本発明の実施形態について説明する前に、特許文献1に記載される、深部温度を求めるための演算式について、簡単に説明する。
図23(A)〜図23(C)は、特許文献1(特開2006−308538号公報)の図7に記載される体温計の例を説明するための図である。図23(A)では、特許文献1の図7の内容を、そのまま記載している。図23(B)および図23(C)は、特許文献1の図7に記載される例の動作を説明するために、今回、新規に追加した補助的な図である。
図23(A)に示されるように、体温計本体3は、人体2上に設けられている。体温計本体3は、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bを備えている。第1温度測定部3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に設けられた第1の断熱材としての断熱材38Aとを備えている。また、温度測定部3Bは、温度測定部3Aの接触位置から距離Lだけ離れた位置における体表面2Aに接触する接触面300Bを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に第2の断熱材としての断熱材38Bを備えている。すなわち、断熱材37は、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bとで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。
第1温度測定部3Aは、体表面2Aの温度を第1の基準温度として測定する第1基準温度測定部としての体表面センサー31Aと、断熱材37と断熱材38Aとの界面301Aの温度を第1の参照温度として測定する第1参照温度測定部としての中間センサー32Aとを備えている。
また、温度測定部3Bは、体表面2Aの温度を第2の基準温度として測定する第2基準温度測定部としての体表面センサー31Bと、断熱材37と断熱材38Bとの界面301Bの温度を第2の参照温度として測定する第2の参照温度測定部としての中間センサー32Bとを備えている。断熱材38の材料は、断熱材37の材料とは異なっている。したがって、第1温度測定部3Aと第2温度測定部3Bとの間の熱抵抗値を異なり、各温度測定部には、異なる熱流束が生じることになる。
図23(B)では、図23(A)に示される体温計本体の構造を簡略化して示している。図23(C)では、図23(B)に示される第1温度測定部3Aおよび2温度測定部3Bにおける、熱抵抗と熱流束とが記載されている。
図23(C)に示されるように、人体2の表層部の熱抵抗はRsであり、また、各温度測定部3A,3Bと人体2との接触箇所には、接触抵抗Rtが存在する。(Rs+Rt)の値は不明である。また、共通の断熱材37の熱抵抗はRu0(既知)である。また、第1温度測定部3Aの大気側に設けられる断熱材38Aの熱抵抗は(Ru1+RV)である。なお、RVは大気に近い表層部の熱抵抗である。また、第2温度測定部3Bの大気側に設けられる断熱材38Bの熱抵抗は(Ru2+RV)である。
また、図23(C)では、体表面センサー31A,31Bによって測定された温度をTb1,Tb3とし、中間センサー32A,32Bによって測定された温度をTb2,Tb4とする。
図23(C)の左側に太線の矢印で示されるように、第1温度測定部3Aには、人体2の深部から、断熱材37と断熱材38Aとが接触する界面301Aに向かう熱流束が生じる。この熱流束は、人体2の深部(温度Tcore)から体表面2Aに向かう熱流束Q(s+t)と、体表面2Aから界面301Aに向かう熱流束Qu1と、に分けることができる。また、第2温度測定部3Bにおいても、人体2の深部から、断熱材37と断熱材38Aとが接触する界面301Aに向かう熱流束が生じ、この熱流束は、人体2の深部(温度Tcore)から体表面2Aに向かう熱流束Q(s+t)と、体表面2Aから界面301Aに向かう熱流束Qu2と、に分けることができる。
熱流束は、2点の温度の差を、2点間の熱抵抗値で除算して求めることができる。よって、熱流束Q(s+t)は、下記の式(A)で示され、熱流束Qu1は、下記の式(B)で示され、熱流束Qu2は、下記の式(C)で示される。
Q(s+t)=(Tcore−Tb1)/(Rs+Rt)・・・(A)
Qu1=(Tb1−Tb2)/Ru0・・・(B)
Qu2=(Tb3−Tb4)/Ru0・・・(C)
ここで、人体2における熱流束と、温度測定部3A,3Bにおける熱流束とは等しい。よって、Q(s+t)=Qu1が成立し、同様に、Q(s+t)=Qu2が成立する。
したがって、式(A)ならびに式(B)から、下記(D)式が得られ、式(A)と式(C)から、下記の式(E)が得られる。
Tcore={(Rs+Rt)/Ru0}・(Tb1―Tb2)+Tb1・・・(D)
Tcore={(Rs+Rt)/Ru0}・(Tb3―Tb4)+Tb3・・・(E)
図24は、熱流束が定常状態であるときの体温計の接触部モデルと、深部温度の算出式を示す図である。この図24の上側に示される図は、特許文献1の図4の内容を、ほぼそのまま記載した図である。図24の上側の図に示されるように、2つの異なる熱流束(Q(s+t)とQu1、Q(s+t)とQu2)は、傾きが異なる直線で示される。各熱流束において、人体2における熱流束と、温度測定部3A,3Bにおける熱流束とは等しいという条件より、上述のとおり、深部温度Tcoreの算出式である(D)式と(E)式とが得られる。
式(D)と式(E)に基づいて、{(Rs+Rt)/Ru0}の項を除去することができる。この結果、深部温度Tcoreの算出式である、下記の式(F)が得られる。
この式(F)によれば、人体2における熱抵抗値に関係なく、人体2の深部温度Tcoreを精度よく求めることができる。
図25は、図23に示した従来例において、熱収支による測定誤差が生じる様子を示している。なお、図25では、説明の便宜上、各体表面センサー31A〜32Bの測定温度を、T1〜T4と表記している。
図25において、人体2と環境(ここでは大気)7との間、あるいは、温度測定部3A,3Bと環境7との間に生じる熱収支(熱の授受)が、太線の破線の矢印で示されている。上述のとおり、人体2の深部から温度測定部3A,3Bに向かう熱流束が生じるが、実際の温度測定に際して、熱流束の一部は、例えば、温度測定部3A,3Bから環境(大気)7に逃げ、また、例えば、環境(大気)7から温度測定部3A,3Bに熱が流入する。先に説明した、特許文献1に記載される技術では、熱収支が生じない、理想的な熱流束を前提としているため、この点で、わずかながら測定誤差が生じるのは否めない。
図25の下側に示される式(F)では、従来例における深部温度Tcoreを、真の深部温度Tcと、熱収支による誤差成分ΔTcとに分けて記載してある。つまり、特許文献1に記載される測定方法では、測定された深部温度Tcoreには、熱収支に伴う測定誤差が、わずかながら存在することになる。この熱収支に伴う誤差成分を、例えば、補正演算等によって除去することができれば、深部温度の測定精度を、さらに向上させることができる。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1(A)〜図1(C)は、第1の実施形態における、深部温度の測定方法を説明するための図である。図1では、本実施形態における温度測定装置の要部(温度測定部)のみが記載されている。なお、温度測定装置の全体の構成例については、図9を用いて後述する。
まず、図1(A)を参照する。本実施形態における温度測定装置は、基材40と、基材40の第1測定点p1における温度を、第1温度Tbとして測定する第1温度センサー50と、基材40の、第1測定点p1とは異なる第2測定点p2における温度を第2温度Tpとして測定する第2温度センサー52と、基材40の、第1測定点p1および第2測定点p2とは異なる第3測定点p3における温度を、基材40の周囲の環境7の温度として代用する温度である第3温度Tout’として測定する第3温度センサー55と、を有する。
ここで、環境温度Toutは、例えば、基材40の周囲の環境(例えば大気)7の温度を、例えば、その大気中に設置してある大気温度センサー54で計測して得られる温度情報である。これに対して、「環境相当温度(第3温度)Tout’」は、例えば、基材40に設けられている第3温度センサー55によって測定される、深部温度の演算に際して、環境温度Toutの代わりに代用される温度情報である。上述のとおり、第3温度Tout’は、深部温度の演算の際に、環境温度Toutの代わりに使用する温度であり、環境温度Toutとは区別される概念ではあるが、深部温度の演算上、環境温度Toutに相当する温度として利用されるものである。つまり、第3温度Tout’は、基材の周囲の環境7の温度に相当する温度ということもできる。よって、以下の説明では、「第3温度」を、「環境相当温度」という場合がある。以下の説明では、正確な説明を行うために、環境温度Toutと、第3温度Tout’を区別して取り扱う。
基材40、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55は、温度測定部43の構成要素である。また、第1測定点p1、第2測定点p2ならびに第3測定点p3は、基材40の、外表面または基材40の内部に位置することができる。つまり、第1測定点p1、第2測定点p2ならびに第3測定点p3は、基材40の外表面上、または基材40の内部に位置する任意の3点である。
第1測定点p1は、基材40における被測定体6側の測定点であり、第2測定点p2は、環境7の側に位置する測定点である。また、第3測定点は、上述のとおり、環境7の温度(環境温度Tout)に相当する環境相当温度(第3温度)Tout’を測定するための測定点である。
基材40は、被測定体6に接触する接触面である第1面SR1と、第1面SR1に対向する面であって、環境7側の面(つまり、基材40の上面)である第2面SR2と、を有する。基材40の第1面SR1は、被測定体6の表層部5の表面に接触した状態となっている。
