JP2014146684A - 半導体発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光効率を高め且つドループ率の増大を抑えることができる半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】GaN系半導体層上に、夫々、井戸層15a及び障壁層15bが交互に繰り返し積層されてなる第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16及び多重量子井戸発光層17を順に積層形成する。この際、第2の多重量子井戸構造層に含まれる井戸層16aのIn組成は、発光層に含まれる井戸層17aのIn組成よりも大であり、第1の多重量子井戸構造層に含まれる井戸層15aのIn組成は発光層に含まれる井戸層のIn組成以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、半導体発光素子及びその製造方法に関する。
近年、半導体発光素子として、GaN(窒化ガリウム)系半導体の発光層を有する半導体発光素子が研究されている。かかる半導体発光素子は、p型のGaN系半導体層とn型のGaN系半導体層との間に、InGaN(インジウム窒化ガリウム)からなる発光層(活性層とも称する)を挟んだ構造を有する。
また、このような半導体発光素子の発光効率を高めるべく、上記した発光層のIn(インジウム)の組成より大なるIn組成を有するInGaN層を、発光層及びn型GaN層間に設けることにより、外部量子効率を高めるようにした技術が提案されている。また、このようなInGaN層として、In組成が大なる層と、In組成が小なる層とを交互に繰り返し積層した構造を採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、かかる構成をもってしても、外部量子効率を十分に高めることができず、高い発光効率を得ることが出来ないという問題があった。
更に、現在、このような半導体発光素子に生じるドループ(Droop)現象、つまり半導体発光素子に注入する電流を増加するにつれて発光効率が低下してしまうというドループ率の低下を抑制する技術が望まれている。
特開2007−88481号公報
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、外部量子効率を高めると共にドループ率を抑制させた発光効率の高い半導体発光素子びその製造方法を提供することである。
本発明に係る半導体発光素子は、第1導電型の第1のGaN系半導体層と、InGaN結晶からなる第1の井戸層と、前記第1の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶又はGaN結晶からなる第1の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第1のGaN系半導体層上に形成された第1の多重量子井戸構造層と、InGaN結晶からなる第2の井戸層と、前記第2の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第2の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第1の多重量子井戸構造層上に形成された第2の多重量子井戸構造層と、InGaN結晶からなる第3の井戸層と、前記第3の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第3の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第2の多重量子井戸構造層上に形成された多重量子井戸発光層と、前記多重量子井戸発光層上に形成された、第1導電型とは反対導電型の第2導電型の第2のGaN系半導体層と、を有し、前記第1の井戸層のインジウム組成は前記第3の井戸層のインジウム組成以下であり、前記第2の井戸層のインジウム組成は前記第3の井戸層のインジウム組成より大きいことを特徴としている。
また、本発明に係る半導体発光素子の製造方法は、基板上に第1導電型の第1のGaN系半導体層を形成する工程と、前記第1のGaN系半導体層上に、InGaN結晶からなる第1の井戸層と、前記第1の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶又はGaN結晶からなる第1の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる第1の多重量子井戸構造層を形成する工程と、前記第1の多重量子井戸構造層上に、前記第1の井戸層よりもインジウム組成が大きいInGaN結晶からなる第2の井戸層と、前記第2の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第2の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる第2の多重量子井戸構造層を形成する工程と、前記第2の多重量子井戸構造層上に、前記第2の井戸層よりもインジウム組成が小さいInGaN結晶からなる第3の井戸層と、前記第3の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第3の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる多重量子井戸発光層を形成する工程と、前記多重量子井戸発光層上に、前記第1導電型とは反対導電型の第2導電型の第2のGaN系半導体層を形成する工程と、を含むことを特徴としている。
