JP2014152206A - 水系組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムと、水とを含有している水系組成物であって、前記カチオン化キサンタンガムが前記水に溶解されてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって調製された水系組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カチオン化キサンガムと水とを用いて調製された水系組成物及びその製造方法に関する。
従来、医薬品、化粧品、農業製品や工業製品等の添加剤として、水溶性の天然高分子を用いる試みがなされている。
かかる天然高分子の1つとして、キサンタンガムが知られている。キサンタンガムは、純粋培養された微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas Campestris)が醗酵過程で菌体外に蓄積するアニオン性の高分子多糖類である。該キサンタンガムは、極めてシュードプラスチックな高粘度を示し、増粘性、高い懸濁安定性、及び特別な流動学的性質を有するため、医薬品添加剤、化粧品添加剤、農業製品用添加剤や工業製品用添加剤等として、主として粘性の付与等を目的として使用されている。
該キサンタンガムは、単独で水に溶解させた場合には、得られた水溶液はゲル化せず、ゲル状の性質を示さない(ゲル性を有しない)が、ローカストビーンガムやグルコマンナンと共に水に溶解させることによって、得られた水溶液はゲル化し、ゲル状の性質を示す(ゲル性を有する)ことが、知られている。
一方、キサンタンガムの水酸基の一部をカチオン化したカチオン化キサンタンガムが提案されており、該カチオン化キサンタンガムは、これを含有している水系組成物に粘性を付与し得ることが知られている(特許文献1、2参照)。
特開2007−63446号公報 特開2012−1676号公報
しかし、上記特許文献1、2に示されるような水系組成物は、ゲル化しておらず、このように、カチオン化キサンタンガムによって水系組成物にゲル性を付与することは困難である。
また、カチオン化キサンタンガムは、キサンタンガムと類似したシュードプラスチックな流動特性を有するのにもかかわらず、該キサンタンガムとは異なり、上記したローカストビーンガムやグルコマンナンと共に水に溶解させても、得られた水系組成物にゲル性を付与するのは困難である。
一方、カチオン化キサンタンガムを用いて水系組成物にゲル性を付与することが可能となれば、該水系組成物を種々の製品等に適用した際、かかる特性に起因して該製品等の多様性を高めることが可能となる。
本発明は、上記問題点に鑑み、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
カチオン化キサンタンガムは、室温で水や、水と有機溶媒との混合溶液に溶解させても、得られた水系溶液中では、前記カチオン化キサンタンガムが分子内で架橋している。このため、該水系溶液はゲル性を有しない。
本発明者らは、かかる知見に着目して鋭意検討を重ね、上記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とし、該分子内での架橋が解かれたカチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって、該水系溶液にゲル性を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る水系組成物は、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムと、水とを含有している水系組成物であって、
前記カチオン化キサンタンガムが前記水に溶解されてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって調製されたものである。
かかる構成の水系組成物は、前記カチオン化キサンタンガムが前記水に溶解されてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させて調製されたものであることによって、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性を有する。
ここで、このように水系組成物がゲル性を有することとなるメカニズムは、以下の通りである。
すなわち、水酸基を複数有するキサンタンガムは、水酸基に由来するアニオン性を有しているが、かかる水酸基の一部がカチオン化されて得られたカチオン化キサンタンガムは、上記水酸基(アニオン性基)に加えてカチオン性基も有している。
このようなカチオン化キサンタンガムを室温で水に溶解させた場合には、カチオン化キサンタンガムのカチオン性基とアニオン性基との間での架橋が、分子間よりも分子内で優勢に生じるため、得られた水系溶液は、ゲル化しない。
しかし、該水系溶液中におけるカチオン化キサンタンガムの分子内での架橋が解かれることによって、該カチオン化キサンタンガムの分子鎖がほぐれることになる。そして、分子鎖がほぐれた状態にあるカチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって、上記水系溶液がゲル化する。
このようにして、上記水系溶液がゲル状となり、ゲル性を有する水系組成物が得られる。
従って、上記構成によれば、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。
また、本発明においては、前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることが、前記水系溶液を加熱処理することによって行われることが好ましい。
かかる構成の水系組成物によれば、前記水系溶液を加熱することによって、該水系溶液中でのカチオン化キサンタンガム分子の運動性を増加させることができ、これにより、上記分子内での架橋が解かれる。そして、加熱後に冷却されることによって、カチオン化キサンタンガム分子の運動性が低下する。これにより、アニオン性基とカチオン性基との間で引力が生じるが、このとき、カチオン化キサンタンガムの分子鎖がほぐれているため、分子内での架橋よりも分子間での架橋の方が優勢に生じる。従って、上記加熱処理によってカチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることができ、これにより、上記水系溶液がゲル化して、ゲル性を有する水系組成物が得られる。
また、本発明に係る水系組成物においては、
前記加熱処理の加熱温度が50℃以上であることが好ましい。
かかる構成によれば、より短時間で、より確実に、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。
また、本発明に係る水系組成物においては、
水に溶解させたときに互いに反対の液性を示す第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とをさらに含有しており、
前記分子内での架橋が解かれた状態とすることが、前記水系溶液に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行われ、
前記分子間で架橋させることが、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行われることが好ましい。
かかる構成の水系組成物によれば、上記のように水系溶液のpHを変更することによって、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。また、このようにpHの変更によって上記のようにゲル性が付与されるため、水系組成物は、簡便に調製されるものとなる。
ここで、上記pHの変更によって水系組成物がゲル性を有することとなるメカニズムは、以下の通りである。
すなわち、カチオン化キサンタンガムを水に添加したとき、該カチオン化キサンタンガムは、電離(カチオン性基及びアニオン性基が電離)することによって該水に溶解する。すなわち、カチオン化キサンタガムが水に溶解しているときには、カチオン性基及びアニオン性基は、電離している。
そして、カチオン化キサンタンガムを溶解させた水系溶液中では、電離したカチオン性基と電離したアニオン性基との間の引力がカチオン化キサンタンガムの分子間よりも分子内で優勢に生じるため、カチオン化キサンタンガムは、分子内で架橋された状態となっている。