基材40の第2面SR2は、例えば、第1面SR1に対して平行な面である。また、基材40は、熱を伝達する熱媒体である。基材40としては、例えば、所定の熱伝導率(あるいは熱抵抗)をもつ材料(例えばシリコンゴム)を使用することができる。被測定体6は、人体であってもよく、また、炉や配管等の無機的な構造物であってもよい。
また、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55としては、例えば、温度値を抵抗値に変換するタイプの温度センサーを使用することができ、また、温度値を電圧値に変換するタイプの温度センサー等を使用することができる。なお、温度値を抵抗値に変換するタイプの温度センサーとしては、チップサーミスターや、サーミスターパターンがプリントされたフレキシブル基板、白金測温抵抗体等を採用することができる。また、温度値を電圧値に変換するタイプの温度センサーとしては、熱電対素子や、PN接合素子、ダイオード等を採用することができる。
被測定体6の深部4の深部温度はTcであり、この深部温度Tcが測定対象となる温度である。図1(A)の例では、破線の矢印で示されるように、被測定体6の深部4から環境7に向かう熱流(熱流束)Qaが生じている。
環境7は、例えば、大気等の熱媒体である。「環境」という表現は、「周囲媒体」あるいは「環境媒体」と言い換えることができる。基材40の周囲の媒体に、大気の構成成分ではないガス成分が含まれるような場合であっても、その媒体は環境(周囲媒体、環境媒体)7ということができる。また、その媒体は、気体に限定されるものではない。
また、第1温度センサー50および第2温度センサー52は、環境7の温度(環境温度)Toutの値が異なるという条件の下で、第1温度Tpおよび第2温度Tbを複数回(本実施形態では3回とする)、測定する。また、第3温度センサー55は、環境温度Toutに対応して温度値が変化する環境相当温度(第3温度)Tout’を、複数回(本実施形態では3回)、測定する。
深部温度Tcを求めるためには、環境温度Toutの温度情報が必要であるが、本実施形態では、環境温度Toutを、環境相当温度Tout’で代用する。その理由は以下のとおりである。すなわち、環境温度Toutを直接に測定するためには、基材40の外の環境7中に、環境温度測定のための、個別の温度センサー(図1(A)に示される大気温度センサー54)を設ける必要がある。これに対して、環境相当温度Tout’を測定するのであれば、第3温度センサー55を基材40の外表面または内部に設けることができ、結果的に、3個のセンサー(第1温度センサー50、第2温度センサー52および第3温度センサー55)を基材40に集約することができ、温度測定装置の、さらなる小型化が可能となる。このように、温度測定装置の小型化を促進するという観点から、環境温度Toutを、環境相当温度Tout’で代用するという構成を採用している。
ここで、環境温度をToutと、第3温度(環境相当温度)Tout’は、Tout=Tout’となるのが理想的ではあるが、実際には、第3温度(環境相当温度)Tout’は、環境温度の影響を受けるだけではなく、被測定体と環境との間に生じる熱流Qaの影響も受けることから、ToutとTout’とは一致しないのが通常である。
但し、本実施形態で使用される深部温度の演算式では、測定値の絶対値ではなく、測定された複数の温度データ間の相対関係が重要であり、その相対関係が満たされるのであれば、環境温度Toutを、第3温度(環境相当温度)Tout’で代用したとしても、測定精度自体には影響がない。
上述の相対関係とは、例えば、第1温度Tbおよび第2温度Tpが、環境温度Toutに対して線形性があるとするとき、環境温度Toutを第3温度Tout’で代用したときでも、同様の線形性が確保される、というような相対関係である。基材における任意の一点の温度は、環境温度Toutを変数として含む1次関数で表すことができることから、第3温度Tout’も、環境温度Toutに対する線形性を有しており、環境温度Toutが決まれば、第3温度Tout’も、線形の関数によって一義的に定まる。よって、環境温度Toutと、第1温度Tbおよび第2温度Tpとの間に成立する線形の関係は、第3温度Tout’と、第1温度Tbおよび第2温度Tpとの間にも、同様に成立すると考えることができる。このような理由によって、環境温度Toutを、第3温度Tout’で代用したとしても、高い測定精度を確保することができる。
被測定体の深部温度Tcは、基本的には、環境温度Toutと、第1温度Tbならびに第2温度Tpとの間に成立する関係に基づいて、複数回の温度測定による実測値を利用して、演算によって求めることができる。上述のとおり、環境温度Toutの代わりに、第3温度(環境相当温度)Tout’を使用した場合でも、同様の関係が成立することから、以下の説明では、適宜、第3温度(環境相当温度)Tout’という表現を使用する。
第1測定点p1の温度Tp(すなわち第1温度)ならびに第2測定点p2の温度Tb(すなわち第2温度)は、共に、熱源としての深部温度Tcの影響を受けて変動し、かつ、熱流の終端である環境7の温度Toutの影響を受けて変動する。
例えば、第1温度Tp=TPAとしたとき、第2温度Tb=aTPA+bと表すことができる。aは一次関数の傾き(第1の傾き)であり、bは、切片(第1の切片)である。また、第1の切片bは、環境温度Toutに対して、すなわち、環境相当温度である第3温度Tout’に対して線形に変化する。すなわち、b=cTout’+dと表すことができる。cは一次関数の傾き(第2の傾き)であり、dは、切片(第2の切片)である。
温度測定部に含まれる演算部(図1では不図示,図3〜図5における参照符号74)は、本実施形態においては、3回の測定によって得られた第1温度(Tb1〜Tb3)および第2温度(Tp1〜Tp3)、ならびに3回の測定に対応する異なる値の第3温度(Tout1’〜Tout3’)に基づいて、第1面SR1から離れた、被測定体6の深部4における深部温度Tcを、深部温度の演算式である第1算出式(式(1))による演算によって求める。つまり、Tc=d/(1−a−c)となる。
第1算出式(式(1))は、深部温度Tcと環境温度Tout(つまり、環境相当温度Tout’)とが等しいときは、熱収支はゼロとなるという点に着目して導出される(詳しい導出過程については後述する)。3回の測定によって得られた温度データから、定数a,c,dを決定し、式(1)に代入することによって、深部温度Tcが求まる。以下、式(1)を第1算出式という。これが本実施形態における深部温度Tcの算出方法である。
なお、第1算出式(式(1))は、環境温度Tout(環境相当温度Tout’)が、深部温度Tcに等しいという条件の下で、補正演算によって導き出される。つまり、補正演算式における条件の仮定上、Tout(Tout’)=Tcとされることから、実際に測定された環境相当温度Tout’が、環境温度Toutと若干、異なっていることは、補正演算上、特に影響がない。
但し、第1算出式は、基材40における温度分布が、環境温度Toutに対して線形であることを前提としているため、演算に使用する環境温度Tout’の値と、実際の環境温度Toutとの差が拡大した場合には、基材40における温度分布が環境温度Toutに対して線形であるという前提が満足されなくなる可能性があり、この場合には、深部温度の測定結果に誤差が生じる。この観点から、環境相当温度Tout’と環境温度Toutとの差(誤差)は、小さくなるようにするのが好ましい。
従来例では、環境温度が一定であるという条件の下で、2つの温度測定部における断熱材の種類を異ならせて、2つの異なる熱流束を生成していたが、本実施形態では、環境温度が異なる、少なくとも2つの系において熱流束を生成する。なお、以下の説明で環境という用語を使用するが、環境は、例えば大気等の熱媒体であり、周囲媒体あるいは環境媒体と言い換えることができる。生じさせる。
従来例における熱流のモデルでは、2つの温度測定系における環境温度Toutは同じ値(つまり一定)となっている。よって、各系における深部温度Tcと環境温度Tout間に生じる熱流が一定であり、従来例は、このことを前提条件としている。被測定体から環境に向かう、例えば鉛直方向の熱流が一定であるということは、その鉛直方向の熱流の一部が、例えば基材の側面を経由して環境に逃げるといった熱収支が生じないことを前提として成立する。
しかし、温度測定装置の小型化が促進され、基材のサイズが小さくなると、被測定体と環境との間の熱収支(例えば、基材の側面からの熱の逃げ等)が顕在化する。この場合、深部温度Tcと環境温度Tout間に生じる熱流が一定であるという前提が満足されなくなる。
これに対して、本実施形態では、複数の熱流の系において、各熱流の一端は、温度変動が許容されている環境7であり、例えば、第1の系では、環境温度はTout1(任意の温度)であり、第2の系では環境温度はTout2(Tout1とは異なる任意の温度)である。よって、複数の熱流の系の間で、環境温度(Tout)と深部温度(Tc)との間で生じる熱流が一定でなければならない、という、従来例のような制約が生じない。つまり、各系の熱流束には、熱収支による熱の移動が本来的に含まれており、環境温度Tout(任意の温度)と被測定体の深部温度Tcとの間で、その熱収支の成分も含むような熱流が生じるだけである。
そして、このような熱流の系では、基材における任意の2点(第1測定点と第2測定点)の温度は、環境温度Tout、すなわち、環境相当温度である第3温度Tout’を変数(パラメーター)として含む式によって表すことができる。
また、深部温度Tcと環境温度Tout(つまり、第3温度Tout’)とが等しいときは、熱収支はゼロとなる。よって、例えば、深部温度Tcの演算を行う際に、深部温度Tcと環境温度Tout(第3温度Tout’)とが等しいという条件を与えることによって、熱収支による測定誤差をゼロとすることができる。
次に、基材40に位置する任意の3点のうち、どれを第1測定点p1とし、どれを第2測定点p2とし、どれを第3測定点p3とするか、を決定する方法の一例について説明する。第1測定点p1の位置(第1温度センサー50の位置)、第2測定点p2の位置(第2温度センサー52の位置)ならびに第3測定点p3の位置(第3温度センサー55の位置)に関しては、種々のバリエーションが考えられる。ここで、図1(B)を参照する。
