JP2014152149A - Ampキナーゼ活性化剤及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規なAMPキナーゼ活性化剤及びその用途を提供すること。
【解決手段】トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチドを有効成分としたAMPキナーゼ活性化剤が提供される。
【選択図】なし
【解決手段】トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチドを有効成分としたAMPキナーゼ活性化剤が提供される。
【選択図】なし
Description
本発明はAMPキナーゼ活性化剤及びその用途に関する。
国民健康・栄養調査や糖尿病実態調査からも明らかなように、わが国の肥満とこれに伴うメタボリックシンドロームの増加は深刻である。国民医療費の膨張を食い止め、活力ある高齢化社会を実現するためには、予防の視点からの食品による制御が不可欠といえる。しかし今のところ対策としては、運動や食事制限以外に有効な手段が見当たらない。このような状況において、最適な問題解決の方法は、肥満や2型糖尿病に関わる鍵分子を制御して、予防・治療へつなげることである。最近の研究から理想的な標的としてAMPキナーゼ(AMPK)が浮かび上がってきた。
AMPキナーゼは、5’-AMPによって活性化されるセリン・スレオニンキナーゼである。多用な機能を有するが、その役割は細胞内のエネルギー状態の調節である。AMPキナーゼの活性化は触媒活性を有するαサブユニットのT172のリン酸化による。脂質代謝調節におけるAMPキナーゼの活性化は、脂肪酸合成に関与するアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)タンパクのリン酸化による不活性化と、生成物であるマロニルCoA濃度の低下をもたらす。これによりミトコンドリアへの脂肪酸流入阻害が解除され、脂肪酸酸化が促進される。同時にACCの不活性化で細胞内の脂肪合成が低下するため、結果として細胞内脂肪量は低下する(非特許文献1)。また糖代謝調節におけるAMPキナーゼの活性化は、下記の運動による作用で述べるように、骨格筋でのインスリン非依存的な糖の取り込みを促す。肝臓では、糖新生系律速酵素の発現制御に関わる転写制御因子(CRTC2)のリン酸化による核外移行を促してその発現が抑制される(非特許文献2)。
一方、運動により、AMPキナーゼは骨格筋でインスリン非依存的に活性化される。この活性化を介してIRS-1の発現亢進やグルコースの細胞への取り込み輸送を行う4型グルコース輸送体(Glut4)の細胞膜上への移行が促され、グルコースの細胞内取り込みを促進する。興味深いことに、ここ10年ほどの研究からエネルギー状態とは無関係に糖尿病治療薬であるメトホルミン、前述したアディポネクチン、レプチンによってもAMPキナーゼが活性化され、糖・脂質代謝を改善することが明らかになっている(非特許文献3〜5)。また視床下部でのAMPキナーゼによる摂食行動の制御も明らかになっている(非特許文献6)。
尚、本願発明の有効成分に関連した報告を以下に示す(特許文献1)。
尚、本願発明の有効成分に関連した報告を以下に示す(特許文献1)。
Nat. Rev. Drug Discov., 3:340-51,2004
Nature, 437:1109-11, 2005
J. Clin. Invest. 108, 1167-1174, 2001
Nature, 415:339-43, 2002
Nat. Med, 8:1288-95, 2002
Nature, 428:569-74, 2004
Peptides. 2010 Nov;31(11):2060-6.
