JP2014125514A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】顔料カーボンブラックと、水と、5−メチルベンゾトリアゾールを少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物。前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンで、コバルトを金属結合材として用いた超硬合金ボールを筆記先端に備え、前記コバルトを超硬合金ボール全量中1〜20重量%の範囲で含有する。
【選択図】なし
Description
そこで、前記問題を解決するために、インキ組成物中に各種化合物を潤滑剤として添加し、水性インキの潤滑性能を向上させることでボール受け座の摩耗を低減する試みがなされている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
また、前記特許文献2で用いられるジカルボン酸のアルカリ塩やアルカノールアミドについても、着色剤として染料を用いたインキに適用した際には効果が得られるものの、ボール受け座の摩耗を促進し易い顔料を用いた場合には、座摩耗を充分に抑制することができず、インキ吐出不良を生じて筆記距離が短くなることがあった。
これらに対して、前記特許文献3で用いられるジカルボン酸モノアミドは、着色剤として染料と顔料を選ぶことなく適用できるものであるが、充分な潤滑効果が得られるものではなく、特に、適用するボールペンのボール径が小径のものでは、筆記距離に対するボールの回転数(回転速度)が増加するため、より過酷な条件となり、筆記距離が長くなることによって座摩耗を生じ易いものとなる。そこでより効果の高い潤滑剤が必要となる。
更に、前記メチルベンゾトリアゾールが5−メチルベンゾトリアゾールであること、前記顔料がカーボンブラックであることを要件とする。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、前記ボールペンがコバルトを金属結合材として用いた超硬合金ボールを筆記先端部に備えること、前記コバルトを超硬合金ボール全量中1〜20重量%の範囲で含有することを要件とする。
また、前記ボールペンがコバルトを金属結合材として用いた超硬合金ボールを筆記先端部に備える場合には、従来の水性インキで生じていた、経時的な金属結合材の溶出に伴うボール腐食を抑制できるため、筆跡にかすれや線飛びを生じることなく、滑らかな筆記感を長期間持続できる水性ボールペンを提供できる。
前記メチルベンゾトリアゾールには、メチル基の位置が異なる4−メチルベンゾトリアゾールと、5−メチルベンゾトリアゾールが存在しており、いずれも潤滑効果を発現するものであるが、少量の添加で高い潤滑効果を発現することから5−メチルベンゾトリアゾールがより好適に用いられる。
尚、前記メチルベンゾトリアゾールは、水性媒体への添加前、又は、インキ組成中で、アルカリ金属やアミンと反応させて塩とすることで、水性媒体への溶解安定性が向上され、析出等の発生が長期的に抑制できるものとなる。
前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が用いられ、前記アミンとしては、アンモニアや第一級、第二級、第三級のアルカノールアミンが用いられる。
0.1重量%未満では所望の潤滑効果が得られ難く、また、5重量%を越えて配合しても効果の向上は見られないため、これ以上の添加は要さない。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
特に、前記顔料の中でもカーボンブラックは、前述の座摩耗を促進させ易いため、本発明のインキ組成がより有効なものとなる。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができ、酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、α−トコフェロール、カテキン類、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、α−リポ酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素等を添加して化学的に気泡を除去することもできる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
更に、他の潤滑剤を併用することができ、例えば、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、β−アラニン型界面活性剤、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100〜800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、ポリN−ビニルカルボン酸アミド、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等からなる汎用のものが適用でき、直径0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.15mm〜1.0mmの範囲のものが好適に用いられる。特に、ボール径が0.4mm以下の小径のものでは、筆記距離に対するボールの回転数が多くなることから、本発明のインキがより好適に作用する。そのため、ボール径がより小さい0.38mm、0.35mm、0.3mm、0.28mm、0.25mm、0.18mm等、小さくなるにつれて本発明のインキは非常に有利に作用する。