上述したように、第1測定点p1、第2測定点p2ならびに第3測定点p3は、基材40の表面上や側面上、すなわち基材40の外表面上に位置することができ、また、基材40の内部に位置することもできる。ここで、第1測定点p1、第2測定点p2ならびに第3測定点p3は、必ず異なる位置にある。
図1(B)の例では、基材40の内部に、3点(点a,点b,点c)を設定している。ここで、第3測定点p3は、環境温度Toutに相当する環境相当温度Toutを計測するための測定点であることから、3点(点a〜点c)のうちの、最も環境7との熱交換がし易い点(最も環境温度Toutの影響を受ける点)を第3測定点に選ぶのが好ましい。つまり、環境7との間に存在する最小の熱抵抗の値が、他の2点よりも小さい測定点を、第3測定点とするのが好ましい。
図1(B)において、3つの測定点a〜cにおける、環境7に至る最短の距離をL1,L2,L3とする。L1,L2,L3は0以上の値であり、また、図1(B)の例では、L2≦L3≦L1である。つまり、L2が最も小さい。よって、測定点bが、最も環境7との熱交換がし易い点である。したがって、図1(B)の例では、測定点bを、環境相当温度Tout’を測定するための第3測定点p3とする。
次に、残る2点(測定点aと測定点c)のうちの、いずれを第1測定点p1とするかについて説明する。第1測定点p1は、被測定体6側の測定点であることから、被測定体6により近い方の測定点、つまり、熱源としての被測定体6の深部4により近い方の測定点を、第1測定点p1とするのが好ましい。
そこで、図1(B)において、基材40の接触面SR1に垂直な垂線の方向における、第1面(接触面)SR1からの距離を考える。a点の距離はLAであり、b点の距離はLBであり、c点の距離はLCである。なお、基材40の高さ(第1面SR1から第2面SR2までの距離)をLDとする。図1(B)の例では、LA<LB<LCであり、LAが最も小さい。
つまり、測定点aは、測定点cよりも、被測定体6の近くに位置している。したがって、図1(B)の例では、測定点aを、被測定体6側の測定点p1とする。結果的に、第3測定点cが、環境側の測定点である第2測定点p2となる。このようにして、基材40に位置する任意の3点に関して、第1測定点p1〜第3測定点p3を決定することができる。但し、この決定方法は一例であり、この方法に限定されるものではない。
次に、第1測定点p1と第2測定点p2との位置関係について、図1(C)を参照して説明する。なお、第1測定点p1と第2測定点p2を種々、変化させて、深部温度を測定した結果については、図13〜図18を用いて後述する。
上述したとおり、第1測定点p1は、被測定体6側の測定点とし、第2測定点p2は、環境(大気)7側の測定点である。図1(C)に示すように、基材40の接触面SR1に垂直な垂線の方向における、第1面(接触面)SR1からの距離を考え、第1測定点p1の距離をLAとし、第2測定点p2の距離をLBとする。基材40の高さをLCとし、基材40の高さ(第1面SR1から第2面SR2までの距離)をLDとする。
距離LAおよび距離LBについては、0≦LA,LB≦LCが成立し、かつ、LA≦LBが成立する。つまり、第1測定点p1および第2測定点p2の、基材40の第1面SR1からの距離LA,LBは、0以上であり、基材40の高さ(頂部における高さ)はLC以内である。また、第1測定点p1の、基材40の第1面SR1からの距離LAと、第2測定点p2の、基材40の第1面からの距離LBとを比較した場合、LA<LBであってもよく、また、LA=LBであってもよい。
また、LA<LBのときは、第1測定点p1の方が、第2測定点p2よりも被測定体6の近くに位置している。LA=LBのときは、第1測定点p1と第2測定点p2とは、横一線の位置にあり、接触面SR1に垂直な垂線の方向の距離に関しては優劣がない。この場合、接触面SR1に平行な方向の距離(つまり、基材40の側面までの距離)に関して差があるときは、基材40の側面までの距離が小さい方を、環境7側の測定点である第2測定点p2とすることができる。なお、LA=LBの場合でも、深部温度Tcを正確に測定可能である点に関しては、図16を用いて後述する。
次に、図1(D)を参照して、基材における任意の3点(a〜c)が横一線の位置に、並置されている場合について説明する。図1(D)の例では、LA=LB=LCであり、各点a〜cに関して、接触面SR1に垂直な垂線方向の距離に関しては優劣がない。但し、接触面SR1に平行な方向の距離(つまり、基材40の側面までの距離)L4〜L6に関して、L5<L6<L4が成立する。
したがって、最も環境温度Toutの影響を受ける点bを、環境相当温度Tout’を測定するための第3測定点とすることができる。また、点aと点cに関して、点cは、点aよりも環境7の近くに位置していることから、点cを環境側の温度(第2温度Tp)を測定するための第2測定点p2とすることができる。結果的に、点aは、被測定体6側の測定点である第1測定点p1となる。
このように、基材40に任意の3点を設定したとき、被測定体6から各点までの距離の長短、環境7から各点までの距離の長短を総合的に勘案することによって、第1測定点p1〜第3測定点p3を定めることができる。
次に、温度センサーを基材40に設ける方法の一例について説明する。図2(A)〜図2(E)は、温度センサーを、基材に設ける方法の一例について説明するための図である。ここでは、第1温度センサー50(例えば熱電対素子で構成される)を例にとって説明する。以下に説明する方法は、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55についても、同様に適用することができる。
図2(A)は、基材40(第1温度センサー50を含む)の平面図および断面図を示している。平面図に示されるように、基材40は、平面視で正方形の形状をしており、縦Y1ならびに横X1は共に、例えば50mmである。また、断面図に示されるように、基材の高さY3は、例えば5mmである。また、第1温度センサー50は、基材40に埋設されている。第1温度センサー50の横X2は例えば0.5mmであり、縦(高さ)Y2は例えば0.5mmである。基材40としては、例えば、発砲ゴム(例えば天然のラテックスゴム)や発泡樹脂(例えば発砲ウレタン)を使用することができる。
図2(B)および図2(C)は、第1温度センサー50を基材40に埋め込む方法の、一例を示している。図2(B)では、基材40の側面から中央に向う横穴47aを形成し、その横穴47aを経由して、第1温度センサー50を基材40の内部に搬送し、そして、第1温度センサー50を、基材40のほぼ中央に設置する。
また、図2(C)の例では、図2(B)における横穴47aの代わりに、縦穴47bを形成している。
図2(D)および図2(E)は、第1温度センサー50を基材40に埋め込む方法の、他の例を示している。図2(D)および図2(E)の例では、基材40が、下側部分40aと上側部分40bとに分割されている。下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる際に、第1温度センサー50を、両部分40a,40bによって挟み込むことによって、結果的に、第1温度センサー50を、基材40の内部に位置させることができる。
図2(D)の例の第1工程では、基材40の上側部分40bの一部に凹部39を形成する。第2工程では、基材40の上側部分40bに形成されている凹部39に、第1温度センサー50を埋め込み、かつ、基材40の下側部分40aの、上側部分40bに対向する面上に、接着材50を形成する。第3工程では、基材40の下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる。但し、発砲ゴムや発泡樹脂は柔軟性があるため、凹部39を設けずに、第1温度センサー50を、基材40の下側部分40aと上側部分40bとで直接的に挟むこともできる。この例を図2(E)に示す。
図2(E)の例の第1工程では、基材40の下側部分40aには、凹部を形成しない。そして、第2工程では、基材40の下側部分40aの、上側部分40bに対向する面上に、接着材50を形成し、その接着材50上に、第1温度センサー50を載置する。第3工程では、基材40の下側部分40aと上側部分40bとを貼り合わせる。基材40は、柔らかい素材で構成される。よって、貼り合わせ時に、基材40の上側部分40bの中央部は、第1温度センサー50を包み込むように変形する。なお、以上の例は一例であり、これらの方法に限定されるものではない。
次に、「環境温度Toutの値が異なるという条件の下で、第1温度Tb、第2温度Tpならびに第3温度(環境相当温度)Toutを複数回、測定する」ことを担保するための測定方法の例について説明する。
図3(A)および図3(B)は、温度測定方法の一例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の一例を示す図である。
図3(A)に示される温度測定装置は、温度測定部43と、演算部74と、温度測定部43および演算部74の動作を制御する制御部73と、を含む。制御部73は、上述の演算部74に加えて、測定タイミング制御部75を有している。測定タイミング制御部75は、タイミング制御信号ST1を出力し、このタイミング制御信号ST1によって、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55による、第1温度Tb、第2温度Tpならびに第3温度(環境相当温度)Tout3’の測定タイミングを変化させる。
なお、環境7の温度を、空調器57によって制御してもよい。但し、図4(A)の例では、環境7の微視的な温度のゆらぎを利用するため、本例では、空調器57の有無(あるいは空調器のオン/オフ)は問題としない。
図3(B)に示されるように、第1温度Tb、第2温度Tpならびに第3温度Tout’を得るために、第1測定期間〜第3測定期間が設けられる。制御部73は、各測定期間毎に、複数回の温度測定あるいは温度情報の取得を実行し、得られたデータに基づいて、上述の第1算出式(式(1))による演算を実行して、深部温度Tcを求める。
