JP2014152261A - バイオマス誘導体の製造方法 - Google Patents

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Kazuishi Sato
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万里子 吾郷
Toshiki Kawamoto
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Abstract

【課題】生産性が高く、環境負荷の少ない、反応時における副反応が少ないセルロース誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し5〜90部の水、3〜40部の塩基性化合物、200〜3000部のビニル基及びニトリル基含有化合物を、温度が0〜100℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするシアノ基含有化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース、リグニン、ヘミセルロースなどのバイオマス(生物資源)を原料とした化合物、及び、その製造方法に関する。
セルロースは植物の構成成分の約50%を占めており、地球上で最も多量に生産されている生物資源である。近年、石油のような化石資源の枯渇や、燃焼による二酸化炭素増加などの環境問題から、化石資源に変えて再生産可能で環境への負荷の少ない生物資源への変換が注目されている。
現在、生物資源である水酸基を置換したセルロース誘導体が、有機溶剤や、水に対して溶解性を示すため、成形性や取扱の容易さ等の観点から様々な分野で利用されている。セルロース誘導体の例として、シアノ基を有するアクリロニトリル、アミド基を有するアクリルアミドなどとセルロースの反応例が知られている。
特開2010−13549号公報 特開昭60−44502号公報 特開昭61−228001号公報
しかしながら、生物資源は、化石資源由来の原材料と比較すると生産性が低い点が課題である。その理由として、セルロースは結晶性であり反応性が低いことがあげられる。反応性の低さを補うために、混練機などが使用されているが、反応のスケールアップが困難である。
また通常、原材料として用いられる生物資源はセルロース単体であり、パルプなどの純度の高いものしか使用されていない。パルプは、セルロースの純度を上げるために、原材料である木材を溶解し、精製した後、セルロースからリグニンやヘミセルロースを分離する工程が必要である。近年、原材料として、草本系生物資源を利用するという検討も始まっているが、原材料の前処理工程、及び前記分離工程で、高温条件や多量の溶媒を用いることが必要であり、環境への負荷が大きい。
さらに、原材料としてセルロース単体を用いても、従来の製造方法では、副反応が起こり目的の官能基のみを導入することが困難である点や、セルロースの水酸基への官能基の導入率が低いため化石燃料由来の原材料を多量に使用し反応後の原材料は廃棄となる点、生産性が低い点、といった課題があった(例えば、特許文献1〜3)。
本発明の目的は、エーテル基含有セルロース誘導体の、生産性が高く、環境負荷の少ない、反応時における副反応が少ない製造方法を提供することを目的とする。また、セルロースを単離しない生物資源を原料としても、生物資源のエーテル基含有化合物を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロースに対して一定量の水、塩基性化合物、及び特定のビニル化合物を反応させることで、効率よく反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、前記反応を用いることで、リグニンやヘミセルロースを含有する生物資源中のセルロースをそのまま使用することも可能であることを見出した。原料としてセルロース、リグニン及びヘミセルロースを含有する生物資源をそのまま使用した場合、リグニンやヘミセルロースの誘導体も含有するため、セルロース単体とは異なる親水特性が得られることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し5〜90部の水、3〜40部の塩基性化合物、200〜3000部のビニル基及びニトリル基含有化合物を、温度が0〜100℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするシアノ基含有化合物の製造方法。
[2]
前記ビニル基及びニトリル基含有化合物が(メタ)アクリロニトリルであることを特徴とする[1]に記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
[3]
前記原料が非可食性の生物資源であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
[4]
前記原料の平均粒子径を0.01〜3000μmとする工程を含む、[1]〜[3]いずれかに記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
[5]
[1]〜[4]いずれかに記載の製造方法でシアノ基含有化合物を得た後に、
該化合物を加水分解する工程、を有することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
[6]
セルロース又はヘミセルロース又はリグニンを主骨格とするシアノエチル基含有化合物において、
該シアノエチル基含有化合物のカルバモイルエチル基及びカルボキシエチル基の比率がシアノエチル基に対し10%以下であることを特徴とする、シアノエチル基含有化合物。
[7]
シアノエチル基、カルバモイルエチル基、カルボキシエチル基のうち少なくとも1つ以上の官能基を有するリグニン誘導体。
[8]
セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し10〜2000部の水、100〜500部の塩基性化合物、50〜300部のビニル基及びカルボキシル基含有化合物を、温度が0〜80℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
[9]
前記ビニル基及びカルボキシル基含有化合物が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする[8]に記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
[10]
前記原料が非可食性の生物資源あることを特徴とする[8]又は[9]に記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
[11]
前記原料の平均粒子径を0.01〜3000μmとする工程を含む、[8]〜[10]いずれかに記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
[12]
カルボキシエチルセルロースに対し、カルボキシエチルヘミセルロース又はカルボキシエチルリグニンを5%以上含むことを特徴とするカルボキシエチルセルロース含有組成物。
エーテル基含有セルロース誘導体の、生産性が高く、環境負荷の少ない、反応時における副反応が少ない製造方法を提供する。また、セルロースを単離しない生物資源を原料としても、生物資源のエーテル基含有化合物を製造する方法を提供する。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し5〜90部の水、3〜40部の塩基性化合物、200〜3000部のビニル基及びニトリル基含有化合物を、温度が0〜100℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするシアノ基含有化合物の製造方法、である。
