弾性部材の肉厚は3〜10mm程度、硬度は10〜50°(JIS−A)程度としている。
図3の断面図を用いて、定着ベルト53の一例について詳細に説明する。図3に示されるように、定着ベルト53は、基材31、この上に積層された弾性層32、さらにこの上に積層された離型層33からなる。
基材31に求められる特性として、ベルトを貼り渡した際の機械的強度、柔軟性、定着温度での使用に耐え得る耐熱性が挙げられる。本実施形態では、加熱ローラ51を電磁誘導加熱するために、基材31は絶縁性の耐熱樹脂材料、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素樹脂等が適している。厚さは、熱容量や強度の関係から30〜200μmの範囲にあることが望ましい。
弾性層32は、光沢ムラのない均一な画像を得るためにベルト表面に柔軟性を与える目的で形成され、5〜50°(JIS−A)のゴム硬度を有するエラストマー材料からなり、50〜500μmの厚さを有することが望ましい。また、定着温度における耐熱性から、材質としてはシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が用いられる。
離型層33に使用される材料として、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、及び四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂、又はこれらの樹脂の混合物、耐熱性樹脂にこれらフッ素系樹脂を分散させたものが挙げられる。
離型層33が弾性層32を被覆すると、シリコーンオイル等を使用しなくともトナー離型性と紙粉固着防止が可能になる(オイルレス化)。しかし、これらの離型性を有する樹脂は一般にゴム材料のような弾性を持たないことから、弾性層32上に厚く離型層33を形成するとベルト表面の柔軟性を損ない光沢ムラを発生させてしまう。離型性と柔軟性を両立させるために、離型層33の膜厚は、5〜50μm、望ましくは10〜30μmである。
また、必要に応じて各層間にプライマー層を設けても良く、また、基材の内面に摺動時の耐久性を向上させる層を設けても良い。
基材31には発熱層を具備させることも好適である。例えば、ポリイミド等からなる基層上にCu層を3〜15μm形成し、発熱層として用いることも可能である。
加圧ローラ55は、金属製の円筒部材からなる芯金55aと、耐熱性の高い弾性層55bと、離型層55cから構成され、定着ベルト53を介して定着ローラ52を押圧して定着ニップ部Nを形成している。加圧ローラの外径は30〜40mm程度とし、弾性層55bは、肉厚0.3〜5mm程度、硬度20〜50°(Asker硬度)程度を有している。耐熱性が必要であるため、弾性層55bの材質としてはシリコーンゴムを用いるとよい。さらに両面印刷時の離型性を高めるために、弾性部材4b上にフッ素樹脂を使用した離型層55cを10〜100μm程度形成している。
加圧ローラ55の弾性層55bの硬度を定着ローラ52の弾性層の硬度に比べて硬くすることによって、加圧ローラ55が定着ローラ52及び定着ベルト53へ食い込むことになる。この食い込みにより、用紙Pは定着ニップ部Nの出口において定着ベルト53の表面に沿うことができない曲率を有し、用紙Pの加圧ローラ55からの離型性を向上させることができ、ジャム発生等の問題を予め防止することができる。
次に、コイルユニットとして構成された電磁誘導加熱コイル54について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱コイル54の構成を示す概略平面図である。電磁誘導加熱コイル54は、励磁コイル62と、磁性体コアであるアーチ形コア63、サイドコア64及びエンドコア65と、これらの保持体としてのケース61とからなる。コア63,64,65は、励磁コイル62を取り囲むようにして加熱ローラ51への磁路を形成している。巻き回された励磁コイル62は、直線部と、長手方向端部の折り返し部を有している。
励磁コイル62は、絶縁被覆を施したφ0.05〜0.2程度の導線を50〜500本程度撚り合わせたリッツ線を5〜15回巻き回したものである。リッツ線の表面には融着層を備えており、通電加熱又は恒温槽で加熱することで融着層が固化し、巻き回した励磁コイルの形状保持が可能となる。これに代えて、融着層を保持しないリッツ線を用いて励磁コイルを巻き、それをプレス成型することで形状を与えることも可能である。リッツ線には定着温度以上の耐熱性が必要であることから、素線の絶縁被覆材にはポリアミドイミド、ポリイミド等の耐熱性と絶縁性を兼ね備えた樹脂を用いるとよい。