また、カチオン化キサンタンガムの等電点と上記水のpHとが近づく程、カチオン性基の電離とアニオン性基の電離とが同程度に生じるようになり、一方、カチオン性基またはアニオン性基のうち、等電点より酸性側ではカチオン性基の電離、塩基性側ではアニオン性基の電離が、他方の電離よりも多く生じるようになる。
上記より、上記構成の水系組成物によれば、前記水系溶液に前記第1のpH調整剤を含有させて、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、含有させる前の水系溶液のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって、上記カチオン性基またはアニオン性基のうち、一方の電離が他方の電離よりも多く生じることになる。これにより、分子内でカチオン性基とアニオン性基との間の引力が低下し(反発力が大きくなり)、カチオン化キサンタンガムの架橋が解かれた状態となる、すなわち、カチオン化キサンタンガムの分子鎖がほぐれた状態となる。
そして、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって、カチオン性基の電離の程度とアニオン性基の電離の程度とが近づくことになる。これにより、カチオン性基とアニオン性基との間の引力が生じるが、このとき、カチオン化キサンタンガムの分子鎖がほぐれているため、上記引力は、分子内よりも分子間で優勢に生じる。これにより、カチオン化キサンタンガムが分子間で架橋されることになり、上記水系溶液がゲル化する。
以上より、上記のように前記水系溶液のpHを変更することによって、ゲル性が付与された水系組成物が得られる。
また、本発明に係る水系組成物においては、前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量が0.1meq/g以上3.0meq/g以下であることが好ましい。
かかる構成によれば、カチオン性基とアニオン性基とのバランスを適切なものとすることができるため、より確実に分子間架橋が形成され易くなる。
また、本発明に係る水系組成物の製造方法は、
キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムを水に溶解させてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋を解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって水系組成物を調製する工程を備える。
また、本発明に係る水系組成物の製造方法においては、
前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることを、前記水系溶液を加熱処理することによって行うことが好ましい。
また、本発明に係る水系組成物の製造方法においては、
水に溶解させたときに互いに反対の液性を示す第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とを用い、
前記分子内での架橋が解かれた状態とすることを、前記水系溶液に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行い、
前記分子間で架橋させることを、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行うことが好ましい。
以上の通り、本発明によれば、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。
以下に、本発明に係る水系組成物の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態の水系組成物は、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムと、水とを含有している水系組成物であって、
前記カチオン化キサンタンガムが前記水に溶解されてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって調製されてなる。また、該水系組成物は、前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることが、前記水系溶液を加熱処理することによって行われるように構成されている。
前記カチオン化キサンタンガムは、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるものである。かかるカチオン化キサンタンガムは、キサンタンガムに由来する水酸基(アニオン性基)と、カチオン化剤に由来するカチオン性基とを有している、すなわち、アニオン性基とカチオン性基とを有している。
前記カチオン化は、好ましくは第4級窒素含有基での置換によるものであり、前記カチオン化キサンタンガムは、好ましくはキサンタンガムの水酸基の一部が第4級窒素含有基で置換されたキサンタンガムである。第4級窒素含有基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられるが、該第4級窒素含有基は、これらに特に限定されない。
Figure 2014152206
[式中、R1およびR2は、各々独立して、炭素原子数1〜3個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基など)であり、R3は、炭素原子数1〜24のアルキル基、またはアルケニル基である。]
前記キサンタンガムは、純粋培養された微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomanas Campestris)の醗酵過程で菌体外に蓄積されたアニオン性の高分子多糖類である。かかるキサンタンガムは、主鎖たる2個のグルコースと、側鎖たる2個のマンノース及び1個のグルクロン酸とからなる構成単位を主成分として含有している。このようなキサンタンガムは、例えば市場で入手することができ、かかる市場で入手可能なキサンタンガムとしては、エコーガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、モナートガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、ラボールガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、ケルデント(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
前記カチオン化剤は、キサンタンガムに含まれる水酸基の一部を例えば第4級窒素含有基等のカチオン化基により置換するための試薬である。かかるカチオン化剤は、例えば、2,3−エポキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩、または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。これらの塩としては例えば、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。また、上記カチオン化剤としては、その他例えば、塩化ヘキサメトニウム、塩化デカメトニウム、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
かかるカチオン化剤の添加量は、例えばキサンタンガム1質量部に対して、例えば、0.05〜1.5質量部とすることができる。
前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量は、0.1meq/g以上、3.0meq/g以下であることが好ましく、0.8meq/g以上、3.0meq/g以下であることがさらに好ましい。
かかるカチオン電荷量が0.1meq/g以上であることによって、カチオン性基をより増加させて、より多くの上記カチオン性基とアニオン性基との間で、上記分子間での架橋が形成され易くすることができる。また、カチオン電荷量が3.0meq/g以下であることによって、カチオン性基がアニオン性基よりも多くなり過ぎることを抑制して、分子間での架橋がより形成され易くすることができる。
従って、上記カチオン電荷量が0.1meq/g以上、3.0meq/g以下であることによって、カチオン性基とアニオン性基とのバランスが適切なものとなり、これらの間で分子間架橋が形成され易くなるため、より確実に分子間架橋が形成され得る。また、加熱処理により、より短時間で、より確実に、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。
