以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図2A〜図2C及び図3A〜図3Fは、本実施の形態に係る被処理体の微細パタン形成方法を説明するための工程図である。図2Aに示すように、モールド10は、その主面上に凹凸構造11が形成されている。凹凸構造11は、複数の凹部11aと凸部11bで構成されている。モールド10は、例えば、フィルム状又はシート状の樹脂モールドである。
まず、図2Bに示すように、モールド10の凹凸構造11の凹部11aの内部に、後述の第1のマスク層をパターニングするための第2のマスク層12を充填する。第2のマスク層12は、例えば、ゾルゲル材料からなる。ここで、モールド10、及び第2のマスク層12を備えた積層体を、第1の微細パタン形成用積層体1、又は単に第1の積層体1と呼ぶ。第1の微細パタン形成用積層体1は、第1のマスク層を介して被処理体20のパターンニングに用いることができる。
次に、図2Cに示すように、第1の積層体1の第2のマスク層12を含む凹凸構造11の上に、第1のマスク層13を形成する。この第1のマスク層13は、後述する被処理体のパターニングに用いられる。第1のマスク層13は、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる。
更に、図2Cに示すように、第1のマスク層13の上側には、保護層14を設けることができる。保護層14は、第1のマスク層13を保護するものであり、必須ではない。ここで、モールド10、第2のマスク層12及び第1のマスク層13からなる積層体を、第2の微細パタン形成用積層体2、又は、単に第2の積層体2と呼ぶ。この第2の積層体2は、第1のマスク層13を被処理体20に貼合させることにより、被処理体20のパターンニングに用いることができる。
次に、図3Aに示すような被処理体20を用意する。被処理体20は、例えば、サファイア基板、SiC(炭化ケイ素)基板、Si(シリコン)基板、スピネル基板又は窒化物半導体基板である。まず、図3Bに示すように、被処理体20の主面上に、保護層14を取り除いた後の第2の積層体2の第1のマスク層13の露出面を、被処理体20の主面に対面させてラミネート(熱圧着)する。
次に、図3Cに示すように、モールド10を、第1のマスク層13及び第2のマスク層12から剥離する。この結果、被処理体20、第1のマスク層13及び第2のマスク層12からなる中間体21が得られる。
なお、上述したラミネートと剥離の間において、第2の積層体2に対してエネルギー線を照射して第1のマスク層13を硬化又は固化させてもよい。また、ラミネート(熱圧着)時に加える熱により、第1のマスク層13を硬化又は固化させてもよい。更に、剥離後のエネルギー線照射或いは加熱処理により、第1のマスク層13を硬化又は固化させてもよい。
次に、第2のマスク層12をマスクとして、第1のマスク層13を、例えば酸素アッシングにより、図3Dに示すようにパターニングする。この結果、第1のマスク層13及び第2のマスク層12により構成された高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aが設けられた微細パタン構造体16を得る。更に、パターニングされた第1のマスク層13をマスクとして、被処理体20に、例えば、反応性イオンエッチングを施して、図3Eに示すように、被処理体20の主面に微細パタン22を形成する。最後に、図3Fに示すように、被処理体20の主面に残った第1のマスク層13を除去して、微細パタン22を有する被処理体20を得る。
本実施の形態では、図2A〜図2Cに示すモールド10から第2の積層体2(第2の積層体2)を得るところまでを一つのライン(以下、第1のラインという)で行う。それ以降の、図3A〜図3Fまでを別のライン(以下、第2のラインという)で行う。より好ましい態様においては、第1のラインと、第2のラインとは、別の施設で行われる。このため、第2の積層体2は、例えば、モールド10がフィルム状であり、可撓性を有する場合に、第2の積層体2を巻物状(ロール状)にして保管又は運搬される。また、第2の積層体2は、モールド10がシート状である場合に、複数の第2の積層体2を積み重ねて保管又は運搬される。フィルム状とは、長さや幅に対して極めて膜厚が薄く、上記のように可撓性でありロール状にできる性質を有するものである。一方、シート状とは薄い平らな板状物を指し、その可撓性については限定されない。また、フィルム状の第2の積層体2を長さ方向に裁断し毎葉にしたものは、シート状である。なお、本発明においては両者を明確に区別すべきものでない。
本発明のさらに好ましい態様においては、第1のラインは、第2の積層体2のサプライヤーのラインであり、第2のラインは、第2の積層体2のユーザのラインである。このように、サプライヤーにおいて第2の積層体2を予め量産し、ユーザに提供することで、以下ような利点がある。
(1)第2の積層体2を構成するモールド10の凹凸構造11の精度を反映させ、被処理体20に微細加工を行うことができる。具体的には、第2の積層体2を構成するモールド10の凹凸構造11の精度を第2のマスク層12が担保することとなる。更に、第1のマスク層13の膜厚精度を第2の積層体2において担保することが可能となるため、被処理体20上に転写形成された第1のマスク層13の膜厚分布精度を高く保つことが可能となる。すなわち、第2の積層体2を使用することで、被処理体20面内に第2のマスク層12及び第1のマスク層13を、第1のマスク層13の膜厚分布精度高く、且つ微細パタンの転写精度高く転写形成することが可能となる。このため、第2のマスク層12を使用し第1のマスク層13を微細加工することで、被処理体20面内にモールド10のパタン精度(パタン配列精度)を反映させ、且つ、膜厚分布精度高く第2のマスク層12及び第1のマスク層13から構成される高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aが設けられた微細パタン構造体16を形成することが可能となる。精度の高い微細パタン構造体16を使用することで、被処理体20を精度高く加工することが可能となり、被処理体20面内にモールド10の微細パタン精度(パタン配列精度)を反映させた微細パタン22を作製することができる。
(2)微細パタンの精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、煩雑なプロセスや装置を使用することなく、被処理体20を加工するのに好適な施設において被処理体20を微細加工することができる。
(3)微細パタンの精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、加工された被処理体20を使用してデバイスを製造するのに最適な場所において第2の積層体2を使用することができる。すなわち、安定的な機能を有するデバイスを製造できる。
上述したように、第1のラインを第2の積層体2のサプライヤーのラインに、第2のラインを第2の積層体2のユーザのラインにすることで、被処理体20の加工に最適な、そして、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて第2の積層体2を使用することができる。このため、被処理体20の加工及びデバイス組み立てのスループットを向上させることができる。更に、第2の積層体2はモールド10とモールド10の凹凸構造11上に設けられた機能層(第2のマスク層12及び第1のマスク層13)から構成される積層体である。すなわち、被処理体20の加工精度を支配する第1のマスク層13及び第2のマスク層12の配置精度を、第2の積層体2のモールド10の凹凸構造11の精度にて担保すると共に、第1のマスク層13の膜厚精度を第2の積層体2として担保することが可能となる。以上により、第1のラインを第2の積層体2のサプライヤーのラインに、第2のラインを第2の積層体2のユーザのラインにすることで、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて、第2の積層体2を使用し精度高く被処理体20を加工し使用することができる。
ところで、上述した微細パタン形成方法においては、第1のラインでモールド10の凹凸構造11の凹部11a内に第2のマスク層12を充填する際に、凸部11b上にも第2のマスク層12が形成される場合がある。この薄膜が存在する第1の積層体1を用いて被処理体20に微細パタンを形成する場合、第1のマスク層13のアッシングが困難となるため、別途凸部11b上の第2のマスク層12を除去する工程を設ける必要がある。凸部11b上の第2のマスク層12を除去する工程を設けることで、凹部11a内の第2のマスク層12の体積が減少すると共に、体積分布が大きくなる。このため、製造工程が煩雑となり、微細パタン22を有する被処理体20の製造効率が低下すると共に、被処理体20の加工精度が低下する問題がある。これを、以下、第1の問題1と呼ぶ。
また、上述したように、第1のマスク層13の主な機能は、被処理体20に対する接着層としての機能と被処理体20に対する加工機能であり、第2のマスク層12の主な機能は第1のマスク層13に対する加工機能である。ここで、第2の積層体2を第1のラインから第2のラインへと搬送する際に、搬送環境によっては、第1のマスク層13及び第2のマスク層12の物性変化に伴う第1のマスク層13の加工機能低下及び第2のマスク層12の加工機能低下が発生し、また第2のマスク層12の物性変化に伴う接着機能の低下が発生するという問題がある。これを、以下、第2の問題2と呼ぶ。
本発明者らは、モールド10上に設けられた凹凸構造11の凸部11bの頂部位置と凹部11a内に充填された第2のマスク層12の表面位置との間の距離を、凸部11bの高さに対して所定の関係を満たすと共に、モールド10上に設けられた凹凸構造11の凸部11bの頂部位置と、凸部11b上に形成された第2のマスク層12の表面位置と、の間の距離を所定の関係とすることにより、上述した第1の問題1を解消できると共に、作製された第2の積層体2を樹脂製ケースにて梱包することにより、上記第2の問題2を解消できることを見出した。
即ち、第1の実施の形態は、樹脂製ケースにて梱包された被処理体に第1のマスク層を介して微細パタンを形成するために用いられる微細パタン形成用積層体であって、前記微細パタン形成用積層体は、表面に凹凸構造を有するモールドと、前記第1のマスク層の加工時にマスクとして機能する第2のマスク層と、を具備し、前記凹凸構造の凸部頂部位置(S)と前記凹凸構造の凹部内部に形成された前記第2のマスク層の界面位置(Scc)との間の距離(lcc)及び前記凹凸構造の高さ(h)が下記式(1)を満たし、且つ、前記凸部頂部位置(S)と凸部上に形成された前記第2のマスク層の頂部位置(Scv)との間の距離(lcv)、前記高さ(h)、及び前記距離lccとが下記式(2)を満たすことを特徴とする。
式(1)
0<lcc<1.0h
式(2)
0≦lcv≦(h−lcc)/2
また、第2の実施の形態は、梱包された微細パタン形成用積層体であって、上記第1のマスク層が前記モールドの凹凸構造を覆うように設けられ、凸部頂部位置(S)と第1のマスク層の表面との間の距離(lor)、凹凸構造の平均ピッチ(Pave)、及び距離lcvとが、下記式(3)を満たすことを特徴とする。
式(3)
lcv<lor≦10Pave
この微細パタン形成用積層体によれば、凹凸構造の凹部内部を埋めるように第2のマスク層が配置され、凹凸構造の凸部上部には非常に薄い第2のマスク層が配置され、又は第2のマスク層が配置されないので、被処理体に微細パタン形成用積層体を貼り合わせて被処理体上に第1のマスク層及び第2のマスク層を転写した時に、被処理体上に設けられた第1のマスク層の微細パタン凹部底部に配置される第2のマスク層の厚みを、薄く又はない状態にすることができるので、後の工程で残膜処理を省くことができる。これにより、残膜の薄い又は残膜の無い第2のマスク層/第1のマスク層/被処理体からなる積層体を得ることが可能となり、上記第1の問題1を解消、即ち第1のマスク層の加工精度が向上する。このため、高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを被処理体上に容易に形成可能となる。更に、微細パタン形成用積層体は樹脂製ケースにより梱包されている。このため、微細パタン形成用積層体を製造した施設と、使用する施設を異にした場合であっても、微細パタン形成用積層体の性能を保持することが可能となる。即ち、上記要件を満たすことにより、上記第2の問題2を解消でき、即ち被処理体の使用に好適な施設にて微細パタン形成用積層体の性能を最大限に発現することが可能となるため、加工された被処理体の使用に好適な施設にて、被処理体を加工することができる。
以下、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る微細パタン形成用積層体について詳細に説明する。また、本発明に係る微細パタン形成用積層体の説明の後に、上記第2の問題2を解消しうる樹脂製ケースについて説明する。
(第1の実施の形態)
まず、上述した第1のラインによって製造される微細パタン形成用積層体の構成について詳細に説明する。この第1の実施の形態に係る微細パタン形成用積層体は、モールドと、このモールド上に設けられた第2のマスク層と、を有する。
図4Aは、第1の実施の形態に係る微細パタン形成用積層体(以下、「第1の積層体1という」)の断面模式図である。図4Aに示すように、第1の積層体1は、表面に凹凸構造101aを有するモールド101と、このモールド101の凹凸構造101a上に設けられ、第1のマスク層103に微細パタンを形成するための第2のマスク層102とを具備する。
モールド101には、特定方向に延在する単数(例えば、ライン状)又は複数(例えば、ドット状、ホール状、格子状)の凹部101cが設けられており、凹部101c間には凸部101bが形成されている。凹部101cは、特定方向に直交する方向に沿って、互いに所定の間隔を隔てて設けられている。すなわち、凹部101cは、平面視においてモールド101の全面にわたって複数形成されている。また、凹部101cは、第2の積層体2の主面に略直交する厚み方向に沿った断面視(直交方向に垂直な断面でみたとき)において、モールド101の表面からモールドの表面に対して垂直な方向に陥没している。この凸部101b及び凹部101cで、凹凸構造(微細パタン)101aを構成している。
第2のマスク層102は、少なくとも凹凸構造101aの凹部101c内に充填されるように設けられる。この第2のマスク層102は、第1のマスク層103又は被処理体の加工時に、少なくとも第1のマスク層103をマスクする機能を有する。また、第2のマスク層102は、凹凸構造101aの凸部101b上に設けられてもよい。即ち、第2のマスク層102は、少なくとも凹凸構造101aの凹部101c内に形成された第2のマスク層102a(以下、「凹部内マスク層102a」ともいう)を有し、凸部101b上に形成された第2のマスク層102b(以下、「凸部上マスク層102b」ともいう)を有することもできる。ここで、凹部内マスク層102aと凸部上マスク層102bと、は互いに連続していても、独立していてもよい。
本明細書において、凹凸構造101aの高さ(h)とは、凸部101bの高さ又は凹部101cの深さを意味する。また、凹凸構造101aの高さ(h)は、凹部底部101dの位置と凸部頂部101eの位置(後述する凸部頂部位置(S))との間の最短距離である。
また、凹凸構造101aは、開口幅φと高さ(h)との比率(h/φ)で示されるアスペクト比が、0.1〜5.0の範囲であることが好ましい。アスペクト比は、高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを被処理体上に形成する際のドライエッチング性の観点から、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。一方、アスペクト比は、マスク層(第2のマスク層102及び第1のマスク層103)の転写精度の観点から、3.0以下が好ましく、2.5以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
(第2の実施の形態)
図4Bは、第2の実施の形態に係る微細パタン形成用積層体(以下、「第2の積層体2」という)の断面模式図である。図4Bに示すように、第2の積層体2は、上述した第1の実施の形態に係る第1の積層体1の構成に加えて、モールド101の凹凸構造101a上及び第2のマスク層102上を覆うように設けられた第1のマスク層103を有する。この第1のマスク層103は、例えば、有機材料(光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂)によって構成され、被処理体と第2のマスク層102及びモールド101の凹凸構造101aとの間を接着する接着層としての機能を有する。すなわち、第2の積層体2は、上述した第1の積層体1の凹凸構造101a上に第1の積層体1を被処理体に載置するための第1のマスク層103が予め設けられた構成を有する。第1のマスク層103は、反応性希釈材及び重合開始剤を含むことができる。この第2のマスク層102は、第1のマスク層103又は被処理体の加工時に、少なくとも第1のマスク層103をマスクする機能を有する。
第2の積層体2において、第1のマスク層103が凹凸構造101a及び第2のマスク層102の上部を覆うとは、凸部上マスク層102bがない場合には、凹部内マスク層102a上及び凹凸構造101aの凸部101b上に第1のマスク層103が設けられることを意味する。また、凸部上マスク層102bが存在する場合は、凹部内マスク層102a及び凸部上マスク層102b上に第1のマスク層103が設けられることを意味する。
また、第2の積層体2においては、第2のマスク層102と第1のマスク層103との界面の形状は、平坦でもよく湾曲していてもよい。湾曲している形状としては、第2のマスク層102が第1のマスク層103側に凸状に膨らんでいる形状や、第1のマスク層103が第2のマスク層102側に凸状に膨らんでいる形状等が挙げられる。また、第1のマスク層103側から第2のマスク層102側への凸状の膨らみを1つと、第2のマスク層102側から第1のマスク層103側への凸状の膨らみを2つと、を有する構造等も挙げられる。
また、第2の積層体2においては、凹凸構造101aの凹部101c内に形成された凹部内マスク層102aは、モールド101の凹部101cの側面に対して、部分的に付着していてもよい。或いは、モールド101の凹部101c内において、部分的に第2のマスク層102の欠けている凹部内マスク層102aであってもよい。また、凹部内マスク層102aが凹凸構造101aの凹部内壁上に被膜を形成していてもよい。
次に、上記第1の積層体1及び上記第2の積層体2の構成について詳細に説明する。なお、以下においては、第1の積層体1を例示して説明するが、特に断りのない限り、第2の積層体2も同様の構成を有するものとして、同時に説明しているものとする。
<凸部頂部位置(S)>
図4A及び図4Bに示す凸部頂部位置(S)は、凹凸構造101aの凸部101bの頂部の位置を意味する。なお、凹凸構造101aの高さ(h)にバラつきがある場合には、凸部頂部位置(S)は、各凸部101bの頂部位置の面内平均の位置を意味する。凸部頂部位置(S)を求める際の平均数としては、10点以上が好ましい。なお、凸部頂部位置(S)は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。
<界面位置(Scc)>
図4A及び図4Bに示す界面位置(Scc)は、凹凸構造101aの凹部101c内に形成された第2のマスク層102(凹部内マスク層102a)の界面の平均位置を意味する。第1の積層体1の場合、この界面位置(Scc)は、図4Aに示すように、凹凸構造101aの凹部内マスク層102aの表面と空気層との界面の位置を意味する。凹部内マスク層102aの表面の位置にバラつきがある場合には、界面位置(Scc)は、凹部内マスク層102aの界面位置の面内平均の位置を意味する。界面位置(Scc)を求める際の平均数としては、10点以上が好ましい。なお、界面位置(Scc)は、第1の積層体1に対する、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。また、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法を組み合わせた断面観察からも求めることができる。
また、凹部内マスク層102aの表面が曲面を形成する場合であって、この曲面が下(凹凸構造101aの凹部底部101d側)に凸の曲面を形成する場合には、第2のマスク層102の厚みが最も薄い場所をもって界面位置(Scc)とする。すなわち、凹部内マスク層102aがモールド101の凹凸構造101aの凹部内壁に部分的に付着している場合や凹部内マスク層102aが凹凸構造101aの凹部内壁上に被膜を形成する場合であっても、凹部内マスク層102aの最も低いところをもって界面位置(Scc)とする。また、この曲面が上(凹凸構造101aの凸部頂部101e側)に凸の曲面を形成する場合には、凹部内マスク層102aの厚みが最も厚い場所をもって界面位置(Scc)とする。
第2の積層体2の場合、界面位置(Scc)は、図4Bに示すように、凹凸構造101aの凹部内マスク層102aにおける第1のマスク層103との界面位置を意味する。凹部内マスク層102aにおける第1のマスク層103との界面位置にバラつきがある場合には、界面位置(Scc)は、凹部内マスク層102aの第1のマスク層103との界面位置の面内平均の位置を意味する。界面位置(Scc)を求める際の平均数としては、10点以上が好ましい。なお、界面位置(Scc)は、第2の積層体2に対する、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。また、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法を組み合わせた断面観察からも求めることができる。
また、凹部内マスク層102aの第1のマスク層103との界面が曲面を形成する場合であって、この曲面が下(凹凸構造101aの凹部底部101d側)に凸の曲面を形成する場合には、凹部内マスク層102aの厚みが最も薄い場所をもって界面位置(Scc)とする。すなわち、凹部内マスク層102aが凹凸構造101aの凹部内壁に部分付着している場合や凹部内マスク層102aが凹凸構造101aの凹部内壁上に被膜を形成する場合であっても、凹部内マスク層102aの最も低いところをもって界面位置(Scc)とする。また、この曲面が上(凹凸構造101aの凸部頂部101e側)に凸の曲面を形成する場合には、凹部内マスク層102aの厚みが最も厚い場所をもって界面位置(Scc)とする。
<頂部位置(Scv)>
図4A及び図4Bに示す頂部位置(Scv)は、凹凸構造101aの凸部101b上に形成された第2のマスク層102(凸部上マスク層102b)の頂面位置を意味する。凸部上マスク層102bの頂面位置にバラつきがある場合は、頂部位置(Scv)は、凸部上マスク層102bの頂面位置の面内平均の位置を意味する。頂部位置(Scv)を求める際の平均数としては、10点以上が好ましい。なお、頂部位置(Scv)は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。また、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法を組み合わせた断面観察からも求めることができる。
<距離(lcc)>
図4A及び図4Bに示す距離(lcc)は、凹部内マスク層102aの凹凸構造101aに対する充填性を示す指標であり、凸部頂部位置(S)と界面位置(Scc)との間の距離を意味する。すなわち、距離(lcc)が小さい程、凹部内マスク層102aの充填率は向上する。距離(lcc)は、換言すればモールド101の凹凸構造形成面内における複数の凸部101bの凹凸構造101aの高さ(h)からモールド101の凹凸構造101aの形成面内における凹部内マスク層102aの厚さを減じた値を意味する。したがって、凹凸構造101aの形成面内において凸部頂部位置(S)や界面位置(Scc)にばらつきがある場合には、凹凸構造101aの高さ(h)の平均値及び/又は凹部内マスク層102aの厚さの平均値を用いる。なお、凹凸構造101aの高さ(h)の平均値は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。
図5に示すように、凹凸構造101aの凸部101bの側面がモールド101の主面に対して垂直な方向に延在している場合、距離(lcc)のバラつきに関わらず、形成される第2のマスク層102の幅Wは常に一定で分布を持たない。このため、第2のマスク層102には、高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを被処理体上に形成するために、耐ドライエッチング性が求められる。距離(lcc)は、第2のマスク層102のドライエッチング耐性及び転写の容易性の観点から、lcc<1.0hであることが好ましく、lcc≦0.9hであることがより好ましく、lcc≦0.7hであることがさらに好ましく、lcc≦0.6hであることが特に好ましい。
一方、図6に示すように、凹凸構造101aの凸部101bの側面がモールド101の主面に対して傾斜している場合、第2のマスク層102内における距離(lcc)のバラつきは、形成される第2のマスク層102の幅Wのバラつきへと影響を与える。第2のマスク層102の幅Wのバラつきは、被処理体上に形成される第1のマスク層103及び第2のマスク層102から構成される高いアスペクト比を有する微細マスクパタンのバラつきへと繋がる。また、第1のマスク層103を用いて被処理体を微細加工する場合には、加工後の被処理体に形成される微細パタンのバラつきへと繋がる。
また、距離(lcc)<0となる場合は、モールド101の凹凸構造101aの凹部101cが凹部内マスク層102aにより完全に充填され、モールド101の凹凸構造101a上に第2のマスク層102の薄膜が形成されることを意味する。この場合、被処理体上に転写形成された第2のマスク層102/第1のマスク層103に対し、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際のエッチング精度が低下する。すなわち、被処理体上に設けられる高いアスペクト比を有する微細マスクパタンの加工精度が低下する。以上の観点から、距離(lcc)は、0<lccを満たす範囲にあるのが好ましく、0.02h≦lccがなお好ましい。さらに好ましくは、0.05h≦lccであり、特に0.1h≦lccが好ましい。
<距離(lcv)>
図4A及び図4Bに示す距離(lcv)は、凸部頂部位置(S)と頂部位置(Scv)との間の距離を意味する。すなわち、距離(lcv)は、凸部上マスク層102bの厚さを意味する。したがって、凸部頂部位置(S)や頂部位置(Scv)にバラつきがある場合には、距離(lcv)は、凸部上マスク層102bの厚さの平均値を用いる。
また、距離(lcv)としては、ドライエッチングによる第2のマスク層102(凸部上マスク層102b)の除去をいっそう容易にし、被処理体上に設けられる高いアスペクト比を有する微細マスクパタンの加工精度を向上させる観点から、lcv≦(h−lcc)/2であることが好ましく、lcv≦(h−lcc)/3であることがより好ましく、lcv≦(h−lcc)/5であることが最も好ましい。また、距離lcvを限りなく薄くし、第1のマスク層103の加工時の第2のマスク層102の過剰な変形を抑制する観点から、lcv≦0.05hであることが好ましく、lcv≦0.02hであることがより好ましく、lcv≦0.01hであることが最も好ましい。特に、凸部上マスク層102bがない場合、すなわち、距離(lcv)=0の場合には、被処理体上に転写形成された第2のマスク層102/第1のマスク層103に対し、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際エッチング精度や容易性が大きく向上する。
以上のような観点から、上記実施の形態に係る第1の積層体1及び第2の積層体2においては、距離(lcc)と凹凸構造101aの高さ(h)とが下記式(1)を満たし、且つ距離(lcv)、凸部高さ(h)、及び距離(lcc)が、下記式(2)を満たす。これにより、被処理体上に転写形成された第2のマスク層102と第1のマスク層103に対し、ドライエッチングを行うことで、容易に第1のマスク層103を加工することが可能となる。これにより、容易に被処理体上に高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを形成することが可能となる。更に、凹部内マスク層102aの充填分布精度が向上するため、ドライエッチングにより被処理体上に形成される微細マスクパタン構造体の高さ及び径の分布精度が向上する。また、ドライエッチングによる第2のマスク層102の幅の減少を低減することが可能となるため、物理的に安定な微細マスクパタンを得ることが可能となる。物理的に安定で高精度の微細マスクパタンを使用して被処理体を加工することで、被処理体上に加工付与される微細パタン220(図10G参照)を精度高く容易に得ることが可能となる。上記説明した第1の積層体1及び第2の積層体2の機能を保持し第1のラインから第2のラインへと微細パタン形成用積層体を搬送する効果を、後述する樹脂製ケースが担う。
式(1)
0<lcc<1.0h
式(2)
0≦lcv≦(h−lcc)/2
また、上記実施の形態に係る第1の積層体1及び第2の積層体2においては、距離(lcc)及び凸部高さ(h)が、下記式(4)を満たすことが好ましい。この場合には、第1の積層体1及び第2の積層体2を使用し、被処理体上に第2のマスク層102及び第1のマスク層103を転写形成する際の転写精度がより向上する。すなわち、モールド101の凹凸構造101aの精度を反映させ、被処理体上に第2のマスク層102及び第1のマスク層103を転写形成することができる。また、凹部内マスク層102aの充填分布精度がより向上するため、ドライエッチングにより被処理体上に形成される高いアスペクト比を有する微細マスクパタンの高さ及び径の分布精度がより向上する。更に、ドライエッチングにより被処理体上に設けられる微細マスクパタンの径を大きくすることが可能となり、微細マスクパタンの物理的な安定性が向上する。以上より、ドライエッチングにより微細マスクパタンをより高精度にそして物理的に安定な状態で被処理体上に形成することができるので、被処理体上に加工付与される微細パタンを精度高く容易に得ることが可能となる。
式(4)
0.02h≦lcc≦0.9h
更に、また、上記実施の形態に係る第1の積層体1及び第2の積層体2においては、距離(lcv)及び凸部高さ(h)が、下記式(5)を満たすことが好ましく、距離(lcv)が下記式(6)を満たすことがより好ましい。この場合には、凸部上マスク層102bの厚みを限りなく小さくできるため、被処理体上に転写形成された第2のマスク層102及び第1のマスク層103に対しドライエッチングを行う際に容易に精度高く第1のマスク層103を加工することができる。特に、ドライエッチングにより被処理体上に形成される高いアスペクト比を有する微細マスクパタンの高さ及び径の分布精度がより向上する。とりわけ、凸部上マスク層102bがない場合、すなわちlcv=0の場合、モールド101の凹凸構造101aの配列精度を反映させ、被処理体上に、ドライエッチングにより微細パタンを形成することができる。
式(5)
0≦lcv≦0.01h
式(6)
lcv=0
第2の積層体2においては、図4Bに示す距離(lor)は、モールド101の凸部頂部位置(S)と第1のマスク層103の表面位置との間の距離を意味する。したがって、距離(lor)としては、面内において凸部頂部位置(S)や第1のマスク層103の表面位置にバラつきがある場合には、距離(lor)の平均値を用いる。距離(lor)を求める際の平均点数としては10点以上が好ましい。
また、図4Bに示す距離(P)は、凹凸構造101aの隣接する凸部101b中心間の距離、又は隣接する凹部101c中心間の距離を意味する。凹凸構造101aがドット構造(又はホール構造、以下同様)の場合、図7に示すように、凹凸構造101aが、複数の凸部が配置されたドット構造である場合、ある凸部A1の中心とこの凸部A1に隣接する凸部B1−1〜凸部B1−6の中心との間の距離PA1B1−1〜距離PA1B1−6を、ピッチPと定義する。しかし、この図7に示すように、隣接する凸部によりピッチPが異なる場合は次の手順に従い、平均ピッチ(Pave)を決定する。(1)任意の複数の凸部A1,A2…ANを選択する。(2)凸部AMと凸部AM(1≦M≦N)に隣接する凸部(BM−1〜BM−k)と、のピッチPAMBM−1〜PAMBM−kを測定する。(3)凸部A1〜凸部ANについても、(2)と同様にピッチPを測定する。(4)ピッチPA1B1−1〜PANBN−kの相加平均値を平均ピッチ(Pave)として定義する。但し、Nは5以上10以下、kは4以上6以下とする。なお、ホール構造の場合、上記ドット構造にて説明した凸部を凹部開口部と読み替えることで、平均ピッチ(Pave)を定義することができる。なお、ピッチPは、なお、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。断面像よりピッチPを求める場合、上述したドットの中心を、凸部頂部中央位置とする。
また、図8に示すように、凹凸構造101aがラインアンドスペース構造の場合、ある凸ラインA1の中心線と、この凸ラインA1に隣接する凸ラインB1−1及び凸ラインB1−2の中心線との間の最短距離PA1B1−1及び最短距離PA1B1−2の相加平均を、ピッチPと定義する。しかし、この図8に示すように、選択する凸ラインによりピッチが異なる場合には、次の手順に従い、平均ピッチ(Pave)を決定する。(1)任意の複数の凸ラインA1,A2…ANを選択する。(2)凸ラインAMと凸ラインAM(1≦M≦N)に隣接する凸ライン(BM−1、BM−2)と、のピッチPAMBM−1、PAMBM−2を測定する。(3)凸ラインA1〜凸ラインANについても、(2)と同様にピッチPを測定する。(4)ピッチPA1B1−1〜PANBN−2の相加平均値を平均ピッチ(Pave)として定義する。但し、Nは5以上10以下とする。なお、ピッチPは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。断面像よりピッチPを求める場合、上述した凸ラインの中心線を、凸部頂部中央位置とする。
