JP2014152390A - ナノ流体の低温製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】液中プラズマを利用して、液媒体中に熱伝導流体として用いるのに適した形態のAuナノ粒子を形成する、熱伝導性に優れたナノ流体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 Au(III)イオンとイオン性界面活性剤とを含む水溶液を用意すること、この水溶液の温度を該水溶液の凝固点以上5℃未満の温度範囲に保ちながら、この水溶液中でプラズマを発生させることでAu(III)イオンを還元し、水溶液中にAuナノ粒子を形成すること、を含むナノ流体の製造方法とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、ナノ流体の製造方法に関する。より詳細には、低温環境で、熱伝導性に優れたナノ流体を製造する方法に関する。
近年、日本で消費されるエネルギーの大部分は未利用のまま、室温〜600℃程度の中温領域の廃熱として大気中へ排出されるといわれている。かかる中温領域の廃熱を変換することなく熱源として再利用できれば、省エネルギー、環境負荷の軽減を実現することができる。そのため、かかる熱エネルギーを低損失で輸送し、変換することなく熱源としてそのまま利用可能な、熱エネルギー輸送システムの創製が期待されている。また、かかる中温領域の廃熱を、発生部分から熱電変換モジュール部分にまで低損失で輸送し、電気に変換することで、かかる中温領域の廃熱を利用した高効率な発電システムの実現が期待されてもいる。
熱エネルギーの輸送には、例えば、熱伝導流体(熱輸送流体ともいう。)が利用されている。そしてこの熱伝導流体の一つとして、例えば、粒径が100nm以下程度の金属ナノ粒子が媒体に分散されたナノ流体の利用が検討されている。ナノ流体は、例えば、近年の各種電子機器等の小型化により微細となった伝熱流路を、詰まることなく流動しながら、熱エネルギーを伝搬する熱伝導流体である。かかるナノ流体は、例えば、水やエチレングリコール等のベースとなる液媒体に、粒径100nm以下程度の各種の金属ナノ粒子等を、分散性および安定性を確保するための界面活性剤等と共に分散させることで構成することができる(例えば、特許文献1および2等参照)。そして、上記のような中温領域の排熱を輸送する目的で用いられる熱伝導流体には、高温領域で用いられる熱伝導流体に比べて、より低損失で熱エネルギーを輸送する能力を備えていることが求められる。
ナノ流体中には金属ナノ粒子が分散されていることから、伝熱面積が増加して熱伝導度が大幅に増大することが期待されている。また、粒径がナノメートルの領域にあるナノ粒子は、その形状特異性により、光学的性質、電気的性質、機械的性質等が、原子や分子あるいはバルク体とは異なり得ることから、電子材料、磁性材料または触媒材料等として種々の分野での利用が検討され、応用が進められている。同時に、例えば、粒径が2nm程度以下の超微細な金属ナノ粒子が分散されたナノ流体については、理論的には、量子効果が発現され得る。そのため、ナノ流体中で金属ナノ粒子の間隔を制御することで、液体中でも固体におけるのに準じた熱拡散系が構築でき、熱伝導度についても未知の特性が発現されることが期待できる。
特開2009−292896号公報 特開2009−292920号公報 特開2008−013810号公報
このような熱伝導物質としての金属ナノ粒子は、近年のナノ粒子の大量合成技術および高速合成技術の発達によって比較的簡便に製造できるようになってきている。そして本発明者らも、溶液中で発生させる液中プラズマの作用により、粒径が500nm以下の金属ナノ粒子を大量かつ迅速に生成することのできる、全く新しい金属ナノ粒子生成装置を提案している(例えば、特許文献3参照)。この金属ナノ粒子生成装置によると、金属塩を含む水溶液中でプラズマを生じさせることにより、水溶液中の金属イオンを還元し、この金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成することができる。かかる金属ナノ粒子生成装置を用いて作製される金属ナノ粒子をナノ流体に適用することで、より手軽にナノ流体を製造し得るものと期待される。
しかしながら、上記の特許文献3に開示されている技術によると、より粒径の小さい、例えば粒径が数nmレベルの金属ナノ粒子を製造するのは困難であった。さらに、金属ナノ粒子を粒径のバラつきを少なくして製造することについても課題が残されていた。また、粒径のバラつきが大きい金属ナノ粒子をナノ流体に適用すると、ナノ流体中でのナノ粒子の分散性が微視的なレベルで低下してしまうため、粒径に見合った熱伝導度が得られない可能性があった。
本発明は上記課題に鑑みて創出されたものであり、液中プラズマを利用して、液媒体中に熱伝導流体として用いるのに適した形態の金(Au)ナノ粒子を含む、熱伝導性に優れたナノ流体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、これまでに、水溶液中で発生されるプラズマ(以下、単に「液中プラズマ」という場合がある。)の作用を利用して金属ナノ粒子を製造し得ることを見出し、かかる技術を実際の具体的な応用の場により適した形態に改良すべく鋭意研究を重ねてきた。そして、バルクでは熱力学的および化学的安定性に優れ、また、ナノ粒子化することで様々な機能性を発現する金(Au)に着目し、液中プラズマにより生成されるAuナノ粒子を熱伝導流体に適用してナノ流体を構築するにあたり、以下の知見を見出したことで、本願発明を完成するに至った。