前記カチオン電荷量は、下記の手順に従って測定することができる。
すなわち、カチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミミクロケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定する。
そして、このようにして測定した全窒素含量Mtと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、カチオン電荷量を算出することができる。
有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Ma)×1000/[(窒素の原子量)×100]
前記カチオン化キサンタンガムは、例えば以下のようにして製造することができる。
すなわち、例えば、イソプロピルアルコール濃度が35質量%以上、70質量%以下となるように水及びイソプロピルアルコールを準備し、該水、該イソプロピルアルコール、アルカリ剤、キサンタンガム及びカチオン剤を混合し(混合工程)、該混合工程で得られた混合液を、室温以上の温度下で攪拌して、キサンタンガムとカチオン化剤とを反応させ(反応工程)、該反応工程で得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離し(分離工程)、該分離工程で分離された反応生成物を、アルコールまたは該アルコールを含む含水アルコールで洗浄する(洗浄工程)ことによって、カチオン化キサンタンガムを製造し得る。また、キサンタンガムに対するカチオン化剤の添加量を適宜変更することによって、所望のカチオン電荷量を有するカチオン化キサンタンガムを得ることができる。
なお、前記カチオン化キサンタンガムの製造方法は、キサンタンガムの水酸基を、カチオン化剤を用いてカチオン化することが可能であればよく、上記の方法に特に限定されるものではない。
前記カチオン化キサンタンガムの平均分子量、分子量分布等は、特に限定されるものではなく、加熱処理によるゲル性の付与の程度等に応じて適宜設定することができる。
前記水系溶液は、前記カチオン化キサンタンガムを前記水に溶解させてなるものである。前記カチオン化キサンタムが前記水に溶解されていることによって、該水系溶液が後述するように処理されて、ゲル化するようになっている。
前記水系溶液におけるカチオン化キサンタンガムの含有量は、前記水系溶液をゲル化させることが可能な量であれば特に限定されるものではない。本実施形態では、該含有量は、例えば、前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量、加熱処理における加熱温度や加熱時間等に応じて適宜設定することができる。ここで、前記水系溶液におけるカチオン化キサンタンガムの含有量が多い程、前記水系溶液をゲル化させ易くなる傾向にあり、一方、かかる含有量が少ない程、前記カチオン化キサンタンガムを溶解させ易くなる傾向にある。従って、例えばかかる観点を考慮して前記含有量を設定することができ、例えば、前記含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%に設定することができる。
また、本実施形態においては、前記水系溶液のpHは、前記カチオン化キサンタンガムを溶解させ、ゲル化させることが可能なpHであれば特に限定されるものではなく、前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量、前記カチオン化キサンタンガムの含有量、前記加熱処理における加熱温度や加熱時間等に応じて適宜設定することができる。カチオン化キサンタンガムはその電荷量により等電点が異なり、また、水系溶液のpHが等電点と等しい場合には凝集して溶解しないが、等電点以外の場合には溶解し、加熱することでゲル化する。水系溶液のpHを調整するものとして、例えばクエン酸、リン酸、乳酸、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、トリエタノールアミン(TEA)、その他任意の酸、アルカリを用いることができる。
また、カチオン化キサンタンガムを水に溶解させた際、該カチオン化キサンタンガムの等電点と水のpHとが近いことに起因して、該カチオン化キサンタンガムが凝集して溶解しない場合がある。この場合には、分子内の架橋を弱め、カチオン化キサンタンガムを水に溶解させ易くするために塩などの電解質を加えることができる。例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)その他任意の電解質を使用することができる。
また、本実施形態の水系組成物は、水とカチオン化キサンタンガムの他に通常化粧料、医薬品、工業製品等で使用される任意の添加剤を含有することができる。
かかる任意成分としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のポリオール類、タマリンドガム、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の多糖類若しくは高分子化合物、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等の液体油脂、ヤシ油、パーム油、シア脂等の固体油脂、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性ポリシロキサン等のシリコーン油及びその誘導体、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノステアレート等の親油性非イオン界面活性剤、モノステアリン酸デカグリセリル、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−ソルビタンテトラオレエート、POE−ベヘニルエーテル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の親水性非イオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等の陰イオン界面活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、エデト酸二ナトリウム、エチドロン酸4ナトリウム等の金属イオン封鎖剤、その他の粉末成分、スクラブ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、中和剤、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、アルギニン等)、有機アミン、防腐剤(フェノキシエタノール、グリセリンエチルヘキシルエーテル、メチルパラベン等)、殺菌剤、消炎剤、収れん剤、美白剤(アスコルビン酸ナトリウム等)、ビタミン類、アミノ酸、血行促進剤、賦活剤、賦形剤、清涼剤、消臭剤、各種抽出物、香料、色素、顔料、その他、グリチルリチン酸カリウム、オウレンエキス、プラセンタエキス等の有効成分等が挙げられる。しかし、本発明はもちろんこれらの例に限定されるものではない。
前記加熱処理は、前記水系溶液を加熱する処理である。また、該加熱を停止することによって、前記水系溶液は冷却されることになる。
この加熱処理において、前記水系溶液を加熱することによって、該水系溶液中でのカチオン化キサンタンガム分子の運動性を増加させることができる。これにより、該水系溶液中で、カチオン性基とアニオン性基との間での引力に抗して、カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋が解かれる。
そして、加熱後に冷却されることによって、カチオン化キサンタンガム分子の運動性が低下する。これにより、アニオン性基とカチオン性基との間で引力が相対的に大きくなる。このとき、カチオン化キサンタンガムの分子鎖がほぐれているため、分子内での上記引力よりも分子間での上記引力の方が優勢に生じる、すなわち、分子内での架橋よりも分子間での架橋の方が優勢に生じる。従って、上記加熱処理によってカチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることができ、これにより、前記水系溶液がゲル化されて、ゲル性を有する水系組成物(ゲル性水系組成物)となる。
前記加熱処理で用いられる加熱装置については、上記水系溶液中のカチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解くために必要な熱を、上記水系溶液に加えることが可能なものであれば、特に限定されず、従来公知の加熱装置の使用が可能である。
