以下、本発明について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、上述した課題の他、以下のような従来技術における課題を解決し、以下の効果を有するものである。
(1)紙幣収納庫とは別の構成として、出金に適さない紙幣を収納するリジェクト庫を装置上部設けている。当該リジェクト庫は、内部に押板を設けていない構成であり、紙幣を内部に投げ込む方式で収納している。そのため、リジェクト庫内部の紙幣は整列せずに嵩張った状態で集積され、収納可能な紙幣の枚数が減少する。また、特許文献1の紙幣収納庫をリジェクト庫として使用する場合、紙幣を整列して集積することで紙幣収納枚数を確保しようとすると、機構が複雑になる。これに対し、本発明によれば、リジェクトされた集積紙幣は、装置の上下方向から力を受け、整列した状態で紙幣収容部に集積される。そのため、リジェクト庫内の紙幣収容空間を最大限に利用することが可能となる。
(2)また、紙幣収納庫から紙幣を取り出す、または、紙幣収納庫に紙幣を補充する際には、トレイを現金自動取引装置から引き出し、紙幣収納庫をトレイから取り出す必要があり、現金自動取引装置によるエンドユーザの取引を一度、停止しなければならないという問題が生じる。これに対し、本発明によれば、ユーザの目的に合わせて、操作したい必要最小限のユニットのみを筐体から引き出すことが可能であり、現金自動取引装置によるエンドユーザの取引を停止することなく、紙幣の補充、回収を行うことができる。
図1は、紙幣取扱装置を搭載した現金自動取引装置100の外観を示す斜視図である。この現金自動取引装置100は、銀行などの金融機関によって管理され、利用者(顧客)の操作に応じて各種取引を行うための装置である。現金自動取引装置100は、紙幣取扱装置101と、硬貨取扱装置102と、通帳取扱装置103と、カード明細票取扱装置104と、顧客操作部105と、を備えている。また、図面は省略しているが、現金自動取引装置100は、電源ユニットや、現金自動取引装置100の全体を制御するための本体制御ユニットを備えている。
図2は、現金自動取引装置100の機能ブロック図である。現金自動取引装置100は、上述した紙幣取扱装置101と、硬貨取扱装置102と、通帳取扱装置103と、カード明細票取扱装置104と、顧客操作部105と、電源ユニット106と、ホストコンピュータなどの上位装置との通信部107とが、本体制御ユニット108に接続されている。
紙幣取扱装置101は、利用者により投入された紙幣の入金処理や、利用者に紙幣を放出する出金処理等を実行する装置である。この紙幣取扱装置101については、後から詳述する。硬貨取扱装置102は、利用者により投入された硬貨の入金処理や、利用者に硬貨を放出する出金処理等を実行する。通帳取扱装置103は、通帳を取り扱い、取引に応じて、通帳に記されたマークなどの読み取りや、印字処理などを行う。カード明細票取扱装置104は、磁気ストライプカード(いわゆるキャッシュカード)に記録された情報を読み取ったり、取引に応じて、その内容を記録した取引明細票を発行したりする。顧客操作部105は、入出金取引のための情報表示及び入出金取引のための操作入力を行うための利用者とのインタフェースである。
図3(a)、図3(b)は、現金自動取引装置を背面側から見た斜視図である。図3(a)に示すように、紙幣取扱装置101は、紙幣収納庫70を収納するトレイ(紙幣取扱装置101の背面側に設けられた第1のトレイ)110と、上部紙幣収納庫(第2の紙幣収納庫)71、下部紙幣収納庫(第1の紙幣収納庫)72、紙幣収納庫73〜75を収納するトレイ(第1のトレイ110よりも紙幣取扱装置101の正面側に設けられた第2のトレイ)112とを備えている。上部紙幣収納庫71、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75は、トレイ112に収納され、紙幣取扱装置101の前後方向に一列に配置されている。これらの紙幣収納庫71〜75は、後述するように、入金紙幣を出金紙幣として用いる環流(リサイクル)紙幣を金種ごとに分類して収納するリサイクル庫、または、入金紙幣のうち出金紙幣に適さない入金リジェクト紙幣や、出金取引時に紙幣収納庫72〜75から繰り出された紙幣のうち、出金紙幣に適さない紙幣である出金リジェクト紙幣を収納するリジェクト庫である。また、紙幣収納庫70は、紙幣収納庫72〜75に装填すべき紙幣や、紙幣収納庫72〜75から回収した紙幣を収納するための装填回収庫として利用される。
トレイ110と、トレイ112とは、第1のレール114によって接続されており、トレイ110は、トレイ112に対して、紙幣取扱装置101の前後方向にスライド移動可能となっている。また、トレイ112と、紙幣取扱装置101の筐体600とは、第2のレール116によって接続されており、トレイ112は、紙幣取扱装置101の筐体600に対して、紙幣取扱装置101の前後方向にスライド移動可能となっている。このような構成により、紙幣取扱装置101の背面側から後方に、トレイ110、及び、トレイ112を引き出したり、トレイ112を紙幣取扱装置101の内部に残したまま、トレイ110だけを紙幣取扱装置101から引き出したりすることができる。トレイ112を紙幣取扱装置101の内部に残したまま、紙幣取扱装置101の背面側から、トレイ110だけを紙幣取扱装置101から引き出し可能とすることによって、現金自動取引装置100の利用者の取引を停止することなく、紙幣収納庫70の着脱交換、及び、紙幣の装填回収が可能となる。
