しかしながら、特許文献1の手段による場合は、センサーの小型化によって被測定物と外気との間や、センサーと外気との間で起こっている熱収支が測定に影響を及ぼすために、精度が得られなくなる虞がある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]第1媒体と第2媒体との境界面に1の面を配置した基材と、前記基材の第1位置の温度を第1温度として測定する第1温度測定部と、前記第1位置との間に熱抵抗値を有する第2位置の温度を第2温度として測定する第2温度測定部と、前記第1温度測定部と、前記第2温度測定部を配置した前記基材とを取り巻く前記第1媒体又は前記第2媒体の温度を媒体温度として測定する媒体温度測定部と、前記第1温度測定部と、前記第2温度測定部を配置した前記基材を取り巻く前記第1媒体又は前記第2媒体に配置した外郭体と、前記外郭体の前記基材を配置した、内部を満たす内部媒体と、前記第1温度と、前記第2温度と、前記媒体温度とを用いて、前記第1媒体又は前記第2媒体の内部の温度を深部温度として演算する演算部と、を含むことを特徴とする温度計。
本適用例によれば、物質の内部の温度を測定する温度計において、被測定物と外気との間や、温度測定部と外気との間で起こる熱収支を演算補正するため、深部温度が精度よく測定できる。特に熱収支の問題は温度計を小型にすることで影響が大きくなるが、演算によって補正できるので、温度計の小型化が可能になる。さらに、基材を取り巻くように外郭体を設けることで、基材外部との熱移動を緩和し、第1温度と第2温度が安定して測定できるようになる。
[適用例2]上記適用例に記載の温度計において、前記演算部が、前記第1温度と、前記第2温度と、前記媒体温度と、を関係付ける定数を算出する定数算出部と、前記定数算出部で算出した前記定数に基づいて、前記深部温度を演算する深部温度演算部と、を含むことを特徴とする温度計。
本適用例によれば、媒体温度と第1温度と第2温度とを関係付ける定数によって、精度良く深部温度が算出できる。
[適用例3]上記適用例に記載の温度計において、前記媒体温度(Tout1)における前記第1温度(Tb1)と前記第2温度(Tp1)及び前記媒体温度(Tout2)における前記第1温度(Tb2)と前記第2温度(Tp2)及び前記媒体温度(Tout3)における前記第1温度(Tb3)と前記第2温度(Tp3)とから、前記媒体温度と、前記第1温度と、前記第2温度とを関係付ける定数を算出し、前記深部温度(Tc)を演算することを特徴とする温度計。
本適用例によれば、表面から測定できる媒体温度、第1温度、第2温度から定数を求めることによって、深部温度が精度良く測定できる。
[適用例4]上記適用例に記載の温度計において、前記媒体温度と、前記第1温度と、前記第2温度とを関係付ける定数(a,c,d)を
本適用例によれば、媒体温度、第1温度、第2温度の測定から、定数(a,c,d)を求めることで、容易に精度良く深部温度が算出できる。さらに深部温度が定数(a,c,d)のみから求められるため、温度計を取り巻く環境や被測定体の熱抵抗値などの個体差による影響を考慮せずに、深部温度が算出できる。
[適用例5]上記適用例に記載の温度計において、前記媒体温度(Tout1)における前記第1温度(Tb1)と前記第2温度(Tp1)及び前記媒体温度(Tout2)における前記第1温度(Tb2)と前記第2温度(Tp2)とから、前記深部温度(Tc)を演算することを特徴とする温度計。
本適用例によれば、2つの外気温から2つの熱流の系統を作るため、深部温度Tcを求める過程でセンサーや被測定体と外気の間で起こる熱収支を打ち消し、精度良く深部温度を測定できる。
[適用例6]上記適用例に記載の温度計において、前記深部温度(Tc)を
本適用例によれば、第1温度、第2温度の測定から、容易に深部温度が算出できる。さらに算出に必要な値はそれぞれ2つずつの第1温度、第2温度のみであるため、温度計を取り巻く環境や被測定体の熱抵抗値などの個体差による影響を考慮せずに、深部温度が算出できる。
[適用例7]上記適用例に記載の温度計において、前記第1温度の測定位置と前記第2温度の測定位置との間には、所定の熱抵抗値を有する断熱材が設けられていることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、第1温度測定位置と第2温度測定位置との間の熱抵抗を大きくするために、第1温度と第2温度との温度差を得ることができる。さらに、熱抵抗によって温度差が得られることから、両測定位置を近づけることが出来るため、温度計の小型化・薄型化が可能になる。
