本発明の実施形態について説明する前に、特許文献1に記載される、深部温度を求めるための演算式について、簡単に説明する。
図24(A)〜図24(C)は、特許文献1(特開2006−308538号公報)の図7に記載される体温計の例を説明するための図である。図24(A)では、特許文献1の図7の内容を、そのまま記載している。図24(B)および図24(C)は、特許文献1の図7に記載される例の動作を説明するために、今回、新規に追加した補助的な図である。
図24(A)に示されるように、体温計本体3は、人体2上に設けられている。体温計本体3は、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bを備えている。第1温度測定部3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に設けられた第1の断熱材としての断熱材38Aとを備えている。また、温度測定部3Bは、温度測定部3Aの接触位置から距離Lだけ離れた位置における体表面2Aに接触する接触面300Bを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に第2の断熱材としての断熱材38Bを備えている。すなわち、断熱材37は、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bとで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。
第1温度測定部3Aは、体表面2Aの温度を第1の基準温度として測定する第1基準温度測定部としての体表面センサー31Aと、断熱材37と断熱材38Aとの界面301Aの温度を第1の参照温度として測定する第1参照温度測定部としての中間センサー32Aとを備えている。
また、温度測定部3Bは、体表面2Aの温度を第2の基準温度として測定する第2基準温度測定部としての体表面センサー31Bと、断熱材37と断熱材38Bとの界面301Bの温度を第2の参照温度として測定する第2の参照温度測定部としての中間センサー32Bとを備えている。断熱材38の材料は、断熱材37の材料とは異なっている。したがって、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bとの間の熱抵抗値を異なり、各温度測定部には、異なる熱流束が生じることになる。
図24(B)では、図24(A)に示される体温計本体の構造を簡略化して示している。図24(C)では、図24(B)に示される第1温度測定部3Aおよび2温度測定部3Bにおける、熱抵抗と熱流束とが記載されている。
図24(C)に示されるように、人体2の表層部の熱抵抗はRsであり、また、各温度測定部3A,3Bと人体2との接触箇所には、接触抵抗Rtが存在する。(Rs+Rt)の値は不明である。また、共通の断熱材37の熱抵抗はRu0(既知)である。また、第1温度測定部3Aの大気側に設けられる断熱材38Aの熱抵抗は(Ru1+RV)である。なお、RVは大気に近い表層部の熱抵抗である。また、第1温度測定部3Bの大気側に設けられる断熱材38Bの熱抵抗は(Ru2+RV)である。
また、図24(C)では、体表面センサー31A,31Bによって測定された温度をTb1,Tb3とし、中間センサー32A,32Bによって測定された温度をTb2,Tb4とする。
図24(C)の左側に太線の矢印で示されるように、第1温度測定部3Aには、人体2の深部から、断熱材37と断熱材38Aとが接触する界面301Aに向かう熱流束が生じる。この熱流束は、人体2の深部(温度Tcore)から体表面2Aに向かう熱流束Q(s+t)と、体表面2Aから界面301Aに向かう熱流束Qu1と、に分けることができる。また、第2温度測定部3Bにおいても、人体2の深部から、断熱材37と断熱材38Aとが接触する界面301Aに向かう熱流束が生じ、この熱流束は、人体2の深部(温度Tcore)から体表面2Aに向かう熱流束Q(s+t)と、体表面2Aから界面301Aに向かう熱流束Qu2と、に分けることができる。
熱流束は、2点の温度の差を、2点間の熱抵抗値で除算して求めることができる。よって、熱流束Q(s+t)は、下記の式(A)で示され、熱流束Qu1は、下記の式(B)で示され、熱流束Qu2は、下記の式(C)で示される。
Q(s+t)=(Tcore−Tb1)/(Rs+Rt)・・・(A)
Qu1=(Tb1−Tb2)/Ru0・・・(B)
Qu2=(Tb3−Tb4)/Ru0・・・(C)
ここで、人体2における熱流束と、温度測定部3A,3Bにおける熱流束とは等しい。よって、Q(s+t)=Qu1が成立し、同様に、Q(s+t)=Qu2が成立する。
したがって、式(A)ならびに式(B)から、下記(D)式が得られ、式(A)と式(C)から、下記の式(E)が得られる。
Tcore={(Rs+Rt)/Ru0}・(Tb1―Tb2)+Tb1・・・(D)
Tcore={(Rs+Rt)/Ru0}・(Tb3―Tb4)+Tb3・・・(E)
図25は、熱流束が定常状態であるときの体温計の接触部モデルと、深部温度の算出式を示す図である。この図25の上側に示される図は、特許文献1の図9の内容を、ほぼそのまま記載した図である。図22の上側の図に示されるように、2つの異なる熱流束(Q(s+t)とQu1、Q(s+t)とQu2)は、傾きが異なる直線で示される。各熱流束において、人体2における熱流束と、温度測定部3A,3Bにおける熱流束とは等しいという条件より、上述のとおり、深部温度Tcoreの算出式である(D)式と(E)式とが得られる。
式(D)と式(E)に基づいて、{(Rs+Rt)/Ru0}の項を除去することができる。この結果、深部温度Tcoreの算出式である、下記の式(F)が得られる。
この式(F)によれば、人体2における熱抵抗値に関係なく、人体2の深部温度Tcoreを精度よく求めることができる。
図26は、図24に示した従来例において、熱収支による測定誤差が生じる様子を示している。なお、図26では、説明の便宜上、各体表面センサー31A〜32Bの測定温度を、T1〜T4と表記している。
図26において、人体2と環境(ここでは大気)7との間、あるいは、温度測定部3A,3Bと環境7との間に生じる熱収支(熱の授受)が、太線の破線の矢印で示されている。上述のとおり、人体2の深部から温度測定部3A,3Bに向かう熱流束が生じるが、実際の温度測定に際して、熱流束の一部は、例えば、温度測定部3A,3Bから環境(大気)7に逃げ、また、例えば、環境(大気)7から温度測定部3A,3Bに熱が流入する。先に説明した、特許文献1に記載される技術では、熱収支が生じない、理想的な熱流束を前提としているため、この点で、わずかながら測定誤差が生じるのは否めない。
図26の下側に示される式(F)では、従来例における深部温度Tcoreを、真の深部温度Tcと、熱収支による誤差成分ΔTcとに分けて記載してある。つまり、特許文献1に記載される測定方法では、測定された深部温度Tcoreには、熱収支に伴う測定誤差が、わずかながら存在することになる。この熱収支に伴う誤差成分を、例えば、補正演算等によって除去することができれば、深部温度の測定精度を、さらに向上させることができる。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1(A)〜図1(D)は、第1の実施形態における、深部温度の測定方法を説明するための図である。図1では、本実施形態における温度測定装置の要部(温度測定部)のみが記載されている。なお、温度測定装置の全体の構成例については、図10を用いて後述する。
まず、図1(A)を参照する。本実施形態における温度測定装置は、基材40と、基材40の第1測定点p1における温度を、第1温度Tbとして測定する第1温度センサー50と、基材40の、第1測定点p1とは異なる第2測定点p2における温度を第2温度Tpとして測定する第2温度センサー52と、基材40の周囲の環境(ここでは大気)7の温度を第3温度として取得する環境温度取得部53と、熱流制御部61と、有する。
基材40は、被測定体6に接触する接触面である第1面SR1と、第1面SR1に対向する面であって、環境側の面(つまり、基材40の上面)である第2面SR2と、を有する。基材40の第1面SR1は、被測定体6の表層部5の表面に接触した状態となっている。また、熱流制御部61は、基材40の第2面SR2上に設けられている。
基材40の第2面SR2は、例えば、第1面SR1に対して平行な面である。また、基材40は、熱を伝達する熱媒体である。基材40としては、例えば、所定の熱伝導率(あるいは熱抵抗)をもつ材料(例えばシリコンゴム)を使用することができる。基材40の材料としては、例えば、シリコンゴムを使用することができる。被測定体6は、人体であってもよく、また、炉や配管等の無機的な構造物であってもよい。
また、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー54としては、例えば、温度値を抵抗値に変換するタイプの温度センサーを使用することができ、また、温度値を電圧値に変換するタイプの温度センサー等を使用することができる。なお、温度値を抵抗値に変換するタイプの温度センサーとしては、チップサーミスターや、サーミスターパターンがプリントされたフレキシブル基板、白金測温抵抗体等を採用することができる。また、温度値を電圧値に変換するタイプの温度センサーとしては、熱電対素子や、PN接合素子、ダイオード等を採用することができる。
被測定体6の深部4の深部温度はTcであり、この深部温度Tcが測定対象となる温度である。図1(A)の例では、破線の矢印で示されるように、被測定体6の深部4から環境7に向かう熱流(熱流束)Qaが生じている。
環境7は、例えば、大気等の熱媒体であり、周囲媒体あるいは環境媒体と言い換えることができる。基材40の周囲の媒体に、大気の構成成分ではないガス成分が含まれるような場合であっても、その媒体は環境(周囲媒体、環境媒体)7ということができる。また、その媒体は、気体に限定されるものではない。
また、第1測定点p1および第2測定点p2は、基材40の外表面上、または基材40の内部に設けることができる。