・Auナノ粒子が形成される環境を整えることで、形成されるAuナノ粒子の粒径や粒径分布等の特性をより詳細に制御することができる。
・特にAuナノ粒子が形成される際の水溶液の温度環境を整えることで、得られるAuナノ粒子の形態を制御するに留まらず、このAuナノ粒子を含む水溶液からなるナノ流体の熱伝導性に係る性状を効果的に向上させることができる。
すなわち、この出願は、従来技術の課題を解決するものとして、ナノ流体の製造方法を提供する。このナノ流体の製造方法は、Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液を用意すること、上記水溶液の温度を該水溶液の凝固点以上5℃未満の温度範囲に保ちながら、該水溶液中でプラズマを発生させることで上記Au(III)イオンを還元し、上記水溶液中にAuナノ粒子を形成すること、を含むことを特徴としている。かかる水溶液の温度は、該水溶液の凝固点以上3℃以下の範囲であることが好ましく、更には、凝固点以上2℃以下の範囲であるのがより好ましい。
例えば、水中プラズマを利用し、室温により近い環境においてAuナノ粒子を形成した場合、一般的には、Auナノ粒子の形態を均一に制御したり、凝集させることなく均一に分散させることは困難となる。また、水中プラズマの発生環境について各種の条件を複雑に整えることで、室温に近い環境においてAuナノ粒子の形態を制御して形成することも可能ではあるが、かかるAuナノ粒子はpH濃度が極めて高い溶液中に形成する等の条件が加わり、熱輸送を目的としたナノ流体としては好適に利用することが難しかった。
本発明によると、ナノ流体の製造に際し、液中プラズマを発生させる水溶液の温度を上記の低温領域に制御しているため、例えば、水溶液のpHを制御することなくAuナノ粒子の粗大化を防止することができる。これにより、水溶液中に、粒径が数ナノメートルで揃い、形状が略球形に整った状態のAuナノ粒子を凝集させることなく形成することができる。また、このようにして製造されたAuナノ粒子を含むナノ流体は、常温〜中温領域においても安定に存在し得る。さらに、かかるナノ流体は、粒径が微細なAuナノ粒子が高分散な状態で水溶液中に含まれているために、熱伝導特性が向上されている。したがって、本発明のナノ流体の製造方法によると、熱伝導流体として適したナノ流体を製造することができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記水溶液中に平均粒径が3nm以下のAuナノ粒子を形成することを特徴としている。すなわち、平均粒径が3nm以下で、粒径が極めて揃い、かつ、高分散な状態で水溶液中に製造することができ、ナノ流体を熱輸送特性に極めて優れたものとすることができる。例えば、ナノ粒子の表面プラズモン共鳴が消失する粒径2nm以下のAuナノ粒子、すなわちAuクラスターを含むナノ流体を製造することが可能とされる。
なお、液中プラズマにより、室温に近い温度環境で製造したナノ流体については、理由は定かではないものの、より粒径の小さいAuナノ粒子を形成したからと言って、これに伴いナノ流体の熱伝導度が増大されるわけではないことが確認されている。しかしながら、本発明の方法によると、Auナノ粒子の微細な粒径から期待される、あるいは期待される以上に優れた熱伝導特性を備えるナノ流体を製造することができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記水溶液中の前記Au(III)イオンの濃度を0.05mM〜1mMに調整することを特徴としている。
かかる構成によると、例えば25℃における熱伝導度が水よりも高いナノ流体を得ることができる。このようなナノ流体は、例えば、中温領域の熱エネルギーを低損失で輸送し、熱源としてそのまま利用可能なエネルギー輸送システム等を構築するのに好適に用いることができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記水溶液中の上記Au(III)イオンの濃度を0.05mM〜0.5mMに調整することを特徴としている。
水溶液中のAu(III)イオンの濃度が0.05mM未満であると、得られるナノ流体中に含まれるAuナノ粒子の量が少なくなり、結果として高い熱伝導度を実現できないために好ましくない。また、Au(III)イオンの濃度が0.5mMを超過すると、ナノ流体中に形成されるAuナノ粒子が凝集する可能性が高くなり、結果としてAuナノ粒子の表面積が減少し、熱伝導度の低下につながり得るために好ましくない。Au(III)イオンの濃度は、0.05mM〜0.5mMであるのが好ましく、0.1mM〜0.3mM程度であるのがより好ましい。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記保護剤として、カチオン性界面活性剤を用いることを特徴としている。
液相中に金属ナノ粒子を製造する際の保護剤としては、各種の材料が知られている。本発明においては、中でも、保護剤としてカチオン性界面活性剤を使用するのがより微細で安定したAuナノ粒子を形成できる点で好ましい。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記水溶液中に一対の線状電極を配置し、上記線状電極間にパルス幅が0.1μs〜5μsで、周波数が10Hz〜10Hzの直流パルス電圧を印加することでプラズマを発生させることを特徴としている。