[適用例8]上記適用例に記載の温度計において、前記外郭体又は前記内部媒体の温度を前記媒体温度として測定することを特徴とする温度計。
本適用例によれば、媒体温度測定位置の設置が容易になるので、生産性が向上する。
[適用例9]上記適用例に記載の温度計において、前記外郭体が熱伝導体であることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、外郭体の外部と内部との熱交換が可能になるため、第1温度と第2温度との温度差を得ることができる。さらに、両測定位置を異なる温度の媒体間に発生する熱流の方向に対して、近づけることが出来るため、温度計の薄型化が可能になる。
[適用例10]上記適用例に記載の温度計において、前記演算部で演算された前記深部温度を表示する表示部を有する表示装置と、前記媒体温度測定部と、前記第1温度測定部と、前記第2温度測定部とを有する温度計本体と、を含み、前記表示装置と前記温度計本体とは、別体で構成されていることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、表示装置と温度計本体とが別体で構成されているので、被測定対象の表面に接触する必要がある温度計本体の軽量化が促進される。したがって、被測定対象の表面に温度計本体を長時間接触させても負担とはならず、長時間にわたって連続的な温度のモニタリングが可能となる。
[適用例11]上記適用例に記載の温度計において、前記演算部は、前記表示装置に設けられていることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、深部温度演算部が表示装置に設けられているので、温度計本体の構成部品が最小限に抑制される。したがって、温度計本体の軽量化、小型化が促進され、被測定対象の表面に接触させる際にも、長時間の測定であっても負担がより一層低減される。
[適用例12]上記適用例に記載の温度計において、前記表示装置及び前記温度計本体は、無線通信により互いに情報の送受信が可能な送受信手段をそれぞれ含んでいることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、表示装置及び温度計本体がそれぞれ送受信手段を備え、互いに無線通信が可能に構成されているので、表示装置を温度計本体に対してある程度離して設置することが可能となる。表示装置が温度計本体と配線されないため、温度計本体を表示装置から完全に分離できるので、温度計本体の軽量化がより一層促進され、温度計本体の取扱い性が向上する。
[適用例13]上記適用例に記載の温度計において、前記境界面に貼付可能に構成されていることを特徴とする温度計。
本適用例によれば、温度計が被測定対象の表面に貼付可能に構成されているので、温度計の操作性、携帯性が向上する。例えば、温度計を幼児や乳幼児などに使用する場合では、一定時間温度計と体表面との接触を良好に保持することが困難である。このような場合でも、温度計が体表面に貼付可能に構成されているので、幼児や乳幼児が動いても体表面と温度計との接触状況を良好に維持できるから、正確な温度が測定可能となる。
[適用例14]第1媒体又は第2媒体の内部の温度を深部温度として測定する温度計測方法であって、前記第1媒体と前記第2媒体との境界面に1の面を配置した基材の第1位置の温度を第1温度として測定し、前記第1位置との間に熱抵抗値を有する第2位置の温度を第2温度として測定し、前記基材を取り巻く第1媒体又は第2媒体の温度を媒体温度として測定する温度測定工程と、前記温度測定工程で測定した、前記第1温度と、前記第2温度と、前記媒体温度と、に基づいて、前記深部温度を演算する演算工程と、を含むことを特徴とする温度計測方法。
本適用例によれば、定数算出工程では、温度測定工程で得られた測定値に基づいて定数を算出する。そして、深部温度演算工程では、定数算出工程で得られた定数に基づいて被測定対象の深部温度を演算する。
この深部温度演算が被測定物や温度計と外気との間で起こる熱収支を演算補正するため、深部温度を精度良く測定する温度計測方法を提供する。
[適用例15]上記適用例に記載の温度計測方法において、演算工程は、前記第1温度と、前記第2温度と、前記媒体温度と、を関係付ける定数を算出する定数算出工程と、前記定数算出工程で算出した前記定数に基づいて、前記深部温度を演算する深部温度演算工程と、を含むことを特徴とする温度計測方法。
