JP2016057198A - 熱流計測装置及び代謝計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱源と温度センサーとの位置関係による計測温度差を補償することのできる技術を提供すること。【解決手段】指輪タイプの熱源計測装置4は、受熱部411にて被計測体7と接触して受熱し、第1熱拡散体412、伝熱層413、第2熱拡散体414、放熱部415の順に伝熱して放熱する。第1熱拡散体412の温度を第1温度センサー416で計測し、第2熱拡散体414の温度を第2温度センサー417で計測し、それらの温度から熱流を算出する。第1熱拡散体412及び第2熱拡散体414の熱拡散効果により、熱源たる動脈血管8と第1温度センサー416や第2温度センサー417との相対位置がどのようであっても安定して高精度に温度計測できる。【選択図】図2

Description

本発明は、熱流を計測する熱流計測装置等に関する。
温度や熱流の計測は、計測対象の状態を把握する上で重要である。
例えば、体温を長時間に渡り連続的にモニタリングすることで健康状態を監視したり、体幹部位や末梢部位から放出される熱流を計測することで生体リズムや代謝・自律神経の機能等を監視することが可能となる。
公知の体温計測に係る技術としては、例えば被計測体に2つの温度センサーを貼り付けてそれぞれで体温を計測し、計測位置の差を反映した補正を施すことで精密な計測を実現する技術(例えば、特許文献1を参照)や、温度センサーの肌への密着度を高めて計測精度を向上させる技術(例えば、特許文献2を参照)が知られる。
また、公知の熱流計測に係る技術としては、皮膚から放出される熱をヒートパイプにより熱速センサーに導く技術(例えば、特許文献3を参照)や、皮膚表面温度を計測するプローブの周辺に電熱ヒーターを設けて、皮膚表面からの熱放散を補償して計測精度を高める技術(例えば、特許文献4を参照)などが知られるところである。
特開2014−55963号公報 特表2007−530154号公報 特表2004−532065号公報 特開2002−202205号公報
人体のような生体における熱源の代表例として動脈血管が挙げられるが、動脈血管の位置は厳密には個体それぞれにより異なる。そのため、熱源に対する温度センサーの位置関係によって、計測される温度に違いが生じ得る。
位置関係に基づく計測差を補償する方法として、例えば、より多くの温度センサーを搭載してその平均を採用することが考えられる。しかし、製造コストや計測装置の大型化の面で好ましくない。特に、近年では、計測装置を装着したままの長時間モニタリングへの要望が高く、計測装置の大型化は装着性や使用感の観点からも好ましくない。
本発明は、こうした事情を鑑みて考案されたものであり、熱源と温度センサーとの位置関係による計測温度差を補償することのできる技術を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するための第1の発明は、第1熱拡散体と、前記第1熱拡散体に熱的に接続する第1温度センサーと、第2熱拡散体と、前記第2熱拡散体に熱的に接続する第2温度センサーと、前記第1熱拡散体と前記第2熱拡散体との間に配置された伝熱層と、を備えた熱流計測装置である。
第1の発明によれば、第1熱拡散体から伝熱層を経て第2熱拡散体へ向かう伝熱、或いはその逆の伝熱を利用して熱流を計測する構成において、第1熱拡散体や第2熱拡散体への伝熱に位置的なムラがあったとしても、熱拡散効果により第1熱拡散体或いは第2熱拡散体の温度は均一となる。従って、熱源と第1温度センサーとの位置関係、或いは熱源と第2温度センサーとの位置関係に影響されない温度計測や熱流計測が可能となる。
第2の発明は、前記第1熱拡散体の熱伝導率が、前記伝熱層の熱伝導率よりも高く、前記第2熱拡散体の熱伝導率は、前記伝熱層の熱伝導率よりも高い、第1の発明の熱流計測装置である。
第2の発明によれば、第1熱拡散体から第2熱拡散体へ伝熱するまでに、第1熱拡散体の熱拡散効果によりその温度が均一になるのに十分な時間を確保することが可能となる。よって、第1熱拡散体から第2熱拡散体への伝熱ムラを抑制し、一層、熱源と温度センサーとの相対位置関係に影響され難くなる。