また、熱流制御部61は、基材40の第2面SR2における温度を、熱流制御部61が無い場合と比較して、より環境7の温度である第3温度Toutに近づけるように、環境7との間で熱交換を行う。
また、第1温度センサー50および第2温度センサー52は、第3温度Toutの値が異なるという条件の下で、第1温度Tpおよび第2温度Tbを複数回(ここでは3回とする)、測定する。
第1測定点p1の温度Tp(すなわち第1温度)ならびに第2測定点p2の温度Tb(すなわち第2温度)は、共に、熱源としての深部温度Tcの影響を受けて変動し、かつ、熱流の終端である環境7の温度Tout(すなわち第3温度)の影響を受けて変動する。
例えば、第1温度Tp=TPAとしたとき、第2温度Tb=aTPA+bと表すことができる。aは一次関数の傾き(第1の傾き)であり、bは、切片(第1の切片)である。また、第1の切片bは、環境温度(第3温度)Toutによって線形に変化する。すなわち、b=cTout+dと表すことができる。cは一次関数の傾き(第2の傾き)であり、dは、切片(第2の切片)である。
温度測定部に含まれる演算部(図1では不図示,図4〜図6における参照符号74)は、本実施形態においては、3回の測定によって得られた第1温度(Tb1〜Tb3)および第2温度(Tp1〜Tp3)、ならびに3回の測定に対応する異なる値の第3温度(Tout1〜Tout3)に基づいて、第1面SR1から離れた、被測定体6の深部4における深部温度Tcを、深部温度の演算式である第1算出式(式(1))による演算によって求める。つまり、Tc=d/(1−a−c)となる。
第1算出式(式(1))は、深部温度(Tc)と環境温度(Tout)とが等しいときは、熱収支はゼロとなるという点に着目して導出される(詳しい導出過程については後述する)。3回の測定によって得られた温度データから、定数a,c,dを決定し、式(1)に代入することによって、深部温度Tcが求まる。これが本実施形態における深部温度Tcの算出方法である。
従来例では、環境温度が一定であるという条件の下で、2つの温度測定部における断熱材の種類を異ならせて、2つの異なる熱流束を生成していたが、本態様では、環境温度が異なる、少なくとも2つの系において熱流束を生成する。なお、以下の説明で環境という用語を使用するが、環境は、例えば大気等の熱媒体であり、周囲媒体あるいは環境媒体と言い換えることができる。
従来例における熱流のモデルでは、2つの温度測定系における環境温度Toutは同じ値(つまり一定)となっている。そして、各系における深部温度Tcと環境温度Tout間に生じる熱流が一定であり、従来例は、このことを前提条件としている。被測定体から環境に向かう、例えば鉛直方向の熱流が一定であるということは、その鉛直方向の熱流の一部が、例えば基材の側面を経由して環境に逃げるといった熱収支が生じないことを前提として成立する。
しかし、温度測定装置の小型化が促進され、基材のサイズが小さくなると、被測定体と環境との間の熱収支(例えば、基材の側面からの熱の逃げ等)が顕在化する。この場合、深部温度Tcと環境温度Tout間に生じる熱流が一定であるという前提が満足されなくなる。
これに対して、本実施形態では、複数の熱流の系において、各熱流の一端は、温度変動が許容されている環境であり、例えば、第1の系では、環境温度はTout1(任意の温度)であり、第2の系では環境温度はTout2(Tout1とは異なる任意の温度)である。よって、複数の熱流の系の間で、環境温度(Tout)と深部温度(Tc)との間で生じる熱流が一定でなければならない、という、従来例のような制約が生じない。つまり、各系の熱流束には、熱収支による熱の移動が本来的に含まれており、環境温度Tout(任意の温度)と被測定体の深部温度Tcとの間で、その熱収支の成分も含むような熱流が生じるだけである。
そして、このような熱流の系では、基材における任意の2点(第1測定点と第2測定点)の温度は、環境温度(Tout)を変数(パラメーター)として含む式によって表すことができる。
また、深部温度Tcと環境温度Toutとが等しいときは、熱収支はゼロとなる。よって、例えば、深部温度Tcの演算を行う際に、深部温度Tcと環境温度Toutとが等しいという条件を与えることによって、熱収支による測定誤差をゼロとすることができ、上述した第1算出式(式(1))が得られる。
また、第1測定点p1(第1温度センサー50が設けられる位置)、ならびに、第2測定点p2(第2温度センサー52が設けられる位置)に関しては、種々のバリエーションが考えられる。ここで、図1(B)を参照する。
第1測定点p1および第2測定点p2は、基材40の表面上や側面上、すなわち基材40の外表面上に設定することができ、また、基材40の内部に設定することもできる。また、いずれか一方を、基材40の表面上や側面上に設定し、いずれか他方を、基材40の内部に設定することもできる。なお、第1測定点p1と第2測定点p2を種々、変化させて、深部温度を測定した結果については、図13〜図18を用いて後述する。
本実施形態では、第1測定点p1は、被測定体6側の測定点とし、第2測定点p2は、環境(大気)7側の測定点とする。
図1(B)に示すように、基材40の接触面SR1に垂直な垂線の方向における、第1面(接触面)SR1からの距離を考え、第1測定点p1の距離をLAとし、第2測定点p2の距離をLBとする。基材40の高さ(第1面SR1から第2面SR2までの距離)をLCとする。
距離LAおよび距離LBについては、0≦LA,LB≦LCが成立し、かつ、LA≦LBが成立する。つまり、第1測定点p1および第2測定点p2の、基材40の第1面SR1からの距離LA,LBは、0以上であり、基材40の高さ(頂部における高さ)はLC以内である。また、第1測定点p1の、基材40の第1面SR1からの距離LAと、第2測定点p2の、基材40の第1面からの距離LBとを比較した場合、LA<LBであってもよく、また、LA=LBであってもよい。
また、LA<LBのときは、第1測定点p1の方が、第2測定点p2よりも被測定体6の近くに位置している。LA=LBのときは、第1測定点p1と第2測定点p2とは、横一線の位置にあり、距離に関しては優劣がない。但し、第1測定点p1と第2測定点p2とは、空間において同じ位置ではなく、必ず異なる位置にある。なお、LA=LBの場合でも、深部温度Tcを正確に測定可能である点に関しては、図16を用いて後述する。
次に、図1(C)を参照する。図1(C)の例では、点x1と点x2は、横一線の位置にある。しかし、点x1から、基材40の側面までの最小距離はL1であり、一方、点x2から、基材40の側面までの最小距離はL2であり、L1<L2である。点x1の方が、環境(大気)との熱交換が容易である。よって、例えば、点x1を、環境側の測定点である第2測定点p2とし、点x2を、被測定体側の測定点である第1測定点p1とすることができる。
次に、図1(D)を参照して、熱流制御部61を設けることによって得られる効果について説明する。図1(D)の左側の図は、熱流制御部61が無い構造を示し、右側の図は、基材40上に熱流制御部61が設けられている構造を示している。また、図1(D)の中央に、各部の温度の高低関係が破線で囲んで示されている。なお、図1(D)の例では、深部温度Tcならびに環境温度(第3温度)Toutが一定であるとする。
熱流制御部61は、基材40の第2面SR2における温度を、熱流制御部61が無い場合と比較して、より環境7の温度である第3温度(Tout)に近づけるように、環境7との間で熱交換を行う。
基材40の第2面SR2の温度が変化すると、第1測定点p1の温度である第1温度Tb、ならびに第2測定点p2の温度である第2温度Tpは、共に、その影響を受けて変化する。但し、第2測定点p2を環境7側の測定点としたとき、第2測定点p2は、原則的に、基材40の第2面SR2により近い位置にあると考えられる。よって、第2温度Tpは、基材40の第2面SR2の温度変化の影響をより多く受け、ゆえに、第2温度Tpの温度の変化量ΔTpは、第1温度Tbの変化ΔTbよりも大きくなる。よって、第1温度Tbと第2温度Tpとの間の温度差ΔTbpは、(ΔTp−ΔTb)の分、拡大されることになる。このような作用によって、第1測定点p1の温度である第1温度Tbと、第2測定点p2の温度である第2温度Tbとの温度差が、熱流制御部61がない場合よりも拡大される。
図1(D)の左側の図において、第1測定点p1の温度である第1温度をTb1とし、第2測定点Tp1の温度である第2温度をTp1とする。(Tb1−Tp1)をTxとする。また、図1(D)の右側の図において、第1測定点p1の温度である第1温度をTb2とし、第2測定点Tp1の温度である第2温度をTp2とする。(Tb2−Tp2)をTyとする。このとき、Tx>Tyとなる。
第1温度Tbと第2温度Tpとの差が大きいほど、測定温度に本来、含まれる誤差の影響が小さくなり、よって、より高精度な深部温度Tcの測定が可能となる。逆に、第1温度Tbと第2温度Tpとの差が小さくなるほど、測定精度を保証できなくなる。
しかし、温度測定部の小型化が促進されると、基材40の厚みが薄くなり、第1温度Tbと第2温度Tpをはっきりと区別することがむずかしくなる、つまり、基材40の内部における温度の分解能を確保できなくなる傾向がある。
本実施形態によれば、熱流制御部61による環境7との熱交換によって、基材40の第2面SR2の温度が、環境温度(第3温度)Toutにより近づくように変化し、これによって、第1温度Tbと第2温度Tpとの差を拡大できることから、基材40における温度の分解能を確保することができる。よって、温度測定部をさらに小型化した場合でも、深部温度Tcの測定精度の低下を抑制することができる。
次に、図2を参照して、熱流制御部61の具体例について説明する。図2(A)〜図2(D)は、熱流制御部61の具体例を示す図である。熱流制御部61のタイプは、パッシブタイプとアクティブタイプとに大別される。
