JP2019089726A - がん遺伝子産物yap1/taz機能調節剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】YAP1/TAZの標的遺伝子の転写抑制剤、細胞の増殖抑制剤、がんの予防剤若しくは治療剤、又はSphereの形成促進剤としての利用が期待できる、新たなYAP1/TAZ機能調節剤を提供する。【解決手段】バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、タプシガルギン、並びにJAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIからなる群より選択される少なくとも1つを含む、がん遺伝子産物YAP1/TAZの機能調節剤。【選択図】なし

Description

本発明は、がん遺伝子産物YAP1/TAZの機能調節剤に関する。
YAP1(YES結合タンパク質1)/TAZ(PDZ結合モチーフを有する転写共役因子であり、YAP1のパラログ)は、Hippo経路の中心的な役割を果たす転写共役因子であり、主に転写因子TEAD(TEAドメインファミリー)と結合し、細胞増殖や細胞分裂に関わる標的遺伝子の発現を誘導する機能を有する。該誘導を介して、YAP1/TAZは、細胞増殖を促進し細胞死を制御することで、Hippo経路のエフェクターとしての役割を果たす。YAP1/TAZは、Hippo経路によって制御されていることが知られており、Hippo経路が作動状態であるときは、YAP1/TAZがリン酸化を受けることで、YAP1/TAZは核内局在が抑制され、若しくはタンパク質分解され、その結果、YAP1/TAZの標的遺伝子の発現が抑制される。逆に、Hippo経路が非作動状態であるときは、YAP1/TAZは核内に蓄積し、その結果、YAP1/TAZの標的遺伝子の発現が促進される。
Hippo経路の異常に起因するYAP1/TAZの過剰亢進は、がん患者のがんの悪性度や予後不良と相関することが知られており、YAP1/TAZは抗がん剤開発のための重要なターゲットの1つとなっている(非特許文献1)。近年、高感度ルシフェラーゼ・レポーターアッセイ系や既知の化合物ライブラリーを利用して、内在性YAP1/TAZの機能抑制剤をスクリーニングすることで、イベルメクチン等の特定のがんに対する抗がん作用のある薬剤が同定されている(特許文献1)。
一方、iPS誘導過程で内在性YAPが活性化していることや、外来性のYAPがiPSマーカーの発現を上昇させること等から、YAP1機能の亢進が、ES細胞の自己複製やiPS細胞の誘導(リプログラミング)において重要であることが示唆されている(非特許文献2)。外来性のYAPを用いて誘導したiPS細胞が、多能性を有していることも報告されている(非特許文献3)。更に、YAP1は損傷組織の再生においても必須の機能を担うことが知られている(非特許文献4及び5)。そのため、YAP1/TAZの機能亢進剤は、再生治療研究に使用できるとの観点等からも注目されている。
上述のようにYAP1/TAZの機能を制御することのできる薬剤は、がん治療や再生医療においてその効果が期待されているものの、現在までにスクリーニング等により得られたYAP1/TAZの機能調節剤は極めて少ない。従って、がん治療や再生医療における使用が可能となるような薬剤のさらなる取得が強く望まれている。
特開2016−88919号公報
Nature Review Cancer (2013)13:246-257. Genes & Development (2010)24:1106-1118. Experimental & Therapeutic Medicine (2017)14(1):199-206. Current Drug Targets (2017)18(4):447-454. Current Opinion Cell Biology(2016) 43:62-68.