本適用例によれば、深部温度演算工程では、定数算出工程で得られた定数に基づいて被測定対象の深部温度を演算するため、容易に精度良く深部温度を測定することができる。
[適用例16]上記適用例に記載の温度計測方法において、前記媒体温度(Tout1)における前記第1温度(Tb1)と前記第2温度(Tp1)及び前記媒体温度(Tout2)における前記第1温度(Tb2)と前記第2温度(Tp2)及び前記媒体温度(Tout3)における前記第1温度(Tb3)と前記第2温度(Tp3)から、前記定数算出工程は
の式で定数(a、c、d)を算出し、前記深部温度演算工程は、
の式より前記深部温度Tcを演算することを特徴とする温度計測方法。
本適用例によれば、定数算出工程で定数(a,c,d)を算出することで、深部演算工程においてこれらの定数のみを用いて深部温度を演算することができる。
この温度計を取り巻く環境や被測定体の熱抵抗値などの個体差による影響を考慮せずに、深部温度が算出できる温度計測方法を提供する。
[適用例17]上記適用例に記載の温度計測方法において、前記媒体温度(Tout1)における前記第1温度(Tb1)と前記第2温度(Tp1)及び前記媒体温度(Tout2)における前記第1温度(Tb2)と前記第2温度(Tp2)とから、前記深部温度演算工程は、
の式より前記深部温度Tcを演算することを特徴とする温度計測方法。
本適用例によれば、深部演算工程において温度測定工程で得られた測定値を用いて容易に精度良く、深部温度を演算することができる。
この温度計を取り巻く環境や被測定体に当たる媒質1や媒質2の個体差に影響を考慮せずに、深部温度が算出できる温度計測方法を提供する。
[適用例18]上記適用例に記載の温度計測方法において、前記基材を取り巻く、前記第1媒体又は前記第2媒体に配置した外郭体の温度、又は外郭体の前記基材を配置した、内部を満たす内部媒体の温度を前記媒体温度として測定することを特徴とする温度計測方法。
本適用例によれば、媒体温度が安定して測定できるため、外乱の影響を受けずに深部体温が算出できる温度計測方法を提供する。
(第一の実施形態)
以下に、本実施形態に係る温度計としての電子体温計及びその計測方法について、図を参照しながら説明する。
図1(A)は、本実施形態に係る電子体温計を示すブロック構成図である。この電子体温計2は、被測定対象である被検体4(図3参照)の体表面4Aに接触する体温計本体10と、体温計本体10とは別体に設けられる表示装置12とを備えている。
図2は、本実施形態に係る体温計本体10が被検体4に装着された状態を示す拡大図であり、また図3は、本実施形態に係る体温計本体10及び表示装置12が装着された状態を示す図である。
先ず、図2に示すように、体温計本体10は、温度測定部14(図3参照)を備えている。温度測定部14は、被検体4の体表面4Aに接触する接触面18Aを有している断熱部18と、断熱部18と外気部16との間に設けられた外郭部16Aと、この外郭部16Aによって外気と隔離された内部外気16Bと、を備えている。
温度測定部14は、断熱部18の内部の温度又は外周の温度を測定する測定部としての第1温度センサー(第1温度測定部)20と第2温度センサー(第2温度測定部)22とを備えている。
また、温度測定部14は、断熱部18と外気部16との間の外郭部16A又は内部外気16Bに、温度測定部としての外気温度センサー(媒体温度測定部)24を備えている。
この温度測定部14からなる体温計本体10は、粘着剤などによって接触面18Aが被検体4に貼付可能となっており、この粘着剤などにより、体表面4Aに良好な当接力で密着できるように構成されている。
ここで、体温計本体10の貼付位置は、比較的安定して体表面温度を測定できる額や後頭部、胸部、背中などの部位に設定されることが望ましい。また、体温計本体10の上に衣服を着用していても、体温計本体10が寝具等と接触していてもよい。
第1温度センサー20、第2温度センサー22、外気温度センサー24は、温度値を抵抗値に変換するものや、温度値を電圧値に変換するものなどが採用できる。なお、温度値を抵抗値に変換するものとしては、チップサーミスターや、サーミスターパターンがプリントされたフレキシブル基板、白金測温抵抗体などが採用できる。また、温度値を電圧値に変換するものとしては、熱電対素子や、PN接合素子、ダイオードなどが採用できる。