パッシブタイプの例が、図2(A)に示されている。図2(A)の例では、熱流制御部61は、基材40とは異なる熱伝導率を有する材料により構成される材料層63である。つまり、基材40の第2面(環境側の面)SR2上に、基材40とは異なる熱伝導率を有する材料(好ましくは、基材40よりも熱伝導率が小さい材料)により構成される材料層63を設け、この材料層63を熱流制御部61とする。例えば、基材40の材料としてシリコンゴムを使用し、熱流制御部61としての材料層として、シリコンゴムよりも熱伝導率が大きい材料、例えば、アルミニュウム等の金属層を使用することができる。金属層63の厚みTzは薄く形成するのが好ましい。金属層63の厚みTzは、例えば、0.1mm〜2mm程度とすることができる。
また、アクティブタイプの例が、図2(B)に示されている。図2(B)の例では、熱流制御部61の構成要素として、温度制御部としてのペルチエ素子510が追加されている。すなわち、金属等からなる材料層63と、温度制御部としてのペルチエ素子510とによって、熱流制御部61が構成されている。
パッシブタイプでは、熱流制御部と環境との間の熱交換は自然の摂理に従っていたが、アクティブタイプでは、基材40の第2面SR2の温度を、積極的に、所望の温度に決めることができることから、第1温度Tbと第2温度Tpとの間に、より確実に温度差を設けることができる。
アクティブタイプでは、温度制御部によって、基材40の第2面SR2の温度を、所望の温度に制御することができることから、第1温度Tbと第2温度Tpとの間に、確実に温度差を設けることができる。温度制御部は、ペルチエ素子510に限定されるものではない。例えば、空冷式あるいは水冷式の加熱器や放熱器等を使用することもできる。以下、温度制御部として、ペルチエ素子510を使用した例について説明する。
ペルチエ素子510は、ペルチエ効果を利用した電子部品であり、吸熱面および放熱面を有している(図2(C)を参照)。
ペルチエ効果は、P型半導体とN型半導体とを接合してなる接合面、または異なる2種類の金属の接合面に電流を流すと、熱の移動が生じて、吸熱または放熱が生じる効果である。例えば、半導体のNPN構造に直流電流を流したとき、例えば、N型半導体からP型半導体に電流が流れるときは吸熱現象が生じ、また、P型半導体からN型半導体に電流が流れるときは放熱現象が生じる。電流の向きを逆転させると、吸熱と発熱が反転する。ペルチエ素子の性能は、最大吸熱量と、最大電流と、最大電圧とで表わすことができる。
ペルチエ素子は小型の電子部品であり、高精度な温度制御が可能であり、かつ、騒音や振動を発生しないという利点を有している。よって、ペルチエ素子を利用して積極的に温度制御を行うことによって、熱流制御部の構成要素である材料層63の温度を高精度に管理することができる。
図2(B)の例では、ペルチエ素子510の吸熱面または放熱面が、材料層63における環境7側の面に接触している。ペルチエ素子510によって、材料層63の温度を積極的に制御することができる。材料層63として、例えば金属層が用いられているとき、ペルチエ素子510の吸熱面/放熱面を、例えば金属層63の表面の一部の領域(例えば、温度測定に影響が少ない、第2面SR2の周辺近傍の領域)のみに接触させれば、金属層63の熱伝導率は高いことから、金属層63の全面の温度をほぼ均一に変化させることができる。
図2(B)の例では、第1温度Tbと第2温度Tpとの差(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)以上になるように、負帰還制御系によって、ペルチエ素子510の吸熱や放熱を制御することができる。
上述のとおり、第1温度Tbおよび第2温度Tpは、共に環境温度(第3温度Tout)の影響を受けて変動し、そして、その変動に追従して、負帰還制御系による温度調整がなされることになる。つまり、第1温度Tbおよび第2温度Tpが、共に環境温度(第3温度Tout)の影響を受けて変化するという前提を満足させつつ、第1温度Tbと第2温度Tpとの差分を所望の値以上に維持することができる。
例えば、第1温度Tbと第2温度Tpとの差(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)以上になるように、負帰還制御系によってペルチエ素子の吸熱や放熱を制御することができる。このような温度制御を行えば、第1温度および第2温度が、共に環境温度(第3温度)の影響を受けて変化するという前提を満足させつつ、第1温度Tbと第2温度Tpとの差分を所望の値以上に維持することができる。
負帰還制御系を構成する負帰還制御回路560は、差分演算部520と、比較部530と、誤差積分部540と、駆動電流生成部550と、を有している。差分演算部520は、基材40の第1温度Tbと、第2温度Tpとの差分(Tb−Tp)を算出する。比較部530は、差分(Tb−Tp)と、目標値(ΔTQ)とを比較する。誤差積分部540は、差分(Tb−Tp)と目標値(ΔTQ)との誤差を時間軸上で積分する。駆動電流生成部550は、差分(Tb−Tp)と目標値(ΔTQ)とが等しくなるように、ペルチエ素子510の駆動電流を生成する。生成された駆動電流は、ペルチエ素子510に供給され、これによって、ペルチエ素子510における吸熱および放熱が制御される。
負帰還制御回路560は、常時、動作させてもよく、また、必要なときにのみ動作させることもできる。例えば、負帰還制御回路560を常時、動作させて、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)になるように制御することもできる。
また、(Tb−Tp)が一定値ΔTQ以上であるときは、負帰還制御回路560を非動作状態とし、(Tb−Tp)が一定値ΔTQ未満となると、負帰還制御回路560を動作させて、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)になるように制御することもできる。このような、負帰還制御回路560を必要なときにのみ動作させる構成を採用する場合には、例えば、動作可否判定部561(図2(B)において、破線で示される機能ブロック)を設けて、この動作可否判定部561に、負帰還制御回路560の動作の可否を判定させることができる。
動作可否判定部561は、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)未満であるか否か(つまり、(Tb−Tp)<ΔTQであるか否か)を判定する。(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)未満であるときは、動作可否判定部561は、オン/オフ制御信号SSを、非アクティブレベルからアクティブレベルに変化させる。これによって、負帰還制御回路560は動作状態となる。負帰還制御回路560は、上述のとおり、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)になるように、ペルチエ素子510の吸熱および放熱を制御する。また、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)以上であるときは、動作可否判定部561は、オン/オフ制御信号SSを、非アクティブレベルとする。これによって、負帰還制御回路560は、非動作状態となる。熱流制御部61の構成要素である材料層(金属層)63は、自然放置状態となり、その材料層(金属層)63の温度は、自然の摂理に従って自然に変化する。
このように、動作可否判定部561と負帰還制御回路560との連携によって、(Tb−tp)を一定値(ΔTQ)以上に保つ制御を実現することができる。この例では、負帰還制御回路560を常時、動作させる例と比較して、消費電力を削減することができるという効果が得られる。
図2(B)に示される例では、環境温度(第3温度)Toutが変動すると、基材40の第1温度Tbならびに第2温度Tpも、Toutに対応して変化し、また、負帰還制御回路560による負帰還制御によって、第1温度Tbと第2温度Tpとの差が所定の値ΔTQになるように、基材40の第2面SR2の温度が制御される。
よって、基材40における第1測定点p1と第2測定点p2との間の温度分解能が小さい場合(つまり、自然な状態では温度にあまり差がない場合)でも、第2温度Tpを、第1温度Tbから強制的に引き離すことができる。よって、第1温度Tbと第2温度Tpとの間の温度差が極端に小さくなることを抑制することができる。
ペルチエ素子510の構成の一例が、図2(C)に示される。図2(C)の上側の図は平面図であり、下側の図は側面図である。
ペルチエ素子510は、第1金属板511と、第2金属板512と、第1金属板511と第2金属板512との間に設けられた、P型半導体層514a,514cならびにN型半導体層514b,514dと、端子513a,513bと、を有する。上述のとおり、N型半導体からP型半導体に電流が流れると、その接合部分で吸熱現象が発生し、また、P型半導体からN型半導体に電流が流れると、その接合部分で放熱現象が発生する。吸熱量/放熱量は、駆動電流量を調整することによって変化させることができる。また、駆動電流の方向(極性)を変化させることによって、吸熱と放熱とを逆にすることもできる。
図2(C)は、温度制御部の他の構成例を示している。図2(C)に示される例では、図2(B)の例に示される負帰還制御回路560を使用しない。すなわち、動作可否判定部561から出力されるオン/オフ制御信号SSによって、駆動電流生成部550のオン/オフ(動作/非動作)を直接的に制御する。
図2(C)の例では、駆動電流生成部550は、例えば定電流源(但し、これに限定されるものではない)であり、オン状態のときに、例えば電流値が一定の駆動電流を生成する。動作可否判定部561は、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)未満であるときは、オン/オフ制御信号SSを、非アクティブレベルからアクティブレベルに変化させる。これによって、駆動電流生成部550が動作状態となり、駆動電流(例えば定電流)がペルチエ素子540に供給される。また、動作可否判定部561は、(Tb−Tp)が一定値(ΔTQ)以上であるときは、オン/オフ制御信号SSを、アクティブレベルから非アクティブレベルに変化させる。これによって、駆動電流生成部550は非動作状態となる。このような回路動作によって、(Tb−tp)を一定値(ΔTQ)以上に保つ制御を実現することができる。