巻き終えた励磁コイル62は、シリコーン接着剤等を用いてケース61に接着される。ケース61には定着温度以上の耐熱性が必要になるため、耐熱性の高い樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)や液晶ポリマー等を用いる。
コアの材質にはMn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト等のフェライト材料を用いる。
図5(a)は図4中のA−A部分における概略断面図、図5(b)は図4中の矢印Bの方向に見た概略断面図、図5(c)は図4中のC−C部分における概略断面図である。図5(a),(b)に示すように、励磁コイル62とケース61の断面は加熱ローラ51の円周面に沿うような形状となっている。
図5(a)に示すように、アーチ形コア63は、巻き回した励磁コイルの片方のみを覆うように小型化されている。アーチ形コア63は概ね弓形の形状を有し、励磁コイルの直線部に間隔をおいて複数設置されている。一方、図4、図5(b)に示すように、コイル端部の折り返し部には、巻き回した励磁コイルの片方のみを覆うアーチ形コアであるエンドコア65を複数(2個)設置している。図5(c)に示すように、励磁コイルの折り返し部に設置されたエンドコア65はコの字形をしており、励磁コイル62を跨いでいる。
定着ニップ部Nでの用紙端部の温度低下や定着不良を防ぐために、エンドコア65はコイル端部に配され、加熱ローラ端部の温度を上昇させている。エンドコア65をこの位置に複数配することにより、小型なコアでもって、コイル端部の磁束を効果的に加熱ローラに導いて加熱ローラ端部の温度を効率的に上昇させることができる。
また、アーチ形コア63とエンドコア65は、励磁コイル62の中央空間部において加熱ローラ51側へ屈曲している。このように形成することで、励磁コイル62から発生した磁束をより効率的に加熱ローラ51へ導くことができる。
図6は、コアにより導かれる励磁コイルから発生した磁束を示す概略図である。
図6(b)に示す従来技術の例では、加熱効率を向上させるために、コイル中央部にI型のコア71が設置されている。しかし、アーチ形コアをこのように別体構成にすると、コアの継ぎ目で反磁束が発生し、コア間を伝達していかない磁束(漏れ磁束)が発生する。しかし、図6(a)に示すように、連続体であるアーチ形コアを用いた本実施形態では磁束を漏れなく伝えることができる。その結果、加熱ローラ51の発熱効率が従来よりも高められ、定着装置40の省エネルギー化が可能となる。
再び図4を参照して、サイドコア64は、励磁コイル62の長手方向及び加熱ローラ51の軸方向に複数並べられている。サイドコアを複数に分割して並べているのは、コアが長くなるとフェライトコア焼結時の収縮に伴うコアの反りが大きくなるためである。
定着装置40は図2に示すベルト定着方式に限らず、発熱層を有する定着ベルトを用いたものであってもよい。
図7は、第2実施形態に係る定着装置40の概略断面図である。定着装置40は、磁束発生手段としての電磁誘導加熱コイル54、回転体である定着ローラ52、加圧ローラ55等により構成される。ここで、定着ローラ52は、ステンレス、炭素鋼等の中空構造の芯金52a表面に、弾性層52b、発熱層52c等を形成した多層構造体である。詳しくは、定着ローラ52は、その外径が30〜40mm程度であって、芯金52a上に、弾性層52b、発熱層52cが積層されて構成されている。
芯金52aは、SUS304等で形成され、その肉厚は1mm程度の円筒状のものや中実のものからなる。弾性層52bとしては、耐熱性を有するシリコーンゴム等をソリッド状又は発泡状にして芯金52aを被覆した肉厚が3〜10mm程度であって、硬度が10〜50°(JIS−A)程度のものである。
発熱層52cは、内周側から、基材層、主発熱層、弾性層、離型層の順で構成されている。発熱層52cの基材はニッケル(Ni)を厚さ3〜15μm程度で形成することで、発熱効率を高めることができる。他の例として、SUS材やキュリー点160〜220℃程度を有する整磁合金を用いることもできる。整磁合金内部にはアルミ部材を配置し、これによってキュリー点近傍での昇温停止が可能となる。また、基材層にポリイミドを用いることもできる。これにより基材に金属を使うよりも発熱層の熱容量を小さくすることができて、昇温に必要なエネルギーが小さくなる。
