JP2014115186A - 胃癌、肺癌及び/又は食道癌の検出方法 - Google Patents

胃癌、肺癌及び/又は食道癌の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被験体に与える侵襲性が低く、かつ検出感度と正確性の高い、癌の検出方法を提供する。
【解決手段】被験体由来の体液試料中のUBE2L3タンパク質の量又はUBE2L3タンパク質の存在の有無をインビトロで測定し、UBE2L3タンパク質の量又は存在を指標にして被験体の癌を検出することを特徴とする癌の検出方法、並びに、該タンパク質に特異的に結合可能な抗体を含む癌検出用キット。
【選択図】図2

Description

本発明は、UBE2L3タンパク質を癌の検出用マーカーとし、体液試料中の該タンパク質の量又は該タンパク質の存在の有無を測定することによる癌の検出方法に関する。
また、本発明は、癌の検出のために使用される前記タンパク質と結合可能な物質を含む癌の検出用キットに関する。
2011年の統計によると、日本における主要な死亡原因の第1位は癌である。癌は、正常な組織から発生し、癌細胞の異常増殖に起因する腫瘍塊の形成、腫瘍塊形成癌細胞による隣接組織への浸潤、及び血管やリンパ管を介しての多種臓器への遠隔転移を特徴とする。このような癌の発症と進展の際には、血液や尿など患者の体液中で様々なタンパク質の濃度が変動することが知られており、これらタンパク質は腫瘍マーカーと呼ばれ、癌の早期発見や治療後のモニタリング等の各種診断用途への応用が期待されている(例えば、特許文献1〜3)。これまでに、腫瘍マーカーとしてCEA(癌胎児性抗原)、CA19−9、CXCL13、AFP(α−フェトプロテイン)などが報告され、臨床的な診断に用いられてきたが、既存のマーカーの多くは、陽性率が20〜30%程度にすぎず、特に早期癌においては、ほとんどのマーカーが陰性を示す。癌は隣接組織への浸潤や遠隔転移を特徴とする進行癌や末期癌においては治療成績が不良であり、早期発見が最も大きな治療効果を示すことから、早期癌の検出が可能な感度に優れた腫瘍マーカーの発見が期待されている。
「UBE2L3」(Ubiquitin−conjugating enzyme E2 L3)タンパク質は、分子量約19kDaのタンパク質で、タンパク質のユビキチン化を司る酵素であり、NFkappaBやp53等の細胞情報伝達に関与することなどが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。癌との関連性に関しては、予後不良の大腸癌組織において、発現量が低下していること(特許文献4)、また、前立腺がんのマーカーとなりうること(特許文献5)が知られている。
特開2001−289861号公報 特開2002−323499号公報 特開2009−034071号公報 特表2009−521215号公報 国際公開第2011/073901号
Chen ZJ.ら、Nat Cell Biol.、第7巻、p.758−765(2005年) Asher G.ら、Cell Cycle、第4巻、p.1015−1018(2005年)
本発明の課題は、癌の検出に有用な新規の癌検出用マーカー、及び該癌検出用マーカーを用いた癌の検出方法を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、癌患者の体液と健常者の体液に存在するタンパク質群を比較し、癌患者の体液に検出される新規癌検出用マーカーとしてUBE2L3タンパク質を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)被験体由来の体液試料中のUBE2L3タンパク質の量、又はUBE2L3タンパク質の存在の有無、をインビトロで測定し、UBE2L3タンパク質の量又は存在を指標にして被験体の癌を検出することを特徴とする癌の検出方法であって、癌が、胃癌、肺癌及び食道癌よりなる群から選択される、前記方法。
(2)前記癌が早期癌である、(1)に記載の方法。
(3)前記UBE2L3タンパク質が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記UBE2L3タンパク質の量の測定値が健常体の対応する測定値と比較して統計学的に有意に大きいとき、前記被験体が癌に罹患していると決定する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記測定が前記UBE2L3タンパク質と特異的に結合する物質を用いて行われる、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記物質が抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体である、(5)に記載の方法。
(7)前記体液試料が血液又は尿である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)抗UBE2L3抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体を含む癌検出用キットであって、癌が、胃癌、肺癌及び食道癌よりなる群から選択される、前記キット。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載の方法で使用するためのものである、(8)に記載のキット。
(10)前記抗体、断片又は化学修飾誘導体が担体に固定されている、(8)又は(9)に記載のキット。
(11)前記担体が、検査用ストリップである、(10)に記載のキット。
本発明によれば、早期癌〜末期癌(ステージI〜IV)の胃癌、肺癌又は食道癌を、特にステージIの早期癌でさえも、高い感度で検出することが可能である。例えば、癌への罹患が疑われる患者から採取された血液等の体液試料中に含まれるUBE2L3タンパク質の量や濃度を測定するだけで、その患者が胃癌、肺癌又は食道癌に罹患しているか否かを決定又は評価することができる。ただ1種のマーカーによって胃癌、肺癌及び食道癌の早期癌を検出できることは、これまで報告例がほとんどなく、それゆえに予想できない優れた効果を提供するものである。
この図は、ヒト胃癌患者の血清中のUBE2L3タンパク質を、抗UBE2L3抗体を用いたウェスタンブロット法により検出し、画像データのデンシトメトリー解析により得られた数値をプロットしたグラフである。 この図は、ヒト健常者、並びに、肺癌又は食道癌に罹患したヒト癌患者の血清中のUBE2L3タンパク質を、抗UBE2L3抗体を用いたウェスタンブロット法により検出した結果を示すグラフである。癌患者検体はすべて各癌のステージIの早期癌患者由来の血清の混合液である。
1.癌検出用マーカー
本発明の第一の態様は、癌を検出(又は検査)するための癌検出用マーカーに関する。本発明は、UBE2L3タンパク質が健常者よりも、癌患者の血液等の体液中に多く存在するという知見に基づくものである。後述の本発明の第二の態様で説明するように、被験体の血液等の体液中に存在するUBE2L3タンパク質の量又はUBE2L3タンパク質の存在の有無の測定によって、その被験体における癌への罹患の有無を評価し得る。
本明細書において「癌検出用マーカー」とは、癌を検出するための生物学的マーカーであって、被験体が癌に罹患していることを示す指標となる物質をいう。本発明の癌検出用マーカーは、野生型UBE2L3タンパク質に加えて、癌検出用マーカーとして使用可能な、UBE2L3タンパク質変異体、UBE2L3タンパク質の断片、及びUBE2L3タンパク質変異体の断片を包含する。本発明において、UBE2L3タンパク質には、野生型UBE2L3タンパク質及び変異型UBE2L3タンパク質が包含される。また、UBE2L3タンパク質の測定(量の測定及び存在の有無の測定を含む)は、野生型UBE2L3タンパク質の測定に加えて、癌検出用マーカーとして使用可能な、UBE2L3タンパク質変異体の測定、野生型UBE2L3タンパク質の断片の測定、及びUBE2L3タンパク質変異体の断片の測定も包含する意味で使用される。
