JP2014152336A - 条鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.1〜1.5%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:0.1〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)およびS:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼片を加熱、熱間圧延、冷却する条鋼の製造方法であって、加熱前の鋼片の表面に、鉄基粉末、ガラス粉末およびSiC粉末よりなる群から選ばれる1種以上を含む被覆層を形成する。
【選択図】図1
Description
加熱前の鋼片の表面に、鉄基粉末、ガラス粉末およびSiC粉末よりなる群から選ばれる1種以上を含む被覆層を形成する点に要旨を有するものである。
2SiC+3O2=2SiO2+2COまたはSiC+2O2=SiO2+CO2
文献1:N Birks and G H meier: Introduction to High Temperature Oxidation of Metals ,1988
文献2:Akie Ichihara and Yoshio Nuri: Sanyo Technical Report Vol.8 No.1 (2001)
t :時間(秒)
A:内部の脱炭限界(92%を代入)
kc:内方酸化スケールの成長速度(下記(3)式を代入)
Cb:フェライト中の炭素の溶解度(質量%)
t :時間(秒)
D2:純鉄中の炭素の拡散係数(下記(5)式を代入)
C1:懸架ばねの炭素濃度[0.54質量%(代表値)を代入]
Cは、条鋼の強度に影響する元素であり、その含有量が多いほど高強度が得られる。本発明の条鋼を高強度ばね等に適用する上で、必要な強度を確保するためには0.1%以上含有させる必要がある。C含有量の好ましい下限は0.2%以上(より好ましくは0.5%以上)である。しかしながら、C含有量が過剰になると冷間加工性が劣化するため、1.5%以下とする必要がある。C含有量の好ましい上限は1.4%以下(より好ましくは1.2%以下)である。
Siは、強度向上に有効な元素であり、本発明の条鋼を高強度ばね等に適用する上で、必要な強度を確保するためには、0.1%以上含有させる必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.2%以上(より好ましくは0.5%以上)である。しかしながら、Si含有量が過剰になると、スケールの剥離性が著しく低下するため、3.0%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい上限は2.5%以下(より好ましくは2.2%以下)である。
Mnは、靭性劣化元素であるSをMnSとして固定し、Sを無害化する上で有用な元素であり、このような効果を十分に発揮させるためには、0.01%以上含有させる必要がある。Mn含有量の好ましい下限は0.1%以上(より好ましくは0.2%以上)である。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、鋳造時の凝固偏析が顕著になり、偏析部で破壊が生じやすくなるため、2.0%以下とする必要がある。Mn含有量の好ましい上限は1.85%以下(より好ましくは1.75%以下)である。
Crは、耐食性向上に寄与する元素であり、このような効果を発揮させるためには、0.1%以上含有させる必要がある。Cr含有量の好ましい下限は0.15%以上(より好ましくは0.2%以上)である。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、粗大なCr系炭化物が生成し、靭性が低下するため、その含有量は2.0%以下とする必要がある。Cr含有量の好ましい上限は1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。
Pは、粒界偏析によって靭性を低下させる不可避不純物であるため、少ないほど良い。本発明では、許容できる上限として0.025%以下とした。P含有量の好ましい上限は0.020%以下(より好ましくは0.015%以下)である。
Sは、粒界脆化や粗大な硫化物形成によって靭性を低下させる不可避不純物であるため、少ないほど良い。本発明では、許容できる上限として0.025%以下とした。S含有量の好ましい上限は0.020%以下(より好ましくは0.015%以下)である。
NiおよびCuは、いずれも耐食性向上元素として有用な元素である。しかしながら、Niを過剰に含有させると、残留オーステナイトの増加によって、最終製品の特性(例えば、引張強さ)が低下する。また、Cu含有量が過剰になると、表面割れを発生させる。こうした観点から、いずれも1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくはいずれも0.8%以下(更に好ましくは0.6%以下)である。尚、これらの元素を含有させるときの好ましい下限は、Niで0.2%以上(より好ましくは0.3%以上)であり、Cuで0.1%以上(より好ましくは0.2%以上)である。
V、Ti、NbおよびZrは、いずれも炭・窒化物(炭化物、窒化物および炭窒化物)形成元素であり、微細組織の生成によって靭性を向上させる効果がある。しかしながら、過剰に含有させると炭・窒化物が粗大化し、靭性が劣化する。こうした観点からして、これらの元素を含有するときは、Vで0.3%以下、Ti、NbおよびZrで0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Vで0.2%以下、Ti、NbおよびZrで0.07%以下(更に好ましくはNbおよびZrで0.05%以下)である。尚、上記の効果を有効に発揮させるためには、Vで0.12%以上であり、Ti、NbおよびZrで0.01%以上(より好ましくはTiで0.05%以上)である。
Moは、鋼片の強度確保に有効であるほか、Pの粒界偏析による靭性低下などの悪影響を低減し、強靭化に有効な元素である。しかしながら、Moは凝固偏析しやすい元素であり、過剰に含有させると偏析部で破壊する虞がある。こうした観点からMo含有量は、1.0%以下とすることが好ましく、より好ましい上限は0.7%以下(更に好ましくは0.5%以下)である。尚、上記の効果を有効に発揮させるためのMo含有量の好ましい下限は、0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上(更に好ましくは0.3%以上)である。
