JP2014150788A - ウニ塩辛とその製造方法 - Google Patents

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律子 和田
Tsuneo Shiba
恒男 芝
Manabu Furushimo
学 古下
Takeshi Nakajima
豪 中嶋
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Abstract

【課題】所望の硬さを保持しつつアルコール濃度が低い、常温保存が可能なウニ塩辛とその製造方法を得る。
【解決手段】ウニ原料に食塩とアルコールを添加した後に、アルコール濃度の低下処理を施すことでウニ塩辛を製造する。より具体的には、ウニ原料にアルコールを添加してアルコール濃度を7%以上とした後に、アルコール濃度が4%〜6%となるようにアルコール濃度を低下させて、貯蔵弾性率は4,800Pa以上のウニ塩辛を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウニ塩辛に関するものであり、特に、所望の硬さを保持しつつアルコール濃度が低い、常温保存が可能なウニ塩辛とその製造方法に関するものである。
ウニ塩辛は、ウニの生殖巣(卵巣および精巣)を原料とした加工食品である。ウニは、自己消化作用が高く、容易に細菌腐敗を引き起こすが、ウニ塩辛は、これらを抑制することを目的とした加工食品である。すなわち、ウニ塩辛は、ウニの自己消化作用を抑制して形状を保持し、静菌作用により細菌腐敗を抑制し、「ウニの状態を保つ」ことを目的として製造される。
ウニ塩辛には、食塩とアルコール(エタノール)を添加して製造する「アルコール含有ウニ塩辛」と、食塩のみを添加する「塩ウニ塩辛」と、がある。一般的なウニ塩辛は、アルコール含有ウニ塩辛であり、常温流通可能であるにも関わらず保存可能期間が1カ月以上から数年である。一方、塩ウニ塩辛は高級品である上、貯蔵には冷蔵を要し、保存可能期間も約1カ月程度であるため、少量生産となっている(非特許文献1参照)。
ウニ塩辛におけるアルコールの添加は、ウニのタンパク質の変性による自己消化作用を低減させ、添加されたアルコール濃度が高いほど、タンパク質の変性に伴う粒状崩壊および軟化が小さくなる傾向がある。また、アルコール濃度7%以上では、静菌作用があり、一般生菌数の増加も見られない(非特許文献2および非特許文献3参照)。さらに、アルコール濃度が低いものは暗色化する傾向があり、商品価値の低下を引き起こす(非特許文献2参照)。このように、アルコールの添加は、常温保存用のウニ塩辛の製造には必要不可欠である。
近年、消費者の嗜好の変化により、アルコール濃度の低減化が求められており、アルコール含有ウニ塩辛のアルコール濃度の低減化が求められている。しかし、現状のアルコール含有ウニ塩辛の多くは、アルコール濃度が10%前後でアルコールの後味が強いため、敬遠されがちである。一方、アルコール濃度が5%程度で後味が改善された製品は、存在はするものの製品の軟化が進んでおり、アルコール濃度が10%前後のアルコール含有ウニ塩辛の食感とは大きく異なる。したがって、アルコール濃度が低く、かつ、所望の硬さを保持したアルコール含有ウニ塩辛が望まれている。
アルコール濃度が低いアルコール含有ウニ塩辛の製造方法は、初期添加のアルコール濃度を低くする方法と、半年から数年の長期熟成によるアルコールの自然蒸発による低減化方法の2種類に大別される。前者の場合、先に述べた通り、製品の軟化が問題となる。後者の場合、安定的な品質管理や熟成過程中における細菌汚染が問題となり、特に、大量生産を行うウニ塩辛の製造においては利用が困難である。このように、所望の硬さを保持したアルコール濃度が低いアルコール含有ウニ塩辛の製造方法が無いのが現状である。
「全国水産加工品総覧」福田裕・山澤正勝・岡崎恵美子 監修、光琳発行、平成17年 河内正通・畑幸彦:ウニの塩辛に関する研究−II ウニ塩辛の貯蔵中における成分変化におよぼす食塩およびアルコールの濃度の影響について,農水講研報,9(3),383−390(1960) 島田和子・上村敦子・田部和美・菅昭人:うに塩辛の熟成におよぼす食塩とエタノール濃度の影響,日本食品工業学会誌,36(6),495−501(1989)
本発明は、所望の硬さを保持しつつアルコール濃度の低いウニ塩辛を提供することを目的とする。