かかる構成によると、線状電極間に生じるジュール熱によって水溶液中に発生する気泡の大部分を水面に向かって浮上させることなく、水溶液中に安定した状態で維持することができ、この気泡中に安定した状態でプラズマを発生させることが可能となる。これにより、より効率よく安定した状態でナノ流体を製造することができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法の好ましい一態様においては、上記プラズマは、グロー放電プラズマであることを特徴としている。
液中で発生されるプラズマは、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電の形態であり得る。なかでも、液中プラズマのより好ましい形態としてグロー放電プラズマをナノ流体の製造に利用することができる。これにより、非平衡な低温プラズマを発生させることができ、より少ないエネルギーで安定的にナノ流体の製造を行うことができる。
ナノ流体の製造に用いる液中プラズマ発生装置の構成の一例を示す模式図である。 ナノ流体の製造に利用する液中プラズマによる反応場の構成を例示した模式図である。 一実施形態において製造したナノ流体(a)に含まれるAuナノ粒子の(A)透過型電子顕微鏡(TEM)像と、(B)粒度分布を示す図である。 他の実施形態において製造したナノ流体(b)におけるAuナノ粒子の(A)透過型電子顕微鏡(TEM)像と、(B)粒度分布を示す図である。 他の実施形態において製造したナノ流体(c)におけるAuナノ粒子の(A)透過型電子顕微鏡(TEM)像と、(B)粒度分布を示す図である。 他の実施形態において製造したナノ流体(d)におけるAuナノ粒子の(A)透過型電子顕微鏡(TEM)像と、(B)粒度分布を示す図である。 得られたナノ流体(a)〜(d)についての紫外−近赤外(UV−NIR)吸収スペクトルを例示した図である。 得られたナノ流体(a)〜(d)におけるAuナノ粒子の平均粒径と、水に対する粘性比との関係について例示した図である。 得られたナノ流体(a)〜(d)におけるAuナノ粒子の平均粒径と、水に対する熱伝導度比との関係について例示した図である。
以下、本発明のナノ流体の製造方法について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(水溶液の調製条件や液中プラズマの発生条件等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(液中プラズマの発生装置の構成等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法は、本質的に、Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、このAu(III)イオンを還元し、水溶液中にAuナノ粒子を形成するものである。そしてかかる手法において、上記水溶液の温度を、凝固点以上5℃未満の温度範囲に保持することを必須の要件として含むようにしている。
Auナノ粒子を構成する金(Au)は、例えば、25℃における熱伝導度が314W/mkと各種の金属の中でも比較的高い値を示す。したがって、Auナノ粒子を含むナノ流体は、高い熱伝導度を備えることが期待できる。かかるAuナノ粒子の原料としては、Au(III)イオンが用いられる。Au(III)イオンは、Au3+などの単純な水和イオンであっても良いが、より安定な錯体の形態で含まれていても良い。かかる錯体としては、例えば、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体などを考慮することができる。代表的には、例えば、シアン化金(III)イオン:[Au(CN)や、テトラクロロ金(III)酸イオン:[AuCl等が例示される。
Au(III)イオンは、プラズマを発生させる前の水溶液中に、形成されるAuナノ粒子が凝集しない程度の濃度で含まれるのが好ましい。かかる濃度は、例えば液中プラズマの発生形態などにもよるため厳密に限定されるものではないが、例えば、0.05mM〜0.5mM程度の濃度を目安として設定することができる。濃度が0.05mMよりも低いと、単位体積中に形成されるAuナノ粒子の量が少なくなるため、得られるナノ流体の熱伝導度が十分に高くならず、熱伝導流体として利用するには熱伝導特性に乏しくなるために好ましくない。濃度が0.5mMを超過すると、ナノ流体中でAuナノ粒子が部分的に凝集を始める可能性が高まるために好ましくない。Au(III)イオンの濃度は0.08mM〜0.3mM程度の範囲であるのが好ましく、例えば、0.1mM〜0.3mM程度の範囲であるのがより好ましい。