第2の積層体2においては、距離(lor)と平均ピッチ(Pave)とは、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
式(3)
lcv<lor≦10Pave
即ち、被処理体200上に転写形成された第2のマスク層102及び第1のマスク層103に対するドライエッチング性の観点から、lor≦10Paveを満たすことが好ましく、lor≦5Paveであることがより好ましい。ドライエッチング時の第2のマスク層102及び第1のマスク層103から構成されるピラー(微細マスクパタン)の倒れを抑制する観点から、lor≦2.5Paveであることが好ましい。一方で、第1のマスク層103の接着層としての機能を良好に発揮し、貼合・転写精度を高める観点から、距離(lor)と距離(lcv)は、lor>lcvを満たすことが好ましい。特に、モールド101の凹凸構造101aによらず第1のマスク層の凹凸構造101aに対する配置精度を向上させる観点から、lor≧0.05Paveであることがより好ましい。また、貼合時の第1のマスク層103の流動性を向上させる観点から、lor≧0.1Paveを満たすことが最も好ましい。距離(lor)は、転写精度の観点から距離lcv超であることが好ましく、ドライエッチング精度の観点から3000nm以下であることが好ましい。凸部上マスク層102bが存在しない場合、距離lcvは0nmである。この場合、距離(lor)は、0nm超であることが好ましい。距離(lor)の斑は、第1のマスク層103エッチング後の、被処理体200上の第1のマスク層103の幅バラつきの観点から、凹凸構造101aの平均ピッチ(Pave)にもよるが、概ね±30%以下であることが好ましく、±25%以下がより好ましく、±10%以下が最も好ましい。
以上のような観点から、上記実施の形態に係る第2の積層体2においては、距離(lor)、凹凸構造101aの平均ピッチ(Pave)、及び距離lcvが、下記式(7)を満たすことが好ましい。この場合には、被処理体への第2の積層体2の貼合・転写精度が良好となるので、被処理体/第1のマスク層103/第2のマスク層102からなる積層体201の精度が向上する。更に、転写後のドライエッチング性が良好となり、被処理体へ高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを高精度に付与できる。
式(7)
0.05Pave≦lor≦5Pave
また、第2の積層体2においては、モールド101の凹凸構造101aに対する第2のマスク層102の配置、及び第1のマスク層103の膜厚によらず、第1のマスク層103の露出する表面(凹凸構造101aとは反対側の面)の表面粗さRaは300nm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層の接着層としての機能を良好に発現することが可能となる。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体に貼合する際のエアボイドを抑制する観点から、第1のマスク層103の露出する面に対する表面粗さRaは、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが最も好ましい。更に、第1のマスク層103の膜厚を薄くすると共に、転写精度、第1のマスク層の加工精度、及び被処理体の加工精度を向上させる観点から、第1のマスク層103の露出する表面に対する表面粗さRaは、35nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、第1のマスク層103の露出する表面に対する表面粗さは、小さい程好ましいため、下限値は特に限定されないが、連続的に第2の積層体2を製造する観点から、2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。なお、表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)を使用し150μm×150μm以上の測定範囲を、測定周波数が1.11Hz以上にて走査し測定された値として定義する。また、第1のマスク層103の表面い異物が付着していた場合であって、該異物ごと原子間力顕微鏡により操作した場合、表面粗さRaは大きくなる。このため、走査型電子顕微鏡により測定する環境は、クラス1000以下のクリーンルームであることが好ましく、又測定前にはイオナイザ等による除電環境下におけるエアブロー洗浄をすることが好ましい。上記測定は例えば、以下の装置及び条件により可能である。
・株式会社キーエンス社製 Nanoscale Hybrid Microscope VN−8000
・測定範囲:200μm(比率1:1)
・サンプリング周波数:1.11Hz
また、第2の積層体2においては、更に、第1のマスク層103の表面粗さRaと距離lorと、の比率(Ra/lor)は1以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103を被処理体20へと貼合する際のエアボイドの巻き込みを抑制することが可能となるため、被処理体面内における転写精度を向上させることが可能となる。同様の効果から、比率(Ra/lor)は、0.8以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.25以下であることが最も好ましい。更に、比率(Ra/lor)が、0.2以下であることにより、第1のマスク層をナノスケールに薄くすると共に、貼合精度を大きく向上させることが可能となる。同様の効果から、0.15以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。なお下限値は特に限定されず、比率(Ra/lor)は小さい程好ましいが、連続的にロール・ツー・ロール法により微細パタン形成用積層体を製造する観点から0.002以上であることが好ましく、0.004以上であることがより好ましく、0.01以上であることが最も好ましい。
図9A及び図9Bに示すように、第2の積層体2においては、第1のマスク層103の凹凸構造101aとは反対側の面側に被処理体を設けてもよい。この場合には、図9Aに示すように、第1のマスク層103の表面上に被処理体を設けるか、又は図9Bに示すように、被処理体の一主面上にハードマスク層109を設け、このハードマスク層109上に第1のマスク層103の表面を設ける構成となる。なお、図9A及び図9Bには図示しないが、第1の積層体1においても、第2の積層体2と同様に、予めハードマスク層109を設けた被処理体のハードマスク109の表面と第1の積層体1の凹凸構造101aの表面とを、第1のマスク層103を介して貼合することができる。
図9A及び図9Bに示すように、第1のマスク層103の凹凸構造101aとは反対側の面側に被処理体200を設けた積層体300を製造し、積層体300を別の施設へと搬送することができる。既に説明した用語を使用すれば、第1のラインにて積層体300まで製造し、第2のラインにて積層体300を使用する状態である。この場合、被処理体と第1のマスク層103と、の界面に異物が侵入することを抑制できる。また、積層体300を製造する設備や環境により、第1のマスク層103と被処理体200の貼合精度を担保することが可能となる。このため、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103を加工するのに最適な施設にて、加工を行うことができる。このため、被処理体200を加工し微細パタン220を設ける際の、加工精度も向上させることができるため、微細パタン220を具備した被処理体200を使用し製造されるデバイス(特に半導体発光素子)の製造安定性を向上させることができる。なお、積層体300の状態にて、第1のラインから第2のラインへ、と搬送される場合であっても、以下に説明する樹脂製ケースによる梱包により、第1のマスク層103の性能及び第2のマスク層102の性能を維持することができるため、被処理体200の使用に好適な施設にて被処理体を加工することが可能となる。
ハードマスク層109を設けることにより、ハードマスク層109上に転写形成された第1のマスク層103及び第2のマスク層102に対しドライエッチングを行い、第1のマスク層103及び第2のマスク層102から成る高いアスペクト比を有する微細マスクパタンをハードマスク層109上に形成できる。微細マスクパタンをマスクとし、ハードマスク層109を容易に微細加工することが可能となる。ハードマスク層109を微細加工することにより得られたハードマスクパタンをマスクとすることで、容易に被処理体200をエッチングすることができる。特に、ハードマスク層109を適用することで、被処理体200を加工し被処理体200上に微細パタン220を得る際に、ドライエッチングの他、ウェットエッチングの適用性も向上する。
ハードマスク層109は、被処理体200との選択比(被処理体200のエッチングレート/ハードマスク層109のエッチングレート)により決定されれば、その材質は特に限定されない。選択比(被処理体200のエッチングレート/ハードマスク層109のエッチングレート)は、加工性の観点から1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。加工される被処理体200のアスペクト比を高くする観点からは、選択比は5以上であることが好ましく、10以上であるとより好ましい。ハードマスク層109を薄くできるため、選択比は15以上であるとなお好ましい。ハードマスク層109の材質は限定されないが、例えば、シリカ、チタニア、スピンオングラス(SOG)、スピンオンカーボン(SOC)や、クロム、アルミやその酸化物等を使用することができる。また、エッチング時の加工性の観点から、ハードマスク層109の厚みは、5nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上300nm以下であるとより好ましく、5nm以上150nm以下であると最も好ましい。
なお、ハードマスク層109は多層構造であってもよい。ここで多層とは、ハードマスク層109の膜厚方向への積層を意味する。例えば、被処理体200の主面上に第1のハードマスク層109(1)が設けられ、この第1のハードマスク層109(1)上に第2のハードマスク層109(2)が設けられてもよい。同様に、第Nのハードマスク(N)上に第N+1のハードマスク層109(N+1)が設けられてもよい。ハードマスク層109の積層数は、ハードマスク層109の加工性及び、被処理体200の加工精度の観点から10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが最も好ましい。
ハードマスク層109が多層構造の場合の、各層の厚みは、5nm以上150nm以下であることが好ましく、また全ての層の総膜厚は、単層の場合も含めると、500nm以下であることが好ましい。特に、総膜厚は300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
ここで、第1の積層体1を用いた微細パタン形成方法の概略について簡単に説明する。図10Aに示すように、まず、被処理体200上に第1のマスク層103を積層する。次に、図10Bに示すように、第1の積層体1の凹凸構造101a形成面と被処理体200の主面とを第1のマスク層103を介して貼合する。次に、図10Cに示すように、少なくとも第1のマスク層103が光重合性物質を含む場合、紫外線等を照射して第1のマスク層103を硬化して、第1のマスク層103と被処理体20との接着性及び第1のマスク層103と第2のマスク層102との接着性を固定化する。
第1のマスク層103と第2のマスク層102の少なくとも一方に硬化性物質が含有される場合、第1の積層体1の第2のマスク層102を第1のマスク層103を介し被処理体200に貼合した状態及び/又は積層体201の状態にて硬化を促進させることが好ましい。硬化が光重合の場合は、少なくともエネルギー線を照射すると好ましい。光重合性物質が含有される場合は、特に、図10Bに示すように、第1の積層体1の第2のマスク層102を第1のマスク層103を介し被処理体200に貼合した後に、モールド或いは被処理体の少なくとも一方からエネルギー線を照射すると好ましい。一方、硬化が熱重合の場合は、少なくとも加熱を行うと好ましい。このように第1の積層体1において、第2のマスク層102と第1のマスク層103の少なくともいずれか一方に硬化性物質が含まれる場合、第1のマスク層103を加工マスクとして被処理体200を加工する前に、硬化を促進させると、被処理体200の加工精度を向上させることができる。特に、第1のマスク層103にガラス転移温度が存在する場合、第1のマスク層103の硬化を促進することで、ガラス転移温度が大きくなるため、被処理体200の加工精度を向上させることができる。
次に、図10Dに示すように、モールド101を剥離することで、モールド101の凹凸構造101aを、第1のマスク層103及び第2のマスク層102を介し被処理体200上に転写することで、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201を得ることができる。次に、図10Eに示すように、得られた積層体201の第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングすることにより、被処理体200上に高いアスペクト比を有する微細パタン(以下、「微細マスクパタン202a」という)を有する微細パタン構造体202が得られる。この微細マスクパタン202aは、微細加工された第2のマスク層102/第1のマスク層103から構成される。
次に、第2の積層体2を用いた微細パタン形成方法の概略について簡単に説明する。図11Aに示すように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合する。
次に、図11Cに示すように、第1のマスク層103及び第2のマスク層102からモールド101を剥離することで、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201を得ることができる。なお、モールド101の剥離は、モールドの膨潤溶解やモールドの化学的溶解に替えることもできる。
ここで、第1のマスク層103と第2のマスク層102の少なくとも一方に硬化性物質が含有される場合、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した状態或いは/及び積層体201の状態にて硬化を促進させることが好ましい。硬化が光重合の場合は、少なくともエネルギー線を照射すると好ましい。光重合性物質が含有される場合は、特に、図11Bに示すように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した後に、モールド101或いは被処理体200の少なくとも一方からエネルギー線を照射すると好ましい。一方、硬化が熱重合の場合は、少なくとも加熱を行うと好ましい。このように第2の積層体2に硬化性物質が含まれる場合、第1のマスク層103を加工マスクとして被処理体200を加工する前に、硬化を促進させると、被処理体200の加工精度を向上させることができる。特に、第1のマスク層103にガラス転移温度が存在する場合、第1のマスク層103の硬化を促進することで、ガラス転移温度が大きくなるため、被処理体200の加工精度を向上させることができる。
次に、図11Dに示すように、得られた積層体201の第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングすることにより、被処理体200上に高いアスペクト比を有する微細マスクパタン202aが設けられた微細パタン構造体202が得られる。すなわち、被処理体200上に微細加工された第2のマスク層102/第1のマスク層103から構成される微細マスクパタン202aを形成できる。この微細マスクパタン202aは、第1の積層体1を用いて得られた微細マスクパタン202aと同様に用いることができる。また、図11Eに示すように、被処理体200が難加工基材である場合であっても、容易に加工することが可能となる。最後に、図11Fに示すように、被処理体200上の残渣(第1のマスク層103)を除去することにより、微細パタン220が形成された被処理体200を得ることができる。
このように、第1の積層体1を用いて、被処理体200上に第2のマスク層102を第1のマスク層103を介して転写し積層体201を得た後に第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103を微細加工(エッチング)することにより、容易にモールド101の凹凸構造101aの配列精度を反映させた高いアスペクト比を有する微細マスクパタン202aを被処理体200上に転写でき、微細パタン構造体202を得ることができる。
得られた微細マスクパタン202aは、モールド101の凹凸構造101aに対応した微細構造を形成すると共に、アスペクト比が高い。そのため、得られた微細マスクパタン202a表面を疎水性に修飾することにより撥水性機能が発現し、親水性に修飾することにより親水性機能が発現する。また、第2のマスク層102として金属を選定することにより、例えば表面プラズモン(表面プラズモンポラリトン)を利用した微量物質を検出できるセンサを構築できる。更に、微細且つ高アスペクトのパタンであることにより、構造による粘着性が発現するため、高アスペクトパタン面を粘着層として使用することもできる。例えば、センサの場合、第2のマスク層102である金属表面に微量物質(所定の病気の進行度又は感染度等をはかる指標となる分子等)が付着した場合、金属表面の表面プラズモン(表面プラズモンポラリトン)を利用し、測定困難なppmやppbといった微量濃度であっても、光学系により感度を倍増させ検知することが可能となる。これらの機能は第1のマスク層103及び第2のマスク層102の物性及び構造により発現されるものである。以下に説明するように樹脂製ケースにて第1の積層体1を梱包することで、第1のラインから第2のラインへと搬送した場合であっても、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の機能を保持することが可能となり、上記説明した機能を発揮することができる。また、微細マスクパタン202aをマスクとして見立てることで、図10Fに示すように、被処理体200が難加工基材である場合であっても、容易に加工することが可能となる。最後に、図10Gに示すように、被処理体200上の残渣(第1のマスク層103)を除去することにより、微細パタン220が形成された被処理体200を得ることができる。既に説明したように、被処理体200の加工に際しては、第1のマスク層103は接着層及び被処理体200に対する加工マスク、そして第2のマスク層102は第1のマスク層103に対する加工マスクとしての機能を有する。以下に説明するように樹脂製ケースにて第1の積層体1を梱包することで、第1のラインから第2のラインへと搬送した場合であっても、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の機能を保持することが可能となり、上記説明した機能を発揮することができる。
また、第2の積層体2のように、第1のマスク層103を予め設けることにより、第2の積層体2を使用して第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を、被処理体200上に別途第1のマスク層103を形成することなく、第2の積層体2を直接、被処理体200上に貼合することで転写形成できる。これにより、ナノインプリント(転写)における第1のマスク層103の充填や均等な押圧といったノウハウを排除でき、且つ、一般的な方法であるラミネートを用いて転写を行うことができるので、より簡便に積層体201を得ることが可能となる。更に、第2の積層体2を使用することで、第1のマスク層103の膜厚分布を第1の積層体1の凹凸構造101a上への塗工精度で担保することが可能となる。すなわち、被処理体200への貼合及び転写による第1のマスク層103の膜厚分布をより小さくすることが可能となり、積層体201おいて、被処理体200面内における第1のマスク層103の膜厚分布精度を向上させることができ、被処理体200上にエッチングにより形成される微細マスクパタン202aの分布精度を向上させることができる。このため、第2の積層体2を使用することで、被処理体200面内における微細マスクパタン202aの分布精度を向上させることができ、発現される機能の面内分布を小さくすることができる。微細マスクパタン202aをマスクとして被処理体200を使用し加工する場合、加工された被処理体200の微細パタン220は、被処理体200面内において高い分布精度を有することとなる。
上述した第1の積層体1及び第2の積層体2を用い被処理体200の表面に微細パタン220を形成する方法においては、微細マスクパタン202aを被処理体200上に形成する観点から、第2のマスク層102をマスクとして用いた第1のマスク層103の加工は、ドライエッチングであることが好ましい。このドライエッチングによる第2のマスク層102のエッチングレート(Vm1)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)は、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度に影響を与える。Vo1/Vm1>1は、第2のマスク層102が第1のマスク層103よりもエッチングされにくいことを意味するため、大きいほど好ましい。また、第2のマスク層102のモールド101の凹凸構造101aの凹部101c内部への配置性の観点から、Vo1/Vm1≦1000であることが好ましく、Vo1/Vm1≦150がより好ましく、Vo1/Vm1≦100が最も好ましい。
以上のような観点から、第2の積層体2においては、第2のマスク層102のエッチングレート(Vm1)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)が、下記式(8)を満たすが好ましい。これにより、第2のマスク層102の耐エッチング性が向上し、第2のマスク層102のエッチング量が低減されるので、微細パタン構造体202を形成することが可能となる。
式(8)
3≦(Vo1/Vm1)
また、比率(Vo1/Vm1)は、10≦(Vo1/Vm1)であることがより好ましく、15≦(Vo1/Vm1)であることがさらに好ましい。比率(Vo1/Vm1)が上記範囲を満たすことにより、厚みのある第1のマスク層103を用いた場合であっても、第2のマスク層102をマスクとしたドライエッチングによって、第1のマスク層103を容易に微細加工することができる。これにより、微細加工された微細マスクパタン202aを、被処理体200上に形成することができる。
一方、第1のマスク層103のエッチング時のエッチング異方性(横方向のエッチングレート(Vo//)と縦方向のエッチングレート(Vo⊥)、との比率(Vo⊥/Vo//)は、Vo⊥/Vo//>1であることが好ましく、より大きいほど好ましい。なお、縦方向とは、第1のマスク層103の膜厚方向を意味し、横方向とは、第1のマスク層103の面内方向を意味する。また、比率(Vo⊥/Vo//)は、微細マスクパタン202aを被処理体200上に形成する観点から、用途にもよるが、概ね、Vo⊥/Vo//≧2であることが好ましく、Vo⊥/Vo//≧3.5であることがより好ましく、Vo⊥/Vo//≧10であることがさらに好ましい。得られる微細マスクパタン202aを用い、被処理体200を加工する場合は、ピッチがサブミクロン以下の領域においては、高さの高い第1のマスク層103を安定的に形成する観点、及び、被処理体200を容易にドライエッチングする観点から、第1のマスク層103の幅(径)を大きく保つ必要がある。上記範囲を満たすことにより、ドライエッチング後の第1のマスク層103の幅(幹の太さ)を大きく保つことができるため、好ましい。
被処理体200としては、微細パタン構造体202の用途(撥水性、親水性、粘着性、センサ、基材加工用のマスク等)により適宜選定することができ、特に限定されない。そのため、被処理体200としては、樹脂フィルム、樹脂板、樹脂レンズ、無機基材、無機フィルム、無機レンズ等を用いることができる。
特に、微細マスクパタン202aをマスクとして使用して被処理体200を加工する場合は、被処理体200としては、例えば、合成石英や溶融石英に代表される石英、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラスに代表されるガラスや、シリコンウェハ、ニッケル板、サファイア、ダイヤモンド、SiC、マイカ、ZnO、半導体基板(窒化物半導体基板等)、スピネル基材、又はITO等の無機基材を用いることができる。また、第1の積層体1及び第2の積層体2が屈曲性のある場合、被処理体200としては、曲率を持つ外形を有する無機基材(例えば、レンズ形状、円筒・円柱形状、球形状等)を選定することもできる。特に、第1の積層体1及び第2の積層体2がフィルム状(リール状)の場合、裁断やパンチング加工によりその形状を容易に変えることができる。これにより、所定形状の微細マスクパタン202aを被処理体200の表面に任意に形成することができる。このため、例えば、被処理体200が円筒状やレンズ状である場合であっても、被処理体200の表面の全て、又は部分的に微細マスクパタン202aを形成することが可能となる。
また、第2の積層体2においては、ドライエッチングによる被処理体200のエッチングレート(Vi2)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo2)との比率(Vo2/Vi2)は、小さいほど好ましい。Vo2/Vi2<1であれば、第1のマスク層103のエッチングレートの方が、被処理体200のエッチングレートよりも小さいため、被処理体200を容易に加工することができる。
第2の積層体2においては、エッチングレートの比率(Vo2/Vi2)が、下記式(9)を満たすことが好ましい。これにより、第1のマスク層103の塗工性、及びエッチング精度が向上するので、微細パタン構造体202を形成することが可能となる。また、エッチングレートの比率(Vo2/Vi2)としては、(Vo2/Vi2)≦2.5であることがより好ましく、第1のマスク層103を薄くできる観点から、(Vo2/Vi2)≦2であることがさらに好ましく、下記式(10)を満たすことが最も好ましい。下記式(10)を満たすことで、被処理体200上に形成された微細マスクパタン202aをマスクとして、被処理体200を加工する際の、加工精度がいっそう向上し、更に被処理体200上に設けられる微細パタン220の形状制御性が向上する。更に、(Vo2/Vi2)≦0.8を満たすことで、被処理体200に設けられる微細パタン220の深さを深くできるため好ましい。なお、下限値は0.05以上であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103或いは第2のマスク層102の側面が荒れた場合であっても、被処理体200に設けられる微細パタン220の凹凸表面の平滑性を向上させることができる。同様の観点から、(Vo2/Vi2)≧0.1を満たすことが好ましく、(Vo2/Vi2)≧0.2を満たすことがより好ましく、(Vo2/Vi2)≧0.4を満たすことが最も好ましい。
式(9)
(Vo2/Vi2)≦3
式(10)
(Vo2/Vi2)≦1
このように、上記実施の形態に係る第1の積層体1は、凹凸構造101aの凹部101c内部を埋めるように凹部内マスク層102aが配置され、凹凸構造101aの凸部上部には非常に薄い凸部上マスク層102bが配置されるか、又は凸部上マスク層102bが配置されない構成を有する。これにより、第1のマスク層103を介して被処理体200上に第1の積層体1を貼り合わせて、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201を作製した際に、被処理体200上の第1のマスク層103の凹部底部に配置される第2のマスク層102(凸部上マスク層102b)の厚みが薄い又は無い状態にすることができる。この結果、被処理体200上に微細マスクパタン202aを形成する際のドライエッチング工程において、残膜に相当する積層体201の第1のマスク層103の凹部底部に配置される第2のマスク層102(凸部上マスク層102b)を除去する工程を省くことができる。よって、被処理体200上に形成される微細マスクパタン202aの加工精度を向上させることが可能となり、被処理体200上に更なる加工により設けられる微細パタン220の精度が向上する。
また、第2の積層体2の場合は、第1のマスク層103を被処理体200に貼合し、被処理体200上に第1のマスク層103及び第2のマスク層102からなる積層体201を作製した際に、第1のマスク層103の凹部内に配置される第2のマスク層102(凸部上マスク層102b)の厚みが薄い又はない状態にすることができるので、上記第1の積層体1における効果と同様に、被処理体200上に設けられる微細マスクパタン202a及び被処理体200に設けられる微細パタン220の精度を高く保つことができる。更に、第1のマスク層103と第2のマスク層102のエッチングレート比率を満たすことにより、容易に第1のマスク層103を微細加工可能となるため、微細マスクパタン202aを被処理体200上に安定的に形成することが可能となる。
特に、上述した距離(lcv)=0の状態、すなわち、モールド101の凹凸構造101aの凸部101b上に第2のマスク層102が配置されない場合は、上記残膜のない状態となる。すなわち、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201において、第1のマスク層103の凹凸構造の凹部底部に第2のマスク層102が配置されない状態となり、被処理体200上に微細マスクパタン202aを形成する容易性がいっそう向上すると共に、微細パタン構造体202における微細マスクパタン202aの局所的及び面内の精度も向上するため好ましい。
また、第1のマスク層103及び第2のマスク層102内部に残存する溶剤の濃度は、以下の基準に従い測定した際に、2100(g/ml)/m3以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2の被処理体200に対する貼合精度、第2のマスク層102による第1のマスク層103の加工精度、第1のマスク層103による被処理体200の加工精度を向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、1200(g/ml)/m3以下であることが好ましく、600(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、250(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。更に、モールドの凹凸構造101aの配列や形状によらず、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度を向上させる観点から、170(g/ml)/m3以下であることが好ましく、150(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、130(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。
1.第2の積層体2を20mm×20mmにカットし、10mLのアセトンにてメスアップし、溶液を採取する。
2.採取した溶液を、GC/MS装置を使用してSIM法により分析を行い、溶剤量を「g/ml」のディメンジョンにて求める。
3.第2の積層体2の第1のマスク層103及び第2のマスク層102の平均総厚みhave[m]を求める。
4.2.の結果を、第1のマスク層103及び第2のマスク層102の体積(0.02m×0.02m×have)にて除した値を第1のマスク層103及び第2のマスク層102内部に残存する溶剤の濃度とする。
以下、第1の積層体1及び第2の積層体2の各構成要素の材質等について詳細に説明する。
[モールド]
モールド101の形状は、表面に凹凸構造101aが形成されていれば特に限定されないが、平板状、フィルム状又はリール状であることが好ましい。また、モールド101は、図12Aに示すように、支持基材100を用いずに形成されていてもよく、図12Bに示すように、支持基材100上に形成されていてもよい。
支持基材100を具備しないモールド101としては、軟質なポリジメチルシロキサン(PDMS)、COP、ポリイミド、ポリエチレン、PET、フッ素樹脂や、熱可塑性樹脂によって構成されたフィルム状モールドが挙げられる。また、モールド101としては、無機材料で構成された平板状モールドを用いてもよい。無機材料としては、石英、ガラス、シリコン、ニッケル、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン、SiC、ダイヤモンド、クロム、サファイア等が挙げられる。
硬質な平板状のモールド101を使用することで、モールド101の面精度を高く保つことができる。ここで面精度とは、モールド101の凹凸構造101aの凸部頂部位置(S)と凹凸構造101aとは反対側の面との平行度を意味する。このような平行度(面精度)の高いモールド101を使用した微細パタン形成用積層体を使用することで作製される積層体201の面精度(被処理体200の一主面と第2のマスク層102の頂部により構成される面との平行度)を高く保つことができる。これにより、ドライエッチングにより作製される積層体201の微細マスクパタン202aの面精度(被処理体200の一主面と第2のマスク層102の頂部により構成される面との平行度)を向上させることが可能となり、加工される被処理体200の微細パタン220の面精度(被処理体200の具備する微細パタン220の頂部により構成される面と、微細パタン220の凹部底部により構成される面との平行度)を高く保つことができる。
