JP2014124844A - 1軸延伸多層積層フィルム、それからなる偏光板、液晶表示装置用光学部材及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムにおいて、該第1層は(i)ジカルボン酸成分としてナフトエ酸成分を含む特定のジカルボン酸成分を5モル%以上50モル%以下、ならびにフェニレン基もしくはナフタレンジイル基を有するジカルボン酸成分を含有し、(ii)ジオール成分として炭素数2〜10のアルキレン基を有するジオール成分を含有するポリエステルからなる層で、第2層は90℃以上のガラス転移温度を有する共重合量5モル%以上90モル%以下の共重合ポリエステルからなる平均屈折率1.50以上1.60以下かつ光学等方性の層であり、該1軸延伸多層積層フィルムの固有粘度が0.55dl/g以上0.75dl/g以下である1軸延伸多層積層フィルムにより達成される。
【選択図】なし
Description
一方、液晶セルに貼りあわされる偏光板についても、外光を利用した反射表示やバックライトを利用した透過表示など、表示装置に利用する光の種類や目的などに応じて、吸収型偏光板と反射型偏光板とを組み合わせた種々の積層構成が検討されるようになっている。
また特許文献3には、可撓性を有する基板間に液晶を挟持した液晶セルに偏光板として吸収型偏光板と反射型偏光板を用いる際、各偏光板の温度変化に伴う伸縮量が相違するために生じる反りを解消するため、これら偏光板を組み合わせ、特定の積層構成にすることで反りを解消することが提案されている。そして反射型偏光板の一例として複屈折性の誘電体多層膜を用いることが記載されており、具体的には輝度上昇フィルムが開示されている。
一方、液晶表示装置は場合によって高温高湿下に長時間さらされることがあり、偏光板に対しても過酷な環境下でも安定した性能が求められるようになってきている。例えば特許文献5には、高屈折率層に2,6−PEN、低屈折率層にt−ブチルーイソフタル酸などのガラス転移温度を高くしながら屈折率を低くする効果のあるポリマーを用いることで、反射を向上させ、さらに耐熱性を備えた構成が開示されている。
一方、低屈折率層に共重合ポリエステルを用いた1軸延伸多層積層フィルムの場合、製造工程や使用環境における高温下で低屈折率層を構成する共重合ポリエステルが結晶化しやすく、偏光度に影響を与えるようなヘイズ変化が生じる可能性があること、また一方向は延伸処理が行われていないため、未延伸方向の耐引き裂き性が低下しやすいことが新たに見出され、かかる課題の解決が望まれている。
1)該第1層がジカルボン酸成分とジオール成分との芳香族ポリエステルからなり、
(i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分、および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
(ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有し、
2)該第2層は90℃以上のガラス転移温度を有する共重合量5モル%以上90モル%以下の共重合ポリエステルからなり、平均屈折率1.50以上1.60以下かつ光学等方性の層であって、
3)該1軸延伸多層積層フィルムの固有粘度が0.55dl/g以上0.75dl/g以下
である1軸延伸多層積層フィルムによって達成される。
1)該第1層がジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステルからなり、
(i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される酸成分、および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
(ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有し、
2)該第2層は90℃以上のガラス転移温度を有する共重合量5モル%以上90モル%以下の共重合ポリエステルからなり、平均屈折率1.50以上1.60以下かつ光学等方性の層であって、
3)該1軸延伸多層積層フィルムの固有粘度が0.55dl/g以上0.75dl/g以下である。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有する1軸延伸されたフィルムであり、本発明において、第1層は第2層より屈折率の高い層、第2層は第1層より屈折率の低い層をそれぞれ表す。また、延伸方向(X方向)の屈折率はnX、延伸方向と直交する方向(Y方向)の屈折率はnY、フィルム厚み方向(Z方向)の屈折率はnZと記載することがある。
後述する特定のポリエステルを用いて第1層を構成することにより、延伸後の第1層のX方向とY方向の屈折率差を従来より大きくすることが可能となり、かつY方向とZ方向の両方向について第1層と第2層との層間における屈折率差を小さくすることができる。そのため、第1層としてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートホモポリマーや、イソフタル酸やテレフタル酸などの汎用される共重合成分を用いたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートコポリマーを用いた1軸延伸多層積層フィルムに較べて偏光性能が大きく向上し、また斜め方向の入射光に対する透過偏光の色相ずれも向上する。
本発明における第1層は、特定構造の共重合成分をジカルボン酸成分に有する芳香族ポリエステル(以下、芳香族ポリエステル(I)と称することがある)からなる。かかる芳香族ポリエステルは、以下に詳述するジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合によって得られる。
本発明において芳香族ポリエステル(I)を構成するジカルボン酸成分(i)として、5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分、および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分で表わされる少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸成分が用いられる。ここで、各芳香族ジカルボン酸成分の含有量は、ジカルボン酸成分の全モル数を基準とする含有量である。
式(A)で表される成分の含有量の下限値は、好ましくは7モル%、より好ましくは10モル%、さらに好ましくは15モル%である。また、式(A)で表される成分の含有量の上限値は、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%、特に好ましくは30モル%である。