また本発明は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し10〜2000部の水、100〜500部の塩基性化合物、50〜300部のビニル基及びカルボキシル基含有化合物を、温度が0〜80℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法、である。
<原料>
本発明の原料は、セルロース、リグニン、ヘミセルロースのうち少なくとも一つ以上を含有する。
本発明におけるセルロースとは、分子式(C6105nで表される炭水化物(多糖類)のことである。本発明におけるヘミセルロースとは、生物資源中のセルロース以外の細胞壁構成多糖類の総称である。前記ヘミセルロースの例としては、キシロースやマンノースがグリコシド結合で高分子化した構造多糖類などがあげられる。本発明におけるリグニンとは、木化した植物中に存在する高分子のフェノール性化合物のことをあらわす。原料はセルロースを単離する必要はなく、ヘミセルロースやリグニンとの混合物でもよい。
本発明におけるセルロースは一部が置換されていても構わない。同様に、一部の官能基が置換されたヘミセルロースやリグニンを原料として用いても構わない。
セルロースとしては、綿、木材、コットンリンター等の天然セルロースでもよいし、再生セルロースでもよいし、バクテリアセルロースなどでもよい。
本発明の原料のセルロースの重合度はどのようなものでも構わないが、2〜5000であることが好ましく、50〜4000であることがより好ましく、100〜3000であることが更に好ましい。重合度が2以上の場合、分子量が好適な範囲となり生成物の特性が向上する。生成物の特性の例としては、後述するシアノ基含有化合物の有する高誘電率といった特性が挙げられる。重合度が5000以下の場合、反応の制御が容易である。
本発明における生物資源とは、化石資源のような枯渇性資源ではなく、再生可能な生物由来の有機資源である。本発明の原料は、非可食性の生物資源を直接利用することもできる。非可食性の生物資源とは、稲ワラやとうもろこしの茎、とうもろこしの芯、バガスといった草本系生物資源、木材や間伐材などである。非可食性の生物資源は、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成される。
通常、非可食性の生物資源を原料として利用する場合、セルロースとリグニンやヘミセルロースの分離工程が必要となるため生産性が低くなるという問題がある。本発明においてはリグニンやヘミセルロースを原料としても反応が進行するため、セルロースを分離せずに反応できることで生物資源を効率よく利用することができる。
原料におけるセルロースを主骨格とする化合物の割合は、生成物の特性が発揮される観点から、30〜100%が好ましく、50〜99%がより好ましい。セルロースを主骨格とする化合物とは、セルロース及びセルロースの官能基が置換された誘導体のことである。同様に、原料における、ヘミセルロースの割合は、0〜30%が好ましい。原料におけるリグニンを主骨格とする化合物の割合は、0〜30%が好ましい。
原料の形状は特には問わないが、反応の均一性を高める観点から、ロータリーカッター等による粉砕機で50mm角より小さく裁断することが好ましい。本発明では、反応速度の観点から、原料を直径0.01〜3000μmにすることが好ましく、0.03〜1000μmにすることがより好ましく、0.05〜100μmにすることが更に好ましく、0.1〜50μmにすることが最も好ましい。原料は、物理的な処理により、粒子状又は粉末状に破砕することが出来る。
<塩基性化合物>
本発明における塩基性化合物とは、塩基性を示す化合物であれば特に限定されない。
塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムtert‐ブトキシド、カリウムtert‐ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドアミン化合物、トリエチルアミン等のアミン化合物、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等のイオン性液体、等が挙げられる。なかでも、反応性の観点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが最も好ましい。これら塩基性化合物は1種類のみを使用してもよいし、併用しても構わない。
<ビニル基及びニトリル基含有化合物>
本発明においてビニル基及びニトリル基含有化合物とは、一つの化合物中に官能基としてビニル基及びニトリル基を有する化合物のことを意味する。前記化合物は、反応性向上の観点から、ビニル基に電子吸引基が結合していることが好ましい。ここでいう反応とは、原料に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの水酸基が、ビニル基に付加してエーテル化合物が生成する反応のことを意味する。
電子吸引基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル基、アミド基、シアノ基などがあげられる。このような電子吸引基をもつ前記化合物は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノエチルアクリレートやシアノメチルアクリレートなどのシアノアクリレート類、3-アミノクロトンニトリル、エトキシメチレンマロンニトリル、シクロヘキセン-1-カルボニトリル、シンナモニトリル、クロトンニトリル、ジアミノマレオニトリル、フマロニトリル等があげられる。
反応を制御する観点から、疎水性のビニル基及びニトリル基含有化合物を使用することが好ましい。本発明における疎水性のビニル基及びニトリル基含有化合物とは、水に対する溶解度が10g/100ml以下である化合物のことを指す。前記化合物の例としては、(メタ)アクリロニトリル、シンナモニトリル、クロトンニトリル、ジアミノマレオニトリル、フマロニトリルが挙げられる。前記化合物のなかでも(メタ)アクリロニトリルは、融点が適した温度帯にあり反応に用いやすい点や、沸点が適した温度帯にあり蒸留による回収が容易である点で、好ましい。
(メタ)アクリロニトリルを用いた場合には、下記の製造方法により、疎水性のシアノ基含有化合物が得られるが、加水分解を行うことによって親水性のカルボキシエチル基含有化合物に変換することもできる。
(メタ)アクリロニトリルは、反応生成物中に残存してしまう不純物を低減させる観点から、不純物の少ないものを用いることが好ましい。また、(メタ)アクリロニトリルは、不純物を減らすために蒸留などの精製を行ってから使用することが好ましい。活性炭などを使用して重合禁止剤を取り除いてもよい。ビニル基及びニトリル基含有化合物の不純物量としては、1%以下が好ましい。
<ビニル基及びカルボキシル基含有化合物>
本発明においてビニル基及びカルボキシル基含有化合物とは、一つの化合物中に官能基としてカルボキシル基及びビニル基を有する化合物のことを意味する。特に限定されないが、ビニル基に電子吸引基が結合していると、反応性が高いことから好ましい。ここでいう反応とは、原料に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの水酸基が、ビニル基に付加してエーテル化合物が生成する反応のことを意味する。