保護剤としては、一般に金属ナノ粒子の安定な分散状態を維持するのに用いられている各種の保護剤(表面修飾剤等ともいう。)を、本発明の目的を損ねない範囲において、特に制限なく用いることができる。かかる保護剤としては、例えば、水に分散または溶解可能な高分子類、糖類、樹状高分子化合物、チオール化合物、金属配位性化合物および界面活性剤等を用いることができる。より具体的には、例えば、保護剤としては、ゼラチン,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコール,アラビアゴム,高分子シクロデキストリンおよびアクリロニトリル等に代表される高分子類、オリゴ糖,環状オリゴ糖等に代表される糖類、デンドリマー類等に代表される樹状高分子化合物、メルカプト酢酸やメルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸,メルカプトアルキルアミン類,アルキルチオール,ハロゲン化チオコリン,チオフェノール,ベンゼンチオール等に代表されるチオール化合物、イソシアニド類,ニトリル類,アミン類,タウリン等に代表される金属配位性化合物、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB),ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB),オクチルトリメチルアンモニウムブロミド(OTAB)等の第4級アンモニウム塩型や、α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム等のベンザルコニウム塩,アルキルアミンオキシド等のアルキルアミン塩型等のカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS),α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩などのアニオン性界面活性剤、N,N−ジメチルドデシルアミン=N=オキシド等に代表される両性イオン界面活性剤、エーロゾルOT等に代表される非イオン性界面活性剤等の界面活性剤類の使用が例示される。中でも、液中プラズマの発生によりナノ流体を製造する際に用いる保護剤としては、より形態および分散性良くAuナノ粒子を形成することができることから、カチオン性界面活性剤が好ましい。
これらの保護剤は、いずれか一種を単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。また、かかる保護剤は、形成されたAuナノ粒子が凝集しない程度の濃度で用いればよい。
そして本発明では、以上のようにAu(III)イオンと保護剤とを含む水溶液を用意した上で、該水溶液の温度を凝固点以上5℃未満に保ちながら、水溶液中でプラズマを発生させる。ここで、本発明の方法では、Au(III)イオンの還元の場として、該水溶液中で発生させる液中プラズマを利用するようにしている。すなわち、プラズマを構成する正負のイオン、電子およびラジカル等の活性種の作用によって、水溶液中に含まれるAu(III)イオンの還元と、これに伴うゼロ価のAuからなるナノ粒子の形成とが実現される。かかる活性種は、典型的には、水溶液中の水分子が分解されて生成する、水素イオン、水酸化物イオン、酸素イオン、水素ラジカル、酸素ラジカルおよびヒドロキシラジカル等であり得る。
ここで、上記の反応場となる液中プラズマは、液体中の電極間にマイクロ波や高周波を印加して発生された気体(気相)の中に、当該気体を構成する分子を部分的ないしは完全に電離させることで、形成することができる。つまり、液中プラズマにおいては、プラズマ相を取り囲む気相はさらに液相に取り囲まれており、プラズマを構成する上記のイオン、電子およびラジカル等の活性種は制限された気相中において自由に運動し得る状態である。そのため、解放された気相中に発生される気相プラズマ(典型的には、大気圧プラズマ、低圧プラズマ等)とは異なる物理的および化学的性質を示す。
例えば、気相プラズマは、気体の温度を上げて行った際にこの気体を構成する中性分子が電離してプラズマ化することで発生する。このとき、固体・液体・気体間の相転移とは異なり気体からプラズマへの転移は徐々に起こるため、構成分子のごく一部が電離した電離度が非常に低い状態でも充分にプラズマであり得る。これに対し液中プラズマは、典型的には、まず液中での放電により当該液体がジュール加熱により気化されて気相を形成し、さらにこの気相においてプラズマが発生することで形成される。すなわち、液中プラズマは、プラズマという高エネルギー状態が液中(すなわち凝縮相)に閉じ込められており、閉鎖系の物理が実現するとともに、解放されない高密度なプラズマ反応場が形成されているといえる。
また、Auナノ粒子のプレカーサーともいえるAu(III)イオンは、液中プラズマにおいては液相を介して供給される。すなわち、本発明では、Au(III)イオンは反応場に比較的高密度で効率的に供給される。したがって、本発明の製造方法においては、Au(III)イオンの還元を高効率で行うことができ、Auナノ粒子を生産性良く形成することができる。
なお、以上のような液中プラズマは、電極間にかかる電位差の違い等によって、雷のような火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等に分類される。火花放電が継続的に流れるとグロー放電あるいはアーク放電となる。ここで、液中で発生されるグロー放電プラズマ(以下、ソリューションプラズマとも言う。)は、その他の液中プラズマに対して、さらに異なる特徴を有している。例えば、アーク放電プラズマは粒子密度が高く、イオンや中性粒子の温度が電子温度とほぼ等しい局所熱平衡状態にある熱プラズマである。これに対し、グロー放電プラズマは、電子温度は高いがイオンや中性粒子の温度が低い非平衡状態にある低温プラズマである。また、コロナ放電では連続的なプラズマの発生は難しいことに加え、水の分解により水素ラジカルと共に酸化性のヒドロキシラジカルが比較的多く形成されるという特徴がある。これに対し、グロー放電プラズマではプラズマの持つエネルギーが高く、酸化性のヒドロキシラジカルがさらに分解されて還元性の水素ラジカルが多く生成される。すなわち、グロー放電プラズマによるとAu(III)イオンの還元がより効率的に行われることとなる。このことから、本発明では、液中プラズマとしてグロー放電プラズマを発生させることを好ましい形態としている。