本発明においてUBE2L3タンパク質には、各生物種由来UBE2L3タンパク質が包含されるが、好ましくはヒト由来のUBE2L3タンパク質(GenBank アクセッションNo.NP_067066.1)、具体的には、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
UBE2L3タンパク質は、本発明者らにより、胃、肺又は食道の各臓器の癌細胞によって産生され、胃癌、肺癌又は食道癌の癌患者では、健常体(もしくは、健常者)に比べて多くの量が体液中に漏出することが明らかとなった。
本明細書においてUBE2L3タンパク質の「変異体」とは、野生型UBE2L3タンパク質を構成するアミノ酸配列又はその部分配列、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその部分配列において、1以上、好ましくは1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むタンパク質、あるいは野生型UBE2L3タンパク質を構成するアミノ酸配列又はその部分配列、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその部分配列と、約80%以上、例えば約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、例えば約97%以上、約98%以上もしくは約99%以上の%同一性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質を意味する。本明細書中、「数個」とは、約10以下、例えば9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を指す。また、「%同一性」とは、特定のアミノ酸配列と、その変異体のアミノ酸配列との一致度が最大となるように、またこのときギャップを導入するか若しくはギャップを導入しないで、好ましくはギャップを導入して、この2つのアミノ酸配列のアラインメントを行ったとき、総アミノ酸残基数(ギャップを導入する場合、ギャップ数を含む)に対する一致したアミノ酸残基数の割合(%)を指し、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて、ギャップを導入して又はギャップを導入しないで、決定することができる(Karlin,S.ら、1993年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第90巻、p.5873-5877;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p.403−410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proceedings of the National Academic Sciences U.S.A.、第85巻、p.2444-2448)。UBE2L3タンパク質の変異体の具体例として、被験体の種類(例えば、被験者の場合は人種)や個体に基づく多型(SNPsを含む)、スプライス変異等が挙げられる。
本明細書において「断片」とは、野生型UBE2L3タンパク質、好ましくはヒト由来の野生型UBE2L3タンパク質、又はその変異体を構成するアミノ酸配列、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列の5個以上全数未満、7個以上全数未満、好ましくは8個以上全数未満、例えば、10個以上全数未満、15個以上全数未満、より好ましくは20個以上全数未満、25個以上全数未満、さらにより好ましくは35個以上全数未満、40個以上全数未満、50個以上全数未満の連続するアミノ酸残基からなり、1個又は複数のエピトープを保持するポリペプチド断片をいう。このような断片は、後述する本発明に関わる抗体又はその断片と免疫特異的に結合することができる。このようなペプチド断片の測定をUBE2L3タンパク質の測定に包含する理由は、たとえ断片化されていても血液中のUBE2L3タンパク質を定量できれば、本発明の目的を達し得るし、また、血液等の体液中の上記野生型UBE2L3タンパク質(好ましくは配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるヒト由来の野生型UBE2L3タンパク質)又はその変異体の全長ポリペプチドが、例えば、血液等の体液中に存在するプロテアーゼやペプチダーゼ等の加水分解酵素によって断片化されて存在する可能性があるからである。
2.癌の検出方法
本発明の第二の態様は、各種臓器に発症する癌をインビトロで検出する方法に関する。本発明は、UBE2L3タンパク質が健常者よりも、癌患者の血液等の体液中に多く存在するという知見に基づき、被験体由来の体液中に存在する本発明の癌検出用マーカーの量、又は該マーカーの存在の有無をインビトロで測定し、その結果から癌を検出する方法である。
本発明の方法は、(1)UBE2L3タンパク質測定工程(換言すれば、癌検出用マーカー測定工程)、及び(2)罹患決定工程を含む。以下、それぞれの工程について詳細に説明をする。
2−1.UBE2L3タンパク質測定工程
「UBE2L3タンパク質測定工程」とは、被験体由来の体液中のUBE2L3タンパク質の量又はUBE2L3タンパク質の存在の有無をインビトロで測定する工程である。
本明細書において、「被験体」とは、癌の罹患の検出対象となる脊椎動物、好ましくは哺乳動物、特に好ましくはヒトである。本明細書において、被験体がヒトの場合には、被験体を、特に「被験者」と称する。
本明細書において「体液試料」とは、癌の検出のために供される試料であって、生物学的流動体を意味する。体液は、本発明の癌検出用マーカーが含まれる可能性のある生物学的流動体であればよく、特に限定はされない。例えば、血液、尿、リンパ球培養上清、髄液、消化液(例えば、膵液、大腸液、食道腺分泌液、唾液を含む)、汗、腹水、鼻水、涙、膣液、精液等が含まれる。好ましくは、血液又は尿である。本明細書中、「血液」とは、全血、血漿及び血清を含む。全血は、静脈血、動脈血又は臍帯血等の種類を問わない。体液は、同一個体から得られる異なる二以上の組合せであってもよい。本発明の癌の検出方法は、侵襲性の低い血液や尿を用いて実施可能であることから、簡便な検出法として非常に有用である。
「被験体由来の体液試料」とは、被験体から既に採取された体液をいい、体液を採取する行為自体は、本発明の態様には包含されない。被験体由来の体液は、被験体から採取されたものを直ちに本発明の方法に供してもよいし、採取後、直接、又は適当な処理を施した後に、冷蔵又は凍結したものを本発明の方法に供する前に、室温に戻して使用してもよい。冷蔵又は凍結前の適当な処理としては、例えば、全血にヘパリン等を添加して抗凝固処理を施した後、又は血漿若しくは血清として分離すること等が含まれる。これらの処理は、当該分野で公知の技術に基づいて行なえばよい。
本明細書において「UBE2L3タンパク質の量」とは、被験体由来の体液中に存在するUBE2L3タンパク質の分量をいう。この分量は、絶対量又は相対量のいずれであってもよい。絶対量の場合、所定の体液量中に含まれるUBE2L3タンパク質の質量又は容量が該当する。相対量の場合、特定の測定値に対する被験体由来のUBE2L3タンパク質の測定値によって表わされる相対的な値をいう。例えば、濃度、蛍光強度、吸光度等が挙げられる。
UBE2L3タンパク質の量は、インビトロで公知の方法を用いて測定することができる。例えば、前記タンパク質と特異的に結合する物質を用いて測定する方法が挙げられる。UBE2L3タンパク質の量の指標として、野生型UBE2L3タンパク質の量に加えて、癌検出用マーカーとして使用可能な、UBE2L3タンパク質変異体、野生型UBE2L3タンパク質の断片、及びUBE2L3タンパク質変異体の断片の量を測定してもよい。