YAP1/TAZは、生体内において発がん過程等に関与しており、がん遺伝子産物として知られている。また、YAP1/TAZは、組織の再生においても重要な働きを担うことも知られている。従って、YAP1/TAZは、抗がん剤開発や再生医療における重要なターゲットの1つである。しかし、YAP1/TAZ機能調節剤の報告数が極めて少ないことが、今後の抗がん剤開発や再生医療を進める上での課題となっている。本発明は、新たなYAP1/TAZ機能調節剤、即ち機能抑制剤及び機能亢進剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、高感度ルシフェラーゼ・レポーターアッセイ系を利用して、様々な薬物ライブラリーから、新たなYAP1/TAZ機能調節剤、即ち機能抑制剤及び機能亢進剤の両方に着目してスクリーニングを行った。鋭意研究を行った結果、YAP1/TAZ機能の調節に関わるとは予想もされなかった薬剤である、イオノフォア(バリノマイシン及びニゲリシン(用途:抗生物質))、プロトンATPase阻害剤(バフィロマイシンA1及びB1(用途:抗生物質))、カルシウム阻害剤(タプシガルギン(用途:小胞体ストレス等を調べる生化学的研究試薬))、並びにJAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIが、YAP1/TAZ機能調節剤として優れた効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1] バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、タプシガルギン、並びにJAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIからなる群より選択される少なくとも1つを含む、がん遺伝子産物YAP1/TAZの機能調節剤。
[2] 前記機能調節剤が、バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1並びにタプシガルギンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載の剤。
[3] 前記機能調節剤が、YAP1/TAZの機能抑制剤である、[2]に記載の剤。
[4] 前記機能調節剤が、Birc5、CTGF又はCyr61の少なくとも1つの遺伝子の転写抑制剤である、[2]又は[3]に記載の剤。
[5] 前記機能調節剤が、細胞の増殖抑制剤である、[2]〜[4]のいずれか1つに記載の剤。
[6] 前記機能調節剤が、がんの予防剤又は治療剤である、[2]〜[5]のいずれか1つに記載の剤。
[7] 前記機能調節剤が、JAKinhibitor I又はJAK3 inhibitor VIの少なくとも1つを含む、[1]に記載の剤。
[8] 前記機能調節剤が、YAP1/TAZの機能亢進剤である、[7]に記載の剤。
[9] 前記機能調節剤が、Sphereの形成促進剤である、[7]又は[8]に記載の剤。
[10] 前記機能調節剤が、組織の再生において使用される、[7]又は[8]に記載の剤。
[11] 前記機能調節剤が、ES細胞の自己複製能の維持において使用される、[7]又は[8]に記載の剤。
[12] 前記機能調節剤が、iPS細胞の作製時のリプログラミング過程において使用される、[7]又は[8]に記載の剤。
[13] [9]に記載のSphereの形成促進剤を含む、がん幹細胞単離用キット。
本発明によれば、新しいYAP1/TAZの機能調節剤を提供し、該機能の調節が機能の抑制である場合、例えば、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写抑制剤、細胞の増殖抑制剤、がんの予防剤又は治療剤としての利用が期待できる。
また、本発明によれば、新しいYAP1/TAZの機能調節剤を提供し、該機能の調節が機能の亢進である場合、例えば、Sphereの形成促進剤としての利用が期待できる。
図1は、バフィロマイシンA1及びB1を、H1299-YRE及びMCF10A-YREの培養液にそれぞれ添加して培養後、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った結果を示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図2は、バリノマイシン及びニゲリシンナトリウムを、H1299-YRE及びMCF10A-YREの培養液にそれぞれ添加して培養後、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った結果を示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図3は、タプシガルギンを、H1299-YRE及びMCF10A-YREの培養液にそれぞれ添加して培養後、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った結果を示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図4は、JAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIを、H1299-YRE及びMCF10A-YREの培養液にそれぞれ添加して培養後、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った結果を示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図5は、バフィロマイシンA1、バリノマイシン及びタプシガルギンを、H1299及びMCF10Aの培養液にそれぞれ添加して培養後、YAP1/TAZ標的遺伝子(Birc5、CTGF及びCyr61)の転写量をRT-qPCRによって解析した結果を示す。