かかるグロー放電プラズマは、サブマイクロ秒のパルス幅の電圧を、高い繰り返し周波数で印加することにより、比較的安定して発生可能である。そのため、プラズマ相を囲む液体の膨張・圧縮運動とプラズマ相とは連動しつつ安定な状態が長時間(例えば、2時間以上)維持され得る。そのため、例えば、ソリューションプラズマにおいては、電極間に発生される気相はその一部が浮力により電極間から浮上して液表面に到達することがあり得るものの、その大部分は電極間に一定の大きさの気相として定常的に維持される。したがって、ソリューションプラズマにおいてはプラズマの発生状態を定常的にコントロールすることができる。本発明のナノ流体の製造方法では、このような制御されたプラズマを利用することを好ましい形態としており、より効率的にナノ流体を製造することができる。発生したプラズマがグロー放電プラズマであるかどうかは、例えば、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が0.0005〜0.005の範囲にあることで確認することができる。
なお、ここで、プラズマの発生中、水溶液の温度は凝固点以上5℃未満に保つことが肝要である。水溶液の温度が5℃を超過すると、Auナノ粒子が粗大化し易くなり、粒径にバラつきが生じたり凝集したりする傾向が高まるために好ましくない。例えば、水溶液の温度を3℃以下、より好ましくは2℃以下に保つことで、3nm以下のAuナノ粒子が分散されたナノ流体を好適に得ることができる。なお、水溶液の温度の下限については、液中プラズマ(ソリューションプラズマ)の発生を可能とするために、水溶液が凝固(凍結)しない温度であればよい。ここで、水溶液を5℃以下に保つ手段としては特に制限はなく、各種の冷却手段を利用することができる。かかる冷却手段としては、公知の各種の冷凍冷蔵機等を利用することができる。これらの冷却手段における冷却機構については特に制限はなく、例えば、冷却気化圧縮型、気化吸収型、スターリング冷凍機、ペルチェ効果型、ケミカルヒートポンプ、水素吸蔵合金等の各種の機構により冷却することができる。これらの冷却手段は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
以下、本発明の好適な実施形態としての、ソリューションプラズマを反応場とした低温環境におけるナノ流体の製造を例にして、本発明のナノ流体の製造方法についてより詳細に説明する。
図1は、水溶液2中でソリューションプラズマ4を発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液2は、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられるとともに、内部を−18℃〜10℃の温度範囲で温度調節可能な冷蔵機能を有する冷却室11内に配置されている。また、プラズマ4を発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て水溶液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。
電極6としては、例えば、平板状電極や棒状電極およびその組み合わせ等の様々な形態であってよく、例えば、線状(ワイヤ状、針状)電極を用いると、電界を局所的に集中させることが可能となるために好ましい。また、材質についても特に制限はなく、例えば、鉄(Fe)、金(Au)、タングステン(W)、白金(Pt)等の電極であり得る。この実施形態においては、タングステン製の線状電極6を用いており、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために先端部(例えば、0.1〜2mm程度)のみを露出させ、残りの部分は絶縁部材9等で絶縁している。絶縁部材9は、例えばゴム製あるいは樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であることが例示される。この実施形態では、絶縁部材9は電極6を容器5に固定するとともに、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねた構成である。かかる装置10において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、水溶液2中に含まれる原料化合物の種類やその濃度等の条件、さらには装置10の構成条件等にもよるものの、例えば、電圧:約1000〜2000V程度とし、パルス幅が0.1μs〜5μs程度(より好ましくは約1μs〜5μs)で、繰り返し周波数が10Hz〜10Hz程度(より好ましくは約10〜30kHz)の範囲で印加することが例示される。