本明細書において「特異的に結合する」とは、ある物質が、実質的に、本発明の標的である癌検出用マーカーのみ、特にUBE2L3タンパク質のみと結合し得ることを意味する。この場合、UBE2L3タンパク質の検出及び測定に影響を与えない程度の非特異的な結合が存在してもよい。
「特異的に結合する物質」としては、例えば、UBE2L3タンパク質に結合するタンパク質が挙げられる。より具体的には、例えば、本発明の標的である癌検出用マーカーを抗原とし、それを認識して結合する「抗UBE2L3抗体」が挙げられる。抗UBE2L3抗体としては、UBE2L3タンパク質を抗原とし、それを認識して結合する抗体、例えば、ヒトUBE2L3タンパク質を認識して結合する抗体、好ましくは配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識して結合する抗体、UBE2L3タンパク質の断片を認識して結合する抗体、UBE2L3タンパク質の変異体を認識して結合する抗体、例えば、ヒトUBE2L3タンパク質の変異体を認識して結合する抗体、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体を認識して結合する抗体、UBE2L3タンパク質の変異体の断片を認識して結合する抗体が挙げられ、それらの抗体断片も結合物質として使用できる。あるいは、それらの化学修飾誘導体であってもよい。ここで、「化学修飾誘導体」とは、前記抗UBE2L3抗体又はそれらの断片の癌検出用マーカーとの特異的な結合活性を獲得又は保持する上で必要な機能上の修飾、又は前記抗UBE2L3抗体又はそれらの断片を検出する上で必要な標識のための修飾のいずれをも含む。
機能上の修飾には、例えば、グリコシル化、脱グリコシル化、PEG化が挙げられる。
標識上の修飾には、例えば、蛍光色素(FITC、ローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5)、蛍光タンパク質(例えば、PE、APC、GFP、EGFP)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)、又はビオチン、アビジン、ストレプトアビジンによる標識が挙げられる。
抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれであってもよい。特異的検出を可能にするため、好ましくは、モノクローナル抗体を用いる。ポリクローナル及びモノクローナル抗体は、後述する方法によって作製することができる。その他、抗ヒトUBE2L3ポリクローナル抗体は、Proteintec Group社等より市販されており、それを利用することもできる。抗体のグロブリンタイプは、上記特徴を有するものである限り、特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。抗体断片には、例えばFab、Fab'、F(ab')、Fv、Facb、Fd等が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片及び誘導体もまた含まれる。そのような抗体には、例えば合成抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、単鎖抗体等が含まれる。本発明の抗UBE2L3抗体は、UBE2L3タンパク質、その変異体又はそれらの断片の少なくとも5個、少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個、少なくとも10個のアミノ酸からなる1若しくは数個のエピトープに対する抗体である。特異的なポリクローナル抗体は、例えば、アガロース等の担体にUBE2L3タンパク質、その変異体又はそれらの断片を結合したカラムに、該タンパク質を免疫したウサギ等の抗血清を通し、カラム担体に結合したIgG抗体を回収することを含む手法によって作製することができる。
(1)抗UBE2L3抗体の作製
以下、本発明で使用する抗UBE2L3ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の作製方法について具体的に説明をする。
(1−1)免疫原の調製
抗体を作製するにあたり、まず、免疫原(抗原)を調製する。本発明において使用可能な免疫原として、UBE2L3タンパク質、その変異体又はそれらの断片、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるヒトUBE2L3タンパク質、その変異体又はそれらの断片、あるいはそれらと他のペプチド(例えば、シグナルペプチド、標識ペプチド等)との融合ポリペプチドが挙げられる。
以下、免疫原としてのUBE2L3タンパク質を用いる場合について説明する。免疫原として、UBE2L3タンパク質の断片、UBE2L3タンパク質変異体又はその断片を用いる場合についても同様に実施できる。
免疫原としてのUBE2L3タンパク質は、例えば、配列番号1のアミノ酸配列情報を利用して、当技術分野で公知の手法、例えば固相ペプチド合成法等により合成することができる。免疫原としてUBE2L3タンパク質を使用する場合は、KLH、BSA等のキャリアータンパク質に連結させて使用するのが好ましい。
また、免疫原としてのUBE2L3タンパク質は、公知のDNA組換え技術を利用して得ることもできる。UBE2L3タンパク質をコードするcDNAは、当該分野で公知のcDNAクローニング法によって作製すればよい。UBE2L3遺伝子等を発現する上皮細胞等の生体組織からtotal RNAを抽出し、それをオリゴdTセルロースカラムで処理して得られるポリA(+)RNAを鋳型としてRT−PCR法によってcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニング、発現スクリーニング、抗体スクリーニング等のスクリーニングによって目的のcDNAクローンを得ることができる。必要に応じて、cDNAクローンをさらにPCR法によって増幅することもできる。これによって目的の遺伝子に対応するcDNAを得ることができる。cDNAクローニング技術は、例えばSambrook,J.及びRussel,D.著、Molecular Cloning,A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17に記載されている。
続いて、上記の方法等で得られたcDNAクローンを発現ベクターに組み込み、該ベクターを用いて形質転換又はトランスフェクションされた原核又は真核宿主細胞を培養することによって、目的のUBE2L3タンパク質を該細胞から得ることができる。このとき、目的のタンパク質を培養上清中から得る場合には、そのポリペプチドをコードするDNAの5’末端に、分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列をフランキングすることによって細胞外に成熟ポリペプチドを分泌させることができ、その結果、目的タンパク質を培養上清中から得ることが可能となる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET21a、pGEX4T、pC118、pC119、pC18、pC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13、YEp24、YCp50等)等が挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λ gt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、ワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。クローニングベクター及び発現ベクターは、Novagen社、宝酒造、第一化学薬品、Qiagen社、Stratagene社、Promega社、Roche Diagnositics社、Life technologies社、Genetics Institute社、GE ヘルスケア社等の各メーカーで市販されており、それらを利用することもできる。