図2(C)に示される例では、図2(B)に示される例に比べて、回路構成が簡単であることから、制御回路の専有面積ならびに消費電力を、さらに削減することができる。
図2(D)に示されるペルチエ素子510の外形寸法は、Lc,Wc,Lh,Wh,Hの各パラメーターによって定まる。Lcは例えば2.8mmであり、Wcは例えば2.5mmであり、Lhは例えば3.6mmであり、Hは例えば0.8mmである。
次に、図3に示される実測された温度データ例を用いて、熱流制御部の効果について考察する。図3(A)〜図3(C)は、熱流制御部の効果について考察するための、実測された温度データ例を示す図である。図3(A)は、基材40単独の例(熱流制御部無しの場合)における温度データ例を示す。図3(B)は、基材40上に熱流制御部としての断熱材61aを設けた例における温度データ例を示す。図3(C)は、基材40上に熱流制御部としての金属層(アルミニュウム層)61bを設けた例における温度データ例を示す。なお、図3に示される各例では、被測定体6として人体を想定しており、深部4の温度Tcを37℃に設定している。この実験では、表層部5に相当する構造体の材料として、ポリ塩化ビニール(PVC)を使用している。ポリ塩化ビニールの熱伝導率は、0.144283(W/m・K)である。
この表層部5に相当するPVC構造体(直方体)の厚みは20mmに設定している。また、このPVC構造体の上面の中央に、シリコンゴムで構成され、かつ、円柱形状を有する基材40を設けている。シリコンゴムの熱伝導率は、0.05(W/m・K)である。
また、基材40の断面は円形状であり、その円の直径は20mmである。また、基材40の高さは2mmである。第1温度センサー50と第2温度センサー52は、基材40の底面(つまり接触面)SR1に垂直な垂線L1上にある2点(第1測定点と第2測定点)の位置に設けられている。第1温度センサー50と第2温度センサー52との距離は2mmである。つまり、第1測定点は、基材40の底面(接触面)SR1上に設定されており、第2測定点は、基材40の上面SR2上に設定されている。
図3(B)の例では、熱流制御部としての断熱材(基材40と同じ材料:シリコンゴム)61aが設けられている。この熱流制御部としての断熱材61aは、厚みが2mmである。また、図3(C)の例では、熱流制御部としてのアルミ層61bが設けられている。この熱流制御部としてのアルミ層61bは、厚みが2mmである。また、アルミ層61bの熱伝導率は、192.163(W/m・K)である。
また、第1温度Tbならびに第2温度Tpは、環境温度(第3温度)Toutが異なるという条件下で、n回測定される。ここでは、3回の温度測定が実行される。第1回目の測定データを、Tout1,Tb1,Tp1とし、第2回目の測定データを、Tout2,Tb2,Tp2とし、第3回目の測定データを、Tout3,Tb3,Tp3とする。
図3(A)の例では、Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、27.4605℃であり、Tp2は、32.2303℃であり、Tb3は、35.6327℃である。
Tb1とTp1との差(ΔTbp1)は、1.8279であり、Tb2とTp2との差(ΔTbp2)は、0.9139であり、Tb3とTp3との差(ΔTbp3)は、0.2611である。
図3(B)の例では、Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、27.8947℃であり、Tp2は、32.4473℃であり、Tb3は、35.6992℃である。
Tb1とTp1との差(ΔTbp1)は、1.575であり、Tb2とTp2との差(ΔTbp2)は、0.7875であり、Tb3とTp3との差(ΔTbp3)は、0.225である。
図3(A)および図3(B)の例におけるΔTbpを比較すると、図3(B)の例(熱流制御部としての断熱材61aを設けた例)では、第1温度Tbと第2温度Tpとの差(ΔTbp)は、図3(A)の例におけるΔTbpよりも小さくなっている。つまり、望む結果とは逆の結果となっている。
図3(C)の例では、Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、28.7742℃であり、Tb2は、32.8871℃であり、Tb3は、35.8249℃である。Tp1は、26.4583℃であり、Tp2は、31.7292℃であり、Tb3は、35.494℃である。
Tb1とTp1との差(ΔTbp1)は、2.3159であり、Tb2とTp2との差(ΔTbp2)は、1.1579であり、Tb3とTp3との差(ΔTbp3)は、0.3309である。
図3(C)の下側に示される表の右側に、図3(A)の例ならびに図3(B)の例に対する、温度差Tbpの拡大の割合(%)が示されている。図3(A)の例と比較すると、ΔTbp1は26.70%拡大されており、ΔTbp2は26.70%拡大されており、ΔTbp3は26.73%拡大されている。
また、図3(B)の例と比較すると、ΔTbp1は47.04%拡大されており、ΔTbp2は47.03%拡大されており、ΔTbp3は47.07%拡大されている。
図3(C)に示される実測データから、熱流制御部として金属層を使用したとき、基材40における第1温度Tbと第2温度Tpとの間の温度差が、顕著に拡大されることがわかる。
次に、図4〜図6を用いて、「第3温度(環境温度Tout)の値が異なるという条件の下で、第1温度Tbおよび第2温度Tpを複数回、測定する」ことを担保するための測定方法の例について説明する。
図4(A)および図4(B)は、温度測定方法の一例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の一例を示す図である。
図4(A)に示される温度測定装置は、温度測定部43と、環境温度取得部53と、演算部74と、温度測定部43および演算部74の動作を制御する制御部73と、を含む。図4(A)の例では、環境温度取得部53は、無線通信部CBを有している。よって、外部の空調器57から、無線通信によって環境温度(第3温度)の情報を取得することができる。また、環境温度取得部53は、環境温度センサー(第3温度センサー)54によって、自ら環境温度(第3温度)を測定することができる。
なお、空調器57は、大気温度センサー55と、無線通信部CAと、を有している。また、制御部73は、演算部74と、測定タイミング制御部75と、を有している。測定タイミング制御部75は、タイミング制御信号ST1を出力し、このタイミング制御信号ST1によって、第1温度センサー50および第2温度センサー52による、第1温度Tbならびに第2温度Tpの測定タイミングと、環境温度取得部53による、第3温度Toutの取得タイミングとを制御する。
図4(B)に示されるように、第1温度および第2温度の測定ならびに環境温度の情報の取得のために、第1測定期間(第1時間帯)〜第3測定期間(第3時間帯)が設けられる。制御部73は、各測定期間毎に、複数回の温度測定あるいは温度情報の取得を実行し、得られたデータに基づいて、第1算出式(式(1))による演算を実行して、深部温度Tcを求める。
「第3温度(環境温度Tout)の値を異ならせる」ための方法としては、空調器等を利用する積極方法と、時間軸上での環境温度のゆらぎ(微小な変動)に着目して、測定タイミングを調整するという消極的な方法とがあるが、図4の例では、後者の消極的な方法が採用されている。
例えば、基材40の第1測定点p1における第1温度Tb、ならびに基材40の第2測定点p2における第2温度Tpを3回測定するとき、各測定間の時間間隔があまりに短いと、「異なる環境温度(第3温度)の下で3回測定する」という条件を満たすことができない場合がある。よって、本例では、第1回目の測定用の第1時間帯(つまり第1測定期間)と、第2回目の測定用の第2時間帯(つまり、第2測定期間)と、第3回目の測定用の第3時間帯(つまり、第3測定期間)とを設ける。
各時間帯(測定期間)は、例えば1分(3つの時間帯の合計が3分)とすることができる。第1時間帯(第1測定期間)は、時刻t1〜時刻t4の期間であり、例えば、20毎に温度測定が実行される。つまり、時刻t1,時刻t2,時刻t3において、3回の温度測定が実行され、図示されるような9個のデータが得られる。そして、これらのデータの平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第1回目の温度測定値(Tb1,Tp1,Tout1)が決定される。
また、第2時間帯(第2測定期間)は、時刻t4〜時刻t7の時間帯である。第2時間帯においても、3回の温度測定が実行され、各測定結果の平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第2回目の温度測定値(Tb2,Tp2,Tout2)が決定される。
第3時間帯(第3測定期間)は、時刻t7〜t10の時間帯である。第3時間帯においても、3回の温度測定が実行され、各測定結果の平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第2回目の温度測定値(Tb3,Tp3,Tout3)が決定される。以上の処理を、第1ステップST1の処理とする。平均演算という用語は、最も広義に解釈するものとする。
次に、ステップS2において、得られたデータに基づいて、先に図1(A)に示した、定数a,c,dを算出する。次に、ステップS3において、第1算出式(式(1))に基づいて、深部温度Tcを測定する。
図4に示される例では、空調器等を用いて積極的に環境の温度を変化させることなく、第1温度および第2温度(ならびに第3温度)に関して、異なる環境温度下で測定された複数の温度データを、比較的容易に得ることができる。
