JP4081355B2 - 積層体の製造方法及び積層体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層体の製造方法及び積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、熱可塑性樹脂等の同種の構成材料からなるフィルム(膜状の層)を2以上重ねて接着(接合)し積層体を製造する際に採用される方法としては、従来から、例えば、熱融着法等のいわゆる融着法がある。
【0003】
その中でも、レーザを用いるレーザ融着法は、融着させるべきフィルム同士を迅速に融着させることが可能であること、フィルム同士の接触面のうち融着に使用される領域が比較的小さいこと等の利点を有するため、様々な分野での応用が期待されておりその技術開発が活発に行われている(例えば、日本接着協会編,「接着ハンドブック」参照)。
【0004】
このレーザ融着法は、レーザ光を照射することにより融着させるべきフィルム同士の接触面にレーザ光の微小な照射領域(以下、「レーザスポット」という)を形成し、この部分で光吸収によるフィルムの構成材料の発熱を起させ、更に融解させることにより融着を行う方法である。なお、このレーザ融着法を用いる場合、短時間のレーザ照射で高い融着強度を得る観点から、融着させるべきフィルムの少なくとも一方に光吸収剤を添加しておく場合がある。
【0005】
【非特許文献1】
日本接着協会編,「接着ハンドブック」,第3版,日刊工業株式会社,1996年6月28日発行,p.831−847
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上記従来のレーザ融着法では、融着させるべき隣接する2つのフィルム(積層体を構成する層)のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下である場合に迅速かつ充分な接合強度で融着することができず未だ不充分であるということを見出した。
【0007】
すなわち、上記従来のレーザ融着法では、フィルムの構成材料をレーザスポットの部分で融解させるために必要な比較的高いエネルギーを有するレーザ光を使用する。そのため、上述のような厚さが0.1mm以下の薄いフィルムを用いる場合には、フィルムの熱容量が小さいのでレーザスポットの部分の温度が融着に必要な値よりも大幅に上昇してしまうという問題があった。このような温度上昇により、レーザスポットの部分においてフィルムの構成材料の流動、変形、変質、割れ、燃焼又は昇華が発生するため、融着ムラが発生し、充分な強度で融着することが困難となる。
【0008】
また、厚さが0.1mm以下の薄いフィルムを用いる場合、従来のレーザ融着法では、レーザ光による発熱で溶融する接触面の領域がレーザスポットの形成領域よりも外側に拡大し易く、フィルム同士の接触面のうち融着に使用される領域が所望の大きさよりも大きくなる場合が多かった。このとき、フィルム同士の接触面のうち融着した領域と未融着の領域との物性(例えば、光学特性等)が大きく異なる場合、得られる積層体の用途によっては、積層体の融着した領域がその用途に使用できず、積層体を有効に利用できないという問題が発生する場合があった。
【0009】
更に、上述の迅速かつ充分な接合強度で融着することができないという問題は、融着させるべきフィルム同士が同種の構成材料からなるフィルム同士(例えば、樹脂材料からなる薄膜同士、金属材料からなる薄膜同士、又は、金属酸化物等の誘電体からなる薄膜同士等)の場合はもちろん、異種の構成材料からなるフィルム同士の場合には特に顕著に発生していた。なお、「同種の構成材料からなるフィルム(積層体を構成する層)」とは、レーザ光の照射により融解した際に、互いに融着できる化学組成を有する材料から構成されたフィルム(積層体を構成する層)を示す。
【0010】
また、厚さが0.1mm以下の薄いフィルムを用いる場合、従来のレーザ融着法において、レーザ光の照射条件(例えば、出力、照射時間等)のみを最適化することで、迅速な融着と充分な融着強度を確保しつつ、上述したレーザスポットの部分におけるフィルムの構成材料の流動、変形、変質、割れ、燃焼又は昇華の発生を充分に防止することを実現することは非常に困難であった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、2以上の層から構成される積層体において、互いに隣り合うように配置された融着させるべき2つの層のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下である場合であっても、レーザ光を用いて迅速かつ充分な融着強度で融着させることが容易にできる積層体の製造方法及びこれにより得られる積層体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、融着させる2つのフィルム(積層体を構成する層)のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下である場合にレーザ融着法を採用することは上述の問題が発生するため困難であるという当業者の一般的な認識にもかかわらず、レーザ光を照射する際に2つのフィルムの接触面に形成されるレーザスポットの形状を下記式(1)で表される条件を満たすように調節することにより、レーザスポットをレーザ光照射中に接触面内で移動させる際のスピードをコントロールさせるのみで、迅速かつ充分な融着強度で2つのフィルムを融着させることが容易に可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、基材と、基材の一方の面上に形成される厚さが0.1mm以下の第1の層と、第1の層の基材に接触している側と反対側の面上に配置されレーザ光の照射により第1の層に融着される第2の層とを有する積層体の製造方法であって、
基材として、第1の層及び第2の層の何れよりもレーザ光に対する光透過率が高いものを使用し、
第1の層及び第2の層のうちの少なくとも一方としてレーザ光に対する光吸収性を有するものを使用し、
基材の一方の面上に形成された第1の層の面上に第2の層を配置する配置工程と、
第1の層と第2の層との接触面に向けて基材の側又は第2の層の側からレーザ光を照射するとともに、接触面に形成されるレーザスポットの位置を移動させることにより第2の層を第1の層に融着する融着工程と、
を有しており、かつ、