本発明の半導体発光素子は、GaN系半導体層上に、夫々、井戸層及び障壁層が交互に繰り返し積層されてなる第1の多重量子井戸構造層、第2の多重量子井戸構造層及び多重量子井戸発光層を順に積層形成したものである。この際、第2の多重量子井戸構造層に含まれる井戸層のIn組成を、発光層に含まれる井戸層のIn組成よりも大きくすることにより、半導体発光素子の外部量子効率を向上させ且つドループ率を抑制させている。更に、本発明に係る半導体発光素子では、上記した第2の多重量子井戸構造層及びGaN系半導体層間に、発光層に含まれる井戸層のIn組成以下のIn組成を有する井戸層を含む第1の多重量子井戸構造層を設けることにより、GaN系半導体層及び第2の多重量子井戸構造層間の格子定数の差を少なくしている。これにより、格子不整合に伴う格子欠陥が生じにくくなり、この格子欠陥に起因する外部量子効率の低下及びドループ率の増加を抑えることが可能となる。
よって、本発明によれば、外部量子効率を高め且つドループ率を抑えた発光効率の高い半導体発光素子を提供することが可能となる。
本発明による半導体発光素子の構造を示す断面図である。 第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16及び発光層17各々の断面構造を示す断面図である。 第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16及び発光層17のエネルギーバンドの一例を示すエネルギーバンド図である。 半導体発光素子の製造手順を示すフロー図である。 SIMS分析によって測定された、第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16、及び発光層17のIn組成を示すIn組成分布図である。 第2の多重量子井戸構造層の井戸層16aのIn組成と、外部量子効率、ドループ率、及び正規化外部量子効率の関係を示す図である。 第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16及び発光層17のエネルギーバンドの他の一例を示すエネルギーバンド図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係る半導体発光素子の断面の一部を示す断面図である。図1に示すように、かかる半導体発光素子は、結晶成長基板としてのサファイア(SiC)基板11上に、低温バッファ層12、アンドープGaN層13、n−GaN層14、第1のInGaN多重量子井戸構造層15、第2のInGaN多重量子井戸構造層16、多重量子井戸発光層17、p−AlGaN層18、及びp−GaN層19を積層させた構造を有する。
低温バッファ層12は、サファイア基板11上に形成されており、GaN結晶からなる層厚約20nmの層である。アンドープGaN層13は、低温バッファ層12上に形成されており、GaN結晶からなる層厚約2μmの層である。n−GaN層14は、アンドープGaN層13上に形成されており、GaN系半導体結晶からなる層厚約4μmのn型の半導体層である。
第1の多重量子井戸構造層15は、n−GaN層14上に形成されている。第1の多重量子井戸構造層15は、図2に示すように、InGa(1−X)N結晶からなる井戸層15aと、井戸層15aよりもIn組成の小さいInGa(1−X)N結晶又はGaN結晶からなる障壁層15bとが、交互に繰り返し積層されてなる、いわゆる多重量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)を有する。この際、図3のエネルギーバンド図に示すように、第1の多重量子井戸構造層15における井戸層15a及び障壁層15b各々の層厚は同一の層厚D(例えば4nm)であり、井戸層15aのIn組成はX(例えば0.24)である。