発現ベクターにUBE2L3タンパク質をコードするcDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用されうる。ベクターには、該タンパク質をコードするDNAの他に、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター、選択マーカー等を含んでいてもよい。またUBE2L3タンパク質の単離、精製を容易にするために、UBE2L3タンパク質のC末端又はN末端に標識ペプチドをつけた融合ポリペプチドの形態で発現するように発現ベクターを構築し、遺伝子工学的に当該タンパク質を調製してもよい。代表的な標識ペプチドには、6〜10残基のヒスチジンリピートタグ、FLAGタグ、mycペプチドタグ、GFPタンパク質が挙げられるが、標識ペプチドはこれらに限られるものではない。DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。DNA組換え技術については、Sambrook,J.及びRussel,D.(上記)に記載されており、それに準じて行えばよい。
宿主細胞としては、細菌等の原核細胞(例えば、エシェリヒア・コリ:Escherichia coli等の大腸菌、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)等の枯草菌)、酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、昆虫細胞(例えば、Sf細胞、S2細胞)、哺乳動物細胞(例えば、HEK293、HeLa、COS、CHO、BHK)等を用いることができる。宿主細胞への組換えベクターの導入方法は、それぞれの宿主へDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。細菌に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、ヒートショック法、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。これらの技術は、いずれも当該分野で公知であり、様々な文献に記載されている。例えば、Sambrook,J.及びRussel,D.(上記)を参照されたい。また、動物細胞に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、リポフェクチン法(PNAS(1989)Vol.86,6077、PNAS(1987)Vol.84,7413)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(Virology(1973)Vol.52,456−467)、リポソームを用いる方法、DEAE−Dextran法等が好適に用いられる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下、37℃で6〜24時間、又はそれ以上行う。培養期間中、pHは中性付近に保持することが好ましい。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行えばよい。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地(例えば、DMEM、RPMI−1640)に添加してもよい。哺乳類細胞等の形質転換体を培養する場合においても、それぞれの細胞に適した培地中で培養後、培養上清又は細胞内に生産されたタンパク質を回収する。このとき培地は血清を含んでもよく、含まなくてもよいが、無血清培地での培養がより望ましい。UBE2L3タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕し、当該分野で公知の方法によってタンパク質を抽出すればよい。また、UBE2L3タンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去した後に上清を使用すればよい。
標識ペプチドを付けずにタンパク質を生産した場合には、その精製法として例えばイオン交換クロマトグラフィーによる方法を用いればよい。またこれに加えて、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー等を組み合わせる方法でもよい。一方、当該タンパク質にヒスチジンリピートタグ、FLAGタグ、mycタグ、GFPといった標識ペプチドを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれの標識ペプチドに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を採用することができる。UBE2L3タンパク質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動等により確認することができる。
(1−2)抗体の作製
上記方法によって得られたUBE2L3タンパク質を抗原としてUBE2L3タンパク質を特異的に認識する抗体を得ることができる。
より具体的には、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質変異体、融合タンパク質に含まれるエピトープ(抗原決定基)に対して抗体を形成させる。エピトープは、一次構造(アミノ酸配列)に基づくものであってもよいし、二次構造や立体構造などの高次構造(断続的)に基づくものであってもよい。なお、該抗原決定基又はエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆる方法によって同定できる。
本発明のUBE2L3タンパク質によってあらゆる態様の抗体が誘導され得る。具体的には、該タンパク質の全部若しくは一部又はエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。抗体調製方法は、例えば、Kennetら(監修),Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Ple num Press,New York,1980を参照すればよい。
(1−2−1)ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体を作製するために、まず、得られたUBE2L3タンパク質を緩衝液に溶解して免疫原溶液を調製する。必要であれば、免疫を効果的に行うためにアジュバントを添加してもよい。アジュバントの例としては、市販の完全フロイントアジュバント(FCA)、不完全フロイントアジュバント(FIA)等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
次に、前記調製した免疫原溶液を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBalb/c)、ウサギ等に投与し、免疫する。免疫原溶液の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路等により適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgの免疫原を含んでいればよい。免疫原溶液の投与方法としては、例えば、FIA又はFCAを用いた皮下注射、FIAを用いた腹腔内注射、又は0.15mol/L塩化ナトリウムを用いた静脈注射が挙げられるが、この限りでない。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜10回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原溶液を静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。免疫後は、血液からUBE2L3タンパク質に対するポリクローナル抗体が回収できる。モノクローナル抗体が必要な場合には、後述の抗UBE2L3抗体産生ハイブリドーマを作製すればよい。