また、温度測定部14は、第1温度センサー20、第2温度センサー22、及び外気温度センサー24の他に、前述の図1に示されるように、A/D変換部26を備えている。
A/D変換部26は、第1温度センサー20、第2温度センサー22、及び外気温度センサー24で変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信部(送受信手段)28に出力する。
送受信部28は、アンテナコイル30を備え、A/D変換部26でデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置12側に電波送信する。
表示装置12は、体温の測定結果などを表示する表示部32と、表示装置12を外部から操作する操作部34と、表示装置12の動作を制御する演算部36と、演算部36などから得られた情報を蓄積する記憶部38とを備えている。
表示部32は、液晶画面などによって温度情報や操作画面を表示するものであり、例えば測定された体表面温度や、演算された深部温度としての深部体温などが表示可能となっている。本実施形態では、一例として腕時計の文字板等に相当する部分に表示部32が設けられ、操作者6が表示装置12を腕につけた状態で表示部32が視認可能となっている。
操作部34は、ボタンやレバー、キーなどによって外部から表示装置12に情報を入力可能に構成されており、例えば表示部32に表示される画面にしたがってメニューを選択したり、その他被測定者(本実施形態では幼児)の氏名、年齢、体温の測定日時などの情報を入力可能にしたりするように構成されている。
演算部36は、第1温度センサー20からの第1温度Tbと、第2温度センサー22からの第2温度Tpと、外気温度センサー24からの外気温度Toutと、を使って定数を算出する定数算出部40と、定数算出部40で算出された定数aと、定数cと、定数dと、に基づいて、被検体4の深部体温Tcを演算する深部体温演算部42とを備えている。
定数算出部40は、被検体4からの第1温度センサー20と第2温度センサー22と外気温度センサー24とを、線形に関係付ける定数aと、定数cと、定数dと、を算出する。
深部体温演算部42は、定数算出部40で算出した、定数aと、定数cと、定数dと、を用いて被検体4の深部体温Tcを演算する。
なお、表示装置12は、各データの出力部として、図示しない無線、ロギングシステム、及びUSBなどのI/Fを含んでもよい。
図4(A)は、本実施形態の先行技術である、特開2006−308538に開示された体温計本体10の構造を示した図である。第1体表面温度センサー50Aからの第1体表面温度T1と、第1中間温度センサー52Aからの第1中間温度T2と、あるいは、第2体表面温度センサー50Bからの第2体表面温度T3と、第2中間温度センサー52Bからの第2中間温度T4と、に基づくと、深部体温を求めるために、式(1)の関係式が得られる。
また、図4(B)に示すように、温度測定部14Aの第1放熱制御部54Aと、温度測定部14Bの第2放熱制御部54Bとは異なる材料で構成され、これにより、第1放熱制御部54Aの熱抵抗値と第2放熱制御部54Bの熱抵抗値とは異なる値に設定されている。第1系統56Aと第2系統56Bとの温度分布が異なるように外気と触れる部分にそれぞれ第1放熱制御部54A及び第2放熱制御部54Bが設けられている。
図5は、本実施形態に係る体温計本体10と各センサーの温度推移を示すグラフ及び図である。図5(A)は、体温計本体10と被検体4とが置かれている環境温度が一定状態であり、外気温度センサーの温度が一定の値を示している場合の図である。図5(B)は、体温計本体10と被検体4とが置かれている環境温度が変化して、外気温度センサーの温度が変化する場合の図である。深部体温Tcは、式(1)に示すように、温度検出部と皮膚との熱抵抗に依存しない。
図5(A)に示すように、第2温度測定部22の温度である第2温度Tpを能動的に変化させた場合に、第1温度測定部20の温度である第1温度Tbは線形に変化する。この変化量aとオフセット値bは、第1温度測定部20と第2温度測定部22との間に存在する熱抵抗値と熱収支に依存する。第1温度Tbと第2温度Tpとの間には、それぞれ定数a、定数bを用いて式(2)の関係式が成り立つ。
任意の2点の第2温度TpをTpA及びTpBとし、そのときの第1温度TbをそれぞれTbA及びTbBとすると、式(1)のT1、T2、T3、T4は、定数a、定数bに基づいて、それぞれについて式(3)の関係式が成り立つ。