より好ましくは、第3の発明として、前記第1熱拡散体の熱伝導率および前記第2熱拡散体の熱伝導率が100(W/mK)以上で、前記伝熱層の熱伝導率が0.3〜100(W/mK)である、第1又は第2の発明の熱流計測装置を構成するとよい。
もし、熱流計測装置を指輪のように、被計測体の末梢部(例えば,手指)の外周を覆う構造とするならば、前記第1熱拡散体が被計測体と接触する受熱面積は204〜690(mm)である、第1〜第3の何れかの発明の熱流計測装置を構成することができる。
第4の発明によれば、様々な手指のサイズに対応しつつも、手指の関節環に適当に納まる環が構成されるので、装着性や使用感の点で優れる。長時間のモニタリングを想定する使い方にも好適と言える。
第5の発明は、前記第1熱拡散体の最大温度勾配よりも前記伝熱層の最大温度勾配の方が大きく、前記第2熱拡散体の最大温度勾配よりも前記伝熱層の最大温度勾配の方が大きい、第1〜第4の何れかの発明の熱流計測装置である。
第5の発明によれば、一層、熱源と温度センサーとの相対位置関係に影響され難くなる。
第6の発明は、前記第1熱拡散体は、第1曲面を有し、前記第2熱拡散体は、第2曲面を有し、前記伝熱層は、前記第1曲面と前記第2曲面とに挟持されている、第1〜第5の何れかの発明の熱流計測装置である。
第6の発明によれば、被計測体が人体のような外形に曲面を有する場合に好適である。
第7の発明は、第3熱拡散体と、前記第3熱拡散体に熱的に接続する第3温度センサーと、を更に備え、前記第3熱拡散体と前記第3温度センサーとは、前記伝熱層内に配置されている、第1〜第6の何れかの発明の熱流計測装置である。
第7の発明によれば、全体への熱拡散効果を高めることができるので、熱源と温度センサーとの相対位置が計測精度に及ぼす影響をより一層低減できる。
第8の発明は、前記第2熱拡散体が、前記第2曲面の反対面となる第3曲面を有し、前記第3曲面側に開口部を有する保護部を更に備える、第1〜第7の何れかの発明の熱流計測装置である。
第8の発明によれば、第2熱拡散体からの放熱性を確保しつつ、他の物体が第2熱拡散体に接触し難い構造とすることができる。
第9の発明は、前記保護部の熱伝導率が、前記伝熱層の熱伝導率よりも小さい、第8の発明の熱流計測装置である。
第9の発明によれば、仮に保護部に計測対象外の物体が接触した場合でも、計測への影響を低減できる。
第10の発明は、第1〜第9の何れかの発明の熱流計測装置を備え、前記熱流計測装置の計測結果に基づき、代謝量を推量する、代謝計測装置である。
第10の発明によれば、第1〜第9の何れかの発明の熱流計測装置で得られる精度の高い計測結果に基づいて代謝量を推量することができる。
熱流計測装置の構成例を示す図。 熱流計測装置の径断面図。 熱流計測装置の軸断面図。 熱流測定装置の軸側から見た一端側面図。 熱流測定装置の軸側から見た他端側面図。 ヒートリングにおける熱の伝わり方を説明するための径方向断面図。 ヒートリングにおける熱の伝わり方を説明するための径方向断面図。 ヒートリングにおける熱の伝わり方を説明するための径方向断面図。 熱流と代謝量の相関例を示すグラフ。 ヒートリングの変形例を示す断面図。 代謝計測装置の変形例を示す斜視図。
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態における代謝計測装置の構成例を示す図である。
代謝計測装置2は、被計測者の手指に装着した指輪状の熱流計測装置4と、熱流計測装置4で計測された温度或いは熱流Qに基づいて代謝量を推量的に算出する演算装置6とを備える。
演算装置6は、演算部、記憶部、通信部、入力部、及び画像表示部を備え、代謝量を演算するプログラムを実行可能なコンピューターである。演算装置6は、専用設計されたハードウェアで実現することもできるが、汎用のパーソナル・コンピューターや、スマートフォン、タブレット型コンピューター、腕時計型等のウェアラブルコンピューターなどに、熱流計測装置4とのデータ通信や代謝量の演算を行うアプリケーションプログラムを実行させることで実現してもよい。