前記加熱処理の加熱温度及び加熱時間は、前記水系溶液中のカチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解き得る程度の温度及び時間であれば、特に限定されるものではなく、前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量、前記カチオン化キサンタンガムの含有量、添加剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
ここで、前記加熱温度が高い程、前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解き易くなる傾向にある。
従って、例えばかかる観点を考慮して前記加熱温度を適宜設定することができ、前記加熱温度は、例えば、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上に設定することができる。また、前記加熱温度は、通常150℃以下に設定することができる。
前記加熱時間も、適宜設定することができる。
また、前記加熱処理における冷却は、通常、自然放冷によって行われるが、その他、従来公知の冷却装置を用いて冷却することを採用することもできる。
また、該冷却における冷却速度も、特に限定されるものではない。
前記カチオン化キサンタンガムは水に分散させ、攪拌することで溶解する。前記加熱工程の開始は、カチオン化キサンタンガムを分散させる前からでも、分散後溶解させる工程中(溶解させている間)でも、溶解させた後でも良い。また、上記分散後溶解させる工程中に、加熱と冷却とを繰り返しても良い。
より具体的には、例えば、前記加熱処理には、予め加熱された水に前記カチオン化キサンタンガムを溶解させ、かかる加熱状態を上記したような加熱時間の間維持した後、冷却するような態様や、予め加熱された水に前記カチオン化キサンタンガムを溶解させた後、得られた水系溶液を一旦冷却し、その後、再度加熱してさらに冷却するような態様も含まれる。
また、前記加熱処理には、水にカチオン化キサンタンガムを分散させ、かかる混合物を加熱しながら溶解させた後、冷却する態様や、かかる混合物を加熱しながら溶解させた後、引き続き得られた水系溶液を加熱した後、冷却するような態様も含まれる。
また、水にカチオン化キサンタンガムを分散させ、溶解させた後(室温下で)、静置下で加熱した後、冷却するような態様も含まれる。
さらに、前記加熱処理には、後述する実施例に示すように、水にカチオン化キサンタンガムを分散させ、かかる混合物に前記pH調整剤を加え、水系溶液のpHを、pH調整剤の添加前よりも等電点から離れたものとすることによって、カチオン化キサンタンガムを溶解させつつ、該カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を予め解かれた状態とし、この状態にある水系溶液を加熱処理することによって、上記分子内での架橋が一層解かれた状態とした後、分子間で架橋させるような態様も含まれる。
続いて、本実施形態の水系組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の水系組成物の製造方法は、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムを水に溶解させてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋を解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって水系組成物を調製する工程を備える。
また、前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることを、前記水系溶液を加熱処理することによって行う。
具体的には、本実施形態の製造方法は、カチオン化キサンタンガムを水に添加し、撹拌しながら溶解させて水系溶液を調製する工程(水系溶液調製工程)と、得られた水系溶液を加熱処理する工程(加熱処理工程)とを備えている。これらの工程を実行することによって、前記水系溶液がゲル化されてなるゲル状の水系組成物が製造される。
前記水系溶液調製工程では、一般的に溶質を溶媒に溶解させるために用いられる従来公知の撹拌機器等を用いて、前記カチオン化キサンタンガムを前記水系溶媒に溶解させることができる。
前記加熱処理工程では、前述したような加熱装置を用いて、前述したように、前記水系溶液を加熱することができる。また、該加熱後、自然放冷したり、一般的に加熱処理された処理物を冷却するために用いられる従来公知の冷却装置を用いたりして、前述したように、前記加熱された水系溶媒を冷却することができる。
なお、本実施形態の水系組成物の製造方法は、上記に特に限定されるものではない。
また、上記したように、カチオン化キサンタンガム及び水以外のその他の添加剤を前記水系溶液に含有させる場合においては、前記水に対する前記カチオン化キサンタンガムと前記その他の添加剤との間の添加順序は、特に限定されるものではない。
上記の通り、本実施形態の水系組成物によれば、前記水系溶液を加熱処理することによって、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られるため、水系組成物は、簡便に調製されるものとなる。また、このように加熱処理することによってゲル性が付与されるため、水系組成物は簡便に調製されるものとなる。
また、前記加熱処理前の前記水系溶液は、ゾル状態であるため、前記水系溶液は取り扱い易く、また、所望の形状の型等に充填し易い。そして、この水系溶液を前記加熱処理によってゾルからゲルに変化させてゲル性の水系組成物が得られるため、該水系組成物は、製造性に優れており、しかも、多様な形状に成形され得る。
また、前記加熱処理前の前記水系溶液を対象物に塗布した後、塗布された前記水系溶液を前記加熱処理することによって、対象物上でゾルからゲルにさせて、塗布されたゲル性の水系組成物を得ることもできる。例えば、ゾル状の製品として水系溶液を使用者に提供し、該水系溶液を使用者が毛髪や肌に塗布した後、加熱処理することで、これらに塗布されたゲル性の水系組成物が得られる。このように、使用時にゲル化させて使用する製品として、前記水性溶液を提供し、その後、加熱処理することも可能である。
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態の水系組成物は、前記加熱処理を行う代わりに、以下のように、第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とで前記水系溶液のpHを変更することによって調製されたものである。それ以外は、上記第1実施形態と同様であるため、説明を繰り返さない。
具体的には、本実施形態の水系組成物は、水に溶解させたとき(すなわち、水溶液の状態で)に互いに反対の液性を示す第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とをさらに含有しており、
前記分子内での架橋が解かれた状態とすることが、前記水系溶液(第1の水系溶液)に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液(第2の水系溶液)のpHを、含有させる前の水系溶液(第1の水系溶液)のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行われ、
前記分子間で架橋させることが、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液(第2の水系溶液)に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液(第3の水系溶液)のpHを、含有させる前よりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行われて調製されたものである。
前記カチオン化キサンタンガムの等電点は、カチオン化キサンタンガムを水に溶解させた水溶液を、コロイド粒子電荷量計Model CAS(独国AFG社製)を用いて、流動電位が0mVとなるpHを測定することによって、測定され得る。または、上記等電点は、上記水溶液に、該水溶液のpHを測定しながらHCl等の酸やNaOH等のアルカリを滴下して該水溶液のpHを調整し、目視観察により凝集が生じた(水溶液が白濁し、その粘度の低下が認められた)ときのpHを等電点として評価することによって、測定され得る。