第2の多重量子井戸構造層16は、第1の多重量子井戸構造層15上に形成されている。第2の多重量子井戸構造層16は、図2に示すように、InGa(1−X)N結晶からなる井戸層16aと、井戸層16aよりもIn組成の小さいInGa(1−X)N結晶からなる障壁層16bとが交互に繰り返し積層されてなる、いわゆる多重量子井戸構造を有する。尚、図3に示すように、第2の多重量子井戸構造層16における井戸層16aの層厚は、第1の多重量子井戸構造層15の井戸層15aの層厚Dよりも小なる層厚D(例えば3nm)であり、障壁層16bの層厚は、第1の多重量子井戸構造層15の障壁層15bの層厚Dよりも大なる層厚D(例えば5nm)である。また、図3に示す如く、第2の多重量子井戸構造層16の井戸層16aのIn組成X(例えば0.28)は、第1の多重量子井戸構造層15の井戸層15aのIn組成Xよりも大である。第2の多重量子井戸構造層16における障壁層16bのIn組成X(例えば0.005)は、第1の多重量子井戸構造層15の障壁層15bのIn組成よりも大である。
発光層17は、図2に示すように、InGa(1−X)N結晶からなる井戸層17aと、井戸層17aよりもIn組成の小さいInGa(1−X)N結晶からなる障壁層17bと、が交互に繰り返し積層されてなる、いわゆる多重量子井戸構造を有する。この際、図3に示すように、発光層17の井戸層17aは層厚Dを有し、障壁層17bは層厚Dを有する。尚、本実施例では、例えば、井戸層17aの層厚Dを第2の多重量子井戸構造層16の井戸層16aの層厚Dと同一の3nmとし、障壁層17bの層厚Dを第2の多重量子井戸構造層16の障壁層16bの層厚Dと同一の5nmとした。また、発光層17の井戸層17aのIn組成X(例えば0.24)は、第2の多重量子井戸構造層16における井戸層16aのIn組成Xよりも小である。つまり、井戸層16aは井戸層17aよりも大なるIn組成を有する。更に、発光層17の障壁層17bのIn組成X(例えば0.005)は第1の多重量子井戸構造層15の障壁層15bのIn組成よりも大である。尚、発光層17の井戸層17a及び障壁層17b各々のIn組成及び層厚は、所望とする発光波長に応じて適宜設定されるものである。
p−AlGaN層18は、発光層17上に形成されており、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)半導体結晶からなる層厚約20nmのp型の半導体層である。p−GaN層19は、p−AlGaN層18上に形成されており、GaN系半導体結晶からなる層厚約100nmのp型の半導体層である。
上記した半導体発光素子は、例えば有機金属気相成長(以下、MOCVDと称する)法によって製造される。図4は、MOCVD装置(図示せぬ)による半導体発光素子の製造手順を示すフロー図である。
図4において、MOCVD装置は、リアクタ(図示せぬ)内にサファイア基板11が設置されると、先ず、基板11の温度(成長温度)を約1100℃に調整した状態で10分間に亘りアニール処理を行う。そして、基板11の温度が約500℃に調整され、トリメチルガリウム(TMG)及びアンモニア(NH)からなる原料ガスがリアクタ内に供給される。これにより、GaN結晶からなる、例えば層厚約20nmの低温バッファ層12を形成する(低温バッファ層形成工程S1)。
次に、基板11の温度が約1100℃に調整され、TMG及びNHからなる原料ガスが引き続きリアクタ内に供給される。これにより、GaN結晶からなる、例えば層厚約2μmのアンドープGaN層13を低温バッファ層12上に形成する(アンドープGaN層形成工程S2)。
次に、基板11の温度が約1000〜1200℃に調整され、シラン(SiH)を含むドーパントガスと、TMG及びNHからなる原料ガスとがリアクタ内に供給される。これにより、シリコンがドープされたキャリア濃度8×1019cm-3のn型のGaN系半導体結晶からなる層厚約4μmのn−GaN層14をアンドープGaN層13上に形成する(n−GaN層形成工程S3)。
次に、基板11の温度が約800〜900℃に調整され、トリメチルインジウム(TMI)、TMG及びNHがリアクタ内に供給される。これにより、In組成(X)が約0.24のInGa(1−X)N結晶からなる層厚約4nmの井戸層15aをn−GaN層14上に形成する。次に、TMG及びNHからなる原料ガスを用い、TMIの供給を停止又はその供給量を低減することにより、GaN結晶又はInGa(1−X)N結晶からなる層厚約4nmの障壁層15bを井戸層15a上に形成する。上述した井戸層15a及び障壁層15bを形成する一連の処理を複数回に亘り繰り返し実行することにより、井戸層15a及び障壁層15bが交互に積層(例えば4層の井戸層15aを有する)された第1の多重量子井戸構造層15を、n−GaN層14上に形成する(第1の多重量子井戸構造層形成工程S4)。
次に、基板11の温度を約800〜900℃に維持したまま、TMG、TMI及びNHをリアクタ内に供給することにより、In組成(X)が約0.28のInGa(1−X)N結晶からなる層厚約3nmの井戸層16aを形成する。次に、TMIの供給量を減らすことにより、井戸層16a上に、In組成(X)が約0.005のInGa(1−X)N結晶からなる層厚約5nmの障壁層16bを形成する。上述した井戸層16a及び障壁層16bを形成する一連の処理を複数回に亘り繰り返し実行することにより、井戸層16a及び障壁層16bが交互に積層(例えば4層の井戸層16aを有する)されてなる多重量子井戸構造(MQW)を有する第2の多重量子井戸構造層16を、第1の多重量子井戸構造層15上に形成する(第2の多重量子井戸構造層形成工程S5)。