熱流計測装置4は、1)連続的な温度計測機能と、2)計測した温度から熱流Q等の生体情報を算出する演算機能と、3)計測値及び算出した生体情報を記憶するデータロガー機能と、4)記憶したデータを演算装置6へ送信するデータ通信機能と、を有する電子装置でありウェアラブルコンピューターである。
具体的には、熱流計測装置4は、熱源を内包する被計測体の外周に装着される環状体であって、ヒートリング41と、ヒートリング41の両端面及び外周を覆う保護部47とを備え、幅広の指輪型の外観を有する。
ヒートリング41は、被計測体(本実施形態では人の手指とする)の周囲を囲み、内周の接触部位から受熱し、外周から大気へ自然放熱する手段である。内径側(伝熱上流側)と外径側(伝熱下流側)との各温度を計測し、計測値に基づいて熱流Qを求めることができる。ヒートリング41の内径は、想定される計測対象の外形により適宜設定可能である。本実施形態では、計測対象として人の手指を想定しているので真円を含む楕円とされる。その内径は様々なサイズが用意され、直径が10〜30mm程度とされる。
保護部47は、例えば、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene copolymer)やPMMA(Poly Methyl Methacrylate)樹脂などの合成樹脂で成形され、計測対象以外の物体のヒートリング41への接触を防止するとともに、熱流計測装置4の制御用電子部品等(後述)を内包する。断熱性の観点から、熱伝導率λp<0.3W/mKとする材料を用いるのが望ましい。ヒートリング41を覆う厚さは、断熱性の観点からすれば厚いほど好ましいが、重量増や装着感の観点から1〜5mm程度とする。
保護部47のうちヒートリング41の外周面を覆う部分には、適当な外周開口部471が単数または複数設けられており、ヒートリング41が周辺環境に接して自然放熱するのを助ける。開口率は、他物体の接触防止の効果とヒートリング41の放熱性とから適宜設定する。例えば、開口率30%〜90%とする。なお、開口部の形状や分布は一様に限らず、隣の指と接触し易い側部は開口率を下げて、上部と下部は開口率を高くすると言った偏りをもたせても良い。
図2と図3は、それぞれ熱流計測装置4の径方向断面図及び軸方向断面図である。
ヒートリング41は、径方向に層状の構造を有している。内側から順に、受熱部411と、第1熱拡散体412と、伝熱層413と、第2熱拡散体414と、放熱部415と、第1熱拡散体412の温度を計測する第1温度センサー416と、第2熱拡散体414の温度を計測する第2温度センサー417と、を有する。
受熱部411は、被計測体と接触して受熱する。本実施形態では、表面保護の観点からテフロン(登録商標)薄膜層などにより実現するが、第1熱拡散体412の内面が兼ねるとしても良い。
第1熱拡散体412は、受熱部411と熱的に接続され、受熱部411から伝えられた熱をヒートリング41の周方向に拡散させる環状部材である。例えば、アルミニウム、銅、銀、カーボンナノチューブなどの熱伝導率の高い材料(熱伝導率λs>100W/mK)により作られる。
第1熱拡散体412の径方向の厚さdは、熱伝導と機械的強度との観点から適宜設定可能であるが、例えば、厚さd=0.05mm〜0.5mmとする。
第1熱拡散体412の軸方向の幅wは、想定される熱源の大きさによる。本実施形態では手指を想定しているので、熱源となる動脈の直径を最大10mmと想定すれば、温度分布の平均化を促進する意味から少なくともその半分とし、指の関節間距離を考慮して、幅w=5mm〜10mm程度とする。
伝熱層413は、第1熱拡散体412の外周面(第1曲面)と第2熱拡散体414の内周面(第2曲面)との間に挟持され、且つ熱的に接続された伝熱材であって、第1熱拡散体412にて全周に拡散された熱を第2熱拡散体414へ伝達する。