発熱層52cの主発熱層は銅(Cu)で形成され、その厚さは5μm以下になるように設定されている。酸化防止のため、Cu層の表層にNi層を積層することもよい。
発熱層52cの弾性層は、シリコーンゴムで構成され、その厚さは100〜500μmとなっている。弾性層は、定着ローラ52の紙への追従性を向上させるためのものである。
発熱層52cの離型層は、PFA等のフッ素化合物で形成され、その厚さは10〜100μmとなっている。離型層は、トナー像Tが直接的に接する定着ローラ52表面のトナー離型性を高めるためのものである。
このように、第2実施形態における定着ローラ52は、トナー像を融解する定着部材として機能するとともに、電磁誘導加熱コイル54によって直接的に加熱される発熱部材としても機能する。
なお、発熱層52cの基材は磁性金属材料からなる単層構造とすることもできる。発熱層を形成する磁性金属材料としては、層厚が10μm程度のニッケル(Ni)を用いることができ、鉄、コバルト、銅又はそれらの合金等を用いることもできる。
本発明の実施例と比較例を加熱実験により検証したので、これを以下に説明する。
<実施例1>
図8(a)は実施例1に係る電磁誘導加熱コイル54の構成を示す概略平面図、図8(b)は矢印Bの方向に見た電磁誘導加熱コイル54内部の概略断面図である。本実施例では、エンドコア65の幅を5mm幅とし、2つのエンドコア65の間隔をできるだけ詰めて配置した。他の構成は図4に示した電磁誘導加熱コイル54と同様だった。
<実施例2>
図9(a)は実施例2に係る電磁誘導加熱コイル54の構成を示す概略平面図、図9(b)は矢印Bの方向に見た電磁誘導加熱コイル54内部の概略断面図である。本実施例では前記実施例1と異なり、2つのエンドコア65の配置間隔を大きくした。具体的には、2つのエンドコア65の配置間隔を10mmとした。このように間隔をあけることにより、加熱ローラ51に向かうエンドコア65の先端を加熱ローラの円周面の接線に対して略平行とした。本実施例では、10mmの間隔をあけたが、配置するコアの幅の1〜3倍の間隔だけあけると好ましい。本実施例の場合、コアの幅が5mmであるので、5mm〜15mm程度の間隔をあけることが好ましい。
図10は、エンドコア先端により伝達される磁束のイメージを示す図である。図10(a)は前記実施例1、図10(b)は前記実施例2に対応する断面図である。
図10(a)の場合、エンドコア65はできるだけ詰めて配置されているため、特にエンドコア先端外側は加熱ローラ51の円周面に正対せず、図示のように外側から伝達される磁束は加熱ローラから逸れてしまう。一方、図10(b)の場合、エンドコア先端が加熱ローラの円周面に正対することにより、コア先端から加熱ローラまでの距離が近付いて、全ての磁束が加熱ローラに届きやすくなる。よって、漏れ磁束が減少して発熱効率の更なる向上が可能となる。また、エンドコア65の間隔が大きくなることによりエンドコアが励磁コイル62の磁束に影響を与える領域が広がるため、発熱効率の向上が可能となる。
以上の効果により加熱ローラ端部の発熱効率が向上し、加熱ローラ端部の温度低下を防止することができた。
<比較例>
図11(a)は、比較例としての電磁誘導加熱コイル54の構成を示す概略平面図、図11(b)は矢印Bの方向に見た電磁誘導加熱コイル54内部の概略断面図である。ここでは、より大きい10mm幅のエンドコア72を1つ配置した。その他の構成は前記実施例1,2と同じだった。また、エンドコアの総体積も実施例1,2と同じであるため、この電磁誘導加熱コイル54の構成は前記実施例1,2のエンドコア配置の効果との比較に好適である。
<実験例>
図2に示す定着装置40に、前記実施例1,2及び前記比較例1の電磁誘導加熱コイル54を適用し、加熱実験を行った。定着装置40の定着ニップ部Nの前に温度センサ(不図示)を取り付け、定着ベルト53のニップ前温度を測定した。
図12は、定着ベルト53のニップ前温度の測定結果の一例を示す図である。
先ず、定着装置の一般的な動作を説明する。初めに、通紙開始判定をする定着目標温度である180℃まで昇温し(立上げモード)、その後通紙が開始される。すると用紙に熱量を奪われるため定着ベルトは温度低下するが、加熱部からの熱量供給によって温度の復帰が始まる。そして、通紙終了とともに加熱部からの熱量供給も終了し、温度は低下する。
今回、長手方向中央部に設置された温度センサが180℃まで昇温した直後の定着ベルト53の長手方向のニップ前温度分布を測定した。このとき、長手方向の温度分布が均一であればそのまま通紙を開始できるが、長手方向端部の温度が中央部に対して落ち込んでいれば、端部の温度が180℃に昇温するまで通紙を開始できない。そのまま通紙すれば、端部で定着不良が発生する可能性があるからである。