また、図3(b)に示すように、上部ユニット紙幣収納庫60は、自動現金取引装置100から紙幣取扱装置101を引き出すことなく、紙幣取扱装置101の背面側から着脱可能である。後述するように、上部ユニット紙幣収納庫60は、紙幣入出金部に取忘れられた紙幣を回収する取忘れ回収庫や、入金リジェクト紙幣及び出金リジェクト紙幣を収納するリジェクト庫である。このような構成により、利用者を待たせることなく、回収した取忘れ紙幣のユーザへの返却が可能となる。
なお、現金自動取扱装置100とトレイ112とを接続する第2のレール116は、高さ方向に関してトレイ112の上部に配置し、トレイ112とトレイ110を接続している第1のレール114は、高さ方向に関してトレイ112の中央部に配置することで、紙幣収納庫70を搭載するトレイ110の後壁面の高さを低くすることができ、紙幣収納庫70の着脱を容易に行うことを可能としている。
なお、図4に示すように、紙幣取扱装置101の上部ユニット101uを現金自動取引装置100から引き出している間は、図示しないアクチュエータによって、下部ユニットである金庫部101cをロックし、トレイ110を現金自動取引装置100から引き出せないように制御している。また、図3(a)〜図4においては、紙幣取扱装置101を現金自動取引装置100の後面から引き出す構成として説明しているが、紙幣取引装置101を現金自動取引装置100の前面から引き出す構成としても良く、また、トレイ110とトレイ112とを一体型のトレイとしても良い。これにより、紙幣取引装置101を現金自動取引装置100の後面から引き出す形態と前面から引き出す形態において、金庫部101cの共通化を図ることができる。
次に、紙幣取扱装置101について詳細に説明する。紙幣取扱装置101は、上述した複数の紙幣収納庫、及び、紙幣の搬送路を、限られた内部スペースに配置し、紙幣の搬送効率や搬送信頼性の低下を抑制しつつ、これらの紙幣収納庫の一部を多目的に利用可能とするために、以下に説明する構成を備えている。
図5は、紙幣取扱装置の概略構成を示す側断面図である。紙幣取扱装置101は、上部に配置された上部ユニット101uと、下部に配置された下部ユニットである金庫部101cとから構成されている。上部ユニット101uには、利用者との紙幣の授受に必要な機構が集約されており、入金紙幣が投入されると共に、出金紙幣が集積される紙幣入出金口30と、紙幣判別部40と、一時保管庫50と、上部ユニット紙幣収納庫60と、制御ユニット(図示せず)とを備えている。また、上部ユニット101uは、紙幣を双方向に搬送可能な双方向搬送路10a〜10f(以下、双方向搬送路10a〜10fをまとめて、第1の双方向搬送路10とも称す)と、第2の双方向搬送路20とを備えている。第1の双方向搬送路10及び第2の双方向搬送路20は、それぞれ、複数の搬送ローラや、これらの搬送ローラを双方向に回転させるためのモータ(図示せず)を有している。
第1の双方向搬送路10は、双方向搬送路10aの一方の端部と、双方向搬送路10fの一方の端部とが隣り合うように配置されている。すなわち、第1の双方向搬送路10における一端と他端とが隣り合うことで、環状の双方向搬送路を構成している。また、第2の双方向搬送路20は、双方向搬送路10a、及び、双方向搬送路10fにおける、隣り合ういずれかの端部に接続される。双方向搬送路10aと第2の双方向搬送路20とを接続するか、双方向搬送路10fと第2の双方向搬送路20とを接続するかは、ゲート25gによって切り換えられる。
紙幣入出金口30の内部は、仕切板31によって、紙幣繰出部30iと、紙幣集積部30oとに区分けされている。紙幣繰出部30iは、利用者によって投入された紙幣を搬送路30aに繰り出す繰出機構を備え、搬送路30a(単方向搬送路)を介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。搬送路30aは、双方向搬送路10aと双方向搬送路10bとの接続部に合流するように接続される。また、紙幣集積部30oは、搬送路30b(単方向搬送路)から搬送されてきた紙幣を集積するための集積機構を備え、搬送路30bを介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。搬送路30bは、双方向搬送路10dと双方向搬送路10eとの接続部から分岐するように接続される。なお、紙幣集積部30oには、紙幣集積部30oに集積された紙幣を紙幣繰出部30i側に移動させるための押圧板32が備えられている。
紙幣判別部40は、双方向搬送路10c上に配置され、双方向搬送路10bから双方向搬送路10c、あるいは、双方向搬送路10dから双方向搬送路10cに搬送されてきた各紙幣について、金種、真偽、表裏、及び、リジェクト紙幣であるか否かを識別し、その識別結果を制御ユニットに出力する。この識別は、例えば、紙幣をスキャンして得られる画像データ、紙幣の表面の凹凸形状、磁気特性、紫外線などに対する光学特性など種々の情報を利用して行うことができる。
一時保管庫50は、搬送路50a(双方向搬送路)、または、搬送路50b(単方向搬送路)を介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。本実施例では、搬送路50aは、双方向搬送路10eと双方向搬送路10fとの接続部に接続され、搬送路50bは双方向搬送路10eと搬送路50cとを接続する。そして、一時保管庫50は、表裏反転機構と集積機構を備え、搬送中の紙幣の表裏をそろえた状態で一時的に集積保管する。第1の双方向搬送路10と搬送路50aとの接続部には、ゲート50gが配置されている。このゲート50gを切り換えることによって、双方向搬送路10eから搬送路50aに紙幣を搬送するか、双方向搬送路10eから双方向搬送路10fに紙幣を搬送するかが切り換えられる。第1の双方向搬送路10と搬送路50bとの接続部には、ゲート51gが配置されている。このゲート51gを切り換えることによって、双方向搬送路10eから搬送路50bに紙幣を搬送するか、搬送路50aと双方向搬送路10fの分岐点に向かって紙幣を搬送するかが切り換えられる。