なお、本実施形態において必須の要件ではないものの、安定したソリューションプラズマの発生を可能とするために、水溶液2の電気伝導度を300μS・cm−1〜2500μS・cm−1程度の範囲に調整しておくことができる。電気伝導度の調整が必要な場合は、例えば、塩化カリウム(KCl)や水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等の電解質を水溶液2に溶解させる等して行うとよい。電気伝導度が300μS・cm−1未満であると、ソリューションプラズマの発生に多くの電力を要し、好適にソリューションプラズマを発生し難くなるために好ましくない。また、電気伝導度が2500μS・cm−1を超過する場合は、プラズマ発生のために電極間に投入した電力がイオン電流として消費されてしまい、定常的にプラズマを発生させるのが困難となるために好ましくない。電気伝導度は、500μS・cm−1〜2300μS・cm−1程度とするのが好ましく、更には、1000μS・cm−1〜2000μS・cm−1程度とするのが好ましい。
そして、ソリューションプラズマ発生装置10によって水溶液2中に上記のパルス電圧を印加することで、ソリューションプラズマ4が形成される。ソリューションプラズマ発生装置10により発生されるプラズマ反応場は、例えば、図2に示したような構成となる。すなわち、水溶液(液相)2中に気相3が形成され、この気相3中にソリューションプラズマ(プラズマ相)4が形成されている。このプラズマ反応場は、電極6間に定常的に維持されている。かかるプラズマ反応場では、プラズマ相4から液相2に向かって、高いエネルギーを有した電子、イオン、ラジカル等の活性種が供給される。一方、液相2から気相3およびプラズマ相4に向けては、液相2を構成する水あるいはこれに溶解されたAu(III)イオンが供給される。そしてこれらは、主として液相2と気相3の界面において接触(衝突)する。とりわけ、水から発生される水素ラジカル,水素イオン,ヒドロキシラジカル等は反応性が高く、特に水素ラジカルが液相2中に含まれるAu(III)イオンと接触することで、かかるAu(III)イオンの還元作用を示すと考えられる。なお、図2では理解を容易にするために、液相2と気相3、気相3とプラズマ相4の間の各界面が略球状に明確に形成されたような様子を示しているが、かかる界面は必ずしも明確に形成されることに限定されない。例えば、気相3とプラズマ相4の間の界面に臨界的なものがなく、かかる界面は空間的な広がりを持っていても良い。
以上の構成によると、例えば、ソリューションプラズマの作用によって、Au(III)イオンが還元され、溶液中にAuナノ粒子が形成される。このナノ粒子は凝集することなく、例えば、ごく微細な微粒子(例えば、平均粒径3μm以下、典型的には平均粒径1μm〜2μm程度)として水溶液中に高度に分散された状態で生成され、これによりナノ流体が形成されることとなる。かかるナノ流体において、Auナノ粒子は、例えばほぼ全て(例えば、70個数%以上、典型的には90個数%以上)の粒子の粒径が3nm以下のものとして製造され得る。
以上、好適な実施形態に基づきナノ流体の製造方法について説明したが、かかる製造方法はこの例に限定されず、適宜に態様を変化して行うことができる。例えば、ソリューションプラズマの発生に際しては、必ずしもタングステンからなる針状電極を用いる必要はなく、例えば、低インダクタンスの誘導コイルによりソリューションプラズマを発生するようにしても良い。さらに、液中プラズマは、ソリューションプラズマ(グロー放電プラズマ)によるものに限定されず、例えば、液中でのアーク放電プラズマ等を利用して実施しても良い。また、ソリューションプラズマの発生条件も、水溶液や装置等の条件に応じて適宜調節できることは言うまでもない。
また、以上のAuナノ粒子を含む水溶液からなるナノ流体は、そのまま熱伝導流体として用いることが可能であるが、例えば、用途に応じて任意のタイミングで、Auナノ粒子を他の媒体に移して用いることもできる。例えば、200℃〜300℃程度の温度域の廃熱を輸送する目的で使用する場合には、かかるナノ流体におけるAuナノ粒子をエチレングリコール等の有機溶媒やフッ素系溶媒等に抽出して用いること等が例示される。かかる抽出は、ナノ流体中のAuナノ粒子の周縁に結合して当該Auナノ粒子を保護している保護剤の官能基を、対象とする媒体に応じて変化させたのち、溶媒抽出するのが簡便である。かかる媒体の選定や溶媒抽出の操作等は、熱輸送温度域や用いた保護剤の種類等を勘案して、当該分野における公知の技術に基づいて適切に行うことができる。
以上の通り、本発明のナノ流体の製造方法は、これまでにないプラズマ反応場を低温環境で利用した新規なナノ流体の製造手法であって、更なる機能の展開の可能性を有するナノ流体を製造するものであり得る。
次に、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[実施形態1]
下記の表1に示す条件で、ナノ流体(a)〜(d)を製造した。
すなわち、まず、Au(III)イオン源として、塩化金(III)三水和物(HAuCl・3HO)を用意した。また、保護剤としては、CTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とを用意した。
そして、保護剤としてのCTABを0.01g含む、0.1mMのHAuCl水溶液を300mLで調製して、水溶液(a)とした。
また同様に、保護剤としてのSDSを0.74g含む0.1mMのHAuCl水溶液を300mLに調製し、水溶液(b)および(c)とした。
さらに、保護剤を含まない0.5mMのHAuCl水溶液を300mL調製し、水溶液(d)とした。