例えば、LEDの内部量子効率と光取り出し効率を同時に向上させるために、サファイア基板、Si基板、SiC基板、スピネル基板或いは窒化物半導体基板を被処理体200として微細加工する場合、基板上に作製される微細パタン220の大きさ及び分布が重要となる。モールド101の面精度により基板上の微細パタン220の高さ精度を担保できることは、ドライエッチングにより形成される微細マスクパタン202aの幹の太さの精度の担保に直結する。幹の太さの精度は、基板上に形成される微細パタン220の大きさ精度に直結する。更に、ステップアンドリピート方式での転写が可能となり、生産性を高く保つこともできる。
一方、軟質なモールド101を使用することで、微細パタン形成用積層体を被処理体200に貼合する際の大きな気泡の巻き込みや凹凸構造101a内部へのミクロな気泡の巻き込み等を抑制することができる。更に、被処理体200表面の不陸やパーティクルを吸収することができるため、転写精度が向上する。これらの効果は、積層体201の転写形成精度を向上させると共に、微細マスクパタン202aをマスクとして見立てて被処理体200を加工する際の加工精度を向上させる。
支持基材100を具備するモールド101としては、硬質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせ、軟質な支持基材100と硬質なモールド101との組み合わせ、又は、軟質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせが挙げられる。特に、軟質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせは、微細パタン形成用積層体を連続的にロール・ツー・ロールプロセスにて製造することに適している。更に、得られた軟質且つリール状(フィルム状)の微細パタン形成用積層体を使用することで、被処理体200へと連続的に且つ転写精度・転写速度が高く、第1のマスク層103及び第2のマスク層102を転写形成する、すなわち、連続的に且つ高精度に積層体201を得ることが可能となる。また、軟質且つリール状(フィルム状)のモールドを具備する微細パタン形成用積層体を使用することで、被処理体に対し、任意の部分に第1のマスク層103及び第2のマスク層102を転写形成することができる。なお、曲面の場合も同様である。
硬質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせとしては、ガラス、石英、シリコン、SUS、アルミ板等の無機材料で構成される支持基材100と、PDMS、ポリイミド、ポリエチレン、PET、COP、フッ素樹脂、光硬化性樹脂等で構成されるモールド101との組み合わせ等が挙げられる。
このように硬質な支持基材100上に軟質なモールド101を設けることで、硬質な支持基材100の面精度を担保した状態で、モールド101の表面物性を容易に変化させることができる。そのため、第1の積層体1を被処理体200上に転写する際の第2のマスク層102上への第1のマスク層103の充填が容易になる。また、第2の積層体2を製造する際の第1のマスク層103の塗工性が向上する。また、転写により形成された積層体201の面精度(被処理体200の一主面と第2のマスク層102の頂部により構成される面との平行度)を高く保つことができ、積層体201の第2のマスク層102上からエッチング加工を行った後の、微細マスクパタン202aの高さ精度を向上できる。これにより、微細マスクパタン202aをマスクとして見立て、被処理体200を加工する際の、加工精度も担保することが可能となる。
軟質な支持基材100と硬質なモールド101との組み合わせとしては、スポンジやゴム(シリコーンゴム等)に代表される柔弾性体で構成される支持基材100と、シリコン、石英、ニッケル、クロム、サファイア、SiC、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又は、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等の無機材質で構成されるモールド101との組み合わせが挙げられる。支持基材100が柔弾性体である場合、支持基材100のヤング率(縦弾性率)は概ね、1Mpa以上100Mpa以下であると面精度を高く保つことができるため好ましい。同様の効果から、4Mpa以上50Mpa以下であるとより好ましい。また、第1のマスク層103/第2のマスク層102/被処理体200からなる積層体201を形成する際の転写精度の観点から、0.5mm以上20cm以下の厚みであることが好ましく、1mm以上10cm以下がより好ましく、5mm以上8cm以下であると最も好ましい。
このような組み合わせにより、微細パタン形成用積層体を被処理体200に貼合・押圧する際に、軟質な支持基材100による応力緩和及び応力集中吸収効果により、硬質なモールド101の面精度をよりいっそう高めることができる。その結果、微細パタン構造体202の高さ精度を向上させることができる。これにより、微細マスクパタン202aをマスクとして見立て、被処理体200を加工する際の加工精度も担保することが可能となる。
軟質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせとしては、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルムといった樹脂フィルムで構成される支持基材100と、光硬化性樹脂等で構成されるモールド101との組み合わせが挙げられる。
このような組み合わせにより、微細パタン形成用積層体をロール・ツー・ロール法により連続的に製造することができ、微細パタン形成用積層体を使用する際の、被処理体200への貼合が容易になる。ロール・ツー・ロール法により微細パタン形成用積層体を製造することにより、第2のマスク層102の凹凸構造101a内部への充填配置精度を向上させることができる。更に、第1のマスク層103の塗工性が向上するため、第1のマスク層103の膜厚分布精度を良好にできる。このため、第2の積層体2の場合、被処理体200上に転写形成される第1のマスク層103及び第2のマスク層102の厚み分布及びパタン精度を、第2の積層体2の精度を反映し、高く付与することが可能となり、積層体201の精度が大きく向上する。特に、微細パタン形成用積層体を、円筒状(円柱状)の貼合ロールを使用し、被処理体200へと貼合し支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体を得る際に発生するエアボイド(マクロな気泡)や、ナノエアボイド(凹凸構造101a内部に発生する気泡)といった欠陥を抑制できると共に、貼合速度を向上させることができる。更に、ロール・ツー・ロール法を適用することにより、支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体から支持基材100及びモールド101を剥離する際の、剥離応力が線として働くため、転写精度が向上する。
なお、軟質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせを硬質な支持基材100上に配置することにより、上述した硬質な支持基材100と軟質なモールド101との組み合わせと、同様の効果を得ることができる。
支持基材100の材料に関しては特に制限はなく、ガラス、セラミック、シリコンウェハ、金属等の無機材料、プラスチック、ゴム、スポンジ等の有機材料を問わず使用できる。微細パタン形成用積層体の用途に応じて、板、シート、フィルム、リール、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状及びこれらを複合化したものを使用できるが、ガラス、石英、シリコン、SUS等の硬質無機材料のみ、ゴム(シリコーンゴム等)やスポンジといった柔弾性体のみ、又はガラス、石英、シリコン、SUS等の硬質無機材料とゴム(シリコーンゴム等)やスポンジが積層された構造、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルム等の樹脂フィルムを、支持基材100として採用することが好ましい。
支持基材100とモールド101との接着性を向上させるため、モールド101を設ける支持基材100の一主面上に、モールド101との化学結合や、浸透等の物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、エキシマ処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理等を施してもよい。
モールド101の支持基材100は、透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、モールド101を製造する際にロール・ツー・ロール法(光ナノインプリント法)を適用することが容易となるため、モールド101の精度及び製造パフォーマンスが向上する。更に、支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対しエネルギー線を照射する際に、支持基材100越しにエネルギー線を照射することが可能となる。一方、着色されている場合、微細パタン形成用積層体の保存性を向上させることができる。特に、光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。同様に、モールド101も透明であっても、着色されていてもよい。
また、透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下の支持基材100であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、支持基材100に対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備した支持基材100の場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、微細パタン形成用積層体の性能保存性をより向上させることができる。
一方、着色されている場合、微細パタン形成用積層体に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下の支持基材100であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、支持基材100に対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属膜を具備した支持基材100の場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、微細パタン形成用積層体の性能保存性をより向上させることができる。
モールド101の支持基材100としては上述した支持基材100を採用することができるが、以下に記載する屈折率、ヘーズ、微粒子を含有する樹脂層の観点を考慮した支持基材100を使用することにより、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度をいっそう向上させることが可能となる。
微細パタン形成用積層体を使用し、支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体を形成した後に、支持基材100面側からエネルギー線を照射する場合、支持基材100とモールド101との界面におけるエネルギー線の反射が小さい程、転写精度は向上すると共に、使用するエネルギー線源のパワーを小さくすることが可能となる。このため、第1のマスク層103の反応に必要な主波長(λ)に対する支持基材100の屈折率(n1)とモールド101の屈折率(n2)との差|(n1−n2)|は0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。なお、屈折率差|(n1−n2)|が0.1以下であれば、エネルギー線は支持基材100とモールド101との界面を略認識しなくなるため、好ましい。
支持基材100のヘーズは、30%以下であることが好ましい。30%以下であることにより、モールド101の密着性を担保することが可能となる。特に、転写精度とモールド101の密着性の観点から、ヘーズは10%以下が好ましく、6%以下であるとより好ましく、1.5%以下であると最も好ましい。また、微細パタン形成用積層体に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされた第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合は、その解像度の観点から、ヘーズは1.5%以下であることが好ましい。ヘーズ(haze)とは、濁度を表わす値であり、光源により照射され試料中を透過した光の全透過率T及び試料中で拡散され散乱した光の透過率Dより求められ、ヘーズ値H=D/T×100として定義される。これらはJIS K 7105により規定されている。市販の濁度計(例えば、日本電色工業社製、NDH−1001DP等)により容易に測定可能である。上記1.5%以下のヘーズ値を有する支持基材100としては、例えば、帝人社製高透明フィルムGSシリーズ、ダイアホイルヘキスト社製M−310シリーズ、デュポン社製マイラー(登録商標)Dシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
支持基材100として、フィルム状の支持基材100を選定する場合、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材100を採用してもよい。ロール・ツー・ロールプロセスにより連続的にモールド101を製造する際の作業性や、連続的に被処理体200に対し微細パタン形成用積層体を貼合する際の作業性を向上させ、微細パタンの欠陥や、ミリスケールやセンチスケールといったマクロな欠陥の発生を抑制する観点から、微粒子の平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。微細パタン形成用積層体に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされた第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合の解像度を向上させる観点から、微粒子の平均粒径は5.0μm以下であることが好ましい。この効果をいっそう発揮する観点から、0.02μm〜4.0μmであることがより好ましく、0.03μm〜3.0μmであることが特に好ましい。
微粒子の配合量は、例えば、樹脂層を構成するベース樹脂、微粒子の種類及び平均粒径、所望の物性等に応じて適宜調整できる。微粒子としては、例えば、シリカ、カオリン、タルク、アルミナ、リン酸カルシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子等を挙げることができる。特に、透明性の観点から、シリカの粒子が好ましい。なお、微粒子はフィラーを含む。これらの微粒子は単独で使用しても、2種類以上を併用し使用してもよい。
微粒子を含有する樹脂層を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物等が挙げられる。ロール・ツー・ロールプロセスにより連続的にモールド101を製造する際の作業性や、連続的に被処理体200に対し微細パタン形成用積層体を貼合する際の作業性を向上させ、微細パタンの欠陥や、ミリスケールやセンチスケールといったマクロな欠陥を抑制する観点から、樹脂層の厚みは、0.01μm以上であることが好ましい。微細パタン形成用積層体に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされた第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合の解像度を向上させる観点から、0.05μm〜3.0μmであることがより好ましく、0.1〜2.0μmであることが特に好ましく、0.1μm〜1.0μmであることが極めて好ましい。
二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、樹脂層を積層する方法としては、特に制限はなく、例えば、コーティング等が挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする芳香族線状ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする脂肪族線状ポリエステル、これらの共重合体等のポリエステル等から主としてなるポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用し使用してもよい。更に、樹脂層が積層される二軸配向ポリエステルフィルムには、微粒子が含有されていてもよい。これらの微粒子としては、例えば、樹脂層に含有される微粒子と同様のもの等が挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルムに含有される微粒子の含有量は、支持基材100の透明性を保つという観点から、0ppm〜80ppmであることが好ましく、0ppm〜60ppmであることがより好ましく、0ppm〜40ppmであることが特に好ましい。上記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、二軸延伸方法等を用いることができる。また、未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムの一方の面に、樹脂層を形成後、更に延伸して支持基材100としてもよい。二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましい。これらの支持フィルムとしては、例えば、東洋紡績社製のA2100−16、A4100−25等が挙げられる。なお、上記二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材100を使用する場合は、微粒子を含有する樹脂層面上にモールド101を形成すると、接着性や転写耐久性の観点から好ましい。
図13A及び図13Bに示すように、第2の積層体2において、第1のマスク層103の凹凸構造101aとは反対側の面側に保護層106を設けてもよい。この場合には、図13Aに示すように、第1のマスク層103の表面上に保護層106を設けるか、又は図13Bに示すように、表面に粘着層107を具備する保護層106の粘着層107面を、第1のマスク層103の表面上に設ける構成となる。
保護層106を設けることにより、第2の積層体2を連続的に作製した場合の巻き取りが容易になり、また第2の積層体2の第1のマスク層103を保護することができる。このため、第2の積層体2の保存安定性が向上し、また搬送等により第1のマスク層103面に対するパーティクルの付着や傷の発生を抑制できるため、被処理体200への貼合性が向上する。このような保護層106を設けることにより、第1のラインにて製造された第2の積層体2の第1のマスク層103の機能を保存すると共に、第1のマスク層表面への傷やパーティクルの付着を抑制できる。このため、ユーザのラインである第2のラインにおいて、保護層106を剥離することにより、第2の積層体2の第1のマスク層103を、被処理体200に対し、エアボイドといった欠陥を抑制し、貼合することができる。この結果、被処理体200面内において、マイクロメートルやミリメートルといった欠陥を抑制し、第1のマスク層103及び第2のマスク層102を精度高く被処理体200上に転写形成することができる。なお、保護層106を第1のマスク層103上に設けない場合であっても、第2の積層体2をロールアップして巻き取った場合、或いは第2の積層体2を積層した場合、モールド101の第2のマスク層102とは反対の面或いは、支持基材100の第2のマスク層102とは反対側の面により、第1のマスク層103を保護することができる。
保護層106は、保護層106と第1のマスク層103との接着強度が、第1のマスク層103と第2のマスク層102との接着強度及び第2のマスク層102と凹凸構造101aとの接着強度よりも小さければ特に限定されない。
保護層106の表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103の表面粗さRa以上の範囲で大きい場合であっても、保護層106を貼り合わせる際の温度や圧力、またロールアップする場合は巻締めに係る力を制御することにより、第1のマスク層103の表面精度を保つことができるため、特に限定されない。しかしながら、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、保護層106の表面粗さRaは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103に対するRaの定義と同様である。
また、保護層106を設けない場合であって、微細パタン形成用積層体をロール・ツー・ロール法により連続的に製造する場合、支持基材100のモールド101とは反対側の表面(裏面)の表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103の表面粗さRa以上の範囲で大きい場合であっても、ロールアップする場合は巻締めに係る力を制御することにより、第1のマスク層103の表面精度を保つことができるため、特に限定されない。しかしながら、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、支持基材100の裏面の表面粗さRaは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103に対するRaの定義と同様である。
また、保護層106は、着色されていてもよい。第2の積層体2の保存性を向上させることができる。特に、第2の積層体2に光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。
また、保護層106が透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下の保護層106であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、保護層106に対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備した保護層106の場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、微細パタン形成用積層体の性能保存性をより向上させることができる。
一方、保護層106が着色されている場合、微細パタン形成用積層体に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下の保護層106であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、保護層106に対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属膜を具備した保護層106の場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、微細パタン形成用積層体の性能保存性をより向上させることができる。
なお、上記説明した、紫外光又は感光波長(λ)に対する透過率範囲を満たす保護層106或いは支持基材100の少なくともいずれか一方を採用することで、微細パタン形成用積層体の性能劣化を抑制することができる。特に、支持基材100及び保護層106のいずれも上記説明した透過率範囲を満たすことにより、第2の積層体2の性能劣化抑制効果が大きくなるため好ましい。
例えば、保護層(保護フィルム)106中に含まれるフィッシュアイの数が多く(例えば、直径80um以上のフィッシュアイが500個/m2以上含まれる保護層106)、保護層106貼合時に気泡が発生する場合であっても、第1のマスク層103の膜厚が上記距離(lor)/ピッチ(P)を満たす範囲で薄いため、第1のマスク層103の劣化を、酸素阻害を利用して抑制できるとも考えらえる。第1のマスク層103の膜厚が上記距離(lor)/ピッチ(P)を満たす範囲で薄い場合、数マイクロメートル〜数十マイクロメートルといった厚い第1のマスク層103に比べ、第1のマスク層103のヤング率が大きくなるため、保護層106のフィッシュアイの与える第1のマスク層103への凹凸転写の影響は少なく、よって、被処理体200に貼合した場合の、フィッシュアイ由来のエアボイドの発生も抑制しやすくなる。保護層106を具備した第2の積層体2を使用し、第2の積層体2の第1のマスク層103を、被処理体200に貼合する際のエアボイドをよりいっそう抑制する観点から、保護層106中に含まれる直径が80μm以上のフィッシュアイは5個/m2以下であることが好ましい。ここでフィッシュアイとは材料を熱溶融し混練、押出し延伸法又はキャスティング法によりフィルムを製造する際に、材料の未溶解及び劣化物がフィルム中に取り込まれたものをいう。また、フィッシュアイの直径の大きさは材料によっても異なるが約10μm〜1mmであり、フィルム表面からの高さは約1μm〜50μmである。ここでフィッシュアイの大きさの測定方法は、例えば光学顕微鏡、接触型表面粗さ計、又は走査型電子顕微鏡で測定可能である。なお、フィッシュアイの直径は最大径を意味する。
このような保護層106は、例えばフィルムを製造する際、原料樹脂を熱溶融後に濾過する等、フィルムの製造方法の変更を行うことにより製造可能である。保護層106の膜厚は、1μm〜100μmであると保護層106の貼合性、ロール・ツー・ロールとしてのウェブハンドリング性、及び環境負荷低減の観点から好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、15μm〜50μmであると最も好ましい。市販のものとして、信越フィルム社製PP−タイプPT、東レ社製トレファン(登録商標)BO−2400、YR12タイプ、王子製紙社製アルファン(登録商標)MA−410、E−200C、王子製紙社製アルファン(登録商標)E200シリーズ等のポリプロピレンフィルム等、帝人社製PS−25等のPSシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるがこれに限られたものではない。また、市販のフィルムをサンドブラスト加工することにより、簡単に製造することが可能である。
上述した材料で構成される平板状のモールド101における、凹凸構造101a面とは反対側の面に支持基材100を配置して使用してもよい。例えば、PDMSや熱可塑性樹脂(PI,PET、COP、PP、PE等)から構成されるモールド101の凹凸構造101a面とは反対側の面に、ガラスやシリコンウェハに代表される無機支持基材や、ゴム弾性のある弾性体支持基材等を配置することができる。また、例えば、シリコン、ダイヤモンド、ニッケル、サファイア、石英等から構成されるモールド101の凹凸構造101a面とは反対側の面に、ゴム弾性のある弾性体等の支持基材100等を配置することができる。また例えば、ガラスやシリコンウェハといった無機材料等の支持基材100や、PETフィルム、COPフィルムやTACフィルムといった有機材料の支持基材100上に、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなるモールド101を形成することができる。また例えば、ガラスやシリコンウェハといった無機材料の支持基材100や、PETフィルム、COPフィルムやTACフィルムといった有機材料の支持基材100上に、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなるモールド101を形成し、支持基材100の反対側の面上に弾性体等の支持基材100を更に設けることができる。
リール状のモールド101としては、支持基材100を用いずに熱可塑性樹脂のみから構成されるモールド101(図12A参照)や、支持基材100上に形成された熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又はゾルゲル材料等の硬化物からなるモールド101(図12B参照)等が挙げられる。図12Bに示すように、支持基材100を用いた場合には、支持基材100の一主面上に設けられた、表面に微細パタンを有する熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又はゾルゲル材料等の硬化物からモールド101が構成される。
また、モールド101は透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、微細パタン形成用積層体を被処理体200に貼合した後にエネルギー線を照射する際に、モールド101側よりエネルギー線を照射することが可能となるため、被処理体200のハンドリング性が向上する。一方、着色されていることで微細パタン形成用積層体の性能保存性が向上する。
また、モールド101が透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下のモールド101であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、モールド101に対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備したモールド101の場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、微細パタン形成用積層体の性能保存性をより向上させることができる。
一方、モールド101が着色されている場合、微細パタン形成用積層体に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下のモールド101であると微細パタン形成用積層体の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、モールド101に対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
なお、上記説明した、紫外光又は感光波長(λ)に対する透過率範囲を満たす保護層106、支持基材100又はモールド101の少なくともいずれか1つを採用することで、微細パタン形成用積層体の性能劣化を抑制することができる。
また、図14A及び図14Bに示すように、モールド101の凹凸構造101a表面に金属、金属酸化物又は金属と金属酸化物から構成される金属層104を設けてもよい。金属層104を設けることにより、モールド101の機械強度が向上する。金属層104を構成する金属は特に限定されないが、クロム(Cr)、アルミ(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、金(Au)、プラチナ(Pt)又はシリコン(Si)等が挙げられる。金属層104を構成する金属酸化物としては、前記金属の酸化物の他、SiO2、ZnO、Al2O3、ZrO2、CaO、SnO2等が挙げられる。また、金属層104を構成する材料として、シリコンカーバイドやダイヤモンドライクカーボン等を使用することもできる。なおダイヤモンドライクカーボンは、フッ素元素を含むダイヤモンドライクカーボンを使用できる。更に、金属層104を構成する材料として、これらの混合物を使用してもよい。
金属層104は、単層であっても多層であってもよい。例えば、最表面に形成される金属層104と、モールド101との密着性が悪い場合には、モールド101の凹凸構造101a表面に第1の金属層104を形成し、さらに第1の金属層104表面に第2の金属層104を形成することができる。このように、金属層104の密着性や帯電性の改善のために、第Nの金属層104表面に、第N+1の金属層104を形成することができる。金属層104の層数としては、転写精度の観点から、N≦4が好ましく、N≦2がより好ましく、N≦1が最も好ましい。例えば、N=2の場合、モールド101の凹凸構造101a表面にSiO2からなる第1の金属層104を設け、第1の金属層上にCrからなる第2の金属層を設けることができる。また、金属層104を構成する金属としては転写精度の観点から、Crが好ましく、金属酸化物としては、SiO2、Al2O3、ZrO2、ZnOが好ましい。
また、図15A〜図15Dに示すように、モールド101の凹凸構造101a表面(図15A,図15B参照)や、金属層104表面(図15C,図15D参照)に、離型層105が形成されていてもよい。離型層105を設けることにより、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。また、金属層104表面にさらに離型層105を設けることにより、離型処理材(離型層)の接着性が向上し、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度及び転写耐久性が向上する。離型層105の厚みは、転写精度の観点から30nm以下であることが好ましく、単分子層以上の厚みであることが好ましい。離型性の観点から、離型層105の厚みは、2nm以上であることがより好ましく、転写精度の観点から20nm以下であることがより好ましい。
離型層105を構成する材料は、表面自由エネルギーを低下させる効果を発現するものであれば特に限定されない。例えば、メチル基、フッ素元素、シリコーンのいずれかを含む材料を選択することができる。また離型層105を構成する材料は、水に対する接触角が90度以上であることが好ましい。ここで接触角は、離型層105を構成する材料を用いベタ膜(微細パタンの無い膜)を作製した際の、接触角を意味する。
モールド101を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、透明フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。モールド101を構成する熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
