JP2014120632A - 希土類ボンドマグネット及びその製造方法 - Google Patents

希土類ボンドマグネット及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より錆が発生しにくい希土類ボンドマグネットを製造する。
【解決手段】粉末金属と樹脂バインダーとの混合物を圧縮成形して成形体を得る。成形体の空隙部にエポキシ樹脂を充填する。充填後の成形体を金属めっきする。
【選択図】図2

Description

本発明は、希土類ボンドマグネット及びその製造方法に関する。
希土類ボンドマグネットは、駆動モーター用、磁気センサー用、磁気スイッチ用、及び事務機器用などの幅広い用途において使用されている。希土類ボンドマグネットは、Sm、Nd、及びPrなどの希土類元素を1種以上含む磁性材料粉末と樹脂バインダーとの混合物を、圧縮成形などで成形することにより得られる。希土類は非常に酸化しやすいためこうして得られた成形体には錆が発生しやすい。錆の発生は、希土類ボンドマグネットの磁気特性及び耐久性を低下させる。そこで、錆を防止するために、希土類ボンドマグネットの表面に被覆を施すことが従来から行われている。被覆を施す方法としては、例えばめっきにより金属被膜を形成する方法がある(特許文献1及び2)。
特開平11−3811号公報 特開2006−148157
希土類ボンドマグネットはポーラスな性質を有する。したがって、めっきにより金属被膜を形成すると、空隙部にめっき液が残留し、このめっき液が希土類ボンドマグネット本体及び金属めっきに損傷を与えるために、錆が発生しやすくなることがあった。特許文献1及び2には、ニッケル粉末又はカーボン粉末を用いて空隙部を塞ぐ方法が記載されているが、依然として空隙部を完全に塞ぐことは困難であった。
本発明は、より錆が発生しにくい希土類ボンドマグネットを製造することを目的とする。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の希土類ボンドマグネットの製造方法は以下の構成を備える。すなわち、
粉末金属と樹脂バインダーとの混合物を圧縮成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の空隙部にエポキシ樹脂を充填する充填工程と、
前記充填後の成形体を金属めっきするめっき工程と、
を有することを特徴とする。
より錆が発生しにくい希土類ボンドマグネットを製造することができる。
一実施形態に係る製造方法のフローチャート。 一実施形態に係る希土類ボンドマグネットの模式的断面図。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の一実施形態は、希土類ボンドマグネットの製造方法及びこの方法により製造された希土類ボンドマグネットに関する。以下で、本実施形態に係る希土類ボンドマグネットの製造方法について、図1を参照して詳しく説明する。
ステップS10においては、粉末金属と樹脂バインダーとの混合物を圧縮成形する。粉末金属としては、Sm、Nd、又はPrなどの希土類元素を1種以上含む磁性材料の粉末が用いられる。樹脂バインダーとしては、従来から希土類ボンドマグネットの製造に用いられているものを使用可能である。粉末金属と樹脂バインダーとを混練し、所望の形状に圧縮成形して、必要に応じて樹脂バインダーを硬化させることにより、希土類ボンドマグネットの素体が得られる。また、市販されている、粉末金属と樹脂バインダーとの混合物を用いることもできる。このような混合物としては、NdFeB系磁性材料とエポキシ樹脂との混合物であるWellmax−CN3F(住友金属鉱山社製)などが挙げられる。
ステップS10で得られる圧縮成形体は、密度が6.0g/cmを超えることが好ましく、6.1g/cm以上であることがより好ましく、6.2g/cm以上であることがさらに好ましい。圧縮成形により得られた希土類ボンドマグネットの素体は、表面には連通する空孔及び溝を有し、内部には空隙部を有する。密度を高めることにより、空隙部を減らすことができる。