融着工程において、接触面に形成されるレーザスポットの形状を下記式(1)で表される条件を満たすように調節すること、
を特徴とする積層体の製造方法を提供する。
H>V・・・(1)
式(1)中、Hはレーザスポットの移動方向に平行な方向における該レーザスポットの最大幅を示し、Vは移動方向に垂直な方向におけるレーザスポットの最大幅を示す。
【0014】
なお、ここで、「レーザ光に対する光吸収性を有する」とは次のことを表わす。光透過性の高い基材のレーザ光に対する光吸収係数をαs、第1の層のレーザ光に対する光吸収係数をα1、第2の層のレーザ光に対する光吸収係数をα2としたとき、「第1の層がレーザ光に対する光吸収性を有する」とはαs<α1であることを表わし、「第2の層がレーザ光に対する光吸収性を有するとは」αs<α2であることを表わす。
【0015】
本発明の積層体の製造方法によれば、2以上の層から構成される積層体において、互いに隣り合うように配置された融着させるべき2つの層のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下である場合であっても、レーザ光を用いて迅速かつ充分な融着強度で融着させることが容易にできる。
【0016】
しかも、レーザ光を用いるため、第1の層及び第2の層が、互いに線膨張係数が大きく異なる構成材料からなる場合であっても迅速かつ充分な融着強度で融着させることができる。また、レーザ光を用いるため、高い融着位置精度で第1の層及び第2の層を融着させることができる。更に、レーザスポットを移動させるため、融着させるべき2つの層に対する熱負荷を充分に低くして熱融着でき、融着ムラの発生も充分に抑制できる。
【0017】
上記の効果が得られることについての詳細なメカニズムについては明確に解明されていないが、本発明者らは以下のように考えている。レーザ融着法により良好な融着状態(融着ムラが無く充分な融着強度が得られ、融着に使用される領域が充分に小さい状態)で融着させることが可能となるためには、先に延べたレーザスポット部分におけるフィルムの温度が、適度な温度範囲にあり、フィルムの温度がその適度の温度範囲内にある時間が適度な時間範囲にあることが必要であると考えられる。
【0018】
すなわち、機械的強度が比較的低いため単独では形成しにくく、例えば、支持体となる基材上に形成しなければならないような厚さが0.1mm以下である薄いフィルム(積層体を構成する第1の層)を他のフィルム(積層体を構成する第2の層)とレーザ融着法により融着させる場合、従来の方法においては、レーザスポットの中心付近のフィルム温度が適度な温度範囲を大きく超えたり、或いは、フィルムの温度が適度な温度範囲内にある時間が適度な時間範囲より短かったりするため、先に延べたレーザスポットの部分におけるフィルムの構成材料の流動、変形、変質、割れ、燃焼又は昇華の発生を充分に防止しつつ良好な融着状態で融着させることが可能なレーザ照射条件の許容範囲(出力の許容範囲、移動速度の許容範囲)は非常に狭くシビアであると考えられる。
【0019】
そのため、照射条件や温度条件が僅かでもそれぞれの許容範囲から外れた場合には、構成材料の流動、変形、変質、割れ、燃焼又は昇華が発生し、先に述べた問題が起るものと考えられる。
【0020】
これに対して本発明者らは、本発明においては、レーザ光を照射する際に2つのフィルムの接触面に形成されるレーザスポットの形状を式(1)で表される条件を満たすように調節することにより、レーザスポット内のエネルギー密度(レーザの単位面積当りの出力パワー)を適度に低下させることができ、レーザスポットの中心付近のフィルム温度が適度な温度範囲を大きく超えることが無くなるとともに、フィルムの温度が適度な温度範囲内にある時間が適度な時間範囲にあるようなり、結果として、上述したレーザ照射条件の許容範囲が格段に広くなると考えられる。
【0021】
その結果、レーザ光照射中に、レーザスポットを接触面内で移動させる際のスピードを調節して最適化するのみで、迅速かつ充分な融着強度で2つのフィルムを融着させることが容易に可能となると考えている。一方、従来のレーザ融着法の場合には、レーザスポットの形状を下記式(1)で表される条件を満たすように調節しないため、レーザスポットを接触面内で移動させる際のスピードを調節しても、良好な融着状態をとすることができない。
【0022】
ここで、本発明において、HがV以下であると上述の作用効果を得ることができなくなる。また、本発明においては、上記の作用効果をより確実に得る観点から、レーザスポットの形状は下記式(2)を満たすように調節することが好ましい。更に、上記と同様の観点から、式(1)又は式(2)中のVは式(3)を満たしていることがより好ましい。なお、式(3)中の「mm」は長さの単位「ミリメートル」を示す。
H≧5V・・・(2)
V≦1mm・・・(3)
【0023】
また、本発明において、基材として、第1の層及び第2の層の何れよりもレーザ光に対する光透過率が低いものを使用すると、レーザ光を第1の層と第2の層との間の接触面上に効率よく集めることが困難となる。更に、本発明において、第1の層及び第2の層の何れにもレーザ光に対する光吸収性を有しないものを使用すると、接触面近傍の第1の層及び第2の層の何れもレーザ光の吸収による発熱が起こらないため、レーザ融着に必要な適度な温度範囲に到達しない。
【0024】
更に、本発明は、先に述べた本発明の積層体の製造方法により得られる積層体を提供する。
【0025】
本発明の積層体は、先に述べた本発明の積層体の製造方法により製造されているため、積層体を構成する2以上の層の中に、厚さが0.1mm以下である第1の層を含まれていても、各層は融着ムラなく高い融着位置精度で互いに接合(接着)されている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の積層体の製造方法及び積層体の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明の積層体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。図1に示す積層体1は、基材30と、基材30の一方の面上に形成される厚さが0.1mm以下の第1の層10と、第1の層10の基材30に接触している側と反対側の面F1上に配置されレーザ光L1の照射により第1の層10に融着される第2の層20とから構成されている。なお、面F1は第1の層10と第2の層20との接触面(以下、「接触面F1」という)となる。