下記表1に示す化学成分組成の鋼片(鋼ビレット)を溶製し、鉄基粉末、或いは鉄基粉末に炭素粉末(配合割合50質量%)で混合したものを、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)を水に溶かしたものと混合して、ノズルからエアゾール化して噴き付けることによって、鋼ビレットの表面に被覆層を形成した。被覆層を形成した鋼ビレットを、下記表2に示す製造条件(750〜850℃での昇温速度、均熱温度、均熱時間、熱間圧延温度、巻取り温度、巻取りから700℃までの平均冷却速度)で線材(直径:15mm)を製造した。得られた各線材(熱間圧延線材コイル)について、下記の方法によってフェライト脱炭およびトータル脱炭の生成状況について評価した。また、線材の表層における炭素割合を評価した。これらの結果を、圧延材特性として下記表3に示す。
線材コイルのトップ部(圧延始め)およびボトム部(圧延終わり)から、それぞれ5巻き目を寸断した。トップ側およびボトム側の1巻きを、それぞれ8等分に分割し(1本当たり20mm)、合計8本の線材片(サンプル)を作製した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面に出るようにしながら樹脂に埋め込み、エメリー紙およびダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計8個の脱炭層深さ測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察し、表層のトータル脱炭層深さおよびフェライト脱炭層深さを測定した。この測定法は、JIS G 0558の顕微鏡による測定法に従った。8個のサンプルの中で、トータル脱炭層深さおよびフェライト脱炭層深さの最大値を評価した。評価基準は、トータル脱炭層深さが0.07mm以下の場合を良好、それより深い場合を不良とした。またフェライト脱炭層深さは、0.01mm以下の場合を合格、それよりも深い場合を不合格とした。
線材の地鉄表層から0.03mm位置の部分(表層)について、炭素含有量を測定し、鋼片全体の炭素含有量に対する割合(質量%)を測定した。この値が大きい方が、脱炭が抑制されていることを示しており、80%以上を合格と評価した。
下記表4に示す化学成分組成の鋼片(鋼ビレット)を溶製し、ガラス粉末、或いはガラス粉末に炭素粉末(配合割合50質量%)で混合したものを、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)を水に溶かしたものと混合して、ノズルからエアゾール化して噴き付けることによって、鋼ビレット表面に被覆層を形成した。被覆層を形成した鋼ビレットを、下記表5に示す製造条件(750〜850℃での昇温速度、均熱温度、均熱時間、熱間圧延温度、巻取り温度、巻取りから700℃までの平均冷却速度)で線材(直径:15mm)を製造した。得られた各線材(熱間圧延線材コイル)について、実施例1と同様の方法によって、フェライト脱炭およびトータル脱炭の生成状況、線材の表層における炭素割合について評価した。これらの結果を、圧延材特性として下記表6に示す。
下記表7に示す化学成分組成の鋼片(鋼ビレット)を溶製し、SiC粉末を、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)を水に溶かしたものと混合して、ノズルからエアゾール化して噴き付けることによって、鋼ビレット表面に被覆層を形成した。下記表8に示す製造条件(750〜850℃での昇温速度、均熱温度、均熱時間、均熱〜抽出までの昇温速度、抽出温度、熱間圧延温度、巻取り温度、巻取りから700℃までの平均冷却速度)で線材(直径:15mm)を製造した。得られた線材(熱間圧延線材コイル)について、実施例1と同様の方法によってフェライト脱炭およびトータル脱炭の生成状況、線材の表層における炭素割合について評価した。これらの結果を、圧延材特性として下記表9に示す。
Claims (11)
- C:0.1〜1.5%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:0.1〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)およびS:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼片を加熱、熱間圧延、冷却する条鋼の製造方法であって、
加熱前の鋼片の表面に、鉄基粉末、ガラス粉末およびSiC粉末よりなる群から選ばれる1種以上を含む被覆層を形成することを特徴とする条鋼の製造方法。 - 前記被覆層は、鉄基粉末を含んで形成される請求項1に記載の条鋼の製造方法。
- 前記被覆層は、ガラス粉末を含んで形成される請求項1または2に記載の条鋼の製造方法。
- 前記被覆層は、更に炭素粉末を含んで形成されるものである請求項2または3に記載の条鋼の製造方法。
- 前記被覆層は、SiC粉末を含んで形成される請求項1〜4のいずれかに記載の条鋼の製造方法。
- 前記被覆層を形成した鋼片を加熱炉に入れ、少なくとも750〜850℃の温度域の昇温速度が20℃/分以上となるようにしながら950℃まで加熱し、次いで温度950〜1150℃、時間15分以上、60分以下の均熱をして加熱炉から抽出し、鋼片温度950〜1150℃を維持しながら熱間圧延および巻取りを行い、この巻取り後5℃/秒以上の平均冷却速度で温度700℃以下まで冷却することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の条鋼の製造方法。
- 前記被覆層がSiC粉末を含んで形成されており、前記950〜1150℃での均熱の後、更に温度1173〜1300℃まで加熱し、直ちに抽出してデスケーリング処理を行い、次いで熱間圧延以後の処理を行う請求項6に記載の条鋼の製造方法。
- 前記1173〜1300℃までの加熱を昇温速度20℃/分以上で行う請求項7に記載の条鋼の製造方法。
- 前記鋼片は、更にNi:1.0%以下(0%を含まない)および/またはCu:1.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜8のいずれかに記載の条鋼の製造方法。
- 前記鋼片は、更にV:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびZr:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含むものである請求項1〜9のいずれかに記載の条鋼の製造方法。
- 前記鋼片は、更にMo:1.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜10のいずれかに記載の条鋼の製造方法。
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