以上のようにAMPキナーゼは細胞内のエネルギー代謝だけでなく、生体全体のエネルギー代謝において重要な調節作用を示す。従って、AMPキナーゼを制御する物質を見出すことができれば、メタボリックシンドロームや糖尿病等、エネルギー代謝異常に伴う疾病の予防や治療が可能になる。そこで本発明は、新規なAMPキナーゼ活性化剤及びその用途を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく検討を重ねる中、本発明者は食品因子であるペプチドの可能性に注目した。具体的には、血管弛緩作用(血圧降下作用)が報告されたジペプチドTrp-His(トリプトファン−ヒスチジン。以下、「WH」と略称することがある)に着目し、当該ジペプチドが更に多様な生理機能を示すとの仮定の下で研究を進めた。尚、WHの血管弛緩(血圧降下)作用機序として、Ca2+-CaM (calmodulin)複合体形成を阻害し、血管収縮を抑制することが明らかにされている(非特許文献7)。
検討の結果、WHにAMPキナーゼ活性化作用が見出された。また、トリプトファンとヒスチジンが逆の順序で連結したジペプチドHis-Trp(ヒスチジン−トリプトファン。以下、「HW」と略称することがある)にも同様の作用を認めた。一方、WHによるAMPキナーゼの活性化がインスリン非依存的に細胞内へのグルコース取り込み量の上昇作用を促すことが確認された。
以上のように、WH及びHWがエネルギー代謝の鍵分子に作用し、肥満や糖尿病の予防や治療に有効であることが明らかとなった。重要なことの一つは、当該ジペプチドは血圧降下作用を併せ持つことである。肥満又は糖尿病患者では高血圧を発症している場合が多い。当該ジペプチドによれば、このような症例に対し、AMPキナーゼ活性化作用と血圧降下作用という二つの薬理作用によって効果的な予防・治療効果を発揮できる。二つの作用に関わる機序は異なるため、拮抗したり過剰な作用をもたらしたりするおそれもない。
下に示す本発明は上記の成果及び考察に基づく。
[1]トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分とする、AMPキナーゼ活性化剤。
[2]AMPキナーゼの活性化を介して、細胞内へのグルコースの取り込み量を上昇させる、[1]に記載のAMPキナーゼ活性化剤。
[3][1]又は[2]に記載のAMPキナーゼ活性化剤を含有する、エネルギー代謝改善用組成物。
[4]医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、[3]に記載の組成物。
[5]肥満又は糖尿病の予防又は治療に使用されることを特徴とする、[3]に記載の組成物。
[6]トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を患者に対して治療上有効量投与するステップを含む、肥満又は糖尿病の予防・治療法。
下に示す本発明は上記の成果及び考察に基づく。
[1]トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分とする、AMPキナーゼ活性化剤。
[2]AMPキナーゼの活性化を介して、細胞内へのグルコースの取り込み量を上昇させる、[1]に記載のAMPキナーゼ活性化剤。
[3][1]又は[2]に記載のAMPキナーゼ活性化剤を含有する、エネルギー代謝改善用組成物。
[4]医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、[3]に記載の組成物。
[5]肥満又は糖尿病の予防又は治療に使用されることを特徴とする、[3]に記載の組成物。
[6]トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を患者に対して治療上有効量投与するステップを含む、肥満又は糖尿病の予防・治療法。
(用語)
説明の便宜上、本明細書中で使用する用語の一部について説明する。
(1)メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、心血管疾病の危険因子である代謝異常の1つであり、「内臓脂肪の蓄積と、それを基盤にしたインスリン抵抗性および糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧を複数合併するマルチプルリスクファクター症候群で、動脈硬化になりやすい病態のこと」を言う。日本だけでなく世界各国でメタボリックシンドロームの基準が定められており、もはや世界規模で取り組む必要のある社会問題であるといえる。近年、日本でもメタボリックシンドロームが疑われる人や、その予備軍が増加している。厚生労働省による平成19年度の国民健康・栄養調査結果では、「40〜74歳の男性の2人に1人、女性では5人に1人がメタボリックシンドロームが強く疑われる者またはその予備軍と考えられる」と報告されている。メタボリックシンドロームの予防や治療の為、内臓脂肪の改善や、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝、糖代謝など様々な観点から研究が行われている。
説明の便宜上、本明細書中で使用する用語の一部について説明する。
(1)メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、心血管疾病の危険因子である代謝異常の1つであり、「内臓脂肪の蓄積と、それを基盤にしたインスリン抵抗性および糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧を複数合併するマルチプルリスクファクター症候群で、動脈硬化になりやすい病態のこと」を言う。日本だけでなく世界各国でメタボリックシンドロームの基準が定められており、もはや世界規模で取り組む必要のある社会問題であるといえる。近年、日本でもメタボリックシンドロームが疑われる人や、その予備軍が増加している。厚生労働省による平成19年度の国民健康・栄養調査結果では、「40〜74歳の男性の2人に1人、女性では5人に1人がメタボリックシンドロームが強く疑われる者またはその予備軍と考えられる」と報告されている。メタボリックシンドロームの予防や治療の為、内臓脂肪の改善や、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝、糖代謝など様々な観点から研究が行われている。