前記第1のpH調整剤は、これを含有させた第2の水系溶液のpHを、含有前(第1の水系溶液のpH)よりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとするものである。かかる第1のpH調整剤は、このようにpHを変更して前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解くことが可能であれば、特に限定されるものではない。かかる第1のpH調整剤としては、例えば、前述において、前記水系溶液のpHを調整するものとして挙げられたものが、挙げられる。かかる第1のpH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、乳酸、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)といった、水に溶解されたとき水溶液が酸性を示す化合物(酸性化合物)、または、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、トリエタノールアミン(TEA)といった、水に溶解されたとき水溶液が塩基性を示す化合物(塩基性化合物)が挙げられる。
かかる第1のpH調整剤は、前記第2の水系溶液のpHを、前記等電点から離れる酸性側に変更されたものとする場合には、例えば前記酸性化合物であるように構成されればよい。一方、前記第2の水系溶液のpHを、前記等電点から離れる塩基性側に変更されたものとする場合には、例えば前記塩基性化合物であるように構成されればよい。
また、かかる第1のpH調整剤によるpHの変更の程度は、前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解く程度に応じて適宜設定することができる。例えば、第2の水系溶液のpHが等電点から離れるpHになるほど、分子内での架橋がより解きほぐれ易くなる。従って、例えば、かかる観点を考慮して、上記第1のpH調整剤によるpHの変更の程度を適宜設定することができる。また、このpHの変更の程度に応じて、前記第1のpH調整剤の種類や、前記水系溶液中での含有量を適宜設定することもできる。
前記第2のpH調整剤は、これを前記水系溶液に含有させた第3の水系溶液のpHを、前記第1のpH調整剤で調整された第2の水系溶液(含有前の水系溶液)のpHよりも、等電点に近づく側に変更されたものとするものである。かかる第2のpH調整剤は、このようにpHを変更して前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることが可能であれば、特に限定されるものではない。かかる第2のpH調整剤としては、例えば、上記した第1のpH調整剤と同様のものが挙げられる。
かかる第2のpH調整剤は、前記第2の水系溶液のpHが前記等電点に近づく酸性側に変更されたものとする場合には、例えば前記塩基性化合物であるように構成されればよく、一方、前記第2の水系溶液のpHが前記等電点に近づく塩基性側に変更されたものとする場合には、例えば前記酸性化合物であるように構成されればよい。
また、かかる第2のpH調整剤によるpHの変更の程度は、前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させる程度に応じて適宜設定することができる。また、このpHの変更の程度に応じて、前記第2のpH調整剤の種類や、前記水系溶液中における含有量等を、適宜設定することもできる。
そして、本実施形態の水系組成物においては、例えば、前記第1のpH調整剤が酸性化合物であり、前記第1のpH調整剤を含有させることによって、前記第2の水系溶液のpHを前記第1の水系溶液よりも等電点から離れる酸性側に変更した場合には、前記第2のpH調整剤は、塩基性化合物であり、該塩基性化合物を含有させることによって、第3の水系溶媒のpHを、前記第2の水系溶液のpHよりも等電点に近づく側に変更されたものとする態様を、採用することができる。なお、前記等電点に近づく側は、前記等電点よりも酸性側であっても、前記等電点を超えた塩基性側であってもよい。
一方、例えば、前記第1のpH調整剤が塩基性化合物であり、前記第1のpH調整剤を含有させることによって、前記第2の水系溶液のpHを前記第1のpH調整剤よりも等電点から離れる塩基性側に変更した場合には、前記第2のpH調整剤は、酸性化合物であり、該酸性化合物を含有させることによって、第3の水系溶媒のpHを、前記第2の水系溶液のpHよりも等電点に近づく側に変更されたものとする態様を採用することができる。なお、前記等電点に近づく側は、前記等電点よりも塩基性側であっても、前記等電点を超えた酸性側であってもよい。
続いて、本実施形態の水系組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の水系組成物の製造方法も、本実施形態の水系組成物と同様、前記加熱処理を行うことに代えて、以下のように、前記第1のpH調整剤と前記第2のpH調整剤とを用いて前記水系溶液のpHを変更することによって、前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋を解き、該架橋が解かれたカチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させる。それ以外は、上記第1実施形態と同様であるため、説明を繰り返さない。
具体的には、本実施形態の水系組成物の製造方法は、前記第1のpH調整剤と前記第2のpH調整剤とを用い、
前記分子内での架橋が解かれた状態とすることを、前記水系溶液(第1の水系溶液)に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液(第2の水系溶液)のpHを、含有させる前の水系溶液(第1の水系溶液)のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行い、
前記分子間で架橋させることを、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液(第2の水系溶液)に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液(第3の水系溶液)のpHを、含有させる前の水系溶液(第2の水系溶液)のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行う。
より具体的には、本実施形態の製造方法は、カチオン化キサンタンガムと前記第1のpH調整剤とを水に溶媒に添加し、撹拌しながら溶解させて、得られた水系溶液のpHが、前記カチオン化キサンタンガムを水に溶解させた場合(前記第1のpH調整剤を含有させる前)よりも、前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとする工程(第1のpH変更工程)と、得られた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該水系溶液のpHが、前記第1のpH調整剤を含有させた前記等電点に近づく側に変更する工程(第2の工程)とを備えており、これらの工程を実行することによって、前記水系溶液がゲル化されてなるゲル状の水系組成物が製造される。
前記第1のpH変更工程では、一般的に溶質を溶媒に溶解させるために用いられる従来公知の撹拌機器等を用いて、前記カチオン化キサンタンガムと、前記第1のpH調整剤とを水に溶解させて、水系溶液を調製することができる。
前記キサンタンガム及び水に前記第1のpH調整剤を含有させるタイミングは、特に限定されるものではない。例えば、前記カチオン化キサンタンガムを水に溶解させた後、得られた溶液に前記第1のpH調整剤をさらに添加してもよいし、前記第1のpH調整剤を水に溶解させた後、得られた溶液に前記カチオン化キサンタンガムを添加してもよい。
また、カチオン化キサンタンガムを水に分散させ、この混合物に前記第1のpH調整剤を添加することもでき、これにより、カチオン化キサンタンガムを溶解させつつ、第1のpH変更工程を行うことが可能となる。
また、前記第1のpH変更工程において、前記第1のpH調整剤の含有前からの、含有後の前記水系溶液のpHの変更の程度は、前記水系溶液中における前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋が解かれる程度や、第2のpH変更工程で前記カチオン化キサンタンガムが分子間で架橋される程度等に応じて適宜設計することができ、特に限定されるものではない。