【0028】
基材30は、第1の層10及び第2の層20の何れよりもレーザ光L1に対する光透過率が高いものであれば、特にその構成材料は限定されない。例えば、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いてもよい。具体的には透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが透明基板材料として挙げられる。なお、ガラスを構成材料とする基板以外にも、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などの透明基板を用いても良い。
【0029】
第1の層10は、厚さが0.1mm以下であれば特にその構成材料は限定されない。ただし、第1の層10及び後述の第2の層20のうちの少なくとも一方にレーザ光L1に対する光吸収性を有するものが使用されていることが必要であり、この条件を満たすように第1の層10及び後述の第2の層20の構成材料が選択される。
【0030】
この第1の層10としては、例えば、透明導電膜などが挙げられる。また、第1の層10は、酸化物半導体粒子を構成材料とする薄膜であってもよい。酸化物半導体としては、例えば、TiO2,ZnO,SnO2,Nb25,In23,WO3,ZrO2,LaO,Cu2O,Cr23,NiO等が挙げられる。更に、第1の層10は、Ta23,SrTiO3,BaTiO3,MgO,Al23,SiO2等の絶縁性酸化物を構成材料とする薄膜であってもよい。また、第1の層10は、ReO3,(La,Sr)MnO3,VO2等の金属性酸化物を構成材料とする薄膜であってもよい。更に、第1の層10は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エチレン/メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂等の樹脂等からなる薄膜であってもよい。また、第1の層10は、例えば、ステンレス、銅、真鍮、クロム、ニッケル、ニクロム、亜鉛、錫、シリコン、炭化シリコン、窒化ゲルマニウム等の金属又は半導体を構成材料とする薄膜であってもよい。
【0031】
基材30上に第1の層10を形成した構成の例としては、例えば、液晶パネル等に用いられる透明電極が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)、等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けた構成でもよい。
【0032】
第2の層20の構成材料も特に制限されず、例えば、第1の層10の説明において挙げられた材料を用いてもよい。ただし、本実施形態の場合、第2の層20は第1の層10と異なり、基材30のような支持体上に形成しなくても単独で形成することのできる機械的強度を有しているものとする。そのため、第2の層20は、上記の機械的強度を満たすためにその構成材料(或いは化学組成)に応じた厚さを有している。
【0033】
ここで、充分な融着強度をより確実に得る観点から、第1の層10と第2の層20とが互いに異なる構成材料から構成されている場合には、第1の層10及び第2の層20のうちの少なくとも一方の構成材料が熱可塑性を有する材料であることが好ましい。
【0034】
更に同様の観点から、上記の場合、接触面F1となる第1の層10の表面或いはその近傍に、第2の層20の構成材料に対する親和性を有する元素、化合物、官能基を導入することが好ましい。同様に、接触面F1となる第2の層20の表面或いはその近傍には、第1の層10の構成材料に対する親和性を有する元素、化合物、官能基を導入することが好ましい。例えば、第1の層10が金属或いは金属酸化物(例えば、酸化チタン等)等の無機材料からなる層であり第2の層20がポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる層である場合、第2の層20の第1の層10に接する側の表面は、表面修飾(表面改質)処理等により無機材料に対する親和性の高い官能基(例えば、カルボニル基等)が導入(結合)されていることがより好ましい。
【0035】
また、充分な融着強度をより確実に得る観点から、第1の層10と第2の層20とが同種の構成材料からなる場合にも、それぞれの構成材料が熱可塑性を有する材料であることが好ましい。
【0036】
次に、図1〜図4を参照しながら本発明の積層体の製造方法の好適な一実施形態を図1に示した積層体1を製造する場合に適用した場合について説明する。ここで、図2は、図1に示した積層体1の第1の層10と第2の層20との接触面F1をその法線方向に沿って基板30の側から見た場合の正面図である。また、図3は、図2に示した接触面F1の外縁部の部分領域Rの模式拡大図である。更に、図4(a)及び図4(b)はレーザスポット内のレーザ光のエネルギー密度分布の例を、レーザスポットの中心P0におけるエネルギー密度(最大値)を1として相対的に示した場合のグラフである。
【0037】
基材30上に第1の層10を形成する方法は、特に限定されず、公知の薄膜製造技術により形成することができる。例えば、ガラス基板等の基材30上に先に述べたフッ素ドープSnO2等の透明導電膜からなる第1の層10をスプレーコートする等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。例えば、この他にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法、反応蒸着法CVD等の化学蒸着法等の公知の薄膜製造技術を用いて所望の化学組成の第1の層10を形成することができる。
【0038】
ただし、先に述べたように、例えば、第1の層10を熱可塑性樹脂からなる層とし、第2の層20を無機材料からなる層として構成する場合には、第1の層10の第2の層20に接する側の表面は、表面修飾(表面改質)処理等により無機材料に対する親和性の高い官能基(例えば、カルボニル基等)を導入する処理を行うことが好ましい。この表面修飾(表面改質)処理も特に限定されず公知の技術を採用すればよい。
【0039】