(2)AMPキナーゼ
AMPキナーゼとは、5'-AMPにより活性化するセリン-スレオニンプロテインキナーゼである。AMPキナーゼは酵母から植物、哺乳動物細胞にいたるほとんどすべての細胞に発現する、代謝や摂食行動の調節に関わる分子である。AMPキナーゼは、虚血・低酸素・アディポネクチン(Yamauchi, T., Kamon, J., Minokoshi, Y., Ito, Y., Waki, H., Uchida, S., Yamashita, S., Noda, M., Kita, S., Ueki, K., Eto, K., Akanuma, Y., Froguel, P., Foufelle, F., Ferre, P., Carling, D., Kimura, S., Nagai, R., Kahn, BB., Kadowaki, T. Adiponectin stimulates glucose utilization and fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase. Nat. Med. 8, 1288-1295, (2002))、メトフォルミン(Zhou, G., Myers, R., Li, Y., Chen, Y., Shen, X., Fenyk-Melody, J., Wu, M., Ventre, J., Doebber, T., Fujii, N., Musi, N., Hirshman, MF., Goodyear, LJ., Moller, DE. Role of AMP-activated protein kinase in mechanism of metformin action. J.Clin. Invest. 108, 1167-1174, (2001))、レプチン(Minokoshi, Y., Kim, YB., Peroni, OD., Fryer, LG., Muller, C., Carling, D., Kahn, BB. Leptin stimulates fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase. Nature. 415, 339-343, (2002))などにより活性化し、糖新生の抑制、糖代謝、脂質代謝を促進する。また、ホルモンやグルコースなどの栄養素共通のエネルギーセンサーとして働くことで、摂食行動の調節に必須な分子であることも明らかとなっている(Minokoshi, Y., Alquier, T., Furukawa, N., Kim, YB., Lee, A., Xue, B., Mu, J., Foufelle, F., Ferer, P., Birnbaum, MJ., Stuck, BJ., Kahn, BB. AMP-kinase regulates food intake by responding to hormonal and nutrient signals in the hypothalamus. Nature. 428, 569-574, (2004))。このことから、AMPキナーゼは細胞内のエネルギー代謝だけでなく、生体全体のエネルギー代謝に調節作用を営む調節酵素と捉えられるようになった。このAMPキナーゼはα、β、γの3つのサブユニットからなる。αサブユニットにはα1とα2、βサブユニットにはβ1とβ2、γサブユニットにはγ1、γ2、γ3が存在し全ての組み合わせが可能である。これらのサブユニットにはいくつかのリン酸化部位が存在するが、αサブユニット172番目のスレオニンのリン酸化がAMPキナーゼ活性には重要である。その活性化経路は、5'−AMPのアロステリックな調節と、AMPキナーゼキナーゼのリン酸化によって活性化されるものとの2種類が知られている。AMPキナーゼはその上流にあるAMP-activated protein kinase kinase(AMPKK)や細胞内のAMP/ATP濃度により活性化される。AMPKKには、LKB1やTAK1、カルシウムによって調節されているCa2+/calmodulin-dependent protein kinase kinase(CaMKK)などが知られているが、活性化経路に関しては不明な点が多い。AMPキナーゼは、主にエネルギー産生系を促進する一方、糖新生や脂肪合成を抑制する。この作用は、エネルギー飢餓において異化代謝経路を活性化し、細胞内のATPを回復させる機能として理解されてきた。しかし、前述したようにレプチンやアディポネクチンがAMPキナーゼを活性化することが発見されたことにより、この作用はメタボリックシンドロームの要因の肥満や糖尿病を防ぎ、代謝恒常性を維持する調節機能として注目されるようになった。
AMPキナーゼとは、5'-AMPにより活性化するセリン-スレオニンプロテインキナーゼである。AMPキナーゼは酵母から植物、哺乳動物細胞にいたるほとんどすべての細胞に発現する、代謝や摂食行動の調節に関わる分子である。