本発明は、ウニ原料に食塩とアルコールを添加した後に、アルコール濃度の低下処理を施すことを特徴とする。
本発明によれば、所望の硬さを保持しつつアルコール濃度の低いウニ塩辛を提供することができる。
以下、本発明にかかるウニ塩辛とその製造方法の実施の形態について説明する。
ここで、本発明にかかるウニ塩辛のウニ原料は、加工前の状態は、生原料、冷蔵・冷凍原料、加工原料のいずれでもよく、また、ウニの種類は、バフンウニ、ムラサキウニ、チリウニなど食用に供されるウニであればよい。
また、本発明にかかるウニ塩辛は、アルコール濃度が4%〜6%、貯蔵弾性率が4,800Pa以上で、常温保存が可能である。
また、保存性は、貯蔵弾性率、一般生菌数、色差の観点から評価する。
貯蔵弾性率は、ウニ塩辛の内部に蓄えられた応力を保持する能力(弾性成分)であり、ヨーグルトやチーズ等の食品の硬さの評価に用いられている。動的粘弾性測定装置により測定され、直径25mmの平行治具を用いて、試料厚1mm、測定温度4℃、周波数1rad/sec時の数値で示される。
一般生菌数は、公定法を用いる。すなわち、標準寒天培地を用いた混釈培養法を適用して、35℃条件下で48±3時間培養したコロニー数を1g当たりで求めたもので示される。
色差は、色彩色差計により測定し、L、a、bの数値で示される。
●ウニ塩辛の製造方法●
以下、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法について説明をする。ここで、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法は、以下に説明するとおり、一旦、所望の硬さのウニ塩辛が得られる7%以上のアルコール濃度のアルコールをウニ原料に添加した上で、減圧処理などを施して6%以下のアルコール濃度とする。減圧処理などのアルコール濃度低下処理の処理時間を制御することで、ウニ塩辛を軟化させることなく、所望の硬さを保持した低アルコール濃度のウニ塩辛を得ることができる。
(選別工程)
先ず、ウニ原料に混在しているトゲ、殻、内蔵残渣などの不純物をウニ原料から取り除く。
(アルコールおよび食塩添加工程)
次いで、ウニ原料にアルコールと食塩とを添加して混合して、アルコール含有ウニ塩辛を得る。添加されるアルコールの濃度は7%以上とし、食塩の濃度は例えば10%以下とする。
(味付け工程)
次いで、アルコール含有ウニ塩辛に調味料を用いて味付けをする。ここで、調味料としては、例えば、砂糖やアミノ酸を適当な割合で含むものがある。ただし、本発明において調味料はこれに限定されることはなく、調味成分や使用量は嗜好や用途などに合わせて調整すればよい。
(室温熟成工程)
次いで、アルコール含有ウニ塩辛を室温のもとで放置して熟成させる。ここで、放置方法としては、例えば、瓶に充填した状態、あるいは、パック包装した状態で放置する方法がある。なお、本発明において、熟成期間は特に限定はない。
(アルコール濃度低下工程)
次いで、熟成させたアルコール含有ウニ塩辛のアルコール濃度を6%以下に低下させる。ここで、アルコール濃度を低下させる方法として、例えば、熟成させたアルコール含有ウニ塩辛に対して減圧処理を施す。減圧処理は、減圧条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)で室温放置する方法であればよく、例えば、真空包装機などを用いることができる。なお、本発明におけるアルコール濃度低下処理には、前述のアルコールの自然蒸発によるものは含まれない。
●実施例●
次に、本発明にかかるウニ塩辛とその製造方法の実施例について説明をする。ただし、本発明は、以下に説明する実施例には限定されない。
●減圧処理時間が及ぼすアルコール濃度への影響
原料のバフンウニにアルコール10%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、60秒、180秒、360秒、720秒間放置した。各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛のアルコール濃度と水分含有量を表1に示す。
Figure 2014150788
表1に示すように、各室温減圧処理の処理時間の経過と共に、アルコール濃度は低下しているが、水分含有量は変化していない。