伝熱層413の材料は、第1熱拡散体412から第2熱拡散体414へできるだけ均一に熱を伝えられるように、熱伝導率λが第1熱拡散体の熱伝導率λsよりも小さくなるように選択される。例えば、第1熱拡散体を熱伝導率λs>100W/mKとすれば、伝熱層413の熱伝導率λを0.3W/mK〜100W/mKとして、ガラス、セラミックス、ステンレスやチタンなどの金属、プラスチックなどの材料、金属粉やカーボン材料(カーボンナノチューブ等)をガラスや樹脂に分散させた複合材料、を選択することができる。伝熱層413の材質をガラス、セラミックス、ステンレスやチタンなどの金属、プラスチックなどの材料とし、その熱伝導率λを0.3W/mK〜20W/mKとするのがより好ましい。
伝熱層413の厚さは、大きい程ヒートリング41の内外の温度差が生じ易くなり熱流を高精度に測定できる点で有利である。しかし、本実施形態の熱流計測装置4は手指への装着を想定しているため、重量や装着感、他の手指や衣服等とのひっかかりなどを考慮して、1mm〜5mm程度とする。
第2熱拡散体414は、伝熱層413から伝わった熱を更にヒートリング41の周方向に拡散して均一化する。第2熱拡散体414は、その熱伝導率λeが伝熱層413の熱伝導率λよりも大きい値となる材料で作られる。第1熱拡散体412と同じ材料を選択してもよい。
放熱部415は、第2熱拡散体414から伝わった熱を周辺環境へ放熱する。本実施形態では、表面保護の観点からテフロン薄膜層などにより実現するが、第2熱拡散体414の外周面が兼ねるとしても良い。
第1温度センサー416および第2温度センサー417は、例えばサーミスターや熱電対などの公知の測温用センサーにより実現され、CPUモジュール42に接続されている。
なお、ヒートリング41の軸方向端面には、断熱材49が貼設されており、軸方向面から保護部47への伝熱は抑制されるように配慮されている。
図4及び図5は、熱流計測装置4の軸側から見た一端側面図及び他端側面図である。保護部47は、ヒートリング41の軸方向端面を覆う部分に、熱流計測装置4の制御用電子部品等(後述)を内包する。
具体的には、CPU(Central Processing Unit)モジュール42と、メインメモリーモジュール431と、分析データ用メモリーモジュール432と、無線通信モジュール44と、アンテナモジュール45とを内包する。また、これらに電力を供給するためのバッテリー46が内包されている。なお、これらを結ぶデータ通信や電力供給用の電線48も、適宜保護部47内に内包されているものとする。バッテリー46は、非接触・無線充電により充電可能な構成とすると好適である。
CPUモジュール42は、熱流計測装置4の制御を行う制御基板に相当する。例えば、CPU421やICメモリー422、インターフェース回路423、操作スイッチ424、ステータス表示用LED425などを搭載する。勿論、これらの一部又は全部を纏めて1つの集積回路により実現する構成も可能である。
そして、CPUモジュール42は、ICメモリー422に記憶されているプログラムをCPU421で実行して、熱流計測装置4を統合的に制御する。
具体的には、CPUモジュール42は次の機能を実現する。
1)CPU421のシステムクロックを用いた計時機能。
2)インターフェース回路423を介して接続された第1温度センサー416及び第2温度センサー417からそれぞれ第1熱拡散体412の温度Ts及び第2熱拡散体414の温度Teを周期的に取得する計測機能。
3)メインメモリーモジュール431を利用して、計測した温度Ts及び温度Teからヒートリング41を単位時間当たりに流れる熱流Q及び熱流束qを算出する演算機能。
4)分析データ用メモリーモジュール432へ、温度Ts・温度Te・熱流Q等を時系列に記憶させるデータログ機能。
5)無線通信モジュール44及びアンテナモジュール45を介して、演算装置6とデータ通信を実現し、分析データ用メモリーモジュール432に記憶されている分析データを送信するデータ通信機能。
勿論、これら以外の機能を適宜実現させるとしてもよい。
[動作の説明]
次に、代謝計測装置2の動作について説明する。
先ず、被計測体に熱流計測装置4を装着し、操作スイッチ424を操作して電源を入れる。なお、本実施形態では、計測対象者の手指に熱流計測装置4を嵌めることとし、ヒートリング41の内周面には手指の皮膚がほぼ満遍なく接しているものとする。