式(A)で表される成分は、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。これらの中でも式(A)におけるRAの炭素数が偶数のものが好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。
このように、式(A)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、反射偏光フィルムとしての偏光性能が従来より高い1軸延伸多層積層フィルムを製造することができ、さらに斜め方向の入射角による偏光の色相ずれを抑制することができる。
式(B)で表される成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。
式(B)で表される成分の含有量の下限値は、好ましくは55モル%、より好ましくは60モル%、さらに好ましくは65モル%、特に好ましくは70モル%である。また、式(B)で表される成分の含有量の上限値は、好ましくは93モル%、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは85モル%である。
式(B)で示される成分の割合が下限値に満たない場合は、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおけるX方向の屈折率nXとY方向の屈折率nYとの差異が小さくなるため、X方向における第1層と第2層との層間の屈折率差を大きくできず、P偏光成分について十分な反射性能が得られない。また、式(B)で示される成分の割合が上限値を超える場合は、式(A)で示される成分の割合が相対的に少なくなるため、延伸フィルムにおけるY方向の屈折率nYとZ方向の屈折率nZの差異が大きくなり、偏光性能が低下し、また斜め方向の入射角で入射した偏光について色相ずれが生じやすくなる。
このように、式(B)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、X方向に高屈折率を示すと同時に1軸配向性の高い複屈折率特性を実現できる。
本発明において芳香族ポリエステル(I)を構成するジオール成分(ii)として、90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分が用いられる。ここで、ジオール成分の含有量は、ジオール成分の全モル数を基準とする含有量である。
式(C)中、RCは炭素数2〜10のアルキレン基であり、かかるアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも式(C)で表されるジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が好ましく挙げられ、特に好ましくはエチレングリコールである。式(C)で示されるジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が損なわれる。
芳香族ポリエステル(I)において、式(A)で表される酸成分と式(C)で表されるジオール成分で構成されるエステル単位(−(A)−(C)−)の含有量は、全繰り返し単位の5モル%以上50モル%以下であり、好ましくは5モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上40モル%以下である。
一方、本発明における芳香族ポリエステル(I)のジオール成分は脂肪族成分であるため、ジオール成分が第1層の屈折率特性に与える影響は上述のジカルボン酸成分に較べて小さい。
芳香族ポリエステル(I)は、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.5dl/g、特に好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また本発明の屈折率特性が発現し難い。
一般的に共重合体は単独重合体に比べて融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明のポリエステルは、式(A)の成分および式(B)の成分を含有する共重合体であり、式(A)の成分のみを有する単独重合体に比べて融点が低いものの機械的強度は同程度であるという優れた特性を有する。
かかる芳香族ポリエステル(I)の製造方法は、例えば国際公開第2008/153188号パンフレットの第9頁に記載されている方法に準じて製造することができる。
芳香族ポリエステル(I)を1軸延伸した場合の各方向の屈折率の変化例を図2に示す。図2に示すように、X方向の屈折率nXは延伸により増加する方向にあり、Y方向の屈折率nYとZ方向の屈折率nZはともに延伸に伴い低下する方向にあり、しかも延伸倍率によらずnYとnZの屈折率差が非常に小さいことを特徴としている。
また第1層は、かかる特定の共重合成分を含む芳香族ポリエステル(I)を用いて1軸延伸を施すことにより、X方向の屈折率nXが1.80〜1.90の高屈折率特性を有する。第1層におけるX方向の屈折率がかかる範囲にあることにより、第2層との屈折率差が大きくなり、十分な反射偏光性能を発揮することができる。
一方、第1層を構成するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合、図1に示すように、1軸方向の延伸倍率によらず、Y方向の屈折率nYは一定で低下がみられないのに対し、Z方向の屈折率nZは1軸延伸倍率の増加に伴い屈折率が低下する。そのためY方向の屈折率nYとZ方向の屈折率nZの差が大きくなり、偏光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれが生じやすくなる。
<第2層の共重合ポリエステル>
本発明において、1軸延伸多層積層フィルムの第2層は90℃以上のガラス転移温度を有する共重合量5モル%以上90モル%以下の共重合ポリエステルからなり、平均屈折率1.50以上1.60以下かつ光学等方性の層である。
第2層についての平均屈折率は、第2層を構成する共重合ポリエステルを単独で溶融させ、ダイより押出して未延伸フィルムを作成し、1軸方向に120℃で5倍延伸を行って1軸延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、それらの平均値を平均屈折率として規定したものである。
また、光学等方性とは、これらX方向、Y方向、Z方向の屈折率の2方向間の屈折率差がいずれも0.05以下、好ましくは0.03以下であることをいう。