上記水溶液(a)〜(d)の中で、図1に示した装置を用いてソリューションプラズマを発生させた。図1は、水溶液中でプラズマを発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、上記で調製した(a)〜(d)の溶液2は、それぞれガラス製のビーカーからなる容器5に入れ、マグネチックスターラーからなる撹拌装置7により撹拌を行っている。また、本実施形態では、溶液2は、チラー(図示せず)で循環させることにより、プラズマ発生中の液温を下記表1に示す所定の処理温度(1±1℃または25℃)に管理している。プラズマを発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て溶液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。この実施形態においては、電界を局所的に集中させることが可能な針状の電極6を用いた。電極6は、直径が1.0mmのタングステンワイヤー(ニラコ社製)で構成し、対向する電極間の距離を0.6mmに設定したほか、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させて、後の部分はフッ素樹脂からなる絶縁部材9で絶縁した。この実施形態では、絶縁部材9は電極6を容器5に固定するとともに、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねた構成となっている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。外部電源8としては、バイポーラパルス電源(株式会社栗田製作所製、MPS−R06K02C−WP1F)を用いた。
本実施形態においてソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、電圧については下記表1に示すものとし、その他の条件については、パルス幅:1μs、繰り返し周波数:25kHzに調整して、各溶液2中にソリューションプラズマを約900秒間(15分間)発生させた。かかる条件で発生させたプラズマは、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が0.0005〜0.005の範囲にあることが確認された。
以上のソリューションプラズマによる処理を行った後に得られた溶液(a)〜(d)をそれぞれナノ流体(a)〜(d)とし、これらナノ流体(a)〜(d)について以下の通りの評価を行った。
[TEM観察]
上記で得られたナノ流体(a)〜(d)について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2500SE)を用いて流体中に形成されたAuナノ粒子の形態観察を行った。これにより得られたナノ流体(a)〜(d)におけるAuナノ粒子の透過像(TEM像)をそれぞれ図3〜6に(A)として示した。また、これらのTEM観察により、各ナノ流体中に形成された100個以上のAu粒子について粒径を計測し、粒度分布を調べた。その結果を併せて図3〜6に(B)として示すとともに、平均粒径と粒径の分布幅を下記の表1に示した。
[紫外−近赤外吸収スペクトル、粘度、熱伝導度]
ナノ流体(a)〜(d)について、紫外−近赤外吸収スペクトル、粘度および熱伝導度の測定を行った。紫外−近赤外吸収スペクトルについては、紫外可視近赤外(UV―Vis―NIR)分光光度計((株)島津製作所製、UV−3600)を用い、波長350nm〜750nmの領域の吸収スペクトルの測定を行った。粘度については、音叉型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製、SV−10)を用い、20℃の環境にてナノ流体の粘度を測定した。熱伝導度については、熱特性計(DECAGON
DEVICES製、KD2Pro)を用いてナノ流体の熱伝導度を測定した。これらの結果を順に図7〜9に、熱伝導度については表1にも示した。なお、図9の縦軸は、ナノ流体(a)〜(d)の熱伝導度を、水と上記所定量の各保護剤とを含む溶液について25℃において測定した熱伝導度kbfに対する比、として表している。
[評価]
図3〜6から明らかなように、ナノ流体の製造においては、水溶液の温度を充分に低く(本実施形態では、1±1℃)保つことで、平均粒径が2nm以下と小さく、単分散に近い粒度分布を有するAuナノ粒子を含むナノ流体(a)を製造できることが示された。そして、水溶液の温度を室温付近(25℃)と高くして製造されたナノ流体(b)〜(d)については、Auナノ粒子の平均粒径が粗大化してしまっていることが確認できる。なお、ナノ流体(b)(c)については、ナノ流体(a)に比べて保護剤の量(および濃度)が大幅に増加されているにもかかわらず、粒子の粗大化や凝集が生じてしまうことがわかった。さらに、保護剤を含まず、Au(III)イオンの濃度を0.5mMと濃くして製造したナノ流体(d)については、製造されたAuナノ粒子(一次粒子)が凝集して約60nmと巨大な2次粒子を形成しており、分散性の良いナノ流体が得られ難いことが確認された。
なお、図7に示したUV−NIR吸収スペクトルによると、ナノ流体(a)については波長550nm近傍にみられるプラズモン共鳴吸収強度が極めて小さくなっており、かかる吸収スペクトル特性は、Auナノ粒子の殆どが粒径2nm以下のクラスターにより構成されていることを支持するものとなっている。