上部ユニット紙幣収納庫60は、搬送路60a(単方向搬送路)を介して、第2の双方向搬送路20に接続されている。
金庫部101cには、紙幣収納庫70、上部紙幣収納庫71、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75が、紙幣取扱装置101の前後方向に一列に配置されて収納されている。
紙幣収納庫70は、内部に、2つの紙幣収容部80a、80bと、3つの搬送路70a、70b、70dと、を備えている。紙幣収納庫70の搬送路70dは上部ユニット101uの搬送路70c(双方向搬送路)と接続されて紙幣の受け渡しを行う。
紙幣収容部80aは、搬送路70aと搬送路70d、70cを介して、第2の双方向搬送路20に接続されている。紙幣収容部80bは、搬送路70bと搬送路70d,70cを介して、第2の双方向搬送路20に接続されている。搬送路70a及び搬送路70bと、搬送路70dとの接続部には振分け機構部が配置され、この振分け機構部を切り換えることによって、第2の双方向搬送路20から搬送路70c,70dに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。また、搬送路70cと第2の双方向搬送路20との接続部には、ゲート70gが配置され、このゲート70gを切り換えることによって、双方向搬送路10a、または、双方向搬送路10fから第2の双方向搬送路20に搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫70は、搬送路70aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して紙幣収容部80aに収納する機構や、紙幣収容部80aに収納されている紙幣を搬送路70aに繰り出す機構を備えている。
上部紙幣収納庫71は、搬送路71a(双方向搬送路)を介して、第2の双方向搬送路20に接続されている。そして、第2の双方向搬送路20と搬送路71aとの接続部には、ゲート71gが配置されている。このゲート71gを切り換えることによって、双方向搬送路10a、または、双方向搬送路10fから第2の双方向搬送路20に搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。上部紙幣収納庫71は、搬送路71aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路71aに繰り出す機構を備えている。
下部紙幣収納庫72は、搬送路72a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路72aとの接続部には、ゲート72gが配置されている。このゲート72gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。下部紙幣収納庫72は、搬送路72aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路72aに繰り出す機構を備えている。
上部紙幣収納庫71及び下部紙幣収納庫72は、高さ方向に集積される構造であり、上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72とを組み合わせた状態で、他の紙幣収納庫70、73〜75と同一の外形となるような構造である。それぞれの構造については、後に詳細に説明する。
紙幣収納庫73は、搬送路73a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路73aとの接続部には、ゲート73gが配置されている。このゲート73gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫73は、搬送路73aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路73aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫74は、搬送路74a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路74aとの接続部には、ゲート74gが配置されている。このゲート74gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫74は、搬送路74aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路74aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫75は、搬送路75a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路75aとの接続部には、ゲート75gが配置されている。このゲート75gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫75は、搬送路75aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路75aに繰り出す機構を備えている。
