JP2009212102A - ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

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博史 青木
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Abstract

【課題】射出成形された希土類ボンド磁石の表面に良好な金属メッキ層を形成して、防錆性に優れた射出成形希土類ボンド磁石を得ることができる、希土類ボンド磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】希土類磁性粉と熱可塑性樹脂バインダの混合物を射出して磁石成形体を得る工程と、磁石成形体の表面を研磨して希土類磁性粉を露出させる工程と、研磨した磁石成形体の表面に金属メッキ層を形成する工程とを備える。研磨メディアとして、植物性研磨メディアを使用する。
【選択図】 図1

Description

本発明はボンド磁石の製造方法に関し、特に、防錆性に優れた射出成形希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
磁気特性に優れた希土類ボンド磁石はHDD(ハードディスクドライブ)用スピンドルモータや携帯電話用振動モータ等に多用されている。近年、これらの用途では、モータの小型化と多様な形状要求に応じることが求められており、射出成形による希土類ボンド磁石の製造が注目されている。
ところで、希土類ボンド磁石を構成するNd−Fe−B系やSm−Fe−B系の希土類合金磁性粉には鉄が含まれているため防錆対策が必要である。一般に、射出成形により製造されるボンド磁石には金型と接触するその表面に、熱可塑性樹脂バインダのスキン層が生じており、これが防錆膜となり得る。
しかし、高温多湿の過酷な使用環境下で確実な防錆を保証するには上記スキン層では不十分である。そこで、例えば特許文献1においては、リン酸塩を含有させたエポキシ樹脂系焼付型塗料の被膜で磁石成形体の表面を覆うことが提案されている。しかし、この方法で十分な防錆性能を発揮するような厚い被膜を形成するには、被膜処理回数を増やしたり、処理時間を長くする等、処理工程に手間取るという問題がある。
一方、特許文献2には、Nd−Fe−B系磁石をHF水溶液中で処理し、その表面に水素を反応させて、磁石表面の化学変化によって防錆する方法が提案されている。しかし、この方法では、HF水溶液を用いる必要があるため処理に危険が伴うという問題がある。
そこで、例えば特許文献3では、耐食性に優れたニッケルメッキ膜を磁石成形体の防錆膜として使用することが提案されている
特開2000−208321号 特開平9−326307号 特開2002−158105号
しかし、射出成形による磁石成形体の表面には前述のように、導電性に劣る熱可塑性樹脂バインダのスキン層が生じているため、メッキ工程での金属の析出が阻害されて、電解、無電解を問わず金属メッキ層の形成は実際には困難であった。また、譬え金属メッキ層が形成できてもスキン層との密着性が悪いために、上記磁石成形体の防錆膜としては不適であると考えられていた(例えば上記特許文献3)。
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、射出成形された希土類ボンド磁石の表面に耐食性のある金属メッキ層を良好に形成して、防錆性に優れた射出成形希土類ボンド磁石を得ることができる、希土類ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明では、希土類磁性粉と熱可塑性樹脂バインダの混合物を射出して磁石成形体を得る工程と、磁石成形体の表面を研磨して希土類磁性粉を露出させる工程と、研磨した磁石成形体の表面に金属メッキ層を形成する工程とを備えている。
本第1発明において、磁石成形体の表面に希土類磁性粉が露出するまで当該磁石成形体の表面を研磨することによって、希土類磁性粉を覆う導電性に劣るスキン層を除去している。これにより、金属メッキ層が磁石成形体の表面に良好に形成されて、優れた防錆性を発揮する。
本第2発明では、上記研磨の研磨メディアとして、植物性研磨メディアを使用する。
本第2発明において、植物性研磨メディアは軟質であるから、磁石成形体が複雑形状であっても、希土類磁性粉を脱落させることなく、磁石成形体の表面を覆うスキン層のみを良好に除去することができる。これにより、磁石成形体最外層の希土類磁性粉のみが露出し、これら磁性粉の間に面一に熱可塑性樹脂バインダが存在するようになって、磁石成形体の表面により強固な金属メッキ層を形成することができる。
以上のように、本発明の希土類ボンド磁石の製造方法によれば、射出成形された希土類ボンド磁石の表面に良好な金属メッキ層を形成して、防錆性に優れた射出成形希土類ボンド磁石を得ることができる。