電子吸引基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル基、アミド基、シアノ基などがあげられる。このような化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、シアノアクリレート類、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸エステル類等があげられる。中でも一段階の反応で、純度の高いカルボキシエチル基含有化合物の得られる(メタ)アクリル酸を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸を反応させることで、シアノエチル基やカルバモイルエチル基を全く含まないカルボキシエチル基含有化合物を得ることができる。シアノエチル基やカルバモイルエチル基を加水分解する従来の方法では、加水分解率を高めるためには、強酸や強塩基を使用した厳しい条件が必要となり副反応が起きる場合もあるし、完全に加水分解を進行させることは困難である。カルボキシエチル基含有化合物は、例えば水処理剤、凝集剤、洗浄助剤として使用できる。また、吸水性樹脂の原材料として用いることが出来る。
(メタ)アクリル酸は、不純物の少ないものを用いることが好ましい。特に、3−ヒドロキシプロピオン酸等のビニル基を有さない化合物を有していると、これらの化合物は不活性であるため、反応生成物中に残存する場合がある。前期化合物は製品の物性に悪影響を与える場合があるし、前記化合物が分解すると反応性の高いアクリル酸を生じ、使用中に意図せぬ副反応を起こす場合がある。不純物を減らすための方法としては、蒸留などの精製を行うことが好ましい。活性炭などを使用して重合禁止剤を取り除いてもよい。
(メタ)アクリル酸と塩基性化合物は反応場で中和しても良い。また、あらかじめ中和反応を行った(メタ)アクリル酸塩を用いてもよい。
(メタ)アクリル酸を反応場で中和する場合は、(メタ)アクリル酸の周辺温度が高まることから、カルボキシエチル基含有化合物の生成反応が加速されるというメリットがある。
(メタ)アクリル酸をあらかじめ中和反応により(メタ)アクリル酸塩とする場合は、中和熱の制御を行いやすいというメリットがある。(メタ)アクリル酸は全量を中和してもよいし、一部のみでも構わない。
前記中和反応は、触媒として機能するように、塩基性化合物を過剰量加えておいてもよい。発熱によりアクリル酸が重合反応を起こす場合があるため、中和反応は局所的な発熱を抑制するために攪拌を行うことが好ましい。中和反応は、反応場全体の温度を50℃以下、好ましくは30℃以下に冷却しながら行うのが好ましい。重合反応を抑制するために重合禁止剤を添加してもよい。
アクリル酸塩は固体であり、固体のまま使用しても構わないが、使いやすさの観点から溶媒に溶解させて用いることが好ましい。アクリル酸を中和した際には水が生成するため水溶液として扱うことが好ましい。本発明の反応においては水が重要な役割をはたすことから、中和反応時は水を溶媒とすることが好ましい
<シアノ基含有化合物の製造方法>
本発明におけるシアノ基含有化合物は、塩基性化合物、水、原料、ビニル基及びニトリル基含有化合物の反応により製造される。
前記シアノ基含有化合物の製造方法は、加水分解などの副反応が抑制されるため、ビニル基及びニトリル基含有化合物を有効利用することができる。また、前記製造方法により得られるシアノ基含有化合物は、従来の方法で得られる該化合物とは異なる性質を示すことを見出した。
本発明は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し5〜90部の水、3〜40部の塩基性化合物、200〜3000部のビニル基及びニトリル基含有化合物を、温度が0〜100℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするシアノ基含有化合物の製造方法、である。
シアノ基含有化合物の製造方法として、原料にセルロース、ビニル基及びニトリル基含有化合物にアクリロニトリルを用いた製造方法を例にあげて説明する。
本発明における水の量は、セルロース100部に対して5〜90部であることが好ましく、10〜70部であることがより好ましく、15〜50部であることが更に好ましく、20〜40部であることが最も好ましい。水の量が90以下の場合は、アクリロニトリルに対しての水の付加反応、シアノ基の加水分解反応などの副反応が抑制される。前記副反応で生じる官能基や化合物は、主反応を阻害するため、結果として生産性を低下させるため好ましくない。
アクリロニトリルはセルロース100部に対して200~3000部使用することが好ましく、400〜2000部使用することがより好ましく、500〜1000部使用することが更に好ましく、600〜800部使用することが最も好ましい。反応基質を比較的大量に用いることで、セルロースに導入された官能基と反応基質が相互作用して、セルロースの結晶構造が崩れていくため、反応が速やかに進行する。このため、通常は長時間の反応時間を必要とするか、混練機等の特殊な装置を必要とするか、結晶構造を完全に崩すなどの長時間の前処理を必要とするセルロースの反応を、通常の反応釜で速やかに進行させることが可能となる。
水の量に対するアクリロニトリルの量は、水100部に対して200〜60000部であることが好ましく、800〜10000部であることがより好ましく、1200〜50000部であることが更に好ましく、1600〜3000であることが最も好ましい。アクリロニトリルと水の比率が上記範囲であると、系内の親水性と疎水性のバランスがとれており、セルロースの結晶構造に作用して効率的に反応する。水の量が多すぎる場合には、加水分解や、ビニル基への水の付加反応などの副反応が生じやすくなる場合があり、水の量が少なすぎると反応が遅くなる場合がある。
塩基性化合物の量は、セルロース100部に対して、3〜40部であることが好ましく、5〜35部であることがより好ましく、7〜30部であることが更に好ましく、10〜25部であることが最も好ましい。塩基性化合物の量が少なすぎる場合は反応が遅くなる場合があり、多すぎる場合には副反応が生じる場合がある。
塩基性化合物の量に対するアクリロニトリルの量は、塩基性化合物100部に対して、500〜100000部であることが好ましく、1500〜50000部であることがより好ましく、2000〜30000部であることが更に好ましく、2500〜15000部であることが最も好ましい。塩基性化合物が少なすぎる場合には反応が遅くなる場合があり、多すぎる場合には副反応が生じる場合がある。
塩基性化合物としてアルカリ金属の水酸化物を使う場合には通常水溶液として使用される。本発明においては、上記記載の水を用いて水溶液とする。前記水溶液の濃度は0.1〜40重量%濃度であることが好ましく、5〜38%であることがより好ましく、10〜36%であることが更に好ましく、20〜34%であることが最も好ましい。濃度が低すぎる場合、反応が遅くなる場合があり、濃度が濃すぎる場合には、セルロースの解重合などの副反応が起きる場合がある。
塩基性化合物と原料は反応の際に混合してもよいし、予め塩基性化合物と水からなる水溶液に原料を浸漬させておいても構わない。予め、前記水溶液にセルロースを浸漬しておくと、反応効率が高まるため好ましい。浸漬温度は、0〜80℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましく、10〜40℃であることが更に好ましい。温度が低い場合には、反応促進の効果が得られにくく、温度が高すぎる場合には副反応が生じる場合がある。浸漬時間は5分〜48時間であることが好ましく、15分〜36時間であることがより好ましい。短すぎると反応促進効果が低いし、長すぎても効果は変わらない。浸漬する際は、静置でもよいし、攪拌してもよいし、物理的な力をかけて促進させても構わない。
反応促進のために、原料に対し過剰量の水と過剰量の塩基性化合物に浸漬させた後に、塩基性化合物及び水の割合が上記範囲内となるように圧搾することも可能である。しかしながら、圧搾工程はプレスローラー等を使用した生産性が低い工程である。また、過剰量の塩基性化合物水溶液は、特定の不純物が蓄積されるという問題があり廃液となってしまう。本発明では、特定の条件とすることにより反応性を高めているため、このような処理を行う必要はない。