なお、上述した各搬送路上には、紙幣の通過を検出するための複数のセンサが配置され、制御ユニット80によって、各搬送路上における紙幣の搬送状況が監視される。制御ユニット80は、内部にCPUや、メモリ等を備えるマイクロコンピュータとして構成され、紙幣判別部40による識別結果や、各搬送路上における紙幣の搬送状況等に基づいて、予め用意されたプログラムに従って、紙幣取扱装置101の動作を制御する。
図6は、紙幣取扱装置101の機能ブロック図である。紙幣取扱装置101は、第1の双方向搬送路10、第2の双方向搬送路20、紙幣入出金口30、紙幣判別部40、一時保管庫50、上部ユニット紙幣収納庫60、紙幣収納庫70、73〜75、上部紙幣収納庫71、下部紙幣収納庫72aが、制御ユニット80に接続されている。制御ユニット80は、紙幣取扱装置101の全体を制御するためのユニットであり、本体制御ユニット108からの指示を基に各機構を制御する。
次に、図7、図8を参照して、紙幣取扱装置101における入金取引の処理動作について説明する。入金取引は、紙幣入出金口部紙幣入出金口30の紙幣繰出部30iに投入された紙幣の真偽判別、金種判別、表裏判別、及び計数を行う入金計数処理と、入金計数処理を経た紙幣を紙幣収納庫に収納する入金収納処理とに分けられる。
最初に、図7を参照して、入金計数処理について説明する。紙幣入出金口30の紙幣繰出部30iにセットされた紙幣は、一枚ずつ分離され、搬送路30aへ繰り出される。搬送路30aへ繰出された紙幣は、搬送路10bより紙幣判別部40内の搬送路10cを装置の前方から後方に通過する。紙幣判別部40では、その内部に実装されたセンサによって、通過する紙幣の画像が取得され、その紙幣の真偽、金種、表裏、及び正損状態が判別される。
紙幣判別部40を通過した紙幣は、紙幣判別部40の後部から搬送路10dを通って一旦上方へ搬送される。この搬送路10dで搬送している間に、紙幣判別部40による判別が完了して、その判別結果に応じて紙幣振り分けゲート10gの切り替えが行われる。即ち、紙幣判別部40によって受け入れ可能な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート10gは搬送路10eに接続するように切り替えられ、その紙幣のうち表裏反転が不要な紙幣は紙幣振り分けゲート51g、50gにより、搬送路10e、50aに搬送されて一時保管庫50に集積され、表裏反転が必要な紙幣は紙幣振り分けゲート51gにより、搬送路10e、50b、50cに搬送されて一時保管庫50に集積される。一方、紙幣判別部40により受け入れ困難な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート10gは搬送路30bに接続するように切り替えられ、その紙幣は紙幣集積部30oに戻されて集積し、利用者に返却される。
この入金計数処理の搬送において、搬送路30a、10b、10c、10d、10eの順に紙幣を搬送する場合の方向を第1の搬送方向と言い、その逆に搬送することを第2の搬送方向ということにする。
このようにして紙幣入出金口30に投入された全ての紙幣を処理し、入金された金額と紙幣取扱装置101の計数した金額とが一致し、利用者によって顧客操作部105より入金取引確定が指示入力されると、一時保管庫50に一時収納されていた紙幣は上部紙幣収納庫71、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75へ搬送して収納される。
なお、搬送路上の紙幣の搬送動作の起動や停止、搬送方向の切り替え、ゲートの切り替え、等の動作の制御は、制御部(図示省略)の制御により行われる(以下の説明でも同様である)。
次に、図8を参照して、入金収納処理動作について説明する。最初に、紙幣振り分けゲート10gを一時保管庫50と紙幣判別部40を接続するように切り替え、紙幣振り分けゲート11gを搬送路10bと搬送路10aへ接続するように切り替える。
一時保管庫50から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路50a、10e、10dを通って紙幣判別部40へ搬送される。紙幣判別部40を通過した紙幣は、搬送路10bによって搬送され、紙幣振り分けゲート11gによって搬送路10aを通じて下部へ搬送される。さらに紙幣は、搬送路10a、20によって搬送され、紙幣判別部40で判別された金種に応じて紙幣振り分けゲート72g〜75gが切り替えられて、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75のいずれかに収納される。
ここで、紙幣判別部40によって受け入れできない紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート71gを搬送路71aに接続するように切り替えられ、その紙幣は上部紙幣収納庫71に収納される。あるいは、紙幣振り分けゲート71g、70gを搬送路60aに接続するように切り替えられ、その紙幣は上部ユニット紙幣収納庫60に収納される。
このように、入金収納処理では、搬送路10e、10d、10c、10b、10a、20において、紙幣を第2の搬送方向(第1の搬送方向と逆方向)へ搬送するように動作する。