AMPキナーゼは、虚血・低酸素・アディポネクチン(Yamauchi, T., Kamon, J., Minokoshi, Y., Ito, Y., Waki, H., Uchida, S., Yamashita, S., Noda, M., Kita, S., Ueki, K., Eto, K., Akanuma, Y., Froguel, P., Foufelle, F., Ferre, P., Carling, D., Kimura, S., Nagai, R., Kahn, BB., Kadowaki, T. Adiponectin stimulates glucose utilization and fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase. Nat. Med. 8, 1288-1295, (2002))、メトフォルミン(Zhou, G., Myers, R., Li, Y., Chen, Y., Shen, X., Fenyk-Melody, J., Wu, M., Ventre, J., Doebber, T., Fujii, N., Musi, N., Hirshman, MF., Goodyear, LJ., Moller, DE. Role of AMP-activated protein kinase in mechanism of metformin action. J.Clin. Invest. 108, 1167-1174, (2001))、レプチン(Minokoshi, Y., Kim, YB., Peroni, OD., Fryer, LG., Muller, C., Carling, D., Kahn, BB. Leptin stimulates fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase. Nature. 415, 339-343, (2002))などにより活性化し、糖新生の抑制、糖代謝、脂質代謝を促進する。また、ホルモンやグルコースなどの栄養素共通のエネルギーセンサーとして働くことで、摂食行動の調節に必須な分子であることも明らかとなっている(Minokoshi, Y., Alquier, T., Furukawa, N., Kim, YB., Lee, A., Xue, B., Mu, J., Foufelle, F., Ferer, P., Birnbaum, MJ., Stuck, BJ., Kahn, BB. AMP-kinase regulates food intake by responding to hormonal and nutrient signals in the hypothalamus. Nature. 428, 569-574, (2004))。このことから、AMPキナーゼは細胞内のエネルギー代謝だけでなく、生体全体のエネルギー代謝に調節作用を営む調節酵素と捉えられるようになった。このAMPキナーゼはα、β、γの3つのサブユニットからなる。αサブユニットにはα1とα2、βサブユニットにはβ1とβ2、γサブユニットにはγ1、γ2、γ3が存在し全ての組み合わせが可能である。これらのサブユニットにはいくつかのリン酸化部位が存在するが、αサブユニット172番目のスレオニンのリン酸化がAMPキナーゼ活性には重要である。その活性化経路は、5'−AMPのアロステリックな調節と、AMPキナーゼキナーゼのリン酸化によって活性化されるものとの2種類が知られている。AMPキナーゼはその上流にあるAMP-activated protein kinase kinase(AMPKK)や細胞内のAMP/ATP濃度により活性化される。AMPKKには、LKB1やTAK1、カルシウムによって調節されているCa2+/calmodulin-dependent protein kinase kinase(CaMKK)などが知られているが、活性化経路に関しては不明な点が多い。AMPキナーゼは、主にエネルギー産生系を促進する一方、糖新生や脂肪合成を抑制する。この作用は、エネルギー飢餓において異化代謝経路を活性化し、細胞内のATPを回復させる機能として理解されてきた。しかし、前述したようにレプチンやアディポネクチンがAMPキナーゼを活性化することが発見されたことにより、この作用はメタボリックシンドロームの要因の肥満や糖尿病を防ぎ、代謝恒常性を維持する調節機能として注目されるようになった。
(3)ペプチド
本明細書では慣例の標記法に従い左端がアミノ末端、右端がカルボキシ末端となるようにペプチドを表記する。また、アミノ酸残基がL形の場合には、L形である旨の表示を省略することがある。また、特に記載のない限り本明細書では、ジペプチドをはじめ様々な長さのペプチドを含む用語として「ペプチド」を使用する。
本明細書では慣例の標記法に従い左端がアミノ末端、右端がカルボキシ末端となるようにペプチドを表記する。また、アミノ酸残基がL形の場合には、L形である旨の表示を省略することがある。また、特に記載のない限り本明細書では、ジペプチドをはじめ様々な長さのペプチドを含む用語として「ペプチド」を使用する。
本発明の第1の局面はAMPキナーゼ活性化剤に関する。本発明のAMPキナーゼ活性化剤はその一態様において、トリプトファン(Trp)及びヒスチジン(His)からなるジペプチドを有効成分として含む。本発明に係るジペプチドでは、二つのアミノ酸残基がN末端側からC末端側に向かってトリプトファン、ヒスチジンの順(WH)又はその逆の順(HW)に連結されている。WHの構造及びHWの構造を以下に示す。
本発明において各アミノ酸残基はいずれもL形であることが好ましいが、アミノ酸残基の片方又は両方がD形であってもよい。
本発明のAMPキナーゼ活性化剤は他の態様において、上記ジペプチドの塩を有効成分とする。本発明の塩は薬学的に許容可能な限りその種類は特に限定されず、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩)や、ギ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸等との塩(有機酸塩)をその例として挙げることができる。これらの塩の調製は慣用手段によって行なうことができる。
本発明におけるジペプチドは、公知のペプチド合成法(例えば固相合成法、液相合成法)によって製造することができる。但し、天然物からの抽出、精製などの操作によって本発明のジペプチドを調製することにしてもよい。本発明のジペプチドの取得源としては例えば、動物細胞(ヒトを含む)、植物細胞、体液(血液、尿等)等が考えられる。ジペプチドWHは大豆タンパク質中に存在する配列である(大豆タンパク質βコングリシニンのα’サブユニットの125番〜126番)。従って、大豆タンパク質を分解(例えば酵素処理)し、ペプチド画分を精製することによってジペプチドWHを得ることもできる。
