JP2014141472A - 1,3,5−トリアジン誘導体を有する線維化予防又は治療剤 - Google Patents

1,3,5−トリアジン誘導体を有する線維化予防又は治療剤 Download PDF

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聡子 荒谷
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Abstract

【課題】コラーゲンの産生を抑圧し,生体組織の線維化を予防又は治療するための医薬の提供。
【解決手段】1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,医薬。具体的な1,3,5−トリアジン誘導体の例は,(N−ベンゾオキサロールー6−イルーN’−(1−シクロヘキシルエチル)−N’−エチル−N’’−(2−エチルアミノーエチル)−[1,3,5]トリアジン−2,4,6トリアミンである。
【選択図】図1

Description

本発明は,組織が線維化することを予防する又は線維化した組織を治療するための1,3,5−トリアジン誘導体を有効成分とする医薬に関する。
組織の線維化は,例えば,コラーゲンを中心とする細胞外マトリックスが組織に過剰に産生されることにより生じる。組織は,酸化ストレス,低酸素状態,炎症,アポトーシスなどの刺激により損傷を受けた場合,損傷組織を細胞外マトリックスで置換して修復を図る。例えば,損傷が重度の場合や,刺激が慢性化した場合,細胞外マトリックスが過剰となり,組織がその機能を十分に果たせなくなる。このようにして,組織の線維化が進行する。線維化は,肝,膵,肺,腎,骨髄,心臓などの各種臓器にみられ,筋線維芽細胞等のコラーゲン産生細胞が病態に関与していると考えられている。
このため,コラーゲン産生を制御することにより,これらの疾患を治療できる可能性があることが提案されている。例えば,下記非特許文献1(Kivirikko KI. Ann Med. 1993 Apr;25(2):113−26.)には,ストレス蛋白質HSP47(heat shock protein 47)の活性を阻害することにより,コラーゲンの産生を抑制でき,その結果上記した疾患を治療できることが報告されている。また,臓器線維化に対して早期に治療することで,以降の臓器不全進展を抑制できることが,腎臓病,心血管病をはじめ明らかになってきた。
これまでにいくつかの低分子化合物,ペプチド,及び核酸が線維化の予防または治療に有効であることが見出された。一方,線維化を効果的に予防又は治療できる新しい医薬の開発が望まれる。
1,3,5−トリアジン誘導体は,例えば特開2010−100552号公報,及び特開2006−342110号公報に開示された通り,その製造方法を含め公知の化合物である。そして,1,3,5−トリアジン誘導体には,様々な医薬用途があることが知られている。例えば,特表2009−523140号公報には,所定の1,3,5−トリアジン誘導体が瘢痕形成および/または血管形成効果を有することが開示されている。
特開2004−352684号公報には,所定の1,3,5−トリアジン誘導体がコラーゲンの産生を促進することが開示されている。
国際公開WO2002−52007号パンフレットには,シノビオリンが開示されている。シノビオリンは,リウマチ患者由来滑膜細胞で過剰発現している膜タンパク質である。国際公開WO2005−61001号パンフレットには,シノビオリンがp53のユビキチン化を促進することや,シノビオリンの機能を阻害することが,癌抑制につながることが開示されている。特開2009−15520号公報には,シノビオリンの機能を阻害することが,IL−4及びIgEの産生を抑制することが開示されている。
国際公開WO2006−135109号パンフレットには,変異型シノビオリン及び大腸菌由来タンパク質が,シノビオリンの自己ユビキチン化を阻害し,増殖性疾患の治療に有効である旨が開示されている。
国際公開WO2006−137514号パンフレットには,シノビオリンタンパク質の自己ユビキチン化を制御する機能を有する1,3,5−トリアジン誘導体が開示されている。
特開2010−100552号公報 特開2006−342110号公報 特表2009−523140号公報 特開2004−352684号公報 国際公開WO2002−52007号パンフレット 国際公開WO2005−61001号パンフレット 特開2009−15520号公報 国際公開WO2006−135109号パンフレット 国際公開WO2006−137514号パンフレット
Kivirikko KI. Ann Med. 1993 Apr;25(2):113−26.