「環境温度Toutの値を異ならせるための方法としては、空調器等を利用する積極方法と、時間軸上での環境温度のゆらぎ(微小な変動)に着目して、測定タイミングを調整するという消極的な方法とがあるが、図3の例では、後者の消極的な方法が採用されている。
例えば、基材40の第1測定点p1における第1温度Tb、ならびに基材40の第2測定点p2における第2温度Tpを3回測定するとき、各測定間の時間間隔があまりに短いと、異なる環境温度の下で3回測定するという条件を満たすことができない場合がある。よって、本例では、第1回目の測定用の第1時間帯(つまり第1測定期間)と、第2回目の測定用の第2時間帯(つまり、第2測定期間)と、第3回目の測定用の第3時間帯(つまり、第3測定期間)とを設ける。
各時間帯(測定期間)は、例えば1分(3つの時間帯の合計が3分)とすることができる。第1時間帯(第1測定期間)は、時刻t1からt4の期間であり、例えば、20秒毎に温度測定が実行される。つまり、時刻t1,時刻t2,時刻t3において、3回の温度測定が実行され、図示されるような9個のデータが得られる。そして、これらのデータの平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第1回目の温度測定値(Tb1,Tp1,Tout1’)が決定される。
また、第2時間帯(第2測定期間)においても、3回の温度測定が実行され、各測定結果の平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第2回目の温度測定値(Tb2,Tp2,Tout2’)が決定される。
同様に、第3時間帯(第3測定期間)においても、3回の温度測定が実行され、各測定結果の平均演算(単純な加算平均でもよく、重み付け平均でもよい)によって、第3回目の温度測定値(Tb3,Tp3,Tout3’)が決定される。以上の処理を、第1ステップST1の処理とする。なお、平均演算という用語は、最も広義に解釈するものとする。
次に、ステップS2において、得られたデータに基づいて、先に図1(A)に示した、定数a,c,dを算出する。次に、ステップS3において、第1算出式(式(1))に基づいて、深部温度Tcを測定する。
図3に示される例では、空調器等を用いて積極的に環境の温度を変化させることなく、第1温度Tb,第2温度Tpならびに第3温度Toutに関して、異なる環境温度Tout(つまり、異なる環境相当温度Tout’)の下で測定された複数の温度データを、比較的容易に得ることができる。
図4(A)および図4(B)は、温度測定方法の他の例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の他の例を示す図である。図4(A)に示される温度測定装置には、複数回の温度測定を実行するタイミングを決めるための、タイミング制御情報を入力するタイミング制御情報入力部83が設けられている。制御部73は、タイミング制御情報入力部83から、タイミング制御情報(ここでは、測定指示トリガーTGとする)が入力される毎に、例えば、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55に、温度測定を実行させる。
図4の例では、「第3温度(環境温度Tout)の値を異ならせる」ことは、ユーザー自身の行為によって担保される。
例えば、ユーザーは、第1回目の測定を行うとき、温度測定装置の外に設けられる外部の空調器57の温度を第1の温度に設定し、例えば、設定から所定の時間が経過すると、タイミング制御情報入力部を経由して、タイミング制御情報としての測定指示トリガーTG)を入力する。上述したように、制御部73は、タイミング制御情報入力部83からタイミング制御情報が入力される毎に、例えば、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55に温度測定を実行させる。測定タイミングは、測定タイミング制御部75によって制御される。
温度測定は、例えば、タイミング制御情報(測定指示トリガーTG)の入力毎に1回行うことができ、また、タイミング制御情報の入力毎に複数回の温度測定を実行して、得られた測定値を平均する等して、測定値を求めてもよい。以降、ユーザーは、空調器57の温度を第2の温度に設定した後、タイミング制御情報を入力し、次に、空調器57の温度を第3の温度に設定した後、タイミング制御情報を入力する。例えば、ユーザーは、3回のタイミング制御情報を入力する。
3回分の温度情報が取得されると、演算部74は、取得された温度情報に基づく、深部温度Tcを求めるための演算(算出式に基づく演算)を自動的に実行し、この結果、深部温度Tcが求められる。求められた深部温度Tcは、例えば、ユーザーに報知(表示、音声による通知等を含む)される。図3の例では、ユーザー自身が、空調器等を利用して、
各測定毎の環境温度を異ならせることから、温度測定装置自体が、環境温度を管理する負担が生じない。
測定手順は、図4(B)のステップS4〜ステップS6のとおりである。なお、以上の例は一例である。
図5(A)および図5(B)は、温度測定方法の他の例、ならびに、その温度測定方法を実施するための温度測定装置の構成の他の例を示す図である。図5の例では、温度測定部が、環境温度Toutを変化させることができる環境温度調整部CDを有している。制御部73は、そして、1回の温度測定が終了する毎に、環境温度調整部CDによって環境温度Toutを変化させる。これによって、Tout1≠Tout2≠Tout3が成立する。
図5(A)の例では、環境温度調整部CDとして、例えば、温度測定装置の外に設けられる外部の空調器57の設定温度を、遠隔制御によって調整する機能をもつ調整器CC1を使用している。調整器CC1の動作は、測定タイミング制御部75からの制御信号ST2によって制御される。
また、図5(B)の例では、環境温度調整部CDとして、例えば、温度測定装置の内部に設けられた、気流生成部(例えば、気流の温度を変化させる機能を有する)CC2を使用する。気流生成部CC2は、ファン(扇風機)や、気流を噴射する微小ノズル等によって構成することができる。気流生成部CC2の動作は、測定タイミング制御部75からの制御信号ST3によって制御される。
環境温度調整部CDを利用することによって、測定毎に、環境温度Tout(ならびに環境相当温度Tout’)を確実に異ならせることができる。また、環境温度Tout(ならびに環境相当温度Tout’)を正確な温度に設定することができる。また、例えば、第1測定時の環境温度Tout1(ならびに環境相当温度Tout’)と、第2測定時の環境温度Tout2(ならびに環境相当温度Tout’)との差を、大きく設定することもできる。なお、以上の例は一例である。
次に、第1算出式(図1(A)の式(1)を用いた深部温度Tcの演算)について、図6〜図8を用いて、具体的に説明する。
図6(A)〜図6(C)は、環境温度(ならびに第3温度)が一定であるという条件下における、第1温度と第2温度との間の関係、ならびに、その関係を深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。
図6(A)において、基材40には、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55が設けられている。基材40、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55は、温度測定部43の構成要素である。基材40は、第1面(接触面)SR1と第2面(基材40の上面)SR2とを有している。温度測定部43は、被測定体6(例えば人体)6に、例えば、貼り付けられている。
なお、環境7の温度はToutと表記され、第1温度センサー50によって測定される第1温度はTbと表記され、第2温度センサー52によって測定される第2温度はTpと表記され、第3温度センサー55によって測定される第3温度(環境相当温度)はTout’と表記される。
図6(B)は、第2温度Tpと第1温度Tbとの関係を示す図である。図6(B)において、横軸はTpであり、縦軸は、第2温度Tpおよび第1温度Tbの温度Tである。環境温度(Tout)が一定である状態で、第1温度Tpが線形に変化すると、第2温度Tbも線形に変化する。つまり、第1温度Tbは、第2温度Tpに対して線形性を有する。
図6(B)に示されるように、第1温度Tbは、第2温度Tpを変数とする1次関数によって表される。つまり、下記の式(2)が成立する。
ここで、aは第1の傾きであり、bは第1の切片(または第1のオフセット値)であり、いずれも定数である。TpがT
PAであるとき、Tb=aT
PA+bとなり、また、TpがT
PBであるとき、Tb=aT
PB+bとなる。
図6(C)は、2回の温度測定によって得られた温度データT1〜T4を、先に説明した深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。時刻t1における温度測定によって、第1温度T1と第2温度T2が得られたとする。また、時刻t2における温度測定によって、第1温度T3と第2温度T4が得られたとする。T1〜T4は、下記式(3)によって表される。
ここで、式(3)の各値を、式(4)(図25に示す式(F)と同じ)に代入する。式(4)は、深部温度Tcoreを求めるための算出式であるが、先に説明したように、熱収支による誤差ΔTcが含まれている。
この結果、式(5)が得られる。
次に、図7を参照して、環境温度Toutを変化させた場合、すなわち、環境相当温度Tout’を変化させた場合における、第1温度Tbと、第2温度Tpとの関係について考察する。図7(A)〜図7(D)は、環境温度(ならびに環境相当温度)を変化させた場合における、第1温度と第2温度との間の関係、ならびに、その関係を深部温度の算出式に適用した場合の結果を示す図である。
図7(A)に示すように、変動する環境相当温度(第3温度)Tout’は、第3温度センサー55によって測定される。先に説明したように、第2温度TpをTPAとしたとき、Tb=aTPA+bと表すことができる。定数bは、第1切片(第1オフセット値)であり、この第1切片bは、環境相当温度(第3温度)Tout’に対する線形性を有する。