各細胞におけるGAPDHの転写量を用いて、各遺伝子転写量を標準化した。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図6は、JAK3 inhibitor I及びVIを、H1299及びMCF10Aの培養液にそれぞれ添加して培養後、YAP1/TAZ標的遺伝子(Birc5、CTGF及びCyr61)の転写量をRT-qPCRによって解析した結果を示す。各細胞におけるGAPDHの転写量を用いて、各遺伝子転写量を標準化した。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図7は、バフィロマイシンA1、バリノマイシン及びタプシガルギンを、H1299及びMCF10Aの培養液にそれぞれ添加して、培養後0日、2日及び4日における細胞数の経時的変化を示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。 図8は、JAK inhibitor Iを、H1299及びMCF10Aの培養液にそれぞれ添加して、培養後、12日目における、Sphere形成状況を示す写真及びSphere形成数を表わすグラフを示す。ネガティブコントロールとしては、培養液にDMSOを添加したものを用いた。
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、本発明が属する技術分野で通常に用いられる意味を有する。
YAP1/TAZの機能調節剤
本発明において、YAP1/TAZの機能調節剤(以下、「機能調節剤」と記載する場合がある)とは、1)YAP1/TAZとTEAD等の転写因子との相互作用や、YAP/TAZ/TEAD複合体とYAP1/TAZの標的遺伝子(以下、「標的遺伝子」と記載する場合がある)の転写制御領域との結合に影響を及ぼし、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量を調節する(増減させる)ものであっても良く、2)YAP1/TAZを制御するHippo経路等に作用することで、YAP1/TAZの細胞内における存在量や核内に局在する量に影響を及ぼし、標的遺伝子の転写量を調節する(増減させる)ものであっても良いが、該機能調節剤の作用によってYAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が増加又は減少する限り、該機能調節剤の作用機序は特定のものに限定されない。
哺乳類Hippo経路に関わる分子の具体例としては、Hippo経路のコアコンポーネントであるMST1/2(mammalian STE20-like protein 1/2)キナーゼ、LATS1/2(large tumor suppressor homolog 1/2)キナーゼ及びそれらのアダプター分子であるSAV1(Salvador Homolog 1)、MOB1(Mps One Binder Kinase Activator 1)、該コアコンポーネント上流の分子であるFAT4(FAT tumor suppressor homolog 4)、DCHS1/2(Dachsous1/2)、NF2(neurofibromin-2)、FRMD6(FERM domain-containing 6)、WWC1(WW and C2 domain-containing 1;別名KIBRA)及びRASSF1/5(Ras association family member 1/5)、並びに該コンポーネント下流の分子であるYAP1(Yes-Associated Protein 1)/TAZ(transcriptional co-activator with PDZ binding motif)及びTEAD1-4(TEA domain family 1-4)等が挙げられる。
本発明の機能調節剤の標的となる分子としては、YAP1/TAZそのもの;YAP1/TAZと相互作用する転写因子(TEAD等);YAP1/TAZを制御するHippo経路を構成する分子(MST1/2キナーゼ、LATS1/2キナーゼ及びそれらのアダプター分子であるSAV1、MOB1、該コアコンポーネント上流の分子であるFAT4、DCHS1/2、NF2、FRMD6、WWC1及びRASSF1/5等)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、YAP1/TAZの機能調節剤には、YAP1/TAZの機能を抑制する剤(以下「機能抑制剤」と記載する場合がある)及び亢進する剤(以下「機能亢進剤」と記載する場合がある)が含まれる。
YAP1/TAZの機能抑制剤