モールド101が樹脂により構成される場合、上述した樹脂や、金属層104、又は離型層105との組み合わせにより、第2のマスク層102及び第1のマスク層103との接着性が低下すれば、モールド101を構成する材料は特に限定されない。特に、モールド101は、転写精度の観点から、シリコーンに代表されるポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる樹脂又はフッ素含有樹脂で構成されることが好ましい。ただし、モールド101の凹凸構造101a上に離型層105を設ける場合は、凹凸構造101aの材質は特に限定されない。一方、凹凸構造101a上に離型層105を設けない場合は、フッ素含有樹脂やシリコーンに代表されるポリジメチルシロキサン系樹脂、COPやポリイミド等で構成されることが好ましく、特に、ポリジメチルシロキサン系樹脂やフッ素含有樹脂で構成されることが好ましい。フッ素含有樹脂は、フッ素元素を含有しており、且つ、水に対する接触角が90度より大きければ特に限定されない。ここで水に対する接触角とは、モールド101の凹凸構造101a面に対する水の接触角を意味する。第2のマスク層102を被処理体200に転写する際の転写精度の観点から、水に対する接触角は95度以上がより好ましく、100度以上がなお好ましい。
特に、モールド101は、光硬化性樹脂の硬化物から構成されることが好ましい。モールド101を構成する材料に、光硬化性樹脂を選択することにより、モールド101を作製する際のスループット性や転写精度が向上するため、好ましい。
また、モールド101中の樹脂表層(凹凸構造101a付近)のフッ素濃度(Es)を、モールド101を構成する樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より大きくすることで、モールド101表面は自由エネルギーの低さゆえに転写材樹脂や、第2のマスク層102及び第1のマスク層103との離型性に優れ、且つ、ナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂/樹脂転写できる離型性に優れるモールド101が得られると共に、支持基材100付近では自由エネルギーを高く保つことで、接着性を向上することができる。
更に、モールド101を構成する樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)とモールド101を構成する樹脂層の微細パタン表層部のフッ素元素濃度(Es)との比が1<(Es/Eb)≦30000を満たすことで、上記効果をより発揮するためより好ましい。特に、3≦(Es/Eb)≦1500、10≦(Es/Eb)≦100の範囲となるにしたがって、より離型性が向上するため好ましい。
なお、上記する最も広い範囲(1<(Es/Eb)≦30000)の中にあって、20≦(Es/Eb)≦200の範囲であれば、モールド101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、モールド101表面の自由エネルギーが効果的に減少するので、転写材樹脂や、第2のマスク層102及び第1のマスク層103との離型性が向上する。また、モールド101を構成する樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)を、モールド101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くすることにより、樹脂自体の強度が向上すると共に、モールド101中における支持基材100付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、支持基材100との密着性が向上する。これにより、支持基材100との密着性に優れ、第2のマスク層102との離型性に優れ、しかも、ナノメートルサイズの凹凸形状を樹脂から樹脂へ繰り返し転写できるモールド101を得ることができるので特に好ましい。また、26≦(Es/Eb)≦189の範囲であれば、モールド101を構成する樹脂層表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。更に、30≦(Es/Eb)≦160の範囲であれば、モールド101を構成する樹脂層表面の自由エネルギーを減少させると共に、樹脂の強度を維持することができ、繰り返し転写性がより向上するため好ましく、31≦(Es/Eb)≦155であればより好ましい。46≦(Es/Eb)≦155であれば、上記効果をよりいっそう発現できるため好ましい。
なお、上記繰り返し転写性とは、モールド101から別のモールド101を容易に複製できることを意味する。すなわち、モールド101の凹凸構造101aが凸型のモールドG1を鋳型として、微細パタンが凹型のモールドG2を転写形成可能であり、モールドG2を鋳型として、微細パタンが凸型のモールドG3を転写形成することが可能となる。同様に、微細パタンが凸型のモールドGNを鋳型として、微細パタンが凹型のモールドGN+1を転写形成することが可能となる。また、一つのモールドG1を鋳型として複数枚のモールドG2を得ることも、一つのモールドG2を鋳型として複数枚のモールドG3を得ることも可能となる。同様に、一つのモールドGMを鋳型として複数枚のモールドGM+1を得ることも可能となる。また、使用済みの微細パタン形成用積層体のモールド101を再利用できることも意味する。このように、上記(Es/Eb)を満たすモールド101を使用することにより、環境対応性が向上する。
ここで、モールド101を構成する樹脂層の表層(第2のマスク層102面側領域)とは、例えば、モールド101を構成する樹脂層の第2のマスク層102面側表面から、支持基材100側に向かって、略1%〜10%だけ厚み方向に侵入した部分、又は厚み方向に2nm〜20nmだけ侵入した部分を意味する。なお、モールド101を構成する樹脂層の第2のマスク層102面側領域のフッ素元素濃度(Es)は、X線光電子分光法(XPS法)により定量できる。XPS法のX線の浸入長は数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。他の解析手法として、透過型電子顕微鏡を使ったエネルギー分散型X線分光法(TEM―EDX)を用い、(Es/Eb)を算出することもできる。また、モールド101を構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素濃度(Eb)は、仕込み量から計算することができる。又は、モールド101を構成する樹脂層を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることでも、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
モールド101を構成する樹脂層を構成する樹脂のうち、光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(1)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(2)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、シリコーン及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(3)等を用いることが好ましい。また、金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を含む硬化性樹脂組成物(4)を用いることもできる。特に、硬化性樹脂組成物(1)を用いることで、表面自由エネルギーの低い疎水性界面等に該組成物(1)を接触させた状態で上記組成物(1)を硬化させると、モールド101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)を、モールド101を構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)より大きくでき、さらには樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。
(A)(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成する(メタ)アクリレートとしては、後述する(B)フッ素含有(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーであれば制限はないが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。そして、それらは非フッ素含有のモノマーであることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタアクリレートを意味する。
また、重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜6の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は1.5〜4が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1又は2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
(B)フッ素含有(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成するフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると支持基材100との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエン等を用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
なお、上述した表層のフッ素元素濃度(Es)と平均フッ素元素濃度(Eb)と、の比率(Es/Eb)を調整する観点から、フッ素含有(メタ)アクリレートは、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートであると好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツール(登録商標)DAC」を用いることができる。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(2)を表し、R2は、下記化学式(3)を表す。)
(化学式(2)中、nは、1以上6以下の整数である。)
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量体を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物(1)中で分散する量であればよく、硬化性樹脂組成物(1)100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましい。乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
特に、レベリング性を向上させるために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、硬化性樹脂組成物(1)の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であれば、さらに好ましい。硬化性樹脂組成物(1)の膜厚を薄くするために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であればより好ましい。
(C)光重合開始剤
硬化性樹脂組成物(1)を構成する光重合開始剤は、光によりラジカル反応又はイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。
硬化性樹脂組成物(1)は、光増感剤を含んでいてもよい。また、公知慣用の光増感剤の1種又は2種以上と組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤は、1種のみを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。2種類以上併用する場合には、フッ素含有(メタ)アクリレートの分散性、及び硬化性樹脂組成物(1)の微細パタン表層部及び内部の硬化性の観点から選択するとよい。例えば、αヒドロキシケトン系光重合開始剤とαアミノケトン系光重合開始剤とを併用することが挙げられる。
硬化性樹脂組成物(2)は、上述した硬化性樹脂組成物(1)から(B)フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものを使用することができる。モールド101を構成する樹脂が硬化性樹脂組成物(2)の硬化物である場合、金属層104と離型層105の両方、又はいずれか一方を設けることが、第2のマスク層102の転写精度の観点から好ましい。
硬化性樹脂組成物(3)は、上述した硬化性樹脂組成物(1)にシリコーンを添加するか、又は、硬化性樹脂組成物(2)にシリコーンを添加したものを使用することができる。
シリコーンを含むことにより、シリコーン特有の離型性や滑り性により、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。硬化性樹脂組成物(3)に使用されるシリコーンとしては、例えば、ジメチルクロロシランの重合体であるポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表される、常温で流動性を示す線状低重合度のシリコーンオイルや、それらの変性シリコーンオイル、高重合度の線状PDMS又は、PDMSを中程度に架橋しゴム状弾性を示すようにしたシリコーンゴムや、それらの変性シリコーンゴム、また樹脂状のシリコーン、PDMSと4官能のシロキサンから構成される3次元網目構造を有する樹脂であるシリコーンレジン(又はDQレジン)等が挙げられる。架橋剤として有機分子を用いる場合や、4官能のシロキサン(Qユニット)を用いる場合もある。
変性シリコーンオイル、変性シリコーンレジンは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンと、に分けられる。反応性シリコーンとしては、−OH基(水酸基)を含むシリコーン、アルコキシ基を含むシリコーン、トリアルコキシ基を含むシリコーン、エポキシ基を含むシリコーンが好ましい。非反応性シリコーンとしては、フェニル基を含むシリコーン、メチル基とフェニル基を双方含むシリコーン等が好ましい。1つのポリシロキサン分子に上記したような変性を2つ以上施したものを使用してもよい。
反応性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ビニル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。
また、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、シリコーンを、化学結合を介しモールド101中に組み込むことができるため、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。特に、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、上記効果をよりいっそう発揮するため好ましい。モールド101の樹脂層の硬化性という観点からは、ビニル基又はメタクリル基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。また、支持基材100への接着性という観点からは、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物は、1種類のみを使用してもよく、複数を併用してもよい。光重合性基を持つシリコーンと、光重合性基を持たないシリコーンは、併用しても、単独で用いてもよい。
硬化性樹脂組成物(4)は、上記硬化性樹脂組成物(1)〜(3)に対し、以下で説明するゾルゲル材料を添加したものや、又は、ゾルゲル材料のみで構成された組成物を採用することができる。硬化性樹脂組成物(1)〜(3)に対し、ゾルゲル材料を加えることで、ゾルゲル材料特有の収縮作用による上記モールドの複製効率が向上する効果や、ゾルゲル材料特有の無機として性質を発揮することが可能となるため、モールド101に対する第2のマスク層102や第1のマスク層103の浸透抑制効果が向上し、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。
モールド101を構成するゾルゲル材料としては、熱や触媒の作用により、加水分解・重縮合が進行し、硬化する化合物群である、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、液状ガラス、スピンオングラスや、これらの反応物であれば、特に限定されない。これらを総称して金属アルコキシドと呼ぶ。
金属アルコキシドとは、Si,Ti,Zr,Zn,Sn,B,In,Alに代表される金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、又はイソプロピル基等の官能基が結合した化合物群である。これらの官能基が、水、有機溶剤又は加水分解触媒等により、加水分解・重縮合反応を進行させ、メタロキサン結合(−Me1−O−Me2−結合。ただし、Me1、Me2は金属種であり、同一であっても異なってもよい)を生成する。例えば、金属種がSiであれば、−Si−O−Si−といったメタロキサン結合(シロキサン結合)を生成する。金属種(M1)と、金属種(Si)の金属アルコキシドを用いた場合、例えば、−M1−O−Si−といった結合を生成することもできる。
例えば、金属種(Si)の金属アルコキシドとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、等と、これら化合物群のエトキシ基が、メトキシ基、プロピル基、又はイソプロピル基に置き換わった化合物等が挙げられる。また、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオールといった、ヒドロキシ基を有する化合物も選択できる。
また、上記官能基の1つ以上が、金属種から酸素原子を介さずに、直接フェニル基等に置換された形態をとってもよい。例えば、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオール等が挙げられる。これらの化合物群を用いることにより、縮合後の密度が向上し、モールド101に対する第2のマスク層102や第1のマスク層103の浸透を抑制する効果が向上し、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。
ハロゲン化シランとは、上記金属アルコキシドの金属種がシリコンで、加水分解重縮合する官能基がハロゲン原子に置き換わった化合物群である。
液状ガラスとしては、アポロリング社製のTGAシリーズ等が挙げられる。所望の物性に合わせ、その他ゾルゲル化合物を添加することもできる。
また、金属アルコキシドとしてシルセスキオキサン化合物を用いることもできる。シルセスキオキサンとは、ケイ素原子1個に対し、1つの有機基と3つの酸素原子が結合した化合物ある。シルセスキオキサンとしては、組成式(RSiO3/2)nで表されるポリシロキサンであれば特に限定されるものではないが、かご型、はしご型、ランダム等のいずれの構造を有するポリシロキサンであってもよい。また、組成式(RSiO3/2)nにおいて、Rは、置換又は非置換のシロキシ基、その他任意の置換基でよい。nは、8〜12であることが好ましく、硬化性樹脂組成物(4)の硬化性が良好になるため、8〜10であることがより好ましく、nは8であることがさらに好ましい。n個のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
シルセスキオキサン化合物としては、例えば、ポリ水素化シルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、ポリイイソプロピルシルセスキオキサン、ポリブチルシルセスキオキサン、ポリ−sec−ブチルシルセスキオキサン、ポリ−tert−ブチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。また、これらのシルセスキオキサンに対してn個のRのうち少なくとも1つを、次に例示する置換基で置換してもよい。置換基としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル等、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、市販のシルセスキオキサンを使用することができる。例えば、Hybrid Plastics社の種々のかご型シルセスキオキサン誘導体、アルドリッチ社のシルセスキオキサン誘導体等が挙げられる。
金属アルコキシドは、重合反応が部分的に反応し、未反応の官能基が残っているプレポリマー状態であってもよい。金属アルコキシドが部分的に縮合することで、金属種が酸素元素を介し連なったプレポリマーを得ることができる。つまり、部分的に縮合することで、分子量の大きなプレポリマーを作ることができる。金属アルコキシドを部分的に縮合することで、モールド101にフレキシビリティが付与され、結果、モールド101を金属アルコキシドを用いた転写により作製する場合の、微細パタンの破壊やクラックを抑制できる。
部分縮合度は、反応雰囲気や、金属アルコキシドの組み合わせ等により制御可能であり、どの程度の部分縮合度のプレポリマー状態で使用するかは、用途や使用方法により適宜選択できるため、特に限定はされない。例えば、部分縮合体の粘度が50cP以上であると、転写精度、水蒸気への安定性がより向上するため好ましく、100cP以上であると、これらの効果をより発揮できるため、なお好ましい。
また、部分縮合を促進させたプレポリマーは、脱水反応に基づく重縮合及び/又は脱アルコール反応に基づく重縮合により得ることができる。例えば、金属アルコキシド、水、溶剤(アルコール、ケトン、エーテル等)からなる溶液を20℃〜150℃の範囲で加熱し、加水分解、重縮合を経ることで、プレポリマーを得ることができる。重縮合度は、温度、反応時間、及び圧力(減圧力)により制御可能であり、適宜選定できる。また、水の添加を行わず、環境雰囲気中の水分(湿度に基づく水蒸気)を利用し、徐々に加水分解・重縮合を行うことで、プレポリマーの分子量分布を小さくすることも可能である。更に、重縮合を促進させるために、エネルギー線を照射する方法も挙げられる。ここでエネルギー線の光源は、金属アルコキシドの種類により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。特に、金属アルコキシドに光酸発生剤を添加しておき、該組成物にエネルギー線を照射することで、光酸発生剤より光酸が発生し、該光酸を触媒として、金属アルコキシドの重縮合を促進でき、プレポリマーを得ることができる。また、プレポリマーの縮合度及び立体配置を制御する目的で、金属アルコキシドをキレート化した状態にて、上記操作を行い、プレポリマーを得ることもできる。
なお、上記プレポリマーとは、少なくとも4つ以上の金属元素が酸素原子を介し連なった状態と定義する。すなわち、−O−M1−O−M2−O−M3−O−M4−O−以上に金属元素が縮合した状態をプレポリマーと定義する。ここで、M1、M2、M3、M4は金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。例えば、Tiを金属種に有する金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[―O−Ti−]nの一般式において、n≧4の範囲でプレポリマーとする。同様に、例えば、Tiを金属種に有する金属アルコキシドと、Siを金属種とする金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−Si−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[―O−Ti−O−Si−]nの一般式においてn≧2の範囲でプレポリマーとする。但し、異種金属元素が含まれる場合、−O−Ti−O−Si−のように、互いに交互に配列するとは限らない。そのため、[−O−M−]n (但し、M=Ti又はSi)と、いう一般式において、n≧4の範囲でプレポリマーとする。
金属アルコキシドは、フッ素含有シランカップリング剤を含むことができる。フッ素含有シランカップリング剤を含むことで、金属アルコキシドの硬化物からなるモールド101の凹凸構造101a表面のエネルギーを低下させることが可能となり、離型層105の形成等を行わなくても、第2のマスク層102や第1のマスク層103の転写精度が向上する。これは、離型層105をあらかじめモールド内部に組み込むことを意味する。
フッ素含有シランカップリング剤としては、例えば、一般式F3C−(CF2)n−(CH2)m−Si(O−R)3(ただし、nは1〜11の整数であり、mは1〜4の整数であり、そしてRは炭素数1〜3のアルキル基である。)で表される化合物であることができ、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含んでいてもよい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、且つ、トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位、及び(CF2O)単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、表面への偏析性が優れるという観点から、(CF2CF2O)単位から構成されることが特に好ましい。
また、本実施の形態においては、金属アルコキシドは、ポリシランを含むことができる。ポリシランは、シリコン元素が主鎖を構築し、主鎖が―Si−Si―の繰り返しから構成される化合物である。ポリシランに、エネルギー線(例えばUV)を照射することで、―Si−Si―結合が切断され、シロキサン結合が生成する。このため、ポリシランを含むことで、UV照射により、効果的にシロキサン結合を生成でき、金属アルコキシドを原料に、モールドを転写形成する際の転写精度が向上する。
また、モールド101は、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであってもよい。ハイブリッドであることにより、モールド101を転写により作製する際の転写精度が向上し、且つ、微細パタンの物理的耐久性も向上する。更に、第2のマスク層102や第1のマスク層103の組成にもよるが、第2のマスク層102や第1のマスク層103のモールド101の凹凸構造101a内部への浸透を抑制する効果が大きくなり、結果、転写精度を向上させることが可能となる。ハイブリッドとしては、例えば、無機前駆体と光重合(又は熱重合)可能な樹脂や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材や、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。より転写精度を高めるために、これらにシリコーンを添加してもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、転写精度の観点から、重量比にて3:7〜7:3の範囲が好ましい。
[第2のマスク層]
第2のマスク層102の材料については、後述する選択比を満たせば特に限定されず、溶剤に希釈可能な種々の公知樹脂(有機物)、無機前駆体、無機縮合体、メッキ液(クロムメッキ液等)、金属酸化物フィラー、金属酸化物微粒子、金属粒子、HSQに代表されるシルセスキオキサン、スピンオングラスまで使用できる。第2のマスク層102は、微細パタン形成用積層体を使用して、積層体201を転写形成する際の転写精度の観点から、第2のマスク層102と後述する第1のマスク層103とが化学的に結合するか、又は水素結合を形成することが好ましい。転写速度及び精度を向上させるためには、光重合又は熱重合、そしてこれらの複合重合が有用である。そのため、第2のマスク層は、光重合可能な光重合性基と熱重合可能な重合性基の両方、又はいずれか一方を含むと特に好ましい。また、第2のマスク層102は、耐ドライエッチング性の観点から、金属元素を含むことが好ましい。更に、第2のマスク層102は、金属酸化物微粒子を含むことにより、被処理体200をドライエッチングする際の加工が、より容易になるため好ましい。
第2のマスク層102に含まれる金属元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、シリコン(Si)であることが好ましい。また、第2のマスク層102に含まれる金属元素が安定に存在し、且つ後述するドライエッチング耐性を満たし、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対し、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度を向上させる観点から、第2のマスク層102は、メタロキサン結合(―O−Me1−O−Me2−O−)を含むことが好ましい。ここで、Me1及びMe2は共に金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。Me1又はMe2としては、上記説明した金属元素を採用することができる。例えば、単一金属元素の場合、―O−Ti−O−Ti−O−や、―O−Zr−O−Zr−O−、そして―O−Si−O−Si−O−等が挙げられる。異種金属元素の場合、―O−Ti−O−Si−O−、―O−Zr−O−Si−O−、―O−Zn−O−Si−O−等が挙げられる。なお、メタロキサン結合中の金属元素種は、3種類以上含まれてもよい。特に、2種類以上含まれる場合、マスク層の転写精度の観点から、少なくともSiを含むことが好ましい。
第2のマスク層102がメタロキサン結合を含む場合、第2のマスク層102全体におけるSi元素濃度(CpSi)と、Si以外の金属元素の合計濃度(CpM1)と、の比率(CpM1/CpSi)は、0.02以上24未満であると、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の、加工精度が向上するため好ましい。特に、0.05以上20以下であるとより好ましく、0.1以上15以下であると最も好ましい。
また、第2のマスク層102原料を溶剤に3重量%の濃度にて溶解させた場合の慣性半径が、5nm以下であると、モールド101の凹凸構造101aの凹部101c内への第2のマスク層102の充填配置精度が向上すると共に、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。慣性半径は3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下が最も好ましい。ここで慣性半径とは、波長0.154nmのX線を使用した小角X線散乱による測定より得られる測定結果に対し、Gunier(ギニエ)プロットを適用し計算される半径とする。
このようなメタロキサン結合を第2のマスク層に含める方法としては、金属酸化物微粒子を使用するか又は、無機前駆体を縮合させる方法が挙げられる。無機前駆体を縮合する方法としては、例えば、上述した金属アルコキシドの加水分解及び重縮合による反応を利用することができる。
第2のマスク層102の原料の粘度は、25℃において50cP以上であると、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。同様の効果から、100cP以上であるとより好ましく、150cP以上であると最も好ましい。モールド101の凹凸構造101aの凹部101c内への第2のマスク層102の充填配置精度が向上するため、10000cP以下であることが好ましく、8000cP以下であるとより好ましく、5000cP以下であると最も好ましい。なお、後述するように、第2のマスク層原料は溶剤により希釈し使用される。
第2のマスク層102に金属元素を含ませる方法として、例えば、金属酸化物微粒子(フィラー)、金属微粒子や金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を第2のマスク層102の原料に含ませる方法が挙げられる。第2のマスク層102に使用されるゾルゲル材料は、例えば上記説明したモールド101を構成する金属アルコキシドを使用できる。
また、第2のマスク層102としての耐ドライエッチング性の観点から、Ti,Ta、Zr,Zn、Siからなる群から選ばれる金属元素を金属種に有する金属アルコキシドを含むことが好ましい。特に、転写精度及び転写速度を向上させる観点から、ゾルゲル材料は、金属種の異なる、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含むことが好ましい。金属種の異なる2種類の金属アルコキシドの、金属種の組み合わせとしては、例えば、SiとTi、SiとZr、SiとTa、SiとZn等が挙げられる。耐ドライエッチング性の観点から、Siを金属種に持つ金属アルコキシドのモル濃度(CSi)と、Si以外の金属種M1を持つ金属アルコキシド(CM1)との比率CM1/CSiは、0.2〜15であることが好ましい。第2のマスク層材料をモールド101の凹凸構造101a面上に塗工し第2のマスク層を配置する際の塗工乾燥時の安定性の観点から、CM1/CSiは0.5〜15であることが好ましい。物理的強度の観点から、CM1/CSiは5〜8であることがより好ましい。
なお、CM1/CSiが上記最も広い範囲(0.2〜15)において、0.2〜10の範囲であれば、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の第2のマスク層102の形状安定性が向上するため好ましい。特に、0.2〜5の範囲であれば第2のマスク層102のエッチング時の物理的安定性が向上するため好ましく、0.2〜3.5であるとより好ましい。また、0.23〜3.5であると第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の第2のマスク層102の輪郭形状安定性が向上するため好ましい。同様の観点から、0.25〜2.5であることが好ましい。