図5(A)および図5(B)は、温度測定方法の他の例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の他の例を示す図である。図5(A)に示される温度測定装置には、複数回の温度測定を実行するタイミングを決めるための、タイミング制御情報を入力するタイミング制御情報入力部83が設けられている。制御部73は、タイミング制御情報入力部83から、タイミング制御情報(ここでは、測定指示トリガーTGとする)が入力される毎に、例えば、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー54に、1回の温度測定を実行させる。
図5の例では、「第3温度(環境温度Tout)の値が異なるという条件の下で、第1温度Tbおよび第2温度Tpを複数回、測定する」ことは、ユーザー自身の行為によって担保される。
例えば、ユーザーは、第1回目の測定を行うとき、温度測定装置の外に設けられる外部の空調器57の温度を第1の温度に設定し、設定から所定の時間が経過すると、タイミング制御情報入力部を経由して、タイミング制御情報としての測定指示トリガーTG)を入力する。上述したように、制御部73は、タイミング制御情報入力部83からタイミング制御情報が入力される毎に、例えば、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー54に温度測定を実行させる。測定タイミングは、測定タイミング制御部75によって制御される。
温度測定は、例えば、タイミング制御情報(測定指示トリガーTG)の入力毎に1回行うことができ、また、タイミング制御情報の入力毎に複数回の温度測定を実行して、得られた測定値を平均する等して、測定値を求めてもよい。以降、ユーザーは、空調器57の温度を第2の温度に設定した後、タイミング制御情報を入力し、次に、空調器57の温度を第3の温度に設定した後、タイミング制御情報を入力する。例えば、ユーザーは、3回のタイミング制御情報を入力する。
3回分の温度情報が取得されると、演算部74は、取得された温度情報に基づく、深部温度Tcを求めるための演算(算出式に基づく演算)を自動的に実行し、この結果、深部温度Tcが求められる。求められた深部温度Tcは、例えば、ユーザーに報知(表示、音声による通知等を含む)される。図5の例では、ユーザー自身が、各測定毎の環境温度を異ならせることから、温度測定装置自体が、環境温度を管理する負担が生じない。
測定手順は、図5(B)のステップS4〜ステップS6のとおりである。なお、以上の例は一例である。
図6(A)および図6(B)は、温度測定方法の他の例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の他の例を示す図である。図6の例では、温度測定部が、環境の温度(第3温度)を変化させることができる環境温度調整部CDを有している。制御部73は、そして、1回の温度測定が終了する毎に、環境温度調整部CDによって環境の温度(第3温度)を変化させる。
環境温度調整部CDは、環境温度(第3温度Tout)を変化させる機能をもつ。図6(A)の例では、環境温度調整部CDとして、例えば、温度測定装置の外に設けられる外部の空調器57の設定温度を、遠隔制御によって調整する機能をもつ調整器CC1を使用することができる。調整器CC1の動作は、測定タイミング制御部75からの制御信号ST2によって制御される。
また、図6(B)の例では、環境温度調整部CDとして、例えば、温度測定装置の内部に設けられた、気流生成部(例えば、気流の温度を変化させる機能を有する)CC2を使用する。気流生成部CC2は、ファン(扇風機)や、気流を噴射する微小ノズル等によって構成することができる。気流生成部CC2の動作は、測定タイミング制御部75からの制御信号ST3によって制御される。
環境温度調整部CDを利用することによって、測定毎に、環境温度Toutを確実に異ならせることができる。また、環境温度Toutを正確な温度に設定することができる。また、例えば、第1測定時の環境温度Tout1と第2測定時の環境温度Tout2との差を、大きく設定することもできる。なお、以上の例は一例である。
次に、第1算出式(図1(A)の式(1)を用いた深部温度Tcの演算)について、図7〜図9を用いて、具体的に説明する。
図7(A)〜図7(C)は、環境温度が一定であるという条件下における、第1温度と第2温度との間の関係、ならびに、その関係を深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。
図7(A)において、基材40、第1温度センサー50および第2温度センサー52は、温度測定部43を構成する。基材40は、第1面(接触面)SR1と第2面(基材40の上面)SR2とを有している。この温度測定部43は、被測定体6(例えば人体)6に、例えば、貼り付けられている。第1温度センサー50によって測定される第1温度はTbと表記されている。また、第2温度センサー52によって測定される第2温度はTpと表記されている。
図7(B)は、第2温度Tpと第1温度Tbとの関係を示す図である。図7(B)において、横軸はTpであり、縦軸は、第2温度Tpおよび第1温度Tbの温度Tである。環境温度(第3温度Tout)が一定である状態で、第1温度Tpが線形に変化すると、第2温度Tbも線形に変化する。つまり、第1温度Tbは、第2温度Tpに対して線形性を有する。
図7(B)に示されるように、第1温度Tbは、第2温度Tpを変数とする1次関数によって表される。つまり、下記の式(2)が成立する。
ここで、aは第1の傾きであり、bは第1の切片(または第1のオフセット値)であり、いずれも定数である。TpがTPAであるとき、Tb=aTPA+bとなり、また、TpがTPBであるとき、Tb=aTPB+bとなる。
図7(C)は、2回の温度測定によって得られた温度データT1〜T4を、先に説明した深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。時刻t1における温度測定によって、第1温度T1と第2温度T2が得られたとする。また、時刻t2における温度測定によって、第1温度T3と第2温度T4が得られたとする。T1〜T4は、下記式(3)によって表される。
ここで、式(3)の各値を、式(4)に代入する。式(4)は、深部温度Tcoreを求めるための算出式であるが、先に説明したように、熱収支による誤差ΔTcが含まれている。
この結果、式(5)が得られる。
次に、図8を参照して、環境温度Toutを変化させた場合における、第1温度Tbと、第2温度Tpとの関係について考察する。図8(A)〜図8(D)は、環境温度を変化させた場合における、第1温度と第2温度との間の関係、ならびに、その関係を深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。
図8(A)に示すように、変動する環境温度(第3温度)Toutは、環境温度取得部53に含まれる第3温度センサー54によって測定される。先に説明したように、第2温度TpをTPAとしたとき、Tb=aTPA+bと表すことができる。定数bは、第1切片(第1オフセット値)であり、この第1切片bは、環境温度(第3温度)Toutに対する線形性を有する。
つまり、図8(B)に示すように、Toutが変動すると、第1切片bの値は、環境温度(第3温度)Toutにしたがって、線形に変化する。したがって、下記の式(6)の関係が成立する。
ここで、c,dは共に定数である。cは、第2の傾きであり、dは、第2の切片である。環境温度(第3温度)ToutがTout1であるとき、第1の切片bは、b1(=cTout1+d)となり、環境温度(第3温度)ToutがTout2であるとき、第1の切片bは、b2(=cTout2+d)となる。
図8(C)は、Tout1における、第2温度Tpと第1温度Tb(=Tb1)との関係、ならびに、Tout2における、第2温度Tpと第1温度Tb(=Tb2)との関係を示している。Toutが、Tout1からTout2に変化したとき、1次関数の傾き(第1の傾きa)には変化がないが、第1の切片bの値が、b1からb2に変化することから、TpとTbとの関係を示す1次関数は、b1とb2の差分の分だけ、平行にシフトされる。
このように、第1温度Tbは第2温度Tpだけでなく、環境温度(第3温度)Toutに対しても線形の関係を示す。上記式(6)を、上記式(3)に示されるTb=aTp+bという式に代入すると、下記の式(7)が得られる。
この式(7)が、第2温度Tpと、第3温度Toutを変数として含み、かつ、複数の定数a,b,cを含む関数である。この関数によって、第1温度Tbと、第2温度Tpおよび第3温度Toutとが関係付けされる。
また、上記の式(6)を、式(5)に代入すると、式(8)が得られる。
ここで、熱の移動が温度差によって起こることから、熱収支による誤差ΔTcは、環境温度(第3温度)Toutと深部体温Tcの値が等しくなる場合には生じない。よって、式(8)において、Tout=ΔTcとし、ΔTc=0とする。すると、式(8)は、式(1)のように変形される。
この式(1)が、熱収支による誤差を含まない深部温度Tcを示している。但し、式(1)を解くためには、複数の定数a,c,dの各値を定める必要がある。複数の定数a,c,dは、上記の式(7)で表される関数によって、相互に関連付けられている。3つの定数の値を求めるためには、3元の連立方程式を解けばよい。よって、時間を異にして、少なくとも3回の温度測定を実行する。
ここで、第1回目の測定時に、第1温度としてのTb1、第2温度としてのTp1、第3温度としてのTout1が得られ、第2回目の測定時に、第1温度としてのTb2、第2温度としてのTp2、第3温度としてのTout2が得られ、第3回目の測定時に、第1温度としてのTb3、第2温度としてのTp3、第3温度としてのTout3が得られたとする。
これらの9個の測定データは、式(9)の行列式によって表現することができる。
よって、逆行列を含む式(10)によって、複数の定数a,c,dを求めることができる。
複数の定数a,c,dの各値が決定されると、各値を、式(1)に代入する。これによって、深部温度Tcが得られる。