遺伝子工学的手法を用いて本発明のジペプチドを調製してもよい。即ち、本発明のジペプチドをコードする核酸を適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現されたジペプチドを回収することにより本発明のジペプチドを調製することもできる。回収されたジペプチドは必要に応じて精製される。回収されたジペプチドを適当な置換反応に供し、所望のペプチド修飾体に変換することもできる。
AMPキナーゼは代謝や摂食行動の調節に関わる鍵分子であり、その活性化はエネルギー代謝の改善を促す。そこで本発明の第2の局面は、本発明のAMPキナーゼ活性化剤を含有するエネルギー代謝改善用組成物を提供する。後述の実施例に示す通り、本発明の有効成分であるジペプチドは、AMPキナーゼの活性化を介して、細胞内へのグルコースの取り込み量を上昇させる。
本発明の組成物の形態は特に限定されないが、好ましくは医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である。尚、2種類以上の有効成分(例えばWHとHW)を併用することにしてもよい。
本明細書において「エネルギー代謝」とは、脂質代謝及び糖代謝を包括する用語である。従って、本発明の組成物は、糖代謝及び/又は脂質代謝を改善するという効果を発揮する。当該効果は糖尿病や肥満の予防・治療に有効であることから、本発明の組成物の利用態様は例えば糖尿病や肥満の予防又は治療である。また、運動により得られるエネルギー代謝を模倣するという点において運動模倣剤又は運動代替剤としても利用され得る。ここで、「糖尿病」は、血糖の慢性的な上昇(即ち高血糖)により特徴付けられる疾患である。虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、動脈硬化、脳血管障害(脳梗塞など)の重要な危険因子の1つであり、いわゆる「生活習慣病」の代表的疾患として注目されている。一方、「肥満」とは一般的には体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態をいう。本明細書では用語「肥満」は広義に解釈されるものとし、その概念に肥満症を含む。「肥満症」とは肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を有するか又は将来的に有することが予測される場合であって、医学的に減量が必要とされる病態をいう。肥満の判定法には、例えば、国際的に広く使用されているBMI(body mass index)を尺度としたものがある。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で除した数値(BMI=体重(kg)/身長(m)2)である。BMI<18.5は低体重(underweight)、18.5≦BMI<25は普通体重(normal range)、25≦BMI<30は肥満1度(preobese)、30≦BMI<35は肥満2度(obese class I)、35≦BMI<40は肥満3度(obese class II)、40≦BMIは肥満4度(obese class III)と判定される(WHO)。また、BMIを利用して、日本人の成人の標準体重(理想体重)を以下の式、標準体重(kg)=身長(m)2×22から計算し、実測体重が標準体重(計算値)の120%を超える状態を肥満とする判定法もある。もっとも、標準体重(理想体重)は性別、年齢、又は生活習慣の差異などによって個人ごとに相違することから、肥満の判定をこの方法で一律に行うことは妥当でないと考えられている。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤形も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤などとして本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物を提供できる。本発明の医薬組成物には、期待される治療効果(予防効果も含む)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分(ジペプチド)が含有される。同様に本発明の医薬部外品組成物には、期待される改善効果や予防効果等を得るために必要な量の有効成分が含有される。本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物に含まれる有効成分量を例えば約0.1重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では本発明の医薬組成物はヒトに対して適用される。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の投与量・使用量は、期待される治療又は予防効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約1mg〜約500mg、好ましくは約50mg〜約200mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
以上の記述から明らかな通り本出願は、肥満又は糖尿病の患者に対して本発明の医薬組成物を治療上有効量投与することを特徴とする、肥満又は糖尿病の治療・予防法も提供する。特に、運動療法の困難な心血管系障害を持つ者、及び食事制限療法に抵抗を示す肥満者が適用対象の患者として想定される。