本発明の機能抑制剤の作用機序としては、例えば、1)YAP1/TAZとTEAD等の転写因子との相互作用や、YAP/TAZ/TEAD複合体と標的遺伝子の転写制御領域との結合を阻害することにより、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が低減される機序、及び2)Hippo経路のいずれかの分子に作用することにより、YAP1/TAZの細胞内における存在量や核内に局在する量が低減し、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が低減する機序等が挙げられるが、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量を減少する限り、該機能調節剤の作用機序は特定のものに限定されない。YAP1/TAZの標的遺伝子の例としては、Birc5、CTGF、Cyr61、TGFβ、FGF、MCAT、PAX3及びWnt5a等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の機能抑制剤は、対象への投与により、対象中のYAP1/TAZの標的遺伝子(例えば、Birc5、CTGF、Cyr61、TGFβ、FGF、MCAT、PAX3及びWnt5a)の転写量が減少し、好ましくは、その結果、対象中の細胞の増殖が抑制される。本発明の機能抑制剤の投与によって、転写量が減少するYAP1/TAZの標的遺伝子は、好ましくは、Birc5(baculoviral inhibitor of apoptosis repeat-containing 5)、CTGF(connective tissue growth factor)及びCyr61(Cysteine-rich angiogenic inducer 61)である。本発明の機能抑制剤の投与により増殖が抑制される細胞の好ましい例としては、Hippo経路に異常を有するがんの細胞が挙げられる。該細胞の増殖の抑制により、がんの予防及び/又は治療において効果を発揮する本発明の機能抑制剤の投与による、標的遺伝子の転写量が減少し、その結果、細胞の増殖が抑制される作用は、一時的なものであることが望ましい。
本発明の機能抑制剤は、バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、並びにタプシガルギンからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤含む。また、本発明の機能抑制剤の成分として、上記薬剤の内、任意の2つ以上の薬剤を用いる場合、該機能抑制剤は、例えば、合剤として、単一の製剤に製剤化することもできるし、あるいは各薬剤を別個に製剤化して、同時に同一若しくは異なる投与経路で投与したり、順次、同一若しくは異なる投与経路で投与したりすることもできる。順次投与する場合はその順序は特に制限されない。
本発明の機能抑制剤は、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写抑制剤として使用されてもよく、また、細胞の増殖抑制剤として、より具体的には、がん細胞の増殖抑制剤として使用されてもよく、あるいは、がんの予防剤又は治療剤として使用されてもよい。
本発明において、バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、並びにタプシガルギンは、これらの塩又は溶媒和物を含んでもよい。塩としては、好ましくは、医薬として許容される塩が挙げられ、塩水和物も塩無水物も含まれ、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。該塩は、酸付加塩であってもよく、このような塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。
更に、本発明において、バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、並びにタプシガルギンは、これらの水和物等の医薬として許容し得る各種溶媒和物や結晶多形等を含んでもよい。
がんがHippo経路に異常を有するがんであるか否かは、がん細胞において上記のMST1/2キナーゼ、LATS1/2キナーゼ及びそれらのアダプター分子であるSAV1、MOB1、並びに該コアコンポーネント上流の分子であるFAT4、DCHS1/2、NF2、FRMD6、WWC1及びRASSF1/5等に異常があるか否かを確認することにより決定することができる。これらの分子の異常の確認は、これらの分子の発現量や活性を測定することにより行うことができる。例えば、ELISA等の方法により発現タンパク質を定量したり、ウエスタン法でリン酸化を定量したり、PCR法により遺伝子の転写量を測定すればよい。
Hippo経路に異常を有するがんとして、肝癌、胆管癌、悪性中皮腫、唾液腺癌、食道癌、口腔癌、胃癌、膵癌、子宮頚癌、子宮体癌、子宮肉腫、膀胱癌、脳腫瘍、悪性骨腫瘍、筋線維肉腫、横紋筋肉腫、非メラノーマ皮膚癌及び外毛根鞘癌等が挙げられ、本発明の機能抑制剤は、例えば、これらのがんの細胞の増殖抑制剤、予防剤又は治療剤として用いることができる。本発明のがんの細胞の増殖抑制剤、予防剤又は治療剤が適用されるがんからは、大腸癌、直腸癌、膠芽腫、尿路上皮癌、卵巣癌、NF2異常神経鞘腫は除かれる。
本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤の投与対象は、例えば、細胞、組織、器官、あるいはヒトを始めとする哺乳動物等であり、哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ等の霊長類等が挙げられる。
本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤は、任意の医薬的に許容される担体、例えば、慣用の各種有機又は無機担体物質を含んでもよく、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。
さらに、本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤は、必要に応じて、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量含んでもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ショ糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロール等が挙げられる。