第2のマスク層102は、第2のマスク層102の転写精度及び耐ドライエッチング性の観点から、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであることが好ましい。ハイブリッドとしては、例えば、無機微粒子と、光重合(又は熱重合)可能な樹脂の組み合わせや、無機前駆体と光重合(又は熱重合)可能な樹脂や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。より転写精度を高めるために、これらにシリコーンを添加してもよい。また、ドライエッチング耐性を向上させるために、ゾルゲル材料部分は、予め予備縮合を行ってもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、耐ドライエッチング性と転写精度の観点から、3:7〜7:3の範囲が好ましい。より好ましくは、3.5:6.5〜6.5:3.5の範囲である。ハイブリッドに使用する樹脂は、光重合可能であれば、ラジカル重合系でも、カチオン重合系でも特に限定されない。
また、ハイブリッドとして無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体を採用する場合、無機前駆体としてSi以外の金属元素を金属種に有する金属アルコキシドを採用し、光重合性基を分子内に具備する無機前駆体として光重合性基を具備するシランカップリング材を採用できる。また、これらのシリコーンを含めることもできる。
更に、微細パタン形成用積層体を使用し得られた第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201に対し、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の、第1のマスク層103側面のラフネスを低減させる観点から、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、又は、無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体を採用することが好ましい。無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体としては例えば、無機前駆体として金属アルコキシドを選定し、光重合性基を分子内に具備する無機前駆体として光重合性基を具備するシランカップリング材を選定することが挙げられる。特に、無機前駆体として使用する金属アルコキシドの金属種は、Ti,Ta、Zr又は、Znであると好ましく、Ti、Zr又はZnであると最も好ましい。
第2のマスク層102を、モールド101の凹凸構造101a上に配置する際に、第2のマスク層102原料を溶剤により希釈し、該希釈された第2のマスク層102原料を、モールド101上に塗工する方法が挙げられる。希釈溶剤としては、特に限定されないが、単一溶剤の沸点が40℃〜200℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜160℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上を使用してもよい。
また、第2のマスク層102原料を溶剤に3重量%の濃度にて溶解させた場合の、慣性半径が5nm以下である溶剤を選定すると、モールド101の凹凸構造101aの凹部101c内への第2のマスク層102の充填配置精度が向上すると共に、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。慣性半径は3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下が最も好ましい。ここで慣性半径とは、波長0.154nmのX線を使用した小角X線散乱による測定より得られる測定結果に対し、Gunier(ギニエ)プロットを適用し計算される半径とする。
第2のマスク層102に含まれる光重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基、アリル基、オキセタニル基等が挙げられる。
第2のマスク層102に含まれる公知樹脂としては、光重合性と熱重合性の両方、又はいずれか一方の樹脂が挙げられる。例えば、上記説明したモールド101を構成する樹脂の他、フォトリソグラフィ用途で使用される感光性樹脂や、ナノインプリントリソグラフィ用途で使用される光重合性樹脂及び熱重合性樹脂等が挙げられる。特に、ドライエッチングによる、第2のマスク層102に含まれる樹脂のエッチングレート(Vm1)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)が、1≦(Vo1/Vm1)≦50を満たす樹脂を含有することが好ましい。
第2のマスク層102を形成する材料は、ゾルゲル材料を含むことが好ましい。ゾルゲル材料を含むことで、耐ドライエッチング性の良好な第2のマスク層102の、モールド101の凹凸構造101a内部への充填が容易になるばかりでなく、第1のマスク層103をドライエッチングする際の、縦方向のドライエッチングレート(Vr⊥)と、横方向のドライエッチングレート(Vr//)との比率(Vr⊥/Vr//)を大きくすることができる。ゾルゲル材料としては、単一の金属種を持つ金属アルコキシドのみを用いても、異なる金属種を持つ金属アルコキシドを併用してもよいが、金属種M1(ただし、M1は、Ti,Zr,Zn,Sn,B,In,Alからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素)を持つ金属アルコキシドと、金属種Siを持つ金属アルコキシドとの、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含有することが好ましい。又は、第2のマスク材料として、これらのゾルゲル材料と、公知の光重合性樹脂とのハイブリッドも使用できる。
第2のマスク材料は、ドライエッチング時の物理的破壊を抑制する観点から、縮合と光重合の両方、又はいずれか一方による硬化後の相分離が小さいことが好ましい。ここで、相分離とは、透過型電子顕微鏡(TEM)のコントラストで確認することが可能である。第2のマスク層102の転写性の観点から、TEMのコントラストより、相分離サイズが20nm以下であることが好ましい。物理的耐久性及び、耐ドライエッチング性の観点から、相分離サイズは15nm以下であることが好ましく、10nm以下であると、より好ましい。なお、相分離を抑制する観点から、ゾルゲル材料中に、光重合性基を具備するシランカップリング剤を含むことが好ましい。
第2のマスク層102を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、上記説明したモールド101を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂から、フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものを用いることが好ましい。また、第2のマスク層材料に含まれる光重合開始材は、上記説明したモールド101の材料である硬化性樹脂組成物に使用される(C)光重合開始剤を使用することができる。
第2のマスク層102を構成する光重合可能なカチオン重合系の樹脂は、少なくともカチオン硬化性モノマーと、光酸発生剤とを含む組成物を意味する。カチオン硬化性樹脂組成物におけるカチオン硬化性モノマーとは、カチオン重合開始剤の存在下で、例えば、UV照射や加熱等の硬化処理を行うことにより硬化物が得られる化合物である。カチオン硬化性モノマーとしては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物が挙げられ、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、及びグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも脂環式エポキシ化合物は、重合開始速度が向上し、オキセタン化合物は重合率の向上効果があるので、使用することが好ましく、グリシジルエーテルはカチオン硬化性樹脂組成物の粘度を低下させ、塗工性に効果があるので使用することが好ましい。より好ましくは、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することであり、さらに好ましくは脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物との重量比率が99:1〜51:49の範囲で併用することである。
光酸発生剤は、光照射により光酸を発生すれば、特に限定されるものではない。例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といった芳香族オニウム塩が挙げられる。
このような光酸発生材を第2のマスク層材料に含めることで、第2のマスク層材料の光酸発生材以外の成分が金属アルコキシドのみである場合であっても、光照射により発生する光酸により、金属アルコキシドの加水分解・重縮合速度を向上させることが可能となり、転写速度及び精度を向上させることができる。光酸発生剤を溶解させる溶剤としては、使用する光酸発生剤を溶解できれば特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネートや、プロピレンカーボネートとアルコール、エーテル、ケトン系溶剤(A)との混合溶剤等が挙げられる。プロピレンカーボネートと溶剤(A)との混合比は、重量比で、溶剤(A)/プロピレンカーボネートが5以上であると、相溶性に優れるため、好ましい。
第2のマスク層材料の希釈溶液を、モールド101の凹凸構造101a面上に直接塗工した際の濡れ性が悪い場合は、界面活性剤やレベリング材を添加してもよい。これらは、公知市販のものを使用することができるが、同一分子内に光重合性基を具備していることが好ましい。添加濃度は、塗工性の観点から、マスク材料100重量部に対して、40重量部以上が好ましく、60重量部以上が、より好ましい。一方で、耐ドライエッチング耐性の観点から、500重量部以下であることが好ましく、300重量部以下であると、より好ましく、150重量部以下であると、なお好ましい。
一方、第2のマスク材料の分散性の向上や、転写精度を向上させる観点から、界面活性剤やレベリング材を使用する場合は、これらの添加濃度は、第2のマスク材料に対し20重量%以下であることが好ましい。20重量%以下であることで分散性が大きく向上し、15重量%以下であることで転写精度も向上するため好ましい。より好ましくは、10重量%以下である。これらの界面活性剤やレベリング材は、特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも1つの官能基を含むことが、相溶性の観点から好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。これらを満たすものとして、例えば、ダイキン工業社製のオプツールDACが挙げられる。添加剤は、溶剤に溶かした状態で、第2のマスク材と混合することが好ましい。
第2のマスク層102を構成するマスク材料中に、希釈塗工後の溶剤揮発過程において様態が変化する材料を含むと、材料自体の面積を小さくするというドライビングフォースも同時に働くと推定されるため、より効果的にマスク材料がモールド101の凹凸構造101aの凹部101c内部へと充填される結果、距離(lcv)を小さく、好ましくは0にできるため好ましい。様態の変化とは、例えば、発熱反応や、粘度の大きくなる変化が挙げられる。例えば、ゾルゲル材料を含むと、溶剤揮発過程で、空気中の水蒸気と反応し、ゾルゲル材料が重縮合する。これにより、ゾルゲル材料のエネルギーが不安定化するため、溶剤乾燥に伴い低下する溶剤液面(溶剤と空気界面)から遠ざかろうとするドライビングフォースが働き、結果、ゾルゲル材料が良好にモールド101の凹凸構造101aの凹部101c内部へと充填され、距離(lcv)が小さくなると推定される。
また、第2のマスク層材料の希釈溶液をモールドに直接塗工する際の濃度は、30重量%以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、上述したlcvを小さくすることができるため、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。更に、第2のマスク層材料の希釈溶液の濃度は、凹部内マスク層102aの配置精度を向上させる観点から、より具体的には凹部内マスク層102aの、モールド101の凹部101cの表面(内壁)に対する部分的付着や被膜の形成を抑制する観点から、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、7.5重量%以下であることが最も好ましい。特に、lcvを限りなく0nmに近づける観点から、第2のマスク層材料の希釈溶液濃度は、7重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3.5重量%以下であることが最も好ましい。
また、第2のマスク層材料の希釈溶液をモールドに直接塗工する粘度が、100cP以下であると、第2のマスク層102の希釈液の塗工性が良好になると共に、第2のマスク層102の凹凸構造101aの凹部への充填性が向上するため好ましい。同様の効果から、50cP以下であることが好ましく、20cP以下であることがより好ましく、10cP以下であることが最も好ましい。また、ダイコートやマイクログラビアコートを良好に適用することができるため、8cP以下であることが好ましく、5cP以下であることがより好ましく、3.5cP以下であることが最も好ましい。なお、上記粘度は25℃において測定されるものとする。
更に、第2のマスク層102は、透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対しエネルギー線を照射する際に、支持基材100越しにエネルギー線を照射することが可能となる。一方、着色されている場合、支持基材100/モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から支持基材100及びモールド101を剥離した際の、転写性を目視或いは光学検査により容易に確認することができる。
[第1のマスク層(第1の積層体)]
図4Aに示す第1の積層体1を、第1のマスク層103を介して被処理体200に貼合して接着した後に、モールド101を剥離することで、容易に第2のマスク層102を被処理体200上へと転写することができる。
第1のマスク層103は、後述のエッチングレート比(選択比)を満たせば、特に限定されない。第1のマスク層103を構成する材料として、上記に挙げたモールド101を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂から、フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものや、上記に挙げた第2のマスク層102を構成する光重合可能なカチオン重合系の樹脂、その他公知である市販の光重合性又は熱重合性樹脂や、有機無機ハイブリッド光重合性樹脂を使用することができる。また、以下にて説明する第2の積層体2に使用される第1のマスク層103の材料を使用することもできる。
第2のマスク層102と第1のマスク層103とは、化学的に結合することが、転写精度の観点から好ましい。そのため、第2のマスク層102が光重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も光重合性基を含み、第2のマスク層102が熱重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も熱重合性基を含むことが好ましい。また、第2のマスク層102中のゾルゲル材料との縮合により、化学結合を生成するために、第1のマスク層103にゾルゲル材料を含んでもよい。光重合方式としては、ラジカル系とカチオン系が存在するが、硬化速度とドライエッチング耐性の観点から、ラジカル系のみ、又は、ラジカル系とカチオン系のハイブリッド系が好ましい。ハイブリッドの場合、ラジカル重合系樹脂とカチオン重合系樹脂を、重量比率で、3:7〜7:3で混合することが好ましく、3.5:6.5〜6.5:3.5であるとより、好ましい。
ドライエッチング時の、第1のマスク層103の物理的安定性と、ハンドリングの観点から、硬化後の第1のマスク層103のTg(ガラス転位温度)は、30℃〜300℃であることが好ましく、60℃〜250℃であるとより好ましい。
第1のマスク層103と被処理体200との密着性、及び第1のマスク層103と第2のマスク層102との密着性の観点から、第1のマスク層103の比重法による収縮率は、5%以下であることが好ましい。
第1のマスク層103は、被処理体200の主面上に成膜されるか、又は第1の積層体1の凹凸構造上に成膜される。第1の積層体1の凹凸構造面上に成膜した場合の膜厚は、凹凸構造101aの凸部頂部位置(S)と第1のマスク層103の表面位置との間の距離(lor)で定義する。被処理体200の主面上に成膜した場合の第1のマスク層103の膜厚、及び第1の積層体1の凹凸構造面上に成膜した場合の膜厚は、いずれも、膜厚をlorと表記した場合に、lor≦10Paveであると、微細マスクパタン202aの加工精度及び物理的安定性が向上するため好ましい。特に、lor≦5Paveであることがより好ましく、lor≦2.5Paveであると最も好ましい。一方で、貼合・転写精度の観点から、lor>lcvであることが好ましく、lor≧0.05Paveであることがより好ましく、lor≧0.1Paveであることが最も好ましい。第1のマスク層103の距離(lor)ムラは、第1のマスク層103エッチング後の、被処理体200上の第1のマスク層103の幅バラつきの観点から、微細パタンのピッチにもよるが、概ね±30%以下であることが好ましく、±25%以下がより好ましく、±10%以下が最も好ましい。
更に、第1のマスク層103はn層(n≧2)以上の多層構造であってもよい。例えば、被処理体200の主面上に第1のマスク層103−1を設け、この第1のマスク層103−1上に第1のマスク層103−2を設けることができる。同様に、第1のマスク層103―N上に第1のマスク層103−N+1を設けることができる。このようなn層構成の第1のマスク層103を採用することにより、第2のマスク層102/n層の第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対し、第2のマスク層102面側からエッチング(ドライエッチング)を行った際に、第1のマスク層103の有する傾斜角度等の制御性が向上する。そのため、続く、被処理体200の加工の自由度が向上する。本効果を発揮する観点から、多層の第1のマスク層103の場合の多層度nは、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下がより好ましく、2以上4以下が最も好ましい。また、多層の第1のマスク層103の場合、第n層の体積をVnとした場合、第1のマスク層103の全体積VはV1+V2+…Vnとなる。この時、後述する選択比(ドライエッチングレート比)範囲を満たす第1のマスク層103が、第1のマスク層103の全体積Vに対して50%以上の体積を有することが好ましい。例えば、3層構成の第1のマスク層103の場合、第一層の第1のマスク層103体積がV1,第二層の第1のマスク層103体積がV2、第三層の第1のマスク層103体積がV3となる。また、選択比を満たす第1のマスク層103が、第二層と第三層の場合、(V2+V3)/(V1+V2+V3)は0.5以上であることが好ましい。同様に、第三層のみが選択比範囲を満たす場合、(V3)/(V1+V2+V3)が0.5以上であることが好ましい。特に、多層の第1のマスク層103の加工精度と、被処理体200の加工精度の観点から、体積比率は0.65(65%)以上がより好ましく、0.7(70%)以上が最も好ましい。なお、n層全てが選択比範囲を満たすことで、被処理体200の加工精度が大きく向上するため、体積比率は1(100%)であると望ましい。
[第1のマスク層(第2の積層体)]
図4Bに示す第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体200に貼合して接着した後に、モールド101を剥離することで、容易に第2のマスク層102を被処理体200上へと転写することができる。
第1のマスク層103は、後述のエッチングレート比(選択比)を満たし、且つ、反応性希釈材及び重合開始材を含めば特に限定されない。反応性希釈材を含むことで、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の接着性が向上する。一方、重合開始材を含むことで、第1のマスク層103と第2のマスク層102との界面接着強度が向上すると共に、第1のマスク層103と第2のマスク層102及び第1のマスク層103と被処理体200との接着強度を固定化できる。この結果、第2のマスク層102の転写精度が向上する。
第2のマスク層102と第1のマスク層103とは、転写精度の観点から、化学的に結合することが好ましい。そのため、第2のマスク層102が光重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も光重合性基を含むことが好ましい。また、第2のマスク層102が熱重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も熱重合性基を含むことが好ましい。
また、第2のマスク層102中のゾルゲル材料との縮合により、化学結合を生成するために、第1のマスク層103にゾルゲル材料を含んでもよい。光重合方式としては、ラジカル系とカチオン系が存在するが、硬化速度とドライエッチング耐性の観点から、ラジカル系のみ、又は、ラジカル系とカチオン系のハイブリッド系が好ましい。ハイブリッドの場合、ラジカル重合系樹脂とカチオン重合系樹脂を、重量比率で、3:7〜7:3で混合することが好ましく、3.5:6.5〜6.5:3.5であるとより好ましい。
ドライエッチング時の第1のマスク層103の物理的安定性、及びハンドリングの観点から、硬化後の第1のマスク層103のTg(ガラス転位温度)は、30℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜200℃であるとより好ましい。
第1のマスク層103及び被処理体200、又は第1のマスク層103及び第2のマスク層102の密着性の観点から、第1のマスク層103の比重法による収縮率は、5%以下であることが好ましい。
第1のマスク層103はバインダー樹脂を含んでもよい。バインダー樹脂を含むことで、第1のマスク層103の物理的安定性が向上すると共に、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の貼合精度が向上する。また、第1のマスク層103が、バインダー樹脂、反応性希釈材及び重合開始材を含むことで、第2の積層体2における第1のマスク層103の精度安定性を向上できる。このため、第2の積層体2の第2のマスク層102の微細パタン配列精度及び第1のマスク層103の膜厚精度を、被処理体200へと反映させ転写することができる。
また、バインダー樹脂を含むことにより、第1のマスク層103をドライ化することが可能となる。すなわち、第1のマスク層103をタック性の極めて低い(半)固体として扱うことが可能となる。このため、第2の積層体2を、被処理体200上に貼合するまでのハンドリングが向上すると共に、被処理体200への貼合及び接着に熱圧着(熱貼合)を使用することが可能となり、貼合・転写精度がいっそう向上する。
なお、バインダー樹脂と反応性希釈材を含む場合、バインダー樹脂の反応形式と反応性希釈剤の反応形式と、は異なっていてもよい。例えば、バインダー樹脂が光重合性及び熱重合性であり、バインダー樹脂が熱重合性の場合、光硬化により反応性希釈剤の架橋が進行し、続く加熱によりバインダー樹脂と架橋された反応性希釈材と、を更に架橋することができる。同様に、バインダー樹脂及び反応性希釈剤が共に熱及び光反応性の場合も、光による架橋と熱による架橋を併用し、バインダー樹脂と反応性希釈材をクロスリンクすることが可能となる。
バインダー樹脂は反応性バインダー樹脂であってもよい。バインダー樹脂は反応性バインダー樹脂であると、第1のマスク層103のガラス転移温度を向上させることができる。ガラス転移温度を大きくすることにより、被処理体200をエッチングする際の熱耐性が向上するため、被処理体200上に設けられる微細パタン220の加工精度を向上させることができる。反応性バインダー樹脂の反応部位は、反応性希釈材が光反応性の場合は光反応性であることが好ましく、反応性希釈材が熱反応性の場合は、熱反応性であることが好ましい。又は、光反応性部位と熱反応性部を併せ持つ構造であってもよい。この場合、光反応による架橋と熱反応による架橋を併用できるため、ガラス転移温度の増加程度が大きくなる。バインダー樹脂が反応性バインダー樹脂であることで、第1のマスク層103と被処理体200との接着性の固定化、及び第1のマスク層103と第2のマスク層102との接着性の固定化がいっそう向上するため、転写精度が向上する。
バインダー樹脂は微細パタン形成用積層体の用途により適宜選定することができるが、被処理体200を加工する観点からは、バインダー樹脂の幹ポリマーのガラス転移温度は45℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることが最も好ましい。
更に、バインダー樹脂はアルカリ可溶性樹脂であってもよい。アルカリ可溶性であることで、被処理体200上に微細パタン220を形成した後に、アルカリ現像を適用し、第1のマスク層103からなる残渣を容易に除去することが可能となり、そのため、被処理体200の加工マージンが広がる。被処理体200との密着性及びアルカリ現像性の観点から、バインダー樹脂にカルボキシル基が含まれることが好ましい。カルボキシル基の量は、酸当量で100〜600が好ましく、より好ましくは300〜450である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量を示す。なお、酸当量の測定は、平沼産業社製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により行われる。
また、バインダー樹脂の重量平均分子量は、貼合性と転写精度の観点から、5000〜500000であることが好ましい。第1のマスク層103の物理的安定性を向上させると共に、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の貼合精度を向上させるという効果をよりいっそう発揮するため、バインダー樹脂の重量平均分子量は、5000〜100000であることがより好ましく、さらに好ましくは5000〜60000である。
分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は、重量平均分子量と数平均分子量の比で表される((分散度)=(重量平均分子量)/(数平均分子量))。分散度は概ね1〜6程度のものが用いられ、1〜4であることが好ましい。なお、分子量は、日本分光社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工社製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
また、後述する選択比の観点から、バインダー樹脂の側鎖、主鎖内部又は側鎖及び主鎖内部に下記化学式(4)で示される部位を有することが好ましい。
第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のうち、光重合性希釈材は、特に限定されないが、例えば、上記第2のマスク層102にて説明した樹脂(光重合性樹脂)を使用することができる。耐ドライエッチング性の観点から、光重合性希釈材の平均官能基数は、1.5以上であることが好ましい。また、第1のマスク層103の成膜安定性の観点から、平均官能基数は、4.5以下であることが好ましい。被処理体200をドライエッチングする際に塩素系ガスを使用する場合は、耐ドライエッチング性の観点から、上記化学式(4)に示す部位を分子内に含む反応性希釈材を含むことが好ましい。また、第2のマスク層102と第1のマスク層103との接着性の観点から、第2のマスク層102及び第1のマスク層103中に同様の反応性希釈材を少なくとも1種含むことが好ましい。
また、第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のガラス転移温度は80℃以上であると、被処理体200の加工精度が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103全体のガラス転移温度を向上させる観点から、第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。
また、1分子内に少なくとも1つのOH基と少なくとも1つの付加重合性不飽和結合とを有する化合物を反応性希釈材として採用してもよい。このような分子を反応性希釈材として採用することで、第2のマスク層102及び被処理体200との密着性を向上させることができる。分子内のOH基は複数であってもよい。OH基はアルコール性であってもフェノール性であってもよいが、密着性、耐エッチング性の観点から、アルコール性が好ましい。分子内の付加重合性不飽和結合は複数であってもよい。
第1のマスク層103を構成する重合開始材のうち、光重合開始材としては、上記第2のマスク層102にて説明した光重合開始材を使用することができる。
バインダー樹脂の第1のマスク層103全体に対する割合は、貼合性、耐ドライエッチング性の観点から20質量%〜90質量%の範囲であり、好ましくは30質量%〜70質量%である。
アルカリ可溶性バインダー樹脂の含有量は、第1のマスク層103の全質量基準で30質量%以上75質量%以下の範囲が好ましい。より好ましくは40質量%以上65質量%以下である。アルカリ現像性を発現する観点から、30質量%以上であることが好ましく、硬化性、転写性、耐ドライエッチング性の観点から、75質量%以下であることが好ましい。
また、第1のマスク層103内部に残存する溶剤の濃度は、以下の基準に従い測定した際に、2000(g/ml)/m3以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2の被処理体200に対する貼合精度、第2のマスク層102による第1のマスク層103の加工精度、第1のマスク層103による被処理体200の加工精度を向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、1000(g/ml)/m3以下であることが好ましく、500(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、200(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。更に、モールドの凹凸構造101aの配列や形状によらず、第2のマスク層102及び第1のマスク層103の転写精度を向上させる観点から、150(g/ml)/m3以下であることが好ましく、130(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、120(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。
1.モールドの凹凸構造101a上に、第1のマスク層103のみを、第2のマスク層102のある場合と同様の条件にて成膜し、第2のマスク層102を具備しない第2の積層体2を得る。
2.第2の積層体2を20mm×20mmにカットし、10mLのアセトンにてメスアップし、溶液を採取する。
3.採取した溶液を、GC/MS装置を使用しSIM法により分析を行い、溶剤量を「g/ml」のディメンジョンにて求める。
4.1.にて作製した積層体の第1のマスク層103の平均厚みhave[m]を求める。
5.3.の結果を、第1のマスク層103の体積(0.02m×0.02m×have)にて除した値を第1のマスク層103内部に残存する溶剤の濃度とする。
更に、第1のマスク層103に染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。着色物を含有することで、第2の積層体2を用いて積層体201を転写形成した際に、積層体201の表面に設けられる微細パタンの大きさが可視光の波長より十分小さい場合にも、転写が良好に行われているかを、目視判断することができる。更に、モールド101の凹凸構造101a上に成膜された第1のマスク層103の品質管理に、着色物質の吸収を利用することができる。
用いられる着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)MALACHITEGREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)DIAMONDGREENGH)等が挙げられる。
同様の効果から、第1のマスク層103に光照射により発色する発色系染料を含有させることもできる。用いられる発色系染料としては、例えば、ロイコ染料又はフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせがある。
ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。該トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。このような発色系染料の中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。
更に、第1のマスク層103の安定性を向上させるために、第1のマスク層103中にラジカル重合禁止剤を含有させることが好ましい。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