次に、先に述べた機械的強度の条件を満たす厚さを有し、所望の化学組成を有する薄膜状の第2の層20を別途単独で作製する。第2の層20を形成する方法も、使用する構成材料に応じて公知の薄膜製造技術により作製することができる。ただし、先に述べたように、例えば、第1の層10を無機材料からなる層とし、第2の層20を熱可塑性樹脂からなる層として構成する場合には、第2の層20の第1の層10に接する側の表面は、表面修飾(表面改質)処理等により無機材料に対する親和性の高い官能基(例えば、カルボニル基等)を導入する処理を行うことが好ましい。この官能基を導入する処理も特に限定されず公知の技術を採用すればよい。
【0040】
次に、図1に示すように第1の層10の面上の所定の位置に第2の層20を配置する(配置工程)。次に、図1に示すように、第1の層10と第2の層20との接触面F1に向けて基材30の側からレーザ光L1を照射するとともに、接触面F1に形成されるレーザスポットLS(図2及び図3参照)の位置を移動させることにより第2の層20を第1の層10に融着する(融着工程)。
【0041】
例えば、図2及び図3に示すように、接触面F1の外縁部の予め決定された融着領域A1に沿う方向DLSにレーザスポットLSの位置を移動させてゆくことにより、第1の層10と第2の層20とを融着させる。なお、図2においては、融着領域A1を一次元的な「線」としてに表現している。また、図2に示すように、この融着領域A1は、レーザスポットLSを移動させる際に、レーザ光を断続的に照射するなどして破線状としてもよく、レーザ光を連続的に照射するなどして実線状としてもよい。例えば、接触面F1の内部を密封する必要がある場合には、実線状とする。
【0042】
また、この融着工程において使用するレーザは、レーザスポットLSの形状を後述する式(1)の条件を満たす用に調節可能なものであれば特に限定されず、例えば、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ、色素レーザ等の各種レーザ使用することができる。
【0043】
更に、この融着工程においては、融着ムラの発生を防止しつつ第1の層10と第2の層20とを迅速かつ充分な融着強度で融着させるために、接触面F1に形成するレーザスポットLSの形状を下記式(1)で表される条件、好ましくは、下記式(2)で表される条件を満たすように調節する。更により好ましくは、レーザスポットLSの形状を、下記式(1)及び下記式(3)で表される条件を同時に満たすか、又は、下記式(2)及び下記式(3)で表される条件を同時に満たすように調節する。
【0044】
H>V・・・(1)
H≧5V・・・(2)
V≦1mm ・・・(3)
【0045】
ここで、図3に示すように、式(1)〜式(3)中、HはレーザスポットLSの移動方向DLSに平行な方向における該レーザスポットLSの最大幅を示し、Vは移動方向DLSに垂直な方向におけるレーザスポットの最大幅を示す。また、式(3)中の「mm」は長さの単位「ミリメートル」を示す。
【0046】
レーザスポットLSの形状を上述の条件を満たすように調節することにより、レーザ光照射中に、レーザスポットを接触面内で移動させる際のスピードを調節して最適化するのみで、迅速かつ充分な融着強度で第1の層10及び第2の層20を融着させることが容易に可能となる。
【0047】
式(1)の条件を満たす形状(好ましくは好ましくは式(2)及び式(3)を同時に満たす形状)のレーザスポットLSを形成する方法としては、例えば、以下のような方法がある。すなわち、▲1▼ロッドレンズ、シリンドリカルレンズ、フライアイレンズ、等を用いた屈折光学系を用いた方法、▲2▼複数の平面鏡、2軸凹面鏡、2軸凸面鏡、等を用いた反射光学系を用いた方法、▲3▼複数のマルチモードファイバーを束ねたファイバー束、リジッド型導波路、等の導波路光学系を用いてレーザの入力部と出力部の導波路の断面形状を変える方法、▲4▼光学マスク、等を用いて不必要なレーザ光部分を取り除いて形状を規定する方法、▲5▼スタック型半導体レーザ、スラブ型レーザ、等のレーザ装置からの出力光が式(1)の条件を満たすレーザ装置を用いる方法。等の方法が挙げられる。また、▲1▼〜▲5▼の方法のちの2以上を任意に組み合せた方法でもよい。
【0048】
ここで、接触面F1に形成するレーザスポットLSの形状は、式(1)、好ましくは式(2)及び式(3)を同時に満たすものであれば特に限定されず、例えば、図3に示したような略楕円形でもよく、例えば、略長方形であってもよい。
【0049】
また、この融着工程において、レーザスポットLSの位置を移動させる場合の手法としては、(i)レーザスポットLSに対して接触面F1を相対的に移動させる操作、(ii)接触面F1に対してレーザスポットを相対的に移動させる操作、又は(i)及び(ii)の操作を同時に行う操作の何れかにより行うことが好ましい。
【0050】
より具体的には(i)の操作としては、例えば、以下の操作が挙げられる。すなわち、積層体1を第2の層20の側を下方にして移動ステージ(図示せず)上に載置し、更にレーザ光の光軸が接触面F1の法線と略平行となるようにレーザの光源を積層体1の基材30の上方に配置する。そして、レーザの光源を固定し、接触面F1とレーザの光源との間の距離を一定として移動ステージを予め決められたパターンで動かす。
【0051】
また、(ii)の操作としては、例えば、以下の操作が挙げられる。すなわち、積層体1を固定し、接触面F1とレーザの光源との間の距離を一定としてレーザの光源を予め決められたパターンで動かす。
【0052】
また、融着工程において、レーザ光L1の照射中に、第1の層10及び第2の層20のうちの少なくとも一方の側から接触面F1を押圧することが好ましい。このようにすれば、第1の層10及び第2の層20は外側から接触面F1の方向に向けてそれぞれ押圧されることになるため、第1の層10又は第2の層20の融着領域A1における変形をより確実に防止するとともに充分な融着強度をより確実に得ることができる。
【0053】
更に、融着工程において使用するレーザ光L1が連続光であることが好ましい。これにより、パルス光とする場合に比較してレーザスポットLS内へのレーザ光のエネルギー流入が時間軸に対して一定となるので、レーザスポットを接触面F1内で移動させる際のスピードの調節がより容易になる。
【0054】
更に、レーザ光のエネルギー密度はレーザスポットLS内で均一であることが好ましい。より詳しくは、図3に示すように、レーザスポットLSの移動方向DLSに平行な直線であってレーザスポットLSの中心P0を通る直線と、レーザスポットLSの外周との2つの交点(例えば、エネルギー密度Iが(1/e2)となる点)をそれぞれP1及びP2とし、これらP1、P2及びP0を通る直線の方向rに沿ってみた場合のレーザスポットLS内のエネルギー密度Iのプロフィールは、図4(a)に示す中心P0で極大となるいわゆるガウス型の形状よりも、図4(b)に示す矩形波状であることが好ましい。すなわち、エネルギー密度のプロフィールが上記中心P0を通る直線上の任意の点で中心P0での値と等しく均一となることが好ましい。