(1−2−2)モノクローナル抗体の作製
(ハイブリドーマの作製)
UBE2L3タンパク質を特異的に認識する抗UBE2L3モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、慣用的技術によって作製することが可能である。以下、抗UBE2L3モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの具体的作製方法を例を挙げて説明する。
a.免疫動物からの抗体産生細胞の回収
まず、適当な動物をUBE2L3タンパク質で免疫する。免疫方法については、前記「ポリクローナル抗体の作製」の項に記載の方法に準じて行えばよい。続いて、免疫された動物から抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。これらの細胞は、UBE2L3タンパク質で免疫した動物から摘出又は採取したものを用いればよい。動物に免疫する方法は、前記ポリクローナル抗体の作製の項に準ずる。抗体産生細胞と融合させる骨髄腫細胞株としては、マウス等の動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。骨髄腫細胞株の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株であるP3X63−Ag.8株(ATCC TIB9)、P3X63‐Ag.8.U1株(JCRB9085)、P3/NSI/1‐Ag4‐1株(JCRB0009)、P3x63Ag8.653株(JCRB0028)又はSp2/0‐Ag14株(JCRB0029)等が挙げられる。
b.細胞融合
次に、調製した抗体産生細胞と骨髄腫(ミエローマ)細胞株と融合させる。細胞融合は、例えば、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地等の動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを約1:1〜 20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行えばよい。細胞融合促進剤として、平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシド等の補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを融合させることもできる(Nature,1977,Vol.266,550‐552)。
c.ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とする抗UBE2L3抗体等を産生するハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地等で適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に200万個/ウェル程度まき、各ウェルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はチミジンキナーゼ欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射免疫測定法(RIA:Radio Immuno Assay)等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。本発明のハイブリドーマは、後述するように、RPMI−1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、癌細胞に由来するUBE2L3タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
(抗体の回収)
モノクローナル抗体は、当該分野で公知の慣用的技術によって回収可能である。例えば、樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法には、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%CO濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1000万個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水又は血清を採取する。
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の公知の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより、精製された本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体の可変領域を有するヒト抗体)、ヒト化抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体のCDRを有するヒト抗体)及びヒト抗体が含まれる。また本発明によれば、上記抗体の抗原結合断片も提供される。慣用的技術によって産生可能な抗原結合断片の例には、上記のようなFab、F(ab’)、Fv等の断片が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な多価抗体(例えば、ダイアボディ)、抗体断片及び誘導体もまた提供される。抗UBE2L3抗体は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、UBE2L3タンパク質又はその断片の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。
アッセイにおける特異的検出を可能にするために、モノクローナル抗体の使用が好ましいが、ポリクローナル抗体であっても、精製ポリペプチドを結合したアフィニティーカラムに抗体を結合させることを含む、いわゆる吸収法によって、特異抗体を得ることができる。
(2)抗UBE2L3抗体等を用いた本発明の癌検出用マーカーのインビトロ測定
前記(1)で作製した抗UBE2L3抗体等を用いて、被験者由来の体液試料中の本発明の癌検出用マーカーを測定する方法、すなわち、UBE2L3タンパク質の量又はUBE2L3タンパク質の存在の有無をインビトロで測定する方法(免疫学的測定法)としては、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応又はウェスタンブロット法等が挙げられる。
本発明の癌の検出方法を、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識を用いた免疫測定法により実施する場合には、前記抗UBE2L3抗体等を固相化するか、又は試料中の成分を固相化(固定化)して、それらの免疫学的反応を行うことが好ましい。担体、好ましくは固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック、検査用ストリップ又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。固相化は、固相担体と前記抗UBE2L3抗体等又は試料成分とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
