JP2014140889A - 転写装置、転写方法、及び、転写板 - Google Patents

転写装置、転写方法、及び、転写板 Download PDF

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Abstract

【課題】 レーザ光を照射することにより固体被膜を転写対象面上に転写させる際に、転写の精度をより向上させることが可能な転写装置を提供すること。
【解決手段】 レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、基材上に設けられた固体被膜とを有する転写板が巻回されたリール状物から転写板を連続的に供給する供給リールと、加圧部と、レーザ光照射部と、転写板を回収する回収リールと、制御部とを備え、制御部は、供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧して固体被膜を転写対象面に密着させ、密着状態を保った状態で、基材側からレーザ光を照射し、固体被膜を転写対象面上に転写させるように加圧部とレーザ光照射部とを制御する第1の処理、及び、転写板を転写対象物から遠ざけて、転写板を転写対象面から取り除く第2の処理とを行なう転写装置。
【選択図】 図5

Description

本発明は、転写装置、転写方法、及び、転写板に関する。
従来、ガラス等の透明部材に傷を付けることなくマーキングを行う方法として、透明な部材を透過させるようにレーザー光線を照射し、この透明部材の裏側に置かれた金属のスパッタにより該透明部材にマーキングする方法が存在する(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような従来のマーキング方法には次のような問題点があった。
第1には、マーキング対象物それ自体を透過したレーザ光線を金属に照射して、スパッタリングによりマーキングを行うことから、(1)レーザ光線を透過させない又は透過させ難いマーキング対象物には適用できないこと、(2)レーザ光線を透過させるものであっても、肉厚や歪みのあまり大きなマーキング対象物や、最近のプラズマディスプレイパネル等のような表面に蛍光灯障害防止のためのSiO被膜を有するマーキング対象物では、レーザ光線の屈折やそれに伴う焦点ズレの影響で精細なマーキングが困難となること、(3)レーザ光線を透過させるものであっても、マーキング面の背後からレーザ光線を照射することが困難なマーキング対象物には適用できないこと、等の様々な問題点があった。
第2には、レーザスパッタリングのメカニズムとして、金属へのレーザ光線の照射により瞬時に加熱昇華されて立ち上る金属蒸気を、レーザ光線の進行方向とは逆方向に位置するマーキング面に付着させると言う構成を採用しているため、(1)レーザ光線の照射により加熱昇華されて立ち上る金属蒸気は拡散する傾向が認められ、その結果、如何にレーザビーム径を細く絞ろうとも、それによりマーキングされる線幅には限界があり、精細なマーキングには適しないこと、(2)レーザ光線の照射により加熱昇華されて立ち上る金属蒸気はマーキング対象面に到達するまでに酸化される傾向が認められ、マーキング対象面にはマーキングされた線のほかにかなりの量の煤が付着するため、不要な煤を拭き取るための後工程が不可欠であること、等の問題点があった。
このような従来の問題に対して、特許文献2では、レーザビームに対して透明な性質を有する基材の片面に有色被膜を被着させてなる転写板を、マーキング対象となる面に有色被膜が対面するように重ね合わせ、転写板の背後(基材側)からレーザビームを照射して、マーキング対象となる面上にマーキングを行なう方法が提案されている。
特許文献2には、当該方法によれば、マーキング対象物の厚さや材質によらず、マーキングを行なうことが可能となり、マーキング対象物の表面に傷を付けにくい態様で精細なマーキングを行なうことが可能となることが記載されている。
特許文献2に開示されているマーキング方法では、マーキングする際、転写板とマーキング対象との間に空気が入った間隙が存在するように、両者間の微細間隙の大きさを適切に制御しながらレーザビームを照射している。特許文献2には、転写板とマーキング対象との間に間隙を設ける理由について、スパッタリング原理からこのような間隙の存在が不可欠であることが記載されている。
また、特許文献3には、マーキング対象となる面上に適当な厚さのスペーサパターンを転写し、転写されたスペーサを介してマーキング対象面と転写板との間に微細な間隙を生じさせながら両者を重ね合わせ、この状態でレーザ光の照射を行なうことが開示されている。特許文献3には、マーキング対象面と転写板との間に微細な間隙を生じさせる理由について、完全密着状態でレーザ光を照射すると、固体被膜(例えば、クロム被膜)が過度に昇温され、転写板とマーキング対象面とが溶着され、剥離不能となってしまうおそれがあると記載されている。
特開昭60−224588号公報 特許第3915851号公報 特開平11−077340号公報
しかしながら、特許文献2や特許文献3では、マーキング対象面と転写板との間に微細な間隙を生じさせていることから、この微細な間隙において転写物質が拡散する可能性がある。そのため、転写精度のさらなる向上が期待されている。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ光を照射することにより固体被膜を転写対象面上に転写させる際に、転写の精度をより向上させることが可能な転写装置、転写方法、及び、転写板を提供することにある。