かかる屈折率特性を有する非晶性の共重合ポリエステルとして、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、またはこれらのブレンドであって、共重合成分が脂環族ジオールである共重合ポリエステルが好ましく、中でも共重合成分が脂環族ジオールである共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記共重合ポリエステルの共重合成分として用いられる脂環族ジオールは、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノールおよびシクロへキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらにこれら脂環族ジオールに加えて、第1層との屈折率との関係を調整しつつ、上記のガラス転移温度とするために、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のうち、主たる酸成分以外の酸成分を共重合成分として用いてもよい。第2層の共重合ポリエステルとして、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸およびスピログリコールを共重合したエチレンテレフタレート成分を主たる成分とするポリエステルが好ましい。スピログリコールはシクロヘキサンジメタノールといった他の脂環族グリコール成分に比べて結晶拘束力が高く、90℃×1000時間の長期熱処理の際に第2層の結晶化によるヘーズアップを抑制する点で好ましい。また、共重合成分が芳香族ジカルボン酸1種または2種である共重合ポリエステルであってもよく、ナフタレンジカルボン酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましく、その共重合量はガラス転移温度が90℃以上となるよう調整される。なお、脂環族ジオールを共重合成分とする方が第1層のポリエステルとの屈折率の関係をより調整しやすい。
ここで、本発明において第2層を構成する共重合ポリエステルの共重合量について、共重合ポリエチレンテレフタレートを例に説明すると、第2層を構成するポリエステルの繰り返し単位を100モル%とした場合の従たる共重合成分の割合で表される。また従たる成分とは、ジオール成分におけるエチレングリコール成分と、ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸成分とを除く成分の合計量で表される。
なお、第2層を構成する共重合ポリエステルのガラス転移温度は、フィルムにする前の段階から90℃以上である必要はなく、延伸処理後に90℃以上になっていれば良い。例えば、2種以上のポリエステルをブレンドし、これらを溶融混練時にエステル交換させたものであってもよい。
第2層の共重合ポリエステルは、o−クロロフェノール溶液を用いて35℃で測定した固有粘度が0.55〜0.75dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.60〜0.70dl/gである。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、フィルムの巻取り性を向上させるために、少なくとも一方の最外層に平均粒径が0.01μm〜2μmの不活性粒子を、層の重量を基準として0.001重量%〜0.5重量%含有することが好ましい。不活性粒子の平均粒径が下限値よりも小さいか、含有量が下限値よりも少ないと、多層延伸フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限値を超えるか、平均粒径が上限値を超えると、粒子による多層延伸フィルムの光学特性の低下が生じることがある。好ましい不活性粒子の平均粒径は、0.02μm〜1μm、特に好ましくは0.1μm〜0.3μmの範囲である。また、好ましい不活性粒子の含有量は、0.02重量%〜0.2重量%の範囲である。
不活性粒子は、最外層のみならず、最外層と同じ樹脂で構成される層中に含まれていてもよく、例えば第1層または第2層の少なくとも一方の層中に含まれていてもよい。または、第1層、第2層と異なる別の層を最外層として設けてもよく、またヒートシール層を設ける場合は該ヒートシール層中に不活性粒子が含まれていてもよい。
(積層数)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1層および第2層が交互に合計251層以上積層されていることが好ましい。積層数が251層未満であると、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmにわたり一定の平均反射率が得られないことがある。
積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性など観点から2001層以下が好ましいが、目的とする平均反射率特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、501層、301層であってもよい。
第1層および第2層の各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下である。また第1層の各層の厚みは、好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、第2層の各層の厚みは、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下である。各層の厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、液晶表示装置の反射型偏光板として用いる場合には、その反射波長帯は可視光域から近赤外線領域であることが好ましく、第1層および第2層の各層の厚みをかかる範囲とすることにより、かかる波長域の光を層間の光干渉によって選択的に反射することが可能となる。一方、層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になる。他方、層厚みが0.01μm未満であると、ポリエステル成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層および第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率がいずれも2.0以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上4.0以下、さらに好ましくは2.0以上3.5以下、特に好ましくは2.0以上3.0以下である。かかる層厚みの比率は、具体的には最小層厚みに対する最大層厚みの比率で表わされる。第1層、第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
多層積層フィルムは、層間の屈折率差、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された第1層および第2層のそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができず、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmの幅広い波長帯にわたって均一に平均反射率を高めることができないため、厚みの異なる層を用いることが好ましい。