上記の通り本発明の一態様は、本発明のAMPキナーゼ活性化剤を含有する食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として一般食品(穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子類、牛乳、清涼飲料水、アルコール飲料等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレット、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明の有効成分を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。
本発明の食品組成物には、治療的又は予防的効果が期待できる量の有効成分が含有されることが好ましい。添加量は、それが使用される対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
上記の通り本発明の一態様は、本発明のAMPキナーゼ活性化剤を含有する化粧料組成物である。本発明の化粧料組成物は、本発明の有効成分と、化粧料に通常使用される成分・基材(例えば、各種油脂、ミネラルオイル、ワセリン、スクワラン、ラノリン、ミツロウ、変性アルコール、パルミチン酸デキストリン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール、パラベン、カンフル、メントール、各種ビタミン、酸化亜鉛、酸化チタン、安息香酸、エデト酸、カミツレ油、カラギーナン、キチン末、キトサン、香料、着色料など)を配合することによって得ることができる。
化粧料組成物の形態として、フェイス又はボディー用の乳液、化粧水、クリーム、ローション、エッセンス、オイル、パック、シート、洗浄料などを例示できる。化粧料組成物における有効成分の添加量は特に限定されない。例えば0.1重量%〜60重量%となるように有効成分を添加するとよい。
<ジペプチドのAMPキナーゼ活性化作用>
標的分子AMPキナーゼは生体全体のエネルギー代謝において重要な調節作用を営むことが明らかとなっている。そしてAMPキナーゼの活性化は糖・脂質代謝に関与し、脂肪酸酸化や細胞への糖の取り込みを促進する。標的分子AMPキナーゼを制御する食品因子を見出すことで、糖尿病などの制御が可能となり、予防することが出来るようになる。AMPキナーゼの活性化を検討する食品因子として、ジペプチドのTrp-His(WH)とHis-Trp(HW)に着目した。この化合物のAMPキナーゼ活性化作用を検討することにした。なお、AMPキナーゼの活性化はαサブユニットの172番目のスレオニン(Thr 172)のリン酸化の上昇により判定できる。
標的分子AMPキナーゼは生体全体のエネルギー代謝において重要な調節作用を営むことが明らかとなっている。そしてAMPキナーゼの活性化は糖・脂質代謝に関与し、脂肪酸酸化や細胞への糖の取り込みを促進する。標的分子AMPキナーゼを制御する食品因子を見出すことで、糖尿病などの制御が可能となり、予防することが出来るようになる。AMPキナーゼの活性化を検討する食品因子として、ジペプチドのTrp-His(WH)とHis-Trp(HW)に着目した。この化合物のAMPキナーゼ活性化作用を検討することにした。なお、AMPキナーゼの活性化はαサブユニットの172番目のスレオニン(Thr 172)のリン酸化の上昇により判定できる。
1.方法
(1)細胞培養及び継代
細胞はラット筋芽細胞L6を使用した。10% FBS含有DMEM(Dulbecco’s modified eagle’s medium, high glucose、SIGMA)を用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2 濃度5%)で培養した。80%コンフルエントになったところで継代した。
(1)細胞培養及び継代
細胞はラット筋芽細胞L6を使用した。10% FBS含有DMEM(Dulbecco’s modified eagle’s medium, high glucose、SIGMA)を用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2 濃度5%)で培養した。80%コンフルエントになったところで継代した。
(2)筋管細胞への分化誘導
培養皿から培地を除去し、2% ウマ血清(SIGMA)含有のDMEM(分化用培地)に交換した。2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。その後さらに1日培養し筋管細胞として実験に使用した(分化後7日の細胞を筋管細胞として使用)。
培養皿から培地を除去し、2% ウマ血清(SIGMA)含有のDMEM(分化用培地)に交換した。2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。その後さらに1日培養し筋管細胞として実験に使用した(分化後7日の細胞を筋管細胞として使用)。
(3)タンパク質の回収及び解析
WH投与の約3時間前に培地を1% ウシ血清アルブミン(BSA)含有DMEMに交換した。所定の濃度のWH、HWもしくは陽性コントロールとして最終濃度として1 mMになるようにAICAR(5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleoside)存在下、筋管細胞を培養した。溶解バッファー中に細胞を回収し、軽く混合した後、遠心処理に供し、上清を回収した。このようにして回収したタンパク質についてウエスタンブロットで解析し、AMPキナーゼの活性化を調べた。ウエスタンブロットでは一次抗体としてPhospho-AMPKα(Thr 172)antibody(P-AMPK)(Cell Signaling)とAMPKα antibody(AMPK)(Cell Signaling)を使用し、二次抗体としてAnti-rabbit IgG, HRP-linked antibody(Cell Signaling)を使用した。なおAICARは、AMPKの活性化剤の陽性コントロールとして広く用いられている(G.F. Merrill, E.J. Kurth, D.G. Hardie et al., AICA riboside increases AMP-activated protein kinase, fatty acid oxidation, and glucose uptake in rat muscle, Am. J. Physiol. 273 (1997) 1107-1112.)。
