JP2014141632A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 Download PDF

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圭一郎 野村
Sadayuki Kobayashi
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Abstract

【課題】本発明の目的は、従来技術の欠点を改良し、チキソトロピー性を有するフィラーによる硬化時の増粘効果により、低粘度で強化繊維間への含浸性に優れ、硬化時に形成される相分離構造の粗大化を抑制することで、微細な相構造を有し、優れた弾性率と靭性を併せ持つエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】エポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分、前記エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤、および所定の条件を満足する粒子を含んでなり、前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応後は相分離することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、チキソトロピー性を有するフィラーによる硬化時の増粘効果により、相構造粗大化を抑制することで微細な相構造を有し、靭性と剛性のバランスに優れた樹脂硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物に関する。
炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度、比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ、一般産業用途などに広く利用されている。これら繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、硬化する方法がよく用いられている。プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。プリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性や生産性の観点から、主に熱硬化性樹脂組成物が用いられ、中でも強化繊維との接着性などの力学特性の観点からエポキシ樹脂組成物が好ましく用いられる。
近年では、金属等の従来材料を繊維強化複合材料に置き換えることで軽量化を目指す動きに加えて、様々な用途において、繊維強化複合材料そのもののさらなる軽量化を求める動きが活発化してきている。軽量化を達成する方法としては、より高弾性率な強化繊維を適用し、繊維強化複合材料の剛性は維持したまま軽量化する方法が挙げられる。しかし、強化繊維を高弾性率化した場合、繊維方向圧縮強度などの強度特性は、低下する傾向にある。繊維方向圧縮強度などの強度特性を改善するには、マトリックス樹脂として用いるエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物の弾性率を向上させることが有効である。
エポキシ樹脂硬化物の弾性率を向上させる手法としては、シリカやカーボンナノチューブなどの無機フィラーの添加や弾性率の高いアミン型エポキシ樹脂の配合があげられる。
また、繊維強化複合材料の耐衝撃性を向上させるためには、繊維強化複合材料を構成する強化繊維の伸度やエポキシ樹脂硬化物の塑性変形能力や靱性を向上させる必要がある。
例えば特許文献1では、エポキシ樹脂組成物に対してチキソトロピー性を有するシリカ粒子を添加することにより、繊維強化樹脂成形体に成形する際の樹脂フローをコントロールすることで、繊維強化樹脂成形体中の樹脂含有率のバラツキを小さくし、曲げ弾性率を向上させることに成功している。しかし、この方法ではエポキシ樹脂組成物の樹脂成分が硬化後も相溶しており、樹脂靭性が不十分であり、耐衝撃性が低下する課題があった。
エポキシ樹脂硬化物の靱性を向上させる方法としては、靱性に優れるゴム成分や熱可塑性樹脂を配合する方法などが試されてきた。しかし、ゴムは、弾性率やガラス転移温度がエポキシ樹脂硬化物に比べて大幅に低いため、ゴムを配合した場合、マトリックス樹脂の弾性率やガラス転移温度の低下が見られ、靱性と弾性率のバランスを取ることが困難である。また、熱可塑性成分を配合する手法としては、例えばスチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体や、ブタジエン−メタクリル酸メチルからなるブロック共重合体などのブロック共重合体を添加することにより、エポキシ樹脂硬化物の靭性を大きく向上させる方法が提案されている(特許文献2、3)。しかし、これらの方法には、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性の低下や増粘によるプロセス性の悪化、ボイド発生等の品位低下といった問題があった。また、この手法でもエポキシ樹脂硬化物の弾性率が不十分といえる。
エポキシ樹脂硬化物の弾性率と靱性のバランスを向上させる方法としては、特定の数平均分子量を有するジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と前記エポキシ化合物と特定の範囲でSP値が異なるエポキシ化合物を組み合わせて得られるエポキシ樹脂組成物が開示されている。(特許文献4)しかし、この方法でも、エポキシ樹脂硬化物の弾性率と靱性のバランスが不十分であるだけでなく、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりがちであり、不十分であった。
エポキシ樹脂硬化物の弾性率と靭性のバランスをさらに向上させる手法として、特定のSP値を有するエポキシ化合物を組み合わせたエポキシ樹脂組成物を用いることにより、硬化反応後に相分離構造を形成させる技術がある(特許文献5)。この方法は硬化後に微細な相分離構造を形成することで、優れたエポキシ樹脂硬化物の弾性率と靭性を発現することのできる技術であり、それまでの繊維強化複合材料のマトリックス樹脂の性能を大幅に向上することのできる技術である。一方で、反応条件によっては相分離構造が変化することにより物性が低下してしまうという課題があった。
特開平9−255800号公報 国際公開第2006/077153号パンフレット 特表2003−535181号公報 国際公開第2009/107697号パンフレット 国際公開第2010/043453号パンフレット
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、チキソトロピー性を有するフィラーによる硬化時の増粘効果により、低粘度で強化繊維間への含浸性に優れ、硬化時に形成される相分離構造の粗大化を抑制することで、微細な相構造を有し、優れた弾性率と靭性を併せ持つエポキシ樹脂硬化物(以下、「樹脂硬化物」という場合がある。)が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)エポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分、前記エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤、および比表面積が50m/g以上でチキソトロピー性を有する粒子を含んでなり、下記a)b)の特徴を有するエポキシ樹脂組成物。
a)剪断粘度におけるチキソトロピー係数が1.1以上
b)前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応後は相分離する