本発明者等は、転写装置、転写方法、及び、転写板について検討した。その結果、特定の転写板を用いれば、マーキング対象面と転写板とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のようなものを提供する。
レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有する転写板が巻回されたリール状物から前記転写板を連続的に供給する供給リールと、
前記供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧する加圧部と、
レーザ光照射部と、
前記供給リールから供給され、転写に使用された転写板を回収する回収リールと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧して固体被膜を前記転写対象面に密着させ、密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写させるように前記加圧部と前記レーザ光照射部とを制御する第1の処理、及び、前記第1の処理の後、前記転写板を前記転写対象物から遠ざけて、前記転写板を前記転写対象面から取り除く第2の処理とを行なうことを特徴とする転写装置。
本発明に係る転写装置によれば、供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧して固体被膜を前記転写対象面に密着させ、密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写させる。密着状態を保った状態で転写を行なうため、転写の精度に優れる。
次に、前記転写板を前記転写対象物から遠ざけて、前記転写板を前記転写対象面から取り除く。ここで、本発明では、転写板を構成する基材として、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたものを用いる。従って、転写の際に、転写板と転写対象面とが溶着していたとしても、転写板を転写対象面から取り除く際には、転写板を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。
このように、本発明に係る転写装置によれば、転写対象面と転写板とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となる。
前記構成においては、前記加圧部を少なくとも支持するフローティング機構を備え、
前記制御部が行なう前記第2の処理は、前記加圧部を前記転写対象物から遠ざけることにより前記転写板を前記転写対象物から遠ざけて、前記転写板と前記転写対象物との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離させることにより前記転写板を前記転写対象面から取り除く処理であることが好ましい。
前記加圧部がフローティング機構により支持されている場合、前記加圧部を前記転写対象物から遠ざけると(加圧の圧力を緩めると)、転写板と転写対象物との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離されることになる。その結果、溶着の度合いが大きい場合であっても、好適に転写板を転写対象面から取り除くことができる。
前記構成において、前記転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下であることが好ましい。本発明では、転写板を構成する基材として、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたものを用いる。従って、転写の際に、転写板と転写対象面とが溶着していたとしても、転写板を転写対象面から取り除く際には、転写板を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。そのため、転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下という薄いものであっても、破損することなく転写板を転写対象物から剥離することができる。
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有する転写板を準備する工程と、
転写対象物の転写対象面に前記転写板の前記固体被膜を密着させる工程と、
密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写する工程と、
前記転写板を転写対象面から取り除く工程と
を有することを特徴とする転写方法。
本発明に係る転写方法によれば、転写対象物の転写対象面に転写板の固体被膜を密着させ、密着状態を保った状態で、転写板の基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写させる。密着状態を保った状態で転写を行なうため、転写の精度に優れる。
次に、前記転写板を前記転写対象面から取り除く。ここで、本発明では、転写板を構成する基材として、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたものを用いる。従って、転写の際に、転写板と転写対象面とが溶着していたとしても、転写板を転写対象面から取り除く際には、転写板を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。