次に、図9を参照して、出金取引の処理動作について説明する。金種別に収納された上部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75から紙幣が一枚ずつ繰り出されて、搬送路10a,10b,10cを紙幣判別部40へ搬送される。紙幣判別部40で当紙幣が出金可能な紙幣か否かを判定する。判別の結果、出金可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート10gを搬送路10dと搬送路30bを接続するように切り替えて、紙幣集積部30oに紙幣を集積する。
一方、判別の結果、出金不可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート10gを搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替えて、搬送路10f、20を通して、振り分けゲート71gにより搬送路20を搬送路71aに接続して上部紙幣収納庫71へ紙幣を搬送する。あるいは、振り分けゲート71g、70gにより搬送路20を搬送路60aと接続して上部ユニット紙幣収納庫60へ紙幣を搬送する。この紙幣の判別と判別結果による紙幣振り分けゲート10gの切り替え制御は、紙幣を搬送路10dに搬送している間に完了する。
紙幣の搬送動作が終了すると、紙幣入出金口30のシャッタ30sが開き、紙幣集積部30oに集積した紙幣は利用者に抜き取り可能な状態となる。利用者が紙幣を抜き取るとその旨を紙幣入出金口30に内蔵されたセンサ(図示省略)が検知してシャッタ30sを閉じ、一連の出金取引処理を終了する。
このように、出金取引処理動作では、搬送路10a、10b、10d、30b、10e、10f、10cにおいて紙幣を第1の搬送方向へ搬送し、搬送路20において紙幣を第2の搬送方向へ搬送するように動作する。
次に、図10を参照して、上部紙幣収納庫71の着脱について説明する。上部紙幣収納庫71は、現金自動取引装置100から紙幣取扱装置101のトレイ112を引き出した状態で、上部紙幣収納庫71の下部に配置された下部紙幣収納庫72とは独立して、トレイ112から取り出すことが可能である。
上部紙幣収納庫71及び下部紙幣収納庫72は、それぞれリサイクル庫、リジェクト庫、あるいは、取忘れ回収庫として運用することが可能である。すなわち、上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72の運用の組み合わせは、リサイクル庫とリサイクル庫、リサイクル庫とリジェクト庫、リサイクル庫と取忘れ回収庫、リジェクト庫とリジェクト庫、リジェクト庫と取忘れ回収庫、取忘れ回収庫と取忘れ回収庫のいずれの形態をとっても良い。
また、上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72とは独立した構成であるため、上部紙幣収納庫71を紙幣取扱装置101に搭載しない状態での運用も可能である。このような構成により、従来では単一の紙幣収納庫であったところを上下に分割で独立させ、上部を単独で取り外すことが可能なリジェクト庫として運用することが可能である。
次に、図11、図12を参照して上部紙幣収納庫と下部紙幣収納庫の構成を説明する。
上部紙幣収納庫71は下部紙幣収納庫72の上部に配置され、上部紙幣収納庫71には上部紙幣収納庫口71i、下部紙幣収納庫72には下部紙幣収納庫口72iが存在する。また、上部紙幣収納庫口71i及び上部紙幣収納庫71の集積機構部431を紙幣取扱装置101の背面側に設け、下部紙幣収納庫口72i及び下部紙幣収納庫72の集積繰り出し機構部432を紙幣取扱装置101の正面側に設けることにより、スペース効率の良いレイアウトで、紙幣集積空間を最大化できる。
上部紙幣収納庫71への電力の供給及び外部との電気的信号の送受信は、下部紙幣収納庫72を介して行う。上部紙幣収納庫71の底部にはケーブルコネクタ71q、ガイド穴71pが存在し、下部紙幣収納庫72にはケーブルコネクタ72q、コネクタカバー72r、上部紙幣収納庫位置決めピン72pが存在する。すなわち、上部紙幣収納庫71の底部に存在するケーブルコネクタ71q、ガイド穴71pは、上部紙幣収納庫71側に設けられた着脱機構部であり、下部紙幣収納庫72側に設けられたケーブルコネクタ72q、コネクタカバー72r、上部紙幣収納庫位置決めピン72pは、下部紙幣収納庫72側に設けられた着脱機構部である。
上部紙幣収納庫71を下部紙幣収納庫72の上部にセットするときには、上部紙幣収納庫位置決めピン72pが上部紙幣収納庫71のガイド穴71pに挿入され、上部紙幣収納庫71の位置が決まる。さらに、上部紙幣収納庫71のケーブルコネクタ71pと下部紙幣収納庫72のケーブルコネクタ72qが接続されることで、上部紙幣収納庫71への電力の供給及び外部との電気的信号の送受信を可能とする。また、上部紙幣収納庫71が取外された状態のとき、ケーブルコネクタ72qはコネクタカバー72rにより覆われ、ほこり等の異物が入り込まないようになっている。コネクタカバー72rは上部紙幣収納庫71が外された状態では、弾性体支持部材により支持され、ケーブルコネクタ72qを覆い、上部紙幣収納庫71がセットされる際には、コネクタカバー72rは上部紙幣収納庫71により押しのけられ、回転支点72xを中心に回転しケーブルコネクタ72qの上部から退避することで、上部紙幣収納庫71のケーブルコネクタ71pと下部紙幣収納庫72のケーブルコネクタ72qの接続を可能とする。
次に、図13、図14を参照して下部紙幣収納庫の概略構成を説明する。図13は、下部紙幣収納庫72の側断面を示し、図14は、下部紙幣収納庫72の斜視図を示す。