【0055】
また、図3に示すように、レーザスポットLSの移動方向DLSに垂直な直線であってレーザスポットLSの中心P0を通る直線と、レーザスポットLSの外周との2つの交点{例えば、エネルギー密度Iが(1/e2)となる点}をそれぞれP3及びP4とし、これらP1、P2及びP0を通る直線の方向rに沿ってみたに場合のレーザスポットLS内のエネルギー密度Iのプロフィール(図示せず)についても上記の場合と同様であることが好ましい。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記の実施形態においては、接触面F1に照射するレーザ光L1を基材30の側から入射させる場合について説明したが、本発明の積層体の製造方法方法においては、上記以外に第2の層20の側からレーザ光L1を基材30の側から入射させてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態においては、基材30上に配置される層として、第1の層10と第2の層20を有する構成の積層体1について説明したが本発明の積層体の構成は、2以上の層を有し、かつ、互いに隣り合うように配置された融着させるべき2つの層のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下であるものであれば特に限定されるものではない。従って、例えば、図1において、第1の層10と第2の層20との間に第1の層と同様の薄い層(別の第1の層)を配置する構成としてもよい。更には、例えば、第1の層10及び第2の層20をそれぞれ複数有する構成としてもよい。ただし、このような第1の層10及び第2の層20をそれぞれ複数有する構成の積層体を製造する場合には、第1の層と第2の層との接触面の数と等しい回数繰り返す。
【0059】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の積層体の製造方法及び積層体について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した積層体1と同様の構成を有する積層体を作製した。
【0061】
先ず、互いに対向する矩形状の上面及び下面を有する透明ガラス基板(上面と下面との間の厚さ:4mm,上面及び下面の大きさ:100mm×100mm)の上面上にこれと同じ大きさを有するフッ素ドープ酸化スズ透明導電膜(厚さ:約1μm)が形成されている光学部材(日本板硝子社製)を準備した。また、表面にエチレンビニルアセテートを導入したポリエチレンフィルム(厚さ:約90μm,大きさ:100mm×100mm)を準備した。
【0062】
なお、上記の透明ガラス基板及びポリエチレンフィルムはともに波長が800〜940nmのレーザ光に対して光吸収性を示さないもの(波長が800〜940nmのレーザ光に対する光吸収率:約2%以下)を用いた。また、フッ素ドープ酸化スズ透明導電膜は、波長が800〜940nmのレーザ光に対して光吸収性を示すもの(波長が800〜940nmのレーザ光に対する光吸収率が約10〜12%)を用いた。
【0063】
次に、上記光学部材の透明導電膜上にポリエチレンフィルムを配置させた(配置工程)。次に、透明導電膜とポリエチレンフィルムとを以下の手順で融着させた(融着工程)。
【0064】
先ず、透明ガラス基板の側とポリエチレンフィルムの側の両側から透明導電膜とポリエチレンフィルムとの接触面を押圧(圧力:約1×104N/m2)した。そして、接触面を押圧した状態で、以下の条件の下で接触面に対して透明ガラス基板の側からレーザ光を照射した。
【0065】
すなわち、連続光のレーザ光(波長:800〜940nm,出力パワー:190W)を用い、透明導電膜とポリエチレンフィルムとの接触面に形成するレーザスポットの形状を略長方形(H=4mm,V=0.6mm)に調節した。また、レーザスポット内のレーザ光のエネルギー密度はほぼ均一となるようにした。そして、ガラス透明基板を固定し、レーザ光の光源を移動させることにより接触面上でレーザスポットを移動させることにより透明導電膜とポリエチレンフィルムとを融着させ、積層体を完成させた。なお、レーザスポットは、略長方形状の接触面の外周縁から約10mm内側の部分を、接触面と相似の略長方形を描くようにして一定速度(約250mm/sec)で移動させた。
【0066】
[評価試験1]
実施例1の積層体を、以下の外観評価試験と剥離強度測定試験により評価した。先ず、外観評価試験として、目視観察と顕微鏡観察をおこなうことにより、積層体の接触面のレーザ融着に使用された融着部位(図2における融着領域A1)の状態を評価した。なお、この目視観察と顕微鏡観察は、実施例1の積層体を分解して行った。その結果、実施例1の積層体の融着部位には融着ムラ(ポリエチレンフィルムの焦げ、穴の発生、気泡の発生、及び、部分的な捲れ、並びに、透明導電膜の割れ目の発生、及び、構成材料の昇華等による膜の削れの発生)が無く、レーザスポットの照射された部分は全て均一に融着されていたことが確認された。融着部位の幅(図2における融着領域A1のVに平行な方向の幅)は全ての領域において均一で、その値は約0.55mmであった。
【0067】
次に、剥離強度測定試験により、実施例1の積層体について透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間に働く剥離強度を測定し、透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間の融着強度の度合いを評価した。
【0068】
なお、「透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間に働く剥離強度」とは、以下に示すJIS Z 0237-1991 8.3.1(1) (1.2) (a)に規定された定速緊張形引張試験機を用いる180度引き剥がし法に基本的に従う測定方法により測定された透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間に働く剥離強度(融着強度)を示す。なお、引張り速度は20mm/minとした。