本発明は,生体組織が線維化することを予防又は治療するための医薬を提供することを目的とする。
本発明は,生体組織がコラーゲンを産出することを防止するための医薬を提供することを目的とする。
本発明は,基本的には,所定の1,3,5−トリアジン誘導体等がコラーゲンの産生を抑圧し,生体組織の線維化を防ぐことができるという知見に基づく。
本発明の第1の側面は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,生体組織の線維化予防又は治療剤に関する。これらを本発明の医薬ともよぶ。また,有効成分である1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物と他の成分(例えば,担体やpH調整剤)との組み合わせを本発明の医薬組成物ともよぶ。
Figure 2014141472
式1中,R11〜R13は,同一でも異なってもよく,水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基,及びハロゲン原子のいずれかを表わす。また,R21〜R23は,同一でも異なってもよい。
そして,R11が水素原子又はハロゲン原子である場合,R21は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。
一方,R11がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R21は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R311NHR312のいずれかを表わし,前記R11と連結して環を形成してもよい。そして,−R311は,C1−3アルキレン基を表し,R312は,C1−3アルキル基を表す。
12が水素原子又はハロゲン原子である場合,R22は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。そして,R12がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R22は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R321NHR322のいずれかを表わし,前記R12と連結して環を形成してもよい。−R321は,C1−3アルキレン基を表し,R322は,C1−3アルキル基を表す。
13が水素原子又はハロゲン原子である場合,R23は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。R13がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R23は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R331NHR332のいずれかを表わし,前記R13と連結して環を形成してもよい。−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
Figure 2014141472
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子又はハロゲン原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基を表わし,
21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基を表わし,
21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基を表わし,
21は,式6で表わされる基を表わし,
22は,式3で表わされる基を表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体が,式7で表される1,3,5−トリアジン誘導体(N−ベンゾオキサロールー6−イルーN’−(1−シクロヘキシルエチル)−N’−エチル−N’’−(2−エチルアミノーエチル)−[1,3,5]トリアジン−2,4,6トリアミン:
N-Benzooxazol-6-yl-N'-(1-cyclohexyl-ethyl)-N''-ethyl-N''-(2-ethylamino-ethyl)-[1,3,5]triazine-2,4,6-triamine)である。
Figure 2014141472
第1の側面の好ましい態様は,コラーゲンの過剰な産出によって生じる線維化を伴う疾患を治療及び/又は予防するために用いられるものである。線維化を伴う疾患の例は,肺線維症,肝線維症,膵線維症,腎線維症,動脈硬化症,全身性硬化症,前立腺肥大症,ケロイド症,心筋症,膠原病及び瘢痕のいずれかであり,本発明の医薬は特に肺線維症の予防又は治療に有効である。
本発明の第2の側面は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,コラーゲンの産生抑制剤に関する。コラーゲンの産生を抑制することで,上記したとおり,組織の線維化を防止することができる。
本発明は,生体組織が線維化する事態を予防又は治療するための医薬を提供することができる。
本発明は,生体組織がコラーゲンを算出する事態を防ぐ又は産生量を軽減するための医薬(コラーゲンの産生抑制剤)を提供することができる。
図1は,proSPC蛋白質のウエスタンブロッティングを示す図である。 図2は,シノビオリンの転写レベルでの発現を示すグラフである。 図3は,シノビオリンのmRNAレベルを示すグラフである。 図4は,シノビオリンの蛋白質レベルを示すグラフである。 図5は,小胞体ストレス関連因子(XBP1)のmRNAレベルを示すグラフである。 図6は,結合組織増殖因子(CTGF)のmRNAレベルを示すグラフである。 図7は,II型コラーゲン(TypeII collagen)のmRNAレベルを示すグラフである。 図8は,プロリル−4−ヒドロキシラーゼ(P4HA)のmRNAレベルを示すグラフである。 図9は,トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)のmRNAレベルを示すグラフである。 図10は,5μMのLS102によるコラーゲン分泌抑制作用を示したグラフである。図の縦軸は,コラーゲン量(μg/mL)を示す。 図11は,10μMのLS102によるコラーゲン分泌抑制作用を示したグラフである。図の縦軸は,コラーゲン量(μg/mL)を示す。 図12は,20μMのLS102によるコラーゲン分泌抑制作用を示したグラフである。図の縦軸は,コラーゲン量(μg/mL)を示す。 図13は,LS102によるコラーゲン分泌抑制作用を統計学的に示したグラフである。図の縦軸は,コラーゲン量(μg/mL)を示す。