このように、本発明に係る転写方法によれば、マーキング対象面と転写板とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となる。
前記構成において、前記転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下であることが好ましい。本発明では、転写板を構成する基材として、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたものを用いる。従って、転写の際に、転写板と転写対象面とが溶着していたとしても、転写板を転写対象面から取り除く際には、転写板を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。そのため、転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下という薄いものであっても、破損することなく転写板を転写対象物から剥離することができる。
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
前記に記載の転写方法に使用される転写板であって、
レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有することを特徴とする転写板。
本発明に係る転写板を構成する基材は、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されている。従って、前記に記載の転写方法に使用した場合、転写の際に、転写板と転写対象面とが溶着していたとしても、転写板を転写対象面から取り除く際には、転写板を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。
すなわち、本発明に係る転写板を用いれば、マーキング対象面と転写板とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となる。
本発明によれば、レーザ光を照射することにより固体被膜を転写対象面上に転写させる際に、転写の精度をより向上させることが可能な転写装置、転写方法、及び、転写板を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る転写板を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る転写方法を説明するための断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る転写方法を説明するための断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る転写方法を説明するための断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る転写装置を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る転写装置を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る転写装置を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転写板を模式的に示す断面図である。図1に示すように、転写板10は、基材12と、基材12上に設けられた固体被膜14とを有する。なお、転写板10の形状は、所望のマーキングパターンに応じて適宜決定することができる。
基材12は、レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成されている。レーザ光を透過させる性質とは、レーザ光の波長との関係で規定され、当該レーザ光を透過させる性質を有する限り、基材12を構成する材料は特に限定されない。このような基材12の具体例としては、波長1.06μmのYAGレーザ光を透過させる性質を有する樹脂フィルムとして、例えば、ポリイミドフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができる。
本発明において、「可撓性を有する樹脂フィルム」とは、幅0.5cm、長さ10cmの試料を作成し、当該試料を長さ方向で8cm離間した2点で支持(載置)し、長さ方向の中央部分に10gの荷重を加えた際の、当該中央部分の荷重を加える前後での変化量(荷重方向への撓み量)が0.5cm以上あるものをいう。前記変化量は、1cm以上であることがより好ましい。また、前記変化量は大きいほど好ましい。
基材12の厚さとしては、特に制限されないが、可撓性の観点から、5〜300μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。前記樹脂フィルムのなかでも、レーザ光を透過させる性質、及び、可撓性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