(2)前記粒子は、前記樹脂成分と混合した際にチキソトロピー性を発現する粒子である、(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に相分離構造を形成し、その構造周期が0.01μm以上5μm以下となるものである、(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)前記粒子が、炭素含有率1.3%以上のシリカ粒子であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(5)前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に共連続構造を形成し、前記粒子が共連続構造の片側1相に局在化するものである、(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(6)前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に海島分散構造を形成し、前記粒子が海島分離構造の海相に局在化するものである、(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を有してなるプリプレグ。
(8)(7)に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
(9)(1)〜(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と、強化繊維を有してなる繊維強化複合材料。
本発明によれば、チキソトロピー性を有するフィラーによる硬化時の増粘効果により、低粘度で強化繊維間への含浸性に優れ、硬化時に形成される相分離構造の粗大化を抑制することで、微細な相構造を有し、優れた弾性率と靭性を併せ持つ樹脂硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物はエポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分を含み、前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応に伴いスピノーダル分解を経て相分離構造を形成することを特徴とする。かかる2種以上の樹脂成分が硬化反応前に相溶し、硬化中に相分離を生じることで、微細かつ均一な共連続構造または分散構造の樹脂硬化物を得ることができる。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2種の樹脂成分を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載のとおり、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
反応に伴うスピノーダル分解により相分離させるための2種の樹脂成分の組合せとしては、部分相溶系の組合せが挙げられる。
ここで、本発明ではエポキシ化合物を含む少なくとも2種の樹脂成分からなり、当該2種の樹脂成分として上限臨界溶解温度(upper critical solution temperature、略してUCST)および下限臨界溶解温度(lower critical solution temperature、略してLCST)を有する組合せを用いることができる。
UCSTおよびLCSTを有する組合せは、前記部分相溶系の一種であり、UCSTでは、同一組成において高温側で相溶しやすくなる特徴があり、LCSTでは逆に低温側で相溶しやすくなる特徴がある。UCSTまたはLCSTを有する組合せを用いて相溶状態となった2種以上の樹脂成分は、少なくとも1成分のエポキシ化合物を、当該エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤を用いて硬化(以下、エポキシ化合物の硬化反応という場合がある。)させることにより、分子量変化に伴いスピノーダル曲線が、UCSTの場合は高温側、LCSTの場合は低温側にシフトし、不安定状態領域が拡大し、スピノーダル分解によって、いわゆる反応誘発型相分離が生じる。
UCSTを有する組合せとしては、エポキシ化合物同士、またはエポキシ化合物と熱可塑性樹脂の組合せを挙げることができるが、硬化反応前の相溶性の観点からエポキシ化合物同士が好ましく用いられる。エポキシ化合物同士を組み合わせる場合には、2種のエポキシ化合物の硬化反応が同時に進行し、ある時点でスピノーダル分解が生じ、相分離構造を形成する。
前記UCSTを有するエポキシ化合物同士の組合せとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物とトリグリシジルアミノフェノール、ビスフェノールA型エポキシ化合物とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビスフェノールA型エポキシ化合物とグリシジルアニリン、ビスフェノールF型エポキシ化合物とトリグリシジルアミノフェノール、ビスフェノールF型エポキシ化合物とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビスフェノールF型エポキシ化合物とグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノールとフェノールノボラック型エポキシ化合物、トリグリシジルアミノフェノールとクレゾールノボラック型エポキシ化合物、トリグリシジルアミノフェノールとジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとフェノールノボラック型エポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとクレゾールノボラック型エポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとジシクロペンタジエン型エポキシ化合物を挙げることができるが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
さらに、前記UCSTを有するエポキシ化合物と熱可塑性樹脂の組合せとしては、UCSTを有する組合せで有れば、特に限定されることはないが、エポキシ化合物との相溶性および硬化後の樹脂特性の観点から、かかる熱可塑性樹脂としては非晶性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合、結晶部分がエポキシ化合物と相溶し難いだけでなく、結晶化による脆化によって硬化後の樹脂靭性が向上し難いといった問題点がある。具体的には、メタクリル酸またはそのエステルの重合体、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、カルボン酸またはスチレンまたはアクリロニトリルからなる重合体等の、ビニル重合体またはこれらの共重合体が好ましく用いられるが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。エポキシ化合物と熱可塑性樹脂を組み合わせる場合には、基本的にエポキシ化合物のみの硬化反応が進行し、相分離構造を形成するが、熱可塑性樹脂がエポキシ化合物と容易に反応する官能基を有する場合、熱可塑性樹脂もエポキシ化合物と反応することがある。
また、LCSTを有する組合せとしては、エポキシ化合物とポリエーテルスルホン等の組合せを挙げることができ、かかるエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、グリシジルアニリン、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物を挙げることができるが、本発明はこの例によって限定されるものではない。
本発明において、エポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分の組成については特に制限はないが、当該2種の樹脂成分の組成として、通常90質量%/10質量%〜10質量%/90質量%の範囲が好ましく用いられ、さらには85質量%/15質量%〜15質量%/85質量%の範囲がより好ましく、特に75質量%/25質量%〜25質量%/75質量%の範囲であれば2種の樹脂成分を相分離させやすく、それぞれの樹脂の物性を発現させ易いため好ましく用いられる。
本発明は、比表面積が50m/g以上でチキソトロピー性を有する粒子を含むことを特徴とする。