つまり、図7(B)に示すように、環境相当温度(第3温度)Tout’が変動すると、第1切片bの値は、環境相当温度(第3温度)Tout’にしたがって、線形に変化する。したがって、下記の式(6)の関係が成立する。
ここで、c,dは共に定数である。cは、第2の傾きであり、dは、第2の切片である。環境相当温度(第3温度)Tout’がTout1’であるとき、第1の切片bは、b1(=cTout1’+d)となり、環境相当温度(第3温度)Tout’がTout2’であるとき、第1の切片bは、b2(=cTout2’+d)となる。
図7(C)は、Tout1’における、第2温度Tpと第1温度Tb(=Tb1)との関係、ならびに、Tout2’における、第2温度Tpと第1温度Tb(=Tb2)との関係を示している。Tout’が、Tout1’からTout2’に変化したとき、1次関数の傾き(第1の傾きa)には変化がないが、第1の切片bの値が、b1からb2に変化することから、TpとTbとの関係を示す1次関数は、b1とb2の差分の分だけ、平行にシフトされる。
このように、第1温度Tbは、第2温度Tpだけでなく、環境相当温度(第3温度)Tout’に対しても線形の関係を示す。上記式(6)を、上記式(3)に示されるTb=aTp+bという式に代入すると、下記の式(7)が得られる。
この式(7)が、第2温度Tpと、第3温度Tout’を変数として含み、かつ、複数の定数a,b,cを含む関数である。この関数によって、第1温度Tbと、第2温度Tpおよび第3温度Tout’とが関係付けされる。
また、上記の式(6)を、式(5)に代入すると、式(8)が得られる。
ここで、熱の移動が温度差によって起こることから、熱収支による誤差ΔTcは、環境温度Tout(すなわち第3温度Tout’)と、深部体温Tcの値が等しくなる場合には生じない。よって、式(8)において、Tout’=ΔTcとし、ΔTc=0とする。すると、式(8)は、式(1)のように変形される。
この式(1)が、熱収支による誤差を含まない深部温度Tcを示している。但し、式(1)を解くためには、複数の定数a,c,dの各値を定める必要がある。複数の定数a,c,dは、上記の式(7)で表される関数によって、相互に関連付けられている。3つの定数の値を求めるためには、3元の連立方程式を解けばよい。よって、時間を異にして、少なくとも3回の温度測定を実行する。
ここで、第1回目の測定時に、第1温度としてのTb1、第2温度としてのTp1、第3温度としてのTout1’が得られ、第2回目の測定時に、第1温度としてのTb2、第2温度としてのTp2、第3温度としてのTout2’が得られ、第3回目の測定時に、第1温度としてのTb3、第2温度としてのTp3、第3温度としてのTout3’が得られたとする。
これらの9個の測定データは、式(9)の行列式によって表現することができる
よって、逆行列を含む式(10)によって、複数の定数a,c,dを求めることができる。
複数の定数a,c,dの各値が決定されると、各値を、式(1)に代入する。これによって、深部温度Tcが得られる。
図8(A)〜図8(D)は、第1実施形態における、深部温度の測定方法を示す図である。図8(A)に示すように、3点の温度、すなわち、第1温度Tb,第2温度Tp,第3温度Tout’を、少なくとも3回測定する。得られた9個の測定データ(Tb1,Tp1、Tout1’、Tb2,Tp2,Tout2’、Tb3,Tp3,Tout3’)は、図8(B)に示される行列式(9)によって、関係付けることができる。よって、複数の定数a,c,dは、図9(C)に示される、行列式(10)によって求めることができる。そして、図8(D)に示される式(1)によって、深部温度Tcを算出することができる。
次に、温度測定装置の全体構成について説明する。図9(Aおよび図9(B)は、温度測定装置の全体構成の例を示す図である。
図9(A)の例では、第1温度センサー50および第2温度センサー52は、基材40の内部に埋め込まれている。また、断熱材20a上に、第3温度センサー55が設けられている。第1温度センサー50、第2温度センサー52、基材40、第3温度センサー55は、第1ユニット100を構成する。
また、断熱材20b上には、第2ユニット200が設けられる。第2ユニット200は、制御部73および演算部74を含む。なお、演算部74は、機能ブロックとして、定数算出部や深部温度算出部を含むことができる。また、第2ユニット200には、図示はしないが、演算結果を報知する報知部(例えば表示部)を設けることもできる。
また、図9(A)の温度測定装置は、基材40における第1面(接触面)SR1を、被測定体6の表面に貼付するための貼付構造10を有している。貼付構造10は、例えば、粘着テープにより構成することができる。粘着テープは、剥離紙8と、支持層(粘着層)9とを有することができる。
貼付構造10によって、第1ユニット100を、被測定体6の表面に貼付することができる。したがって、温度測定装置の操作性ならびに携帯性が向上する。また、例えば、温度測定装置を、幼児や乳幼児などの体温の計測のために使用する場合、幼児等は、頻繁に体を動かすことから、温度測定装置と体表面との接触を、所定時間、良好に保持することが困難である。しかし、このような場合でも、貼付構造10を用いて、温度測定装置の全体を、被測定体6の表面に貼付可能であることから、幼児や乳幼児が体を動かしたとしても、体表面と温度測定装置との接触状況を良好に維持できる。よって、正確かつ安定した温度測定な可能である。
図9(B)の例では、第1ユニット100と、第2ユニット200とを分離した、別体の構成が採用されている。第1ユニット100は、第1無線通信部CAを含み、第2ユニット200は、第2無線通信部CBを含む。
第1温度(Tb)の情報と第2温度(Tp)の情報、または、第1温度(Tb)の情報、第2温度(Tp)の情報および第3温度(Tout)の情報は、第1無線通信部CAから第2無線通信部CBに送信される。第2ユニットに設けられている演算部74は、第2無線通信部CBによって受信された、第1温度(Tb)の情報と第2温度(Tp)の情報、または、第1温度(Tb)の情報、第2温度(Tp)の情報および第3温度(Tout)の情報に基づいて演算を実行して、被測定体6の深部温度Tcを求める。
図9(B)の構成によれば、第1ユニット100(例えば温度測定装置の本体)の構成部品の数を、最小限に抑制することができ、第1ユニット100の軽量化が実現される。したがって、例えば、被測定体6としての被検者の体表面に、第1ユニット100を長時間、接触させた場合であっても、被検者に大きな負担を与えることがない。よって、例えば、長時間にわたって、連続的に温度をモニタリングすることが可能となる。
また、第1ユニット100と第2ユニット200との間で、無線通信による温度データの送受信を行うことができることから、第2ユニット200を、第1ユニット100からある程度、離して設置することが可能となる。また、無線通信を利用することから、通信用の配線が不要である。よって、第1ユニットの取扱い性が向上する。また、第1ユニット100を、第2ユニット200から完全に分離することができることから、第1ユニット100の軽量化を、より促進することができる。
図10(A)および図10(B)は、無線通信を利用した温度測定装置の使用例を説明するための図である。図10(A)では、被測定体6としての幼児の胸部の体表面6Aに、第1ユニット100が装着(貼付)されている。また、第2ユニット200は、被測定体6としての幼児を抱いた保護者(温度測定装置のユーザー)MAの左手首に装着されている。ここでは、第2ユニット200は、表示部としても機能するものとする。
図10(B)に示されるように、第1ユニット100は、第1温度センサー50と、第2温度センサー52と、第3温度センサー55と、A/D変換部56と、無線通信部CAと、アンテナAN1とを有している。また、第2ユニット200は、無線通信部CBと、制御部73と、演算部74と、表示部77と、操作部79と、記憶部81とを有している。操作部79は、図4に示されるタイミング制御情報入力部83を兼ねることができる。
演算部74には、上述した複数の定数a,b,dを算出するための算出式や、深部体温Tcを算出するための算出式が記憶されている。また、記憶部81には、受信された第1温度Tb、第2温度Tp、環境温度Toutが記憶され、また、算出された複数の定数a,b,dの値も記憶され、また、求められた深部体温Tcも記憶される。
記憶部81は、複数の被測定体(ここでは被検者)に関する温度情報を記憶可能に構成されている。したがって、深部体温Tc等のデータを、被検体である幼児毎に記憶することができる。なお、記憶部81には、温度情報以外にも、例えば、被測定体6(ここでは被検者である幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合、これらの測定情報は、保護者(温度測定装置のユーザー)MAが、操作部79を操作して入力することができる。
温度測定装置は、例えば、以下のように動作する。保護者MAが、第2ユニット200の操作部79を操作することによって、第2ユニット200の電源がオンされる。すると、無線通信部CBから電波を送信する。この電波による電磁誘導によって、アンテナAN1に起電力を発生させ、この起電力によって、第1ユニット100内の電源(電池)をチャージする。すると、第1ユニット100が起動し、第1温度センサー50と、第2温度センサー52と、第3温度センサー55が起動する。そして、第1ユニット100は、第2ユニット200に向けて、スタンバイ信号を送信する。
次に、第1ユニット100内の制御部73は、スタンバイ信号を受信すると、温度測定開始信号の送信を無線通信部CBに指示する。第1ユニット100は、温度測定開始信号を受信すると、第1温度センサー50、第2温度センサー52ならびに第3温度センサー55による温度測定を開始する。なお、第1温度Tbと、第2温度Tpの測定は、被検者6の深部から体表面6Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となっている状態で行うのが好ましい。よって、温度測定開始信号の受信タイミングから、平衡状態が実現されるのに必要な時間が経過したタイミングで、温度測定を開始するのが好ましい。