ステップS20においては、圧縮成形体が有する空隙部などにエポキシ樹脂を充填する。例えば、圧縮成形体をエポキシ樹脂溶液に浸漬させることにより、充填を行うことができる。エポキシ樹脂溶液としては、エポキシ樹脂をアセトン、メチルエチルケトン、若しくはメチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶剤、エステル系の溶剤、又は芳香族炭化水素系などの溶剤に溶解させたものを用いることができる。効率的に充填を行う観点から、エポキシ樹脂溶液中のエポキシ樹脂の濃度は、3重量%以上10重量%以下であることが好ましい。また、充填をより効率的に行うために、圧縮成形体とエポキシ樹脂溶液とを減圧容器に投入し、減圧状態で保持することが好ましい。一例としては、−0.0075MPaで5分間保持する方法が挙げられる。
この処理により、粉末金属と樹脂バインダーとの混合物で形成された成形体の空孔、溝、及び空隙部が、さらにエポキシ樹脂で充填及び被覆される。
ステップS30においては、ステップS20で得られた充填後の圧縮成形体の研磨を行う。例えば、メディアを用いてバレル研磨を行うことにより、圧縮成形体を研磨することができる。この研磨処理により、圧縮成形体表面の余分な樹脂と、ステップS10における成形時に発生したエッジのバリとを除去することができる。この工程により、圧縮成形体のエッジ形状は丸められ、すなわちエッジ形状はRが付いた形状となる。
このようなバレル研磨を行うことにより、圧縮成形体の表面が滑らかとなり、めっきをより均一に行うことができる。また、めっきをより効率的に行う観点からは、粉末金属と樹脂バインダーとの混合物の圧縮成形体の表面にめっきを行うことが好ましく、すなわち圧縮成形体の表面が露出していることが好ましい。空隙部以外の圧縮成形体表面からエポキシ樹脂を除去することは、めっき被膜がより均一になりうる点でも好ましい。したがって、ステップS20において得られた圧縮成形体がエポキシ樹脂で被覆されている場合には、圧縮成形体の表面が露出する程度にバレル研磨工程を行うことが好ましい。
ステップS40〜S70においては、ステップS30で得られた圧縮成形体を金属めっきする。金属めっきにより被膜を形成することにより、希土類ボンドマグネットの機械的強度が向上する。希土類ボンドマグネットは、モールドを用いてインサート成形されることがある。したがって、希土類ボンドマグネットにはモールド成形の圧力に耐え得る機械的強度を有することが好ましい。このような金属被膜が形成された希土類ボンドマグネットは、樹脂被膜が形成された希土類ボンドマグネットと比べて、機械的強度が高い。
用いる金属めっきの種類は特に限定されず、従来用いられていたものを用いることができる。希土類ボンドマグネットの防錆性を向上させる観点から、膜厚4μm以上のめっき被膜を形成することが好ましく、膜厚8μm以上のめっき皮膜を形成することがさらに好ましい。以下では、銅めっき及びニッケルめっきを行う好ましい例について説明する。
ステップS40においては、ステップS30で得られた充填後の圧縮成形体に対して、Sn−Pdコロイド系触媒を用いてSn−Pdコロイド系触媒処理を行う。触媒処理は、無電解銅めっきを行う際に通常用いられる方法にしたがって行うことができる。
ステップS50においては、ステップS40で得られた触媒処理後の圧縮成形体上に、無電解銅めっきにより銅めっきを施す。無電解銅めっきは、従来から用いられている方法にしたがって行うことができる。希土類ボンドマグネットの防錆性を向上させる観点から、めっき厚は1μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。また、めっきをより効率的に行うために、めっき液のpHは11.00以上11.50以下であることが好ましい。
ステップS60においては、ステップS50で得られた圧縮成形体の表面を、アルカリ系のパラジウム触媒で活性化させる。イオン化傾向によれば、銅はニッケルと比較して貴な金属、すなわちイオン化傾向の小さい金属であるため、銅めっき上に無電解ニッケルめっきは非常に付きにくい。そのため、無電解銅めっき処理の後にパラジウム触媒を用いて表面を活性化している。この処理は、無電解ニッケルめっきを行う際に通常用いられる方法にしたがって行うことができる。
ステップS70においては、ステップS60で得られた圧縮成形体の銅めっき被膜上に、無電解ニッケルめっきを施す。本実施形態においては、低リンタイプの無電解ニッケルめっきを行う。具体的には、得られたニッケルリン被膜中におけるリンの含有量が、1.25重量%以下であることが好ましい。リンの含有量が1.25重量%以下であることにより、ニッケルリン被膜が硬くなり、希土類ボンドマグネットをモールド成形する際に割れが生じることがよりよく防止される。