ナノ流体(a)〜(d)の粘度については、図8に示されたように、Auナノ粒子の大きさにより顕著な差異は見られなかった。
一方で、ナノ流体(a)〜(d)の熱伝導度については、図9に示されたように、Auナノ粒子の大きさが十分に小さい領域(例えば、本実施形態では約25nm未満の範囲)で大きく粒径に依存する傾向があることがわかった。そして、特に、平均粒径が3nm程度以下のAuナノ粒子を含むナノ流体については、25℃において測定した水の熱伝導度(0.598)よりも1.02倍以上と十分に高くなることが予想される。例えば、Auナノ粒子の平均粒径が2nm未満のナノ流体(a)については、熱伝導度が0.616と、水の熱伝導度の1.03倍に達することが確認された。
[実施形態2]
下記の表2に示す条件で、ナノ流体(e)〜(h)を製造した。
すなわち、保護剤として、(e)CTABおよび(f)SDSの他に、(g)SDDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)および(h)TLS(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)を用意した。
そして、これらの保護剤(e)〜(h)のいずれかを0.05g含む、0.1mMのHAuCl水溶液を300mL調製して、それぞれ水溶液(e)〜(h)とした。
これらの水溶液(e)〜(h)中で、図1に示した装置を用いてソリューションプラズマを発生させることで、ナノ流体(e)〜(h)を製造した。ソリューションプラズマの発生条件は、水溶液の温度を15℃に保つこと以外は、上記実施形態1のナノ流体(a)と同様にした。
上記で得られたナノ流体(e)〜(h)について、実施形態1と同様に、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2500SE)を用いてナノ流体中に形成されたAuナノ粒子の形態観察を行い、100個以上のAu粒子について粒度分布を調べた。その結果、得られた平均粒径と粒径の分布幅を下記の表2に示した。
また、実施形態1と同様にしてナノ流体の熱伝導度を測定した。その結果を表2に併せて示した。
なお、表2には、比較のために、実施形態1で製造したナノ流体(a)についての結果も併せて示した。
[評価]
表2から明らかなように、ナノ流体(e)については、ソリューションプラズマによる処理中の水溶液の保護剤の添加量を増やしたうえで、高い温度としたこと以外は、ナノ流体(a)と同様の条件で製造したものである。しかしながら、得られたナノ流体(e)中に形成されたAuナノ粒子の粒径は、ナノ流体(a)のものよりも大幅に大きく、また、ナノ流体(e)の熱伝導度はナノ流体(a)の熱伝導度よりも大幅に低いものであった。ナノ流体(e)〜(h)の間ではAuナノ粒子の粒径および熱伝導度に顕著な差異が見られないことから、Auナノ粒子の粒径と熱伝導度への影響は、使用した保護剤の種類よりも、ソリューションプラズマによる処理中の水溶液の温度に影響によるところが大きいことがわかった。
また、実施形態2で製造されたナノ流体(e)〜(h)は、概ね、実施形態1で製造されたナノ流体(a)と、ナノ流体(b)〜(d)との中間の金ナノ粒子径および熱伝導度を有することが確認できる。すなわち、ナノ流体の熱伝導度は、ソリューションプラズマによる処理中の水溶液の温度により、調整できることが明らかとなった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
2 水溶液(液相)
3 気相
4 ソリューションプラズマ(プラズマ相)
5 容器
6 電極
7 撹拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 ソリューションプラズマ発生装置
11 冷却室

Claims (6)

  1. Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液を用意すること、
    前記水溶液の温度を該水溶液の凝固点以上5℃未満の温度範囲に保ちながら、該水溶液中でプラズマを発生させることで前記Au(III)イオンを還元し、前記水溶液中にAuナノ粒子を形成すること、
    を含む、ナノ流体の製造方法。
  2. 前記水溶液中に平均粒径が3nm以下のAuナノ粒子を形成する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記水溶液中の前記Au(III)イオンの濃度を0.05mM〜0.5mMに調整する、請求項1または2に記載のナノ流体の製造方法。
  4. 前記保護剤として、カチオン性界面活性剤を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記水溶液中に一対の線状電極を配置し、
    前記線状電極間にパルス幅が0.1μs〜5μsで、周波数が10Hz〜10Hzの直流パルス電圧を印加することでプラズマを発生させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記プラズマは、グロー放電プラズマである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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