また、第1のマスク層103中に、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類やpートルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
更に、第1のマスク層103はn層(n≧2)以上の多層構造であってもよい。例えば、第1の積層体1の第2のマスク層102上に2層の第1のマスク層103−1,103−2を設けることができる。同様に、第Nの第1のマスク層103−N上に第(N+1)の第1のマスク層103−(N+1)を設けることができる。このようなn層構成の第1のマスク層103を採用することにより、第2のマスク層102/n層の第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対し、第2のマスク層102面側からエッチング(ドライエッチング)を行った際に、第1のマスク層103の有する傾斜角度等の制御性が向上する。そのため、続く、被処理体200の加工の自由度が向上する。本効果を発揮する観点から、多層の第1のマスク層103の場合の多層度nは、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下がより好ましく、2以上4以下が最も好ましい。また、多層の第1のマスク層103の場合、第n層の体積をVnとした場合、第1のマスク層103の全体積VはV1+V2+…Vnとなる。この時、後述する選択比(ドライエッチングレート比)範囲を満たす第1のマスク層103が、第1のマスク層103全体の体積Vに対して50%以上の体積を有することが好ましい。例えば、3層構成の第1のマスク層103の場合、第一層の第1のマスク層103の体積がV1、第二層の第1のマスク層103の体積がV2、第三層の第1のマスク層103の体積がV3となる。また、選択比を満たす第1のマスク層103が、第二層と第三層の場合、(V2+V3)/(V1+V2+V3)は0.5以上であることが好ましい。同様に、第三層のみが選択比範囲を満たす場合、(V3)/(V1+V2+V3)が0.5以上であることが好ましい。特に、多層の第1のマスク層103の加工精度と、被処理体200の加工精度の観点から、体積比率は0.65(65%)以上がより好ましく、0.7(70%)以上が最も好ましい。なお、n層全てが選択比範囲を満たすことで、被処理体200の加工精度が大きく向上するため、体積比率は1(100%)であると望ましい。更に、n層の第1のマスク層103の場合、最も外側(凹凸構造101aから最も遠い側の層)の組成が、上述した[第1のマスク層103(第2の積層体2)]にて説明した組成を満たせばよく、それ以外の層は、上述した[第1のマスク層103(第2の積層体2)]にて説明した組成の他、上述した[第1のマスク層103(第1の積層体1)]や[第2のマスク層102]にて説明した組成を使用することもできる。このような中で、第1のマスク層103としての安定性の観点から、n層全てを上述した[第1のマスク層103(第2の積層体2)]にて説明した組成範囲内にて調整することが好ましい。
[選択比]
ドライエッチングによる、第2のマスク層102のエッチングレート(Vm1)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)は、第2のマスク層102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度に影響を与える。(Vo1/Vm1)>1は、第2のマスク層102が第1のマスク層103よりもエッチングされにくいことを意味するため、(Vo1/Vm1)は大きいほど好ましい。
(Vo1/Vm1)は、第2のマスク層102の塗工性の観点から、(Vo1/Vm1)≦150を満たすことが好ましく、(Vo1/Vm1)≦100を満たすことがより好ましい。また、(Vo1/Vm1)は、耐エッチング性の観点から、3≦(Vo1/Vm1)(式(16))を満たすことが好ましく、10≦(Vo1/Vm1)を満たすことがより好ましく、15≦(Vo1/Vm1)を満たすことがなお好ましい。
上記範囲を満たすことにより、厚みのある第1のマスク層103を、第2のマスク層102をマスクとしてドライエッチングすることにより、容易に微細加工することができる。これにより、ドライエッチングによって微細加工された第2のマスク層102及び第1のマスク層103からなる微細マスクパタン202aを、被処理体200上に形成することができる。このような、微細パタン構造体202を用いることで、上記説明した機能を得たり、また、被処理体200を容易にドライエッチング加工したり、することができる。
一方、第1のマスク層103のエッチング時のエッチング異方性(横方向のエッチングレート(Vo//)と、縦方向のエッチングレート(Vo⊥)との比率(Vo⊥/Vo//)は、(Vo⊥/Vo//)>1を満たすことが好ましく、より大きいほど好ましい。第1のマスク層103のエッチングレートと、被処理体200とのエッチングレートの比率にもよるが、(Vo⊥/Vo//)≧2を満たすことが好ましく、(Vo⊥/Vo//)≧3.5を満たすことがより好ましく、(Vo⊥/Vo//)≧10を満たすことがなお好ましい。
なお、縦方向とは、第1のマスク層103の膜厚方向を意味し、横方向とは、第1のマスク層103の面方向を意味する。ピッチがサブミクロン以下の領域においては、厚みのある第1のマスク層103を安定的に形成し、被処理体200を容易にドライエッチングするために、第1のマスク層103の幅を大きく保つ必要がある。上記範囲を満たすことにより、ドライエッチング後の第1のマスク層103の幅(幹の太さ)を大きく保つことができるため、好ましい。
ドライエッチングによる、被処理体200のエッチングレート(Vi2)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo2)との比率(Vo2/Vi2)は、小さいほど好ましい。(Vo2/Vi2)<1を満たせば、第1のマスク層103のエッチングレートの方が、被処理体200のエッチングレートよりも小さいため、被処理体200を容易に加工することができる。第1のマスク層103の塗工性及び、エッチング精度の観点から、(Vo2/Vi2)は、(Vo2/Vi2)≦3を満たすことが好ましく、(Vo2/Vi2)≦2.5を満たすとより好ましい。(Vo2/Vi2)は、(Vo2/Vi2)≦2を満たすと、第1のマスク層103を薄くできるためより好ましい。なお、最も好ましくは、(Vo2/Vi2)<1である。
被処理体200のエッチングレートとハードマスク層109のエッチングレートの比率(被処理体200のエッチングレート/ハードマスク層109のエッチングレート)は、加工性の観点から1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。被処理体200のアスペクト比を高く加工する観点からは、選択比は5以上であることが好ましく10以上であるとより好ましい。ハードマスク層109を薄くする観点からは、選択比は15以上であるとなお好ましい。
なお、微細パタンに対するドライエッチングレートは、微細パタンの影響を色濃く受けるため、これらの選択比率は、各種材料のフラット膜(ベタ膜)に対し測定される値である。
例えば、第1のマスク層103に対するエッチングレートは、シリコン、石英又はサファイア等の基材上に、第1のマスク層103を成膜して得られたフラット膜に対して、ドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。第1のマスク層103が反応性の場合は、硬化させてフラット膜を得る。
第2のマスク層102に対するエッチングレートは、シリコン、石英又はサファイア等の基材上に、第2のマスク層102を成膜して得られたフラット膜に対して、ドライエッチングを行うことで算出している。第2のマスク層102が反応性の場合は、硬化させてフラット膜を得る。
また、ハードマスク層109に対するエッチングレートは、シリコン、石英又はサファイア等の基材上にハードマスク層109を成膜し、ドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。
被処理体200に対するエッチングレートは、被処理体200に対してドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。
また、上記エッチングレート比を求める際は、同様のエッチング条件を適用したエッチングレートの比率として算出している。例えば、(Vo1/Vm1)は、第1のマスク層103のフラット膜と第2のマスク層102のフラット膜に対し、同様のドライエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(Vo1及びVm1)の比率として算出している。
同様に、(Vo2/Vi2)は、第1のマスク層103のフラット膜と被処理体200に対し、同様のドライエッチング又はウェットエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(Vo2及びVi2)の比率として算出している。
同様に、被処理体200のエッチングレート/ハードマスク層109のエッチングレートは、被処理体200とハードマスク層109に対し同様のドライエッチング又はウェットエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(被処理体200のエッチングレート及びハードマスク層109のエッチングレート)の比率として算出している。
[被処理体]
微細パタン形成用積層体を用いて作製された微細マスクパタン202aをマスクとして加工する被処理体200は、用途により適宜選択すればよく特に限定されない。無機基材から有機基材、フィルムまで使用することができる。例えば、上記説明した支持基材100や、モールド101を構成する材料を選択できる。その他にも、LEDの内部量子効率の改善と、光取出し効率の改善を同時に満たすような用途の場合、被処理体200としてサファイア基板を挙げることができる。この場合、得られた微細マスクパタン202aをマスクとしてサファイア基板、スピネル基板、Si基板又はSiC基板を加工することになる。一方で、光取出し向上目的でGaN基板を選択することもできる。この場合、得られた微細マスクパタン202aをマスクとしてGaN基板を加工することになる。その他にも、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO、SiC等から構成される基材を使用することもできる。大面積な微細パタンにより無反射表面ガラスを作製する目的であれば、ガラス板やガラスフィルム等を選択できる。太陽電池用途等で、光の吸収効率や変換効率等を向上させるために、Si基板を採用することもできる。また、超撥水性のフィルム、超親水性のフィルムを作製する場合は、フィルム基材を使用することができる。また、完全黒体を目的とすれば、カーボンブラックが練りこまれた、又は表面に塗布された基材等を採用することができる。また、第2のマスク層102に金属を採用した場合、被処理体200表面に転写形成されたマスク層自体が機能を発現し、センサ(光学式センサ)として応用できる。この場合、基材はセンサの使用環境の観点で適宜選択すればよい。
[凹凸構造]
微細パタン形成用積層体におけるモールド101が有する凹凸構造101aの形状は、特に限定されないが、例えば、複数の柵状体が配列したラインアンドスペース構造、複数の柵状体が交差した格子構造、複数のドット(凸部、突起)状構造が配列したドット構造、複数のホール(凹部)状構造が配列したホール構造等が挙げられる。ドット構造やホール構造は例えば、円錐、円柱、四角錐、四角柱、二重リング状、多重リング状等の構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状や、側面が湾曲した形状を含む。
凹凸構造101aの形状がドット状であると、ドット間の連続的な隙間を第2のマスク層材料の希釈溶液の塗工に利用でき、第2のマスク層102の配置精度が向上する。一方、微細パタン形成用積層体の使用に関し、転写形成された第2のマスク層102をマスクとして機能させる場合は、凹凸構造101aの形状はホール形状であることが好ましい。更に、凹凸構造101aの形状がホール形状であることで、第2のマスク層材料の希釈溶液を、凹凸構造101aに直接塗工する際の、凹凸構造101aの耐久性(物理的破壊に対する耐性)が向上する。
なお、凹凸構造101aがドット形状の場合、隣接するドットが滑らかな凹部を通じつながっていると上記効果をより発揮するため好ましい。また、微細パタンがホール形状の場合、隣接するホールが滑らかな凸部を通じつながっていると、上記効果をより発揮するため好ましい。
ここで、「ドット形状」とは、「柱状体(錐状体)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。すなわち、ドット形状とは、図16Aに示すように、複数の凸部101b(柱状体(錐状体))が配置された形状であり、凸部101b間の凹部101cは連続性のある状態である。一方、ホール形状とは、図16Bに示すように、複数の凹部101c(柱状(錐状)の穴)が配置された形状であり、隣接する凹部101c同士は凸部101bにより隔離されている状態である。
凹凸構造101aにおいて、ドット形状における凸部同士の中心間距離又はホール形状における凹部同士の中心間距離が50nm以上5000nm以下であり、凸部の高さ又は凹部の深さが10nm以上2000nm以下であることが好ましい。特に、ドット形状における凸部同士の中心間距離又はホール形状における凹部同士の中心間距離が100nm以上1000nm以下であり、凸部の高さ又は凹部の深さが50nm以上1000nm以下であることが好ましい。用途にもよるが、ドット形状における凸部同士の隣接距離(凸部の頂点同士の間隔)又はホール形状における凹部同士の隣接距離(各凹部の中心間距離)が小さく、凸部の高さ又は凹部の深さ(凹部の底から凸部の頂点までの高さ)が大きいことが好ましい。ここで、凸部とは、凹凸構造101aの平均高さより高い部位をいい、凹部とは、凹凸構造101aの平均高さより低い部位をいうものとする。
凹凸構造101aの配列は、正六方配列、準六方配列、準四方配列、正四方配列、ランダム配列や、これらを規則的或いは規則性低く組み合わせた配列等を採用することができる。例えば、六方配列から四方配列へと徐々に変化した後に六方配列に戻る配列等も採用できる。特に、第2のマスク層102の配置精度の観点から、正六方配列における配列の歪が±15%以下の六方配列が好ましい。
凹凸構造101aの形状は、凹部深さ、凹部底部の幅、凸部頂部の幅、凹部側面の角度、凹部側面の変曲点の数といった変数により記載することができる。一方、配列はピッチを変数とすることで記載可能である。ここで、変数をxとした時に、xに対する標準偏差と相加平均と、の比率(標準偏差/相加平均)が0.025以上であることにより、第2のマスク層102に乱れを加えることができる。このため、第2のマスク層102をマスクにエッチング加工された第1のマスク層103や、更に加工された被処理体200の微細パタン220に乱れを加えることができる。このような乱れを含ませることにより、微細パタン220を具備する被処理体200を光学用途、例えばLEDやOLEDに使用した際に、散乱性を強く付加することができる。ここで、(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造101aを構成する要素に対する値である。例えば、凹凸構造が要素A,B,Cの三つから構成される場合、要素Aに対する標準偏差/要素Aに対する相加平均といったように、同一の要素に対する標準偏差と相加平均に対する比率として定義する。
(相加平均)
相加平均値は、ある要素(変量)XのN個の測定値をx1、x2…,xnとした場合に、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)XのN個の測定値をx1、x2…,xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
相加平均を算出する際のサンプル点数Nは、10以上として定義する。また、標準偏差算出時のサンプル点数は、相加平均算出時のサンプル点数Nと同様とする。
また、(標準偏差/相加平均)は、面内における値ではなく、局所的な凹凸構造101aに対する値として定義する。即ち、面内に渡りN点の計測を行い(標準偏差/相加平均)を算出するのではなく、局所的観察を行い、該観察範囲内における(標準偏差/相加平均)を算出する。ここで、観察に使用する局所的範囲とは、凹凸構造101aの平均ピッチPの5倍〜50倍程度の範囲として定義する。例えば、平均ピッチPが300nmであれば、1500nm〜15000nmの観察範囲の中で観察を行う。そのため、例えば2500nmの視野像を撮像し、該撮像を使用して標準偏差と相加平均を求め、(標準偏差/相加平均)を算出する。
上述したように、(標準偏差/相加平均)が0.025以上であれば散乱性を強く付加することが可能となる。より散乱性を強くし、光学素子としての性能を向上させる観点から、(標準偏差/相加平均)は0.03以上であると好ましい。一方、上限値は、第2のマスク層102の配置精度の観点から、0.5以下であると好ましい。また、第1のマスク層103の加工精度を向上させる観点から0.35以下が好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。
また、モールド101の凹凸構造101aは、図17A及び図17Bに示すように、面内において直交する第1方向と第2方向に対し、第1方向にピッチPで凸部101b(又は凹部101c、以下同様)が配列し、且つ、第2方向にピッチSで凸部101bが配列する場合において、第2方向に列をなす凸部101bの第1方向に対するずれ(シフト量(α))の規則性が高い配列であってもよいし(図17A参照)、シフト量(α)の規則性が低い配列であってもよい(図17B参照)。シフト量(α)とは、第1方向に平行な隣り合う列において、最も近接する凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分間の距離をいう。例えば、図17Aに示すように、第1方向に平行な第(N)列の任意の凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分と、この凸部101bから最も近い距離にある第(N+1)列の凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分との間の距離が、シフト量(α)と規定される。図17Aに示す配列は、どの列を第(N)列としても、シフト量(α)はほぼ一定であるため、周期性を備えた配列といえる。一方、図17Bに示す配列は、どの列を第(N)列とするかによって、シフト量(α)の値が変わるため、非周期性を備えた配列といえる。
ピッチP及びピッチSは、想定する用途に応じて適宜設計することができる。例えば、ピッチPとピッチSとは等しいピッチであってもよい。また、図17A及び図17Bにおいては、凸部101bが重なりを持たず独立した状態で描かれているが、第1方向と第2方向の両方、又はいずれか一方に配列する凸部101bが重なっていてもよい。
例えば、LEDのサファイア基材(被処理体200)表面の加工を行う場合、LEDの内部量子効率を向上させるために、モールド101の凹凸構造101aは、ピッチが100nm〜500nm、高さが50nm〜500nmであることが好ましい。配列は、正規配列が好ましい。特に、内部量子効率を向上させ、且つ光取り出し効率を向上させるために、上記説明した非周期性を備えた配列が好ましい。その他にも、内部量子効率及び光取り出し効率を同時に向上させるために、モールド101の凹凸構造101aは、ナノスケールで正規配列をなし、且つ、マイクロスケールの大きな周期性を有する、ピッチにマイクロスケールの周期を有する変調を加えたホール形状であるとより好ましい。
微細パタン形成用積層体を製造するにあたり、上記距離(lcc)及び距離(lcv)を満たす構造を形成するには、次に示す構造、マスク材料を用いることが好ましい。
図18A及び図18Bは、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体におけるモールド101のドット形状の凹凸構造101aを示す断面模式図である。モールド101の凹凸構造101aがドット形状の場合、1つの凸部101bの凸部頂部101b−1を形成する面における、最長の線分の長さ(lx)がサブミクロンスケールであると、希釈塗工した第2のマスク層材料が、系のエネルギーを減少させるように、効率的に凹部101c内部へと充填される結果、lcvを小さくできるため好ましい。特に、最長の線分の長さが、500nm以下であると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましく、より好ましくは、300nm以下、最も好ましくは、150nm以下である。なお、1つの凸部101bの凸部頂部101b−1を形成する面とは、各凸部101bの頂部位置を通る面と、1つの凸部101bの凸部頂部101b−1とが交わる面を意味する。
図18Aに示すように、凸部101bは、凸部底部101b−2の面積の方が凸部頂部101b−1の面積より大きい構造、すなわち、凸部101bが傾斜を持つ構造であると、上記効果をより発揮できるため好ましい。更に、図18Bに示すように、凸部頂部101b−1と傾斜部101b−3とは、連続的に滑らかにつながっていると、第2のマスク層102を希釈し塗工する際の、固液気界面におけるピン止め効果(TPCLよるピン止め効果)を抑制でき、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
図19は、微細パタン形成用積層体におけるモールド101のホール形状の凹凸構造101aを示す平面模式図である。モールド101の凹凸構造101aがホール形状の場合、1つのホール(A)と、ホール(A)に最近接するホール(B)において、ホール(A)の開口淵部と、ホール(B)の開口淵部をつなぐ、最短の線分(ly)の長さがサブミクロンスケールであると、希釈塗工した第2のマスク層102が、系のエネルギーを減少させるように、効率的に凹部101c内部へと充填される結果、lcvを小さくできるため好ましい。特に、最短の線分の長さが、500nm以下であると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましく、より好ましくは、400nm以下、最も好ましくは、300nm以下である。その中でも、最短の線分の長さは、150nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは0nmである。なお、最短の線分の長さが0nmとは、ホール(A)とホール(B)との開口淵部の一部が重なり合う状態を意味している。
また、ホール開口部の面積が、ホール底部の面積よりも大きいと、上記効果をより発揮できるため好ましい。更に、開口淵部と凹部側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、第2のマスク層102を希釈し塗工する際の、固液気界面におけるピン止め効果(TPCLよるピン止め効果)を抑制でき、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
更に、微細パタン形成用積層体においては、モールド101の凹凸構造101aのピッチP及びピッチSはともに1500nm以下であると上記効果をより発揮するため好ましく、1000nm以下であるとより好ましい。特に、凸部頂部の面積を小さくし、距離lcvをより小さくする観点から、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。また、第2のマスク層102の充填配置精度及び転写性の観点からピッチは50nm以上であることが好ましい。モールド101の凹凸構造101a上へ第2のマスク層102を塗工し、凹部内部へと第2のマスク層102を充填する際に、開口率が45%以上であると、ピッチが50nmから1000nmの範囲内にある場合には、第2のマスク層102は微細パタンを認識することができ、微細パタン内部に形成される第2のマスク層102の仮想液滴の曲率半径を極大化するように、パタン内部へと濡れ広がるため、好ましい。仮想液滴とは、モールド101の凹凸構造101aの凹部内部に存在すると仮定した、第2のマスク層102の液滴を意味する。特に50%以上であることが好ましく、55%以上であるとより好ましい。更に、開口率が65%以上であると、上記効果に加え、モールド101の凹凸構造101aの凸部上から凹部内部方向へのポテンシャルが働き凹内部へ液滴が充填された後に、凸上へと第2のマスク層102が再移動することを回避できるため、より好ましい。また、上記効果をよりいっそう発揮するために、開口率は、70%以上が望ましい。より好ましくは、開口率は75%以上であり、80%以上であるとさらに好ましい。
なお、モールド101の凹凸構造101aがホール状の場合は、図20Aに示すように、微細パタンの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Sc)下に含まれる、凹部101cの面積(Sh)の比率が開口率である。図20Cは、図20Aに示す単位面積(Sc)下に含まれる凹凸構造101aを抜き出した模式図である。図20Cに示す例では、単位面積(Sc)内に微細ホール(凹部101c)が12個含まれている。この12個の微細ホール(凹部101c)の開口部面積(Sh1〜Sh12)の和がShとして与えられ、開口率Arは(Sh/Sc)で与えられる。一方で、凹凸構造101aがドット状の場合は、図20Bに示すように、凹凸構造101aの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Sc)下に含まれる、凹部101cの面積(Sc−Sh)の比率が開口率である。図20Cは、図20Bに示す単位面積(Sc)下に含まれる凹凸構造101aを抜き出した模式図である。図20Cに示す例では、単位面積(Sc)内に微細ドット(凸部101b)が12個含まれている。この12個の微細ドット(凸部101b)の頂部面積(Sh1〜Sh12)の和がShとして与えられ、開口率Arは((Sc−Sh)/Sc)で与えられる。開口率Arを100倍すればパーセントとして表記できる。
例えば、図21に示すような、開口径(φ)が430nm、x軸方向のピッチPxが398nm、y軸方向のピッチPyが460nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aの場合、Sh/Scは0.79(開口率79%)となる。
同様に、例えば開口径(φ)が180nm、x軸方向のピッチPxが173nm、y軸方向のピッチPyが200nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、(Sh/Sc)は0.73(開口率73%)となる。
同様に、例えば、開口径(φ)が680nm、x軸方向のピッチPxが606nm、y軸方向のピッチPyが700nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、(Sh/Sc)は0.86(開口率86%)となる。
例えば、図21に示すような、凸部頂部径(φ)が80nm、x軸方向のピッチPxが398nm、y軸方向のピッチPyが460nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aの場合、(Sc−Sh)/Scは0.97(開口率97%)となる。
同様に、例えば凸部頂部径(φ)が30nm、x軸方向のピッチPxが173nm、y軸方向のピッチPyが200nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、((Sc−Sh)/Sc)は0.98(開口率98%)となる。
同様に、例えば、凸部頂部径(φ)が100nm、x軸方向のピッチPxが606nm、y軸方向のピッチPyが700nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、((Sc−Sh)/Sc)は0.98(開口率98%)となる。
また、モールド101の凹凸構造101aは、塗工改善構造を含んでもよい。塗工改善構造は、モールド101の凹凸構造101aにおいて、第2のマスク層102を充填配置する領域(基本構造)を挟みこむように配置されており、塗工改善構造のピッチは、基本構造よりも大きいことが好ましい。特に、塗工改善構造中のピッチが、基本構造側から、フィルム端部へと、徐々に大きくなることが好ましい。例えば、ホール形状の場合、基本構造部の開口率よりも、塗工改善構造部の開口率が小さくなるように設定することが、好ましい。
以上、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体について説明した。続いて、第1のラインにて製造された微細パタン形成用積層体を、第2のラインへと搬送する際の形態である梱包形態について説明する。
即ち、本実施の形態に係る梱包された微細パタン形成用積層体は、上記説明した微細パタン形成用積層体を第1の施設から第2の施設へと搬送する際の梱包形態であり、樹脂製ケースにて梱包された微細パタン形成用積層体である。
まず、第1の施設にて製造された微細パタン形成用積層体が、第2の施設にて使用されるまでの流について説明する。なお、ここでの第1の施設とは、最終的に第2の積層体2を製造する施設を意味する。即ち、第Aの施設にてモールドを製造し、該モールドを第Bの施設へと輸送する。続いて、第Bの施設にて、第1の積層体1を製造し、続いて第2の積層体2を製造することが出来る。この場合、第Bの施設が、上述した第1の施設に相当する。また、第Aの施設にてモールドを製造し、該モールドを第Bの施設へと輸送する。続いて、第Bの施設にて、第1の積層体1を製造し、該第1の積層体1を第Cの施設へと輸送する。続いて、第Cの施設にて、第2の積層体2を製造することが出来る。この場合、第Cの施設が、上述した第1の施設に相当する。
まず、製造されたモールドを、第1の積層体1に加工するまでの、モールドの状態としては、下記要件を満たすことが好ましい。これにより、第1の積層体1における第2のマスク層102の成膜性が向上する。特に、第2のマスク層102の白化や微粒子化を抑制できる。モールドに対する吸湿量は、10重量%以下である必要がある。これは、上述した理由からである。更に、この吸湿量が5重量%以下であることにより、モールドの吸湿による変形を抑制できるため、第1の積層体1の変形を抑制できる。また、吸湿量が1重量%以下であることにより、モールド101の凹凸構造101aの凹部内部に毛管凝縮する凝縮水の除去が容易となるため好ましい。そして、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.01重量%以下となるにつれて、第2のマスク層102の成膜に関し、モールド面内に対する均等性が向上する。以上の観点から、モールド101を第1の積層体1に加工する際の施設へと搬送する際には、吸湿剤を付帯させるか、或いは湿度管理した搬送方法を行うことが好ましい。なお、湿度としては、相対湿度にて65%以下が好ましく、52%以下がより好ましく、48%以下が最も好ましい。なお、モールドを製造する際の湿度も、上記相対湿度範囲を満たすことで、上記説明した、吸湿量の制御が容易となる。また、モールドがリール状であり、コアに対して巻き取られた形状の場合、モールドの一端部とコアとの接続に関しては、特に限定されないが、少なくとも、コアに接続されるモールドの一端部は凹凸構造101aのないリードであることが好ましい。これにより、当該接続部により生じる不陸が、モールド101の凹凸構造101aに転写されることを抑制できる。また、同様の理屈から、モールドがコアに対して巻き取られた巻物状の場合、途中に異物が混入すると、当該異物が、巻物のより外側に位置するモールドへと転写される。このことから、モールドを製造する際の環境は、クラス10000以下であることが好ましく、クラス1000以下であることがより好ましく、クラス100以下であることが最も好ましい。同様に、モールドを搬送する際の環境クラスも、上記範囲を満たすことが好ましい。
第1の積層体1を製造する際に湿度は、第2のマスク層102の成膜性に影響を与える。ここで、成膜性に影響を与える因子は、第2のマスク層102を含む塗液状態、当該塗液を塗工した後の乾燥状態により主に決定される。ここで、塗液状態を好適に保つ観点から、第2のマスク層102の塗液を調液する環境は、相対湿度表記にて65%以下であることが好ましい。特に、55%以下であることで、塗液中の凝集物の成長を抑制できる。さらに、50%以下であることで、凝集物の生成と成長の抑制効果が大きくなるため最も好ましい。なお、第2のマスク層102の塗液に使用する溶剤に含まれる水分は、5.0重量%以下であることが好ましい。これにより、第2のマスク層102の塗液の安定性、特に、塗液中の異物生成数を減少させることが出来る。また、当該水分量が3.0重量%以下であれば、該異物の成長を抑制する効果が大きくなる。そして、1.5重量%以下であれば、第2のマスク層102の塗液の塗工斑が小さくなり、1.0重量%以下であれば、第1の積層体1を連続的に製造する際の安定性が向上する。なお、第2のマスク層102の塗液の安定性及び塗工安定性の観点からは、0.5重量%以下、そして0.15重量%以下になるにつれて、より好ましい。なお、上述した水分量については、第2のマスク層102にゾルゲル材料が含まれる場合に、特に有効である。また、第2のマスク層102の塗液については、使用前に、フィルタにて濾過することが望ましい。この際のフィルタの材質は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリケトン(PK)を採用できる。孔径は中心値として、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。なお、上述した濾過については、第2のマスク層102にゾルゲル材料が含まれる場合に、特に有効である。また、第1の積層体1を製造する際の、当該設備内の照明は、紫外線カット仕様であることが好ましい。例えば、イエローランプを使用できる。これにより、第2のマスク層102の変質を効果的に抑制できる。