本発明の第1の側面は,生体組織の線維化予防又は治療剤に関する。この生体組織の線維化予防又は治療剤は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む。本発明の予防又は治療剤は,1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,及びその医薬的に許容しうる溶媒和物のうち1種類を含むものの他,これらを2種類以上含むものも含まれる。生体組織の線維化予防又は治療剤とは,生体組織が線維化することを防止しうる医薬や,線維化した生体組織を治療するための医薬を意味する。線維化した生体組織を治療するものには,生体組織が更に線維化することを防ぐことで,線維化した生体組織を治療するものも含まれる。本発明の医薬は,以下に説明する1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を有効成分として有効量含む。
Figure 2014141472
式1中,R11〜R13は,同一でも異なってもよく,水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基,及びハロゲン原子のいずれかを表わす。また,R21〜R23は,同一でも異なってもよい。
1−3アルキル基の例は,メチル基,エチル基及びプロピル基である。C1−3アルコキシ基の例は,メトキシ基,エトキシ基,及びプロポキシ基である。ハロゲン原子の例は,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,及びヨウ素原子である。
そして,R11が水素原子又はハロゲン原子である場合,R21は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。
一方,R11がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R21は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R311NHR312のいずれかを表わし,前記R11と連結して環を形成してもよい。そして, −R311は,C1−3アルキレン基を表し,R312は,C1−3アルキル基を表す。
12が水素原子又はハロゲン原子である場合,R22は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。そして,R12がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R22は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R321NHR322のいずれかを表わし,前記R12と連結して環を形成してもよい。−R321は,C1−3アルキレン基を表し,R322は,C1−3アルキル基を表す。
13が水素原子又はハロゲン原子である場合,R23は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わす。R13がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R23は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R331NHR332のいずれかを表わし,前記R13と連結して環を形成してもよい。−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
Figure 2014141472
これらの1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物は,実施例によりその効果が実証された1,3,5−トリアジン誘導体と化学的に同様の性質を有する。このため,これらの1,3,5−トリアジン誘導体は,コラーゲンの産生を抑制し,組織が線維化する事態を防止することができる。
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子又はハロゲン原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基を表わし,
21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基を表わし,
21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,R11及びR12は,水素原子を表わし,
13は,C1−3アルキル基を表わし,
21は,式6で表わされる基を表わし,
22は,式3で表わされる基を表わし,
23は−R331NHR332を表わし,
−R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。
第1の側面の好ましい態様は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体が,式7で表される1,3,5−トリアジン誘導体である。
Figure 2014141472
その医薬的に許容しうる塩とは,1,3,5−トリアジン誘導体の医薬的に許容しうる塩を意味する。また,その医薬的に許容しうる溶媒和物とは,1,3,5−トリアジン誘導体の医薬的に許容しうる溶媒和物を意味する。医薬的に許容しうる塩の例は,無機酸塩,有機酸塩,無機塩基塩,有機塩基塩,酸性または塩基性アミノ酸塩である。無機酸塩の例は,塩酸塩,臭化水素酸塩,硫酸塩,硝酸塩,リン酸塩である。有機酸塩の例は,酢酸塩,コハク酸塩,フマル酸塩,マレイン酸塩,酒石酸塩,クエン酸塩,乳酸塩,ステアリン酸塩,安息香酸塩,メタンスルホン酸塩,及びp−トルエンスルホン酸塩である。無機塩基塩の例は,ナトリウム塩,カリウム塩などのアルカリ金属塩,カルシウム塩,マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩,アルミニウム塩,及びアンモニウム塩である。有機塩基塩の例は,ジエチルアミン塩,ジエタノールアミン塩,メグルミン塩,及びN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩である。酸性アミノ酸塩の例は,アスパラギン酸塩,及びグルタミン酸塩である。塩基性アミノ酸塩の例は,アルギニン塩,リジン塩,及びオルニチン塩である。溶媒和物の例は,水和物である。
本発明の1,3,5−トリアジン誘導体は,抽出,濃縮,留去,結晶化,ろ過,再結晶,各種
クロマトグラフィーなどの通常の化学操作を適用し,公知の方法を用いて単離し精製することができる。
第1の側面の好ましい態様は,コラーゲンの過剰な産出によって生じる線維化を伴う疾患を治療及び/又は予防するために用いられるものである。線維化を伴う疾患の例は,肺線維症,肝線維症,膵線維症,腎線維症,動脈硬化症,全身性硬化症,前立腺肥大症,ケロイド症,心筋症,膠原病及び瘢痕のいずれかであり,本発明の医薬は特に肺線維症の予防又は治療に有効である。
本発明の第2の側面は,式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,コラーゲンの産生抑制剤に関する。コラーゲンの産生を抑制することで,上記したとおり,組織の線維化を防止することができる。