固体被膜14は、基材12を透過したレーザ光により瞬時に蒸発乃至昇華され、転写対象物の転写対象面に転写されるものである。固体被膜14の材質は、(1)レーザ光の照射により加熱されて瞬時に蒸発乃至昇華する温度特性を有すること、(2)必要なマーキングの色彩を有すること、(3)基材に対して均一な厚さの被膜を形成できること、(4)転写対象物の製造工程等における処理温度に対する耐熱性を有すること、(5)比較的に低コストで提供できること、等を考慮して決定することができる。
固体被膜14に使用できる物質としては、Au,Pd,Ag,Cu,Cr,Al,Ta,Ni−Cu,Ni−Cr,TiN,TiC,ITO,SiO2,Si34,Nb−Ti,Mo,Mo−Si,Co−Cr,Co−P,Al23,TiW,SUS等が挙げられる。従って、これらの候補物質の中から、上記条件(1)〜(5)を考慮して適当な物質を固体被膜の材料として選択することができる。なかでも、上記(4)の観点からは、Crが好ましく、上記(1)の観点からは、Tiが好ましい。
固体被膜14の厚さとしては、10nm〜300nmが好ましく、50nm〜150nmがより好ましい。固体被膜14の厚さを上記数値範囲内とすることにより、転写対象物に転写した際に、マーキング(転写物)の厚さを薄くでき且つマーキングを明確に視認可能とすることができる。
固体被膜14を基材12上に形成する方法としては、特に限定されないが従来公知の真空蒸着やスパッタリング等を用いることができる。
なお、図1に示す転写板10の構成に加えて、基材12と固体被膜14との間に、レーザ光を吸収して発熱する性質を有するレーザ光吸収層を介在させてもよい。例えば、基材12上に、酸化クロムによる黒色のレーザ光吸収層とクロムによる金属色の固体被膜14とを順に重ねた構造とすれば、酸化クロム層(レーザ光吸収層)の存在によりクロム層(固体被膜14)の反射を抑制すると同時にYAGレーザ光の吸収効率を高めて、低光強度YAGレーザ光による明瞭なマーキングを可能ならしめることができる。
次に、本実施形態に係る転写方法について説明する。
本実施形態に係る転写方法は、
レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基板上に設けられた固体被膜とを有する転写板を準備する工程(工程A)と、
転写対象物の転写対象面に前記転写板の前記固体被膜を密着させる工程(工程B)と、
密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写する工程(工程C)と、
前記転写板を転写対象面から取り除く工程(工程D)と
を有する。
[転写板準備工程]
図2〜図4は、本発明の一実施形態に係る転写方法を説明するための断面模式図である。図2に示すように、本実施形態に係る転写方法では、まず、レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材12と基材12上に設けられた固体被膜14とを有する転写板10を準備する(工程A)。なお、転写板10は、リール状に巻回されたものを準備してもよく、リール状に巻回されていないシート状のものを準備してもよい。
[密着工程]
次に、転写対象物16の転写対象面16aに転写板10の固体被膜14を密着させる(工程B)。この工程では、転写対象面16aと固体被膜14との間に1μm以上の間隙が生じないように密着させることが好ましい。すなわち、転写対象面16aと固体被膜14との間隙は、1μm未満となることが好ましく、0.6μm未満となることがより好ましい。転写対象面16aと固体被膜14とを密着させる方法としては特に限定されない。例えば、転写対象物16と転写板10とを物理的に挟み込み、圧力Pを加えてもよく、転写対象物16と転写板10とを重ねた後、転写板10側から高圧の空気を吹き付けることにより圧力Pを加え、転写対象物16と転写板10とを密着させてもよい。
転写対象物16としては、特に限定されず、例えば、ガラス、セラミック、金属等の材質からなるものを挙げることがきる。転写対象物16の形状は、特に限定されず、板状、球状、円柱状、角柱状等を挙げることができる。本実施形態では、転写板10を構成する基材12が可撓性を有する樹脂フィルムで構成されているため、転写対象物面16aの形状に沿わせて転写板10を密着することができる。また、本実施形態では、転写板10を構成する基材12が可撓性を有する樹脂フィルムで構成されているため、後述する転写工程の際に、転写板10と転写対象面16aとが溶着していたとしても、転写板10を転写対象面16aから取り除く際には、転写板10を撓ませ、溶着の境界から順次剥離することができる。そのため、剥離の際に、転写対象物面16に局所的に大きな剥離力がかかることを抑制できる。従って、本実施形態においては、転写対象物16として、薄くて脆いものであっても採用することもできる。このような転写対象物16としては、厚さの薄いガラスを挙げることができ、具体的には、好ましくは、厚さ0.8mm以下、より好ましくは、厚さ0.3mm以下、さらに好ましくは、厚さ0.1mm以下のガラスを挙げることができる。すなわち、本実施形態の構成を採用すれば、転写対象物の厚さが0.8mmの場合はもちろん、厚さ0.3mmや、厚さ0.1mm程度の薄くて脆いガラスであっても、破損させることなくマーキングを行なうことが可能となる。前記ガラスとしては、例えば、サファイアガラス、強化ガラス等を挙げることができる。
[転写工程]