第1の積層体1を第2の積層体2に加工するまでの、第1の積層体1の状態としては、下記要件を満たすことが好ましい。これにより、第2の積層体2における第1のマスク層103の成膜性が向上する。第1の積層体1に対する吸湿量は、10重量%以下である必要がある。これは、上述した理由からである。更に、この吸湿量が5重量%以下であることにより、第1の積層体1の吸湿による変形を抑制できるため、第2の積層体2の変形を抑制できる。また、吸湿量が1重量%以下であることにより、第1の積層体1の凹凸構造の凹部内部に毛管凝縮する凝縮水の除去が容易となるため好ましい。そして、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.01重量%以下となるにつれて、第1のマスク層103の成膜に関し、第1の積層体1面内に対する均等性が向上する。以上の観点から、第1の積層体1を第2の積層体2に加工する際の施設へと搬送する際には、吸湿剤を付帯させるか、或いは湿度管理した搬送方法を行うことが好ましい。なお、湿度としては、相対湿度にて65%以下が好ましく、52%以下がより好ましく、48%以下が最も好ましい。また、第1の積層体1がリール状であり、コアに対して巻き取られた形状の場合、第1の積層体1の一端部とコアとの接続に関しては、特に限定されないが、少なくとも、コアに接続される第1の積層体1の一端部は凹凸構造101aのないリードであることが好ましい。これにより、当該接続部により生じる不陸が、第1の積層体1の凹凸構造101aに転写されることを抑制できる。また、同様の理屈から、第1の積層体1がコアに対して巻き取られた巻物状の場合、途中に異物が混入すると、当該異物が、巻物のより外側に位置する第1の積層体1の凹凸構造へと転写される。このことから、第1の積層体1を製造する際の環境は、クラス10000以下であることが好ましく、クラス1000以下であることがより好ましく、クラス100以下であることが最も好ましい。同様に、第1の積層体1を搬送する際の環境クラスも、上記範囲を満たすことが好ましい。
第2の積層体2を製造する際の、当該設備内の照明は、紫外線カット仕様であることが好ましい。例えば、イエローランプを使用できる。これにより、第1のマスク層103の変質を効果的に抑制できる。湿度は、第1のマスク層103の成膜性に影響を与える。相対湿度表記にて65%以下であることが好ましい。特に、55%以下であることで、乾燥斑を大きく低減できる。なお、第1のマスク層103の塗液に使用する溶剤に含まれる水分は、5.0重量%以下であることが好ましい。これにより、乾燥斑を大きく低減できる。また、3.0重量%以下であれば、乾燥の熱分布に対するマージンが大きくなるため好ましい。特に、1.5重量%以下であれば、乾燥機の熱分布設計において、熱分布の傾斜勾配を急な方向にシフトできるためより好ましい。なお、最も好ましくは、0.15重量%以下である。また、第1の塗工液103の塗液については、使用前に、フィルタにて濾過することが望ましい。この際のフィルタの材質は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリケトン(PK)を採用できる。孔径は中心値として、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。
第2の積層体2の状態としては、下記要件を満たすことが好ましい。これにより、第2の積層体2を、第2の施設において使用する際の、機能が向上する。第2の積層体2に対する吸湿量は、10重量%以下である必要がある。これにより、被処理体への密着性が向上する。更に、この吸湿量が5重量%以下であることにより、第1のマスク層103及び第2のマスク層102の、マスクとしての機能が向上する。また、吸湿量が1重量%以下であることにより、第2の積層体2の変形を抑制できるため、貼合性が向上する。そして、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.01重量%以下となるにつれて、第1のマスク層103及び第2のマスク層102の物性斑がより小さくなるため、被処理体面内における、マスク層の機能の均等性が向上する。以上の観点から、第2の積層体2を第2の施設へと搬送する際には、吸湿剤を付帯させるか、或いは湿度管理した搬送方法を行うことが好ましい。なお、湿度としては、相対湿度にて65%以下が好ましく、52%以下がより好ましく、48%以下が最も好ましい。また、第2の積層体2がリール状であり、コアに対して巻き取られた形状の場合、第2の積層体2の一端部とコアとの接続に関しては、特に限定されないが、少なくとも、コアに接続される第2の積層体2の一端部は凹凸構造101aのないリードであることが好ましい。これにより、当該接続部により生じる不陸が、第2の積層体2に転写されることを抑制できる。また、同様の理屈から、第2の積層体2がコアに対して巻き取られた巻物状の場合、途中に異物が混入すると、当該異物が、巻物のより外側に位置する第2の積層体2へと転写される。このことから、第2の積層体2を製造する際の環境は、クラス10000以下であることが好ましく、クラス1000以下であることがより好ましく、クラス100以下であることが最も好ましい。
次に、微細パタン形成用積層体を第1の施設から第2の施設へ、と搬送する際に生じる問題点について説明する。既に説明したように、第1のマスク層103の主要機能は接着機能と加工マスク機能であり、第2のマスク層102の主要機能は第1のマスク層103に対する加工マスク機能である。微細パタン形成用積層体の使用に際しては、モールドと第1のマスク層103及び第2のマスク層102と、が剥がれることが必須要件となる。即ち、搬送中に、上記4つの性能が損なわれた場合、第2の施設において被処理体上形成される微細マスクパタンの精度が低下し、ひいては被処理体上に設けられる微細パタンの精度が低下する。このため、モールド101、第2のマスク層102及び第1のマスク層103は、環境に対する耐性が求められる。上記説明した材料を選択することで、これらの環境耐性は飛躍的に向上するが、搬送中の急激な温度変化や湿度変化、気圧の変化、また搬送中の衝撃により、物性や形状が変化することがある。
次に、搬送中に異物が付着した場合、微細パタン形成用積層体の性能に影響する異物を完全に除去することは困難である。これは、微細パタン形成用積層体の凹凸構造の分解能が高いためである。よって、搬送中に異物の付着を抑制する必要もある。
更に、微細パタン形成用積層体は、上記説明したように撥水・親水・センサ・被処理体の加工等、様々な用途に適用可能である。即ち、搬送による負荷を低減するために使用される梱包材が使い捨ての場合、環境負荷が増大する。この観点から、梱包材は再利用可能であると好ましい。
以上の観点から、微細パタン形成用積層体の搬送に際しては、紙製の段ボールを使用することも可能ではあるが、樹脂製ケースを使用することが好ましい。なお、紙製の段ボールは、樹脂製ケースに比べ、コストが安く且つ衝撃吸収性が優れるというメリットがある。搬送環境により、紙製の段ボールを採用することが、以下に説明する樹脂製ケースのメリットを超える場合、適宜、紙製の段ボールを使用すればよい。樹脂製ケースにて微細パタン形成用積層体を梱包した状態、即ち、内部に上記説明した微細パタン形成用積層体を配置した樹脂製の梱包容器を搬送することにより上記課題を解決することができる。
樹脂製梱包容器内の微細パタン形成用積層体は、シート状の微細パタン形成用積層体を重ねあわせた微細パタン形成用積層シート、或いは巻き芯に巻き取り成る微細パタン形成用フィルムロールであると好ましい。これらの構成をとることにより、モールド101の凹凸構造101aに加わるせん断力や、第1のマスク層103に加わるせん断力を抑制することができるため、モールド101の凹凸構造101aの破壊を抑制することができる。中でも、微細パタン形成用フィルムロールの形態をとることで、前記効果をより発揮することができるため好ましい。
本実施の形態においては、梱包容器として樹脂製ケースを用いることから、微細パタン形成用積層体の使用後の梱包容器を再利用することができるため、環境に対する負荷を低減させることが可能になる。
また、梱包形態を考えた場合、少なくとも、以下に記載の試験規格のいずれかを達成することが好ましく、全てを達成することが最も好ましい。これにより、微細パタン形成用積層体に注目した場合に、第1の施設から発送する状態と、第2の施設にて開封する状態と、の差を小さくすることが出来る。この際は、微細パタン形成用積層体を構成する部材の物性のみではなく、微細パタン形成用積層体の外形も含まれる。
・輸送振動試験(JIS Z 0232:2004)
・衝撃試験(JIS Z 0202:1994、JIS Z 0205:1998)
・圧縮試験(JIS Z 0212:1998)
微細パタン形成用積層体と梱包容器の摩擦等に基づく梱包容器内部での粉塵等の発生を防止することができるため、微細パタン形成用積層体が清浄に保たれる。梱包容器と微細パタン形成用積層体と、の摩擦による発塵の観点から、梱包容器の容積は、微細パタン形成用積層体の体積の1.05倍以上であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、梱包容器に微細パタン形成用積層体を入れる際の摩擦を低減することができる。同様の観点から、梱包容器の容積は、微細パタン形成用積層体の体積の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることより好ましく、2倍以上であることが最も好ましい。なお、上限値はハンドリングと環境負荷の観点から適宜決定できるため特に限定されない。
また、微細パタン形成用フィルムロールのフィルム幅は、4mm以上1m以下であることが好ましい。特に、フィルム幅がXmの微細パタン形成用フィルムロールをY(≧1)個、樹脂製ケース内に収めるよりも、フィルム幅がx(<X)mの微細パタン形成用フィルムロールをy(≧Y)個樹脂製ケースに収めることが好ましい。また、巻芯への微細パタン形成用フィルムロールの巻き取り長さは10m以上1000km以下であることが好ましい。特に、600m以下であると、梱包容器に微細パタン形成用フィルムロールを入れる際に生じる摩擦を低減できるため好ましい。
樹脂製ケースは、5回以上再利用可能であることが好ましい。特に、10回以上再利用可能である場合、環境負荷低減の効果が大きくなる。順次、15回以上、20回以上、30回以上再利用可能であることで、環境負荷低減の効果がよりいっそう大きくなるため好ましい。
樹脂製ケースとしては、熱可塑性樹脂からなる樹脂製ケースや熱硬化性樹脂からなる樹脂製ケースを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリスチレンが挙げられる。一方、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂製ケースは、折り畳み可能で折り畳み時に廃部材が生じない樹脂製ケースであることが、環境負荷をより低減する観点から好ましい。このような樹脂製ケースとしては、(株)アパックス製商品名アパコン(スタンダードタイプ)、アパコン530、エコキューブ、アパコン25等が挙げられる。
樹脂製ケースの内面、即ち梱包された微細パタン形成用積層体と対向する面の表面自由エネルギーは、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103よりも小さいことが好ましい。これにより、微細パタン形成用積層体が樹脂製ケースに触れた場合であっても、第1のマスク層103が樹脂製ケースに被着することを抑制できる。
また、微細パタン形成用積層体に保護層が設けられる場合は、支持基材或いは保護層のいずれか一方が、保護層の設けられない場合は支持基材がポリオレフィンフィルムであり、且つ、樹脂製ケースがポリオレフィン製であることが好ましい。このような構成をとることにより、微細パタン形成用積層体と樹脂製ケースと、が接触した場合であっても、両者の硬度差が小さいことから、摩擦による粉塵の発生をより小さくすることができる。またポリオレフィンは一般的に表面自由エネルギーが小さいため、上記説明したように、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103の被着を防ぐことができる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレン・ポリプロピレンからなる群より選ばれるポリオレフィンであることが好ましい。
樹脂製ケース内に配置される微細パタン形成用積層体は、樹脂製ケース内に直接配置されても、樹脂製の袋(プラスチック袋)で梱包し、プラスチック袋内部に配置させた状態で樹脂製ケース内に配置してもよい。また、小型の樹脂製ケース(1)内に配置した微細パタン形成用積層体を、樹脂製ケース(1)よりも大きな樹脂製ケース(2)内に配置してもよい。このように、2重以上の梱包形態をとることにより、微細パタン形成用積層体の剥離性、第2のマスク層102の加工マスク機能、第1のマスク層103の加工マスク機能及び接着機能をより保持することが可能となる。このような場合、最も内側に位置する梱包部材、例えば、プラスチック袋はクリーン対応品であることが望ましい。クリーン対応品については、クリーン度10000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、100以下が最も好ましい。特に、樹脂製の袋にて梱包した微細パタン形成用積層体を樹脂製ケースに入れる場合、樹脂製ケースの厚みは、樹脂製の袋の厚みの、10倍以上であることが好ましく、20倍以上であることが好ましく、45倍以上であることが最も好ましい。
樹脂製の袋は遮光性プラスチック袋(ブラックポリエチレン袋等)であることが好ましい。遮光性プラスチック袋を用いることにより、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103及び第2のマスク層102の物性変化を抑制することができる。特に、微細パタン形成用積層体に感光性物質が含まれる場合、該感光性物質の感光波長の透過率が50%以下である遮光性プラスチック袋を採用すると好ましい。特に、20%以下であることで長期搬送における変質の他、保存時の変質を抑制できるため好ましい。最も好ましくは1%以下である。
また、樹脂製の袋と樹脂製ケースの少なくともいずれか一方は、微細パタン形成用積層体の特に第2のマスク層102の物性変化を抑制し第2のマスク層102の第1のマスク層103に対する加工マスク機能及び精度を維持する観点から、防湿性を有するプラスチック袋であることが好ましい。例えば、表面にアルミニウムを蒸着したブラックポリエチレン袋が挙げられる。
樹脂製の袋と微細パタン形成用積層体と、の摩擦による発塵を効果的に抑制する観点から、プラスチック袋は、ポリオレフィン製プラスチック袋であることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレン・ポリプロピレンからなる群より選ばれるポリオレフィンからなるポリオレフィン製プラスチック袋であることが更に好ましい。
樹脂製の袋と微細パタン形成用積層体と、の摩擦による発塵の観点から、樹脂製の袋の容積は、微細パタン形成用積層体の体積の1.05倍以上であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、樹脂製の袋に微細パタン形成用積層体を入れる際の摩擦を低減することができる。同様の観点から、樹脂製の袋の容積は、微細パタン形成用積層体の体積の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることより好ましく、2倍以上であることが最も好ましい。なお、上限値はハンドングと環境負荷の観点から適宜決定できるため特に限定されない。
微細パタン形成用積層体を第1の施設にて製造し、第2の施設へと搬送し使用する際に、特に好ましくは、樹脂製の袋内に収められた微細パタン形成用積層体を内部に配置した樹脂製ケースを利用することである。中でも、微細パタン形成用体が微細パタン形成用フィルムロール或いは微細パタン形成用積層フィルムであるとより好ましく、微細パタン形成用フィルムロールであると最も好ましい。
この場合においては、樹脂製の袋は遮光性プラスチック袋であることが好ましい。更に、微細パタン形成用積層体の支持基材或いは保護層の少なくとも一方がポリオレフィンフィルムであり、樹脂製ケースはポリオレフィン製ケースであり、且つ、遮光性プラスチック袋は遮光性ポリオレフィン袋であることが特に好ましい。また、ポリオレフィンフィルム、遮光性ポリオレフィン袋及びポリオレフィン製ケースは、同一若しくは異なるポリオレフィンからなっており、該ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレン・ポリプロピレンからなる群より選ばれるポリオレフィンであることが極めて好ましい。
更に、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の少なくともいずれか一方に乾燥材を配置すると好ましい。乾燥材を配置することにより、微細パタン形成用積層体の周囲環境の湿度を低下させることができる。このため、特に第2のマスク層102の物性安定化が良好となり、また、微細パタン形成用積層体の外形変化が抑えられる。更に、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の少なくともいずれか一方に、湿度センサを配置してもよい。湿度センサは電気的センサ、電気化学的センサ、化学センサ等を採用できるが、所定の水分量以上にて着色する化学センサであると好ましい。このような湿度センサを加えることで、微細パタン形成用積層体の搬送に伴う、水分量変化の履歴、特に最高水分量の履歴を残すことが可能となるため、搬送後の微細パタン形成用積層体の使用可否判断を迅速に行うことができる。
また、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋に微細パタン形成用積層体を収める環境湿度は、60%以下の湿度環境であると、微細パタン形成用積層体に対する結露を防止しやすいため好ましい。同様の観点から、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることが最も好ましい。
更に、微細パタン形成用積層体よりも外側且つ、樹脂製ケースよりも内側に緩衝剤(衝撃吸収材)を設けてもよい。この場合、搬送時に加わる急な衝撃に対する耐性が向上するため、微細パタン形成用積層体の撓みを抑制することができる。緩衝剤の種類は特に限定されないが、搬送にかかる負荷を低下させる観点から、0.8g/cm3以下の密度であることが好ましく、0.6g/cm3以下であることがより好ましく、0.4g/cm3以下の密度であることが最も好ましい。
更に、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の少なくともいずれか一方に光センサを配置すると好ましい。特に、微細パタン形成用積層体と樹脂製の袋と、の間に光センサを配置することが好ましい。ここで光センサにより検知される光は、紫外光、可視光、赤外光のいずれでもよいが、少なくとも、微細パタン形成用積層体に含まれる感光性物質の感光波長(λ)の光を検知できるものであると好ましい。特に、該感光波長(λ)に対する積算光量の履歴が残るセンサであると好ましい。このような光センサを配置することにより、保管及び搬送中に、微細パタン形成用積層体に暴露された光の量を把握することができる。
更に、微細パタン形成用積層体を固定する把持具(固定治具)を設けることが好ましい。特に、把持具は微細パタン形成用フィルムロールのフィルム部位(少なくとも、モールド101/第2のマスク層102/第1のマスク層103から構成される積層部)が、接地しないように設けられることが好ましい。このような構成にすることで、微細パタン形成用フィルムロールの撓みを抑制することができる。把持具については追って説明する。
上記説明した樹脂製ケース或いは樹脂性の袋の少なくともいずれか一方は、環境負荷低減の観点から、再利用可能とするために、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103の表面自由エネルギーよりも低い表面自由エネルギーの樹脂から構成されると好ましい。このような表面自由エネルギー関係を満たすことにより、第1のマスク層103が樹脂製ケース或いは樹脂製の袋に接触した場合であっても、被着を抑制することができるため、再利用性が向上する。樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の表面自由エネルギーは15dyne/cm以上40dyne/cm以下であることが好ましく、18dyne/cm以上38dyne/cm以下であることがより好ましい。なお、表面自由エネルギーは、臨界表面張力γcとして求めることが可能である。
上記説明した表面自由エネルギーを満たす樹脂の中でも、第1のマスク層103の被着抑制の観点から、ポリオレフィン等の炭化水素樹脂であると好ましい。特に、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレン・ポリプロピレンが好ましい。また、樹脂製ケースは上述のように折り畳み時に廃棄部材が生じないものが好ましい。
以上説明した樹脂製ケース又は樹脂製の袋は、廃棄せずに再利用するために保管することができる。保管された樹脂製ケース又は樹脂製の袋を少なくとも1回以上再利用することで環境負荷が低減する。5回以上再利用可能であることが好ましい。特に、10回以上再利用可能である場合、環境負荷低減の効果が大きくなる。順次、15回以上、20回以上、30回以上再利用可能であることで、環境負荷低減の効果がよりいっそう大きくなるため好ましい。
微細パタン形成用フィルムロールの場合、端面保護シートを設けると好ましい。特に、端面保護シートは、端面接触部用フィルムと乾燥剤層の2層以上の多層構造になっていると、微細パタン形成用積層体の湿度に対する変質抑制効果が大きいため好ましい。しかしながら、以下に説明する低透湿な樹脂を使用することにより、端面保護シートを配置しなくとも、湿度の影響を小さくすることができる。
微細パタン形成用積層体は、モールド101、第1のマスク層103及び第2のマスク層102の組成によっては、湿度により物性が変化する場合がある。特に、第2のマスク層102は第1のマスク層103に対する加工マスク性能を発現する観点から、金属元素を含むことが好適であるため、湿度に対する影響を受ける可能性が高い。この観点から、上記説明した樹脂製ケースと樹脂製の袋の少なくともいずれか一方は、低透湿な樹脂から構成されることが好ましい。ここで、透湿性は0以上15g/(24h・m2)以下であると好ましい。特に、搬送における季節の影響を極力小さくする観点から、0以上10g/(24h・m2)以下であることが好ましく、0以上6g/(24h・m2)以下であることがより好ましく、0以上3.5g/(24h・m2)以下であることが最も好ましい。中でも、0以上2g/(24h・m2)以下であることにより、微細パタン形成用積層体を梱包した環境における湿度の維持効果が大きくなるため、特に好ましい。なお、透湿性(透湿度)は、JIS K 7129−1992に準拠して測定され、A法により試験温度40±0.5℃及び相対湿度差90±2%RHの条件で行うものと定義する。
上述したように低透湿な樹脂により、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋のいずれか一方を構成することで、特に第2のマスク層102の物性変化を抑制できる。本効果をいっそう発揮する観点から、低透湿樹脂の厚みは、15μm以上50mm以下であることが好ましく、20μm以上12mm以下であることがより好ましく、50μm以上6mm以下であることが特に好ましい。特に、搬送を行う季節や地域の差を小さくする観点から、100μm以上2.5mm以下であることが最も好ましい。なお、上限値は経済性、作業性、及び環境適合性の観点から決定している。
低透湿な樹脂は、プラスチックであることが好ましい。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンセルローストリアセテート、塩化ビニルと塩化ビニリデンの共重合体、セロファン等のフィルム、これらのフィルムに無機粉末等の吸水能は吸湿能を有する物質を蒸着したもの等が挙げられる。
また、湿度の影響を排除する観点から、上記樹脂製ケースの中、或いは樹脂製ケースの樹脂内部又は、樹脂製の袋の少なくともいずれか1つに、無機物の粉末を配置することが好ましい。なお、無機物の粉末が、樹脂製ケースの中に配置される場合、飛散を抑制する観点から、無機物の粉末をケースに入れた状態にて配置することが好ましい。また、樹脂製ケースの樹脂内部又は樹脂製の袋に無機物の粉末を配置する場合、これらを構成する樹脂そのものに練りこむか、或いは樹脂の表面に無機物の粉末をコーティングすると好ましい。
無機物の粉末としては、例えば、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、モンモリロナイト、活性炭、極性基を表面修飾した活性炭、粘土(クレイ)、モレキュラーシーブ、水酸化カリウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、臭化カルシウム、硫酸カルシウム、亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酸化マグネシウム、塩素酸マグネシウム、硫酸銅、酸化バリウム、グラスウール、ケイソウ土等が挙げられる。中でも、ゼオライト、シリカゲル、モンモリロナイト、モレキュラーシーブ、活性アルミナ等がより好ましい。これらは単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、低透湿性をより良好にする観点から、樹脂製ケース表面にアルミ箔、アルミ箔ドライラミネートフィルム等の薄膜金属フィルムを貼り合わせることもできる。同様の観点から、樹脂製の袋として、アルミ箔、アルミ箔ドライラミネートフィルム等の薄膜金属フィルムを採用することもできる。なお、このような薄膜金属フィルムを採用した場合、微細パタン形成用積層体の光による物性変化、特に第1のマスク層103の物性変化を良好に抑制することもできる。なお、ドライラミネートとは、2枚のフィルム間に接着剤を導入し、温度40℃〜60℃程度で熱圧着し、室温にて24時間〜72時間程度の予備エージングした後に30℃〜50℃程度で12時間〜36時間程度の本エージングを行う作業である。
上記説明してきた低透湿シートとしては、例えば、アルミ蒸着フィルム、ファインバリヤー(登録商標)AT(ポリエステルフィルムに酸化アルミニウムを蒸着したもの、(株)麗光製商品名)、テックバリア(登録商標)S、テックバリア(登録商標)T、テックバリア(登録商標)H、テックバリア(登録商標)V(シリカ蒸着フィルム、三菱化学興人パックス(株)製商品名)、ファインバリヤー(登録商標)AT((株)麗光製商品名)とB−PE(ブラックポリエチレン)フィルムとのドライラミネート品、OP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)上に遮光用インクを塗布したフィルムとVMCPP(アルミニウムを蒸着した一軸延伸ポリプロピレンフィルム)とのドライラミネート品等が挙げられる。
樹脂製の袋が低透湿な樹脂から構成される場合、微細パタン形成用積層フィルムに対しては、積層されたフィルムの上面及び下面と樹脂製の袋と、の隙間は小さい程好ましい。特に、積層されたフィルムの上面及び下面と樹脂製の袋と、が接触する状態が最も好ましい。一方、微細パタン形成用フィルムロールの場合、微細パタン形成用フィルムロールの端部と樹脂製の袋と、の隙間が小さい程好ましく、接触する状態が最も好ましい。また、これらの隙間にポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルム等を介在させることで、微細パタン形成用積層フィルム及び微細パタン形成用フィルムロールに対する物理的変化を抑制すると共に、湿度による物性変化を抑制することができる。また、低透湿の樹脂製の袋による梱包は2重以上であってもよい。
低透湿の樹脂製の袋により微細パタン形成用積層体を梱包する方法は特に限定されないが、微細パタン形成用積層体を袋状のシートに入れた後に、シートの開口部を熱や化学物質(接着剤等)等により溶着、接着等を行うことが好ましい。特に、微細パタン形成用積層体及び乾燥材(例えば、飛散防止された上記無機物の粉末)を袋状のシートに入れた後に、シートの開口部を熱や化学物質(接着剤等)等により溶着、接着等を行うことが好ましい。なお、シート状乾燥材を使用する場合、シート状乾燥材の中央に微細パタン形成用積層体を置き、シート状乾燥材を半分に折る要領で微細パタン形成用積層体をシート状乾燥材内部に閉じこめ、そのシートの継ぎ目をシートの開口部を熱や化学物質(接着剤等)等により溶着又は接着させることが好ましい。
樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の内部の気体としては、例えば、通常の空気、ドライエア、窒素、アルゴン等が挙げられる。
また、微細パタン形成用積層体の搬送及び保存中に不意に生じる衝撃によりモールド101の凹凸構造101aや第2のマスク層102の膜厚精度が劣化することを抑制する観点から、樹脂製の袋又は樹脂製ケースの少なくともいずれか一方が、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋越しに2.5Mpa以下の圧力を加えたときに、微細パタン形成用積層体に跡や傷が付かない要件を満たすことが好ましい。このような条件は、例えば、樹脂製ケース或いは樹脂製の袋の厚みを前述した範囲にすることにより達成することができる。
樹脂製ケースは、上記説明してきた樹脂板を折曲げて形成された組立箱であると、第1の積層体1或いは第2の積層体2の機能劣化の抑制及び環境適合性の観点から好ましい。組立箱においては、いずれかの部分(例えば底面)に樹脂板の合わせ目(すなわち2つ以上の折板を折込み等によって組合せることに起因する樹脂板の不連続部分)を有するため、該合わせ目がずれて箱の形態が崩れやすいという問題を有する。この観点から、2つの折板と、該2つの折板が形成する合わせ目部分とを少なくとも通るように結束バンドを配置すると共に、該結束バンドを少なくとも該2つの折板に固定すると好ましい。なお、折板とは、折線及び/又は樹脂板端部で囲まれて1つの連続面を構成している樹脂板を意味する。また以下の説明においては、箱底面が2つ以上の折板で形成されている場合の該箱底面を組底ということもある。
樹脂製ケースの形態としては、アメリカンロック箱型、底ワンタッチ箱型、やっこ型、N式上差込型、N式サイド差込型、上下差込式型、上差込下風車式型、上差込下仕切型等の形態が挙げられる。このような組立箱は使用後に折りたたんでコンパクトにまとめることができるという利点を有する。
結束バンドは、樹脂製ケースの少なくともいずれかの面において、2つの折板の合わせ目を通り、該2つの折板に亘って(すなわち跨って)配置されると共に、少なくとも該2つの折板に固定される。これにより樹脂板の合わせ目がずれにくくなり、輸送中に合わせ目の隙間から光が漏れ入ることを抑制できる。このため、特に、第1のマスク層103の物性安定性が向上する。更に、搬送中のバンドのずれ及び蓋が開いてしまうことを防止できる。固定の方法としては、接着剤、粘着材、テープ、面ファスナー(例えばマジックテープ(登録商標))、融着等が挙げられる。
組立箱における折板の合わせ目としては、例えばアメリカンロック箱における突合せ部(すなわち折板の端部同士が対向し又は接触している箇所)のように、3つ以上の折板によって形成される箇所もある。結束バンドの配置は、2つの折板が形成している合わせ目の部分を少なくとも通るように結束バンドを配置すればよく、このような3つ以上の折板によって形成されている合わせ目部分を更に通るように結束バンドを配置してもよい。
図22〜図25は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体を梱包する樹脂製ケースを示す斜視図である。これらは、アメリカンロック型の樹脂製ケースを用いる例であって、箱底面を図面上で上側に示している。
図22に示す樹脂製ケース401では、結束バンド402を、樹脂製ケース401の箱底面、側面及び蓋面を経て巻くように配置している。また、2つの固定材403を、結束バンド402と2枚の折板401a、401bとの間に介在させて、2つの固定材403が箱底面の2枚の折板401a、401bのそれぞれに結束バンド402を接着固定している。ここで、固定材403には、例えば、接着材及び面ファスナーを用いることができる。
また、図23に示す樹脂製ケース411では、結束バンド412を樹脂製ケース411の箱底面、側面及び蓋面を経て巻くように配置している。また、2つの固定材413で結束バンド412を箱底面の2枚の折板411a、411bのそれぞれに貼り付けて固定している。ここで、固定材413には、粘着テープを用いることができる。
また、図24に示す樹脂製ケース421では、結束バンド422を樹脂製ケース421の箱底面、側面及び蓋面を経て巻くように配置している。また、1つの固定材423で、樹脂製ケース421の箱底面の2枚の折板421a、421bに跨って結束バンド422を貼り付け固定している。ここで、固定材423には、例えば、粘着テープを用いることができる。
図25に示す樹脂製ケース431では、箱底面を構成する2枚の折板431a、431bが互いに重ね合わされている。このため、箱底面は1枚の折板431aで構成されている。この樹脂製ケース431では、結束バンド432を樹脂製ケース431の箱底面、側面及び蓋面を経て巻くように配置している。また、2つの固定材433で結束バンド432を樹脂製ケース431の箱底面及び側面を構成する2枚の折板431a、431cのそれぞれに貼り付けて固定している。ここで、固定材433には、例えば、粘着テープを用いることができる。
以上、図22〜図25を参照して結束バンドの配置について説明したが、結束バンドの配置は、樹脂板の合わせ目を通るように配置された結束バンドが、該合わせ目を形成している折板のうち少なくとも2枚に固定される任意の態様を包含する。