本発明においては、前記抗UBE2L3抗体等と、体液中の胃癌細胞、肺癌細胞又は食道癌細胞に由来する本発明の癌検出用マーカーとの反応を容易に検出するために、前記抗UBE2L3抗体等を標識することにより該反応を直接検出するか、又は標識二次抗体を用いることにより間接的に検出する。本発明の癌の検出方法においては、感度の点で、後者の間接的検出(例えばサンドイッチ法等)を利用することが好ましい。
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミラーゼ又はビオチン−アビジン複合体等を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、Alexa又はAlexaFluoro等を、そして放射免疫測定法の場合にはトリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−、FMNH−、ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。
標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法又は過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。測定の操作法は、公知の方法(Current protocols in Protein Sciences、1995年、John Wiley & Sons Inc.、Current protocols in Immunology、2001年、John Wiley & Sons Inc.)に従えばよい。例えば、前記抗UBE2L3抗体等を直接標識した場合には、体液中の成分を固相化し、標識した前記抗UBE2L3抗体等と接触させて、本発明の癌検出用マーカー(UBE2L3タンパク質、その変異体又はそれらの断片)−抗UBE2L3抗体等の複合体を形成させる。そして未結合の標識抗体を洗浄分離して、結合標識抗体量又は未結合標識抗体量より体液中の癌検出用マーカーの量を測定することができる。
また、例えば、標識二次抗体を用いる場合には、抗UBE2L3抗体を一次抗体として試料と反応させ(一次反応)、さらに標識二次抗体を一次抗体に反応させる(二次反応)。一次反応と二次反応は逆の順序で行ってもよいし、同時に行ってもよいし、又は時間をずらして行ってもよい。一次反応及び二次反応により、固相化した本発明の癌検出用マーカー−抗UBE2L3抗体等−標識二次抗体の複合体が、又は固相化した抗UBE2L3抗体等−本発明の癌検出用マーカー−標識二次抗体の複合体が形成される。そして未結合の標識二次抗体を洗浄分離して、結合標識二次抗体量又は未結合標識二次抗体量より試料中の癌検出用マーカーの質量を測定することができる。
具体的には、酵素免疫測定法の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定すればよい。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫定法の場合には放射性物質標識による放射能量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定すればよい。
また、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応又は粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施することもできる。この場合、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を反応系に含ませてもよい。
本発明の検出法の好ましい実施形態の一例を示す。最初に、抗UBE2L3抗体を一次抗体として不溶性担体に固定する。そして、好ましくは抗原が吸着していない固相表面を、抗原とは無関係のタンパク質(仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン等)によりブロッキングする。続いて、固定化された一次抗体と被検試料とを接触させる。次いで、上記一次抗体と異なる部位で本発明の癌検出用マーカーと反応する標識二次抗体とを接触させ、該標識からの信号を検出する。ここで用いる「一次抗体と異なる部位で癌検出用マーカーと反応する二次抗体」は、一次抗体と癌検出用マーカーとの結合部位以外の部位を認識する抗体であれば特に制限はなく、免疫原の種類を問わず、ポリクローナル抗体、抗血清、モノクローナル抗体のいずれでもよく、またこれらの抗体の断片(フラグメントともいう)(例えば、Fab、F(ab’)、Fab、Fv、Facb、Fd等)を用いることもできる。更に、二次抗体として複数種のモノクローナル抗体を用いてもよい。
また、これとは逆に、抗UBE2L3抗体に標識を付して二次抗体とし、抗UBE2L3抗体と異なる部位で、癌検出用マーカーと反応する抗体を一次抗体として不溶性担体に固定し、この固定化された一次抗体と被検試料とを接触させ、次いで、二次抗体として標識を付した本発明の抗体とを接触させ、前記標識からの信号を検出してもよい。
また抗UBE2L3抗体は、上述したように、癌細胞に由来する癌検出用マーカーと特異的に反応するため、癌の検出薬として用いることができる。この検出薬は、抗UBE2L3抗体を含むものであり、これを用いて、癌への罹患が疑われる個体から採取した試料中に含まれる癌細胞に由来する癌検出用マーカーを検出することによって、該個体における癌、あるいは、それら癌への罹患の有無を検出又は評価することができる。
また、抗UBE2L3抗体を含む検出薬は、免疫学的測定を行うための手段であればいずれの手段においても利用することができるが、当技術分野で公知の免疫クロマト用テストストリップ等の簡便な手段と組み合わせて用いることによって、さらに簡便かつ迅速に癌を検出することができる。免疫クロマト用テストストリップ(検査用ストリップともいう)とは、例えば、試料を吸収しやすい材料からなる試料受容部、抗UBE2L3抗体を含む検出薬を含有する試薬部、試料と検出薬との反応物が移動する展開部、展開してきた反応物を呈色する標識部、呈色された反応物が展開してくる提示部等から構成されるものであり、妊娠診断薬と同様の形態とすることができる。まず、試料受容部に試料を与えると、試料受容部は試料を吸収して試料を試薬部にまで到達させる。続いて、試薬部において、試料中の胃癌、肺癌又は食道癌細胞由来の癌検出用マーカーと抗UBE2L3抗体等との反応が起こり、反応した複合体が展開部を移動して標識部に到達する。標識部においては、上記反応複合体と標識二次抗体との反応が起こって、その標識二次抗体との反応物が提示部にまで展開すると呈色が認められることになる。上記免疫クロマト用テストストリップは、使用者に対し苦痛や試薬使用による危険性を一切与えないものであるため、家庭におけるモニターに使用することができ、その結果を各医療機関レベルで精査・治療(外科的切除等)し、転移・再発予防に結びつけることが可能となる。また現在、このテストストリップは、例えば特開平10−54830号公報に記載されるような製造方法により安価に大量生産できるものである。また、抗UBE2L3抗体を含む検出薬と、既知の胃癌、肺癌又は食道癌の腫瘍マーカーに対する検出薬とを組み合わせて使用することにより、さらに信頼性の高い検出が可能になる。
2−2.罹患決定工程
「罹患決定工程」とは、前記UBE2L3タンパク質測定工程で測定されたタンパク質の量及び存在の有無に基づいてインビトロで癌の罹患を決定(又は評価)する工程である。決定方法の一例として、例えば、被験体由来の体液試料中のUBE2L3タンパク質の量が健常体のそれと比較して統計学的に有意に多いときに癌に罹患していると決定(又は評価)する方法が挙げられる。本明細書中「決定」とは、本発明の検出方法によって得られた測定結果に基づいて癌の罹患を評価することを指し、評価には、医師による判定を含まないことを意図している。
本発明の癌の検出法では、癌のうち、胃癌、肺癌及び食道癌よりなる群から選択される癌に罹患しているか否かを決定(又は評価)できる。