測定された温度情報(第1温度Tb、第2温度Tp、第3温度Tout)は、A/D変換部56でアナログ信号からデジタル信号に変換され、無線通信部CAによって、第2ユニット200に送信される。温度測定は、複数回実行され、測定毎に、測定データが送信される。各測定の実行間隔は、環境(大気等)の状況や傾向等を考慮して、適宜、調整することができる。
第2ユニット200内の演算部74は、所定間隔で送られてくる、一組の第1温度Tb、第2温度Tp、第3温度Toutのデータを記憶部81に一旦、格納する。そして、必要な温度データがすべて得られると、上述した手順で、所定の演算を実行して、被検者(幼児)6の深部温度Tcを測定する。測定された深部温度Tcは、例えば、表示部77に表示される。
図11は、第1実施形態における、深部温度の測定手順を示す図である。まず、温度データが取得される(ステップS10)。温度データには、第1測定で得られた第1温度Tb1、第2温度Tp1、第3温度Tout1’と、第2測定で得られた第1温度Tb2、第2温度Tp2、第3温度Tout2’と、第3測定で得られた第1温度Tb3、第2温度Tp3、第3温度Tout3’と、が含まれる。
次に、複数の定数a,c,dが、算出される(ステップS20)。次に、先に説明した第1算出式を用いて、深部温度を演算する(ステップS30)。
(深部温度の測定結果の例)
次に、第3温度センサー55の設置位置を異ならせたときの、各設置位置毎の、深部温度Tcの、コンピューターシミュレーションによる算出結果について説明する。本実施形態では、上述のとおり、環境7の温度(環境温度)Toutの代わりに、基材40に設けられた第3温度センサー55によって測定された環境相当温度(第3温度)を使用する。
深部温度Tcの測定精度を高めるためには、環境温度Toutに追従して線形に変化する第3温度Tout’を、できるだけ正確に測定することが重要である。
図12は、第3温度センサーの設置位置を異ならせたときの、各設置位置毎の、深部温度の算出結果を示す図である。図12の例では、複数の第3温度センサー55を、基材40の異なる位置に配置し、各温度センサーの測定値を用いて深部温度Tcを算出し、測定精度を比較する。このことによって、環境相当温度Tout’を測定する第3温度センサー55の、好ましい設置位置の例が明らかとなる。以下、具体的に説明する。
図12の例では、環境相当温度Tout’を測定するための第3温度センサー55を、測定点p3(a)〜測定点p3(d)の4点に設置する。
測定点p3(a)は、基材40の側面の頂部(基材40の第2面SR2付近)に位置する測定点であり、測定点p3(b)は、基材40の側面の中央に位置する測定点であり、測定点p3(c)は、基材40の側面の底部(基材40の第1面SR1付近)に位置する測定点である。また、測定点p3(d)は、基材40の内部(基材40の中心付近)に位置する測定点である。なお、測定点p3(b)と測定点p3(d)は、ほぼ横一列に配置されている。
図12の例では、被測定体6として人体を想定しており、深部4の温度Tcを37℃に設定している。この実験では、表層部5に相当する構造体の材料として、ポリ塩化ビニール(PVC)を使用している。ポリ塩化ビニールの熱伝導率は、0.144283(W/m・K)である。また、表層部5に相当するPVC構造体(直方体)の厚みは20mmに設定している。また、このPVC構造体の上面の中央に、シリコンゴムで構成され、かつ、円柱形状を有する基材40を設けている。シリコンゴムの熱伝導率は、0.05(W/m・K)である。
また、基材40の断面は円形状であり、その円の直径は20mmである。また、基材40の高さは2mmである。また、第1温度センサー50と第2温度センサー52は、基材40の底面(つまり接触面)SR1に垂直な垂線L1上にある2点(第1測定点と第2測定点)の位置に設けられている。第1温度センサー50と第2温度センサー52との距離は2mmである。つまり、第1測定点は、基材40の底面(接触面)SR1上に設定されており、第2測定点は、基材40の上面SR2上に設定されている。
また、図12の例において、環境(大気)7における熱伝達係数(大気の熱の移動度に比例する定数)は、0.01W/m2・Kに設定されている。なお、環境温度Toutを測定するために、大気温度センサー54が設けられている。
図12の例では、環境温度Tout、環境相当温度Tout’、第1温度Tbならびに第2温度Tpは、n回測定される。本例では、3回(n=3)の温度測定を実行する。また、3回の測定毎に、環境温度Tout(Tout1〜Tout3)の値が変化する。Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。
実測データの例が、図3(B)の下側に表形式で示されている。Tout1〜Tout3に対応する第2温度Tpを、Tp1〜Tp3とする。Tp1は27.4605℃であり、Tp2は32.2303℃であり、Tp3は35.6372℃である。
また、Tout1〜Tout3に対応する第1温度Tbを、Tb1〜Tb3とする。Tb1は29.2884℃であり、Tb2は33.1442℃であり、Tb3は35.8983℃である。
また、測定点p3(a)におけるTout’を、Tout’(a)とし、Tout1〜Tout3に対応するTout’(a)を、Tout’1(a),Tout’2(a),Tout’3(a)とする。このとき、Tout’1(a)は26.2482℃であり、Tout’2(a)は31.6241であり、Tout’3(a)は35.8983℃である。
また、測定点p3(b)におけるTout’を、Tout’(b)とし、Tout1〜Tout3に対応するTout’(b)を、Tout’1(b),Tout’2(b),Tout’3(b)とする。このとき、Tout’1(b)は27.1235℃であり、Tout’2(b)は32.0617であり、Tout’3(b)は35.5891℃である。
また、測定点p3(c)におけるTout’を、Tout’(c)とし、Tout1〜Tout3に対応するTout’(c)を、Tout’1(c),Tout’2(c),Tout’3(c)とする。このとき、Tout’1(c)は28.7516℃であり、Tout’2(c)は32.8758であり、Tout’3(c)は35.8217℃である。
また、測定点p3(d)におけるTout’を、Tout’(d)とし、Tout1〜Tout3に対応するTout’(d)を、Tout’1(d),Tout’2(d),Tout’3(d)とする。このとき、Tout’1(d)は28.371℃であり、Tout’2(d)は32.6855であり、Tout’3(d)は35.8983℃である。
上述のとおり、第1温度Tb,第2温度Tp,環境温度Toutの値または環境相当温度Tout’の値から、a,c,dの各値を求め、d/(1−a−c)の演算によって、深部温度Tcを求めることができる。
環境温度Toutを使用して求められた深部温度Tc1は、36.9999であった。真の深部温度は37℃であることから、測定誤差は、わずかに0.0001℃である。
環境相当温度Tout’(a)を使用して求められた深部温度Tc2は、36.9999であり、Tc1と同様に、高精度な測定結果が得られた。
環境相当温度Tout’(b)を使用して求められた深部温度Tc3は、36.9998であった。高精度な測定結果ではあるが、測定誤差は0.0002℃であり、Tc1,Tc2に比べて、測定誤差は拡大されている。
環境相当温度Tout’(c)を使用して求められた深部温度Tc4は、36.9996であった。高精度な測定結果ではあるが、測定誤差は0.0004℃であり、Tc1〜Tc3に比べて、測定誤差は拡大されている。
環境相当温度Tout’(d)を使用して求められた深部温度Tc5は、36.9996(Tc4と同じ値)であった。高精度な測定結果ではあるが、測定誤差は0.0004℃であり、Tc1〜Tc3に比べて、測定誤差は拡大されており、また、Tc4と同じ精度である。
以上の測定結果から、まず、環境相当温度Tout’を測定するための第3温度センサー55を、第1測定点p3(a)〜第4測定点p3(d)のいずれに設置した場合でも、かなり高精度な深部温度Tcの測定が可能であることがわかった。
また、第3温度センサー55を、測定点p3(a)に設置したとき、環境温度Toutを直接的に実測した場合と同等の、最も高い測定精度が実現されることがわかった。この点ついては、以下の理由が考えられる。まず、上記の第1算出式(式(1))は、環境温度Tout(環境相当温度Tout’)が、深部温度Tcに等しいという条件の下で、補正演算によって導き出される。つまり、補正演算式における条件の仮定上、Tout(Tout’)=Tcとされることから、実際に測定された環境相当温度Tout’が、環境温度Toutと若干、異なっていることは、補正演算上、特に影響がない。但し、補正演算式は、基材における温度分布が、環境温度Toutに対して線形であることを前提としているため、演算に使用する環境温度Tout’の値と、実際の環境温度Toutとの差が拡大した場合には、基材における温度分布が環境温度Toutに対して線形であるという前提が満足されなくなる可能性があり、この場合には、深部温度の測定結果に誤差が生じる。この観点から、環境相当温度Tout’と環境温度Toutとの差は、小さい方がよい。
ここで、測定点p3(a)は、基材40の側面の頂部付近に位置しており、他の測定点と比較して、被測定体6から最も遠い位置にある。よって、測定点p3(a)に設置された第3温度センサー55は、被測定体6と環境7との間に生じる熱流の影響を受けにくく、よって、その分、環境相当温度Tout’と環境温度Toutとの差を抑制することができる。したがって、深部温度Tcの測定誤差が最も小さくなったものと考えられる。
同様に、測定点p3(b)と測定点p3(c)とを比較したとき、測定点p3(c)の方が、熱源としての、被測定体6の深部4に近くに位置している。よって、第3温度センサー55を、測定点p3(c)に設置したときには、第3温度センサー55は、測定体6と環境7との間に生じる熱流の影響を、より受け易い。よって、その分、測定誤差が拡大されるものと考えられる。