図9(A)〜図9(D)は、第1実施形態における、深部温度の測定方法を示す図である。図9(A)に示すように、3点の温度、すなわち、第1温度Tb,第2温度Tp,第3温度Toutを、少なくとも3回測定する。得られた9個の測定データ(Tb1,Tp1、Tout1、Tb2,Tp2,Tout2、Tb3,Tp3,Tout3)は、図9(B)に示される行列式(9)によって、関係付けることができる。よって、複数の定数a,c,dは、図9(C)に示される、行列式(10)によって求めることができる。そして、図9(D)に示される式(1)によって、深部温度Tcを算出することができる。
次に、温度測定装置の全体構成について説明する。図10(A)〜図10(C)は、温度測定装置の全体構成の例を示す図である。
図10(A)の例では、第1温度センサー50および第2温度センサー52は、基材40の内部に埋め込まれている。また、断熱材20a上に、環境温度取得部53としての第3温度センサー54が設けられている。第1温度センサー50、第2温度センサー52、基材40、環境温度取得部53としての第3温度センサー54は、第1ユニット100を構成する。
また、断熱材20b上には、第2ユニット200が設けられる。第2ユニット200は、制御部73および演算部74を含む。なお、演算部74は、機能ブロックとして、定数算出部や深部温度算出部を含むことができる。また、第2ユニット200には、図示はしないが、演算結果を報知する報知部(例えば表示部)を設けることもできる。
また、図10(A)の温度測定装置は、基材40における第1面(接触面)SR1を、被測定体6の表面に貼付するための貼付構造10を有している。貼付構造10は、例えば、粘着テープにより構成することができる。粘着テープは、剥離紙8と、支持層(粘着層)9とを有することができる。
貼付構造10によって、第1ユニット100を、被測定体6の表面に貼付することができる。したがって、温度測定装置の操作性ならびに携帯性が向上する。また、例えば、温度測定装置を、幼児や乳幼児などの体温の計測のために使用する場合、幼児等は、頻繁に体を動かすことから、温度測定装置と体表面との接触を、所定時間、良好に保持することが困難である。しかし、このような場合でも、貼付構造10を用いて、温度測定装置の全体を、被測定体6の表面に貼付可能であることから、幼児や乳幼児が体を動かしたとしても、体表面と温度測定装置との接触状況を良好に維持できる。よって、正確かつ安定した温度測定な可能である。
図10(B)の例では、環境温度取得部53は、大気温度センサー55から環境温度の情報を受け取る。大気温度センサー55としては、例えば、環境の温度を制御する空調器に設けられている温度センサーを使用することができる(図4〜図6を参照)。
図10(C)の例では、第1ユニット100と、第2ユニット200とを分離した、別体の構成が採用されている。第1ユニット100は、第1無線通信部CAを含み、第2ユニット200は、第2無線通信部CBを含む。
第1温度(Tb)の情報と第2温度(Tp)の情報、または、第1温度(Tb)の情報、第2温度(Tp)の情報および第3温度(Tout)の情報は、第1無線通信部CAから第2無線通信部CBに送信される。第2ユニットに設けられている演算部74は、第2無線通信部CBによって受信された、第1温度(Tb)の情報と第2温度(Tp)の情報、または、第1温度(Tb)の情報、第2温度(Tp)の情報および第3温度(Tout)の情報に基づいて演算を実行して、被測定体6の深部温度Tcを求める。
図10(C)の構成によれば、第1ユニット100(例えば温度測定装置の本体)の構成部品の数を、最小限に抑制することができ、第1ユニット100の軽量化が実現される。したがって、例えば、被測定体6としての被検者の体表面に、第1ユニット100を長時間、接触させた場合であっても、被検者に大きな負担を与えることがない。よって、例えば、長時間にわたって、連続的に温度をモニタリングすることが可能となる。
また、第1ユニット100と第2ユニット200との間で、無線通信による温度データの送受信を行うことができることから、第2ユニット200を、第1ユニット100からある程度、離して設置することが可能となる。また、無線通信を利用することから、通信用の配線が不要である。よって、第1ユニットの取扱い性が向上する。また、第1ユニット100を、第2ユニット200から完全に分離することができることから、第1ユニット100の軽量化を、より促進することができる。
図11(A)および図11(B)は、無線通信を利用した温度測定装置の使用例を説明するための図である。図11(A)では、被測定体6としての幼児の胸部の体表面6Aに、第1ユニット100が装着(貼付)されている。また、第2ユニット200は、被測定体6としての幼児を抱いた保護者(温度測定装置のユーザー)MAの左手首に装着されている。ここでは、第2ユニット200は、表示部としても機能するものとする。
図11(B)に示されるように、第1ユニット100は、第1温度センサー50と、第2温度センサー52と、環境温度取得部53としての第3温度センサー54と、A/D変換部56と、無線通信部CAと、アンテナAN1とを有している。また、第2ユニット200は、無線通信部CBと、制御部73と、演算部74と、表示部77と、操作部79と、記憶部81とを有している。操作部79は、図5に示されるタイミング制御情報入力部83を兼ねることができる。
演算部74には、上述した複数の定数a,c,dを算出するための算出式や、深部体温Tcを算出するための算出式が記憶されている。また、記憶部81には、受信された第1温度Tb、第2温度Tp、環境温度Toutが記憶され、また、算出された複数の定数a,c,dの値も記憶され、また、求められた深部体温Tcも記憶される。
記憶部81は、複数の被測定体(ここでは被検者)に関する温度情報を記憶可能に構成されている。したがって、深部体温Tc等のデータを、被検体である幼児毎に記憶することができる。なお、記憶部81には、温度情報以外にも、例えば、被測定体6(ここでは被検者である幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合、これらの測定情報は、保護者(温度測定装置のユーザー)MAが、操作部79を操作して入力することができる。
温度測定装置は、例えば、以下のように動作する。保護者MAが、第2ユニット200の操作部79を操作することによって、第2ユニット200の電源がオンされる。すると、無線通信部CBから電波を送信する。この電波による電磁誘導によって、アンテナAN1に起電力を発生させ、この起電力によって、第1ユニット100内の電源(電池)をチャージする。すると、第1ユニット100が起動し、第1温度センサー50と、第2温度センサー52と、環境温度センサー(第3温度センサー)54が起動する。そして、第1ユニット100は、第2ユニット200に向けて、スタンバイ信号を送信する。
次に、第1ユニット100内の制御部73は、スタンバイ信号を受信すると、温度測定開始信号の送信を無線通信部CBに指示する。第1ユニット100は、温度測定開始信号を受信すると、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに環境温度センサー(第3温度センサー)54による温度測定を開始する。なお、第1温度Tbと、第2温度Tpの測定は、被検者6の深部から体表面6Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となっている状態で行うのが好ましい。よって、温度測定開始信号の受信タイミングから、平衡状態が実現されるのに必要な時間が経過したタイミングで、温度測定を開始するのが好ましい。
測定された温度情報(第1温度Tb、第2温度Tp、第3温度Tout)は、A/D変換部56でアナログ信号からデジタル信号に変換され、無線通信部CAによって、第2ユニット200に送信される。温度測定は、複数回実行され、測定毎に、測定データが送信される。各測定の実行間隔は、環境(大気等)の状況や傾向等を考慮して、適宜、調整することができる。
第2ユニット200内の演算部74は、所定間隔で送られてくる、一組の第1温度Tb、第2温度Tp、第3温度Toutのデータを記憶部81に一旦、格納する。そして、必要な温度データがすべて得られると、上述した手順で、所定の演算を実行して、被検者(幼児)6の深部温度Tcを測定する。測定された深部温度Tcは、例えば、表示部77に表示される。
図12は、第1実施形態における、深部温度の測定手順を示す図である。まず、温度データが取得される(ステップS10)。温度データには、第1測定で得られた第1温度Tb1、第2温度Tp1、第3温度Tout1と、第2測定で得られた第1温度Tb2、第2温度Tp2、第3温度Tout2と、第3測定で得られた第1温度Tb3、第2温度Tp3、第3温度Tout3と、が含まれる。
次に、複数の定数a,c,dが、算出される(ステップS20)。次に、先に説明した第1算出式を用いて、深部温度を演算する(ステップ30)。
(深部温度の測定結果の例)
次に、一例として、環境温度Toutを3段階で変化させたときの、第1温度Tbおよび第2温度Tpのデータ例と、そのデータ例に基づいて算出された深部温度の例(算出結果例)について、図13〜図18を用いて説明する。以下の説明では、熱流制御部61を使用しない例について説明するが、熱流制御部61を設けた場合でも、同様の結果が得られる。
(図13の例)
図13は、深部温度の算出結果の一例を示す図である。図13では、被測定体6として人体を想定しており、深部4の温度Tcを37℃に設定している。この実験では、表層部5に相当する構造体の材料として、ポリ塩化ビニール(PVC)を使用している。ポリ塩化ビニールの熱伝導率は、0.144283である。
この表層部5に相当するPVC構造体(直方体)の厚みは20mmに設定している。また、このPVC構造体の上面の中央に、シリコンゴムで構成され、かつ、円柱形状を有する基材40を設けている。シリコンゴムの熱伝導率は、0.05である。
また、基材40の断面は円形状であり、その円の直径は20mmである。また、基材40の高さは2mmである。第1温度センサー50と第2温度センサー52は、基材40の底面(つまり接触面)SR1に垂直な垂線L1上にある2点(第1測定点と第2測定点)の位置に設けられている。第1温度センサー50と第2温度センサー52との距離は2mmである。つまり、第1測定点は、基材40の底面(接触面)SR1上に設定されており、第2測定点は、基材40の上面SR2上に設定されている。