次に、基板11の温度を約800〜900℃に維持したまま、TMG、TMI及びNHからなる原料ガスをリアクタ内に供給することにより、In組成(X)が約0.24のInGa(1−X)N結晶からなる層厚約3nmの井戸層17aを形成する。次に、TMIの供給量を減らすことにより、井戸層17a上に、In組成(X)が約0.005のInGa(1−X)N結晶からなる層厚約5nmの障壁層17bを形成する。上述した井戸層17a及び障壁層17bを形成する一連の処理を複数回に亘り繰り返し実行することにより、井戸層17a及び障壁層17bが交互に積層(例えば7層の井戸層17aを有する)されてなる多重量子井戸構造(MQW)を有する発光層17を、第2の多重量子井戸構造層16上に形成する(発光層形成工程S6)。
次に、基板11の温度を約800〜900℃に維持したまま、シクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を含むドーパントガスと、TMG、トリメチルアルミニウム(TMA)及びNHからなる原料ガスと、がリアクタ内に供給される。これによりMgがドープされたp型のAlGaN半導体結晶からなるp−AlGaN層18を、発光層17上に形成する(p−AlGaN層形成工程S7)。
次に、TMAの供給を停止し、CpMgを含むドーパントガスと、TMG及びNHからなる原料ガスとを用いて、Mgがドープされたp型のGaN系半導体結晶からなる層厚約100nmのp−GaN層19をp−AlGaN層18上に形成する(p−GaN層形成工程S8)。
このように、本発明に係る半導体発光素子は、第1導電型の第1のGaN系半導体層としてのn−GaN層14上に、第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16、発光層17、及び第1導電型とは反対導電型の第2導電型の第2のGaN系半導体層(18、19)を順に積層した構造を有する。尚、第1の多重量子井戸構造層15は、InGaN結晶からなる第1の井戸層としての井戸層15aと、GaN結晶又はこの井戸層15aよりも小さいIn組成のInGaN結晶からなる第1の障壁層としての障壁層15bとが交互に繰り返し積層された構造を有する。また、第2の多重量子井戸構造層16は、InGaN結晶からなる第2の井戸層としての井戸層16aと、この井戸層16aよりも小さいIn組成のInGaN結晶からなる第2の障壁層としての障壁層16bと、が交互に繰り返し積層された構造を有する。尚、第2の多重量子井戸構造層16の障壁層16bのIn組成は上記した第1の多重量子井戸構造層15の障壁層15bのIn組成よりも大きい。また、発光層17は、InGaN結晶からなる第3の井戸層としての井戸層17aと、この井戸層17aよりも小さいIn組成を有するInGaN結晶からなる第3の障壁層としての障壁層17bとが交互に繰り返し積層された構造を有する。この際、第1の多重量子井戸構造層15における井戸層15aのIn組成は、発光層17における井戸層17aのIn組成以下であり、第2の多重量子井戸構造層16における井戸層16aのIn組成は発光層17における井戸層17aのIn組成より大となっている。
図5は、SIMS(secondary-ion mass spectrometry)分析によって測定した、上記第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16、及び発光層17のIn組成分布(深さ方向のSIMSプロファイル)を示す図である。尚、図5に示されるIn組成分布は、深さ方向における第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16、及び発光層17のIn組成の分布を表すものである。
図5に示されるように、第1の多重量子井戸構造層15における井戸層15aのIn組成は、発光層17における井戸層17aのIn組成Xと等しい、或いは以下であれば良い。更に、図5に示されるように、第2の多重量子井戸構造層16の井戸層16aのIn組成Xは、発光層17における井戸層17aのIn組成Xよりも大となっている。
このように、本発明に係る半導体発光素子では、発光層17における井戸層17aのIn組成よりも大なるIn組成を有する井戸層16aを含む多重量子井戸構造の第2の多重量子井戸構造層16を、発光層17の下面に設けるようにしている。
図6(a)は、第2の多重量子井戸構造層16における井戸層16aのIn組成Xと、外部量子効率との対応関係を示す図である。尚、図6(a)において、実線は、電流密度J=35A/cmでのIn組成に対する外部量子効率を表し、破線は、電流密度J=70A/cmでのIn組成に対する外部量子効率を表し、一点鎖線は、電流密度J=100A/cmでのIn組成に対する外部量子効率を表わしている。図6(a)に示すように、電流密度が35又は70A/cmの際はIn組成の増加に対する外部量子効率の変化は微量であるが、電流密度が100A/cmの際は、In組成の増加に伴い外部量子効率が顕著に増加することが確認された。