前記第2のpH変更工程においても、上記第1のpH変更工程と同様、一般的に溶質を溶媒に溶解させるために用いられる従来公知の撹拌機器等を用いて、前記第1のpH変更工程で得られた水系溶液に、前記第2のpH調整剤を含有させることができる。
また、前記第2のpH変更工程において、前記第2のpH調整剤の含有前(第1のpH変更工程で得られた水系溶液のpH)からの、含有後の前記水系溶液のpHの変更の程度は、第1のpH変更工程において前記水系溶液中における前記カチオン化キサンタンガムの分子内で架橋が解かれた程度や、当該第2のpH変更工程において前記カチオン化キサンタンガムが分子間で架橋される程度に応じて、適宜設計することができ、特に限定されるものではない。
本実施形態の製造方法においても、前記水系溶液におけるカチオン化キサンタンガムの含有量は、前記水系溶液をゲル化させることが可能な量であれば特に限定されるものではなく、前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量、前記第1及び第2のpH調整剤の種類等に応じて適宜設定することができる。ここで、前記水系溶液におけるカチオン化キサンタンガムの含有量が多い程、前記水系溶液をゲル化させ易くなる傾向にあり、一方、かかる含有量が少ない程、前記水系溶液をゲル化させ難くなる傾向にある。従って、例えばかかる観点を考慮して前記含有量を設定することができ、例えば、前記含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%に設定することができる。
なお、本実施形態においても、水、カチオン化キサンタンガム、第1及び第2のpH調整剤の他に、上記第1実施形態で挙げたような添加剤を含有させることができる。
上記した本実施形態の水系組成物によれば、上記のように前記水系溶液のpHを変更することによって、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られる。また、このようにpHの変更によって上記ゲルが付与されるため、水系組成物は、簡便に調製されるものとなる。
また、前記第1のpH変更工程前または第2のpH変更工程前の前記水系溶液は、ゾル状態であるため、前記水系溶液は取り扱い易く、また、所望の形状の型等に充填し易い。そして、この水系溶液を用いて第1及び第2のpH変更工程、または、前記第2のpH変更工程を行うことによって、ゾルからゲルに変化させてゲル性の水系組成物が得られるため、該水系組成物は、製造性に優れており、しかも、多様な形状に成形され得る。
また、上記の他、例えば、前記第1のpH変更工程前の前記水系溶液(第1の水系溶液)を対象物に塗布した後、塗布された前記水系溶液に対して第1及び第2のpH変更工程を行うことによって、対象物上でゾルからゲルに変化させて、塗布されたゲル性の水系組成物を得ることも、前記第1のpH変更工程で得られた前記水系溶液(第2の水系溶液)を対象物に塗布した後、塗布された前記水系溶液に対して第2のpH変更工程を行うことによって、対象物上でゾルからゲルに変化させて、塗布されたゲル性の水系組成物を得ることもできる。例えば、ゾル状の製品としてゾル状の前記第1のpH変更工程前または前記第1のpH変更工程後(すなわち、前記第2のpH変更工程前)の水系溶液を使用者に提供し、該水系溶液を使用者が毛髪や肌に塗布した後、前記第1及び第2のpH変更工程、または、前記第2のpH変更工程を行うことによって、使用者に塗布されたゲル性の水系組成物が得られる。このように、使用時にゲル化させて使用する製品として、前記水性溶液を提供し、その後前記pH変動工程を行うことも可能である。
さらに、上記の他、例えば、前記第1のpH変更工程前または前記第2のpH変更工程前の前記水系溶液と、pH調整剤を含む水溶液とが、一方がアルカリ性、他方が酸性であるように構成されている場合には、例えば、以下のような利点がある。すなわち、分解防止等のためにアルカリ性または酸性で保存されることが必要であるような物質を、前記水系溶液または前記pH調整剤を含む水溶液のいずれかに溶解させておくことができ、これにより、前記物質を安定に保存しておくことが可能となる。さらに、このように安定に保存しつつも、前記水系溶液及び前記pH調整剤を含む溶液は、ゾル状態であるため、いずれも取り扱い易い。しかも、これら2液を使用時に混合することでpH変更工程行い、ゾル状からゲル状に変化させることによって、水系組成物を調製することができ、これにより、対象物に対して、前記水系溶液及び前記pH調整剤を含む溶液を、液だれを抑制しつつ塗布し易くなるため、製造性に優れた水系組成物が提供され得る。
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態の水系組成物は、前記加熱処理に代えて、以下のように、前記水系溶液を強攪拌処理する。それ以外は、第1実施形態と同様であるため、説明を繰り返さない。
具体的には、本実施形態の水系組成物においては、前記水系溶液中での前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、架橋が解かれた状態のカチオン化キサンタンガムを前記分子間で架橋させることが、前記水系溶液を強攪拌処理することによって行われる。
なお、強攪拌とは、攪拌部材を用いて1000rpm以上の回転速度で攪拌することを意味する。
ここで、通常、粉末を水に溶解させる際には、攪拌部材を用いて1000rpm未満の回転速度で攪拌される。しかし、上記のように1000rpm以上の攪拌を行うことによって、前記カチオン化キサンタンガムの分子内の架橋を解くことが可能となる。なお、前記回転速度は、1000rpm以上であれば特に限定されるものではなく、前記カチオン化キサンタンガムの分子内での架橋が解かれる程度に応じて、適宜設定することができる。例えば、前記回転速度が大きくなるほど、前記架橋が解かれ易くなる一方、前記回転速度が大きくなり過ぎると、カチオン化キサンタンガムの分子鎖が切断されるおそれがある。従って、例えば、かかる観点を考慮して、前記回転速度を適宜設定することができる。
前記攪拌処理には、前記水系溶液を強攪拌することと、かかる強攪拌を停止することによって、前記強攪拌させた水系溶液を静置させることとが含まれる。
前記強攪拌は、従来公知のホモミキサー(TKホモミキサー(TK ROBO MICS、特殊機化工業社製)等によって行うことができる。かかるホモミキサーを用いた場合、例えば、8000rpmで5分間攪拌という条件を採用することができる。また、その他、ディスパーや圧力ホモジナイザー等を用いてもよい。
続いて本実施形態の水系組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の水系組成物の製造方法は、前記加熱処理に代えて、強攪拌処理を行う。それ以外は、第1実施形態と同様であるため、説明を繰り返さない。
具体的には、本実施形態の水系組成物の製造方法においては、前記架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることを、前記水系溶液を強攪拌処理することによって行う。
前記強攪拌処理の条件は、上記と同様である。
上記の通り、本実施形態の水系組成物によれば、前記水系溶液を強攪拌処理することによって、カチオン化キサンタンガムに由来するゲル性が付与された水系組成物が得られるため、水系組成物は、簡便に調製されるものとなる。また、このように強攪拌処理することによってゲル性が付与されるため、水系組成物は簡便に調製されるものとなる。
上記各実施形態の水系組成物は、医薬品、医薬部外品、医療器具、医薬材料、化粧品、トイレタリー用品、家庭用品、家庭用雑貨、食品、飼料、肥料、農薬材料等の農業製品、繊維、製紙、建築材料、塗料、インキ、セラミック押出成型、接着剤等の工業製品等、半導体等のエレクトロニクス製品またはこれらの基材等に好適に使用されることができる。
上記のように本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に特に限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態を組み合わせた構成や、上記第1、第2及び第3実施形態を組み合わせた構成や、上記第2及び第3実施形態を組み合わせた構成等を適宜採用すること等もできる。
以下、本発明について実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<カチオン化キサンタンガムの製造>
合成例1〜6