ここで、「胃癌」とは、胃に発生する悪性腫瘍をさす。胃癌は、病理学的に乳頭腺癌、管状腺癌、低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍などに分類されるが、特にこれらに限定されない。
「肺癌」とは、肺に発生する、上皮細胞由来の悪性腫瘍をさす。肺癌は病理学的に、小細胞癌と非小細胞癌に分類され、非小細胞癌はさらに肺扁平上皮癌、肺腺癌、細気管支肺胞上皮癌などに分類されるが、特にこれらに限定されない。
「食道癌」とは、食道組織に発生する悪性腫瘍をさす。食道癌は病理学的に、食道扁平上皮癌、食道腺癌などに分類されるが、特にこれらに限定されない。
「被験体」とは、本発明の方法によって癌の検査を受ける個体を指し、該個体の例は、上記のとおり、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、例えば霊長類(ヒト、サル、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ等)、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット等)、有蹄類(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等)など、より好ましくはヒトである。通常、被験体は、癌に罹患している疑いのある個体、好ましくはヒトである。
「健常体」とは、少なくとも胃癌、肺癌及び食道癌に罹患していない個体、好ましくは健康な個体をいう。さらに、健常体は、被験体と同一の生物種であることを要する。例えば、検出に供する被験体がヒト(被験者)の場合には、健常体もヒト(本明細書では、以降「健常者」とする)でなければばらない。健常体の身体的条件は、被験体と同一又は近似することが好ましい。身体的条件とは、例えば、ヒトの場合であれば、人種、性別、年齢、身長、体重等が該当する。
「統計学的に有意」とは、例えば、得られた値の危険率(有意水準)が5%、1%又は0.1%より小さい場合が挙げられる。それ故、測定値について「統計学的に有意に大きい」とは、被験体と健常体のそれぞれから得られたUBE2L3タンパク質の量的差異を統計学的に処理したときに両者間に有意差があり、かつ被験体由来の体液試料中のUBE2L3タンパク質の量が健常体のそれと比較して相対的に多いことをいう。例えば、体液中のUBE2L3タンパク質の量に関して、被験体が健常体の2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上、最も好ましくは5倍以上多い場合が該当する。量的差異が3倍以上であれば信頼度は高く、統計学的にも有意に多いといえる。統計学的処理の検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定しない。例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法を用いることができる。
健常体の体液中におけるUBE2L3タンパク質の量は、前記工程で説明をした被験体の体液中におけるUBE2L3タンパク質の量の測定方法と同様の方法で測定することが好ましい。健常体の体液中におけるUBE2L3タンパク質の量は、被験体の体液中におけるUBE2L3タンパク質の量を測定する都度、測定することもできるが、予め測定しておいたUBE2L3タンパク質の量を利用することもできる。特に、健常体の様々な身体的条件におけるUBE2L3タンパク質の質量を予め測定しておき、その値をコンピューターに入力してデータベース化しておけば、被験体の身体的条件を当該コンピューターに入力することで、その被験体との比較に最適な身体的条件を有する健常体のUBE2L3タンパク質の量を即座に利用できるので便利である。
被験体の体液中のUBE2L3タンパク質の量が健常体の体液中のUBE2L3タンパク質の量よりも統計学的に有意に多い場合、その被験体は癌に罹患していると評価する。本発明において対象となる癌の病期は、特に限定はなく、早期癌から末期癌に及ぶ。特に、早期癌であっても、その検出が可能である点において、本発明の実益がある。
早期胃癌とは、腫瘍が胃の粘膜内に留まっていて、周囲組織への浸潤の無いもの、あるいは浸潤があってもその範囲が局所に限局しているものを言う。早期肺癌とは、腫瘍が肺局部に見つかっているものの、気管支を覆う細胞の一部のみに限られているもの、もしくは肺葉内にとどまっており、リンパ節や他の臓器に転移はないものをいう。早期食道癌とは、腫瘍が食道粘膜層にとどまり,リンパ節転移のないものを言う。早期癌は、各々の癌のステージ分類においてステージ0とステージIを含む。癌の早期検出は、5年生存率を著しく向上させる。
このように、本発明の癌の検出方法によれば、体液試料中のUBE2L3タンパク質を、抗体を用いて免疫学的に測定することを含む。本発明の方法によって、被験体が癌に罹患しているか否かを決定又は評価することができるだけでなく、癌患者と非癌患者の識別を可能にする。
3.癌検出用キット
本発明の第三の態様は、癌検出用キットである。
「癌検出用キット」とは、癌の罹患の有無、罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を評価するために、また癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。
本発明のキットは、その構成物として、癌の罹患に関連して体液試料中、特に血液、血清、血漿において発現が変動するUBE2L3タンパク質、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又はUBE2L3タンパク質の変異体、又はそれらの断片を特異的に認識し、また結合可能な物質が包含される。具体的には、例えば、抗UBE2L3抗体等、その断片又はそれらの化学修飾誘導体が含まれる。これらの抗体は、上記のような固相担体に固定されていてもよく、この場合、好ましくは上記のような検査用ストリップに固定されていてもよい。その他、例えば、標識二次抗体、さらには標識の検出に必要な基質、担体、洗浄バッファー、試料希釈液、酵素基質、反応停止液、精製された標準物質としてのUBE2L3タンパク質(又はその変異体又はそれらの断片)、使用説明書等を含んでいてもよい。
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、この実施例によって制限されないものとする。
<参考例>
(1)中空糸フィルターの作製
分画分子量約5万の孔径を膜表面に有するポリスルホン中空糸を100本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管に固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュール(モジュールA)は血清又は血漿中の高分子量タンパク質の除去に用いられ、その直径は約7mm、長さは約17cmである。同様に低分子量タンパク質の濃縮に用いられるミニモジュール(モジュールB)を分画分子量約3千の孔径の膜を用いて作成した。ミニモジュールは片端に中空糸内腔に連結する入口があり、反対側の端は出口となる。中空糸入口と出口は、シリコンチューブによって連結され閉鎖循環系流路を形成している。この流路内を液体がペリスタポンプに駆動されて循環する。流路途中に備えられたT字のコネクターによって、モジュールA3本と、モジュールB1本をタンデムに連結してひとつの中空糸フィルターとした。また、中空糸外套のガラス管には、中空糸から漏出してきた液体を排出するポートが備えられている。このようにして1つのモジュールセットが構築される。この中空糸フィルターを蒸留水にて洗浄し、PBS(0.15mM NaClを含むリン酸緩衝液、pH7.4)水溶液を充填した。その後、分画原料の血清又は血漿が該中空糸フィルターの流路入口から注入され、分画・濃縮後に流路出口から排出される。該中空糸フィルターに注入された血清又は血漿は、モジュールA毎に分子量約5万で分子篩が作用し、分子量5万よりも低分子の成分はモジュールBで濃縮され、調製されるようになっている。