水100部に対する塩基性化合物の比率は、5〜100部であることが好ましく、10〜80部であることがより好ましく、15〜60部であることが更に好ましく、20〜50部であることが最も好ましい。塩基性化合物の比率が少ない場合には、反応が遅くなる場合があり、多すぎる場合には取扱い性が悪くなる場合がある。
反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、10〜90℃であることがより好ましく、20〜80℃であることが更に好ましい。温度が高すぎると副反応が生じる場合があるし、低すぎる場合には反応速度が遅くなる場合がある。溶媒の沸点により反応温度をコントロールすることは、反応を制御する上で好ましいといえる。溶媒の沸点をコントロールするために、加圧や減圧を行ってもよい。
反応時間は0.5〜24時間であることが好ましく、1〜15時間であることがより好ましく、2〜10時間であることが最も好ましい。反応時間が短すぎると、導入率が低下する場合があり、反応時間が長すぎても効果は少ない。ここで、導入率とは、前記原料中の水酸基のなかで、反応により置換された水酸基の割合のことであり、本反応の場合はシアノアルキル化された水酸基の割合のことである。セルロースの導入率は置換度Dsを用いて求めることが出来る。リグニン等の水酸基の割合は、例えば、JIS K 0070:1992で求めることが出来る。
反応には溶媒を用いてもよい。ここで、溶媒とは、前記原料又はビニル基及びニトリル基含有化合物又は生成物が溶解する媒体のことであり、水は含まない。溶媒はどのようなものを用いてもよいが、溶媒の回収を考慮すると沸点が100℃以下のものを用いることが好ましく、80℃以下のものがより好ましい。溶媒の例としては、アセトニトリル等のニトリル化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、クロロホルム等のハロゲン系化合物、N,N-ジメチルスルホキシドやジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性化合物が挙げられる。ビニル基及びニトリル基含有化合物であるアクリロニトリルを溶媒として用いることも好ましい。
反応終了後のシアノ基含有化合物の回収方法は任意の方法を用いることができる。蒸留等によりシアノ基含有化合物以外の水や前記溶媒、ビニル基及びニトリル基含有化合物等を飛ばしてもよいし、シアノ基含有化合物の貧溶媒を使用して再沈殿させてもよい。沸点が低い前記溶媒を用いている場合、及び、アクリロニトリルを過剰量用いている場合については、これらを回収して再利用することが好ましく、回収方法としては蒸留により回収することが好ましい。前記製造方法では、副反応によるアクリロニトリルの消費が無いといった点から、反応後に残ったアクリロニトリルを再利用することが可能であり、環境への負荷が小さい。
回収後のシアノ基含有化合物は、洗浄を行ってもよい。洗浄は主に、残存している塩基性化合物や未反応のアクリロニトリルを取り除くことを目的とする。洗浄はどのような方法でも構わないが、シアノ基含有化合物の良溶媒と水の混合溶媒で洗い流したり、シアノ基含有化合物を溶媒に溶解させた後に水系溶媒中へ再沈殿を行ったりすることで洗浄することができる。また、イオン交換樹脂等を使用して精製することも可能である。
シアノ基含有化合物の製品形態としては、溶媒に溶解させた状態でも構わないし、乾燥させた状態でも構わない。
本発明の製造方法は、生産性に優れること、シアノエチル基が選択的に導入された誘導体が得られること、ビニル基及びニトリル基含有化合物の反応効率が高いという特徴を有し、誘導体に導入された該化合物以外は、回収し再利用することが可能である。
シアノ基含有化合物の製造方法の工程の前に、前処理を行うことが好ましい。前処理とは、反応に使用する原料の表面積を増やす工程である。前処理はどのような方法でも構わないが、物理的な処理を行うことが反応効率が向上する点で好ましい。また、同時にセルロースの結晶構造の一部を壊すことも好ましいといえる。しかしながら、本発明の反応は、セルロースの結晶構造を壊しながら進行するため、完全に結晶構造を壊す必要はない。
原料は、物理的な処理による前処理により、粒子状又は粉末状に破砕される。本発明では、原料を直径0.01〜3000μmにすることが反応性の観点から好ましく、0.03〜1000μmにすることがより好ましく、0.05〜100μmにすることが更に好ましく、0.1〜50μmにすることが最も好ましい。
セルロースは前処理の後に水、塩基性化合物と混合しても構わないし、これらの化合物と混合しながら前処理を行ってもよい。物理的な処理の装置としては、例えばボールミル、振動ミル、遊星型ミル、ディスクミルなどを使用することができる。
本発明の製造方法は、ヘミセルロースやリグニンに対しても有効であり、ヘミセルロース又はリグニンを主骨格としたシアノ基含有化合物を得ることができる。原料に混合物を用いた場合は、それぞれを主骨格としたシアノ基含有化合物を得ることも可能である。
主骨格がヘミセルロース、リグニンおよびセルロースであるシアノエチル基含有化合物の混合物は、単体の場合とは異なる特性を示す。また、これらの化合物の混合物は、それぞれ分離することも可能である。混合物は原料の段階で分離を行うよりも、前記化合物とした方が物性の差が大きくなることから分離が容易に出来る。このため、セルロースを単離するために必要であった原料の結晶構造の破壊を要せず、簡便な製造方法を提供することが出来る。
<シアノ基含有化合物>
シアノ基含有化合物とは、ヘミセルロース又はセルロースやリグニンを主骨格とし、シアノ基を有する、上記製造方法で得られる化合物である。
例えば、アクリロニトリルを使用した場合には、シアノエチル基がセルロースに導入される。シアノエチルセルロースを、以下の化学式1で示す。
Cell−O−CH2−CH2−CN (化学式1)
(Cell−Oはセルロースと、その水酸基由来の酸素原子を表す。)
シアノエチルセルロースは、疎水性のセルロース誘導体であり、高誘電率等の特徴を示す。シアノエチル基を加水分解すると、カルバモイルエチル基とカルボキシエチル基に変換される。カルバモイルエチル基とカルボキシエチル基の比率は、加水分解の条件によってコントロールすることができる。
シアノ基含有化合物は、誘電率が高い化合物である。シアノ基含有化合物はカルバモイルエチル基やカルボキシエチル基を含有していると誘電率が低下する。
カルバモイルエチル基を有するセルロースを以下の化学式2で示す。
Cell−O−CH2−CH2−CONH2 (化学式2)
(Cell−Oはセルロースと、その水酸基由来の酸素原子を表す。)
シアノ基含有化合物は、加水分解することでカルボキシエチル基含有化合物へと変換することができる。加水分解の際、カルバモイルエチル基やカルボキシエチル基を含有していると、水がこれらの官能基に特異的に吸着されるため、全体に均一に加水分解反応を行うことが困難になる場合があり、ひいては、加水分解を完全に進行させることが困難になる場合がある。
よって、誘電率、及びカルボキシエチル基含有化合物の前駆体としての観点から、セルロース又はヘミセルロース又はリグニンを主骨格とするシアノエチル基含有化合物において、
前記シアノエチル基含有化合物のカルバモイルエチル基及びカルボキシエチル基の比率がシアノエチル基に対し10%以下であること、が好ましい。シアノエチル基に対して、7%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく1%以下であることが最も好ましい。
リグニンの(メタ)アクリロニトリル付加体は、誘電率が高く特徴的な材料である。カルバモイルエチル基やカルボキシエチル基を含有していると誘電率が低下するため、これらの官能基の比率は、シアノエチル基に対して10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく1%以下であることが最も好ましい。また、リグニンにカルバモイルエチル基やカルボキシエチル基を導入した誘導体は、親水性と疎水性の両面の性能をもち、特殊な水処理剤等に好適に用いることができる。