ここでチキソトロピー性とは、等温状態において変形を与えることで、見かけ粘度が一時的に低下する性質のことであり、チキソトロピー係数Tが1.0以上であるとき、チキソトロピー性を発現すると言える。かかるチキソトロピー係数Tは、剪断速度0.3(1/s)における80℃で測定した場合の剪断粘度をη0.3、0.04(1/s)における剪断粘度をη0.04とした際、T=η0.04/η0.3で表される係数のことである。チキソトロピー性が低いと、粒子添加による増粘効果により相構造の粗大化を抑制することができたとしても、樹脂を強化繊維に含浸する際に粘度が高すぎて効率的に含浸できないため、好ましくない。本発明のエポキシ樹脂組成物は、剪断粘度において、チキソトロピー係数が1.1以上であることを特徴とし、1.2以上であることが好ましい。チキソトロピー係数の上限については特に制限は無いが、ハンドリングのし易さから、7.0以下であることが好ましい。剪断粘度は回転式レオメーターを用いた回転粘度測定により測定することができる。
本発明において、チキソトロピー性を有する粒子は、樹脂成分と混合した際にチキソトロピー性を発現する粒子であることが好ましい。
かかる樹脂成分と混合した際にチキソトロピー性を発現する粒子としては、例えば非溶解性ポリイミド粒子、ポリ(メタ)アクリルアミドあるいはその架橋体からなる粒子、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)あるいはその架橋体からなる粒子、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸(塩)あるいはその架橋体からなる粒子、ヒドロキシメチルセルロース粒子、ヒドロキシエチルセルロース粒子、キサンタンガム粒子、グアーガム粒子、カラギーナン粒子、ゼラチン粒子、デンプン粒子、シラノール粒子、有機ベントナイト粒子、セピオライト粒子、アタパルジャイト粒子、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、二酸化チタン粒子、炭素粒子等が挙げられる。
また、本発明に用いられる粒子の添加量は、チキソトロピー性付与、増粘による相分離構造の粗大化抑制の点から当該粒子成分を除く成分100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。また、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸する際、増粘しすぎるとハンドリング性が低下するため、粒子の添加量は、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
本発明に用いられる粒子の比表面積は、チキソトロピー性付与の点から50m/g以上であることを特徴とし、100m/g以上であることが好ましい。比表面積の上限については特に制限は無いが、粒子の分散性の点から、1500m以下であることが好ましい。比表面積は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法、いわゆるBET法により測定することができる。
また、本発明に用いられる粒子は、シリカ粒子または炭素粒子であることが好ましい。
前記シリカ粒子は通常分子末端に水酸基を有しているが、水酸基をアルキル基に置換した、炭素を含有するシリカ粒子も市販されている。シリカ粒子中の炭素含有率については、特に制限はないが、炭素を含有するシリカ粒子としては、炭素含有率1.3%以上のシリカ粒子であることが好ましく、1.8%以上であることがより好ましい。炭素含有率が1.3%未満では、粒子表面の水酸基がエポキシ樹脂組成物中のエポキシ基と反応し、前記チキソトロピー性が損なわれてしまう場合がある。また、炭素含有率の上限については特に制限は無いが、多すぎるとシリカ粒子としての特性が失われてしまうことがあるため、20%以下が好ましい。
本発明でいうシリカ粒子の炭素含有率は、下記のXPS法によって算出されるもので、以下に定義される。
<炭素含有率=炭素原子の個数/全原子の個数×100>
XPS表面分析装置は、本発明ではVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。エネルギー分解能は、清浄なAg5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定する。測定としては、はじめに結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求める。次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定する。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素の含有率の値を求める。
また、前記炭素粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等が使用できる。また、例えば、カーボンブラックや活性炭等を原料として不活性雰囲気下で1000℃以上の高温で熱処理して、黒鉛化処理したものを使用してもよい。 2種以上の樹脂成分が相分離した状態からなるエポキシ樹脂組成物は、各々の原料となる樹脂成分の長所を引き出し、短所を補い合うことで単一の樹脂(エポキシ化合物を用いる場合は、エポキシ化合物と当該エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物)を用いる場合に比べて優れた特性を発現する。このとき着目すべき事項として、共連続構造における構造周期、または分散構造における粒子間距離(すなわち島成分同士の距離)と均一性が挙げられる。サイズをある大きさ以下とすることにより、各々の樹脂成分が発揮する物性以上の物性を発揮でき、樹脂成分の短所を補い合うことが可能となる。また、サイズをある大きさ以上とすることにより、樹脂成分の特性そのものも活かすことができる。したがって、本発明におけるエポキシ樹脂組成物を硬化させた後の相分離構造の構造周期は0.01μm〜5μmが好ましく、0.03〜2μmがより好ましい。
本発明において、相分離の構造周期は、次のように定義するものとする。なお、相分離構造には、共連続構造と海島分散構造が有るのでそれぞれについて定義する。共連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線をランダムに3本引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とする。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上で引いた20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)をいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
海島分散構造の場合、顕微鏡写真の上にかかる所定の領域を3箇所選出し、その領域内の島相サイズの数平均値である。島相のサイズは、相界面から一方の相界面へ島相を通って引く最短距離の線の長さをいう。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、相界面から一方の相界面へ島相を通る最短の距離を用いるものとする。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。粒子間距離が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)をいい、同様にして、粒子間距離が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)をいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
この樹脂硬化物の相分離構造は、樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察することができる。必要に応じて、オスミウムなどで染色しても良い。染色は、通常の方法で行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる粒子は、硬化後の相分離構造が共連続構造を形成する場合、共連続構造の2相のうちの片側1相に局在化していることが好ましい。ここでいう局在化とは、電子顕微鏡観察において、粒子全体の70%以上が片側1相に存在していることをいう。粒子が片側1相に局在化することで、全体に粒子が分散している場合と比較して、粒子添加による増粘効果およびチキソトロピー性を効率的に発現することができるため、硬化時の増粘効果が期待でき、相構造粗大化が抑制されやすい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる粒子は、硬化後の相分離構造が海島分散構造を形成している場合には、海島2相のうち海相に粒子が局在化していることが好ましい。粒子が島相に局在化した場合には相構造はむしろ粗大化しやすい傾向にある一方、粒子が海相に局在化することで、硬化時、すなわち低剪断時に海相の増粘効果が期待でき、相構造の粗大化が抑制されやすい。なお、粒子の局在化の有無は透過型電子顕微鏡により確認することができる。