<実施例1>
(1)癌患者血液のタンパク質同定
インフォームドコンセントを得て採血を行い、胃癌患者59名から得た血漿を等量ずつ混合することによりプール血漿を調製した。また、胃癌患者16名から得た血清を等量ずつ混合し、プール血清を調製した。さらに、同年代の健常者5名から得た血漿からプール血漿、及び、健常者5名から得た血清からプール血清をそれぞれ調製した。各プール血漿及びプール血清をポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して夾雑物質を取り除き、タンパク質濃度50mg/mLとなるように調製した。この試料をさらに25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)12.5mg/mLに希釈し、参考例(1)に示した中空糸フィルターを用いて分子量に基づいた分画を行った。分画後の血漿サンプル及び血清サンプル(全量1.8mL、最大250μgのタンパク質を含む)を凍結乾燥した後、100μLの25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)に再溶解した。このサンプルについて、総タンパク質の50分の1量のトリプシンで37℃、2〜3時間の条件でペプチド消化を行い、脱塩カラム(Waters社)による脱塩処理を行った後、さらにイオン交換カラム(KYAテクノロジーズ社)によって8分画化した。その各々の分画を、逆相カラム(KYAテクノロジーズ社)でさらに分画し、溶出されてきたペプチドについて、オンラインで連結された質量分析計Q−TOF Premier(Micromass社)を用いて、3回ずつ独立に測定した。その測定データを、解析ソフトウェアであるMASCOT(マトリックスサイエンス社)によって解析し、それぞれのサンプルに含まれるタンパク質を同定した。解析データを健常者と癌患者間で比較した結果、癌患者においてのみ、MASCOTスコア35以上(危険率5%未満の統計的に有意な信頼性)で検出されるタンパク質としてUBE2L3を見出した。UBE2L3タンパク質は、健常対照者の3回の測定においては2回(表1の健常血漿1、健常血漿3)検出され、胃癌患者血漿において2回(表1の胃癌血漿1、胃癌血漿3)検出された。胃癌血漿のスコアの合計は、健常血漿のスコアの合計に比べて増加していた。また、血清においては、健常対照者の3回の測定においては、いずれも検出されず、胃癌患者血清において3回(表1の血清1、血清2、血清3)検出された。解析の際に算出されたUBE2L3タンパク質に関するMASCOTスコアを表1に記載する。
Figure 2014115186
(2)ウェスタンブロット法による胃癌血液中のUBE2L3タンパク質の検出
胃癌患者15名(ステージI:7名、ステージII:1名、ステージIII:4名、ステージIV:3名)及び健常対照者9名より血清サンプルを得た。各血清サンプル50μLを500μLの検体希釈液(1%NP40、20mM トリス塩酸、150mM NaCl、0.2%BSA)で希釈した後、あらかじめ0.6μgのウサギ抗UBE2L3ポリクローナル抗体(Proteintech Group社)と反応させた10μLの抗ウサギIgG−アガロース(Sigma社)を加え、4℃で一晩反応させた。続いて、各々のサンプルを10000Gで遠心し、上清を除いた後、1mLの検体希釈液を加えて3回洗浄した。このようにして得られたサンプルをLDSサンプルバッファー(Invtrogen社)で可溶化及び沸騰処理を行い、NuPAGE 4−12% Bis−Tris gel (Invitrogen社)を用いて電気泳動にかけた後、タンパク質をPVDF膜へ転写した。これをウサギ抗UBE2L3ポリクローナル抗体、さらにペルオキシダーゼ標識2次抗体(抗ウサギIgG抗体)と反応させた。免疫反応するタンパク質を化学発光基質 Western Lightning Plus(PerkinElmer社)を用いてX線フィルムに感光させ可視化し、UBE2L3に相当するバンドのシグナル強度を、ImageJ(NIH)を用いて画像解析により数値化した。その結果、胃癌患者群において、健常対照者群に比べ高い値を示した(図1)。さらに、UBE2L3タンパク質は、ステージII〜IIIに分類される進行癌や末期癌のみならず、ステージIの早期癌においても健常者と比べ有意に発現量が高い事が示された。
以上、(1)及び(2)の結果から、本発明は、胃癌の検出において有用であることが判明した。
<実施例2>
(1)食道癌、肺癌患者血清と健常人血清とのウェスタンブロット法による比較
ステージIの早期食道癌、早期肺癌の各5検体をそれぞれ等量ずつ混合し、プール血清を調製した。この血清について、<実施例1>(2)と同一の方法でウェスタンブロット法による検体内のUBE2L3タンパク質の量を定量化した。その結果、健常人血清に比べ、食道癌及び肺癌患者血清においても胃癌と同様に、健常人血清よりも強いシグナルが確認された。
以上の結果から、本発明は、上記のような早期癌を含む食道癌又は肺癌の検出においても有用であることが判明した。
本発明により、簡易かつ安価な方法で、癌を効果的に検出することができるため、癌の早期発見、診断及び治療が可能になる。また、本発明の方法により、血液等の患者由来の体液試料を用いて癌を非侵襲的に検出できるため、癌を簡便かつ迅速に検出することが可能になる。

Claims (11)

  1. 被験体由来の体液試料中のUBE2L3タンパク質の量又はUBE2L3タンパク質の存在の有無をインビトロで測定し、UBE2L3タンパク質の量又は存在を指標にして被験体の癌を検出することを特徴とする癌の検出方法であって、癌が、胃癌、肺癌及び食道癌よりなる群から選択される、前記方法。
  2. 前記癌が早期癌である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記UBE2L3タンパク質が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記UBE2L3タンパク質の量の測定値が健常体の対応する測定値と比較して統計学的に有意に大きいとき、前記被験体が癌に罹患していると決定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記測定が前記UBE2L3タンパク質と特異的に結合する物質を用いて行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記物質が抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記体液試料が血液又は尿である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 抗UBE2L3抗体、その断片又はそれらの化学修飾誘導体を含む癌検出用キットであって、癌が、胃癌、肺癌及び食道癌よりなる群から選択される、前記キット。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法で使用するためのものである、請求項8に記載のキット。
  10. 前記抗体、断片又は化学修飾誘導体が担体に固定されている、請求項8又は9に記載のキット。
  11. 前記担体が、検査用ストリップである、請求項10に記載のキット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106018807A (zh) * 2016-05-11 2016-10-12 卢氏实验室公司 一种快速诊断和监控肺癌的免疫层析检测条及其制备方法
WO2018225830A1 (ja) 2017-06-08 2018-12-13 国立大学法人宮崎大学 肺がんの検出方法
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