本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤は、それ自体公知の方法で、例えば、慣用的な混合、造粒、コーティング、可溶化、凍結乾燥等の工程を用いて製造することができる。
本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤の投与形態としては、液剤、錠剤、丸剤、飲用液剤、散剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、エキス剤、細粒剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、点眼剤、トローチ剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、眼軟膏剤、硬膏剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、坐剤、浣腸剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、貼付剤、軟膏剤、ゼリー剤、パスタ剤、吸入剤、クリーム剤、スプレー剤、点鼻剤、エアゾール剤、徐放性製剤(例えば、徐放性マイクロカプセル剤)、速放性製剤等が挙げられる。
本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤は、その使用に際し、各種形態に応じた方法で安全に投与される。例えば、外用剤の場合には、皮膚、粘膜等の所要部位に直接噴霧、貼付又は塗布され、錠剤、丸剤、飲用液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤等の場合には経口投与され、注射剤の場合には静脈内、筋肉内、皮内、皮下、関節腔内、腹腔内若しくは腫瘍組織内に投与され、坐剤の場合には直腸内投与される。
本発明の機能抑制剤に含まれる薬剤の含有量は、通常製剤全体に対して、約0.01〜100重量%、好ましくは、約0.1〜50重量%程度である。
本発明の機能抑制剤に含むことができる医薬的に許容される担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して、約1〜99.99重量%、好ましくは約10〜90重量%程度である。
本発明のがんの予防剤又は治療剤の投与量は、限定されないが、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、投与する患者の体重、年齢、病状等の特性、あるいは医師の判断等に応じて適宜選択される。例えば患者の体重1 kgあたり約0.01μg〜約2 g、好ましくは約0.1μg〜約1 g程度の範囲である。投与量は1日1〜数回に分けて投与することができ、数日又は数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
YAP1/TAZの機能亢進剤
本発明の機能亢進剤の作用機序としては、例えば、1)YAP1/TAZとTEAD等の転写因子との相互作用を促進することにより、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が増加される機序、及び2)Hippo経路のいずれかの分子に作用することにより、YAP1/TAZの細胞内における存在量や核内に局在する量が増加し、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が増加する機序等が挙げられるが、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写量が増加する限り、該機能亢進剤の作用機序は特定のものに限定されない。
本発明の機能亢進剤は、対象への投与により、対象中のYAP1/TAZの標的遺伝子(Birc5、CTGF、Cyr61、TGFβ、FGF、MCAT、PAX3及びWnt5a)の転写量が増加し、好ましくは、その結果、投与した細胞の増殖が促進される。本発明の機能亢進剤の投与によって、転写量が増加するYAP1/TAZの標的遺伝子は、好ましくは、Birc5、CTGF及びCyr61である。本発明の機能亢進剤の投与により増殖が促進される細胞の好ましい例としては、がん幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、骨髄間葉系細胞から単離されるMuse細胞、始原生殖細胞に由来する胚性生殖幹細胞(EG細胞)、精巣組織からのGS細胞の樹立培養過程で単離される多能性生殖幹細胞(mGS細胞)等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の機能亢進剤の投与による上記作用は、可逆的な作用であることが好ましく、標的遺伝子の転写量が増加し、その結果、細胞の増殖が促進される作用は一時的なものであることが好ましい。
がん幹細胞は、1997年にヒト急性骨髄性白血病において初めて同定された細胞であり、発がんや転移等において中心的役割を果たす。また、がん幹細胞は既存の抗がん剤治療や放射線療法に対して耐性を示すことが多く、治療後再発の主たる要因であるとの指摘もある。そのため、がん幹細胞は、がん治療における本質的なターゲットとして認識されつつある。しかしながら、がん幹細胞の起源、機能、及び特性、並びに治療抵抗性の分子機構等については、未だ詳細には解明されていない。