図6〜図8は、ヒートリング41における熱の伝わり方を説明するための径方向断面図であって、矢印により熱の移動を表している。なお、理解を容易にするために、切断面のハッチングを省略している。
図6に示すように、人の指を被計測体7とすると、熱源は動脈血管8であり、熱流がこの動脈血管8から各方向へ分散する(動脈血管8の周りの太黒矢印)。
この時、動脈血管8は指の腹側(図で言うところの下側)に近いため、ヒートリング41には、受熱部411のうちの指の腹側に接触する部分に最も早く熱が到達する。対して、受熱部411のうち、指の背側(図で言うところの上側)に接触する部分は、動脈血管8から遠いため遅く熱が到達する。すなわち、受熱部411から伝達される熱の分布にムラが生じ得ることになる。
しかし、受熱部411から伝達される熱の分布にムラがあるとしても、受熱部411から熱が伝わる第1熱拡散体412は高い熱伝導率λsを有しているため、伝達された熱は分布ムラを解消するように第1熱拡散体412全体へほぼ均一に拡散する(受熱部411及び第1熱拡散体412の周方向に沿った小黒矢印)。換言すると、第1熱拡散体412は、熱拡散効果により熱源の位置によらず全体が等温になる。当然、第1温度センサー416で計測される温度も、熱源の位置に影響されないことになる。換言すれば、第1温度センサー416が1つであっても、そして熱流計測装置4を手指に対してどのような向きで嵌めても計測に影響を与えないと言える。温度センサーの個数低減は、製造コストの低減に大いに貢献し、装着向きを任意とすることは使い勝手や使用感の向上をもたらすことになる。
さて、第1熱拡散体412の温度が均一になると、図7に示すように、熱は第1熱拡散体412から伝熱層413へ径方向に伝わり、やがて第2熱拡散体414へ達する(伝熱層413の放射状のハッチング矢印)。更に、熱は放熱部415に伝わって、外周開口部471として露出する部位から周辺環境(本実施形態では大気)へ放熱される。
外周開口部471の配置は、保護部47の全周に均一に設けられているとは限らない。一見すると、放熱部415のうち保護部47が覆っている部分と、外周開口部471により露出している部分とでは、放熱度合いの違いから温度ムラが生じるようにも思えるが、第2熱拡散体414が高い熱伝導率λeを有しているためその懸念はない。従って、第2温度センサー417で計測される温度は、外周開口部471との相対位置に依存しないことになる。これは、熱流計測装置4をできるだけ薄く作成する際に、外周開口部471のデザインや第2温度センサー417の配置レイアウトを決定する上で大きな自由度を与えることになり、装着性や使用感を向上させる余地を増す効果を生む。
一方、熱流計測装置4の電源がONになると、CPUモジュール42ではCPU421がICメモリー422からプログラムを読み出して実行し、システムクロックを用いた計測時間の計時処理と、第1温度センサー416による温度Ts及び第2温度センサー417による温度Teの連続的な計測処理を開始する。
そして、計測開始から第2温度センサー417で安定して温度が計測できる程度に適当な時間が経過したならば、CPUモジュール42は、次の方法で熱流Qと深部温度Tcを算出する。
先ず、ヒートリングを径方向に伝熱する熱流束qは、式(1)で表される。但し、λ=伝熱層413の熱伝導率、dT/dr=ヒートリング41の径方向の温度勾配である。
Figure 2016057198
いま、ヒートリング41の径方向の位置rにおける熱流束qは、円筒面を単位時間に流れる熱流Qに対して式(2)の関係にある。
Figure 2016057198
式(1)と式(2)とから、微小温度勾配dTは式(3)で示される。
Figure 2016057198
これを半径方向にrで積分し、境界条件となる位置r=Rs(受熱部411の内周半径:図2参照)において、温度T=Ts(第1温度センサー416による計測温度)とすると、半径方向の位置rにおける温度Tは式(4)で表される。但し、logは自然対数である。
Figure 2016057198
式(4)において、位置r=Re(放熱部415の外周半径:図2参照)の温度T=Te(第2温度センサー417による計測温度)とすると、ヒートリング41内の温度勾配は式(5)で表される。