また、図13の例において、環境(大気)7における熱伝達係数(大気の熱の移動度に比例する定数)は、0.01W/m2・Kに設定されている。環境温度(第3温度)Tout、第1温度Tbならびに第2温度Tpは、n回測定される。本例では、3回の温度測定を実行する。よって、nは、1,2,3のいずれかである。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、27.4605℃であり、Tp2は、32.2303℃であり、Tb3は、35.6327℃である。
測定(算出)された深部温度は、36.99986℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、わずかの誤差しか含まない。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図14の例)
図14は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図14の例における測定環境や測定条件は、基本的には、図13の例と同じである。但し、図14の例では、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、基材40の側面上、かつ、垂線L2上に設けられている。第1温度センサー50および第2温度センサー52との距離は、2mmである。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、28.7516℃であり、Tb2は、32.8758℃であり、Tb3は、35.8217℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図15の例)
図15は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図15の例における測定環境や測定条件は、基本的には、前掲の例と同じである。但し、図15の例では、第1温度センサー50は、基材40の接触面SR1の中心付近に設けられ、また、第2温度センサー52は、基材40の側面上に設けられている。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図16の例)
図16は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図16の例における測定環境や測定条件は、基本的には、前掲の例と同じである。但し、図16の例では、第1温度センサー50は、基材40の上面SR2上に設けられている。第2温度センサー52は、基材40の側面上に設けられている。第2温度センサー52は、第1温度センサー50を通り、かつ、接触面SR2に平行な直線L3上に設けられている。つまり、第1温度センサー50と第2温度センサー52は、横一線の位置にある。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、28.7516℃であり、Tb2は、32.8758℃であり、Tb3は、35.8217℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
以上の実験結果から、第1温度センサー50および第2温度センサー52の相対位置関係は、特に問題とならないことがわかる。つまり、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、熱源(被測定体の深部)を通る鉛直線上にあってもよく、また、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、横一線の位置にあってもよい。
すなわち、第1温度センサー50が設けられる第1測定点および第2温度センサー52が設けられる第2測定点は、基材40の外表面(上記の例でいえば、底面である瀬接触面SR1、上面SR2ならびに側面のいずれか)上、または、基材40の内部に位置する2点であればよい。但し、行列式を使用した深部温度の算出を行うためには、少なくとも、環境温度(第3温度)Tout1,Tout2,Tout3のいずれかに対応する一組のTbとTpが同じ値ではない(Tb≠Tp)という条件を満足する必要がある。すなわち、3組の第1温度Tbと第2温度Tpのうち、少なくとも1組のTbとTpに温度差が生じていることが必要である。よって、この条件を満足するように、第1ユニット100を設計する。
次に、基材40の内部における温度分布と測定結果との関係について考察する。図17(A)および図17(B)は、基材の内部における温度分布と測定結果との関係の一例を示す図である。図17(A)に示されるデータ例は、図13に示したデータ例と同じである。図17(B)は、Tout1(=23℃)における、基材40の垂線方向の温度分布を示す図である。図17(B)では、横軸が、接触面SR1を基準とした、垂線L1方向の距離であり、縦軸が、基材40の温度である。図17(B)に示されるように、基材40の温度は、熱源(被測定体6の深部4)から離れるにつれて、直線状に低下する。
図17(A)のデータ例は、図17(B)に示すような、基材40の熱分布の下で深部温度を算出した結果であり、先に説明したように、極めて高精度な測定結果が得られている。
図18(A)および図18(B)は、基材の内部における温度分布と測定結果との関係の他の例を示す図である。図18(A)の例における測定環境や測定条件は、基本的には、図17(A)の例と同じである。但し、図18(A)の例では、基材40の高さを20mmとし、図17(A)の例における基材40の高さ(2mm)の10倍としている。このように、基材40の高さを高くすると、円柱の側面の面積が増加することから、円柱状の基材40の側面からの放熱が増加する。そして、その側面からの放熱の量は、熱源(被測定体6の深部4)からの距離に対応して変化する。
図18(B)は、Tout1(=23℃)における、基材40の垂線方向の温度分布を示す図である。図18(B)では、横軸が、接触面SR1を基準とした、垂線L1方向の距離であり、縦軸が、基材40の温度である。図18(B)に示されるように、基材40の温度は、熱源(被測定体6の深部4)から離れるにつれて低下するが、温度分布を示す特性線は直線とはならず、曲線となる。先に説明したように、基材40の高さを高くすると、円柱の側面の面積が増加し、円柱状の基材40の側面からの放熱が増加し、そして、その側面からの放熱の量は、熱源(被測定体6の深部4)からの距離に対応して変化するからである。
図18(A)のデータ例は、図18(B)に示すような、基材40の熱分布の下で深部温度を算出した結果である。Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.62274℃であり、Tb2は、33.31137℃であり、Tb3は、35.94611℃である。Tp1は、23.29526℃であり、Tp2は、30.14763℃であり、Tb3は、35.04218℃である。測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、基材40の内部の温度分布が、曲線で表される場合であっても、本実施形態の温度測定方法を使用すれば、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。したがって、基材40の高さに制約はなく、また、接触面の面積と基材40の高さの比に関する制限もない。よって、かなり自由に、第1ユニット100を構成することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、深部温度の算出式として、前掲の実施形態とは異なる第2の算出式を使用する。また、本実施形態では、温度の測定(温度情報の取得)を、少なくとも2回、実行する。
図19は、第2の実施形態における、深部温度の測定方法を説明するための図である。図19に示すように、本実施形態では、第1測定と第2測定を実行し、第1測定における環境温度(第3温度)Tout1と、第2測定における環境温度(第3温度)Tout2とを異ならせる。
第1測定で得られた第1温度をTb1とし、第2温度をTp1とし、第3温度をTout1とし、第2測定で得られた第1温度をTb2とし、第2温度をTp2とし、第3温度をTout2とする。
演算部74は、第1測定で得られた第1温度Tb1および第2温度Tp1と、第2測定で得られた第1温度Tb2および第2温度Tp2と、を用いて、第2算出式による演算を実行して、深部温度Tcを算出する。前記第2算出式は、下記の式(11)によって表される。
式(11)による第2算出式を使用するときは、上述のとおり、第2測定における環境温度(第3温度)Tout2の値が、第1測定における環境温度(第3温度)Tout1とは異なる値である必要がある。
式(11)で示される第2算出式によると、熱収支に起因する誤差成分を生じさせずに、深部温度を測定できる理由について、図20および図21を用いて説明する。
図20(A)および図20(B)は、特許文献1に示される従来例において、熱収支に起因する誤差成分が生じる理由を説明するための図である。図20(A)は、従来例の温度測定部における、6点の温度(T1,T2,Tt1、T2,T4,Tt2)および熱抵抗の状態を示している。図20(B)は、図20(A)に示される温度測定部における、環境温度(第3温度)Toutと深部温度Tcと間の、熱抵抗と熱流束の状態を示している。
従来例では、並列に配置された2つの温度測定部を使用して、2つの熱流の系を形成している。また、環境温度(第3温度)Toutは一定であり、また、基材37の上面に設けられた第1断熱材38Aおよび第2断熱材38Bによって、温度測定部は、環境(大気)から、熱的に遮断されている。また、環境(大気)における熱伝達係数(気体中の熱の移動度に比例する定数)はnである。また、被測定体の表層部の熱抵抗をRbとし、基材37の熱抵抗をR1とし、第1断熱材38Aの熱抵抗をR2とし、第2断熱材38Bの熱抵抗をR3としている。