がん幹細胞は、無血清条件下で足場非依存性に浮遊培養することにより、Sphereと呼ばれる球形の非接着性細胞塊を形成する。Sphereは個々の細胞の境界が不明瞭であるという特徴を有する。一方、がん幹細胞以外のがん細胞は、このような条件下で培養すると殆どの細胞が死滅する。このような浮遊(Sphere)培養法は、神経幹細胞の培養・濃縮法として確立されたが、種々のがん幹細胞、例えば、乳がん幹細胞、グリオーマ及び髄芽腫幹細胞、メラノーマ幹細胞等でも、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)や上皮細胞増殖因子(EGF)等の成長因子を加えた無血清培地中で浮遊細胞塊を形成し、維持・濃縮されることが知られており、浮遊(Sphere)培養法は、がん幹細胞の同定方法、単離方法等として使用されている。
本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤は、後述する実施例5からも明らかなように、効率的にがん幹細胞にSphereを形成させることができるため、Sphere形成促進剤として使用することができる。従って、がん幹細胞の単離方法において、効率的にがん幹細胞にSphereを形成させることを目的として、本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤を使用してもよい。また、がん幹細胞の単離において使用される本発明のSphere形成促進剤は、キットの形態で提供されてもよく、該キットは、本発明のSphere形成促進剤を含む限り、他の如何なる試薬を含んでもよい。
本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤を使用して、Sphereの形成を促進することができるがん幹細胞の例としては、乳がん幹細胞、グリオーマ幹細胞、髄芽腫幹細胞、食道がん幹細胞及びメラノーマ幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
YAP1は、ES細胞において高度に発現していることが示されているが(Science (2002)298:597-600)、その役割については不明な点がおおい。しかし、YAP1の過剰発現がES細胞の多能性を維持すること、及びYAP1のノックダウン実験により多能性が失われていることから、YAP1がES細胞の自己複製において重要な役割を果たしていることが示唆されている(Genes & Development (2010)24:1106-1118)。従って、本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤は、ES細胞の自己複製能と多能性を維持するために使用してもよい。
iPS細胞では、そのリプログラミングの間、YAP1タンパク質の発現が上昇していることから、YAP1機能の亢進がiPS細胞の誘導と関連することが示唆されている(Genes & Development (2010)24:1106-1118)。また、YAPを過剰発現させると、多能性マーカーの亢進が起こると共に、細胞分化培養条件でもテラトーマを形成することが報告されている(Exp Ther Med.(2017) 14(1):199-206)。従って、本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤は、効率的にiPS細胞を作製するために、例えば、該作製時のリプログラミング過程において使用してもよい。
また、YAP1は組織の再生においても重要な働きを担うことが知られていることから(Current Drug Targets (2017)18(4):447-454)、本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤は、組織や器官の再生治療剤として使用してもよい。再生される組織や器官としては、心臓、胆管、腸、筋肉、肝臓、皮膚等が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本発明のYAP1/TAZの機能亢進剤において説明した上記以外の事項、例えば、投与形態、投与方法、投与経路等に関しては、本発明のYAP1/TAZの機能抑制剤において説明した内容が、全てそのまま援用される。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:Hippo経路の転写活性に影響を及ぼす化合物の探索及び同定
Hippo経路の破綻による発がんは、下流の転写共役因子YAP1/TAZの活性が亢進し、YAP1/TAZが結合する転写因子TEADの標的遺伝子の転写が亢進することによって引き起こされる。一方、YAP1/TAZの活性化は損傷組織の再生や、iPS細胞の誘導にも関与する。そこで、YAP1/TAZ活性を制御する薬剤をレポータースクリーニングにより選別した。
細胞がもつ内在性のYAP1/TAZの転写活性を高感度に検出できるレポーター遺伝子として、YAP1/TAZが結合する転写因子TEADの標的遺伝子(MCAT,PAX3,Wnt5a,CTGF等)に共通するTEAD結合配列にスペーサー配列を付加したDNA配列を10コピー反復したものをYAP/TAZ応答配列(YAP/TAZresponse element,YRE)とする。YREの下流にホタル・ルシフェラーゼ及び蛍光タンパク質VenusをT2A配列で連結させ、更にその下流にハイグロマイシン耐性遺伝子を連結させたレポーターDNAコンストラクトを構築した。