水172.8gにアルカリ剤たる水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)5.76gを添加して均一に溶解させ、得られた水溶液にさらにイソプロピルアルコール(ナカライテスク株式会社製)265.5gと原料としてのキサンタンガムたるラボールガムGS−C(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)100gとを添加して均一に溶解させた。次いで、得られた溶液に、下記表1に示す配合量でカチオン化剤たる2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(80重量%、製品名SY−GTA80、阪本薬品工業株式会社製)を適宜加え、得られた混合物を、50〜55℃の温度下で攪拌しつつ5時間反応させた。
このようにして、キサンタンガムとカチオン化剤とを反応させてカチオン化キサンタンガムを生成させた。
反応終了後、反応液を49.2%硫酸6gで中和した後、得られた反応生成物を濾過(濾手)し、60質量%イソプロピルアルコール438.4gで洗浄及び濾過を行った。次いで、反応生成物を75%質量イソプロピルアルコール339.2gで洗浄及び濾過し、さらに、90質量%メタノール(ナカライテスク株式会社社製)240gで洗浄し、余剰のカチオン化剤を除去して合成例1〜6のカチオン化キサンタンガムを得た。
・カチオン電荷量の測定
合成例1〜6で得られたカチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いた原料としてのキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミミクロケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定した。
測定した全窒素含量Mtと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、有効カチオン電荷量を算出した。結果を表1に示す。なお、上記製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maは、0.40であった。
カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Ma)×1000/[(窒素の原子量(14.0))×100]
・等電点の測定
合成例4で得られたカチオン化キサンタンガムの等電点を、下記のようにして測定した。
すなわち、上記カチオン化キサンタンガム1gを水99gに溶解させ、得られた水溶液に、酸としてのHCl及びアルカリとしてのNaOHを滴下して、pHを測定しながらその調整を行い、目視観察により凝集が生じたときの(水溶液が白濁しその粘度の低下が認められた)pHを、等電点とした。
このようにして測定した結果、合成例4で得られたカチオン化キサンタンガムの等電点は、7.0であった。
Figure 2014152206
<水系溶液の調製>
・溶液の調製1:0.5質量%溶液、1.0質量%溶液、2.0質量%溶液、3.0質量%溶液の調製(pH7.0)
表2に示すように、上記で得られた合成例1、3、5、6のカチオン化キサンタンガム粉末0.5gを水99.5gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、0.5質量%溶液を調製した。同様に、上記で得られたカチオン化キサンタンガム粉末1.0gを水99.0gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、1.0質量%溶液を調製した。同様に、上記で得られたカチオン化キサンタンガム粉末2.0gを水98.0gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、2.0質量%溶液を調製した。同様に、上記で得られたカチオン化キサンタンガム粉末3.0gを水97.0gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、3.0質量%溶液を調製した。なお、表2では、カチオン化キサンタンガムの濃度をポリマー濃度と表す。また、カチオン化キサンタンガムと水の合計質量に対するカチオン化キサンタンガムの質量を、質量%と表す。以下においても同様である。なお、上記のように中和を行ったため、各水系溶液のpHを測定した結果、pHは7.0であった。
・溶液の調整2:1.0質量%溶液(pH1.7、pH3.0、pH12.0)
表3に示すように、上記で得られた合成例2〜6のカチオン化キサンタンガム粉末1.0gを水に分散させて全量100gになるように調整した。この混合物に、適量のHClまたはNaOHを添加してpHを表3に示すように調整し、室温で攪拌溶解することにより、各pHを有する1.0質量%溶液を調製した。なお、上記と同様、各水系溶液のpHは7.0であった。
・溶液の調製3:1.0質量%溶液(1.0質量%NaCl含有)、2.0質量%溶液(1.0質量%NaCl含有)の調製(pH7.0)
表4に示すように、上記で得られた合成例4のカチオン化キサンタンガム粉末1.0gと1.0gのNaClとを粉末混合し、水98.0gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、1.0質量%NaCl含有1.0質量%溶液を調製した。同様に、合成例4のカチオン化キサンタンガム粉末2.0gと1.0gのNaClとを粉末混合した後、水97.0gに分散させ、室温で攪拌溶解することにより、1.0質量%NaClを含有する2.0質量%溶液を調製した。なお、上記と同様、各水系溶液のpHは7.0であった。
<加熱処理>
得られた各溶液を10mLずつ、キャップ付チューブに入れ、10,25,40,60,80,90℃の恒温槽に30分間入れた。それぞれ加熱後、室温まで自然放冷して製造例1〜26の組成物(試料)を作製し、各試料について下記のような判定基準に基づいて、ゲル化の評価を行なった。結果を表2〜表4に示す。
・ゲル性の評価
上記のチューブを鉛直方向に起立させた状態から90度(水平方向に)転倒させたときの外観を目視によって観察し、下記の判断基準に基づいて試料がゲル化されているか否かを判断した。
(1)チューブを転倒させても試料が流れなかった場合、保型性のあるゲル(◎で示す)と判断した。
(2)チューブを転倒させたとき試料が部分的に流れたが、流れた後に形成された上面が完全に水平になっていない場合、柔らかいゲル(○で示す)と判断した。
(3)チューブを転倒させたとき試料全体が流れ、流れた後に形成された上面が完全に水平となったが、その上面に凹凸が認められた場合、流動性のあるゲル(△で示す)と判断した。
(4)チューブを転倒させたとき試料全体が流れ、流れた後に形成された上面が完全に水平となり、しかも、その上面に凹凸が認められなかった場合、ゾル状態(×で示す)と判断した。
(5)カチオン化キサンタンガムの沈殿が認められ、しかも、上記(4)の状態が観察された場合、カチオン化キサンタンガムが溶解されていないことに起因してゲル化が認められなかったとして、溶解不能(××)と判断した。
Figure 2014152206
Figure 2014152206
Figure 2014152206
上記表2には、水系溶液のゲル化に及ぼすpHの影響が示される。
かかる表2より、カチオン化キサンタンガムは、そのカチオン電荷量によってゲル化するpHが異なることがわかった。
カチオン電荷量0.65meq/gでは、pH7.0、pH12.0でゲル化が見られた。この結果、カチオン電荷量0.65meq/gでは、pH7.0以上で水系溶液をゲル化させ得ることがわかった。
カチオン電荷量0.98meq/gでは、pH1.7でゲル化が見られた。ここで、pHが低下する程ゲル化し易くなることを考慮すると、この結果、カチオン電荷量0.98meq/gでは、pH1.7以下で水系溶液をゲル化させ得ることがわかった。
カチオン電荷量1.29meq/gのカチオン化キサンタンガムは、上記の通り等電点が7.0であるため、水系溶液のpHが7.0付近では凝集して、溶解しない。しかし、該水系溶液のpHを、等電点から十分に離れたpHに調整することによって(pH1.7、pH3.0、pH12.0)、該カチオン化キサンタンガムを溶解させることができた。そして、これらpHの水系溶液を加熱処理したところ、pH1.7、pH3.0の水系溶液では、ゲル化し得ることがわかった。
カチオン電荷量1.35meq/gでは、pH1.7、pH3.0、pH7.0、pH12.0の水系溶液でゲル化が見られた。この結果、カチオン電荷量1.35meq/gでは、pH1.7〜pH12.0で水系溶液をゲル化し得ることがわかった。