第1層および第2層の層厚みは、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1層および第2層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムにおける多層構造を積層する方法は特に限定されないが、例えば、第1層用ポリエステルを137層、第2層用熱可塑性樹脂を138層に分岐させた第1層と第2層が交互に積層され、その流路が連続的に2.0〜5.0倍までに変化する多層フィードブロック装置を使用する方法が挙げられる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比が0.5倍以上2.0倍以下の範囲であることが好ましい。第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の下限値は、より好ましくは0.8である。また、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の上限値は、より好ましくは1.5である。最も好適な範囲は、1.1以上1.3以下である。
第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比を最適な厚み比にすることにより多重反射による光漏れを最小化できる。ここでいう最適な厚み比とは、(第1層の延伸方向の屈折率)×(第1層の平均層厚み)で表される値と、(第2層の延伸方向の屈折率)×(第2層の平均層厚み)で表される値(光学厚さ)とが均等になる厚みであり、本発明の各層の屈折率特性から換算すると、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の好ましい範囲は1.1〜1.3程度である。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、かかる第1層、第2層以外に、層厚みが2μm以上の中間層を第1層と第2層の交互積層構成の内部に有していてもよい。該中間層は本発明において内部厚膜層などと称することがあるが、本発明において交互積層構成の内部に存在する厚膜の層を指す。また、本発明において、多層積層フィルムの製造の初期段階で300層以下の交互積層体の両側に厚膜の層(厚み調整層、バッファ層と称することがある)を形成し、その後ダブリングにより積層数を増やす方法が好ましく用いられるが、その場合はバッファ層同士が2層積層されて中間層が形成される。
かかる厚みの中間層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有することにより、偏光機能に影響をおよぼすことなく、第1層および第2層を構成する各層厚みを均一に調整しやすくなる。かかる厚みの中間層は、第1層、第2層のいずれかと同じ組成、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよく、層厚みが厚いため、反射特性には寄与しない。一方、透過する偏光には影響することがあるため、層中に粒子を含める場合は既述の粒子濃度の範囲内であることが好ましい。該中間層は該層の重量を基準として10ppm以上2000ppm以下の可視光吸収剤を含有してもよい。
中間層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、277層の積層構造の両端に厚膜層(バッファ層)を設け、それをレイヤーダブリングブロックと呼ばれる分岐ブロックを用いて、2分割し、それらを再積層することで内部厚膜層(中間層)を1層設けることができる。同様の手法で3分岐、4分岐することにより中間層を複数設けることもできる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を満足するために、少なくとも1軸方向に延伸されている。本発明における1軸延伸には、1軸方向にのみ延伸したフィルムの他、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムも含まれる。1軸延伸方向(X方向)は、フィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。また、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムの場合は、より延伸される方向(X方向)はフィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよく、延伸倍率の低い方向は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが偏光性能を高める点で好ましい。2軸方向に延伸され、一方向により延伸されたフィルムの場合、偏光や屈折率との関係での「延伸方向」とは、より延伸された方向を指す。
延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
第1層と第2層のX方向の屈折率差は0.10〜0.45であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.40、特に好ましくは0.25〜0.30である。X方向の屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができ、より少ない積層数で高い反射率を得ることができる。
また、第1層と第2層のY方向の屈折率差および第1層と第2層のZ方向の屈折率差は、それぞれ0.05以下であることが好ましい。Y方向およびZ方向それぞれの層間の屈折率差がともに上述の範囲にあることにより、偏光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれを抑制することができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、固有粘度が0.55dl/g以上0.75dl/g以下であり、好ましくは0.57dl/g以上0.70dl/g以下である。フィルムの固有粘度が下限値に満たないと、未延伸方向における引裂き強度が低下し、1軸延伸多層積層フィルム製膜時または液晶表示装置用光学部材製造時の工程で破断を起こしやすくなる。一方、フィルムの固有粘度が上限値を超えると溶融粘度が上昇するため、単位時間に押出せる樹脂量が減ってしまい生産性を落とす他、押出しの際のせん断発熱が大きくなり、樹脂温度の上昇による分解が無視できなくなる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、引裂き強度が7.5N/mm以上であることが好ましく、さらに8.0N/mm以上であることがより好ましい。