図13は、長手方向中央部に設置された温度センサが180℃まで昇温した直後の定着ベルトのニップ前温度分布を示す図である。
縦軸がニップ前温度(℃)、横軸が定着ベルト53の長手方向の位置(mm)である。横軸の0mmが長手方向中央部に対応する。図示のように、どの例でも中央部では同様の温度が得られたが、比較例では長手方向端部で低温になった。長手方向端部での温度は、比較例よりも実施例1、実施例1よりも実施例2のほうが高くなっていた。よって、実施例1,2では端部の温度落ち込みが低減されており、温度分布の均一性が向上していることが分かった。これから、比較例のように大きなエンドコアを1つ配置するよりも、小さなエンドコアを間隔をあけて複数配置するほうが、端部の発熱効率が向上することが分かった。また、実施例1,2に係る電磁誘導加熱コイル54によって、実際に定着装置40へ適用可能な温度分布が得られていることが確認できた。
以上の実験より、本発明を適用することで電磁誘導加熱方式の定着装置の長手方向端部での発熱効率が改善され、定着ベルトの長手方向の温度均一性が向上されることが分かった。従って、本発明によれば、長手方向中央部の昇温が完了すれば直ちに通紙を開始することができる、ウォームアップタイムに優れた電磁誘導加熱コイルが得られ、よって画像形成装置の省エネルギー化が可能となる。
ところで、本発明の効果を1つのエンドコアによって得るには、図14に示すように加熱ローラ円周面に対するエンドコア73の幅を広くし、かつエンドコア73がケース61に対してぴったりと接触するように接触面を円柱状にしなければならない。
しかしながら、フェライトコアは粉体を圧縮成型、焼結することで加工している。焼結の過程でコアは収縮し、各部位で収縮量が異なるため、図14に示すような繊細な加工は難しく、収縮による形状ばらつきも大きくなる。その結果、歩留まりが低下し、コスト増大の一原因となる。
本発明によれば、コの字形のシンプルな形状のエンドコアをコイル端部に複数配置するだけで、図14のようなコアをコイル端部に配置したものと同等の効果を得ることができる。また、複数のエンドコアを間隔を空けて配置することにより、端部の発熱効率を向上させることができる。そして、発熱効率向上により画像形成装置の急速な立上げが可能となり、より省エネルギーな装置が得られる。
なお、本発明が前記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内において前記実施形態の構成が適宜変更され得ることは明らかである。例えば、エンドコアの数は2つ以上でもよく、サイドコアやアーチコアの数、位置等は、本発明を実施するうえで好適な数、位置等にすることができる。
40 定着装置
51 加熱ローラ、支持ローラ(回転体)
61 ケース(保持体)
62 励磁コイル
63 アーチ形コア(磁性体コア)
64 サイドコア(磁性体コア)
65 エンドコア(磁性体コア)
特開2006−350054号公報 特開2009−014972号公報

Claims (6)

  1. 発熱層を有する回転体と、前記発熱層を電磁誘導加熱する励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記回転体に導く磁性体コアと、前記励磁コイル及び前記磁性体コアを保持する保持体とを有する定着装置において、
    前記励磁コイルの長手方向端部の折り返し部に、2つ以上のアーチ形コアが配置されることを特徴とする定着装置。
  2. 前記アーチ形コアは互いに間隔をあけて配置されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記間隔は前記アーチ形コアの幅の1〜3倍の間隔であることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記アーチ形コアが前記励磁コイルの中央空間部において前記回転体に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の定着装置。
  5. 前記回転体に向かう前記アーチ形コアの先端が前記回転体の円周面の接線と略平行であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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