結束バンドの材質としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン樹脂、フッ素樹脂(例えばテフゼル(登録商標))、ヘーラー(登録商標))、ポリアセタール樹脂(例えばデルリン(登録商標))、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等で形成された樹脂製バンド、及び、帯鉄等で形成された金属製バンドが挙げられる。特にポリプロピレン製のPPバンドは軽量で且つ強度が高いため好ましい。
結束バンドの引っ張り強度としては、400N以上が好ましく、600N以上がより好ましく、800N以上が最も好ましい。なお引っ張り強度はJIS C2318により測定される値である。また、結束バンドの幅としては5mm以上であることが好ましく、10mm以上がより好ましい。これらの範囲をみたすことにより、結束バンドの強度が向上するため、樹脂製ケースの合わせ目のずれや漏れ光を抑制する効果が強まる。
結束バンドは、搬送時等には両端が結合されて互いに固定されることが好ましい。これにより、樹脂製ケースの蓋が搬送時等に開いてしまうことを防止できる。例えば、結束バンドを樹脂製ケースの箱底面、側面及び蓋面を通るように巻いた後、両端部を結合固定することが好ましい。結束バンドの両端の固定には、固定部品を用いてもよいし溶着させてもよい。結束バンドとしてPPバンドを使用した場合は自動結束機を用いて両端を溶着することができる。
以上、結束バンドについて説明したが、結束バンドの1つの機能である漏れ光抑制は、以下に説明するように遮光材を設けることでも代用できる。即ち、漏れ光抑制に関しては、遮光材のみを適用することで解決可能である。また、遮光材と上記説明した結束バンドを併用することで、搬送時の樹脂製ケースの変形や漏れ光の抑制効果が大きくなるため好ましい。
遮光材は、上記樹脂製ケースの合わせ目の領域を含むように配置すればよく、例えば後述のような箱底面全体への配置等、合わせ目以外の領域を含んで広範囲に遮光材を配置してもかまわない。また、箱底面の合わせ目の全領域に遮光材を配置してもよいが、用途に応じて、例えば後述の突合わせ部等の特に遮光が必要な箇所のみに遮光材を配置する等、合わせ目の一部に遮光材を配置してもかまわない。
遮光材を設ける場合、特に、合わせ目が突合わせ部を含む場合に特に有用である。なお、突合わせ部とは、樹脂板の端部同士が対向し又は接触している箇所を意味する。突合わせ部としては、例えばアメリカンロック箱において、3枚以上の底板(すなわち底面を構成する折込片)の端部が組み合わさる箇所(後述の図26における遮光材の配置箇所)等が挙げられる。箱底面が上記突き合わせ部を有する場合、突合わせ部による隙間を介して箱内部に外光が入りやすい。従って、このような突合わせ部を含む領域に遮光材を配置する場合、内容物である微細パタン形成用積層体の、特に第1のマスク層の物性変化をより有効に防止でき好ましい。
遮光材は、微細パタン形成用積層体の感光域波長の光を実質的に透過させない材料であれば特に限定されず、例えば、ガムテープ、黒ガムテープ、遮光テープ及び遮光性ポリエチレンフィルムが好ましい。なお、微細パタン形成用積層体の感光域波長の光を実質的に透過させないとは、明室環境下で1日搬送或いは保存を行っても、樹脂製ケース内に設置される微細パタン形成用積層体の感光性部位(特に、第1のマスク層103)が硬化しない、すなわち貼合性と転写性が悪化しない状態を意味する。
市販品の好ましい遮光材としては、住友スリーエム社製ポリエステルテープ8422B、ユニ工業社製遮光テープ等を例示できる。遮光材の光透過率としては、波長365nm及び405nmにおいて5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。この光透過率は、分光測色計(例えば、Spectrophotometer U−3010(日立ハイテクノロジーズ社製))により測定される値である。
輸送中の遮光材の剥がれを防止するという観点から、遮光材の接着力は、3.0N/cm以上であることが好ましく、3.5N/cm以上であることがより好ましい。また、輸送中の遮光材の裂けを防止するという観点から、遮光材の引っ張り強さとしては、40N/cm以上が好ましく、破断点伸びとしては35%以上が好ましい。なお上記の接着力は170°剥離試験(300mm/min)、引っ張り強さ及び破断点伸びは、JIS C2318により測定される値である。
遮光材は、典型的にはその設置箇所に接着している。該接着の方法としては、接着剤、粘着材、テープ、融着等が挙げられる。
例えば、樹脂製ケースの箱底面が3枚以上の底板(典型的には底面を構成する折込片)の合わせ目を有する場合(この場合、合わせ目は前述の突合わせ部となる)、遮光材を配置する部位は該3枚以上の底板の合わせ目を少なくとも含む領域である。遮光材を配置する面としては、樹脂製ケースの内側でも外側でもかまわない。
図26〜図29は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体を梱包する樹脂製ケースを示す斜視図であり、箱底面を上面側に示している。
例えば、図26に示す、アメリカンロック型である樹脂製ケース441の箱底面を構成する4枚の折板441a〜441dのうち、3枚の折板441a、441b、441cの合わせ目と、3枚の折板441a、441b、441dの合わせ目に小さな2枚の遮光材442を配置している。この場合、比較的少量の遮光材で効率的に遮光できるため好ましい。
また、図27に示す樹脂製ケース451の箱底面を構成する4枚の折板451a〜451dのうち、3枚の折板451a、451b、451cの合わせ目と、3枚の折板451a、451b、451dの合わせ目に1枚の遮光材452を配置している。この場合、作業性がよいため好ましい。
更に、図28に示す樹脂製ケース461のように、箱底面に1枚の遮光材462を配置しても良い。この場合、輸送時の擦れによるはがれがないため好ましい。
一方、図29に示す樹脂製ケース471のように、箱底面の内側面に1枚の遮光材472を配置して箱底面を構成する4枚の折板の合わせ目をふさぐように遮光してもよい。この場合、例えば、遮光材472には、遮光性ポリエチレンフィルムを用いることができる。
微細パタン形成用積層体がフィルム状である場合、微細パタン形成用積層体を積層した後、即ち、微細パタン形成用積層フィルムとした後に、上記説明した梱包方法により梱包することができる。このような場合、厚み方向に積層される各フィルムが面方向に移動することにより生じる摩擦を抑制することが重要である。図30A及び図30Bは、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層フィルムを積層し固定する方法を示す説明図である。図30Aに示すように、フィルム状の微細パタン形成用積層体501を複数積層した微細パタン形成用積層フィルム500において、微細パタン形成用積層体501の主面の外周部501aの少なくとも一点を固定すると好ましい。これにより、微細パタン形成用積層体501の面方向への移動を抑制することができる。特に、図30Bに例示するように、外周部501aの中でも微細パタン形成用積層体501の角や各辺の中央付近の矢印Aで示す位置で固定することで、前記効果をより発揮することができる。最も好ましくは、少なくとも角の4点を固定することである。
また、上記説明した微細パタン形成用積層フィルム500の固定方法は特に限定されず、上記説明した樹脂製ケースに付帯させても、クリップのように挟み込む治具にて固定してもよい。特に、樹脂製ケースに付帯させることで、環境対応性と微細パタン形成用積層フィルム500に対する物理的劣化を抑制できるため好ましい。
微細パタン形成用積層体が微細パタン形成用フィルムロールの場合、微細パタン形成用フィルムロールが浮いた状態を保持すると、モールドの凹凸構造の破壊や第1のマスク層103の膜厚変動を抑制できるため好ましい。この観点から、微細パタン形成用フィルムロールはコアを有すると好ましい。このコアの両端をコア受けにより支持することで、微細パタン形成用フィルムロールを浮いた状態に維持することができる。これらの要件を満たすことで、微細パタン形成用フィルムロールを浮いた状態に維持できる。なお、微細パタン形成用積層体のコアの両端をコア受けにより支持するに当たり、微細パタン形成用積層体を予め上記説明した樹脂製の袋にて梱包し、樹脂製の袋にて梱包された微細パタン形成用積層体のコアの両端を、コア受けにより支持することで、樹脂製の袋による微細パタン形成用積層体の保護性を良好に保ち、且つ樹脂製の袋の容積を小さくできるため好ましい。ここで、コアの形状やコア受けの形状、配置は特に限定されない。このため、微細パタン形成用フィルムロール、コア受け、樹脂製ケースが互いに独立していても、コア受けと樹脂製ケースが一体化していてもよい。
次に、微細パタン形成用積層体がフィルム状(リール状)であり、当該フィルムがコアに巻き取られた微細パタン形成用フィルムロールについて説明する。微細パタン形成用フィルムロールは、コアと、コアに微細パタン形成用積層体を接続する接着部と、を少なくとも含むことで、搬送中の物性や物理的変化を抑制することができると共に、使用時の汎用性が増す。コアに対して微細パタン形成用積層体を接続する接着部は特に限定されないが、接着剤による固定や接着テープによる固定が好ましく、コアの再利用の観点から接着テープであると好ましい。
更に、コアの軸方向両端面にはそれぞれ円形の側板が設けられると、搬送中の微細パタン形成用フィルムロールのズレを抑制し、特にモールド101の凹凸構造101aと第1のマスク層103の保護能力が向上するため好ましい。なお、側板には複数の溝を設けることができる。更に、当該溝をガイドにフィルム状の微細パタン形成用積層体を巻き取ることができる。
コアは、微細パタン形成用積層体の製造及び使用の観点から、軸穴を有すると好ましい。コアの外径は特に限定されないが、製造及び使用時の操作の観点から、4cm以上15cm以下であることが好ましい。また、搬送時の微細パタン形成用フィルムロールの直径は、コアの長さよりも大きくても小さくてもよい。
コアに対する微細パタン形成用積層体の固定は、エンドテープを利用すると好ましい。エンドテープの終端部は、コアの外面に固定される。一方、エンドテープの始端部は、微細パタン形成用積層体の第1のマスク層103とは反対側の面に固定される。これらの要件を満たすことで、モールド101の凹凸構造101aの破壊を抑制し、且つ第1のマスク層103の膜厚変動を抑制しながら、コアに対して微細パタン形成用積層体を巻き取り、微細パタン形成用フィルムロールを製造することが可能となる。特に、エンドテープの一部或いは全面の色相が、微細パタン形成用積層体の色相と異なると、微細パタン形成用積層体の使用終わりを知らせる機能が発現されるため、安全性の観点から好ましい。
エンドテープの長さは、微細パタン形成用フィルムロールを使用する装置仕様により適宜選択できるが、0.3m以上10m以下であると微細パタン形成用フィルムロールの巻き取り性能の観点から好ましい。同様の効果から、0.5m以上3m以下であるとより好ましく、1m以上3m以下であると最も好ましい。エンドテープの厚みは、微細パタン形成用フィルムロールを使用する装置に要求される強度により適宜選択できるが、10μm以上100μm以下であると好ましい。特に、安全性をより向上させる観点から、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。更に、エンドテープの幅は、微細パタン形成用積層体のモールド101の幅に合わせればよい。
エンドテープを構成する材料は特に限定されないが、樹脂であると好ましい。特に、コアの再利用及び微細パタン形成用積層体の巻き取り性能の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマーから構成されるテープ等を使用することができる。
更に、エンドテープは少なくとも一方の面に滑り止め加工が施してあると、微細パタン形成用フィルムロールにおいて、エンドテープ間におけるすべりを防止できるため、微細パタン形成用フィルムロールの巻き取り性能及び、搬送時の物理的安定性を向上できるため好ましい。滑り止め加工としては、エンボス加工、ブラスト加工やゴムの塗布等が挙げられる。特に、エンドテープの長さが、25cm以上の場合に有効であり、順次、50cm以上、1m以上の場合に上記効果がより顕著となる。
上記説明したように、フィルム状の微細パタン形成用積層体とコアとをエンドテープにて連結することで、微細パタン形成用フィルムロールの巻き取り精度、搬送中の物理的安定性を向上させることができる。特に、以下に説明する方法を採用することにより、これらの効果がより顕著となるため好ましい。
図31及び図32は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体をコアに固定する方法を示す説明図である。
図31に示すように、微細パタン形成用積層体601の終端部601aは、エンドテープ602、カバーテープ603、及び粘着テープ604により構成される。このような構成により、コア605と微細パタン形成用積層体601との固定強度が向上するため、微細パタン形成用積層体601の巻き取り精度が向上し、良好な微細パタン形成用フィルムロールを製造できる。更には、微細パタン形成用フィルムロールを搬送する際のズレを抑制できるため、モールド101の凹凸構造101aの破壊や第1のマスク層103の膜厚変動を抑制することができる。
微細パタン形成用積層体601をコア605に固定する方法をより詳細に説明する。エンドテープ602は、微細パタン形成用積層体601とコア605とを連結する。エンドテープ602の終端部602aは、コア605の外面605aに固定される。この固定は、両面テープ等を用い行うことができる。両面テープとしては例えば、寺岡製作所社製の両面テープが挙げられる。他方、エンドテープ602の先端部602bは、カバーテープ603及び粘着テープ604により、微細パタン形成用積層体601を構成するキャリア606の終端部606aと接合される。
カバーテープ603は、微細パタン形成用積層体601においてキャリア606上に第1のマスク層607が設けられた側であって少なくとも第1のマスク層607が形成されていない領域601bを覆う。ここで、カバーテープ603は、コア605に巻き取られた微細パタン形成用積層体601の残量が少ないことを知らせるために使用することもできる。この場合、画像認識等で自動検出する観点から、カバーテープ603の色相は、モールド101(図4B参照)及び第1のマスク層607の色相と異なると好ましい。
カバーテープ603の一端部603aは、エンドテープ602の先端部602b側まで延存し、微細パタン形成用積層体601のキャリア406の終端部606aとエンドテープ602の先端部602bとを接合すると好ましい。なお、第1のマスク層607の終端部607aとカバーテープ603の他端部603bとの間にスペースを設けることもできるが、微細パタン形成用積層体601の第1のマスク層607が、モールド101の凹凸構造101a(図4B参照)より部分的に剥離することを抑制するために、第1のマスク層607の終端部607aを覆うようにカバーテープ603の他端部603bが延存すると好ましい。
カバーテープ603の厚みは、安全性及び微細パタン形成用積層体601の巻き取り精度の観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。カバーテープ603の幅は、第1のマスク層607の幅或いはモールド101の幅に合わせることができる。
粘着テープ604は、微細パタン形成用積層体601とエンドテープ602との接合強度を高め、微細パタン形成用積層体601の巻き取り精度と使用時の安全性を高める効果を発揮する。粘着テープ604は一方の面が粘着面であり、キャリア606とエンドテープ602との接合部であって、キャリア606の背面606c側に粘着面が設けられる。なお、カバーテープ603のみの接着強度が高く、安全性及び巻き取り精度が十分に発揮される場合、粘着テープ604は設けなくてもよい。また、粘着テープ604の接着強度が強く、安全性及び巻き取り精度が十分に発揮される場合、カバーテープ603をエンドテープ602の先端部602b側まで延存させなくてもよい。
粘着テープ604の長さは、微細パタン形成用積層体601とエンドテープ602との接合強度を十分に高めると共に、巻き取り精度を向上させる観点から、5mm以上100mm以下であると好ましい。特に、粘着テープ604を使用する際のハンドリング性の観点から、50mm以下であることが好ましく、25mm以下であるとより好ましい。粘着テープ604の厚みは、巻き取り精度及び、微細パタン形成用フィルムロールの第1のマスク層607の膜厚分布を小さくする観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。また、粘着テープ604の幅は、第1のマスク層607或いはモールド101の幅に合わせることができる。
上記説明したように、微細パタン形成用積層体601の終端側に、少なくとも第1のマスク層607の存在しない領域601bが形成される。この領域601bは、微細パタン形成用積層体601の終端から始端に向けて、少なくともコア605の1巻分以上の長さ設けられることが好ましい。
微細パタン形成用積層体601に、少なくとも第1のマスク層607の存在しない領域601bを設けることで、以下の効果がある。微細パタン形成用積層体601がコア605に巻かれた微細パタン形成用フィルムロールにおいては、領域601bが、微細パタン形成用積層体601とエンドテープ602との接合部(粘着テープ604)の直上に位置する。ここで、該接合部が領域601bにより覆われることで、接合部に多少の不陸が存在したとしても、これを起因としたモールド101の凹凸構造101aの破壊や、第1のマスク層607の膜厚変動を抑制することができる。ここで、領域601bの長さは、上記理由から、少なくともコア605の1巻分の長さよりも長ければ特に限定されるものではない。しかしながら、環境対応の観点から、コア605の直径にもよるが、概ね50cm以下であると好ましい。
また、図32に示すように、粘着テープ604が、微細パタン形成用積層体601とエンドテープ602の接合部であって、カバーテープ603と同じ側に設けられてカバーテープ603で覆われる構成であってもよい。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
以下の説明において使用する記号は、以下の意味を示す。
・DACHP…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製))
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・DIBK…ジイソブチルケトン
・MEK…メチルエチルケトン
・MIBK…メチルイソブチルケトン
・DR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR833(SARTOMER社製)
(実施例1)
以下の検討においては、(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、リール状樹脂モールドを作製した。(3)その後、リール状樹脂モールドに対し第2のマスク層及び第1のマスク層をそれぞれ成膜し、コアに対して巻き取ることで微細パタン形成用フィルムロールを作製した。また、微細パタン形成用フィルムロールを巻き出し、所定の長さに裁断することで、微細パタン形成用積層フィルムを作製した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造を形成した。まず円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmの半導体レーザを用い、レジスト層表面を一度露光した。続いて、一度露光されたレジスト層に対し、波長405nmのレーザ光をパルス照射した。次に、露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に凹凸構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの凹凸構造に対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフ(登録商標)HD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフ(登録商標)HD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)リール状樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール状樹脂モールドG1を作製した。続いて、リール状樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にリール状樹脂モールドG2を得た。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように以下に示す材料1を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂モールドG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、リール状樹脂モールドG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、リール状樹脂モールドG2を作製した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、材料1を塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、リール状樹脂モールドG1の凹凸構造面に対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂モールドG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料1… DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
リール状樹脂モールドG2を切り出し、走査型電子顕微鏡により観察を行った。リール状樹脂モールドG2の凹凸構造は、三角格子の交点位置に複数の凹部設けられた、ホール状構造であった。また、平均ピッチは300nmであり、平均開口径は280nm、平均開口率は79%、平均凹部深さは300nmであった。また、凹部の開口径は、凹部底部の径よりも大きく、凹部側面は傾斜を有していた。更に、凸部頂部と凹部側面部と、は連続的に滑らかにつながった構造であった。
(3)微細パタン形成用フィルムロールの作製
リール状樹脂モールドG2の凹凸構造面に対して、下記材料2の希釈液を連続的に塗工し、第1の積層体を作製した。続いて、材料2を凹凸構造内部に内包するリール状樹脂モールドG2の凹凸構造面上に、下記材料3の希釈液を塗工し、第2の積層体を得た。
材料2…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料3…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)
リール状樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料2を、リール状樹脂モールドG2の凹凸構造面上に直接連続的に塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した材料2)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも小さくなるように設定した。材料2の希釈液の固形分濃度は4重量%とした。塗工後、85℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2を凹凸構造内部に内包する第1の積層体を3インチφのコアに巻き取り回収した。
第1の積層体を切り出し、走査型電子顕微鏡を用い断面観察を行ったところ、リール状樹脂モールドG2の凹部内部に材料2が充填されていることが観察された。また、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法を併用することで、リール状樹脂モールドG2の凸部頂上に、材料2が配置されていないことが確認された。ここで、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法の分解能は数nm以下であることから、lcvは数nm以下となる。また、材料2の平均充填量は、深さ換算にて80nmであったことから、lccは220nm(=0.73h)であることが確認された。
続いて、第1の積層体を巻き出すと共に、ダイコータを使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料3を、凹凸構造面上に直接連続的に塗工した。ここで、希釈濃度は、凹凸構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離が400nmになるように計算し実施した。塗工後、85℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、3インチφのコアに対して巻き取り回収し、微細パタン形成用フィルムロールを作製した。
微細パタン形成用フィルムロールを巻き出し、一部を切り出し、透過型電子顕微鏡を用い断面観察を行った。第2のマスク層のリール状樹脂モールドG2に対する配置は、第1の積層体の場合と同様であった。リール状樹脂モールドの平均凸部頂部と第1のマスク層の表面位置と、の距離であるlorは150nmであった。なお、第1のマスク層表面の平均位置は、断面観察像より任意に15点を選択し、それらの平均位置とした。
(4)微細パタン形成用積層フィルムの作製
上記作製した微細パタン形成用フィルムロールを巻き出すと共に、長さ350mmに裁断した。最大された微細パタン形成用積層体を順次積層し、100層重ねて微細パタン形成用積層フィルムとした。
(5)樹脂製ケース
上記作製した微細パタン形成用フィルムロール及び微細パタン形成用積層フィルムを、表1に示すように、樹脂製の袋或いは/及び樹脂製ケースに入れた。なお、以下の説明においては単に第2の積層体と記す。なお、表1の最も左の列は管理番号である。また、最も上の行は梱包に使用した部材を表している。表1中、「〇」のついた部材を使用し梱包している。全てに「〇」のついているNo.4の場合、乾燥材はシート状乾燥材を使用し、乾燥材にて第2の積層体を包んだ。次に、乾燥材に包まれた第2の積層体を樹脂製の袋に入れ、最後に樹脂製の袋ごと樹脂製ケースにいれた。No.3の場合、No.4から樹脂製の袋にいれる作業を省いている。No.2の場合、第2の積層体を直接樹脂製の袋にいれ、樹脂製の袋にいれられた第2の積層体を樹脂製ケースにいれた。No.1においては、第2の積層体を直接樹脂製ケースにいれた。
樹脂製の袋とし、ブラックポリエチレンの袋を使用した。樹脂製ケースとしては、ポリプロピレンからなる樹脂製ケース((株)アパックス製商品名アパコン530)を使用した。また、微細パタン形成用フィルムロールは、コアの両端部を支持し、浮いた状態にて梱包した。微細パタン形成用積層フィルムは、樹脂製ケースに付属の緩衝パッドにより包み、微細パタン形成用積層フィルムが面内方向に移動することを抑制した。
また、比較例として、表1に示すように、梱包を一切行わないもの(比較例1)、樹脂製の袋のみを使用したもの(比較例2)、及び段ボール製のケースにて梱包したもの(比較例3)を作製した。
上記梱包した第2の積層体を使用し、以下の試験を行った。
1.試験1…通気性の良い屋外に、雨の当たらぬ状況にて1月静置した。
2.試験2…500km以上はなれた別の施設へと往復搬送した。
上記2つの試験の評価は以下の通り行った。
評価項目は、「貼合性、転写性、第1のマスク層加工性、被処理体加工性、面内均質性」の5項目とした。
まず、試験1及び試験2の終了後に、第2の積層体を梱包材から取り出した。
(貼合性)
サファイア基材に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、第1のマスク層表面を、サファイア基材に対して貼合した。この時、サファイア基材を105℃に加温した状態で貼合した。続いて、サファイア基材を23度まで自然冷却した。室温に戻ったサファイア基板から、第2の積層体のリール状樹脂モールドを剥離した。
剥離後に、サファイア基材の転写面を、光学顕微鏡を用い観察した。この時、2インチ当たりの異物の数が25個以上ある場合、第1のマスク層が転写付与された面積が2インチφサファイアの60%未満だった場合を評価×とした。
(転写性)
上記(貼合性)と同様に、サファイア基材に第2の積層体を貼り合わせ、続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1000mJ/cm2になるように紫外光を照射した。続いて、モールドを剥離した。剥離後の、サファイア基板を接触式段差系及び原子間力顕微鏡を用い解析した。この時、段差系にて測定されるサファイア上の膜厚が、第1のマスク層及び第2のマスク層の合計膜厚よりも20%以上小さかった場合を評価×とした。また、走査型電子顕微鏡にて第2のマスク層面側を走査し得られた像において、凸部頂部に荒れが観察される場合を評価×とした。
(第1のマスク層加工性)
上記(転写性)にて作製したサンプルにおいて、第2のマスク層面側から酸素ガスを使用したエッチングを行い、サファイア基材表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa、電力300Wの条件にて行った。作製したサンプルを、電子顕微鏡を使用して解析した。この時、第2のマスク層及び第1のマスク層から構成されるピラーの側面部のラフネスが、上記試験を行っていないものに比べ、20%以上悪化している場合を評価×とした。
(被処理体加工性)
上記(第1のマスク層加工性)にて作製したサンプルに対して、第2のマスク層面側からBCl3ガス及び塩素ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。続いて、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造を表面に具備するサファイア基材を得た。得られたサファイア基材に対して、走査型電子顕微鏡を使用し解析を行った。上記試験を行っていないサンプルを使用した場合に対して、サファイア基材上に設けられた凸部の底部形状が、20%以上悪化している場合を評価×とした。
(面内均質性)
上記(被処理体加工性)にて作製したサファイア基材面内に対して、走査型電子顕微鏡観察をランダムに10点行い、凸部の均等性を評価した。上記試験を行っていないものに比べ、10%以上悪化している場合を評価×とした。
以上の結果を表2にまとめた。なお、表2には未記載であるが、実施例1における梱包にしようした部材は全て再利用が可能であることが確認された。
表2からわかるように、少なくとも樹脂製ケースを使用して梱包することにより、第2の積層体の性能を維持できることわかる。
比較例1については、試験1において、第2のマスク層の物性変化と第1のマスク層の物性変化が生じ、特に第1のマスク層の物性変化が顕著であったため、貼合性が大きく減少していた。更に、第2のマスク層の劣化に伴い、酸素アッシング後のアスペクト比の高い微細マスクパタンの表面精度が悪化していることが確認された。また、第1のマスク層の劣化及び第2のマスク層の劣化に伴う、面内均質性も減少した。比較例2及び比較例3についても試験1において同様の結果であった。特に、比較例3の場合、異物が多く観察された。
また、比較例2については、試験2において、搬送時の衝撃に起因すると推定される第1のマスク層の膜厚変動が大きく観察された。このため、貼合性及び面内均質性が低下した。比較例3については、試験2において、第1のマスク層の膜厚変動に加え、異物の混入による、貼合性及び面内均質性の低下が観察された。
(実施例2〜5)
実施例1にて作製した微細パタン形成用フィルムロールを、チューブ状の遮光ポリエチレンで包装してから樹脂製ケースで梱包した。ここで樹脂製ケースとしてはアメリカンロック式ポリプロピレン製箱を使用した。また、結束バンドとしてはPPバンド(幅12mm、引っ張り強度1000N)を使用した。
実施例2では、図22で示されるように、結束バンド402を、固定材403としての接着剤を介して樹脂製ケース401の2枚の底板(折板)401a、401bに接着固定した。
実施例3では、図23で示されるように、結束バンド412を、固定材413としてのガムテープで樹脂製ケース411の2枚の底板(折板)411a、411bに貼り付けて固定した。
実施例4では、図24で示されるように、結束バンド422を、固定材423としてのガムテープを用い、ガムテープが樹脂製ケース421の2枚の底板(折板)421a、421bに跨がるように貼り付け固定していた。
実施例5では、図25で示されるように、結束バンド432を、固定材433としてのガムテープで樹脂製ケース431の底板431aと側面板431cとに貼り付け固定していた。
なお、実施例2〜5のいずれにおいても、樹脂製ケース401、411、421、431の蓋を閉じた後、結束バンド402、412、422、432を、樹脂製ケース401、411、421、431の底面、側面及び蓋面を通るように1周させて巻き、両端をプラスチック製固定具で結合して互いに固定した。
比較例4として、固定材を使用しないこと以外は実施例2と同様に梱包した。
梱包された微細パタン形成用フィルムロールを500km以上離れた別の施設へと送り、送り返し、この時の組底のずれを評価した。比較例4においては、組底にずれが確認された。これに伴い、樹脂製ケース内部の微細パタン形成用フィルムロールも移動していた。一方、実施例2〜5においては、組底のずれ等は観察されなかった。また、実施例2〜5の第2の積層体を実施例1と同様に試験したところ、問題なく使用可能であることが確認された。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。