【0069】
剥離強度測定試験の結果、実施例1の積層体について透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間に働く剥離強度は、約57N/cmであった。なお、ポリエチレンフィルム自体の引張り強度は、約67MPaであった。実際、このポリエチレンフィルム(厚さ90μm)を20mm幅の短冊状にして、引張り強度試験を行うと、幅1cm当たり約60Nの力が加わったときに変形し始め、ほぼこの引張り強度を反映していた。
【0070】
ところで、今回の定速緊張引張試験機を用いたポリエチレンフィルムの剥離強度試験では、試験時にポリエチレンフィルムが伸び始める力よりも小さな力の条件範囲でしか測定できない。そのため、本ポリエチレンフィルムの場合、上記引張り強度試験の結果から、融着部位の幅1cm当たり60N以上をかける必要のある剥離強度は、ポリエチレンフィルム自体が伸びてしまい測定できない。言い換えれば、剥離強度が60N/cmであるということは、本ポリエチレンフィルムが伸び始める限界の力をかけた状態での測定であるため、今回の試験において最大の剥離強度を有していることを表わしている。
【0071】
(実施例2)〜(実施例7)
以下に示す手順により、図1に示した積層体1と同様の構成を有する実施例2〜実施例7の積層体を作製した。
先ず、互いに対向する矩形状の上面及び下面を有する透明ガラス基板(上面と下面との厚さ:1.1mm、上面及び下面の大きさ:100mm×100mm)の上面上にこれと同じ大きさを有する酸化インジウム−酸化スズ(ITO)透明導電膜(厚さ:約0.3μm)が形成されている光学部材を準備した。また、エチレン−メタクリル共重合体のアイオノマー樹脂フィルム(厚さ:200μm)、大きさ:100mm×100mm)を準備した。
【0072】
なお、上記透明ガラス基板は、波長が1100nmのレーザ光に対して光吸収性を示さないもの(波長が1100nmのレーザ光に対する光吸収率:約2%以下)を用いた。また、アイオノマー樹脂フィルムは、波長が1100nmのレーザ光に対して僅かに光吸収性を示すもの(波長が1100nmのレーザ光に対する光吸収率:約2〜4%)、ITO透明導電膜は、波長が1100nmのレーザ光に対して光吸収性を示すもの(波長が1100nmのレーザ光に対する光吸収率:約12〜15%)を用いた。
【0073】
次に、上記光学部材の透明導電膜上にアイオノマー樹脂フィルムを配置させた(配置工程)。次に、透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとを以下の手順で融着させた(融着工程)。
【0074】
先ず、透明ガラス基板の側とアイオノマー樹脂フィルムの側の両面から透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとを接触面を押圧(圧力:約1×104N/m2)した。そして、接触面を押圧した状態で、以下の条件の下で接触面に対して透明ガラス基板の側からレーザ光を照射した。
【0075】
すなわち、連続光のレーザ光(波長:1100nm)を用い、透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの接触面に形成するレーザスポットの形状を略長方形に調節した。なお、このとき実施例2〜実施例7の積層体を形成する際のレーザスポットの形状は、表1に示すH及びVの条件を満たすものとした。更に、各積層体を形成する際のレーザ光の出力パワーは、上述のレーザスポットの形状の違いにより表1に示すように変えた。また、各積層体を形成する際の、それぞれのレーザスポット内のレーザ光のエネルギー密度はほぼ一定となるようにした。
【0076】
そして、ガラス透明基板を固定し、レーザ光の光源を移動させることにより接触面上でレーザスポットを移動させることにより透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとを融着させ、各積層体を完成させた。なお、各積層体を形成する際のレーザスポットは、略長方形状の接触面の外周縁から約10mm内側の部分を、接触面と相似の略長方形を描くようにして一定速度で移動させた。移動速度は、各積層体を形成する際のレーザスポットの形状の違いにより表1に示すように変えた。
【0077】
[評価試験2]
実施例2〜実施例7の積層体を以下の外観評価試験と剥離強度測定試験により評価した。先ず、外観評価試験として、目視試験と顕微鏡観察をおこなうことにより、各積層体の接触面のレーザ融着に使用された融着部位(図2における融着領域A1)の状態を評価した。その結果、実施例2〜実施例7の各積層体の融着部位には融着ムラ(アイオノマー樹脂フィルムの焦げ、穴の発生、気泡の発生、及び、部分的な捲れ、並びに、透明導電膜の割れ目の発生、及び、構成材料の昇華等による膜の削れの発生)が無く、レーザスポットの照射された部分は全て均一に融着されていたことが確認された。融着部位の幅(図2における融着領域A1のVに平行な方向の幅)は、各積層体を形成する際の各条件毎に、全ての領域において均一であった。このときの各積層体の融着部位の幅を表1に示す。
【0078】
次に、剥離強度試験により、実施例2〜実施例7の各積層体について透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの間に働く剥離強度を測定し、透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの間の融着強度の度合いを評価した。なお、「透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの間に働く剥離強度」とは、実施例1に示した、「透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間に働く剥離強度」と同様な剥離強度を示す。なお、引張り速度は20mm/minとした。
【0079】
剥離強度測定試験の結果、実施例2〜実施例7の各積層体について透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの間に働く剥離強度は表1に示すとおりであった。なお、アイオノマー樹脂フィルムの引張り強度は、約30MPaであった。実際、このアイオノマー樹脂フィルム(厚さ200μm)を20mm幅の短冊状にして、引張り強度試験を行うと、幅1cm当たり約60Nの力が加わったときに変形し始め、ほぼこの引張り強度を反映していた。