本発明の薬剤は,生理学的に許容される担体,賦形剤,あるいは希釈剤等と混合し,医薬組成物として経口,あるいは非経口的に投与することができる。経口剤としては,顆粒剤,散剤,錠剤,カプセル剤,溶剤,乳剤,あるいは懸濁剤等の剤型とすることができる。非経口剤としては,注射剤,点滴剤,外用薬剤,あるいは座剤等の剤型を選択することができる。注射剤には,皮下注射剤,筋肉注射剤,あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。外用薬剤には,経鼻投与剤,吸入剤(噴霧剤),あるいは軟膏剤等を示すことができる。肺線維症の予防・治療に使用する場合の剤形としては、副作用が少なく、肺特異的に作用することができる点で、吸入剤(噴霧剤)が好ましい。主成分である本発明の薬剤を含むように,上記の剤型とする製剤技術は公知である。
例えば,経口投与用の錠剤は,本発明の薬剤に賦形剤,崩壊剤,結合剤,および滑沢剤等を加えて混合し,圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤には,乳糖,デンプン,あるいはマンニトール等が一般に用いられる。崩壊剤としては,炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウム等が一般に用いられる。結合剤には,アラビアゴム,カルボキシメチルセルロース,あるいはポリビニルピロリドンが用いられる。滑沢剤としては,タルクやステアリン酸マグネシウム等が公知である。
また注射剤は,主成分である本発明の薬剤を適当な分散剤とともに溶解,分散媒に溶解,あるいは分散させることにより得ることができる。分散媒の選択により,水性溶剤と油性溶剤のいずれの剤型とすることもできる。水性溶剤とするには,蒸留水,生理食塩水,あるいはリンゲル液等を分散媒とする。油性溶剤では,各種植物油やプロピレングリコール等を分散媒に利用する。このとき,必要に応じてパラベン等の保存剤を添加することもできる。また注射剤中には,塩化ナトリウムやブドウ糖等の公知の等張化剤を加えることができる。更に,塩化ベンザルコニウムや塩酸プロカインのような無痛化剤を添加することができる。
また,本発明の薬剤を固形,液状,あるいは半固形状の組成物とすることにより外用剤とすることができる。固形,あるいは液状の組成物については,先に述べたものと同様の組成物とすることで外用剤とすることができる。半固形状の組成物は,適当な溶剤に必要に応じて増粘剤を加えて調製することができる。溶剤には,水,エチルアルコール,あるいはポリエチレングリコール等を用いることができる。増粘剤には,一般にベントナイト,ポリビニルアルコール,アクリル酸,メタクリル酸,あるいはポリビニルピロリドン等が用いられる。この組成物には,塩化ベンザルコニウム等の保存剤を加えることができる。また,担体としてカカオ脂のような油性基材,あるいはセルロース誘導体のような水性ゲル基材を組み合わせることにより,座剤とすることもできる。
本発明の薬剤は,安全とされている投与量の範囲内において,ヒトを含む哺乳動物に対して,必要量(有効量)が投与される。本発明の薬剤の投与量は,剤型の種類,投与方法,患者の年齢や体重,患者の症状等を考慮して,最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。本発明の薬剤は,例えば,1日当たり1回〜数回対象に投与される。本発明の薬剤を対象に投与する場合,有効成分である1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物は,例えば,1回あたり1μg以上10g以下投与され,10μg以上100mg以下投与されてもよい。
本発明は,対象であるヒト又はヒト以外の哺乳動物に対し,有効量の1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を投与する工程を含む,前記対象の生体組織が線維化する事態を防止する方法や,前記対象の線維化した組織の治療方法をも提供する。
本発明は,対象であるヒト又はヒト以外の哺乳動物に対し,有効量の1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を投与する工程を含む,前記対象の生体組織が産生するコラーゲンの量を抑制する方法も提供する。
本発明は,生体組織の線維化を防止又は線維化した生体組織を治療するための医薬を製造するための1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物の使用をも提供する。
本発明は,生体組織がコラーゲンを産生する量を抑制するためのコラーゲン産生抑制剤を製造するための1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物の使用をも提供する。
(線維症モデル動物を用いた抗線維化試験)
肺線維症,肝線維症,膵線維症,腎線維症,動脈硬化症,全身性硬化症,前立腺肥大症,ケロイド症,心筋症,膠原病及び瘢痕などの線維化を伴う疾患に対する治療及び/又は予防効果は,以下の手順で確認することができる。
まずは,常法に従い線維症のモデル動物を作製する。
肺線維症モデルは,例えば,SD雄性ラット(150〜200g)に対して,ブレオマイシン0.5mgを0.5ccの生理食塩水に溶解したものを,麻酔下,気管内にカニューレを挿入して経気管的に1回肺内投与し,ブレオマイシン肺線維症モデルを作製することができる。この方法により,通常3週間程度で肺に顕著な線維化が生じる。
肝線維症モデルは,例えば,SD雄性ラット(150〜200g)に対して総胆管結紮を施して,結紮後28日目の個体を肝線維症モデルとして使用する。本モデルにおいては,総胆管結紮により胆汁の鬱滞が生じ,肝組織が線維化刺激に継続的にさらされた状態となる。
膵臓線維化モデルは,例えば,雄Lewisラット(150〜200g)を用い,既報(Inoue et. al., Pancreas 2002;
25: e64-70)に従って二塩化ジブチルスズを1部のエタノールに溶解した後,2部のグリセロール及び2部のジメチルスルホキシドと混合した溶液を調製し,5mg/kgの量を投与することで作製することができる。
腎線維症モデルは,例えば,SD雄性ラット(150〜200g)を用い,既報(Schanstra et. al., J Clin Invest 2002; 10:371-379)に従って片側の尿管に結紮を施すことで作製できる。
上記のモデル動物を用い,ブレオマイシン等の薬物を投与した日或いは結紮を施した日から,常法の頻度で尾静脈よりシノビオリンのユビキチン化活性抑制剤を投与する。肺内コラーゲンの定量及び肺組織の検討などを行うことでin vivoにおける線維化の予防又は治療の効果を確認することができる。
(SP−C変異体トランスジェニック動物を用いた抗線維化試験)
線維化の予防又は治療のin vivoにおける効果は,以下の手順で確認することができる。まず,SP−Cのプロモータに変異SPC遺伝子をつないだトランスジーンを準備する。前記トランスジーンを用いて常法に従いトランスジェニック動物を作製する。作製したトランスジェニック動物にシノビオリンのユビキチン化活性抑制剤を投与し,その病理解析及び呼吸機能の測定を行う。