前記エポキシ化合物として、フェノール類、アミン類、カルボン酸類、分子内不飽和炭素などの化合物を前駆体とするエポキシ化合物が好ましく用いられる。また、前記エポキシ化合物としては、ビスフェノール型、イソシアネート変性型、アントラセン型エポキシ化合物もしくはこれらのハロゲン、アルキル置換体、水添品等を用いることもできる。
フェノール類を前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物、トリスフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物やそれぞれの各種異性体やアルキル、ハロゲン置換体などが挙げられる。また、フェノール類からなるエポキシ化合物をウレタンやイソシアネートで変性した化合物なども、このタイプに含まれる。
アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ化合物としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品、グリシジルアニリンのそれぞれの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
カルボン酸を前駆体とするエポキシ化合物としては、フタル酸のグリシジル化合物や、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸のグリシジル化合物の各種異性体が挙げられる。
分子内不飽和炭素を前駆体とするエポキシ化合物としては、例えば脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
前記エポキシ化合物の市販品としては、ビスフェノール型エポキシ化合物として“jER(登録商標)”1004AF、1007、1009P、1010P、4005P、4007P、4009P、4010P(三菱化学(株)製)、YD−128、YD−128G、YD−128S(新日鐵化学(株)製)、イソシアネート変性型エポキシ化合物としてXAC4151(旭化成ケミカルズ(株)製)、“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物の市販品としては、“エピコート(登録商標)”YX4000H、YX4000、YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ化合物の市販品としては“エピコート(登録商標)”152、154(以上、三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、N−770、N−775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ化合物の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC(株)製)、“EOCN(登録商標)”1020、102S、104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ化合物の具体例としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物の市販品としては“エピクロン(登録商標)”HP7200、HP7200L、HP7200H(以上、DIC(株)製)、“TACTIX(登録商標)”558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
イソシアネート変性エポキシ化合物の市販品としては、オキサゾリドン環を有する“AER(登録商標)”4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)やXAC4151(旭化成ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
前記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとしては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)、YH434L(新日鐵化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY720、MY721(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールとしては、 “アラルダイド(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品として、“TETRAD(登録商標)”−X、“TETRAD(登録商標)”−C(三菱ガス化学(株)製)等を使用することができる。
本発明に用いられるエポキシ化合物のエポキシ当量は、100〜3000であることが好ましい。エポキシ当量が3000より大きいとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなることがあり、エポキシ樹脂組成物をプリプレグにした時にタック性やドレープ性が低下することがある。また、エポキシ当量が100より小さいとエポキシ樹脂組成物を硬化した際に架橋密度が高くなり、樹脂硬化物が脆くなることがある。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ化合物に可溶性の熱可塑性樹脂や、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子や、無機粒子等を配合することができる。
エポキシ化合物に可溶性の熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂組成物と強化繊維との接着性改善効果が期待できる水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。水素結合性官能基としては、アルコール性水酸基、アミド結合、スルホニル基、カルボキシル基などを挙げることができる。
アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂などを挙げることができる。アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンなどを挙げることができる。ポリアミド、ポリイミドおよびポリスルホンは主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子に置換基を有してもよい。カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができる。
エポキシ化合物に可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品としては、ポリビニルアセタール樹脂としてデンカブチラール、およびポリビニルアルコール樹脂として“デンカポバール(登録商標)”(電気化学工業(株)製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト(登録商標)”(ヘンケル株式会社製)、“アミラン(登録商標)”CM4000(東レ株式会社製)、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(サビックイノベーティブプラスチックス社製)、“オーラム(登録商標)”(三井化学(株)製)、“ベスペル(登録商標)”(デュポン社製)PEEKポリマーとして“Victrex(登録商標)”(ビクトレックス社製)、ポリスルホンとして“UDEL(登録商標)”(ソルベイ アドバンストポリマーズ社製)、ポリビニルピロリドンとして、“ルビスコール(登録商標)”(ビーエーエスエフジャパン(株)製)を挙げることができる。
また、アクリル系樹脂は、エポキシ樹脂との高い相溶性を有し、粘弾性制御のために好ましく用いられる。アクリル樹脂の市販品としては、“ダイヤナール(登録商標)”BRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M、M100、M500(松本油脂製薬(株)製)などを挙げることができる。