原料のチリウニにアルコール9%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、180秒、360秒間放置した。各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛のアルコール濃度と水分含有量を表2に示す。
Figure 2014150788
表2に示すように、各室温減圧処理の処理時間の経過と共に、アルコール濃度は低下しているが、水分含有量は変化していない。
以上説明した実施例1,実施例2より、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法によれば、ウニ原料のウニの種類によらず、アルコールを選択的に除去することができ、アルコール濃度を減圧処理の処理時間で制御することができる。
●減圧処理時間が及ぼす官能試験への影響
原料のバフンウニにアルコール10%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、60秒、180秒、360秒、720秒間放置した。各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛の官能評価の結果を表3に示す。
Figure 2014150788
※−:処理時間0秒と比較し変化がない ○:処理時間0秒と比較し若干の変化がある
◎:処理時間0秒と比較し明確な変化がある
表3に示すように、室温減圧処理時間が60秒間では、アルコール臭やアルコール味が残ってしまっている。一方、室温減圧処理時間が180秒間または360秒間ではアルコール臭が低減し、アルコール味も低減している。しかし、室温減圧処理時間をさらに延ばして、室温減圧処理時間が720秒間ではアルコール臭は低減しているものの、ウニ原料が持つ苦味が感じられた。なお、食感や外観は、各室温減圧処理時間においても変化していない。
以上より、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法によれば、室温減圧処理時間が180秒間から360秒間の間であればアルコール臭もアルコール味も低減させることができて望ましい、と評価することができる。
ここで、室温減圧処理時間とアルコール濃度との関係を示した表1によれば、室温減圧処理時間が60秒間のときのアルコール濃度は6%よりも高く、同時間が720秒間のときのアルコール濃度は4%よりも低い。一方、室温減圧処理時間が180秒間または720秒間のときのアルコール濃度は4%〜6%の範囲内である。すなわち、ウニ塩辛のアルコール濃度を4%〜6%の範囲内にすることで、アルコール臭やアルコール味、あるいは、ウニの苦味を除去することができる、換言すれば、アルコール臭やアルコール味を低減することができる。
●低濃度アルコール含有ウニ塩辛の物性評価
原料のバフンウニにアルコール10%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、180秒、360秒間放置した。その後、各室温減圧処理条件で減圧されて製造された本発明にかかるウニ塩辛の貯蔵弾性率(4℃・1rad/sec)と色差とを、表4と表5とに示す。
(貯蔵弾性率)
Figure 2014150788
表4に示すように、各室温減圧処理条件下で減圧されて製造された本発明にかかるウニ塩辛の貯蔵弾性率は、向上している。すなわち、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法によれば、減圧処理の前後でウニ塩辛は硬化する、と評価することができる。
(色差)
Figure 2014150788
表5に示すように、各室温減圧処理条件下で減圧されて製造された本発明にかかるウニ塩辛の色差は、変化していない。すなわち、本発明にかかるウニ塩辛の製造方法によれば、減圧処理の前後でウニ塩辛の色差は変化しない、と評価することができる。
●貯蔵弾性率と硬さの官能評価
ここで、様々な貯蔵弾性率を有するアルコール含有ウニ塩辛の硬さに対する官能評価の結果を、表6に示す。
Figure 2014150788
表6に示すように、貯蔵弾性率が高い方が硬いと評価され、貯蔵弾性率が低いと柔らかいと評価される。この結果より、少なくとも、貯蔵弾性率が4,800Pa以上では硬い、と評価することができる。
●減圧処理した低濃度アルコール含有ウニ塩辛の保存性