本発明のシアノ基含有化合物は、ニトリル基含有化合物、ビニル化合物への水の付加物、塩類、有機系不純物などの不純物量が少ないほど好ましい。塩類としては、中和により生じる塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムなどがあげられる。有機系不純物としては、反応のニトリル基含有化合物としてアクリロニトリルを用いた場合、2−シアノエタノール、2−シアノエチルエーテル等があげられる。
<カルボキシエチル基含有化合物の製造方法>
本発明は、下記の製造方法によりカルボキシエチル基含有化合物を得ることができる。
(1)前記シアノ基含有化合物を原料として製造したカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
(2)前記原料とビニル基及びカルボキシル基含有化合物を用いて製造したカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
(1)前記シアノ基含有化合物を原料として製造したカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
本発明は、前記記載の製造方法でシアノ基含有化合物を得た後に、
該化合物を加水分解する工程、を有することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法、である。
即ち、前記シアノ基含有化合物を加水分解することによって、親水性の化合物であるカルボキシエチル基含有化合物に変換することができる。
以下、カルボキシエチル基含有化合物の製造方法として、原料にシアノエチルセルロースを用いた製造方法を例として説明する。
加水分解はどのような方法で行っても構わないが、セルロース主鎖の分解を防ぐために酸性ではなく、塩基性の条件で行うことが好ましい。また、生成する親水性官能基によって、反応場が膨潤・高粘度化することがあるため、水溶性の有機溶媒を混合して行うことが好ましい。また、反応性を上げるために物理的に混練しながら行うことも好ましい。物理的に混練する手法としては、押し出し機を使用する方法が挙げられる。
反応時の温度は−30℃〜100℃であることが好ましく、−20℃〜80℃であることがより好ましく、−10℃〜60℃であることが更に好ましく、0℃〜40℃であることが最も好ましい。反応温度が低すぎると、反応速度が遅くなり生産性が低くなるし、シアノエチル基やカルバモイルエチル基の量が比較的多くなり、親水性が低下する場合がある。反応温度が高すぎる場合には、副反応が起きる場合がある。
塩基性化合物の濃度は0.1〜18%に調整することが好ましく、1〜16%にすることがより好ましく、5〜15%であることが更に好ましい。塩基性化合物の濃度が高すぎると副反応が起きる場合があり、塩基性化合物濃度が低すぎると反応に時間がかかる場合がある。
本工程で使用する塩基性化合物は特に制限されない。シアノエチルセルロースの製造時に使用した塩基性化合物をそのまま使用することが好ましい。
加水分解における反応時間は、水添加後1〜36時間であることが好ましい。反応時間が短すぎると加水分解反応が不十分である場合があり、長すぎても効果は変わらない。前記観点から、2〜26時間であることが好ましく、4〜16時間であることがより好ましい。
反応終了後のカルボキシエチルセルロースの回収は任意の方法を用いることができる。蒸留等によりカルボキエチル基含有化合物以外の水や前記溶媒、ビニル基及びカルボキシル基含有化合物等を飛ばしてもよいし、カルボキエチル基含有化合物の貧溶媒を使用して再沈殿させてもよい。
カルボキシルエチルセルロースは、加水分解後に酸でpH3〜10の範囲で中和されることにより、安定性(白色度の維持、溶解性及び溶液の透明性)が向上する。上記酸としては塩酸、硫酸、酢酸等を使用し得るが、経済的な理由から塩酸が好ましい。カルボキシルエチルセルロースは、pHが3〜10の範囲であると分解が起こりにくい。前記pHは、より好ましくは4〜9.5、更に好ましくは5〜9である。増粘を防ぐために、アルコール等の有機溶媒を加えることも好ましい。
前記中和後、沈殿剤でカルボキシルエチルセルロースを沈殿させ、中和により生じた塩(中和剤である上記酸が塩酸の場合には塩化ナトリウム、酸が硫酸の場合には硫酸ナトリウム、酸が酢酸の場合には酢酸ナトリウム)から分離回収してもよい。
上記沈殿剤としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等の溶剤、又は前記それぞれの溶剤と水との混合溶液等を使用し得る。不純物の除去効率及び経済的観点からアセトン、メタノール、又はこれらそれぞれの溶剤と水との混合溶液が好ましい。水と上記溶剤との混合溶液を用いる場合は、アセトン、メタノール等の有機溶剤の含水率(混合溶液中の水の割合)が10〜60重量%であることが望ましい。含水率が60重量%を超えると、カルボキシルエチルセルロースが含水アセトン若しくは含水メタノールに溶けてしまい、沈殿させることは困難となる場合がある。含水率が10重量%を下回ると、沈殿させたカルボキシルエチルセルロースの表面が固化してしまい、洗浄が困難となる。沈殿材は含水率20〜50重量%の含水アセトン若しくは含水メタノールであることが好ましく、更に好ましくは25〜45重量%含水メタノール若しくは含水アセトンである。
加水分解後に洗浄をおこなってもよい。洗浄方法の例としては、水と有機溶剤との混合溶媒で洗浄する方法、再沈殿させる方法等が挙げられる。洗浄に使用する溶液としては、例えば、含水率5〜50重量%のメタノール水溶液を使用することができる。メタノール水溶液の含水率が5重量%未満であると、カルボキシエチルセルロースの表面が固化してしまい、内部に不純物を取り込んでしまう場合がある。前記含水率が50重量%を超えると、カルボキシエチルセルロースがメタノール水溶液に溶け込んでしまい、収率が低下する。メタノール水溶液の含水率は、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。
回収したカルボキシエチルセルロースが有機溶媒及び水等を含んでいる場合には、30〜90℃、1〜60時間、真空下で加熱乾燥することが望ましい。30℃未満であると、有機溶媒及び水を完全に除去することが困難であり、90℃を超えると、乾燥中に変色する場合がある。乾燥時間は1時間より少ないと有機溶媒及び水を完全に除去するのが困難である傾向があり、60時間を超えても、変化はなくエネルギーがかかるのみとなり不経済である傾向がある。そのため、より好ましくは乾燥温度40〜80℃、乾燥時間2〜50時間であり、更に好ましくは乾燥温度50〜70℃、乾燥時間10〜36時間である
本発明の製造方法は、ヘミセルロースやリグニンに対しても有効であり、同様にヘミセルロース誘導体、リグニン誘導体を得ることができる。原料に混合物を用いた場合は、それぞれを主骨格としたカルボキシエチル基含有化合物を得ることも可能である。
主骨格がヘミセルロース、リグニンおよびセルロースであるカルボキシエチル基含有化合物の混合物は、単体の場合とは異なる特性を示す。また、これらの化合物の混合物は、それぞれ分離することも可能である。混合物は原料の段階で分離を行うよりも、前記化合物とした方が物性の差が大きくなることから分離が容易に出来る。このため、セルロースを単離するために必要であった原料の結晶構造の破壊を要せず、簡便な製造方法を提供することが出来る。
(2)前記原料とビニル基及びカルボキシル基含有化合物を用いて製造したカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