Figure 2016057198
よって、式(5)から第1温度センサー416で計測される温度Ts、第2温度センサー417で計測される温度Teを用いて、被計測体の発する熱流Qを式(6)で算出できる。
Figure 2016057198
熱流Qを算出したならば、CPUモジュール42は更に被計測体の深部温度Tcを算出する。深部温度Tcは、環境温度の影響を受けにくい核心部の温度すなわち深部体温である。近年、熱中症予防や良質な睡眠を得るためなど様々な健康管理のパラメーターとして利用されている。従来の皮膚表面温度から深部温度Tcを測定する計測装置では、皮膚表面からの放熱を補償(熱流補償)するために別途電熱ヒーター部を設ける必要があったが、本実施形態では第1熱拡散体412の熱拡散効果と、これを覆う熱伝導率λの低い伝熱層413で覆う構造とによって熱流補償を実現することで、ヒーター部無しで深部温度Tcを計測可能としている。
具体的には、前述のように、熱源の位置にかかわらず被計測体7からの熱は、第1熱拡散体412の熱拡散効果により全周で均一化される(図6参照)。被計測体7のうち、熱源(動脈血管8)から遠い部分(図6の上側、手指なら背側)ほど温度は低くなると思われるが、熱は第1熱拡散体412を介して伝わることで(図6の動脈血管8より上方で、中心向きに描かれているハッチング矢印を参照)、熱源から遠いために比較的低温になりがちな部分の温度も上がる。そしてやがて、図8に示すように、ある程度の深さまではあたかも深部温度Tcの円筒状の熱源(深部層9)が存在して、熱が一定勾配でヒートリング41の外周方向へ伝搬すると見なせるようになる。
深部層9において最も深い、すなわち最も温度が高い部位の温度を深部温度Tcとすると、深部層9は熱伝達率λtで伝熱する伝達部と考えられるから、深部層9の厚さをdとすると、前出の式(5)から深部温度Tcと受熱部411の温度Tsとの温度差は式(7)で表される。
Figure 2016057198
また、式(5)と式(7)とから、深部温度Tcと第2温度センサー417で計測される温度Teとの温度差は、式(8)で表される。
Figure 2016057198
そして、式(8)と式(7)の両辺を除算して熱流Qを消去し、これをDとおくと式(9)が得られる。
Figure 2016057198
ここで、Dは被計測体7の発する熱流Qに依存しないために定数とみなせる。よって、深部温度Tcは式(10)により算出することができる。
Figure 2016057198
CPUモジュール42は、温度Ts及び温度Teを計測する都度、式(6)から熱流Qを算出する。そして、計測開始からの経過時間と、温度Tsと、温度Teと、熱流Qと、深部温度Tcとを対応づけて、分析データ用メモリーモジュール432に時系列に記憶制御する。なお、記憶制御と並列して、演算装置6とのデータ通信を確立して、分析データ用メモリーモジュール432に記憶されたデータを送信する制御を行うとしても良い。
演算装置6は、熱流計測装置4から受信したデータに含まれる熱流Qから代謝量Qallを求めて算出結果を逐次表示する。グラフ表示するなど、公知の統計処理を行うとしてもよい。
具体的には、演算装置6には予め実験により得られた熱流Qと代謝量Qallとの相関関数Fが記憶されており、これを参照して代謝量Qallを得る。
関数Fは、例えばプロファイルデータを用いて次のようにして用意することができる。
被計測体として人を想定するならば、性別・身長・体重・年齢・体脂肪などの個人情報の属性パラメーター(プロファイル)が異なる多数の被検者について、運動・温度環境などの付加を変化させた状態で、呼気ガス分析器により酸素消費量VO2と二酸化酸素消費量VCO2を計測し、式(11)により代謝量Qallを算出する。また、これと平行して、熱流計測装置4による熱流Qを計測する。
Figure 2016057198
そして、計測データを、性別・身長・体重・年齢・体脂肪などのパラメーターによって分類したグループ別に、熱流Qと代謝量Qallとの相関をとり、回帰分析により関数Fを統計的に求める(図9参照)。演算装置6には、グループ別に、グループを定義する上記パラメーターの条件と、求められた関数Fとが、対応付けて記憶されている。或いはプログラムに組み込まれているとしてもよい。