希土類磁性粉としてはNd−Fe−B系やSm−Fe−B系のものが使用でき、これらを単独あるいは混合して使用する。これら磁性粉の酸化を防止するために、シラン系ないしチタネート系のカップリング剤でカップリング処理を行うと良い。熱可塑性樹脂バインダとしては、ナイロン6、ナイロン12、ポリフェニレンサルファイド等が使用できる。
カップリング処理された希土類磁性粉は熱可塑性樹脂バインダと混合し造粒されて金型内に射出され、磁石成形体が成形される。このような磁石成形体Mには金型と接するその表面に、図1に示すように、一定厚の熱可塑性樹脂バインダのスキン層3が形成される。なお、図1は磁石成形体Mの表面コーナ部断面を示し、図中、符号1は希土類磁性粉、符号2は熱可塑性樹脂バインダの下地層である。射出成形後の磁石成形体Mにはその表面全体に導電性に劣る上記スキン層3が形成されているため、メッキ工程を行っても金属が析出せず、磁石成形体M表面を金属メッキ層で覆うことが困難である。
そこで、本実施形態においては、磁石成形体Mの表面を研磨して希土類磁性粉1を露出させる。この研磨に使用する研磨メディアとしては、金属系、セラミック系、樹脂系、ガラス系、植物系と種々のものが使用できるが、くるみ、コーン、木チップ、竹、アンズ実等の植物系研磨メディアが好適である。また、研磨は、振動バレル研磨、回転バレル研磨、ショットブラスト等が使用できる。
図2には研磨後の磁石成形体Mの表面コーナ部の断面を示す。図2より明らかなように、磁石成形体Mの表面を覆っていたスキン層3(図1)は研磨によって除去されている。そして、最外層の希土類磁性粉1の一部が磁石成形体Mの表面に露出するとともに、これら磁性粉1の間に略同一面をなして下地層2の表面が位置している。
研磨後の磁石成形体Mはその表面をエアブロー等で浄化し、浄化した磁石成形体Mに、電解あるいは無電解のメッキ工程を行って、当該成形体Mの表面全面に金属メッキ層を形成する。この場合、金属の析出は、導電性の希土類磁性粉1の露出した表面上で開始される。金属結晶は上記磁性粉1の露出表面上で垂直方向へ成長すると同時に、略同一面をなす下地層2表面に沿って水平方向へも成長して、隣接する磁性粉1上の結晶と互いに結合し、下地層2にサポートされた強固な金属メッキ層4が形成される(図3)。金属メッキ層の厚みは5〜20μm程度とする。
表1に示すように、超急冷法で製造されたNd−Fe−B系合金磁性粉を、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの0.1wt%濃度液でカップリング処理した後、ナイロン12の樹脂バインダと混合して造粒し、これを金型内に射出して外径13mm、内径9mm、高さ4mmの磁石成形体を製造した。
この磁石成形体を、研磨メディアとしてクルミチップ(実施例1)、ナイロンチップ(実施例2)、硬球(実施例3)を使用して、ショットブラストにより研磨した。研磨の方法は、低速回転する網籠内に複数の磁石成形体を投入し、網籠の回転に伴って姿勢を変える磁石成形体の表面全面にエアブラストによって粒径200μm程度の研磨メディアを吹き付けた。この際の吹き付けエアー圧は0.4MPa、吹き付け距離は180mm、吹き付け時間は12秒とした。研磨後は磁石成形体の表面をエアブローで浄化し、その後、浴温が30℃、PHが10で表2に示す浴組成の浴液でニッケル(Ni)無電解メッキ工程を実施した。
結果は、実施例1〜実施例3のいずれも、磁石成形体の全表面にピンホール等の無い良好なNiメッキ層が形成された。これに対して、無研磨の磁石成形体の場合はNiメッキ層の形成が殆ど認められなかった。なお、実施例1では通常形状から複雑形状まで、磁石成形体の全表面にピンホール等の無い良好なNiメッキ層が形成された。これに対して、実施例2では、複雑形状の磁石成形体の場合に、スキン層の一部が除去されずに残ってNiメッキ層に微細なピンホールが生じ、また実施例3では、同じく複雑形状の磁石成形体の場合に、下地のエッジ部が一部削れて形状精度が悪化することがあった。しかし、通常形状の磁石成形体については実施例2、実施例3のいずれも問題の無いNiメッキ層が形成された。
Figure 2009212102
Figure 2009212102
射出成形直後の磁石成形体表面部の断面図である。 研磨後の磁石成形体表面部の断面図である。 メッキ工程後の磁石成形体表面部の断面図である。
符号の説明
1…希土類磁性粉、2…下地層、3…スキン層、4…金属メッキ層、M…磁石成形体。

Claims (2)

  1. 希土類磁性粉と熱可塑性樹脂バインダの混合物を射出して磁石成形体を得る工程と、磁石成形体の表面を研磨して希土類磁性粉を露出させる工程と、研磨した磁石成形体の表面に金属メッキ層を形成する工程とを備えるボンド磁石の製造方法。
  2. 前記研磨の研磨材として植物性研磨材を使用した請求項1に記載のボンド磁石の製造方法。
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