従来例では、環境温度(第3温度)Toutが一定であるという前提の下で、断熱材38Aと断熱材38Bとを異ならせることによって、異なる2つの熱流束を形成している。つまり、従来例では、熱流束Qb1と、熱流束Q11と、熱流束Q12との間に、Qb1=Q11=Q12という関係が成立し、また、熱流束Qb2と、熱流束Q21と、熱流束Q22との間に、Qb2=Q21=Q22という関係が成立することを前提としている。
しかし、温度測定部の小型化が促進されると、第1の系の3点の温度(T1,T2,Tt1)ならびに第2の系における3点の温度(T2,T4,Tt2)は、環境温度(第3温度)Toutの影響を受けるようになる。よって、Qb1=Q11=Q12、ならびに、Qb2=Q21=Q22であるという前提が成立しなくなる。この場合には、従来例の算出式である式(F)の左辺は、Tc+ΔTcとなり、熱収支の差分に相当する測定誤差ΔTcが生じる。
つまり、特許文献1に記載される温度計では、温度測定部を、表層部に設けられた断熱材によって環境(大気)から遮断した構成となっており、したがって、熱流束は温度測定部の頂部にて終端し、環境(大気)との間の熱収支はほとんどなく、無視できるという設計思想の下で設計されている。しかし、温度計の小型化を、さらに促進した場合には、例えば、温度測定部の側面と環境(大気)との間での熱収支が顕在化し、熱収支の差分に対応する測定誤差を無視できなくなる。
図21(A)および図21(B)は、本発明の第2実施形態において、熱収支に起因する誤差成分が生じない理由を説明するための図である。図21(A)は、第2実施形態にかかる温度測定部における温度と熱抵抗の状態を示している。図21(B)は、図21(A)に示される温度測定部における、環境温度(第3温度)Tout1,Tout2と、深部温度Tcと間の、熱抵抗と熱流束の状態を示している。
本実施形態では、少なくとも2回の温度測定(温度情報の取得)を実行し、各温度測定では、第3温度(環境温度)Toutの値を異ならせている(Tout1≠Tout2)。環境温度(第3温度)を異にして、2回の温度測定を実行したとき、第1測定では、始端を被測定体の深部4とし、終端を環境(大気等)とする第1の熱流束の系が構成されることになる。また、第2測定では、始端を被測定体の深部とし、終端を環境(大気等)とする第2の熱流束の系が構成される。第3温度(環境温度)Toutは、各系で異なることから、各系の熱流束は互いに異なる熱流束である。
また、環境(大気)7における熱伝達係数(気体中の熱の移動度に比例する定数)はnである。第1温度はTb1(あるいはT1),Tb2(あるいはT3)である。また、第2温度はTp1(あるいはT2),Tp2(あるいはT4)である。被測定体6の表層部5における熱抵抗はRbであり、基材40の熱抵抗はR1である。また、図21(B)に示されるように、第1の系においては、熱流束Qb1と、熱流束Q11と、熱流束Qa1が生じている。第2の系においては、熱流束Qb2と、熱流束Q21と、熱流束Qa2が生じている。
これらの2つの熱流束の系では、熱流束の終端が、温度の変動が許容されている環境7であることから、従来例において問題となる熱収支の差分という概念が生じない。つまり、その熱収支も含めて、環境温度Tout(Tout1,Tout2)が一義的に定まる(適宜、変動する)というだけである。
また、使用している基材40の熱伝導率(つまり熱抵抗)は、第1の熱流束の系、第2の熱流束の系で同じである。つまり、熱抵抗の分布は、第1の系と第2の系との間で、何ら変化しない。よって、基材に第1測定点と第2測定を設定したとき、(第1測定点と第2測定点の温度の差)/(被測定体の深部温度Tcと第1測定点の温度の差)は、第1の熱流束の系、第2の熱流束の系ともに同じである。よって、下記の式が成立する。
この式(12)を、Tcについて解くと、上述の第2算出式(上記の式(11))が得られる。従来例における、ΔTcという誤差成分の概念自体が生じないことから、第2算出式によれば、ほぼ理想的な深部温度Tcが得られる。
第2算出式(式(11))は、形式的には従来例における算出式(式(F))と同じように見えるが、第2算出式(式(11))は、従来例の算出式(式(F))とは、根本的に異なる算出式である。つまり、第2算出式(式(11))は、環境を終端とする2つの熱流束の系から得られたデータに基づいて、基材における熱抵抗の比が同じであるという観点から導き出される算出式であり、根本的に異なるものである。
なお、本実施形態では、第3温度(環境温度)Toutは、深部温度Tcの算出自体には直接的には関係しない。但し、上述のとおり、第1測定におけるTout1と、第2測定におけるTout2とは異なっている必要があり、Tout1=Tout2であるときは、正確な深部温度の算出ができない。
よって、第3温度センサー54で測定された第3温度Tout3(あるいは、環境温度取得部53によって取得された第3温度Tout3)は、算出可能条件(第1測定と第2測定における第3温度が異なるという条件)が満足されているかを確認するために、つまり、演算の可否の判断に使用することができる。
図22(A)および図22(B)は、第2実施形態における、深部温度の測定手順と、第2実施形態における深部温度の算出結果例を示す図である。まず、温度データが取得される(ステップS40)。温度データには、第1測定で得られた第1温度Tb1、第2温度Tp1、第3温度Tout1と、第2測定で得られた第1温度Tb2、第2温度Tp2、第3温度Tout2(≠Tout1)と、が含まれる。次に、第2算出式を用いて、深部温度を演算する(ステップS50)。
図22(B)は、第2実施形態における深部温度の算出結果例を示す図である。ここでは、図13に示される測定環境を使用する。第1測定における環境温度(第3温度)Tout1が23℃のとき、第1温度Tb1は28.371℃であり、第2温度Tp1は26.2482℃となる。第2測定における環境温度(第3温度)Tout2が30℃のとき、第1温度Tb2は32.6855℃であり、第2温度Tp2は31.6241℃となる。熱源となる深部温度Tcは37℃に設定されている。この深部温度に対する算出結果は37.00000であり、誤差は生じなかった。よって、本実施形態によれば、極めて高精度に、深部温度を測定できることがわかった。
(第3の実施形態)
次に、温度センサーを基材40に設ける方法の一例について説明する。図23(A)〜図23(E)は、温度センサーを、基材に設ける方法の一例について説明するための図である。ここでは、第1温度センサー50(例えば熱電対素子で構成される)を例にとって説明する。以下に説明する方法は、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55についても、同様に適用することができる。
図23(A)は、基材40(第1温度センサー50を含む)の平面図および断面図を示している。平面図に示されるように、基材40は、平面視で正方形の形状をしており、縦Y1ならびに横X1は共に、例えば50mmである。また、断面図に示されるように、基材の高さY3は、例えば5mmである。また、第1温度センサー50は、基材40に埋設されている。第1温度センサー50の横X2は例えば0.5mmであり、縦(高さ)Y2は例えば0.5mmである。基材40としては、例えば、発砲ゴム(例えば天然のラテックスゴム)や発泡樹脂(例えば発砲ウレタン)を使用することができる。
図23(B)および図23(C)は、第1温度センサー50を基材40に埋め込む方法の、一例を示している。図23(B)では、基材40の側面から中央に向う横穴47aを形成し、その横穴47aを経由して、第1温度センサー50を基材40の内部に搬送し、そして、第1温度センサー50を、基材40のほぼ中央に設置する。
また、図23(C)の例では、図23(B)における横穴47aの代わりに、縦穴47bを形成している。
図23(D)および図23(E)は、第1温度センサー50を基材40に埋め込む方法の、他の例を示している。図23(D)および図23(E)の例では、基材40が、下側部分40aと上側部分40bとに分割されている。下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる際に、第1温度センサー50を、両部分40a,40bによって挟み込むことによって、結果的に、第1温度センサー50を、基材40の内部に位置させることができる。
図23(D)の例の第1工程では、基材40の上側部分40bの一部に凹部39を形成する。第2工程では、基材40の上側部分40bに形成されている凹部39に、第1温度センサー50を埋め込み、かつ、基材40の下側部分40aの、上側部分40bに対向する面上に、接着材41を形成する。第3工程では、基材40の下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる。但し、発砲ゴムや発泡樹脂は柔軟性があるため、凹部39を設けずに、第1温度センサー50を、基材40の下側部分40aと上側部分40bとで直接的に挟むこともできる。この例を図23(E)に示す。
図23(E)の例の第1工程では、基材40の下側部分40aには、凹部を形成しない。そして、第2工程では、基材40の下側部分40aの、上側部分40bに対向する面上に、接着材41を形成し、その接着材41上に、第1温度センサー50を載置する。第3工程では、基材40の下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる。基材40は、柔らかい素材で構成される。よって、貼り合わせ時に、基材40の上側部分40bの中央部は、第1温度センサー50を包み込むように変形する。なお、以上の例は一例であり、これらの方法に限定されるものではない。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、より高精度な深部温度の測定が可能となる。また、温度測定部の小型化と、高精度な測定とを両立することができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。