次に、密着状態を保った状態で、基材12側からレーザ光18を照射し、固体被膜14を転写対象面16a上に転写する(工程C)。具体的には、例えば、転写板10の上方に配置されたYAGレーザマーカ装置20を用い、固体被膜14から転写対象物面16aへの転写物の転写が所望の形状となるように、レーザ光18を基材12側から固体被膜14に照射する。これにより、基材12を透過したレーザ光18により固体被膜14を加熱し、これを瞬時に蒸発乃至昇華させることにより、いわゆるレーザスパッタリングの原理で、転写板10上の固体被膜14を転写対象物16の転写対象物面16aに所望の形状で転写させることができる。
レーザ光の照射条件としては、固体被膜14の厚さや固体被膜14の材料に応じて選択することができる。このような照射条件としては、レーザ光強度1.2〜100kW/cmが好ましく、15〜40kW/cmがより好ましい。発振モードとしては、連続波、パルス波いずれも用いることができるが、加熱されることを抑制できる観点から、パルス波が好ましい。パルス波を用いる場合、繰り返し周波数としては、0.5〜100kHzが好ましく、2kHz〜30kHzがより好ましい。また、走査速度としては、800〜2000mm/秒が好ましく、1000〜1500mm/秒がより好ましい。また、パルス幅としては、1〜1000nsecが好ましく、1〜100nsecがより好ましく、6〜30nsecがさらに好ましい。前記範囲内の照射条件とすることにより、より鮮明にマーキングでき且つ過度の溶着を抑制することが可能となる。
[転写板取除工程]
最後に、転写板10を転写対象面16aから取り除く(工程D)。本実施形態では、転写板10を構成する基材12として、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたものを用いている。従って、転写の際に、転写板10と転写対象面16aとが溶着していたとしても、転写板10を転写対象面16aから取り除く際には、転写板10を撓ませ、溶着の境界から順次剥離する(図3、図4参照)。
以上、本実施形態に係る転写方法によれば、転写対象面16aと転写板10とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となる。
次に、本実施形態に係る転写装置について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る転写装置を模式的に示す断面図である。
転写装置40は、転写板10が巻回されたリール状物11から転写板10を連続的に供給する供給リール42、供給リール42から供給され、転写に使用された転写板10を回収する回収リール44、供給リール42から供給された転写板10を基材12側から転写対象物16の転写対象面16aに加圧する加圧用ガラス46、供給リール42から供給され回収リール44に回収される転写板10をガイドするガイド用リール48、加圧用ガラス46とガイド用リール48とを支持するフローティング機構50、YAGレーザマーカ装置20、及び、図示しない制御部を備える。なお、加圧用ガラス46は、本発明の加圧部に相当する。また、YAGレーザマーカ装置20は、本発明のレーザ光照射部に相当する。
以下転写装置40の使用方法、動作について説明する。まず、転写対象物16を所定位置にセットする。この際、保持板として真空吸着盤を使用し、転写対象物16を吸着保持してもよい。転写対象物16が所定位置にセットされた後、制御部は、操作者から入力された入力信号等に基づいて、供給リール42及び回収リール44を駆動し、リール状物11から転写板10を転写対象物16の上方に供給する。
次に、制御部は、フローティング機構50を転写対象物16に近づく方向(図5中では下側)に移動させ、加圧用ガラス46を介して転写板10を押圧する(図6参照)。これにより、転写板10を基材12側から転写対象物16の転写対象面16aに加圧して固体被膜14を転写対象面16aに密着させる。この際、フローティング機構50の移動に伴って、ガイド用リール48も転写対象物16に近づく方向に移動させ、加圧用ガラス46の両側部分に位置する転写板10を転写対象物面16aに接触させてもよい。
次に、制御部は、密着状態を保った状態で、YAGレーザマーカ装置20を制御し、加圧用ガラス46を介して、転写板10の基材12側からレーザ光18を照射させ、固体被膜14を転写対象面16a上に転写させる。なお、加圧用ガラス46としては、レーザ光を透過させる性質を有するものを使用することが好ましい。
その後、制御部は、フローティング機構50を転写対象物16から離れる方向(図6ででは上側)に移動させ、加圧用ガラス46を転写対象物16から遠ざける。これにより、転写板10は、転写対象物16から遠ざけられる。この際、ガイド用リール48も転写対象物面16aから遠ざけられる。その結果、転写板10と転写対象物16との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離される。すなわち、加圧用ガラス46はフローティング機構50により支持されていることから、加圧用ガラス46が上側に移動されると、加圧用ガラス46は、転写板10とともに剥離力の低い箇所から剥離されるように姿勢を変える(図7参照)。この状態で、転写板10が転写対象物面16aから順次剥離される。以上により、転写板10が、転写対象面16aから取り除かれる。
以上、本実施形態に係る転写装置40によれば、転写対象物面16aと転写板10とを密着させた状態でレーザ光照射による転写を行なっても、両者を剥離可能とすることができ、転写の精度をより向上させることが可能となる。