式(1)については、その制約条件として、センサーと、空気などの他の熱伝導体との間に起こる熱収支がないとした状態でのみ成立する。特に、小型化・薄型化をするにしたがって、この熱収支による誤差の問題が顕在化する傾向にある。そこで、熱収支の差分をΔTcとして式(1)に熱収支の差分項を考慮すると式(4)の関係式が得られる。
よって、式(3)に基づいて、熱収支による誤差を考慮した深部体温は式(5)の関係となる。
図5(B)に示すように、外気温度センサーの温度がTout1、Tout2、Tout3の値を示している場合に、第1温度Tbがそれぞれ、Tb1、Tb2、Tb3となり、第2温度TpがそれぞれTp1、Tp2、Tp3となる場合の図である。
この場合、第1温度Tbは第2温度Tpだけでなく、外気温度Toutに対しても線形の関係を示すことから、式(6)が得られる。
よって、定数bは外気温度Toutに線形となるため、式(7)が得られる。
式(7)に基づいて、深部体温を表す式(8)が得られる。
ここで、熱の移動が温度差によって起こることから、熱収支の差分ΔTcは外気温度Toutと深部体温Tcの値が等しくなる場合には生じないのでΔTc=0となる。よって、熱収支の影響がない場合には、深部体温については式(9)が得られる。
深部体温を求めるために、定数aと、定数cと、定数dを算出する。式(6)について、第1温度Tb、第2温度Tp、外気温度Toutが実測可能であることから、3つの定数については、式(10)を基に式(11)が得られる。
したがって、定数算出部40にはこの式(11)が、定数a、定数c、及び定数dと、を算出する式として記憶されている。
深部体温演算部42には式(9)が深部体温Tcの演算式として記憶されている。
記憶部38には、体温計本体10から送信された第1温度Tb、第2温度Td、外気温度Toutが記憶される。また、定数演算部40で算出した定数a、定数c、定数dも記憶される。さらに、深部体温演算部42で演算された被検体4の深部体温Tcも記憶される。
ここで、記憶部38は、複数の被検体4に関する温度情報を記憶可能に構成されており、深部体温Tcなどが、被検体4ごとに記憶されている。また、記憶部38は、深部体温Tcを算出する際に算出した定数aと、定数cと、定数dと、を記憶可能となっている。なお、記憶部38には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(被検体4、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部34から入力されてもよい。
このような電子体温計2は、次のように動作する。
図6(A)は、本実施形態に係る電子体温計2の動作を示すフローチャートである。
先ず、被検体4(本実施形態では幼児の胸部)に体温計本体10を装着し、幼児を抱いた電子体温計2の操作者6は表示装置12を腕に装着する。操作者6が表示装置12の操作部34を操作することにより表示装置12のスイッチがONされると、送受信部28が体温計本体10(温度測定部14)にアンテナコイル30を介して電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル30に起電力を発生させることにより体温計本体10にチャージを行う。
次に、起電力により体温計本体10が起動し、第1温度センサー20と、第2温度センサー22と、外気温度センサー24が起動する。
次に、これらの各センサー20,22,24が起動すると、体温計本体10は、送受信部28から表示装置12にスタンバイ信号を送信する。
次に、表示装置12の演算部36は、このスタンバイ信号を受信すると温度測定開始信号を送受信部28からアンテナコイル30を介して送信する。
次に、体温計本体10は、この温度測定開始信号を受信して、第1温度センサー20と、第2温度センサー22と、外気温度センサー24と、を駆動し、断熱材18の外周部を含む内部の任意の2点の温度である、第1温度Tb(Tb1,Tb2,Tb3)と、第2温度Tp(Tp1,Tp2,Tp3)と、外郭部16Aの外周部を含む内部の温度又は、断熱材18と外郭部16Aとの間の内部外気16Bの温度である外気温度Tout(Tout1,Tout2、Tout3)を測定する(ステップS10、温度測定工程)。これらの第1温度Tbと、第2温度Tpと、外気温度Toutと、の温度情報は、A/D変換部26でアナログ信号からデジタル信号に変換され、送受信部28によって表示装置12に送信される。なお、第1温度Tbと、第2温度Tpは、被検体4の深部から体表面4Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となるように、所定時間経過後に測定することが望ましい。