【0080】
【表1】
Figure 0004081355
【0081】
(比較例1)〜(比較例6)
積層体を形成する際の融着工程において以下に示す従来のレーザ融着法を採用したこと以外は、実施例1と同様の手順により実施例1と同様の構成を有する比較例1〜比較例6の積層体を作製した。すなわち、各積層体を形成する際の融着工程において、レーザ光のレーザスポットの形状を略円形(直径:0.5mm)にしたこと、及び、レーザ光の出力パワーと移動速度とを表2に示すように種々変えたこと以外は全て実施例1の積層体を形成した際と同様の手順で、実施例1の積層体と同様の構成を有する各積層体を作製した。
【0082】
ここでの融着工程は、表2に示す条件の下で、接触面を押圧(圧力:約1×104N/m2)して、透明ガラス基板の側からレーザ光を照射し、透明導電膜とポリエチレンフィルムとを融着させた。
【0083】
[評価試験3]
先に述べた評価試験1と同様の外観評価試験と剥離評価試験により、比較例1〜比較例6の各積層体を評価した。その結果を表2に示す。剥離強度測定試験の結果により得られた剥離強度は最大でも12N/cmであり、実施例1の積層体に比べ比較例1〜比較例6の各積層体は、透明導電膜からポリエチレンフィルムが容易に剥離し易く、充分な融着強度を得ることができないことが確認された。また、移動速度も最大でも10mm/secであり、実施例1の積層体に比べ比較例1〜比較例6の各積層体は、非常に遅い移動速度でしか融着できないことが確認された。
【0084】
【表2】
Figure 0004081355
【0085】
(比較例7)〜(比較例12)
積層体を形成する際の融着工程において以下に示す従来のレーザ融着法を採用したこと以外は、先に述べた実施例2の積層体と同様の手順により実施例2と同様の構成を有する比較例7〜比較例12の各積層体を作製した。
【0086】
すなわち、各積層体を形成する際の融着工程において、レーザ光のレーザスポットの形状を略正方形(H=0.5mm、V=0.5mm)にしたこと、及び、レーザ光の出力パワーと移動速度とを表3に示すように種々変えたこと以外は全て実施例2の積層体を形成した際と同様の手順で、実施例2の積層体と同様の構成を有する各積層体を作製した。
【0087】
ここでの融着工程は、表3に示す条件の下で、接触面を押圧(圧力:約1×104N/m2)して、透明ガラス基板の側からレーザ光を照射し、透明ガラス基板の側からレーザ光を照射し、透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとを融着させた。
【0088】
[評価試験4]
先に述べた評価試験2と同様の外観評価試験と剥離評価試験により、比較例7〜比較例12の各積層体を評価した。その結果を表3に示す。剥離強度測定試験の結果により得られた剥離強度は最大でも25N/cmであり、実施例2〜実施例7の各積層体に比べ比較例7〜比較例12の各積層体は、透明導電膜からアイオノマー樹脂フィルムが容易に剥離し易く、充分な融着強度を得ることができないことが確認された。また、移動速度も最大でも20mm/secであり、実施例2〜実施例7の各積層体に比べ比較例7〜比較例12の各積層体は、非常に遅い移動速度でしか融着できないことが確認された。
【0089】
【表3】
Figure 0004081355
【0090】
また、上述した比較例1〜比較例12の積層体の融着工程における条件を以下のように変更して作製した積層体についても以下のような問題が発生することが確認された。すなわち、上記の各積層体を製造する際の、各レーザスポットの直径のみの条件、正方形の一辺のみの条件を先に述べた各々の値から縮小させた場合、レーザスポットの移動速度のみの条件を上記の値から低下させた場合、及び、レーザ光の出力パワーのみの条件を上記の値から増大させた場合には、ポリエチレンフィルム又はアイオノマー樹脂フィルムの燃焼や炭化の発生が観測された。
【0091】
また、レーザスポットの移動速度を上記の値から増大させ、かつ、レーザ光の出力を上記の値から増大させた場合には、透明導電膜と、ポリエチレンフィルム又はアイオノマー樹脂フィルムとが充分に融着せず、透明導電膜からポリエチレンフィルム又はアイオノマー樹脂フィルムが剥がれたり、透明導電膜或いはポリエチレンフィルム又はアイオノマー樹脂フィルムの削れの発生が観測された。
【0092】
更に、この場合(レーザスポットの形状が略円形の場合)には、レーザスポットの直径の変更、正方形の一辺のみの変更、レーザスポットの移動速度の変更、レーザ光の出力パワーの変更、接触面を押圧する操作を更に加える等の様々な条件変更や、これら変更条件の組み合せを行っても、比較例1〜比較例6の積層体においては、19N/cmを超える透明導電膜とポリエチレンフィルムとの間の剥離強度を有する積層体を構成できなかった。また、比較例7〜比較例12の積層体においては、25N/cmを超える透明導電膜とアイオノマー樹脂フィルムとの間の剥離強度を有する積層体を構成できなかった。
【0093】
(比較例13)
融着工程において以下に示す従来の熱融着法を採用したこと以外は、実施例1と同様の手順により実施例1と同様の構成を有する積層体を作製した。
【0094】
ここでの融着工程では、鉄製の押し当て冶具(略長方形状の接触面の外周縁から約10mm内側の部分を幅(図2における融着領域A1のVに平行な方向の幅)0.5mmで押し当てつつ熱融着させるための矩形リング状の押し当て部を有する)を用い、以下の条件の下で透明導電膜とポリエチレンフィルムとを融着させた。
【0095】
すなわち、光学部材上にポリエチレンフィルムを配置させた状態のもの全体を180℃に加熱し、1分保持した。次に、この温度のままで、鉄製の押し当て冶具により透明導電膜とポリエチレンフィルムとの接触面の融着部位にかかる圧力を1×104N/m2として20秒間加圧し、透明導電膜とポリエチレンフィルムとを融着させた。
【0096】
[評価試験5]
先に述べた評価試験1と同様の外観評価試験と剥離強度測定試験により比較例3の積層体を評価した。その結果、外観評価試験の結果は、融着部位の幅が冶具の矩形リング状の押し当て部の幅が0.5mmであったにもかかわらず、約1.5mmに増大しておりしかもその幅が全体で一定でなく、融着領域の縁部において一部未融着の部分があることが観測された。また、剥離強度測定試験の結果により得られた剥離強度の値は59N/cmであった。この比較例3の積層体は、透明導電膜とポリエチレンフィルムとが実施例1の積層体と同等の融着強度で融着ででているものの、実施例1と比較して融着時間が長く、実施例1と比較して透明導電膜とポリエチレンフィルムとの接触面における融着領域が一定の幅でなくその幅が増大してしまうことが確認された。