引裂き強度が下限に満たないと、1軸延伸多層積層フィルム製膜時または液晶表示装置用光学部材の製造工程で破断を起こしやすくなる。かかる引裂き強度は、フィルムの固有粘度を上述の範囲にすることによって達成される。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、90℃×1000時間熱処理した後のヘーズと処理前のヘーズとの差が2.0%以下であることが好ましく、さらに1.0%以下であることがより好ましい。かかるヘーズ特性を有することにより、熱処理後も光学特性の変化が小さく、液晶表示装置に用いた場合に、高温環境下でも偏光性能の変化が小さく好適に使用することができる。上記の熱処理前後のヘーズ差が上限値を超える場合は、ヘーズによる散乱光の影響で熱処理後の偏光性能が熱処理前の偏光性能よりも低下しやすい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、下記式(1)で表される偏光度(P%)が99.5以上であることが好ましく、さらに好ましくは99.6%以上、特に好ましくは99.7%以上である。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
また本発明における偏光度の測定は偏光度測定装置を用いて測定することができる。
多層構造のフィルムでありながらかかる偏光度特性を達成するためには、1軸延伸多層積層フィルムを構成する第1層(高屈折率層)および第2層(低屈折率層)として本発明の特定のポリエステルをそれぞれ用いることが挙げられ、さらに該1軸延伸多層積層フィルムが光干渉に影響しない一定厚さの中間層を有し、かかる中間層に一定量の可視光吸収剤を含有させてもよい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムの400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率Tsは60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明におけるS偏光の平均透過率は、1軸延伸多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均透過率を表している。
かかるS偏光成分の透過率特性を得るためには、本発明の1軸延伸多層積層フィルムのY方向における第1層および第2層の屈折率差が0.05以下であること、また中間層中に可視光吸収剤を配合する場合は、その含有量が上限値を超えないことが挙げられる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、98%以上100%以下であることが好ましい。
P偏光成分に対する平均反射率がこのように高いことにより、P偏光の透過量を従来よりも抑えてS偏光を選択的に透過させる高い偏光性能が発現し、本発明の高偏光度が得られ、吸収型偏光板を併用することなく単独で液晶セルに隣接する偏光板として用いることができる。同時に、透過軸と直交方向のP偏光が該反射偏光フィルムに吸収されずに高度に反射されることにより、かかる反射光を再利用させる輝度向上フィルムとしての機能も兼ね備えることができる。
つぎに、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの製造方法について詳述する。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層を構成するポリエステルと第2層を構成するポリエステルとを溶融状態で交互に重ね合わせて合計で300層以下の交互積層体を作成し、その両面に膜厚の層(バッファ層)を設け、レイヤーダブリングと呼ばれる装置を用いて該バッファ層を有する交互積層体を例えば2〜4分割し、該バッファ層を有する交互積層体を1ブロックとしてブロックの積層数(ダブリング数)が2〜4倍になるように再度積層する方法で積層数を増やすことができる。かかる方法により、多層構造の内部にバッファ層同士が2層積層された中間層を有する1軸延伸多層積層フィルムを得ることができる。
上述した方法で所望の積層数に積層化された多層未延伸フィルムは、製膜方向、またはそれに直交する幅方向の少なくとも1軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1層の熱可塑性樹脂のガラス転移点の温度(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、またフィルムの配向特性を高度に制御するためにはさらに(Tg)〜(Tg+30)℃の範囲が好ましい。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、多層構造の反射偏光フィルムでありながら、高偏光度と、透過されない偏光を反射させて再利用できる輝度向上フィルムとしての機能とを備えているため、吸収型偏光板を併用することなく、単独で液晶セルに隣接して用いられる液晶表示装置偏光板として用いることができる。
本発明には、本発明の1軸延伸多層積層フィルムからなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層された液晶表示装置用光学部材も発明の一態様として含まれる。かかる光学部材は、液晶パネルとも称される。かかる光学部材は図4における5に相当し、第1の偏光板は3、液晶セルは2、第2の偏光板は1に相当する。
従来は液晶セルの両側の偏光板として、吸収型偏光板を少なくとも有することにより、高い偏光性能が得られていたところ、本発明の1軸延伸多層積層フィルムを用いた偏光板であれば、従来の多層積層フィルムでは到達できなかった高偏光性能が得られるため、従来の吸収型偏光板に代えて液晶セルと隣接して用いられる偏光板として用いることができるものである。
液晶セルの種類は特に限定されず、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)など、任意のタイプのものを用いることができる。
また、第2の偏光板の種類は特に限定されず、吸収型偏光板、反射型偏光板のいずれも用いることができる。第2の偏光板として反射型偏光板を用いる場合、本発明の1軸延伸多層積層フィルムを用いることが好ましい。
本発明の液晶表示装置用光学部材は、第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層されることが好ましく、これらの各部材同士は直接積層されてもよく、また粘着層や接着層と称される層間の接着性を高める層(以下、粘着層と称することがある)、保護層などを介して積層されてもよい。