本発明は、
セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し10〜2000部の水、100〜500部の塩基性化合物、50〜300部のビニル基及びカルボキシル基含有化合物を、温度が0〜80℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法、である。
本発明におけるカルボキシエチル基含有化合物の製造方法は、塩基性化合物、水、原料、ビニル基及びカルボキシル基含有化合物を混合して行われる。
従来、シアノ基を有するアクリロニトリル、アミド基を有するアクリルアミドなどとセルロースの反応例は知られている。しかし、酸基であるスルホン酸基やカルボキシル基を有するビニル化合物、電子吸引基として弱いエステル基やカルボキシル基を有するビニル化合物の反応例は知られていなかった。特に、カルボキシル基を有するアクリル酸のセルロースへの付加体であるカルボキシエチルセルロースを得るためには、アクリロニトリル、又は、アクリルアミドを付加させた後に加水分解を行うという二段階の反応によって合成されていた。これは、カルボキシル基の電子吸引性が不十分であること、カルボキシル基は触媒である塩基性化合物と中和してしまうために過剰量が必要となり、これによって副反応が生じてしまうと考えられていたことが原因と推定される。しかしながら本発明者らは、酸基を有するビニル化合物や、電子吸引性の弱い官能基の結合したビニル化合物を用いた場合でも反応が進行することを見出した。特に、酸基を有してかつ、電子吸引性の弱いカルボキシル基のみを有する、(メタ)アクリル酸を用いた場合においても、直接セルロースに付加させて一段階で誘導体を得られることを見出した。
以下、カルボキシエチル基含有化合物の製造方法として、原料にセルロース、ビニル基及びカルボキシル基含有化合物にアクリル酸、を用いた反応を例として説明する。
アクリル酸は塩基性化合物と中和反応を起こすため、塩基性化合物の量は少なくともアクリル酸の物質量よりも多く使用する必要がある。
本発明における水の量は、セルロース100部に対して10〜2000部であることが好ましく、50〜1500部であることがより好ましく、100〜1000部であることが更に好ましく、200〜500部であることがもっとも好ましい。アクリル酸は水との親和性が高く、系内の親水度を所定の範囲に保っておくことで反応を速やかに反応させることができる。水の量が多すぎても少なすぎても反応が遅くなる場合がある。
セルロースに対するアクリル酸の量は、セルロース100部に対して50〜300部であることが好ましく、60〜200部であることがより好ましく、70〜150部であることが更に好ましく、80〜120部であることが最も好ましい。アクリル酸の量が多すぎると、過剰なアクリル酸と中和する分だけ、塩基性化合物を大量に使用する必要があるため副反応が生じる場合があり、少なすぎると反応が遅い場合がある。
塩基性化合物としてアルカリ金属の水酸化物を使う場合には通常水溶液として使用される。本発明においては、上記記載の水を用いて水溶液とする。前記水溶液の濃度は0.1〜40重量%濃度であることが好ましく、5〜38%であることがより好ましく、10〜36%であることが更に好ましく、20〜34%であることが最も好ましい。濃度が低すぎる場合、反応が遅くなる場合があり、濃度が濃すぎる場合には、セルロースの解重合などの副反応が起きる場合がある。
塩基性化合物と原料は反応の際に混合してもよいし、予め塩基性化合物と水からなる水溶液に原料を浸漬させておいても構わない。予め、前記水溶液にセルロースを浸漬しておくと、反応効率が高まるため好ましい。浸漬温度は、0〜80℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましく、10〜40℃であることが更に好ましい。温度が低い場合には、反応促進の効果が得られにくく、温度が高すぎる場合には副反応が生じる場合がある。浸漬時間は5分〜48時間であることが好ましく、15分〜36時間であることがより好ましい。短すぎると反応促進効果が低いし、長すぎても効果は変わらない。浸漬する際は、静置でもよいし、攪拌しても構わない。
セルロース100部に対する塩基性化合物の量は、100〜500部であることが好ましく、120〜350部であることがより好ましく、140〜200部であることが更に好ましい。塩基性化合物の量が少なすぎる場合には、反応が遅くなることがあり、塩基性化合物の量が多すぎる場合には副反応が生じる場合がある。
水100部に対する塩基性化合物の比率は、5〜5000部であることが好ましく、10〜500部であることがより好ましく、15〜100部であることが更に好ましく、20〜50部であることが最も好ましい。塩基性化合物の比率が少ない場合には、反応が遅くなる場合があり、多すぎる場合には取扱い性が悪くなる場合がある。
水100部に対するアクリル酸の比率は、2.5〜3000部であることが好ましく、10〜300部であることがより好ましく、15〜100部であることが更に好ましく、20〜50であることが最も好ましい。アクリル酸は水への溶解性が高く、水と一緒にセルロースの水素結合に作用するとともに、溶媒としての作用も有する。所定の範囲にコントロールすることで効率よく反応を進行させることができる。
本反応においては、アクリル酸、塩基性化合物、水の比率を上記範囲とすることがカルボキシルエチル基含有化合物の生成反応を進行させるうえで重要となる。
反応温度は、0〜80℃であることが好ましく、10〜75℃であることがより好ましく、20〜70℃であることが更に好ましい。温度が高すぎると副反応が生じる場合があるし、低すぎる場合には反応速度が遅くなる場合がある。溶媒の沸点により反応温度をコントロールすることは、反応を制御する上で好ましいといえる。溶媒の沸点をコントロールするために、加圧や減圧を行ってもよい。
反応時間は0.5〜24時間であることが好ましく、1〜15時間であることがより好ましく、2〜10時間であることが最も好ましい。反応時間が短すぎると、導入率が低下する場合があり、反応時間が長すぎても効果は少ない。ここで、導入率とは、前記原料中の水酸基のなかで、反応により置換された水酸基の割合のことであり、本反応の場合はカルボキシエチル化された水酸基の割合のことである。セルロースの導入率は置換度Dsを用いて求めることが出来る。リグニン等の水酸基の割合は、例えば、JIS K 0070:1992で求めることが出来る。
通常、カルボキシエチルセルロースは水溶性を示すため、水溶媒で反応を行った場合には増粘性を示す。この場合、反応を均一に行うために強く撹拌を行うことが好ましい。増粘をさけるため、水と混和する貧溶媒を加えてスラリー状で反応させてもよいし、水と混和しない貧溶媒を加えて懸濁状態で反応させてもよい。
反応終了後の回収は任意の方法を用いることができる。蒸留等によりカルボキエチル基含有化合物以外の水や前記溶媒、ビニル基及びカルボキシル基含有化合物等を飛ばしてもよいし、カルボキエチル基含有化合物の貧溶媒を使用して再沈殿させてもよい。前記製造方法では、副反応によるアクリル酸の消費が無いといった点から、反応後に残ったアクリル酸を再利用することが可能であり、環境への負荷が小さい。
回収後のカルボキシエチルセルロースは、洗浄を行ってもよい。洗浄は主に、残存する塩基性化合物や未反応のアクリル酸を取り除くことを目的とする。洗浄はどのような方法でも構わないが、誘導体の貧溶媒と水の混合溶媒で洗い流したり、カルボキシエチルセルロースを水に溶解させた後に再沈殿を行ったりすることで洗浄することができる。また、イオン交換樹脂等を使用して精製することも可能である。
カルボキシエチル基含有化合物の製品形態は、水溶液の状態でも構わないし、乾燥させた状態でもよい。
本発明の製造方法は、ヘミセルロースやリグニンに対しても有効であり、同様にヘミセルロース誘導体、リグニン誘導体を得ることができる。原料に混合物を用いた場合は、それぞれを主骨格としたカルボキシエチル基含有化合物を得ることも可能である