カチオン電荷量1.77meq/gでは、pH3.0、pH7.0、pH12.0でゲル化が見られた。この結果、カチオン電荷量1.77meq/gでは、pH3.0〜pH12.0で水系溶液をゲル化し得ることがわかった。
また、いずれのカチオン電荷量においても、加熱温度が高いほど強いゲルを形成し得ることがわかった。
上記の結果、合成例1〜6では、加熱処理を行うことによって、水系溶液をゲル化し得ることがわかった。また、カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量に応じて、ゲル化させるために適切なpHが存在し得ることが、わかった。
上記表3には、水系溶液のゲル化に及ぼすカチオン化キサンタンガム添加量(含有量)の影響が、示される。かかる表3に示すように、カチオン化キサンタンガムの添加量を増やすと、水系溶液がゲル化し易くなり、また、より硬いゲルを形成させることができる。
カチオン電荷量が0.44meq/gでは、カチオン化キサンタンガムの含有量(濃度)が1.0質量%ではゲル化が見られなかったが、2.0質量%ではゲル化が見られた。
カチオン電荷量が0.98meq/gでは、上記含有量が1.0質量%ではゲル化が見られなかったが、2.0質量%ではゲル化が見られた。さらに、3.0質量%にすると、よりゲル化し易くなることがわかった。
カチオン電荷量1.35meq/gでは、上記含有量が1.0質量%でゲル化が見られ、2.0質量%ではさらにゲル化し易くなった。
カチオン電荷量1.77meq/gでは、上記含有量が0.5質量%でゲル化が見られ、1.0質量%ではさらにゲル化しやすくなる。
このように、pH7.0においても、カチオン化の程度によってゲル化傾向が異なることが、わかった。1.0質量%でゲル化が弱いものでも、カチオン化キサンタンガムの含有量を増加させると、水系溶液がゲル化し易くなることが、わかった。
上記表4には、塩の影響を示すデータが示される。かかる表4に示すように、pH7が等電点と同じであることから、カチオン電荷量が1.29meq/gでは溶解しなかった。しかし、NaClを添加することによって、カチオン化キサンタンガムが溶解して水系溶液がゾル状態となることがわかった。さらに、カチオン化キサンタンガムの含有量を2倍に増やせば、加熱処理によって水系溶液がゲル化する傾向が確認された。
上記の通り、表2より、カチオン電荷量(カチオン化度)によって、水系溶液がゲル化し易くなるpHが異なることがわかった。
また、表3より、ゲル化し難いpHであっても、カチオン化キサンタンガムの添加量(水系溶液中の濃度)を増加させることによって、ゲル化させ得ることがわかった。
さらに、表4より、水系溶液のpHが等電点付近であっても、何らかの所定の条件(例えば塩の添加等)によってカチオン化キサンタンガムを水に溶解させれば、水系溶液をゲル化させ得ることがわかった。
上記表2〜4より、カチオン電荷量や水系溶液のpHによってゲル化し易さの程度は異なるものの、カチオン電荷量や水系溶液のpHによらず、カチオン化キサンタンガムを水に溶解させさえすれば、加熱処理によって水系溶液をゲル化させ得ることがわかった。また、上記のように水系溶液のpHを調整し、そのpHを等電点付近から離れたものとした場合には、水系溶液中でカチオン化キサンタンガムの分子内での架橋が解かれた状態となり、この状態にある水系溶液を加熱処理することによって、上記分子内での架橋が一層解かれた状態とした後、分子間で架橋させて、水系溶液をゲル化させ得ることがわかった。
(pH変更1)
上記で得られた合成例4(1.29meq/g、等電点:7.0)のカチオン化キサンタンガム粉末1.0を水99.0gに分散させて攪拌させたが、上記の通り、該カチオン化キサンタンガムは溶解しなかった。このときの水系溶液(第1の水系溶液)のpHは、7.0であった。
そこで、該水系溶液にHCl(第1のpH調整剤)を添加し、攪拌して、得られた水系溶液(第2の水系溶液)のpHを0.7とした。これにより、キサンタンガムは溶解した。その後、NaOH(第2のpH調整剤)を添加し、室温で攪拌して、得られた水系溶液(第3の水系溶液)のpHを0.9にした。その結果、得られた水系溶液はゲル化され、柔らかいゲル状の水系組成物が得られた(1.0質量%)。
(pH変更2)
上記pH変更1で得られた第2の水系溶液(pH0.7)に、NaOH(第2のpH調整剤)を添加し、室温で攪拌して、得られた水系溶液(第3の水系溶液)のpHを1.3とした。その結果、流動性のあるゲル状の水系組成物が得られた。
(pH変更3)
上記pH変更1で得られた第2の水系溶液(pH0.7)に、NaOH(第2のpH調整剤)を添加し、室温で攪拌して、得られた水系溶液のpHを11.0とした。その結果、流動性のあるゲル状の水系組成物が得られた。
(pH変更4)
上記pH変更1で得られた第1の水系溶液(pH7.0)に、NaOH(第1のpH調整剤)を添加し、室温で攪拌して、得られた水系溶液(第2の水系溶液)のpHを12.0にした後、HCl(第2のpH調整剤)を添加して該水系溶液(第3の水系溶液)のpHを1.4とした。その結果、流動性のあるゲル状の水系組成物が得られた。
(攪拌処理)
上記合成例10(1.77meq/g)で得られたカチオン化キサンタンガム粉末1.0gを水199.0gに分散させ、室温で撹拌溶解することにより、0.5質量%溶液を調製した(pH7.0)。本溶液はゲル化性を示さなかったが、本溶液を室温でTKホモミキサーを用いて8000rpmで5分間強攪拌を行い、室温で静置することにより流動性のあるゲルを調製することができた。

Claims (8)

  1. キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムと、水とを含有している水系組成物であって、
    前記カチオン化キサンタンガムが前記水に溶解されてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって調製された水系組成物。
  2. 前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることが、前記水系溶液を加熱処理することによって行われる請求項1に記載の水系組成物。
  3. 前記加熱処理の加熱温度が、50℃以上である請求項2に記載の水系組成物。
  4. 水に溶解させたときに互いに反対の液性を示す第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とをさらに含有しており、
    前記分子内での架橋が解かれた状態とすることが、前記水系溶液に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行われ、
    前記分子間で架橋させることが、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行われる請求項1に記載の水系組成物。
  5. 前記カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量が0.1meq/g以上3.0meq/g以下である請求項1〜4のいずれかに記載の水系組成物。
  6. キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムを水に溶解させてなる水系溶液中の前記カチオン化キサンタンガムを分子内での架橋が解かれた状態とした後、該分子内での架橋が解かれた前記カチオン化キサンタンガムを分子間で架橋させることによって水系組成物を調製する工程を備えた水系組成物の製造方法。
  7. 前記分子内での架橋が解かれた状態とし、且つ、前記分子間で架橋させることを、前記水系溶液を加熱処理することによって行う請求項6に記載の水系組成物の製造方法。
  8. 水に溶解させたときに互いに反対の液性を示す第1のpH調整剤と第2のpH調整剤とを用い、
    前記分子内での架橋が解かれた状態とすることを、前記水系溶液に前記第1のpH調整剤を含有させて、該第1のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記カチオン化キサンタンガムの等電点から離れる側に変更されたものとすることによって行い、
    前記分子間で架橋させることを、前記第1のpH調整剤を含有させた水系溶液に前記第2のpH調整剤を含有させて、該第2のpH調整剤を含有させた水系溶液のpHを、これを含有させる前の水系溶液のpHよりも前記等電点に近づく側に変更されたものとすることによって行う請求項6に記載の水系組成物の製造方法。
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