また、前記ボールの材質のうち、硬度が高い超硬合金ボールは座摩耗を生じやすいため、特に本発明の水性インキ組成物が有用なものとなる。
一般に、前記結合材としてコバルトを用いたものは、ボール表面の平滑性が高く、筆記摩擦を生じ難いため、広く適用されているが、特に顔料を用いた系では、コバルトが水性インキ中に溶出し易いため、タングステンカーバイドが脱落したり、インキ中に析出した結晶体が付着する等のボール腐食状態となり易いものである。その結果、ボール受け座に接触した状態でボールが回転すると受け座の摩耗が激しくなるので、筆記感が損なわれたり、軸方向のボールとボール抱持部の間隙(クリアランス)が大きくなりインキ流出量が増大して筆跡が太くなったり、線飛びが発生する等の不具合が生じ易くなる。しかしながら、本発明の水性インキを適用した場合、インキ中へのコバルトの溶出を抑制できるため、前記不具合が生じ難くなるとともに、先の潤滑効果と相まって高い筆記性能を発現できるものとなる。
従って、本発明で適用される水性インキ組成物は、ボール腐食を生じ易い、結合材としてコバルトを用いた超硬合金ボールを備えたボールペンに内蔵することで、非常に高い潤滑効果が発現されるため、極めて有用なものとなる。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを外軸内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
尚、前記出没式ボールペンは、外軸内に一本のボールペンレフィルを収容したもの以外に、複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
(1)冨士色素(株)製、商品名:フジSPブラック8065(固形分:25%)
(2)冨士色素(株)製、商品名:フジSPレッド5585(固形分:20%)
(3)山陽色素(株)製、商品名:サンダイスーパーブラックC(固形分:30%)
(4)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T1:−20℃、T2:−9℃、T3:40℃、T4:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、黒色から無色に色変化する)
(5)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(6)エレメンティスジャパン社製、商品名:レオレート1
(7)三晶(株)製、商品名:レオザン
水に顔料を除く各成分を添加してビヒクルとし、顔料を加えて20℃で、ディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、剪断減粘性付与剤を加えて更に1時間攪拌することで各インキを調製した。
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例1,2,4及び比較例1,2,4のインキ組成物0.9gを、直径0.4mmのタングステンカーバイドを主成分とするボール(WC−Co系超硬合金ボール)を抱持するステンレススチール製チップ(ボール押しバネを収容する)がポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(出没式)に組み込み、試料ボールペンを作製した。
前記実施例3及び比較例3のインキ組成物を、直径0.5mmの超硬合金ボール(WC−Co系超硬合金ボール)を抱持するペン先を有するペン芯式ボールペン(パイロットコーポレーション社製、Hi−TecpointV5)外装のインキ貯蔵部に2.0g充填し、キャップを嵌合することで試料ボールペンを作製した。
ボール腐食試験
調製した各インキ5gをサンプル瓶に移し取り、試料ボールペンに用いたものと同じ組成からなる超硬合金ボール(WC−Co系:Co含有率10%)を浸漬させて蓋をした後、50℃の環境下に30日間放置した。その後、室温にて光学顕微鏡(倍率1000倍)で各ボール表面の状態を確認した。
筆記可能であることを確認した試料ボールペンについて、作製直後のものと、横置きで50℃の環境下に60日間放置したものを、自動筆記試験機にて、旧JIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記し、筆跡の状況と、充填されるインキが完全に消費できるかどうか確認した。尚、前記試験機は、筆記荷重100g、筆記角度70°、筆記速度4m/分の条件で使用した。
前記各試験の結果を以下の表に示す。
ボール腐食試験
○:初期と変化なし。
×:初期と比較して表面が粗い、又は、析出や付着物あり。
筆記試験
○:良好な筆跡が形成でき、内蔵するインキを全て書き切ることができた。
×:筆跡に線飛びやカスレが発生し、途中で筆記できなくなりインキが残った。
Claims (6)
- 顔料と、水と、メチルベンゾトリアゾールを少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物。
- 前記メチルベンゾトリアゾールが5−メチルベンゾトリアゾールである請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記顔料がカーボンブラックである請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
- 前記ボールペンがコバルトを金属結合材として用いた超硬合金ボールを筆記先端部に備える請求項4記載のボールペン。
- 前記コバルトを超硬合金ボール全量中1〜20重量%の範囲で含有する請求項5記載のボールペン。
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