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655、EXL−2611、EXL−3387(ロームアンドハーズ(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(ガンツ(株)製)、“NANOSTRENGTH(登録商標)”M22、51、52、53(アルケマ社製)、“カネエース(登録商標)”MXシリーズ(カネカ(株)製)等を使用することができる。
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられる。ポリアミド粒子の市販品として、SP−500(東レ(株)製)、“オルガゾル(登録商標)”(アルケマ社製)等を使用することができる。
本発明に用いられる、エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤としては、前記エポキシ化合物を硬化させるものであれば特に限定はなく、芳香族アミン、脂環式アミンなどのアミン類、酸無水物類、ポリアミノアミド類、有機酸ヒドラジド類、イソシアネート類等が挙げられる。
アミン硬化剤は、力学特性や耐熱性に優れることから好ましく、芳香族アミンであるジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンや、脂肪族アミンであるジシアンジアミドまたはその誘導体、ヒドラジド化合物等が用いられる。かかるジシアンジアミドの市販品としては、DICY−7、DICY−15(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。ジシアンジアミドの誘導体は、ジシアンジアミドに各種化合物を結合させたものであり、エポキシ樹脂との反応物、ビニル化合物やアクリル化合物との反応物などが挙げられる。
さらに、硬化剤としてジシアンジアミドまたはその誘導体を粉体としてエポキシ樹脂組成物に配合することは、室温での保存安定性や、プリプレグ化時の粘度安定性の観点から好ましい。ジシアンジアミドまたはその誘導体を粉体としてエポキシ樹脂組成物に配合する場合、その平均粒径は10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは7μm以下である。例えば、プリプレグ製造工程において加熱加圧により強化繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸させる際、10μmを超える粒径を持つジシアンジアミドまたはその誘導体は、強化繊維束中に入り込まず、繊維束表層に取り残される場合がある。
また、かかる硬化剤の総量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対し、活性水素基が0.6〜1.0当量の範囲となることが好ましく、より好ましくは0.7〜0.9当量の範囲となることである。活性水素基が0.6当量に満たない場合は、樹脂硬化物の反応率、耐熱性、弾性率が不足し、また、繊維強化複合材料のガラス転移温度や強度が不足する場合がある。また、活性水素基が1.0当量を超える場合は、樹脂硬化物の反応率、ガラス転移温度、弾性率は充分であるが、塑性変形能力が不足するため、繊維強化複合材料の耐衝撃性が不足する場合がある。
各硬化剤は、硬化触媒や、その他のエポキシ化合物の硬化剤と組み合わせて用いても良い。組み合わせる硬化触媒としては、ウレア類、イミダゾール類、ルイス酸触媒などが挙げられる。
かかるウレア化合物としては、例えば、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレアなどを使用することができる。かかるウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土ヶ谷化学(株)製)、“Omicure(登録商標)”24、52、94(以上CVC SpecialtyChemicals,Inc.製)などが挙げられる。
イミダゾール類の市販品としては、2MZ、2PZ、2E4MZ(以上、四国化成(株)製)などが挙げられる。ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体などの、ハロゲン化ホウ素と塩基の錯体が挙げられる。
中でも、保存安定性と触媒能力のバランスから、ウレア化合物が好ましく用いられる。かかるウレア化合物の配合量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物100質量部に対して1〜3質量部であることが好ましい。かかるウレア化合物の配合量が1質量部に満たない場合は、反応が充分に進行せず、樹脂硬化物の弾性率と耐熱性が不足しがちである。また、かかるウレア化合物の配合量が3質量部を超える場合は、エポキシ化合物の自己重合反応が、エポキシ化合物と硬化剤との反応を阻害するため、樹脂硬化物の靭性が不足することに加えて、弾性率も低下することがある。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でさらに他の各種の添加剤を添加することもできる。これら他の添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化するに際して採用される硬化温度や硬化時間に特に限定はなく、配合される硬化剤や硬化触媒に応じて適宜選択できる。例えば、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンが用いられた場合には、180℃の温度で2時間、硬化剤としてジアミノジフェニルメタンが用いられた場合には150℃以上の温度で2時間硬化させるのが好ましく、また、硬化剤としてジシアンジアミド、硬化触媒としてDCMUが併用された場合には、135℃の温度で2時間硬化させるのが好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は強化繊維と複合して用いることでプリプレグを得ることができ、さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は強化繊維と複合して用いることで繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明のプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸させてなるものである。含浸させる方法としては、ウェット法とホットメルト法(ドライ法)等を挙げることができる。
ウェット法は、メチルエチルケトン、メタノール等の溶媒にエポキシ樹脂組成物を溶解させた溶液に強化繊維を浸漬した後、強化繊維を引き上げ、オーブン等を用いて強化繊維から溶媒を蒸発させ、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる方法である。ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または離型紙等の上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。なかでもプリプレグ中に残留する溶媒がないため、ホットメルト法を用いることが好ましい。
プリプレグの単位面積あたりの強化繊維量は、70〜200g/mであることが好ましい。かかる強化繊維量が70g/m未満の場合、繊維強化複合材料成形の際に所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、積層作業が繁雑になることがある。一方で、強化繊維量が200g/mを超える場合、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向にある。また、繊維質量含有率は、好ましくは60〜90質量%であり、より好ましくは65〜85質量%であり、さらに好ましくは70〜80質量%である。繊維質量含有率が60質量%未満では、樹脂の比率が多すぎるため、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られないことや、繊維強化複合材料の硬化時の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維質量含有率が90質量%を超える場合、樹脂の含浸不良を生じるため、得られる繊維強化複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、プリプレグ積層成形法、レジントランスファーモールディング法、レジンフィルムインフュージョン法、ハンドレイアップ法、シートモールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、などにより製造することができる。