カルボキシエチル基含有化合物の製造方法の工程の前に、前処理を行うことが好ましい。前処理とは、反応に使用する原料の表面積を増やす工程である。前処理はどのような方法でも構わないが、物理的な処理を行うことが好ましい。また、同時にセルロースの結晶構造の一部を壊すことも好ましい。本発明の反応は、セルロースの結晶構造を壊しながら進行するため、完全に結晶構造を壊す必要はない。セルロースは前処理の後に水、塩基性化合物と混合しても構わないし、これらの化合物と混合しながら前処理を行ってもよい。物理的な処理の装置としては、例えばボールミル、振動ミル、遊星型ミル、ディスクミルなどを使用することができる。
原料は、物理的な処理による前処理により、粒子状又は粉末状に破砕される。本発明では、原料を直径0.01〜3000μmにすることが反応速度の観点から好ましく、0.03〜1000μmにすることがより好ましく、0.05〜100μmにすることが更に好ましく、0.1〜50μmにすることが最も好ましい。
主骨格がセルロース、リグニンおよびヘミセルロースであるカルボキシエチル基含有化合物の混合物は、単体の場合とは異なる特性を示す。また、これらの化合物の混合物は、それぞれ分離することも可能である。混合物は原料の段階で分離を行うよりも、前記化合物とした方が物性の差が大きくなることから分離が容易に出来る。このため、セルロースを単離するために必要であった原料の結晶構造の破壊を要せず、簡便な製造方法を提供することが出来る。
<カルボキシエチル基含有化合物>
カルボキシル基含有化合物とは、セルロース、ヘミセルロース、又はリグニンを主骨格とし、カルボキシル基を有する、上記製造方法で得られる化合物である。
カルボキシル基含有化合物の例としては、例えば、アクリル酸を使用した場合には、カルボキシエチル基がセルロースに導入される。カルボキシエチルセルロースを、以下の化学式3で示す。
Cell−O−CH2−CH2−COOX (化学式3)
(Cell−Oはセルロースと、その水酸基由来の酸素原子を表す。
XはH、又は金属塩、又はアンモニウム塩を表す。)
カルボキシエチルセルロースは、特異な親水特性を示すため原料としての利用に有望なセルロース誘導体といえる。
本発明のカルボキシルエチル基含有化合物は、ヘミセルロース、及び/又は、リグニンを主骨格とした化合物を含有することも好ましい。これらの化合物は、親水性挙動がカルボキシエチルセルロースとは異なるため、水処理剤や吸水性樹脂として使用した際に、異なる特性を示すため好ましい。ヘミセルロース、及び/又はリグニンを主骨格とする化合物は、セルロースと同じ官能基が導入されていることが好ましい。ヘミセルロース、及び/又はリグニンを主骨格とする化合物の量は、カルボキシエチルセルロースに対して1〜99%であることが好ましく、5〜80%であることがより好ましく10〜70%であることが更に好ましく、20〜60%であることが最も好ましい。これら誘導体の混合物を得るためには、セルロースと、ヘミセルロース、及び/又は、リグニンの混合物を原料として、カルボキシルエチル化合物を製造することが好ましい。
本発明カルボキシルエチル化合物は、界面活性剤、化粧品等の添加剤、洗浄剤、金属吸着剤、金属凝集剤、塩基性蛋白質等の各種カチオン性物質との相互作用を利用した吸着剤や凝集材、医薬品、食品、塗料及び動物用飼料の増粘剤、保形剤、乳化剤等の添加剤、壁材組成物及び建材組成物、掘削水、汚水等の粘度調整剤として利用することができる。
(1)誘導体の置換基の定性:フーリエ変換赤外分光測定(FT−IR)
十分に乾燥した試料を用いてKBr錠剤ペレットを作製し、透過法(分解能4cm-1;積算32回)にてFT−IRスペクトルを得た。測定には日本分光(株)製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR670plusを用いた。シアノ基、カルバモイルエチル基、カルボキシルエチル基の生成を確認した。
(2)導入率の算出:核磁気共鳴装置(NMR)
作製した試料を重水(カルボキシエチルセルロースの場合)またはジメチルスルホキシド−d6(シアノエチルセルロースの場合)に溶かし、NMRチューブに入れ、1H−NMR測定を行った。測定条件はScans:64、relaxaion−delay:5[s]とした。測定には日本電子社製JEM−ECA400を用いた。各シグナルの積分値から式(1)よりカルボキシエチル基の置換度DS1を、式(2)よりシアノエチル基の置換度DS2を、式(3)よりカルバモイルエチル基の置換度DS3を算出した。
Figure 2014152261
ただし、I2.25-2.71、I2.31-2.40、I2.6-3.0、およびI2.80-4.35はそれぞれ2.25−2.71ppm、2.31−2.40ppm、2.6−3.0ppm、および2.80−4.35ppmのシグナルの積分値を示す.
上記置換度DS1、DS2、DS3を用いて、下記式よりセルロースへの官能基の導入率を求めた。
カルボキシエチル基の導入率 = DS1/3 (4)
シアノエチル基の導入率 = DS2/3 (5)
カルバモイルエチル基の導入率 = DS3/3 (6)
木材由来の結晶性セルロース(W−100G、日本製紙ケミカル株式会社)21gと30wt%水酸化ナトリウム水溶液10gをボールミル専用容器(窒化ケイ素の容器)に入れ、フリッチュ製遊星型ボールミル装置にセットした。室温(25℃)下でボールミル処理を行い、セルロース混合物を得た。処理条件は、“300rpm、10分粉砕−10分休止”の処理プログラムを繰り返すことにより、実質の粉砕処理時間を1時間(全行程のプログラムの合計は2時間)とした。
ボールミル処理によって得られたセルロース混合物3g(質量比でセルロース:水酸化ナトリウム:水=21:3:7)とアクリロニトリル(和光純薬株式会社)15gをナス型フラスコ(100ml)に入れ、撹拌子を使用し室温(25℃)下で4時間撹拌した。反応させた試料から、エバポレーター(東京理科器械製)を使用し、室温(25℃)下で、800Pa、45分間の条件で未反応のアクリロニトリルを回収した。残った固体試料を40℃で1日間真空乾燥し、3.06gのシアノエチルセルロースを回収した。シアノエチル基の導入率は0.37であった。また、カルバモイルエチル基、カルボキシルエチル基は確認されなかった。
一連の操作中に水酸化ナトリウムが変化していないと考えると、このシアノエチルセルロースは、0.29gの水酸化ナトリウムを含有しているはずであり、シアノエチルセルロース自体は2.77gであるといえる。原料のセルロースは2.03g使用しており、増加分がすべてアクリロニトリルの付加分であると仮定すると、シアノエチル基の導入率が0.37ということは妥当な結果といえる。
また、一連の操作で系外に回収された重量は、14.94gであり、これを1H−NMRにて分析したところ、アクリロニトリルと水の混合物であることが確認された。系内に加えられた水は0.68gであるので、回収されたアクリロニトリルは14.26gである。反応した0.74gとあわせると15gであり、アクリロニトリルは副反応により消費されていないことが確認された。回収されたアクリロニトリルは蒸留精製等を行って再利用できることから、本製造方法においては、アクリロニトリルを、ほぼ完全に有効利用できる。
木材由来の結晶セルロースのかわりに、竹粉末(直径0.3μm−1mm)を使用し、実施例1と同様の実験を行った。同様に反応が進行し、シアノエチル基が導入されていることを確認できた。