ケロイド及び肥厚性瘢痕(瘢痕)のモデル動物は,例えば,国際公開WO2012−077622号パンフレットに開示された方法に従って得ることができる。たとえば,ヌードマウスにケロイド組織を移植し,本発明の医薬がケロイド増殖を抑制する効果を確認する。移植材料として,ケロイド患者より摘出した組織片を移植するまで培養液中(MEM+10%
FCS+PC+SM)に入れて,冷暗所に保存する。次に,ヌードマウスを6週齢で,麻酔下で細切ケロイド組織片を肩甲骨間に皮下に1匹に1片ずつ10匹のマウスに移植する。移植後,週に3回ケロイド組織の増殖した腫瘍の大きさ(長径×短径×高さ)をノギスで測定する。腫瘍の大きさが安定した3ケ月目に4匹のマウス腫瘍に本発明の医薬を0.1g1時間間隔で3回注入する。対照マウス2匹には生理食塩水またはマウスの全血清をそれぞれ0.1gずつ同様に3回局注する。2匹のマウス腫瘍には,本発明の医薬溶液を3回塗布する。2匹のマウス腫瘍には本発明の医薬溶液を3回噴霧するとともに本発明の医薬溶液を0.1g1時間間隔で3回注入する。1週間後にマウスより腫瘍を取り出し固定する。そのうえで,本発明の医薬のケロイド組織治癒効果を検証する。
以下,実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<hSP-Cフラグメントの作製>
ヒト正常肺cDNAライブラリーを用いたPCR法により,ヒトサーファクタントプロテインCをコードする塩基配列を含むhSP-Cフラグメントを作製した。詳細には,Wen-Jingらの論文(Wen-Jing W, Surafel M, Scott JR, Beers MF. Deletion of exon4 from
human surfactant protein C results in aggresome formation and generation of a
dominant negative. Journal of Cell Science 116, 683-692)に記載された方法に従って作製した。
<hSP-CΔexon4フラグメントの作製>
上記Wen-Jingらの論文に記載されているoverlap extention PCR with a two round, four-primer techniqueに従い,hSP-Cフラグメント(1番目から197番目までのアミノ酸配列)のうちExon4(109番目から145番目までのアミノ酸配列)部分を欠失させたフラグメントを作製した。
<プラスミドDNAの作製>
ベクターとしては,pcDNA3-FLAG(GAT)を使用した。前記ベクターを制限酵素EcoRI及びXhoIで切断し,前記hSP-Cフラグメント,hSP-CΔexon4フラグメントをそれぞれligationし,hSP-C(wild)とhSP-CΔexon4の2種のプラスミドDNAを作製した。前記プラスミドDNAをそれぞれ大腸菌TopXF’にトランスフォーメーション後,大量培養し,QIAGEN Plasmid Mid Kit(100)にて抽出した。
<細胞,培養液,試薬,キット,抗体など>
細胞株としては,ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞であるA549細胞株を使用した。A549細胞株は,薬物代謝のためのII型肺胞上皮細胞のin vitroモデルとしてや,トランスフェクションホストとして広く使用されているものである。
細胞培養液としては,Minimum Essential Medium Eagle 培地(SIGMA社;10% Fetal Bovine Serum (FBS)及び1% Penicillin-Streptomycinを添加したもの),並びにOPTIMEM培地(血清及び抗生物質を添加していないもの)を用いた。
トランスフェクション試薬としては,Lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いた。
コラーゲンアッセイには,Sircol Collagen Assay Kit(biocolor社)及び1.5mL Protein LoBind Tubes(Sigma-Aldrich社;Product Code: z666505/100tubes)を用いた。
SPC及びSPCΔexon4を認識する抗体としては,proSPC抗体(Rabbit anti pro SP-C, Human (polyclonal);cat#
20R-PR030 (RDI-SURFCPabr2);Fitzgerald社(USA))を用いた。
(実施例1:proSPC蛋白質の発現確認)
6 well dishにA549細胞を50%コンフルエントでまき,24時間後,hSP-C(wild)プラスミド,hSP-CΔexon4プラスミド,及びネガティブコントロールとして遺伝子を挿入していないプラスミドpcDNA3-FLAG(GAT)をそれぞれトランスフェクトした。
また,ポジティブコントロールとして,10μg/mLのツニカマイシンで20時間刺激したA549細胞を用意した。なお,SPCΔexon4蛋白質はproSPC蛋白質のs-s構造ができなくなってunfolded蛋白質となり,小胞体ストレスを引き起こすことが知られており,同様に小胞体ストレスを誘導するツニカマイシンがポジティブコントロールとして使用される(Surafel M et al., Am J Respir Cell Mol Biol 2005; 32 :p521-530参照)。
トランスフェクトした24時間後に各wellの細胞を回収して常法により蛋白質を抽出し,proSPC抗体を用いたウェスタンブロッティング法でproSPC蛋白質の存在を確認した。結果を図1に示す。
図1において,proSPC蛋白質は約21kDaであり,21kDa付近に野生型SPC形質移入体でSP-C(wild)蛋白質が発現していることを確認できた。また,SPCΔexon4蛋白質はExon4を欠失している分だけ野生型SPC蛋白質よりも分子量が小さくなるが,SPCΔexon4形質移入体でSPCΔexon4が発現していることを確認できた。
(実施例2:SPCΔexon4によるsynoviolinの発現確認)
<実施例2−1:ルシフェラーゼアッセイによる転写レベルでの確認>
24 well plateにA549細胞を5×104個/wellでまき,その24時間後にreporterとeffectorとβ-galとをlipofectamine 2000を使用してコトランスフェクトした。
●reporter: Synoviolin promoter
(SyG-2055/+845 PGV-B2) 20ng/well
●Effector: hSP-C 1-197又はhSP-C△exon4 50ng/well
●β-gal vector: Cytomegalovirus-β-galactosidase expression vector 50ng/well
前記synoviolin promoterの詳細については,Identification of a Crucial Site for Synoviolin Expression.