代謝計測装置2のオペレーターは、演算装置6に、被計測体の上記パラメーターの値を入力する。演算装置6は入力された値に適合するグループを判定する。そして、判定されたグループに対応する関数Fを参照して、熱流計測装置4から受信した熱流Qから代謝量Qallを求める。そして、熱流Qと代謝量Qallの値とを時系列に数値表示或いはグラフ表示する。
以上、本実施形態によれば、被計測体7から受熱部411への伝熱に位置的なムラがあったとしても、第1熱拡散体412はその熱拡散効果により温度は均一となる。従って、熱源(動脈血管8)と第1温度センサー416との位置関係にかかわらず、安定して精度の高い温度Tsを計測できる。また、第1温度センサー416を、ただ1つの温度センサーとすることができるため、製造コストを抑制することができる。
また、放熱に着目すると、放熱部415は外周開口部471に露出した部位から限定的に大気に放熱するので放熱ムラが生まれるが、第2熱拡散体414の熱拡散効果により放熱ムラにかかわらず第2温度センサー417で安定して精度の高い温度Teを計測できる。
また、第1熱拡散体412と第2熱拡散体414の熱伝導率が、伝熱層413の熱伝導率より高く、且つ前者の最大温度勾配が後者のそれより高くなるように構成されている。これにより、第1熱拡散体412から第2熱拡散体414へ伝熱し、温度が均一になるまでの時間を低減することが可能となる。よって、第1熱拡散体412から第2熱拡散体414への伝熱ムラを抑制し、より一層、熱源と温度センサーとの相対位置関係に影響され難い構造を有している。
また、熱流計測装置4は、手指(被計測体)への装着向きを気にする必要がない指輪形状を有しているため、装着が容易であり、長時間のモニタリングの使用に応える構造と言える。
〔変形例〕
なお、本発明の実施形態は上記に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
[その1]
例えば、図10に示すように、伝熱層413に第3熱拡散体418と、第3熱拡散体418の温度を計測する第3温度センサー419とを追加した構成も可能である。第3熱拡散体418は、第1熱拡散体412や第2熱拡散体414と同様に実現される。また、第3温度センサー419は、第1温度センサー416や第2温度センサー417と同様にして実現される。当該構成によれば、上記実施形態よりもヒートリング41の周方向への熱拡散能力を高めることができるので、より一層、熱源と温度センサーとの相対位置や冷熱源と温度センサーとの相対位置に影響されない計測を実現できる。
また、当該構成を適用した場合、熱流Qは、式(6)に於いて第2温度センサー417で計測された温度Teに代えて、第3温度センサー419で計測された温度を用いることとして熱流Qを算出する、或いは、式(6)に於いて第1温度センサー416で計測された温度Tsに代えて、第3温度センサー419で計測された温度を用いて熱流Qを算出するとしてもよい。
更には、式(6)に適用する温度センサーの組合せを第1温度センサー416,第2温度センサー417、第3温度センサー419の中から複数選択して熱流Qを1次算出し、それらを平均して最終的な熱流Qとする構成も可能である。
[その2]
上記実施形態では、被計測体として人の手指を前提として説明したが、被計測体の外径が手指程度であれば、足の指などで計測してもよいのは勿論である。
また、人であれば指等の抹消部に限らず体幹部(例えば、胸部や腹部)で計測するとしてもよい。その場合、例えば図11の代謝計測装置2Bで示すように、熱流計測装置4のヒートリング41の径を上記実施形態よりも大きくすればよい。具体的には、ヒートリング41の軸方向の幅を10mm〜100mm程度、周長が600mm〜1200mm程度のベルトタイプとすると、装着性と側面からの熱流出の影響をできるだけ小さくできるので好適である。ベルトのバックルに相当する部位には、CPUモジュール42やメインメモリーモジュール431、分析データ用メモリーモジュール432、無線通信モジュール44、アンテナモジュール45などを内蔵し、更に小型の演算装置6を着脱式に備えることとしてもよい。なお、ベルトタイプとする場合には、保護部47は省略することができる。