該レポーターDNAコンストラクト及び、選択マーカー遺伝子としてネオマイシン耐性遺伝子を含む標準化用SV40プロモーター制御ウミシイタケ・ルシフェラーゼレポーターDNAコンストラクトをヒト非小細胞肺癌細胞株H1299(ATCC CRL-5803TM)及びヒト乳腺上皮細胞株MCF10A(ATCC CRL-10317TM)に遺伝子導入したヒト安定細胞株を樹立し(H1299-YRE、MCF10A-YRE)、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり5,000細胞を播き、CO2インキュベーターで一晩培養した。次に、新学術領域・化学療法基盤支援活動が配布する標準阻害剤キットI、II、III及びIVを、最終濃度が各々10 nM、100 nM及び1μMとなるように該マイクロプレートに分注し、24時間処理した。その後、Dual-Glo(登録商標)Luciferase assay system(プロメガ)を用いて、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行い、生存細胞数の指標となるウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性で標準化したホタル・ルシフェラーゼの活性を測定した。添加薬剤のネガティブコントロールとして、薬剤の溶媒であるDMSO(Wako, product#043-07216)を用いた。
更に、細胞毒性及びホタル・ルシフェラーゼの活性変化の再確認を、蛍光顕微鏡下での細胞形態及びVenus蛍光強度でも行った。レポーター遺伝子導入細胞のルシフェラーゼ活性及びVenus強度を顕著に変化させ、細胞毒性を示さない阻害剤を、ヒット化合物とした。
その結果、YAP1/TAZの機能抑制剤として、イオノフォアであるバリノマイシン(Wako, product#228-01121, Lot. CEF2622)及びニゲリシン(LKT,product#.N3225, Lot. 2596802)、プロトンATPase阻害剤バフィロマイシンA1(Wako, product#029-11643, Lot. CDF7574)、カルシウムATPase阻害剤タプシガルギン(Wako, product#209-17281, Lot. STG1421)を得た。
一方、YAP1/TAZの機能亢進剤として、JAKシグナル阻害剤であるJAK inhibitor I(Calbio Chem, product#420099, Lot. D00108243)及びJAK3 inhibitor VI(Calbio Chem, product#420126, Lot. D00006068)を得た。
実施例2:同定したYAP1/TAZ機能調節剤のデュアル・ルシフェラーゼアッセイによる評価
実施例1で同定した剤と同一の化学構造を有する市販製品(バリノマイシン:Wako, product#228-01121, Lot. SAJ1611、ニゲリシンナトリウム:Wako, product#149-07261, Lot. CTH2376、バフィロマイシンA1:Toronto Research Chemicals Inc, product#B110000, Lot. 2-LXM-96-1、バフィロマイシンB1(バフィロマイシンA1の類似体):BioViotica, product#0004-c100, Lot. B2701091、タプシガルギン:Wako, product#209-17281, Lot.WDP4439、JAK inhibitor I:Calbio Chem, product#420099, Lot.2805595、JAK3 inhibitor VI:Calbio Chem, product#420126, Lot.2869738)を購入した。
H1299-YRE及びMCF10A-YREを、24ウェルプレートに、1ウェル当たり20,000細胞ずつ播き、バフィロマイシンA1及びB1は、2 nM又は10 nMの濃度で(図1)、バリノマイシン及びニゲリシンナトリウムは、40 nM又は200 nMの濃度で(図2)、タプシガルギンは、1 nM又は5 nMの濃度で(図3)、JAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIは、400 nM又は2μMの濃度で(図4)それぞれ添加し、24時間培養後、上記と同様のキットを使用してデュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った。
バフィロマイシンA1及びB1、バリノマイシン、ニゲリシンナトリウム及びタプシガルギンについては、H1299-YRE及びMCF10A-YREのいずれの細胞を用いた場合でも、ネガティブコントロール(DMSO)と比べ、YAP1/TAZの転写機能を抑制した(図1〜3)。特に、タプシガルギンを、MCF10A-YREに投与した場合、DMSOを投与した場合に比べて10倍以上の抑制作用を示した(図3)。
JAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIについては、H1299-YRE及びMCF10A-YREのいずれの細胞を用いた場合でも、ネガティブコントロール(DMSO)と比べ、YAP1/TAZの転写機能を亢進した(図4)。これらの薬剤については、いずれの細胞に投与した場合であっても、2μM投与した時の方が、400 nM投与した時に比べ、転写機能を亢進した(図4)。
実施例3:RT-qPCRによるYAP1/TAZ標的遺伝子の転写量への影響の検証