Tsuchimochi K, et al., Molecular And Celluar Biology, Aug.2005, p.7344-7356参照)
トランスフェクト24時間後,Passive
Lysis Buffer (Promega社)で細胞融解し,Promega
luciferase assay kitを使用して,ルシフェラーゼアッセイを行った。
ルシフェラーゼ活性の測定は,ルミネッセンスプレートリーダー(Centro XS3
LB 960,ベルトールドジャパン株式会社製)で行った。結果を図2に示す。
図2から,野生型SPC形質移入体よりも,SPCΔexon4形質移入体においてシノビオリンの転写活性が高まっていることが分かった。
<実施例2−2:リアルタイムPCRによるmRNAレベルの確認>
6 well dishにA549細胞を50%コンフルエントでまき,24時間後,wild
SPC, mutant SPCを挿入したプラスミドをトランスフェクト(DNA量は1μg/well)した。また,ポジティブコントロールとして,10μg/mLのツニカマイシンで20時間刺激したA549細胞を用意した。
トランスフェクト48時間後に各wellの細胞を回収して常法によりmRNAを抽出し,逆転写によりcDNAとして,リアルタイムPCRをハイブリダイゼーション法(ROX補正)で行った。なお,リアルタイムPCRの反応条件は,以下の通りである。
Stage1(ポリメラーゼ活性化): 95℃ 10min
Stage2(熱変性): 95℃ 1sec
(アニーリング/伸長反応) 60℃ 20sec
Stage3:Stage2を40cycle
リアルタイムPCRに使用するプライマーとしては,ロシュ社のホームページ(http://roche-biochem.jp/sis/rtpcr/universal-probelibrary-upl/)により設計し,設計結果より得られたロシュ社のUPL(Universal ProbeLibrary)よりプローブを使用した。
なお,内在性コントロール遺伝子としては,18s ribosomal RNAとした。
リアルタイムPCR装置としては,Step
One Plus(Applied Biosystems社製)を使用した。結果を図3に示す。
図3から,野生型SPC形質移入体よりも,SPCΔexon4形質移入体においてシノビオリンのmRNAの発現が高まっていることが分かった。また,P<0.05で統計学的に有意差が認められた。
<実施例2−3:ウェスタンブロッティングによる蛋白質レベルの確認>
6 well dishにA549細胞を50%コンフルエントでまき,24時間後,wild
SPCプラスミド又はmutant SPCプラスミドをトランスフェクトした。
また,ポジティブコントロールとして,10μg/mLのツニカマイシンで18時間刺激したA549細胞を用意した。トランスフェクト後,18時間後に細胞を回収して,常法により蛋白質を抽出し,シノビオリン抗体を使ってウェスタンブロッティングを行った。蛋白質量の比較は,画像解析ソフト(Image-J,アメリカ国立衛生研究所製)でブロットの濃さを数値化し,wildを1として比をとることにより行った。なお,loading control としては,βアクチン抗体(Monoclonal (Mouse) AC-15 , A5441 SIGMA)を使用した。結果を図4に示す。
図4から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がシノビオリン蛋白質の発現が高いことが分かった。
(実施例3:SPCΔexon4によるXBP1のmRNAレベルの確認)
実施例2−2において,測定する対象因子をシノビオリンから小胞体ストレス関連サイトカインXBP1に変更した以外は,実施例2−2と同様にして,XBP1のmRNAレベルを測定した。結果を図5に示す。
図5から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がXBP1のmRNAの発現が高まっていることが分かった。このことから,SPCΔexon4形質移入体において小胞体ストレスがかかっていることが確認できた。
(実施例4:SPC△exon4によるCTGFのmRNAレベルの確認)
実施例2−2において,測定する対象因子をシノビオリンから結合組織増殖因子(CTGF
(connective tissue growth factor),Type II collagen,P4HA,及びTGF-β1)に変更した以外は,実施例2−2と同様にして,mRNAレベルを測定した。結果を図6に示す。
図6から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がCTGFのmRNAの発現が高まっていることが分かった。CTGFは,コラーゲン産生促進作用を有することが知られていることから,SPCΔexon4によってコラーゲン産生シグナルが高まっていると考えられる。
(実施例5:SPCΔexon4によるII型コラーゲンのmRNAレベルの確認)
実施例2−2において,測定する対象因子をシノビオリンからII型コラーゲン(Type II collagen)に変更した以外は,実施例2−2と同様にして,mRNAレベルを測定した。結果を図7に示す。
図7から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がType
II collagenのmRNAの発現が高まっていることが分かった。したがって,SPCΔexon4によってコラーゲン産生シグナルが高まっていると考えられる。
(実施例6:SPCΔexon4によるP4HAのmRNAレベルの確認)
実施例2−2において,測定する対象因子をシノビオリンからプロリル−4−ヒドロキシラーゼ(P4HA)に変更した以外は,実施例2−2と同様にして,mRNAレベルを測定した。結果を図8に示す。
図8から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がP4HAのmRNAの発現が高まっていることが分かった。P4HAは,コラーゲン合成における主要な酵素であることが知られていることから,SPCΔexon4によってコラーゲン産生シグナルが高まっていると考えられる。
(実施例7:SPCΔexon4によるTGF-β1のmRNAレベルの確認)