また、無電解ニッケルめっき液中のイオウ系添加剤の濃度は、4ml/L以上8ml/L以下であることが好ましい。イオウ系添加剤の濃度を4ml/L以上とすることは、錆が発生しにくくなる点で好ましい。これは、めっき成長時の粒径が大きくなり、粒間の溝が浅くなるためと考えられる。また、イオウ系添加剤の濃度を8ml/L以下とすることは、めっきが付きやすくなり、錆の発生がよりよく防止される点で好ましい。めっきをより効率的に行うために、めっき液のpHは5.50以上6.50以下であることが好ましい。
希土類ボンドマグネットの防錆性を向上させる観点から、ニッケルめっきの膜厚は4μm以上が好ましく、さらに好ましくは8μm以上である。
無電解ニッケルめっきの具体的な処理は、従来から用いられている方法にしたがって行うことができる。こうして、本実施形態に係る希土類ボンドマグネットが製造される。
図2に、本実施形態により得られた希土類ボンドマグネットの模式的断面図を表す。図2に表すように、本実施形態に係る希土類ボンドマグネットは、素体1と、素体1を被覆する金属めっき被膜とを有する。この金属めっき被膜は、好ましくは銅被膜2とニッケルリン被膜3とで構成される。素体1は、主に粉末金属と樹脂バインダーとの混合物の成形体であるが、この成形体は表面に凹部を有している。そして、成形体の凹部は、エポキシ樹脂4で充填されている。また、露出した成形体表面上にめっきを行う好ましい例により得られた希土類ボンドマグネットにおいては、成形体の表面は金属めっき被膜に接している。このような本実施形態に係る希土類ボンドマグネットは、空隙が少なく、防錆性が高い。また本実施形態に係る希土類ボンドマグネットは、強度が高く、例えばモールド成形する場合であっても割れが生じにくい。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
希土類ボンドマグネットの材料としては、NdFeB系磁性材料であるWellmax−CN(住友金属鉱山社製)を使用した。Wellmax−CNを、外径2.5mm、内径1.0mm、高さ1.1mmの円筒形状の成形体に成形した。次いで、Wellmax−CN中に含まれるエポキシ樹脂を硬化させるために、真空乾燥炉で180℃、1時間加熱することにより、希土類ボンドマグネットの素材を得た。
次に、得られた希土類ボンドマグネットの素材にエポキシ樹脂を浸透させた。具体的にはまず、6重量%のエポキシ樹脂を溶媒であるアセトンで溶解した。そして減圧容器内へ、この溶解液と希土類ボンドマグネットの素材とを投入し、−0.0075MPaで5分間保持した。
次いで、希土類ボンドマグネット表面のエポキシ樹脂を除去するためにバレル研磨を行った。バレル研磨後の希土類ボンドマグネットの密度は、6.2g/cmであった。
さらに、希土類ボンドマグネットに対して、防錆のためにめっき処理を行った。具体的には、バレル研磨後の希土類ボンドマグネットに対して、Sn−Pdコロイド系触媒を用いて触媒付与処理を行った。その後、Sn除去のために水酸化ナトリウム溶液中に浸漬させた。続けて、TSP−810無電解銅液(奥野製薬工業社製)を使用した無電解銅めっき処理により、厚み2μmの銅を析出させた。さらに、アルカリ系のパラジウム触媒で表面処理を行った。そして、無電解ニッケルめっき液としてSEK−797(日本カニゼン社製)を使用した無電解ニッケルめっき処理により、厚み12μmのニッケルリン被膜を形成した。次いで水洗及び乾燥をすることにより、本実施例の希土類ボンドマグネットを得た。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[実施例2]
無電解銅めっき処理で厚みを1μmの銅を析出させ、無電解ニッケルめっき処理で厚み4μmのニッケルリン被膜を形成したことを除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[比較例1]
バレル研磨後の密度が6.0g/cmである希土類ボンドマグネットに対してめっきを行ったことを除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[比較例2]
無電解銅めっき処理で厚みを1μmの銅を析出させ、無電解ニッケルめっき処理で厚みを4μmのニッケルリン被膜を形成したことを除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は2.0重量%であった。
[比較例3]
無電解銅めっき処理で厚み0.8μmの銅を析出させ、無電解ニッケルめっき処理で厚み3μmのニッケルリン被膜を形成したことを除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[比較例4]