図6(b)は、第2の多重量子井戸構造層16における井戸層16aのIn組成Xと、ドループ率との関係を示す図である。尚、図6(b)において、実線は、電流密度J=35A/cmの電流を供給した場合でのIn組成に対するドループ率を表し、破線は、電流密度J=70A/cmの電流を供給した場合でのIn組成に対するドループ率を表し、一点鎖線は、電流密度J=100A/cmでのIn組成に対するドループ率を表わしている。図6(b)に示すように、電流密度が35又は70A/cmの際はIn組成の増加に対するドループ率の変化は微量であるが、電流密度が100A/cmの際は、In組成の増加に伴いドループ率が顕著に低下することが確認された。
図6(c)は、電流密度に対する正規化外部量子効率の推移を表す図である。尚、図6(c)において、実線は、第2の多重量子井戸構造層16として、In組成が極めて小、つまり実質的に0のGaN単一層からなる構造を採用した場合に得られる特性である。また、図6(c)の一点鎖線は、第2の多重量子井戸構造層16として、上記実施例の如きIn組成が0.28の井戸層16a及びIn組成が0.005の障壁層16bからなる多重量子井戸構造を採用した場合に得られる特性である。図6(c)に示されるように、電流密度が70A/cmより少ない場合には、第2の多重量子井戸構造層16のIn組成が0であるか0.28であるかに拘わらず正規化外部量子効率に変化は見られない。しかしながら、電流密度J=70A/cm以上の電流を供給した場合での外部量子効率は、第2の多重量子井戸構造層16のIn組成が0である場合よりも0.28である場合の方が高くなることが確認された。
尚、図6(a)〜図6(c)は、図3に示すIn組成Xが0.005、In組成Xが0.24である場合における、多重量子井戸構造層の井戸層16aのIn組成と、外部量子効率、ドループ率、及び正規化外部量子効率各々の関係を示すものである。
すなわち、図6(a)〜図6(c)に示されるように、発光層17におけるIn組成よりも大なるIn組成(例えば0.28)を有する井戸層16aを含む多重量子井戸構造の第2の多重量子井戸構造層16を発光層17の下面に設けることにより、外部量子効率を向上、且つドループ率を抑制することが可能となる。
ところで、発光層17よりもIn組成が大きい第2の多重量子井戸構造層16を直接、n−GaN層14上に形成した場合には、第2の多重量子井戸構造層16の格子定数とn−GaN層14の格子定数との差により、格子不整合に伴う格子欠陥が生じ、この格子欠陥により、外部量子効率の低下及びドループ率の増加を招く虞が生じる。
そこで、本発明に係る半導体発光素子では、n−GaN層14及び第2の多重量子井戸構造層16間に、発光層17における井戸層17aのIn組成以下のIn組成を有する井戸層15aと、障壁層15bとが交互に積層されてなる第1の多重量子井戸構造層15を設けるようにしている。これにより、n−GaN層14及び第2の多重量子井戸構造層16間の格子定数の差を少なくしているのである。
よって、かかる構成によれば、格子不整合に伴う格子欠陥が抑制され、且つこの格子欠陥に起因する外部量子効率の低下及びドループ率の増大が抑えられるようになるので、発光効率を向上させることが可能となる。
尚、上記実施例では、第2の多重量子井戸構造層16に含まれる複数の井戸層16a各々のIn組成を、図3に示す如く、全て同一のIn組成X(例えば、0.28)としているが、必ずしも全て同一にする必要はない。
例えば、図7に示す如く、第2の多重量子井戸構造層16内において、最も第1の多重量子井戸構造層15に近い位置に形成されている井戸層16aのIn組成を最大のXとし、第2番目に第1の多重量子井戸構造層15に近い位置に形成されている井戸層16aのIn組成をIn組成Xよりも低く且つ発光層17におけるIn組成Xよりも高いIn組成X15とする。尚、図7に示す一例では、4層分の井戸層16a及び障壁層16bによって第2の多重量子井戸構造層16を構築するようにしているが、その積層数は4つに限定されない。要するに、第2の多重量子井戸構造層16内に形成されているn個(nは2以上の整数)の井戸層16a各々のIn組成が、発光層17に近い位置に配置されているものほど小さくなっていれば良いのである。つまり、図4に示す第2の多重量子井戸構造層形成工程S5においてn層分の井戸層16a及び障壁層16bを形成するにあたり、発光層17に近い位置に配置されている井戸層16aほどIn組成が小さくなるように、第1の多重量子井戸構造層15側から発光層17側に向けてTMIの供給量を段階的に減らして行くのである。この際、第2の多重量子井戸構造層16内において、最も発光層17に近い位置に形成されている井戸層16aのIn組成を、発光層17の井戸層17aのIn組成Xと同一又は僅かに大なるIn組成とするのが好ましい。