このようにして所定時間ごとに第1温度Tbと、第2温度Tpと、外気温度Toutとを測定することで、3パターンの組合せである(Tb1,Tp1,Tout1)と、(Tb2,Tp2,Tout2)と、(Tb3,Tp3,Tout3)と、を測定して、記憶部38に蓄積する。
次に、演算部36の定数算出部40では、記憶部38から呼び出した第1温度Tb(Tb1,Tb2,Tb3)と、第2温度Tp(Tp1,Tp2,Tp3)と、外郭部16A又は断熱部18と外郭部16Aとの間の内部外気16Bの温度である外気温度Tout(Tout1,Tout2,Tout3)と、を式(11)に代入することによって、定数aと、定数cと、定数dと、を算出する(ステップS20、定数算出工程)。
次に、演算部36の深部体温演算部42では、ステップS20で算出された定数aと、定数cと、定数dと、を式(9)に代入することによって深部体温Tcを演算する(ステップS30、深部体温演算工程)。
次に、演算部36は、記憶部38に深部体温Tcを記憶させるとともに、表示部32に深部体温Tcを表示する。操作者6は、幼児を抱いた状態で、腕時計型の表示装置12の表示部32で、深部体温Tcを確認できる。
以降、演算部36は、内蔵されたタイマーにより第1温度Tbの測定時からの経過時間をカウントし、所定時間経過したか否かを監視する。経過時間が所定時間以上となると、ステップS10に戻って、演算部36は体温計本体10に測定開始信号を送信し、再度第1温度Tb、第2温度Tp、外気温度Toutの測定を行う。
このようにして所定時間ごとにTcを測定し、記憶部38に蓄積する。
(第二の実施形態)
以下に、本実施形態に係る温度計としての電子体温計及びその計測方法について、図を参照しながら説明する。なお、上記第一の実施形態と同様の要素については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図4の従来技術では、図4(A)に示すように、2つの異なる熱流の系は第1系統56Aと第2系統56Bとして、同じ外気温度の元に置かれていた。
本実施形態では、外気温度が異なる2つの場合で2つの異なる熱流の系を作っている。2つの異なる外気温度Tout1,Tout2の系によって、深部体温Tcの誤差の要因となる、熱収支の項ΔTcを打ち消すことができる。
よって図5(B)に示すように、外気温度センサーの温度がTout1、Tout2の値を示している場合に、第1温度Tbがそれぞれ、Tb1、Tb2となり、第2温度TpがそれぞれTp1、Tp2となる場合に式(1)の関係に基づいて深部体温を演算する。
断熱部18の外周を含む内側に任意に配置した2点Tb、Tpについて、第1温度TbをTb1とTb2とし、そのときの第2温度TpをそれぞれTp1とTp2とすると、式(1)のT1、T2、T3、T4はT1=Tb1、T2=Tp1、T3=Tb2、T4=Tp2となり、式(12)が得られる。
このような電子体温計2は、次のように動作する。
図6(B)は、本実施形態に係る電子体温計2の動作を示すフローチャートである。
体温計本体10は、温度測定開始信号を受信して、第1温度センサー20と、第2温度センサー22と、外気温度センサー24と、を駆動し、断熱部18の外周部を含む内部の任意の2点の温度である、第1温度Tb(Tb1,Tb2)と、第2温度Tp(Tp1,Tp2)と、外郭部16Aの外周部を含む内部の温度である外気温度Tout(Tout1,Tout2)を測定する(ステップS40、温度測定工程)。これらの第1温度Tbと、第2温度Tpと、外気温度Toutと、の温度情報は、A/D変換部26でアナログ信号からデジタル信号に変換され、送受信部28によって表示装置12に送信される。なお、第1温度Tbと、第2温度Tpは、被検体4の深部から体表面4Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となるように、所定時間経過後に測定することが望ましい。