レジントランスファーモールディング法とは、強化繊維基材に直接液状のエポキシ樹脂組成物を含浸させ、硬化させる方法である。この方法は、プリプレグのような中間体を経由しないため、成形コスト低減のポテンシャルを有し、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料に好適に用いることができる。
フィラメントワインディング法とは、ロービングを1〜数十本引き揃え、樹脂を含浸させながら回転する金型(マンドレル)に所定の厚さまでテンションを掛けて所定の角度で巻き付け、硬化後脱型する方法である。
プルトルージョン法は、強化繊維を液状の熱硬化樹脂組成物の満たされた含浸槽に連続的に通し、熱硬化樹脂組成物を含浸させ、スクイーズダイ及び、加熱金型を通して引張機によって連続的に引き抜きつつ、成形、硬化させる成形方法である。この方法は、繊維強化複合材料を連続的に成形できるという利点を有するため、釣竿、ロッド、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物等の強化繊維プラスチック(FRP)の製造に用いられている。
プリプレグ積層成形法とは、プリプレグを賦形および/または積層後、賦形物および/または積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させる方法である。中でもプリプレグ積層成形法が、繊維強化複合材料の剛性、強度に優れているため好ましい。
ここで、プリプレグ積層成形法において、熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等を適宜使用することができる。
オートクレーブ成形法は、所定の形状のツール版にプリプレグを積層して、バッギングフィルムで覆い、積層物内を脱気しながら加圧、加熱硬化させる方法であり、繊維配向が精密に制御でき、またボイドの発生が少ないため、力学特性に優れ、また高品位な成形体が得られる。成形時に掛ける圧力は3〜20Kg/cmが好ましい。また、成形温度は90〜200℃の範囲であることが好ましい。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好ましい方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、捲回したプリプレグの外側に熱可塑性フィルムからなるラッピングテープを捲回し、プリプレグに張力を加える。それらをオーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、マンドレルを抜き取って管状体を得る方法である。ラッピングテープによりプリプレグにかかる張力は2.0〜8.0Kgfであることが好ましい。また成形温度は80〜200℃の範囲であることが好ましい。
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。本方法は、ゴルフシャフト、バッド、テニスやバドミントン等のラケットの如き複雑な形状物を成形する際に好ましく用いられる。成形時に付与する圧力は5〜20kg/cmが好ましい。また成形温度は室温〜200℃の範囲であることが好ましく、80〜180℃の範囲であることがさらに好ましい。
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が用いられる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。この中で、軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる炭素繊維を用いることが好ましい。中でも、230〜800GPaの引張弾性率を有する炭素繊維が好ましく用いられる。このような高弾性率の炭素繊維を本発明のエポキシ樹脂組成物と組み合わせた場合に、本発明の効果が特に顕著に現れ、良好な対衝撃性を得られる傾向がある。
強化繊維の形態は特に限定されるものではない、たとえば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐、10mm未満の長さにチョップした短繊維などが用いられる。ここでいう長繊維とは、実質的に10mm以上連続な単繊維もしくは繊維束のことをさす。また、短繊維とは10mm未満の長さに切断された繊維束である。特に、高い比強度、比弾性率を要求される用途には、強化繊維束を単一方向に引き揃えた配列が最も適している。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料は、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好ましくに用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途に好ましく用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、自転車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、および補修補強材料等に好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。各種物性の測定は次の方法によった。なお、これらの物性は、特に断りのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定した。
(1)樹脂組成物の調製
200mlアルミカップに“jER(登録商標)”630(必要に応じてYD−128)を加え、さらにシリカ粒子を加え、ホモジナイザーを用いて30,000rpmで30分間撹拌を行い、粒子をエポキシ中に分散させた。アルミカップを熱風オーブン中で130℃まで加熱し、“jER(登録商標)”4007Pを加え、相溶状態となるまで撹拌した。相溶状態となっていることを光学顕微鏡により確認した後、80℃まで降温し、硬化剤を加え、十分に撹拌し、エポキシ樹脂組成物を得た。各実施例、比較例の組成は表1に示す通りである。
<エポキシ化合物>
・トリグリシジル−p−アミノフェノール(“jER(登録商標)”630、エポキシ当量97.5、三菱化学(株)製)
・ビスフェノールF型エポキシ化合物(“jER(登録商標)”4007P、エポキシ当量:2270、三菱化学(株)製)
・ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−128、エポキシ当量:189、新日鐵化学(株)製)
<硬化剤>
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(“スミキュア(登録商標)”S、DDS、住友化学(株)製)
<粒子>
・シリカ粒子(“アエロジル(登録商標)”RY200S、日本アエロジル社製)
・シリカ粒子(“アエロジル(登録商標)”R972、日本アエロジル社製)
・シリカ粒子(“アエロジル(登録商標)”R976、日本アエロジル社製)
・シリカ粒子(“アエロジル(登録商標)”R976S、日本アエロジル社製)
・タルク(“ナノエース(登録商標)”D−1000、日本タルク社製)
・カーボン粒子(“ケッチェンブラック(登録商標)”EC−300J、ライオン社製)。
(2)粘度、チキソトロピー係数の測定
アントンパール社製レオメーターPhysicaMCR501を用いて半径25mmの平行円板間にエポキシ樹脂組成物を挟み、80℃で剪断速度1〜0.01(1/s)まで変化させて得られた剪断粘度から、剪断速度0.3(1/s)における剪断粘度(η0.3)および剪断速度0.04(1/s)における剪断粘度(η0.04)を読み取り、チキソトロピー係数T(T=η0.04/η0.3)を計算した。
(3)炭素含有率の測定
本発明でいう炭素含有率は、下記のXPS法によって算出されるもので、以下に定義される。
<炭素含有率=炭素原子の個数/全原子の個数×100>