100mlの丸底フラスコ中に木材由来の結晶性セルロース(W−100G、日本製紙ケミカル株式会社)3gと30wt%水酸化ナトリウム水溶液16gを入れ、室温(25℃)で20分間、静置状態で浸漬させた。そこへ、アクリル酸(ナカライテスク株式会社製)5gを加えた。撹拌機(スリーワンモータ製 TYPE HEIDON 300G)に撹拌羽を付けたものを用いて、150rpmで攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、内温50℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、フラスコをオイルバスから外し室温まで冷却させた。そこにメタノール(ナカライテスク株式会社)100mlを入れ再沈殿させた。遠沈管(アズワン株式会社)に移しユニバーサル冷却遠心機(株式会社久保田製作所)で、10℃、8000rpmの条件で5分間遠心分離を行い、沈殿物を回収した。残存した液体を分析したところ、アクリル酸の副反応物は検出されなかった。
メタノールを蒸留分離することで、残存アクリル酸と塩基性化合物の水酸化ナトリウムは再利用可能であることが分かった。
回収した沈殿物にメタノールと水の混合溶媒(重量比でメタノール:水=8:2)100mlを加えて洗浄を行った。ユニバーサル冷却遠心機にて、10℃、8000rpmの条件で5分間遠心分離を行い、固形試料を回収した。洗浄はpH=7〜8になるまで繰り返し行った。回収した固形試料を40℃で24時間、真空乾燥した。
真空乾燥した試料をフラスコにうつし、水200mlを加え、室温(25℃)にて、1時間かけ撹拌しながら溶解した。溶液を遠沈管に移し、ユニバーサル冷却遠心機で、10℃、8000rpmの条件で5分間遠心分離を行った。上澄み部分のみを、アセトン(ナカライテスク株式会社)1リットルの中に加え再沈殿した。再沈殿物を、ユニバーサル冷却遠心機で、10℃、8000rpmの条件で5分間遠心分離を行うことにより回収した。回収物を40℃で24時間、真空乾燥させた。回収物はカルボキシル基の導入率が0.124のカルボキシエチルセルロースであり、アクリル酸がセルロースに付加していることが確認できた。
[比較例1]
アクリル酸の代わりにアクリロニトリルを用いて実施例3と同様の操作を行った。水が多いため、アクリロニトリルの付加とともに、シアノエチル基の加水分解反応が進行し、カルボキシエチル基と微量のカルバモイルエチル基を有する化合物が生成した。カルボキシエチル基の導入率は0.12であった。また、反応時間を延ばしても、カルボキシエチル基の導入率はほとんど変化しなかった。また、再沈殿後の溶液中にはアクリルアミド、アクリル酸が検出された。また、シアノ基が加水分解されて生成したアンモニウムイオンが検出された。雑多な化合物の混合溶液となり、それぞれの回収、再利用は困難であった。
[比較例2]
アクリロニトリルの量を30gとする以外は比較例1と同様の操作を行った。比較例1と同様に、アクリロニトリルの付加とともに、シアノエチル基の加水分解反応が進行し、微量のシアノエチル基、微量のカルバモイルエチル基と、カルボキシエチル基が生成した。導入率はシアノエチル基が0.04、カルバモイルエチル基はごく微量、カルボキシエチル基は0.26であった。アクリロニトリルを大量に用いているが、セルロースが親水性となり、アクリロニトリルと反応効率が低下してしまい、導入率はあがりにくい。また、比較例1と同様にアクリロニトリルの一部が加水分解されていることが確認された。
[比較例3]
木材由来の結晶性セルロース(W−100G、日本製紙ケミカル株式会社)0.5gと1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(Solvent Innovation)(以下、イオン性液体とする)4.5gを200mlのセパラブルフラスコ(柴田科学株式会社)に入れ、80℃でスターラーにて30分撹拌しセルロースを溶解した。次にジメチルスルホキシド(関東化学株式会社)5mlを加え1分間撹拌した。更に、水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)を砕いて粉末にしたもの2.46gとアクリロニトリル(和光純薬株式会社)5gを加えた後、80℃に昇温し2時間反応させた。室温まで冷却した後、メタノール(ナカライテスク株式会社)100mlを入れ沈殿させた。沈殿物を40℃で1日間真空乾燥させた。水が存在しないため、アクリロニトリルとセルロースの反応は進行しなかった。

Claims (12)

  1. セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し5〜90部の水、3〜40部の塩基性化合物、200〜3000部のビニル基及びニトリル基含有化合物を、温度が0〜100℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするシアノ基含有化合物の製造方法。
  2. 前記ビニル基及びニトリル基含有化合物が(メタ)アクリロニトリルであることを特徴とする請求項1に記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
  3. 前記原料が非可食性の生物資源であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
  4. 前記原料の平均粒子径を0.01〜3000μmとする工程を含む、請求項1〜3いずれかに記載のシアノ基含有化合物の製造方法。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の製造方法でシアノ基含有化合物を得た後に、
    該化合物を加水分解する工程、を有することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
  6. セルロース又はヘミセルロース又はリグニンを主骨格とするシアノエチル基含有化合物において、
    該シアノエチル基含有化合物のカルバモイルエチル基及びカルボキシエチル基の比率がシアノエチル基に対し10%以下であることを特徴とする、シアノエチル基含有化合物。
  7. シアノエチル基、カルバモイルエチル基、カルボキシエチル基のうち少なくとも1つ以上の官能基を有するリグニン誘導体。
  8. セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうち少なくとも一つ以上を含有する原料と、該原料100部に対し10〜2000部の水、100〜500部の塩基性化合物、50〜300部のビニル基及びカルボキシル基含有化合物を、温度が0〜80℃、時間が0.5〜24時間で混合することを特徴とするカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
  9. 前記ビニル基及びカルボキシル基含有化合物が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項8に記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
  10. 前記原料が非可食性の生物資源あることを特徴とする請求項8又は9に記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
  11. 前記原料の平均粒子径を0.01〜3000μmとする工程を含む、請求項8〜10いずれかに記載のカルボキシエチル基含有化合物の製造方法。
  12. カルボキシエチルセルロースに対し、カルボキシエチルヘミセルロース又はカルボキシエチルリグニンを5%以上含むことを特徴とするカルボキシエチルセルロース含有組成物。
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WO2017033945A1 (ja) * 2015-08-24 2017-03-02 株式会社ニコン 誘電エラストマー、誘電エラストマーの製造方法、誘電エラストマーアクチュエータ、及び、補助用具

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