WH投与の約3時間前に培地を1% ウシ血清アルブミン(BSA)含有DMEMに交換した。所定の濃度のWH、HWもしくは陽性コントロールとして最終濃度として1 mMになるようにAICAR(5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleoside)存在下、筋管細胞を培養した。溶解バッファー中に細胞を回収し、軽く混合した後、遠心処理に供し、上清を回収した。このようにして回収したタンパク質についてウエスタンブロットで解析し、AMPキナーゼの活性化を調べた。ウエスタンブロットでは一次抗体としてPhospho-AMPKα(Thr 172)antibody(P-AMPK)(Cell Signaling)とAMPKα antibody(AMPK)(Cell Signaling)を使用し、二次抗体としてAnti-rabbit IgG, HRP-linked antibody(Cell Signaling)を使用した。なおAICARは、AMPKの活性化剤の陽性コントロールとして広く用いられている(G.F. Merrill, E.J. Kurth, D.G. Hardie et al., AICA riboside increases AMP-activated protein kinase, fatty acid oxidation, and glucose uptake in rat muscle, Am. J. Physiol. 273 (1997) 1107-1112.)。
2.結果
WHを終濃度0.1 mM, 0.3 mM, 1 mMで60分間投与し、AMPキナーゼの活性化を検討したところ、0.1 mM以上でAMPキナーゼの活性化を認めた(図1A)。WHを終濃度0.3 mMで投与し、AMPキナーゼ活性化の経時変化を調べたところ、60分で最も顕著なAMPキナーゼの活性化がみられ、その後120分まで活性化は持続した(図1B)。
WHを終濃度0.1 mM, 0.3 mM, 1 mMで60分間投与し、AMPキナーゼの活性化を検討したところ、0.1 mM以上でAMPキナーゼの活性化を認めた(図1A)。WHを終濃度0.3 mMで投与し、AMPキナーゼ活性化の経時変化を調べたところ、60分で最も顕著なAMPキナーゼの活性化がみられ、その後120分まで活性化は持続した(図1B)。
HWを終濃度0.1 mM, 0.3 mM, 1 mMで60分間投与し、AMPキナーゼの活性化を検討したところ、0.1 mM以上でAMPキナーゼの活性化を認めた(図2A)。HWを終濃度0.3 mMで投与し、AMPキナーゼ活性化の経時変化を調べたところ、投与5分から上昇し30-60分で最も顕著なAMPキナーゼの活性化がみられ、その後120分まで活性化は持続した(図2B)。
<WHによる細胞内へのグルコース取り込み量の上昇作用の検討>
骨格筋は主要なエネルギー消費臓器である。血糖値低下ホルモンであるインスリンの刺激により骨格筋では4型グルコース輸送体(Glut4)を介してグルコースの細胞内への取り込みが増加し、その結果血糖値は低下する。AMPキナーゼの活性化はインスリン非依存的にGlut4の細胞膜移行を促進し、グルコースの細胞内への取り込みを促進させることで血糖値の上昇を抑制する。したがってここではWHによるAMPキナーゼの活性化がインスリン非依存的に最終的に細胞内へのグルコース取り込み量の上昇作用を促すことを確認するため、骨格筋のモデルである筋管細胞を用いて測定した。
骨格筋は主要なエネルギー消費臓器である。血糖値低下ホルモンであるインスリンの刺激により骨格筋では4型グルコース輸送体(Glut4)を介してグルコースの細胞内への取り込みが増加し、その結果血糖値は低下する。AMPキナーゼの活性化はインスリン非依存的にGlut4の細胞膜移行を促進し、グルコースの細胞内への取り込みを促進させることで血糖値の上昇を抑制する。したがってここではWHによるAMPキナーゼの活性化がインスリン非依存的に最終的に細胞内へのグルコース取り込み量の上昇作用を促すことを確認するため、骨格筋のモデルである筋管細胞を用いて測定した。
1.方法
(1)細胞培養及び継代
細胞はラット筋芽細胞L6を使用した。10% FBS含有MEM(Minimum essential medium、SIGMA)を用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2 濃度5%)で培養した。80%コンフルエントになったところで継代した。
(1)細胞培養及び継代
細胞はラット筋芽細胞L6を使用した。10% FBS含有MEM(Minimum essential medium、SIGMA)を用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2 濃度5%)で培養した。80%コンフルエントになったところで継代した。
(2)筋管細胞への分化誘導
培養皿から培地を除去し、2% FBS含有のMEM(分化用培地)に交換した。2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。その後さらに1日培養し筋管細胞として実験に使用した(分化後7日の細胞を筋管細胞として使用)。
培養皿から培地を除去し、2% FBS含有のMEM(分化用培地)に交換した。2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。さらに2日後、同様に培地交換した。その後さらに1日培養し筋管細胞として実験に使用した(分化後7日の細胞を筋管細胞として使用)。
(3)細胞内へのグルコース取り込み量の測定
グルコースは細胞内へ取り込まれると直ちに代謝されるため、細胞内へのグルコース取り込み量の測定では、グルコース類似で同様に細胞内へ取り込まれるが、代謝を受けない化合物として2-デオキシ-グルコース(2-DG)が用いられる。この2-DG量を測定することにより細胞内へのグルコース取り込み量が定量できる。