次に、演算部36の深部体温演算部42では、記憶部38から呼び出した第1温度Tb(Tb1,Tb2)と、第2温度Tp(Tp1,Tp2)と、外郭部16A又は断熱部18と外郭部16Aとの間の内部外気16Bの温度である外気温度Tout(Tout1、Tout2)と、を式(12)に代入することによって、深部体温Tcを演算する(ステップS50、深部体温演算工程)。
以降、演算部36は、内蔵されたタイマーにより第1温度Tbの測定時からの経過時間をカウントし、所定時間経過したか否かを監視する。経過時間が所定時間以上となると、ステップS10に戻って、演算部36は体温計本体10に測定開始信号を送信し、再度第1温度Tb、第2温度Tp、外気温度Toutの測定を行う。
このようにして所定時間ごとに第1温度Tbと、第2温度Tpと、外気温度Toutとを測定することで、(Tb1,Tp1,Tout1)と、(Tb2,Tp2,Tout2)と、を測定して深部体温Tcを演算し、記憶部38に蓄積する。
(変形例1)
次に本変形例にかかわる温度測定部14に関して、外気温度センサー24について説明する。なお、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図7(A)は、本変形例にかかわる体温計本体を示した図である。図7(A)に示すように、外気温度センサー24を外郭部16Aと、断熱部18との間に配置することによって、内部外気16Bの温度をToutとして測定する。
(変形例2)
次に本変形例にかかわる温度測定部14に関して、外気温度センサー24について説明する。なお、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図7(B)は、本変形例にかかわる体温計本体を示した図である。図7(B)に示すように、外気温度センサー24を断熱部18と内部外気16Bとの間に設置して赤外線センサーなどの非接触測定器によって外郭部16Aの壁面温度をToutとして測定する。
(実施例1)
次に、本実施例にかかわる、深部体温演算について一実施例を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図8(A)は、従来例である特許文献1の先行技術を示した図であり、図8(B)は、本実施例にかかわる体温計本体を示した図である。図9(A)〜(C)は、本実施例に係る深部体温演算の結果を示した図である。
従来例は、図9(A)に示すように、熱源温度が実測で37℃の場合、深部体温Tc=30.941889℃で実測との差は、−6.0518℃であった。
次に、本実施例は、図9(B)に示すように、断熱部18の測定位置TA,TB,TC,TD,TE,TFにおいてTout=23℃、Tout=30℃、Tout=35℃の場合にそれぞれの温度測定値が得られた。
次に、断熱部18の任意の2点の温度測定位置で、第1温度Tbと第2温度Tpとを測定した。図9(C)に示すように、第1温度測定位置20を測定位置TC、第2温度測定位置22を測定位置TFとした。熱源温度が実測で37℃の場合、定数a=−0.5、定数c=1.00035、定数d=18.48705となり、深部体温Tc=37℃で、実測との差は、0℃であった。この演算方法を使えば、精度良く深部体温を算出することができる。
(実施例2)
次に、本実施例にかかわる、深部体温演算について他の実施例を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。また、従来例と、体温計本体と、各温度測定位置での温度測定値と、第1温度測定位置20と、第2温度測定位置22と、は実施例1と同一である。
図8(B)は、本実施例にかかわる体温計本体を示した図である。図9(D)は、本実施例に係る深部体温演算の結果を示した図である。外気温度Tout=23℃の場合の第1温度TbをTb1、第2温度TpをTp1とし、外気温度Tout=30℃の場合の第1温度TbをTb2、第2温度TpをTp2とした場合に、深部体温Tc=37℃で実測との差は、0℃であった。この演算方法を使えば、精度良く深部体温を算出することができる。
本実施形態によれば、物質を介した内部の温度を測定する温度計において、センサーの実装位置ずれを演算補正して深部温度が精度よく測定できる。
なお、上記実施形態は生体を計測する装置、特に電子体温計として技術分野を絞っているが、生体に限らない物質を介した内部の温度を検出することができ、工業用途として例えば炉の内部や配管の内部温度、エンジンルームの内部温度の測定に適用することが可能である。