また、測定点p3(d)は、基材40の内部(中央部付近)に位置している。基材40の第1面SR1からの距離については、測定点p3(b)と同じであるが、基材40の側面までの距離が異なっている。つまり、第3温度センサー55を、測定点p3(b)に設置したときと、測定点p3(d)に設置したときとでは、環境7との熱交換の容易性に差が生じる。つまり、測定点p3(d)は、基材40の内部に位置していることから、環境7との間の熱交換という点では、不利である。したがって、第3温度センサー55を、測定点p3(d)に設置して得られる深部温度Tc5の測定精度は、Tc1〜Tc3に比べて低下する。
よって、環境相当温度Tout’を測定するための第3温度センサー55は、測定体6と環境7との間に生じる熱流の影響を受けにくく、かつ、環境7との熱交換が行われ易い地点に設置するのが好ましいことがわかる。具体的には、基材40の内部よりも外表面上に設置するのが好ましい。例えば、第3温度センサー55は、基材40の側面付近に設置することができる。また、第3温度サンサ−55は、被測定体6から遠い位置に配置するのが好ましい。例えば、第3温度センサー55は、基材40の側面の頂部付近に設置するのが、最も好ましい(但し、これに限定されるものではない)。
図12の例では、第1温度Tbを測定するための第1測定点p1ならびに第2温度Tpを測定するための第2測定点p2を固定した上で、第3温度Tout’を測定するための第3測定点の位置を変化させていた。
次に、第3測定点p3を固定した上で、第1測定点p1ならびに第2測定点p2の位置を変化させた場合についての実験例について説明する。この実験例によって、深部温度Tcの測定に際して、第1測定点p1ならびに第2測定点p2が、基材40において、どのような位置にあっても、十分に高精度な深部温度Tcの測定結果が得られることが明らかとなる。
以下、環境温度Toutを3段階で変化させたときの、第1温度Tbおよび第2温度Tpのデータ例と、そのデータ例に基づいて算出された深部温度の例(算出結果例)について、図13〜図18を用いて説明する。なお、以下の例では、環境温度Toutを、例えば、大気中に設けた大気温度センサー54で3回、測定して、環境温度Toutn(n=1,2,3)を得ている。
(図13の例)
図13は、深部温度の算出結果の一例を示す図である。図13では、被測定体6として人体を想定しており、深部4の温度Tcを37℃に設定している。この実験では、表層部5に相当する構造体の材料として、ポリ塩化ビニール(PVC)を使用している。ポリ塩化ビニールの熱伝導率は、0.144283(W/m・K)である。
この表層部5に相当するPVC構造体(直方体)の厚みは20mmに設定している。また、このPVC構造体の上面の中央に、シリコンゴムで構成され、かつ、円柱形状を有する基材40を設けている。シリコンゴムの熱伝導率は、0.05(W/m・K)である。
また、基材40の断面は円形状であり、その円の直径は20mmである。また、基材40の高さは2mmである。第1温度センサー50と第2温度センサー52は、基材40の底面(つまり接触面)SR1に垂直な垂線L1上にある2点(第1測定点と第2測定点)の位置に設けられている。第1温度センサー50と第2温度センサー52との距離は2mmである。つまり、第1測定点は、基材40の底面(接触面)SR1上に設定されており、第2測定点は、基材40の上面SR2上に設定されている。
また、図13の例において、環境(大気)7における熱伝達係数(大気の熱の移動度に比例する定数)は、0.01W/m2・Kに設定されている。環境温度(第3温度)Tout、第1温度Tbならびに第2温度Tpは、n回測定される。本例では、3回の温度測定を実行する。よって、nは、1,2,3のいずれかである。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、27.4605℃であり、Tp2は、32.2303℃であり、Tb3は、35.6327℃である。
測定(算出)された深部温度は、36.99986℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、わずかの誤差しか含まない。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図14の例)
図14は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図14の例における測定環境や測定条件は、基本的には、図13の例と同じである。但し、図14の例では、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、基材40の側面上、かつ、垂線L2上に設けられている。第1温度センサー50および第2温度センサー52との距離は、2mmである。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、28.7516℃であり、Tb2は、32.8758℃であり、Tb3は、35.8217℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図15の例)
図15は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図15の例における測定環境や測定条件は、基本的には、前掲の例と同じである。但し、図15の例では、第1温度センサー50は、基材40の接触面SR1の中心付近に設けられ、また、第2温度センサー52は、基材40の側面上に設けられている。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.2884℃であり、Tb2は、33.1442℃であり、Tb3は、35.8983℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
(図16の例)
図16は、深部温度の算出結果の他の例を示す図である。図16の例における測定環境や測定条件は、基本的には、前掲の例と同じである。但し、図16の例では、第1温度センサー50は、基材40の上面SR2上に設けられている。第2温度センサー52は、基材40の側面上に設けられている。第2温度センサー52は、第1温度センサー50を通り、かつ、接触面SR2に平行な直線L3上に設けられている。つまり、第1温度センサー50と第2温度センサー52は、横一線の位置にある。
Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、28.7516℃であり、Tb2は、32.8758℃であり、Tb3は、35.8217℃である。Tp1は、26.2482℃であり、Tp2は、31.6241℃であり、Tb3は、35.464℃である。
測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、小型化された基材40を用いて、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。
以上の実験結果から、第1温度センサー50および第2温度センサー52の相対位置関係は、特に問題とならないことがわかる。つまり、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、熱源(被測定体の深部)を通る鉛直線上にあってもよく、また、第1温度センサー50および第2温度センサー52が、横一線の位置にあってもよい。
すなわち、第1温度センサー50が設けられる第1測定点および第2温度センサー52が設けられる第2測定点は、基材40の外表面(上記の例でいえば、底面である瀬接触面SR1、上面SR2ならびに側面のいずれか)上、または、基材40の内部に位置する2点であればよい。但し、行列式を使用した深部温度の算出を行うためには、少なくとも、環境温度(第3温度)Tout1,Tout2,Tout3のいずれかに対応する一組のTbとTpが同じ値ではない(Tb≠Tp)という条件を満足する必要がある。すなわち、3組の第1温度Tbと第2温度Tpのうち、少なくとも1組のTbとTpに温度差が生じていることが必要である。よって、この条件を満足するように、第1ユニット100を設計する。
次に、基材40の内部における温度分布と測定結果との関係について考察する。図17(A)および図17(B)は、基材の内部における温度分布と測定結果との関係の一例を示す図である。図17(A)に示されるデータ例は、図13に示したデータ例と同じである。図17(B)は、Tout1(=23℃)における、基材40の垂線方向の温度分布を示す図である。図17(B)では、横軸が、接触面SR1を基準とした、垂線L1方向の距離であり、縦軸が、基材40の温度である。図17(B)に示されるように、基材40の温度は、熱源(被測定体6の深部4)から離れるにつれて、直線状に低下する。
図17(A)のデータ例は、図17(B)に示すような、基材40の熱分布の下で深部温度を算出した結果であり、先に説明したように、極めて高精度な測定結果が得られている。
図18(A)および図18(B)は、基材の内部における温度分布と測定結果との関係の他の例を示す図である。図18(A)の例における測定環境や測定条件は、基本的には、図17(A)の例と同じである。但し、図18(A)の例では、基材40の高さを20mmとし、図17(A)の例における基材40の高さ(2mm)の10倍としている。このように、基材40の高さを高くすると、円柱の側面の面積が増加することから、円柱状の基材40の側面からの放熱が増加する。そして、その側面からの放熱の量は、熱源(被測定体6の深部4)からの距離に対応して変化する。
図18(B)は、Tout1(=23℃)における、基材40の垂線方向の温度分布を示す図である。図18(B)では、横軸が、接触面SR1を基準とした、垂線L1方向の距離であり、縦軸が、基材40の温度である。図18(B)に示されるように、基材40の温度は、熱源(被測定体6の深部4)から離れるにつれて低下するが、温度分布を示す特性線は直線とはならず、曲線となる。先に説明したように、基材40の高さを高くすると、円柱の側面の面積が増加し、円柱状の基材40の側面からの放熱が増加し、そして、その側面からの放熱の量は、熱源(被測定体6の深部4)からの距離に対応して変化するからである。