尚、上記実施例において示される第1の多重量子井戸構造層15、第2の多重量子井戸構造層16及び発光層17各々内でのIn組成(X)の値、各層の層厚及び層数等は例示に過ぎず、適宜改変しても良い。
11 サファイア基板
12 低温バッファ層
13 アンドープGaN層
14 n−GaN層
15 第1の多重量子井戸構造層
16 第2の多重量子井戸構造層
17 発光層
18 p−AlGaN層
19 p−GaN層

Claims (6)

  1. 第1導電型の第1のGaN系半導体層と、
    InGaN結晶からなる第1の井戸層と、前記第1の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶又はGaN結晶からなる第1の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第1のGaN系半導体層上に形成された第1の多重量子井戸構造層と、
    InGaN結晶からなる第2の井戸層と、前記第2の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第2の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第1の多重量子井戸構造層上に形成された第2の多重量子井戸構造層と、
    InGaN結晶からなる第3の井戸層と、前記第3の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第3の障壁層とが交互に繰り返し積層され、前記第2の多重量子井戸構造層上に形成された多重量子井戸発光層と、
    前記多重量子井戸発光層上に形成された、第1導電型とは反対導電型の第2導電型の第2のGaN系半導体層と、を有し、
    前記第1の井戸層のインジウム組成は前記第3の井戸層のインジウム組成以下であり、前記第2の井戸層のインジウム組成は前記第3の井戸層のインジウム組成より大きいことを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記第2の多重量子井戸構造層内において、前記多重量子井戸発光層に近い位置に形成されている前記第2の井戸層ほどインジウム組成が小さいことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  3. 前記第2の障壁層及び前記第3の障壁層のインジウム組成は前記第1の障壁層のインジウム組成よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体発光素子。
  4. 基板上に第1導電型の第1のGaN系半導体層を形成する工程と、
    前記第1のGaN系半導体層上に、InGaN結晶からなる第1の井戸層と、前記第1の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶又はGaN結晶からなる第1の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる第1の多重量子井戸構造層を形成する工程と、
    前記第1の多重量子井戸構造層上に、前記第1の井戸層よりもインジウム組成が大きいInGaN結晶からなる第2の井戸層と、前記第2の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第2の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる第2の多重量子井戸構造層を形成する工程と、
    前記第2の多重量子井戸構造層上に、前記第2の井戸層よりもインジウム組成が小さいInGaN結晶からなる第3の井戸層と、前記第3の井戸層よりも小なるインジウム組成を有するInGaN結晶からなる第3の障壁層とが交互に繰り返し積層されてなる多重量子井戸発光層を形成する工程と、
    前記多重量子井戸発光層上に、前記第1導電型とは反対導電型の第2導電型の第2のGaN系半導体層を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  5. 前記第2の多重量子井戸構造層を形成する工程では、前記多重量子井戸発光層に近い位置に形成する前記第2の井戸層ほどインジウム組成を小さくすることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。
  6. 前記第2の多重量子井戸構造層を形成する工程、及び前記多重量子井戸発光層を形成する工程では、前記第1の障壁層よりもインジウム組成が大きいInGaN結晶からなる前記第2の障壁層及び前記第3の障壁層を形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体発光素子の製造方法。
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