下部紙幣収納庫72は、略筺形状の外形を備え、外表面412の上方側には、下部紙幣収納庫口72iが形成されている。下部紙幣収納庫口72iは、下部紙幣収納庫72の内部と外部との間で紙幣の出し入れを行うための開口部であり、下部紙幣収納庫72の上部の縦型搬送部(内部搬送路)433内部の縦型搬送路410と、下部紙幣収納庫72の外部の搬送路404とが接続されている。下部紙幣収納庫口72iから縦型搬送路410を通った紙幣は搬送路411へと搬送される。
縦型搬送路410は、下部紙幣収納庫口72iと搬送路411の一端との間で双方向に搬送することができる。縦型搬送部433は複数の搬送路駆動ローラ413と搬送ベルト416、搬送路ローラ414、415で構成され下部紙幣収納庫72の上部に配置されている。
搬送路駆動ローラ413は、下部紙幣収納庫72に内蔵された図示しないモータを動力にして回転支点413xを中心に回転し、搬送駆動ローラ413と搬送ローラ414にかけられた搬送ベルト416を回転させる。その際に、搬送ローラ414は回転支点414xを中心に回転する。搬送路ローラ415は搬送ベルト416と接触し、搬送ベルト416の回転に従って回転支点415xを中心に回転する。
縦型搬送路410は、搬送路を上下方向に直線とし、縦型搬送部433の内部には搬送ベルト416を片側だけに設置し、もう片方は搬送ベルト416の回転に従属して回転支点415xを中心に回転する搬送ローラ415を備える構成としており、縦型搬送部433はコンパクトとなるため、下部紙幣収納庫72の上部に上部紙幣収納庫71を配置するために必要な空間を確保できる。
搬送路411は、紙幣収容部403の上部に配置される。紙幣は、紙幣収容部403の上部に配置された集積繰り出し機構部432により、集積または繰出される。
集積繰出し機構部432は、フィードローラ406と、ピックアップローラ405と、ゲートローラ407と、ブラシローラ408と、ピンチローラ409と、スタックガイド402によって構成されている。フィードローラ406は回転支点406xを中心に、ピックアップローラ405は回転支点405xを中心に、ゲートローラ407は回転支点407xを中心として、下部紙幣収納庫72に内蔵された図示しないモータを動力にして回転する。
ピックアップローラ405は、紙幣収容部403に集積されている紙幣を1枚ずつ紙幣収容部403から繰り出す方向(「繰出し方向」とも呼ぶ)に送り出す。ゲートローラ407は、搬送路411と紙幣収容部403との接続部付近においてフィードローラ406と接触するように配置され、紙幣を紙幣収容部403に集積する方向(「集積方向」とも呼ぶ)にのみ回転し、繰出し方向には回転しないように構成されている。ブラシローラ408は、ゲートローラ407の回転支点407xを中心軸として配置され、放射状に配置された弾性部材によって紙幣収容部403に集積される紙幣を下方向に叩き落とすように構成されている。ピンチローラ409は、フィードローラ406と接触し、フィードローラ406の回転に従って回転支点409xを中心に回転する。
スタックガイド402は、搬送路411から紙幣収容部403に搬入される紙幣と当接して、紙幣を紙幣収容部403の下方に導くための部材である。スタックガイド402は、略板状の形状を備え、フィードローラ406の回転軸と同軸に設けられた揺動軸を中心として、上下方向に揺動可能に構成されている。スタックガイド402は、繰り出し時に上方に退避し、集積時に下方に突出する。
紙幣収容部403は、紙幣を上下方向に積層させて集積するための空間部であり、内部には、堆積した紙幣を支持する床板としての昇降板401を備えている。昇降板401は、下部紙幣収納庫72の内部に配置された図示しない昇降機構によって昇降可能な構成を備えている。紙幣収容部403の内部の側壁は、収納する紙幣の形状に合わせて調節が可能な構成を備えている。
下部紙幣収納庫72が内蔵するモータ及び図示されないセンサへの電力の供給及び外部との電気的信号の送受信は下部紙幣収納庫72の底部に備えられたコネクタ417を介して行う。また、コネクタ417を一端に持つケーブルの一部は、上部紙幣収納庫71が内蔵するモータ及び図示されないセンサへの電力の供給及び外部との電気的信号の送受信を行うケーブルコネクタ71qと接続する下部紙幣収納庫72のケーブルコネクタ72qに接続されている。
次に下部紙幣収納庫72から紙幣を取り出すための機構について説明する。図14に示すように、下部紙幣収納庫72には紙幣収容部403内の紙幣を取り出すための扉421と縦型搬送部433内に残留した紙幣を取り出すための可動部420を備えている。扉421は下部紙幣収納庫72に備わる回転支点423を中心に回転することで開閉する。また、可動部420は縦型搬送部433の下部の回転支点422を中心に回転することで開閉する。本実施例においては、扉421は右開きとなっているが、左開き、または、扉上部を回転支点とした開閉、扉下部を回転支点とした開閉となっても良い。さらに、可動部420は可動部下部を回転支点とした開閉となっているが、右開き、左開き、または、可動部上部を回転支点とした開閉となっても良い。また、本実施例においては、下部紙幣収納庫72には扉421のロックは存在せず、後述するようにトレイ112に扉421のロック機構を備えているが、下部紙幣収納庫72に扉421のロックが内蔵されていても良い。
このように、下部紙幣収納庫72の扉421、可動部420を備えたことにより、下部紙幣収納庫72をトレイ112から取り出すことなく、紙幣収容部403に集積した紙幣を取り出すことが可能となる。
次に、図15、図16、図17を参照して上部紙幣収納庫71の概略構成を説明する。図15、図16は、上部紙幣収納庫71の側断面を示し、図17は、上部紙幣収納庫71の斜視図を示す。