液晶セルに偏光板を配置する方法としては、両者を粘着層によって積層することが好ましい。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤のように透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を有し、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましい。また、粘着層は異なる組成又は種類の層を複数設けてもよい。
液晶セルと偏光板とを積層する際の作業性の観点において、粘着層は、予め偏光板、あるいは液晶セルの一方または両方に付設しておくことが好ましい。粘着層の厚みは、使用目的や接着力等に応じて適宜決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
また、粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的として離型フィルム(セパレータ)が仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。離型フィルムとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などを、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの剥離剤でコート処理したものを用いうる。
本発明には、光源と本発明の液晶表示装置用光学部材とを備え、第1の偏光板が光源側に配置されてなる液晶表示装置(以下、液晶ディスプレイと称することがある)も発明の一態様として含まれる。
図4に本発明の実施形態の1つである液晶表示装置の概略断面図を示す。液晶表示装置は光源4および液晶パネル5を有し、さらに必要に応じて駆動回路等を組込んだものである。液晶パネル5は、液晶セル2の光源4側に第1の偏光板3を備える。また、液晶セル2の光源側と反対側、すなわち、視認側に第2の偏光板1を備えている。液晶セル2としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)などの任意なタイプのものを用いうる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムからなる第1の偏光板は、従来の吸収型偏光板に匹敵する高い偏光性能と、透過されない偏光を反射させて再利用できる輝度向上フィルムとしての機能とを備えるため、光源4と第1の偏光板3との間にさらに輝度向上フィルムとよばれる反射型偏光板を用いる必要がなく、輝度向上フィルムと液晶セルに貼り合せる偏光板の機能を一体化させることができるため、部材数を減らすことができる。
また、通常は図4に示すように、液晶セル2の視認側に第2の偏光板1が配置される。第2の偏光板1は特に制限されず、吸収型偏光板など公知のものを用いることができる。外光の影響が非常に少ない場合には、第2の偏光板として第1の偏光板と同じ種類の反射型偏光板を用いてもかまわない。また、液晶セル2の視認側には、第2の偏光板以外にも、例えば光学補償フィルム等の各種の光学層を設けることができる。
液晶表示装置用光学部材(液晶パネル)と光源とを組合せ、さらに必要に応じて駆動回路等を組込むことによって本発明の液晶表示装置が得られる。また、これら以外にも液晶表示装置の形成に必要な各種部材を組合せることができるが、本発明の液晶表示装置は光源から射出される光を第1の偏光板に入射させるものであることが好ましい。
一般に液晶表示装置の光源は、直下方式とサイドライト方式に大別されるが、本発明の液晶表示装置においては、方式の限定なく使用可能である。
なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
各層を構成する個々の樹脂について、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストしたフィルムをそれぞれ用意した。また、得られたフィルムを120℃にて一軸方向に5倍延伸した延伸フィルムを用意した。得られたキャストフィルムと延伸フィルムについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、延伸前、延伸後の屈折率とした。
第1層を構成するポリエステルの平均屈折率については、延伸前のそれぞれの方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。また第2層を構成するポリエステルの平均屈折率については、延伸後のそれぞれの方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。
得られた1軸延伸多層積層フィルムについて偏光度測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いてP偏光の透過率、S偏光の透過率、および偏光度を測定した。
偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をP偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をS偏光としたときの偏光度(P%、単位%)は以下の式で表される。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
なお、測定光の入射角は0度に設定して測定を行った。
第2層試料を10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で、融点およびガラス転移点を測定した。
フィルムの各層について、1H−NMR測定よりポリエステルの成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
1軸延伸多層積層フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
1μm以上の厚さの層について、多層構造の内部に存在しているものを中間層、最表層に存在しているものを最外層とし、それぞれの厚みを測定した。また中間層が複数存在する場合は、それらの平均値より中間層厚みを求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率、第2層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層の平均層厚み、第2層の平均層厚みをそれぞれ求め、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みを算出した。
なお、第1層と第2層の厚みを求めるに際し、中間層および最外層は第1層と第2層から除外した。
フィルムサンプルをスピンドル検出器(安立電電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用して、下式(2)より1軸延伸多層積層フィルムの90℃×1000hr熱処理前後のヘーズの差、ΔHzを測定した。