無電解ニッケルめっき液中に含まれるイオウ系添加剤の濃度を3ml/Lとした。また、無電解銅めっき処理で厚み2μmの銅を析出させ、無電解ニッケルめっき処理で厚み12μmのニッケルリン被膜を形成した。以上を除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[比較例5]
無電解ニッケルめっき液中に含まれるイオウ系添加剤の濃度を9ml/Lとした。また、無電解銅めっき処理で厚み2μmの銅を析出させ、無電解ニッケルめっき処理で厚み12μmのニッケルリン被膜を形成した。以上を除いては、実施例1と同様に希土類ボンドマグネットを作製した。ニッケルリンめっき皮膜中のリン濃度は0.90重量%であった。
[希土類ボンドマグネットの評価]
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた希土類ボンドマグネットについて、耐食性試験及び圧入試験を行った。結果を表1に示す。
耐食性試験としては、得られた希土類ボンドマグネットを3%NaCl水溶液に20個投入し、24時間浸漬した。その後、10倍の光学顕微鏡で表面を観察し、発錆率を調べた。
圧入試験としては、得られた20個の希土類ボンドマグネットのそれぞれを、内径1mmのモールドを用いて成形した。そして、得られた成形体について割れの発生率を調べた。
Figure 2014120632
実施例1及び2のように、成形体の空隙部をエポキシ樹脂で充填してから金属めっきを行って得られた希土類ボンドマグネットは、良好な耐食性及び強度を有する。
さらなる実験により、比較例2のようにニッケルリンめっき被膜のリン含有率が高い場合には、耐食性は良好であるが、圧入により割れが生じることが確認された。比較例1のように希土類ボンドマグネット本体の密度が低い場合、耐食性が低下するとともに、圧入により割れが生じることが確認された。比較例3のようにめっき被膜が薄い場合、耐食性が低下するとともに、圧入により割れが生じることが確認された。比較例4及び5のように、無電解ニッケルめっき液中に含まれるイオウ系添加剤の濃度が高すぎる又は低すぎる場合にも、耐食性が低下するとともに、圧入により割れが生じることが確認された。

Claims (7)

  1. 粉末金属と樹脂バインダーとの混合物を圧縮成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体の空隙部にエポキシ樹脂を充填する充填工程と、
    前記充填後の成形体を金属めっきするめっき工程と、
    を有することを特徴とする、希土類ボンドマグネットの製造方法。
  2. 前記めっき工程は、前記充填後の成形体上に銅めっきを行う工程と、該銅めっきにより形成された被膜上にニッケルめっきを行う工程と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ニッケルめっきにより形成された被膜が含むリンは、1.25重量%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記めっき工程が、前記充填後の成形体に対してSn−Pdコロイド系触媒処理を行う工程をさらに有し、
    前記銅めっきを行う工程は、該触媒処理後の成形体に対して前記銅めっきを行うことを特徴とする、請求項2又は3に記載の製造方法。
  5. 前記充填後の成形体をバレル研磨するバレル研磨工程をさらに有し、
    前記めっき工程では、前記バレル研磨後の成形体を金属めっきすることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の製造方法。
  6. 前記めっき工程では、膜厚4μm以上のめっき被膜を形成することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の製造方法。
  7. 粉末金属と樹脂バインダーとの混合物で形成される成形体と、該成形体を被覆する金属めっき被膜とを有する希土類ボンドマグネットであって、
    前記成形体の表面は前記金属めっき被膜に接しており、かつ前記成形体の表面は凹部を有し、
    前記凹部はエポキシ樹脂で充填されていることを特徴とする希土類ボンドマグネット。
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