実施例2と同様の条件で、レポーター遺伝子を導入していないMCF10A細胞及びH1299細胞を、バフィロマイシンA1、バリノマイシン、タプシガルギン、及びJAK inhibitor VIの薬剤で処理し、24時間培養を行った。RNAiso(タカラバイオ株式会社)を用いて、各細胞から全量RNAを抽出・精製し、1μgの全量RNAから、SuperScript(登録商標)III First-Strand Synthesis System cDNA合成キット(Invitrogen)を用いて逆転写反応を行った。表1に示すプライマー及びTHUNDERBIRD(登録商標) SYBR(登録商標) qPCR Mix(TOYOBO)を用いて、定量的RT-PCR解析を行い、YAP1/TAZの直接の標的遺伝子Birc5(baculoviral inhibitor of apoptosis repeat-containing 5)、CTGF(connective tissue growth factor)及びCyr61(Cysteine-rich angiogenic inducer 61)の発現量を、GAPDHを標準化コントロールとして算出した。
バフィロマイシンA1、バリノマイシン及びタプシガルギンは、全ての標的遺伝子(Birc5、CTGF及びCyr61)の転写を抑制した(図5)。特に、タプシガルギンについては、H1299細胞において、全ての標的遺伝子の転写を強く抑制した(図5)。
一方、JAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIは、全ての標的遺伝子の転写を促進した(図6)。
実施例4:細胞増殖抑制効果の検証
バフィロマイシンA1、バリノマイシン、タプシガルギンはYAP1/TAZの機能を抑制したことから、それらの細胞増殖に対する抑制効果について検討した。
MCF10A細胞及びH1299細胞を6ウェルプレートに、1ウェルあたり2×105の細胞を播き、バフィロマイシンA1(10 nM)、バリノマイシン(200 nM)又はタプシガルギン(5 nM)をそれぞれ添加し、培養を行った。添加後0日、2日及び4日でそれぞれ細胞を回収し、自体公知の方法により、細胞数をカウントした(図7)。
その結果、ネガティブコントロール(DMSO)に比べて、バフィロマイシンA1、バリノマイシン及びタプシガルギンは、MCF10A又はH1299細胞の細胞増殖を顕著に阻害した。
実施例5:Sphere形成促進効果の検証
がん幹細胞の特性の1つに、無血清条件下での高いSphere形成能が上げられ、がん幹細胞の自己複製能の1つの指標となる。YAP1/TAZ機能の亢進が乳がん幹細胞のSphere形成を促進することから(Cell (2011)147(4):759-772)、JAK inhibitor I処理のヒト乳腺上皮細胞株MCF10Aと肺癌細胞株H1299のSphere形成能への効果を検討した。
MCF10A細胞及びH1299細胞を単一に解離した後、低接着性の6ウェルプレートに、1×103細胞/mlで、播種した。培地として、10 ng/mlのbFGF(R&D Systems)、20 ng/mlのEGF(Sigma)、5 ng/ml insulin(Nacalai)、0.4%ウシ血清アルブミン(Sigma)を含む無血清DMEM-F12を用い、JAK inhibitor Iを2μMの濃度で添加し、培養を行った。培養開始から12日後、直径が200μm以上の細胞塊をSphereとしてカウントした。その結果、JAK inhibitor IはMCF10A細胞及びH1299細胞のSphere形成を促進した(図8)。
本発明のバリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、タプシガルギン、並びにJAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIからなる群より選択される少なくとも1つを含む、がん遺伝子産物YAP1/TAZの機能調節剤は、例えば、YAP1/TAZの標的遺伝子の転写抑制剤、細胞の増殖抑制剤、がんの予防剤若しくは治療剤、又はSphereの形成促進剤として利用が可能であり、従って、十分に産業上の利用可能性がある。

Claims (10)

  1. バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1、タプシガルギン、並びにJAK inhibitor I及びJAK3 inhibitor VIからなる群より選択される少なくとも1つを含む、がん遺伝子産物YAP1/TAZの機能調節剤。
  2. 前記機能調節剤が、バリノマイシン、ニゲリシン、バフィロマイシンA1及びB1並びにタプシガルギンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の剤。
  3. 前記機能調節剤が、YAP1/TAZの機能抑制剤である、請求項2に記載の剤。
  4. 前記機能調節剤が、Birc5、CTGF又はCyr61の少なくとも1つの遺伝子の転写抑制剤である、請求項2又は3に記載の剤。
  5. 前記機能調節剤が、細胞の増殖抑制剤である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の剤。
  6. 前記機能調節剤が、がんの予防剤又は治療剤である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の剤。
  7. 前記機能調節剤が、JAKinhibitor I又はJAK3 inhibitor VIの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の剤。
  8. 前記機能調節剤が、YAP1/TAZの機能亢進剤である、請求項7に記載の剤。
  9. 前記機能調節剤が、Sphereの形成促進剤である、請求項7又は8に記載の剤。
  10. 請求項9に記載のSphereの形成促進剤を含む、がん幹細胞単離用キット。
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