上部紙幣収納庫71は、略筺形状の外形を備え、外表面462の上方側には、上部紙幣収納庫口71iが形成されている。上部紙幣収納庫口71iは、上部紙幣収納庫71の内部と外部との間で紙幣を入れるための開口部であり、上部紙幣収納庫71の内部の搬送路461と、上部紙幣収納庫71の外部の搬送路454とを接続している。
搬送路461は、上部紙幣収納庫口71iと紙幣収容部453との間で紙幣を搬送することができる。搬送路461は1つの集積機構部431で構成され上部紙幣収納庫71の上部に配置されている。搬送路461は紙幣収容部453の上部に配置される。紙幣は、紙幣収容部453の上部に配置された集積機構部431により集積される。
集積機構部431は、ゴムローラ456、459、シートローラ457、シートローラ457に取り付けられている弾性ブラシ458と、スタックガイド452によって構成されている。ゴムローラ459とシートローラ457はともに回転支点457xを中心とし、上部紙幣収納庫71に内蔵される図示しないモータを動力にして回転する。
ゴムローラ459は、搬送路461と紙幣収容部453との接続部付近においてゴムローラ456と接触するように配置され、紙幣を紙幣収容部453に集積する方向(「集積方向」とも呼ぶ)にのみ回転し、繰出し方向には回転しないように構成されている。シートローラ457は、ゴムローラ459と同軸上に配置され、放射状に配置された弾性ブラシ458によって紙幣収容部453に集積される紙幣を下方向に叩き落とすように構成されている。ゴムローラ456は、ゴムローラ459と接触し、ゴムローラ459の回転に従って回転支点456xを中心として回転する。
スタックガイド452は、搬送路461から紙幣収容部453に搬入される紙幣と当接して、紙幣を紙幣収容部453の下方に導くための部材である。スタックガイド452は、略板状の形状を備え、ゴムローラ456の回転支点456xと同軸に設けられた揺動軸を中心として、上下方向に揺動可能に構成されている。上部紙幣収納庫71への紙幣集積が少ない場合は、弾性部材482により、スタックガイド452は回転支点456xを中心として下方に傾き、集積紙幣を上方から押さえているが、上部紙幣収納庫71への紙幣集積が進むと、スタックガイド452は集積紙幣を押さえつつ回転支点456xを中心として上方へ退避し、紙幣収容部453の空間を最大限に確保する構造となっている。また、紙幣集積が満杯状態となると、上方へ退避したスタックガイド452に取り付けられた突起484によって、満杯検知センサ483の出力信号を切り替え、紙幣取扱装置101が上部紙幣収納庫71の紙幣が満杯状態であることを認識できる構造を有する。本実施例においては、満杯検知センサ483にフォトインタラプタを使用し、突起484が満杯検知センサ483の光をさえぎることで、上部紙幣収納庫71の紙幣満杯状態を検知しているが、満杯検知センサ483に接触式センサを使用し、突起484を満杯検知センサに接触させて、上部紙幣収納庫71の紙幣満杯状態を検知させても良い。
紙幣収容部453は、紙幣を上下方向に積層させて集積するための空間部であり、内部には、集積された紙幣を支持する床板としての押板451を備えている。昇降板451は、上部紙幣収納庫71内部に取り付けられたバネなどの弾性部材481の力によって上方に引っ張られている。紙幣が紙幣収容部453に集積されると、集積紙幣の重さにより昇降板451には下方へ動かす力が生じる。これにより、弾性部材481によって上方に引っ張られていた昇降板451が下方へ動く構造となっている。集積紙幣は弾性部材481によって上方に引っ張られる昇降板451とバネなどの弾性部材482によって、下方へ押さえられるスタックガイド452に挟まれることで、整えられた状態で紙幣収容部453に集積されるため、上部紙幣収納庫71の紙幣収容枚数を増加させることができる。そして、スタックガイド452の昇降を弾性部材481により制御し、モータなどのアクチュエータを使用していないシンプルな構成であるため、紙幣収容部内の空間を有効に利用することができる。また、弾性部材481が加わる力に対して線形的な伸びをすることで、紙幣集積枚数に応じた押板451の動きができ、集積紙幣の整列性を向上させることができる。
このように、上部紙幣収納庫71の昇降板451とスタックガイド452で紙幣を抑えることにより、紙幣を整列集積させ、かつ、スタックガイド452を上部紙幣収納庫71の上部に退避させる構造により、上部紙幣収納庫72の内部の空間を最大限に利用することで、上部紙幣収納庫72を小型で大容量のリジェクト庫として運用できる。また、前述のような上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72の構造により、取扱金種を減らすことなく、リジェクト庫を1つ以上追加することができる。
次に、図16を参照して、上部紙幣収納庫71の紙幣侵入防止機構について説明する。
上部紙幣収納庫71の背面ガイド553には、紙幣収容部453に搬送された紙幣が、押板451と上部紙幣収納庫71の背面ガイド553との隙間にもぐりこむのを防ぐための可動ストッパ551が取り付けられている。可動ストッパ551はバネなどの弾性部材552で支持されており、紙幣が集積されていない、あるいは、紙幣の集積枚数が少ない場合は、回転支点551xを中心軸として、上側に向かってせり出している。そして、紙幣収容部453の内部の集積した紙幣とともに、押板451が下降する際には、回転支点551xを回転中心として下方に回転し、背面ガイド553の内部に退避することで、押板451と積層された紙幣の下降を妨げないようになっている。このように紙幣侵入防止機構を備えることで、紙幣侵入による紙幣の集積状態の悪化を防止することができ、紙幣の整列性を高めることで、上部紙幣収納庫71の紙幣容量を最大化できる。