XPS表面分析装置は、本発明ではVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定した。測定としては、はじめに結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素の含有率の値を求めた。
(4)樹脂硬化物の弾性率測定
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で特に断らない限り、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパン間長さを32mm、クロスヘッドスピードを2.5mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、弾性率を得た。サンプル数n=5とし、その平均値で比較した。
(5)樹脂硬化物の靭性測定
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で特に断らない限り、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を12.7×150mmでカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、ASTM D5045(1999)に従って試験片を加工・実験をおこなった。試験片への初期の予亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあてハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行った。ここでいう、樹脂靱性値とは、変形モード1(開口型)の臨界応力強度のことを指している。
(6)構造周期の測定および粒子の局在化判定
上記(5)で得られた樹脂硬化物を染色後、薄切片化し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて下記の条件で透過電子像を取得した。染色剤は、モルホロジーに充分なコントラストが付くよう、OsOとRuOを樹脂組成に応じて使い分けた。
・装置:H−7100透過型電子顕微鏡(日立(株)製)
・加速電圧:100kV
・倍率:10,000倍。
硬化物が相分離構造を形成する場合、共連続構造や海島分散構造を形成するのでそれぞれについて以下のように測定した。なお、共連続構造とは、相分離構造を形成している2相のうち、両相が連続相を形成している場合をいい、海島分散構造とは、片方の相が連続相を形成し、もう片方の相が非連続相を形成している場合をいう。
共連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線をランダムに3本引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とした。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとした。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上で引いた20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)をいうものとした。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定した。
海島分散構造の場合、顕微鏡写真の上にかかる所定の領域を3箇所選出し、その領域内の島相サイズの数平均値である。島相のサイズは、相界面から一方の相界面へ島相を通って引く最短距離の線の長さをいう。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、相界面から一方の相界面へ島相を通る最短の距離を用いるものとした。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。粒子間距離が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)をいい、同様にして、粒子間距離が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)をいうものとした。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定した。
また、粒子の局在化については、粒子全体の70質量%以上が片側一相に存在している場合に、粒子がその片側一相に局在化していると判定した。実施例では、上記電子顕微鏡観察において、構造周期を測定する際の倍率で写真撮影し、写真上で確認される全粒子の面積(S)に対するそれぞれの相に存在する粒子の面積(S、S)とした場合、S/SまたはS/Sが0.7以上である場合に、粒子全体の70質量%以上が片側一相に存在していると判定した。
表1に記載の実施例および比較例に示す組成でエポキシ樹脂組成物を作製し、粒子の比表面積、硬化前の粘度、チキソトロピー係数、硬化後の相構造、樹脂硬化物の相分離構造周期、樹脂硬化物の靭性、樹脂硬化物の弾性率、粒子の局在化有無について測定、判定の上、表1に記載した。なお、粒子の比表面積については、全自動BET比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名:「Macsorb HM model−1208」)を用いて、窒素吸着法(BET法)によって測定した。
(実施例1)
表1記載の実施例1に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.33であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.2μmの微細な海島分散構造を形成し、力学特性は良好であった。
(実施例2)
シリカ粒子の添加量を0.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.41であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期0.9μmの微細な海島分散構造を形成し、力学特性は良好であった。
(実施例3)
表1記載の実施例3に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.17であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.4μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
(実施例4)
表1記載の実施例4に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.51であった。炭素含有率の高いシリカ粒子を使用したことで、樹脂組成物中のエポキシ基との反応が抑制され、良好なチキソトロピー性を発現した。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.2μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、相溶系となる力学特性は良好であった。
(実施例5)
表1記載の実施例5に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.21であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.4μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
(実施例6)
表1記載の実施例6に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.31であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.1μmの微細な海島分散構造を形成し、力学特性は良好であった。
(実施例7)
表1記載の実施例7に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.50であった。炭素含有率の高いシリカ粒子を使用したことで、樹脂組成物中のエポキシ基との反応が抑制され、良好なチキソトロピー性を発現した。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期0.4μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