図18(A)のデータ例は、図18(B)に示すような、基材40の熱分布の下で深部温度を算出した結果である。Tout1は、23℃であり、Tout2は30℃であり、Tout3は35℃である。Tb1は、29.62274℃であり、Tb2は、33.31137℃であり、Tb3は、35.94611℃である。Tp1は、23.29526℃であり、Tp2は、30.14763℃であり、Tb3は、35.04218℃である。測定(算出)された深部温度は、37.00000℃であり、実際の深部温度Tc(=37℃)と比較して、誤差は認められなかった。つまり、基材40の内部の温度分布が、曲線で表される場合であっても、本実施形態の温度測定方法を使用すれば、極めて高精度に深部温度を測定できることがわかった。したがって、基材40の高さに制約はなく、また、接触面の面積と基材40の高さの比に関する制限もない。よって、かなり自由に、第1ユニット100を構成することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、深部温度の算出式として、前掲の実施形態とは異なる第2の算出式を使用する。また、本実施形態では、温度の測定(温度情報の取得)を、少なくとも2回、実行する。
図19は、第2の実施形態における、深部温度の測定方法を説明するための図である。図19に示すように、本実施形態では、第1測定と第2測定を実行し、第1測定における環境温度Tout1(ならびに第3温度Tout1’)と、第2測定における環境温度Tout2(第3温度Tout2’)とを異ならせる。
第1測定で得られた第1温度をTb1とし、第2温度をTp1とし、第3温度をTout1’とし、第2測定で得られた第1温度をTb2とし、第2温度をTp2とし、第3温度をTout2’とする。
演算部74は、第1測定で得られた第1温度Tb1および第2温度Tp1と、第2測定で得られた第1温度Tb2および第2温度Tp2と、を用いて、第2算出式による演算を実行して、深部温度Tcを算出する。前記第2算出式は、下記の式(11)によって表される。
式(11)による第2算出式を使用するときは、上述のとおり、第2測定における環境温度Tout2の値(第3温度Tout2’)が、第1測定における環境温度Tout1(第3温度Tout1’)とは異なる値である必要がある。
式(11)で示される第2算出式によると、熱収支に起因する誤差成分を生じさせずに、深部温度を測定できる理由について、図20および図21を用いて説明する。
図20(A)および図20(B)は、特許文献1に示される従来例において、熱収支に起因する誤差成分が生じる理由を説明するための図である。図20(A)は、従来例の温度測定部における、6点の温度(T1,T2,Tt1、T2,T4,Tt2)および熱抵抗の状態を示している。図20(B)は、図20(A)に示される温度測定部における、環境温度(第3温度)Toutと深部温度Tcと間の、熱抵抗と熱流束の状態を示している。
従来例では、並列に配置された2つの温度測定部を使用して、2つの熱流の系を形成している。また、環境温度(第3温度)Toutは一定であり、また、基材37の上面に設けられた第1断熱材38Aおよび第2断熱材38Bによって、温度測定部は、環境(大気)から、熱的に遮断されている。また、環境(大気)における熱伝達係数(気体中の熱の移動度に比例する定数)はnである。また、被測定体の表層部の熱抵抗をRbとし、基材37の熱抵抗をR1とし、第1断熱材38Aの熱抵抗をR2とし、第2断熱材38Bの熱抵抗をR3としている。
従来例では、環境温度Toutが一定であるという前提の下で、断熱材38Aと断熱材38Bとを異ならせることによって、異なる2つの熱流束を形成している。つまり、従来例では、熱流束Qb1と、熱流束Q11と、熱流束Q12との間に、Qb1=Q11=Q12という関係が成立し、また、熱流束Qb2と、熱流束Q21と、熱流束Q22との間に、Qb2=Q21=Q22という関係が成立することを前提としている。
しかし、温度測定部の小型化が促進されると、第1の系の3点の温度(T1,T2,Tt1)ならびに第2の系における3点の温度(T2,T4,Tt2)は、環境温度(第3温度)Toutの影響を受けるようになる。よって、Qb1=Q11=Q12、ならびに、Qb2=Q21=Q22であるという前提が成立しなくなる。この場合には、従来例の算出式である式(F)の左辺は、Tc+ΔTcとなり、熱収支の差分に相当する測定誤差ΔTcが生じる。
つまり、特許文献1に記載される温度計では、温度測定部を、表層部に設けられた断熱材によって環境(大気)から遮断した構成となっており、したがって、熱流束は温度測定部の頂部にて終端し、環境(大気)との間の熱収支はほとんどなく、無視できるという設計思想の下で設計されている。しかし、温度計の小型化を、さらに促進した場合には、例えば、温度測定部の側面と環境(大気)との間での熱収支が顕在化し、熱収支の差分に対応する測定誤差を無視できなくなる。
図21(A)および図21(B)は、本発明の第2実施形態において、熱収支に起因する誤差成分が生じない理由を説明するための図である。図21(A)は、第2実施形態にかかる温度測定部における温度と熱抵抗の状態を示している。図21(B)は、図21(A)に示される温度測定部における、環境温度Tout1,Tout2と、深部温度Tcと間の、熱抵抗と熱流束の状態を示している。
本実施形態では、少なくとも2回の温度測定(温度情報の取得)を実行し、各温度測定では、環境温度Toutの値を異ならせている(Tout1≠Tout2)。環境温度を異にして、2回の温度測定を実行したとき、第1測定では、始端を被測定体の深部4とし、終端を環境(大気等)とする第1の熱流束の系が構成されることになる。また、第2測定では、始端を被測定体の深部とし、終端を環境(大気等)とする第2の熱流束の系が構成される。環境温度Toutは、各系で異なることから、各系の熱流束は互いに異なる熱流束である。
また、環境(大気)7における熱伝達係数(気体中の熱の移動度に比例する定数)はnである。第1温度はTb1(あるいはT1),Tb2(あるいはT3)である。また、第2温度はTp1(あるいはT2),Tp2(あるいはT4)である。被測定体6の表層部5における熱抵抗はRbであり、基材40の熱抵抗はR1である。また、図21(B)に示されるように、第1の系においては、熱流束Qb1と、熱流束Q11と、熱流束Qa1が生じている。第2の系においては、熱流束Qb2と、熱流束Q21と、熱流束Qa2が生じている。
これらの2つの熱流束の系では、熱流束の終端が、温度の変動が許容されている環境7であることから、従来例において問題となる熱収支の差分という概念が生じない。つまり、その熱収支も含めて、環境温度Tout(ならびに第3温度Tout’)が一義的に定まる(適宜、変動する)というだけである。
また、使用している基材40の熱伝導率(つまり熱抵抗)は、第1の熱流束の系、第2の熱流束の系で同じである。つまり、熱抵抗の分布は、第1の系と第2の系との間で、何ら変化しない。よって、基材に第1測定点と第2測定を設定したとき、(第1測定点と第2測定点の温度の差)/(被測定体の深部温度Tcと第1測定点の温度の差)は、第1の熱流束の系、第2の熱流束の系ともに同じである。よって、下記の式が成立する。
この式(12)を、Tcについて解くと、上述の第2算出式(上記の式(11))が得られる。従来例における、ΔTcという誤差成分の概念自体が生じないことから、第2算出式によれば、ほぼ理想的な深部温度Tcが得られる。
第2算出式(式(11))は、形式的には従来例における算出式(式(F))と同じように見えるが、第2算出式(式(11))は、従来例の算出式(式(F))とは、根本的に異なる算出式である。つまり、第2算出式(式(11))は、環境を終端とする2つの熱流束の系から得られたデータに基づいて、基材における熱抵抗の比が同じであるという観点から導き出される算出式であり、根本的に異なるものである。
なお、本実施形態では、環境温度Tout(ならびに第3温度Tout’)は、深部温度Tcの算出自体には直接的には関係しない。但し、上述のとおり、第1測定におけるTout1(ならびにTout1’)と、第2測定におけるTout2(ならびにTout2’)とは異なっている必要があり、Tout1=Tout2(Tout1’=Tout2’)であるときは、正確な深部温度の算出ができない。
よって、第3温度センサー55で測定された、Toutに相当する第3温度Tout’は、算出可能条件(第1測定と第2測定における環境温度(つまり第3温度)が異なるという条件)が満足されているかを確認するために、つまり、演算の可否の判断に使用することができる。
図22(A)および図22(B)は、第2実施形態における、深部温度の測定手順と、第2実施形態における深部温度の算出結果例を示す図である。まず、温度データが取得される(ステップS40)。温度データには、第1測定で得られた第1温度Tb1、第2温度Tp1、第3温度Tout1’と、第2測定で得られた第1温度Tb2、第2温度Tp2、第3温度Tout2’(≠Tout1’)と、が含まれる。次に、第2算出式を用いて、深部温度Tcを演算する(ステップS50)。
図22(B)は、第2実施形態における深部温度の算出結果例を示す図である。ここでは、図13に示される測定環境を使用する。第1測定における第3温度(環境相当温度)Tout1’が23℃のとき、第1温度Tb1は28.371℃であり、第2温度Tp1は26.2482℃となる。第2測定における環境相当温度(第3温度)Tout2’が30℃のとき、第1温度Tb2は32.6855℃であり、第2温度Tp2は31.6241℃となる。熱源となる深部温度Tcは37℃に設定されている。この深部温度に対する算出結果は37.00000であり、誤差は生じなかった。よって、本実施形態によれば、極めて高精度に、深部温度を測定できることがわかった。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、より高精度な深部温度の測定が可能となる。また、温度測定部の小型化と、高精度な測定とを両立することができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。