実施例2−2において,測定する対象因子をシノビオリンからトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β)に変更した以外は,実施例2−2と同様にして,mRNAレベルを測定した。結果を図9に示す。
図9から,野生型SPC形質移入体に比べ,SPCΔexon4形質移入体の方がTGF-β1のmRNAの発現が高まっていることが分かった。TGF-β1は線維化に関与する因子として知られていることから,SPCΔexon4によって線維化シグナルが高まっていると考えられる。
(実施例8)
シノビオリンのユビキチン化阻害物質によるコラーゲン分泌の抑制作用を調べるため,シノビオリンのユビキチン化阻害物質の一つであるLS102を用いた際のコラーゲン分泌量を測定した。なお,LS102は,下記式7で表わされる化合物である。
Figure 2014141472
<評価方法>
具体的な手順としては,以下の通りである。
(1)Minimum Essential Medium Eagle(10% FBS,及び1% Penicillin-Streptomycinを加えた)を1.2 mL/well使用し,A549細胞を6 well plateに2.5×105個/wellの濃度で合計12 wellまいた。
(2)24時間培養した後に,プラスミドDNA(hSP-CとhSP-CΔexon4)を1μg/wellずつ,別々にトランスフェクトした(それぞれ6 wellずつ,合計12 well)。プラスミドDNA 1μgに対し,Lipofectamine 2000を1μL使用した。ここでは分かりやすくするため,hSP-CをトランスフェクトしたwellをA-1, A-2, A-3, A-4, A-5, A-6, hSP-CΔexon4をトランスフェクトしたwellをB-1, B-2, B-3, B-4, B-5, B-6とする。
(3)前記(2)の12時間後に細胞培養液を吸引し,OPTIMEM 1.2ml/wellにかえた。この時,5μM,10μM,及び20μMの3種の濃度になるように,LS102をOPTIMEMに加えた。また,controlとして,LS102の溶媒であるDMSOのみをLS102と同体積入れたwellも作製した。
(4)(2)の36時間後に細胞培養液を1.5mL
tubeに全量回収した。回収後,5,000rpmで10分間遠心し,上清1mLずつをlow protein binding tubeに入れ,collagen assay kitのcollagen isolation &
concentration protocolに従い,細胞培養液中に分泌され溶解しているコラーゲン量(μg/mL)を測定した。各サンプルのコラーゲン量は,既知濃度のコラーゲンサンプルの希釈系列を上記と同様にアッセイして検量線を作成することにより求めた。LS102の濃度が5μMの場合,10μMの場合,及び20μMの場合のコラーゲン量をそれぞれ,図10〜12に示す。各図の縦軸はコラーゲン量(μg/mL)を表わす。
Figure 2014141472
<評価結果>
図10〜12から,対照としてDMSOを添加した場合には,A549細胞内でプラスミドDNA hSP-C及びhSP-CΔexon4によりコラーゲンの分泌が誘導されていた。一方,LS102を添加した場合には,5μM,10μM,及び20μMのいずれの濃度においても,コラーゲンの分泌が抑制されていた。このことから,LS102が肺線維症の症状として見られるコラーゲン分泌の抑制に有効であることが分かった。
(実施例9)
シノビオリンのユビキチン化阻害物質であるLS102を5μM用いて,コラーゲン分泌量の有意差を統計的に確認した。具体的には,以下の手順で試験を行った。
<評価方法>
(1)Minimum Essential Medium Eagle(10% FBS,及び1% Penicillin-Streptomycinを加えたもの)を1.2 mL/well使用し,A549細胞を6 well plateに2.5×105個/wellの濃度で合計24wellまいた。
(2)24時間培養した後に,プラスミドDNA(hSP-CとhSP-CΔexon4)を1μg/wellずつ,それぞれ6 wellずつトランスフェクトした。コントロールとして,pcDNA3-FLAG(GAT)も1μg/wellずつ6 wellトランスフェクトした。プラスミドDNA1μgに対し,Lipofectamine2000を1μl使用した。また,残りの6 wellはトランスフェクトしなかった(ツニカマイシン(以下「TM」と表記することもある)を入れてポジティブコントロールにする)。
(3)(2)の12時間後に細胞培養液を吸引し,OPTIMEM 1.2ml/wellにかえ,LS102を 5μMになるように加えた。Controlとして,LS102の溶媒であるDMSOをLS102を溶かしていた量と同量入れたwellも作製した。トランスフェクトしていないwellにツニカマイシンを10μg/mLになるように加えて,ポジティブコントロールとした。
(4)(2)の36時間後に細胞培養液を1.5mL
tubeに全量回収した。回収後,5,000rpmで10分間遠心し,上清1mLずつをlow protein binding tubeに入れ,collagen assay kitのcollagen isolation &
concentration protocolに従い,細胞培養液中に分泌され溶解しているコラーゲン量(μg/mL)を測定した。結果を図13に示す。各サンプルのコラーゲン量は,既知濃度のコラーゲンサンプルの希釈系列を上記と同様にアッセイして検量線を作成することにより求めた。
Figure 2014141472
<評価結果>
図13から,LS102(N−ベンゾオキサロールー6−イルーN’−(1−シクロヘキシルエチル)−N’−エチル−N’’−(2−エチルアミノーエチル)−[1,3,5]トリアジン−2,4,6トリアミン:
N-Benzooxazol-6-yl-N'-(1-cyclohexyl-ethyl)-N''-ethyl-N''-(2-ethylamino-ethyl)-[1,3,5]triazine-2,4,6-triamine)によりコラーゲンの分泌量が抑制されることが統計学的(p<0.05)に確認できた。
(実施例10)
式1で示される1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,及びその医薬的に許容しうる溶媒和物は,市販されているか,市販されているものを用いて用意に合成できる。このため,上記した実施例1〜9と同様の実験を,LS102以外の1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,及びその医薬的に許容しうる溶媒和物についても行う。すると,上記したLS102と同様の効果を発揮すると考えられる。