上述した実施形態では、加圧用ガラス46を用いて転写板10を転写対象面16aに加圧し、加圧用ガラス46を透過させるようにしてレーザ光を転写板10に照射する場合について説明した。しかしながら、本発明においてはこの例に限定されず、加圧部を、レーザ光が通過する部分の外周側のみを加圧できる形態(例えば、中空の四角柱)とし、転写の際には、レーザ光を転写板に直接照射することとしてもよい。
また、上述した実施形態では、加圧用ガラス46を用いて転写板10を転写対象面16aに加圧する場合について説明したが、本発明の加圧部は転写板を転写対象面に加圧できれば、この例に限定されず、例えば、空気吹き付け機を用いて高圧の空気を吹き付け、転写板を転写対象面に加圧してもよい。
また、上述した実施形態では、加圧用ガラス46(加圧部)がフローティング機構50に支持されている場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、フローティング機構を用いなくてもよい。転写板を構成する基材が可撓性を有する樹脂フィルムで構成されていれば、フローティング機構を用いなくとも、転写板と転写対象物との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離され得るからである。
また、上述した実施形態では、加圧用ガラス46(加圧部)がフローティング機構50に支持されている場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、転写対象物側(例えば、転写対象物を保持する保持板)がフローティング機構に支持されていてもよい。このような形態であっても、加圧部がフローティング機構により支持されている場合と同様、転写板と転写対象物との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離されるようになるからである。
また、上述した実施形態では、波長1.06μmのYAGレーザ光を用いる場合について説明したが、本発明では、本発明の趣旨に反しない範囲において他のレーザを用いてもよい。この場合、レーザ光の波長に応じて転写板を構成する基材や固体被膜の材料を選択すればよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
10 転写板
11 リール状物
12 基材
14 固体被膜
16 転写対象物
16a 転写対象面
18 レーザ光
20 YAGレーザマーカ装置
40転写装置
42 供給リール
44 回収リール
46 加圧用ガラス
48 ガイド用リール
50 フローティング機構

Claims (6)

  1. レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有する転写板が巻回されたリール状物から前記転写板を連続的に供給する供給リールと、
    前記供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧する加圧部と、
    レーザ光照射部と、
    前記供給リールから供給され、転写に使用された転写板を回収する回収リールと、
    制御部とを備え、
    前記制御部は、前記供給リールから供給された転写板を基材側から転写対象物の転写対象面に加圧して固体被膜を前記転写対象面に密着させ、密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写させるように前記加圧部と前記レーザ光照射部とを制御する第1の処理、及び、前記第1の処理の後、前記転写板を前記転写対象物から遠ざけて、前記転写板を前記転写対象面から取り除く第2の処理とを行なうことを特徴とする転写装置。
  2. 前記加圧部を少なくとも支持するフローティング機構を備え、
    前記制御部が行なう前記第2の処理は、前記加圧部を前記転写対象物から遠ざけることにより前記転写板を前記転写対象物から遠ざけて、前記転写板と前記転写対象物との密着面のうち剥離力の低い箇所から順次剥離させることにより前記転写板を前記転写対象面から取り除く処理であることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
  3. 前記転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転写装置。
  4. レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有する転写板を準備する工程と、
    転写対象物の転写対象面に前記転写板の前記固体被膜を密着させる工程と、
    密着状態を保った状態で、前記基材側からレーザ光を照射し、前記固体被膜を前記転写対象面上に転写する工程と、
    前記転写板を転写対象面から取り除く工程と
    を有することを特徴とする転写方法。
  5. 前記転写対象物がガラスであり、厚さが0.3mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の転写方法。
  6. 請求項4又は5に記載の転写方法に使用される転写板であって、
    レーザ光を透過させる性質を有し且つ可撓性を有する樹脂フィルムで構成された基材と、前記基材上に設けられた固体被膜とを有することを特徴とする転写板。
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