なお、背面ガイド553は図17にて示す上部紙幣収納庫71の扉490の一部となっており、それぞれ別の部品とする場合に比べ、紙幣収容部453の空間を広く取ることができ、また、取扱操作が容易で構造を単純化できる。
上部紙幣収納庫71の内蔵するモータ及び図示されないセンサへの電力の供給及び外部との電気的信号の送受信は上部紙幣収納庫71の底部に備えられたケーブルコネクタ71qを介して行う。
次に、上部紙幣収納庫71から紙幣を取り出すための機構について説明する。図17に示すように、上部紙幣収納庫71には紙幣収容部453内の紙幣を取り出すための扉490を備えている。扉490は上部紙幣収納庫71に備わる回転支点491を中心に回転することで開閉する。扉490の開閉はロック492によって制限される。本実施例においては、扉490は扉上部を回転支点とした開閉となっているが、右開き、左開き、または、扉下部を回転支点とした開閉となっても良い。また、本実施例においては、上部紙幣収納庫71に扉490の開閉を制限するロック492が内蔵されているが、上部紙幣収納庫71にロックを内蔵せず、トレイ112に上部紙幣収納庫71の抜き取りを制限するロックを取り付けても良い。
次に、図18、図19を参照して紙幣収納庫73〜75の紙幣取り出しについて説明する。図18は、紙幣収納庫73〜75の斜視図を示し、図18は、ATMを背面から見た外観斜視図を示す。
まず、図18を用いて、紙幣収納庫73〜75から紙幣を取り出すための機構について説明する。紙幣収納庫73〜75には紙幣収容部503内の紙幣を取り出すための扉501を備えている。扉501は紙幣収納庫73〜75に備わる回転支点502を中心に回転することで開閉する。本実施例においては、扉501は右開きとなっているが、左開き、または、扉上部を回転支点とした開閉、扉下部を回転支点とした開閉となっても良い。また、本実施例においては、リサイクル庫73〜75には扉501のロックは存在せず、後述するようにトレイ112に扉501のロック機構を備えているが、紙幣収納庫73〜75に扉501のロックが内蔵されていても良い。
このように、紙幣収納庫73〜75の扉501を備えたことにより、紙幣収納庫73〜75をトレイ112から取り出すことなく、紙幣収容部503に集積した紙幣を取り出すことが可能となる。
次に、図19を用いて、トレイ112に搭載された状態における紙幣収納庫73〜75、及び、下部紙幣収納庫72の内部に収納された紙幣の取り出しについて説明する。紙幣収納庫73〜75と下部紙幣収納庫72は通常、トレイ112に搭載された状態で固定されており、トレイ112にはこれらの紙幣収納庫を固定するための固定機構を備えている。トレイ112の側面に開けられた穴を通して、紙幣収納庫73〜75の紙幣取出し用の扉501、及び、下部紙幣収納庫72の紙幣取出し用の扉421にアクセスできるようになっている。扉501、421の開閉はトレイ112に内蔵されたロック511、及び、ロック511に連動するロック機構512によって制限される。これにより、紙幣の取り出しをする権限を持つ人とそうでない人に分けることができる。本実施例においては、扉501、421の全ての開閉の制限をロック511とロック機構512によって一括で行っているが、扉ごとにロック、及び、ロック機構を配置しても良い。また、紙幣収納庫73〜75と下部紙幣収納庫72をトレイ112に固定せず、取出し可能な構造であっても良い。
さらに、上部紙幣収納庫71、及び、下部紙幣収納庫72のかわりに紙幣収納庫73を搭載、あるいは紙幣収納庫73〜75のかわりに上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72を搭載しても良い。これにより、ユーザの用途にあわせて紙幣収納庫を組み合わせることが可能となり、紙幣収納庫の数を増減させることができるので、取扱金種の増加にも対応可能となる。
そして、下部紙幣収納庫72の紙幣収容部403や紙幣収納庫73〜75の紙幣収容部503にアクセスするための扉490、及び、扉501があることで、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75をトレイ112に固定した運用ができる。このような運用が可能になると、ひとつの紙幣収納庫70だけを用いた紙幣の装填回収によって、紙幣枚数の計数を行うことにより、現金管理を強化することができる。また、紙幣の装填回収をまたずに、下部紙幣収納庫72、紙幣収納庫73〜75から紙幣を取り出すこともできる。
上部紙幣収納庫71と下部紙幣収納庫72の構成について、本実施例では縦型搬送部433が下部紙幣収納庫72の一部として構成されているが、縦型搬送部433が独立した構成や、縦型搬送部433が上部紙幣収納庫71の一部として構成されていても良い。また、本実施例では上部紙幣収納庫71をトレイ112から上方に取り出すような構成になっているが、横方向から取り出す構造であっても良い。
これまで説明したような紙幣取扱装置101の構成により、装置取扱装置101をコンパクトにし、かつ、紙幣収納容量を確保しながら、取扱金種を減らすことなくリジェクト庫を少なくとも2つ備える、あるいは、取扱金種を増やすことが可能となる。
この発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。