本発明の医薬は,線維化の予防及び/又は治療に有用であり,肺線維症,肝線維症,腎線維症,動脈硬化症,全身性硬化症,前立腺肥大症,ケロイド症,心筋症,膠原病及び瘢痕などの線維化を伴う疾患に適用することができる。このため,本発明は医薬産業において利用されうる。

Claims (9)

  1. 下記式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,生体組織の線維化予防又は治療剤。
    Figure 2014141472

    式1中,
    11〜R13は,同一でも異なってもよく,水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基,及びハロゲン原子のいずれかを表わし,
    21〜R23は,同一でも異なってもよく,
    11が水素原子又はハロゲン原子である場合,R21は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
    11がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R21は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R311NHR312のいずれかを表わし,前記R11と連結して環を形成してもよく,
    −R311 は,C1−3アルキレン基を表し,R312は,C1−3アルキル基を表し,

    12が水素原子又はハロゲン原子である場合,R22は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
    12がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R22は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R321NHR322のいずれかを表わし,前記R12と連結して環を形成してもよく,
    −R321は,C1−3アルキレン基を表し,R322は,C1−3アルキル基を表し,

    13が水素原子又はハロゲン原子である場合,R23は式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
    13がC1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基である場合,R23は水素原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基及び−R331NHR332のいずれかを表わし,前記R13と連結して環を形成してもよく,
    −R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す。

    Figure 2014141472
  2. 請求項1に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    11及びR12は,水素原子又はハロゲン原子を表わし,
    13は,C1−3アルキル基又はC1−3アルコキシ基を表わし,
    21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
    23は−R331NHR332を表わし,
    −R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す,
    生体組織の線維化予防又は治療剤。
  3. 請求項1に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    11及びR12は,水素原子を表わし,
    13は,C1−3アルキル基を表わし,
    21及びR22は,同一でも異なってもよく,式2〜6で表わされる基のいずれかを表わし,
    23は−R331NHR332を表わし,
    −R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す,
    生体組織の線維化予防又は治療剤。
  4. 請求項1に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    11及びR12は,水素原子を表わし,
    13は,C1−3アルキル基を表わし,
    21は,式6で表わされる基を表わし,
    22は,式3で表わされる基を表わし,
    23は−R331NHR332を表わし,
    −R331は,C1−3アルキレン基を表し,R332は,C1−3アルキル基を表す,
    生体組織の線維化予防又は治療剤。
  5. 請求項1に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体が,下記式7で表される1,3,5−トリアジン誘導体である,生体組織の線維化予防又は治療剤。
    Figure 2014141472
  6. 請求項1に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    コラーゲンの過剰な産出によって生じる線維化を伴う疾患を治療及び/又は予防するために用いられる生体組織の線維化予防又は治療剤。
  7. 請求項6に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    前記線維化を伴う疾患が,肺線維症,肝線維症,膵線維症,腎線維症,動脈硬化症,全身性硬化症,前立腺肥大症,ケロイド症,心筋症,膠原病及び瘢痕のいずれかである生体組織の線維化予防又は治療剤。
  8. 請求項6に記載の生体組織の線維化予防又は治療剤であって,
    前記線維化を伴う疾患が,肺線維症である生体組織の線維化予防又は治療剤。
  9. 前記式1で表わされる1,3,5−トリアジン誘導体,その医薬的に許容しうる塩,又はその医薬的に許容しうる溶媒和物を含む,コラーゲンの産生抑制剤。
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