ΔHz=(90℃×1000hr熱処理後のヘーズ)−(90℃×1000hr熱処理前のヘーズ) ・・・(2)
◎:1.0%以下
○:1.0%より大きく2.0%以下
△:2.0%より大きく5.0%以下
×:5.0%より大きい
第1層用のポリエステルについては重量比が6:4のP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解後、35[℃]の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
第2層用のポリエステルとフィルムについては、o−クロロフェノール溶液に溶解後、35[℃]の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100[ml]あたりの溶解ポリマー重量[g/100ml]、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
JIS K−7128 に準じ、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、引張速度200mm/minの速度で引裂き強度を測定した。試験はA法(トラウザー引裂法)にておこなった。測定はフィルムの縦方向(MD)および横方向(TD)でおこない、引裂き方向に完全に引裂けたもののみ値を採用し、途中で違う方向に裂けたり、フィルムが破断したりしたものについては値なし「−」とした。
パソコンの表示ディスプレイとして得られた液晶表示装置を用い、パソコンにより白色表示したときの液晶表示装置の画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、参考例1に対する輝度の上昇率を算出し、輝度向上効果を下記の基準で評価した。
◎: 輝度向上効果が160%以上
○: 輝度向上効果が150%以上、160%未満
△: 輝度向上効果が140%以上、150%未満
×: 輝度向上効果が140%未満
パソコンの表示ディスプレイとして得られた液晶表示装置を用い、パソコンにより白色および黒画面を表示したときの液晶表示装置の画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、白画面より明輝度を、また黒画面より暗輝度をそれぞれ求め、明輝度/暗輝度より求められるコントラストを以下の基準で評価した。
◎: コントラスト(明輝度/暗輝度) 2000以上
○: コントラスト(明輝度/暗輝度) 1000以上2000未満
×: コントラスト(明輝度/暗輝度) 1000未満
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.63dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(表中、PENと記載)、酸成分の35モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分(表中、ENAと記載)、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステルを第1層用ポリエステルとし、第2層用ポリエステルとして固有粘度0.70dl/gの2,6−ナフタレンジカルボン酸30mol%、スピログリコール20mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(NDC30SPG20PET)を準備した。
この多層未延伸フィルムを120℃の温度で幅方向に5.2倍に延伸し、さらに120℃で同方向に15%延伸しながら120℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた1軸延伸多層積層フィルムの厚みは105μmであった。
後述する参考例1において、光源側の第1の偏光板として偏光板Xに代えて、得られた1軸延伸多層積層フィルムを用いた以外は参考例1と同様にして、液晶セルの光源側主面に得られた1軸延伸多層積層フィルム(第1の偏光板)、視認側主面に偏光板X(第2の偏光板)が配置された液晶パネルを得た。
上記の液晶パネルを元の液晶ディスプレイに組込み、液晶表示装置の光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面の輝度を評価した。
このようにして得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴、1軸延伸多層積層フィルムの物性および液晶表示装置の物性を表1に示す。
表1に示すとおり、各層の樹脂組成を変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムを得た。
実施例2、3はフィルムの固有粘度が異なる例であり、実施例2は第2層のポリエステルの固有粘度を0.60dl/gに変更し、実施例3は第2層のポリエステルの固有粘度を0.75dl/gに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。
実施例と同様に表1に示すとおり、樹脂組成を変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムを得、かかるフィルムを第1の偏光板として液晶パネルを形成し、液晶表示装置を作成した。なお、比較例1はフィルムの固有粘度が異なる例であり、第2層のポリエステルの固有粘度を0.50dl/gに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。このようにして得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴、また1軸延伸多層積層フィルムの物性および液晶表示装置の物性を表1に示す。
(偏光子の作成)
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ製 商品名「9P75R(厚み:75μm、平均重合度:2,400、ケン化度99.9モル%)」]を周速の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。まず、30℃の水浴中に1分間浸漬させてポリビニルアルコールフィルムを膨潤させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、30℃のヨウ化カリウム濃度0.03重量%、ヨウ素濃度0.3重量%の水溶液中で1分間浸漬することで、染色しながら搬送方向に、全く延伸していないフィルム(原長)を基準として3倍に延伸した。次に60℃のホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%の水溶液中に30秒間浸漬しながら、搬送方向に原長基準で6倍に延伸した。次に、得られた延伸フィルムを70℃で2分間乾燥することで偏光子を得た。なお、偏光子の厚みは30μm、水分率は14.3重量%であった。