【0097】
また、この比較例3の積層体の融着工程における条件を以下のように変更して作製した積層体についても以下のような問題が発生することが確認された。すなわち、融着工程における加熱温度のみの条件を上記の値から低下させた場合、融着工程における加熱時の保持時間のみの条件を上記の値から短縮させた場合、冶具の矩形リング状の押し当て部の幅のみの条件を上記の値から小さくした場合、及び、融着工程における加圧時の保持時間のみの条件を上記の値から短縮させた場合には、剥離強度の低下が観測された。また、冶具の矩形リング状の押し当て部の幅を上記の値から小さくし、かつ、融着工程における加圧時の保持時間を上記の値から短縮させた場合には、融着領域に未融着の部分が多く発生することが確認された。
【0098】
更に、この場合には、融着工程における加熱温度の変更、融着工程における加熱時の保持時間の変更、冶具の矩形リング状の押し当て部の幅の変更、融着工程における加圧時の圧力の変更、融着工程における加圧時の保持時間の変更等の様々な条件変更や、これら変更条件の組み合せを行っても、約59N/cm程度の剥離強度を保持したまま、実施例1と同様の狭い融着領域の幅で融着された積層体を構成できなかった。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の積層体の製造方法によれば、2以上の層から構成される積層体において、互いに隣り合うように配置された融着させるべき2つの層のうちの少なくとも一方の厚さが0.1mm以下である場合であっても、レーザ光を用いて迅速かつ充分な融着強度で融着させることが容易にできる。
しかも、本発明の積層体の製造方法はレーザ光を用いるため、第1の層及び第2の層が、互いに線膨張係数が大きく異なる構成材料からなる場合であっても迅速かつ充分な融着強度で融着させることができる。また、レーザ光を用いるため、高い融着位置精度で第1の層及び第2の層を融着させることができる。更に、レーザスポットを移動させるため、融着させるべき2つの層に対する熱負荷を充分に低くして熱融着でき、融着ムラの発生も充分に抑制できる。
そして、本発明によれば、融着ムラが無く充分な融着強度で融着された2以上の層から構成される積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】図1に示した積層体1の第1の層10と第2の層20との接触面F1をその法線方向に沿って基板30の側から見た場合の正面図である。
【図3】図2に示した接触面F1の外縁部の部分領域Rの模式拡大図である。
【図4】(a)及び(b)はレーザスポット内のレーザ光のエネルギー密度分布の例を、レーザスポットの中心P0におけるエネルギー密度(最大値)を1として相対的に示した場合のグラフである。
【符号の説明】
1…積層体、10…第1の層、20…第2の層、30…基材、A1・・・融着領域、DLS・・・レーザスポットの移動方向、F1…接触面、H・・・レーザスポットLSの移動方向DLSに平行な方向における該レーザスポットLSの最大幅、L1…レーザ光、LS・・・レーザスポット、R…接触面F1の外縁部の部分領域、V…レーザスポットLSの移動方向DLSに垂直な方向における該レーザスポットLSの最大幅。

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の一方の面上に形成される厚さが0.1mm以下の第1の層と、前記第1の層の前記基材に接触している側と反対側の面上に配置されレーザ光の照射により前記第1の層に融着される第2の層とを有する積層体の製造方法であって、
    前記基材として、前記第1の層及び前記第2の層の何れよりも前記レーザ光に対する光透過率が高いものを使用し、
    前記第1の層及び前記第2の層のうちの少なくとも一方として前記レーザ光に対する光吸収性を有するものを使用し、
    前記基材の前記一方の面上に形成された前記第1の層の前記面上に前記第2の層を配置する配置工程と、
    前記第1の層と前記第2の層との接触面に向けて前記基材の側又は前記第2の層の側から前記レーザ光を照射するとともに、前記接触面に形成されるレーザスポットの位置を移動させることにより前記第2の層を前記第1の層に融着する融着工程と、
    を有しており、かつ、
    前記融着工程において、前記接触面に形成される前記レーザスポットの形状を下記式(1)で表わされる条件を満たすように調節すること、
    を特徴とする積層体の製造方法。
    H>V・・・(1)
    [式(1)中、Hは前記レーザスポットの移動方向に平行な方向における該レーザスポットの最大幅を示し、Vは前記移動方向に垂直な方向における前記レーザスポットの最大幅を示す。]
  2. 前記融着工程において、前記レーザスポットに対して前記接触面を相対的に移動させること、及び/又は、前記接触面に対して前記レーザスポットを相対的に移動させること、を特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記融着工程において、前記レーザ光の照射中に、前記第1の層及び前記第2の層のうちの少なくとも一方の側から前記接触面を押圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記融着工程において使用するレーザ光が連続光であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記第1の層と前記第2の層とが互いに異なる構成材料から構成されており、かつ、前記第1の層及び前記第2の層のうちの少なくとも一方の前記構成材料が熱可塑性を有する材料であること、を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記第1の層と前記第2の層とが同種の構成材料からなり、かつ、前記構成材料が熱可塑性を有する材料であること、を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の製造方法により得られる積層体。
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