[その3]
また、上記実施形態では、熱流計測装置4にて温度Tsと温度Teとから熱流Qを算出する構成としたが、熱流計測装置4を、温度Tsと温度Teとを計測し時系列に記憶する温度計測記録装置としてのみ機能させ、熱流Qは演算装置6にて演算する構成としてもよい。
[その4]
また、上記実施形態では、人に代表される生体を計測対象としているが、計測対象はこれに限らない。例えば、温度管理等が必要な工業用のパイプやチューブ、タンク、保温ケース、炉などを計測対象としてもよい。
2…代謝計測装置、4…熱流計測装置、6…演算装置、7…被計測体、8…動脈血管、9…深部層、41…ヒートリング、42…CPUモジュール、44…無線通信モジュール、45…アンテナモジュール、46…バッテリー、47…保護部、48…電線、49…断熱材、411…受熱部、412…第1熱拡散体、413…伝熱層、414…第2熱拡散体、415…放熱部、416…第1温度センサー、417…第2温度センサー、418…第3熱拡散体、419…第3温度センサー、421…CPU、422…ICメモリー、423…インターフェース回路、424…操作スイッチ、425…ステータス表示用LED、431…メインメモリーモジュール、432…分析データ用メモリーモジュール、471…外周開口部

Claims (10)

  1. 第1熱拡散体と、
    前記第1熱拡散体に熱的に接続する第1温度センサーと、
    第2熱拡散体と、
    前記第2熱拡散体に熱的に接続する第2温度センサーと、
    前記第1熱拡散体と前記第2熱拡散体との間に配置された伝熱層と、
    を備えた熱流計測装置。
  2. 前記第1熱拡散体の熱伝導率は、前記伝熱層の熱伝導率よりも高く、
    前記第2熱拡散体の熱伝導率は、前記伝熱層の熱伝導率よりも高い、
    請求項1に記載の熱流計測装置。
  3. 前記第1熱拡散体の熱伝導率および前記第2熱拡散体の熱伝導率が100(W/mK)以上で、
    前記伝熱層の熱伝導率が0.3〜100(W/mK)である、
    請求項1又は2に記載の熱流計測装置。
  4. 前記第1熱拡散体が被計測体と接触する受熱面積は204〜690(mm)である、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の熱流計測装置。
  5. 前記第1熱拡散体の最大温度勾配よりも前記伝熱層の最大温度勾配の方が大きく、
    前記第2熱拡散体の最大温度勾配よりも前記伝熱層の最大温度勾配の方が大きい、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の熱流計測装置。
  6. 前記第1熱拡散体は、第1曲面を有し、
    前記第2熱拡散体は、第2曲面を有し、
    前記伝熱層は、前記第1曲面と前記第2曲面とに挟持されている、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の熱流計測装置。
  7. 第3熱拡散体と、
    前記第3熱拡散体に熱的に接続する第3温度センサーと、
    を更に備え、
    前記第3熱拡散体と前記第3温度センサーとは、前記伝熱層内に配置されている、
    請求項1〜6の何れか一項に記載の熱流計測装置。
  8. 前記第2熱拡散体は、前記第2曲面の反対面となる第3曲面を有し、
    前記第3曲面側に開口部を有する保護部を更に備える、
    請求項1〜7の何れか一項に記載の熱流計測装置。
  9. 前記保護部の熱伝導率は、前記伝熱層の熱伝導率よりも小さい、
    請求項8に記載の熱流計測装置。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載の熱流計測装置を備え、
    前記熱流計測装置の計測結果に基づき、代謝量を推量する、
    代謝計測装置。
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