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5%モル%、アセトアセチル化度5モル%)100重量部に対して、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%の水溶液を調製した。この水溶液100重量部に対して、正電荷を有するアルミナコロイド(平均粒子径15nm)を固形分濃度10重量%で含有する水溶液18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤溶液の粘度は9.6mPa・sであり、pHは4〜4.5の範囲であり、アルミナコロイドの配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して74重量部であった。
厚み80μm、正面レターデーション0.1nm、厚み方向レターデーション1.0nmの光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」の片面に、上記のアルミナコロイド含有接着剤を、乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布し、これを上記の偏光子の片面に両者の搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。続いて、偏光子の反対側の面にも同様にして光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」)の片面に上記のアルミナコロイド含有接着剤を乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布したものを、これらの搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。その後55℃で6分間乾燥させて偏光板を得た。この偏光板を「偏光板X」とする。
VAモードの液晶セルを備え、直下型のバックライトを採用した液晶テレビ(シャープ製AQUOS LC−20E90 2011年製)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板および光学補償フィルムを取り除いて、該液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。続いて、上記液晶セルの光源側の表面に、元の液晶パネルに配置されていた光源側偏光板の吸収軸方向と同様の方向となるように、アクリル系粘着剤を介して上記の偏光板Xを液晶セルに配置した。
次いで、液晶セルの視認側の表面に、元の液晶パネルに配置されていた視認側偏光板の吸収軸方向と同様の方向となるように、アクリル系粘着剤を介して上記の偏光板Xを液晶セルに配置した。このようにして、液晶セルの一方主面に偏光板X、他方主面に偏光板Xが配置された液晶パネルを得た。
上記の液晶パネルを、元の液晶表示装置に組込み、液晶表示装置の光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面を表示して、液晶表示装置の輝度を評価した。
2 液晶セル
3 第1の偏光板
4 光源
5 液晶パネル
Claims (14)
- 第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムにおいて、
1)該第1層がジカルボン酸成分とジオール成分との芳香族ポリエステルからなり、
(i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分、および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
(ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有し、
2)該第2層は90℃以上のガラス転移温度を有する共重合量5モル%以上90モル%以下の共重合ポリエステルからなり、平均屈折率1.50以上1.60以下かつ光学等方性の層であって、
3)該1軸延伸多層積層フィルムの固有粘度が0.55dl/g以上0.75dl/g以下
であることを特徴とする1軸延伸多層積層フィルム。 - 第2層を構成する前記共重合ポリエステルの共重合成分が脂環族ジオールである、請求項1に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 前記脂環族ジオールがスピログリコール、トリシクロデカンジメタノールおよびシクロへキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- フィルムの引裂き強度が7.5N/mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 90℃×1000時間処理前後のフィルムのヘーズ差が2.0%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 下記式(1)で表される偏光度(P%)が99.5以上であって、
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
かつ400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率Tsが60%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。 - 液晶セルと隣接して用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルムからなる偏光板。
- 請求項8に記載の偏光板からなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層されてなる液晶表示装置用光学部材。
- 請求項9に記載の液晶表示装置用光学部材であって、ただし第1の偏光板が吸収型偏光板と積層された構成を除く液晶表示装置用光学部材。
- 第2の偏光板が吸収型偏光板である請求項9または10に記載の液晶表示装置用光学部材。
- 第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板が積層されてなり、第1の偏光板および第2の偏光板が請求項8に記載の偏光板からなる液晶表示装置用光学部材。
- 光源と請求項9〜12のいずれかに記載の液晶表示装置用光学部材とを備え、第1の偏光板が光源側に配置されてなる液晶表示装置。
- 光源と第1の偏光板との間にさらに反射型偏光板を有していない請求項13に記載の液晶表示装置。
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