原料のバフンウニにアルコール10%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、180秒、360秒間放置した。その後、各室温減圧処理条件で減圧されたものを瓶詰めして35℃で3カ月間の保存試験を行った。表7は一般生菌数の変化、表8は貯蔵弾性率の変化、表9は色差の変化、を示す。
(一般生菌数変化)
Figure 2014150788
表7に示すように、各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛の一般生菌数は、保存開始時と3カ月経過後とで同等程度である、つまり、保存期間中に菌数は増加していない。
ここで、ウニ塩辛の一般生菌数は、一般的には6log10CFU/g以下が妥当である、とされている。表7は、本発明にかかるウニ塩辛は、アルコール濃度が従来品と比べて低いにも関わらず、一般生菌数が従来品と同等程度であることを示している。すなわち、本発明にかかるウニ塩辛は、3カ月間の保存には問題無し、と評価することができる。
(貯蔵弾性率変化)
Figure 2014150788
表8に示すように、各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛の貯蔵弾性率は、保存開始1カ月後には向上していて、保存開始時と3カ月経過とで同程度である。すなわち、本発明にかかるウニ塩辛は、3カ月の保存期間中に硬さは変化しない、と評価することができる。
(色差変化)
Figure 2014150788
表9に示すように、各室温減圧処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛の色差は、保存期間の経過と共に数値は概ね減少し、3カ月経過時には急激に変化している。すなわち、本発明にかかるウニ塩辛は、色差の観点では、保存期間は2カ月以上で3カ月未満である、と評価することができる。
●従来のウニ塩辛との比較結果
原料のバフンウニにアルコール10%、食塩5%を添加して、室温で1カ月間熟成させた後、約60gをナイロンパックに入れて室温減圧処理条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)に0秒、180秒、360秒間放置した。表10は、各室温処理条件下で製造された本発明にかかるウニ塩辛と、従来のウニ塩辛(A〜F社製)との硬さとアルコール濃度を比較した結果を示す。
Figure 2014150788
ここで、表10の1行目の「本発明(0秒間処理)」とあるのは、本発明にかかる製造方法が備える前述の「アルコール濃度低下工程」の開始前のウニ塩辛を指している。すなわち、この「本発明(0秒間処理)」のウニ塩辛は、本発明にかかるウニ塩辛そのものではないが、説明の便宜上、このように表示してある。
表10に示すように、本発明にかかるウニ塩辛は、従来のウニ塩辛と比べてアルコール濃度が低いにも関わらず、貯蔵弾性率が7,000Pa以上であり、官能試験の結果も硬いと評価されている。

Claims (7)

  1. ウニ原料に食塩とアルコールを添加した後に、アルコール濃度の低下処理を施すことを特徴とするウニ塩辛の製造方法。
  2. 前記ウニ原料に添加されるアルコールのアルコール濃度は7%以上であり、
    前記アルコール濃度の低下処理で、アルコール濃度を6%以下にする、
    請求項1記載のウニ塩辛の製造方法。
  3. 前記アルコール濃度の低下処理で、アルコール濃度を4%以上にする、
    請求項2記載のウニ塩辛の製造方法。
  4. 前記アルコール濃度の低下処理後の貯蔵弾性率は、4,800Pa以上である、
    請求項1乃至3のいずれかに記載のウニ塩辛の製造方法。
  5. 前記アルコール濃度の低下処理は、減圧処理である、
    請求項1乃至4のいずれかに記載のウニ塩辛の製造方法。
  6. 前記減圧処理は、室温減圧条件下(ゲージ圧表記で−1.0bar)で施される、
    請求項5記載のウニ塩辛の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のウニ塩辛の製造方法で製造されたことを特徴とするウニ塩辛。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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