グルコースは細胞内へ取り込まれると直ちに代謝されるため、細胞内へのグルコース取り込み量の測定では、グルコース類似で同様に細胞内へ取り込まれるが、代謝を受けない化合物として2-デオキシ-グルコース(2-DG)が用いられる。この2-DG量を測定することにより細胞内へのグルコース取り込み量が定量できる。
96ウェルプレートを使用し、筋管細胞を得た。試料投与の約18時間前に培地を0.2 %ウシ血清アルブミンを含む-MEMに交換した。0.2 %BSA-MEMに、WH(最終濃度0.3 mM)、インスリン(最終濃度100 nM, 陽性コントロールとして使用;SIGMA)を添加した培地を調製し添加した。別にAMPキナーゼの阻害剤であるCompoundC (SIGMA)を最終濃度として20μMになるように添加してAMPキナーゼを阻害した上でWH、インスリンを同濃度になるように投与したウェルを設けて60分間CO2インキュベーター内で静置した。その後文献(Yamamoto N, Ueda M, Sato T, Kawasaki K, Sawada K, Kawabata K, Ashida H. Measurement of glucose uptake in cultured cells. Curr Protoc Pharmacol. 12.14.1-12.14.22, 2011.)で示された方法に従い、細胞内へ取り込まれた2-DG量を蛍光法により測定した。
(4)統計処理
図3の統計処理は、Turkey-Kramer testを用いた。P < 0.05を有意差ありとした。
図3の統計処理は、Turkey-Kramer testを用いた。P < 0.05を有意差ありとした。
2.結果
陽性コントロールであるインスリンは筋管細胞内へのグルコースの取り込み量を有意に上昇させるが、AMPキナーゼの阻害剤であるCompoundCの投与はこの上昇を抑制しなかった(図3)。一方、WHの投与により筋管細胞内へのグルコースの取り込み量は有意に上昇した(図3)。一方AMPキナーゼの阻害剤であるCompoundCの投与はWHの投与による筋管細胞内へのグルコースの取り込み量の増加を完全に阻止した(図3)。したがってWHは、AMPキナーゼの活性化により筋管細胞内へのグルコースの取り込み量を増加させることが明らかになった。
陽性コントロールであるインスリンは筋管細胞内へのグルコースの取り込み量を有意に上昇させるが、AMPキナーゼの阻害剤であるCompoundCの投与はこの上昇を抑制しなかった(図3)。一方、WHの投与により筋管細胞内へのグルコースの取り込み量は有意に上昇した(図3)。一方AMPキナーゼの阻害剤であるCompoundCの投与はWHの投与による筋管細胞内へのグルコースの取り込み量の増加を完全に阻止した(図3)。したがってWHは、AMPキナーゼの活性化により筋管細胞内へのグルコースの取り込み量を増加させることが明らかになった。
本発明のAMPキナーゼ活性化剤はエネルギー代謝の改善に有効である。例えば糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームの予防・治療への適用が可能である。特に、運動療法の困難な心血管系障害を持つ人、食事制限療法に抵抗を示す肥満者などへの予防・治療対策として本発明が利用されることが期待される。
AMPキナーゼ活性化作用を示す物質としてレプチン、アディポネクチンが知られているが、これらは脂肪細胞由来ホルモン(タンパク質)であり、経口的な摂取に適さない。対照的に、本発明のAMPキナーゼ活性化剤は経口摂取に向き、サプリメント等として常用も可能である。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (6)
- トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分とする、AMPキナーゼ活性化剤。
- AMPキナーゼの活性化を介して、細胞内へのグルコースの取り込み量を上昇させる、請求項1に記載のAMPキナーゼ活性化剤。
- 請求項1又は2に記載のAMPキナーゼ活性化剤を含有する、エネルギー代謝改善用組成物。
- 医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、請求項3に記載の組成物。
- 肥満又は糖尿病の予防又は治療に使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
- トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を患者に対して治療上有効量投与するステップを含む、肥満又は糖尿病の予防・治療法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013024082A JP2014152149A (ja) | 2013-02-12 | 2013-02-12 | Ampキナーゼ活性化剤及びその用途 |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020130120A (ja) * | 2019-02-25 | 2020-08-31 | 不二製油グループ本社株式会社 | 肝臓脂肪合成抑制用食品組成物 |
-
2013
- 2013-02-12 JP JP2013024082A patent/JP2014152149A/ja active Pending
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JP2020130120A (ja) * | 2019-02-25 | 2020-08-31 | 不二製油グループ本社株式会社 | 肝臓脂肪合成抑制用食品組成物 |
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