(実施例8)
表1記載の実施例8に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.40であった。炭素含有率の高いシリカ粒子を使用したことで、樹脂組成物中のエポキシ基との反応が抑制され、良好なチキソトロピー性を発現した。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期0.8μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
(実施例9)
表1記載の実施例9に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.22であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期1.2μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
(実施例10)
表1記載の実施例10に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.32であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、粒子が海成分に局在化した、構造周期0.9μmの微細な海島分散構造を形成し、粒子は海成分に局在化しており、力学特性は良好であった。
Figure 2014141632
(比較例1)
表1記載の比較例1に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.04であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期1.8μmの海島分散構造を形成し、実施例1、2と比較し、弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例2)
表1記載の比較例2に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.06であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期2.2μmの海島分散構造を形成し、実施例3、4と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例3)
表1記載の比較例3に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.04であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期6.4μmの海島分散構造を形成し、実施例5、6と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例4)
表1記載の比較例4に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.16であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、相溶状態となっており、相分離構造を形成していないため、実施例4と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例5)
表1記載の比較例5に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.05であった。粒子の比表面積が小さく、チキソトロピー性を発現し難かった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期5.3μmの海島分散構造を形成し、弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。また、粒子は片方の成分に局在化しておらず、全体に分散していた。
(比較例6)
表1記載の比較例6に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.08であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期5.3μmの海島分散構造を形成し、実施例7と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例7)
表1記載の比較例7に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.07であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期3.2μmの海島分散構造を形成し、実施例8と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
(比較例8)
表1記載の比較例8に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.09であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期2.2μmの海島分散構造を形成し、実施例7と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。また、粒子は片方の成分に局在化しておらず、全体に分散していた。
(比較例9)
表1記載の比較例9に示す組成で各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.09であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期2.8μmの海島分散構造を形成し、実施例8と比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。また、粒子は片方の成分に局在化しておらず、全体に分散していた。
(比較例10)
表1記載の比較例10に示す組成で、粒子を加えずに、各成分を混合し、粘度測定によりチキソトロピー係数を計算したところ、1.04であった。本エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物は、構造周期2.9μmの海島分散構造を形成し、実施例9、10比較し弾性率と靭性のバランスに劣る力学特性となった。
Figure 2014141632

Claims (9)

  1. エポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分、前記エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤、および比表面積が50m/g以上でチキソトロピー性を有する粒子を含んでなり、下記a)b)の特徴を有するエポキシ樹脂組成物。
    a)剪断粘度におけるチキソトロピー係数が1.1以上
    b)前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応後は相分離する
  2. 前記粒子は、前記樹脂成分と混合した際にチキソトロピー性を発現する粒子である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に相分離構造を形成し、その構造周期が0.01μm以上5μm以下となるものである、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記粒子が、炭素含有率1.3%以上のシリカ粒子である、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に共連続構造を形成し、前記粒子が共連続構造の片側1相に局在化するものである、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に海島分散構造を形成し、前記粒子が海島分離構造の海相に局在化するものである、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を有してなるプリプレグ。
  8. 請求項7に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と、強化繊維を有してなる繊維強化複合材料。
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