JP2014110228A - 非水蓄電デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する正極活物質を含有する正極を備える場合でも高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池を与えることのできる非水蓄電デバイス用電解液を提供する。
【解決手段】非水溶媒とリチウム塩とを含む非水蓄電デバイス用電解液であって、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である、非水蓄電デバイス用電解液。
【選択図】なし
【解決手段】非水溶媒とリチウム塩とを含む非水蓄電デバイス用電解液であって、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である、非水蓄電デバイス用電解液。
【選択図】なし
Description
本発明は、非水蓄電デバイス用電解液及び該電解液を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
近年の電子技術の発展や環境技術への関心の高まりに伴い、様々な電気化学デバイスが用いられている。特に、省エネルギー化への要請が多くあり、それに貢献できるものへの期待はますます高くなっている。蓄電デバイスの代表例であるリチウムイオン二次電池は、従来、主として携帯機器用充電地として使用されていたが、近年ではハイブリッド自動車及び電気自動車用電池としての使用が期待されている。
そのような流れの中で、リチウムイオン二次電池にはより一層高いエネルギー密度が求められており、その高いエネルギー密度を達成するため、電池の高電圧化が検討されている。電池の高電圧化を達成するためには高電位で作動する正極を用いる必要があり、具体的には、4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する種々の正極活物質が提案されている(例えば特許文献1参照)。
従来の4V前後の電圧で作動するリチウムイオン二次電池では、カーボネート系溶媒を主成分とした非水溶媒に、リチウム塩を溶解した非水電解液が広く用いられている(例えば特許文献2参照)。このカーボネート系溶媒を含む電解液の特徴は、4V前後の電圧において、耐酸化性と耐還元性とのバランスが良く、かつ、リチウムイオンの伝導性に優れる点である。
ところが、4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する正極活物質を含有する正極を備えた高電圧のリチウムイオン二次電池においては、上記電解液に含まれるカーボネート系溶媒が正極表面にて酸化分解し、電池のサイクル寿命が低下するという課題が生ずる。かかるサイクル寿命の低下に対する解決策は示されておらず、上記高電圧のリチウムイオン二次電池のサイクル寿命を向上させる電解液及びそれを備えたリチウムイオン二次電池が望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する正極活物質を含有する正極を備える場合でも高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池、及び、そのようなリチウムイオン二次電池を与えることのできる非水蓄電デバイス用電解液を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、所定の収束電流値を示す電解液を用いることで、4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する正極活物質を含有する正極を備える場合でも高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]非水溶媒とリチウム塩とを含む非水蓄電デバイス用電解液であって、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である、非水蓄電デバイス用電解液。
[2]前記非水溶媒が、カーボネート溶媒を含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[3]前記非水溶媒が、その非水溶媒の全質量に対して、フッ素原子を有しない非水溶媒を40質量%以上含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[4]前記リチウム塩が、LiPF6を含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[5]前記非水蓄電デバイス用電解液の25℃でのイオン伝導度が4mS/cm以上、かつ40mS/cm以下である、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[6]正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極と、上記非水蓄電デバイス用電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池。
[7]前記正極活物質は、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する、上記リチウムイオン二次電池。
[8]前記正極活物質は、下記一般式(1):
LiMn2-xMaxO4 (1)
(式中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.2≦x≦0.7である。)
で表される化合物、下記一般式(2A):
Li2McO3 (2A)
(式中、Mcは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物と、下記一般式(2B):
LiMdO2 (2B)
(式中、Mdは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物との複合酸化物であって、下記一般式(2):
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (2)
(式中、Mc及びMdは、それぞれ前記一般式(2A)及び(2B)におけるものと同義であり、0.1≦z≦0.9である。)
で表される化合物、下記一般式(3):
LiMb1-yFeyPO4 (3)
(式中、Mbは、Mn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、0≦y≦0.9である。)
で表される化合物、並びに、下記一般式(4):
Li2MePO4F (4)
(式中、Meは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である、上記リチウムイオン二次電池。
[1]非水溶媒とリチウム塩とを含む非水蓄電デバイス用電解液であって、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である、非水蓄電デバイス用電解液。
[2]前記非水溶媒が、カーボネート溶媒を含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[3]前記非水溶媒が、その非水溶媒の全質量に対して、フッ素原子を有しない非水溶媒を40質量%以上含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[4]前記リチウム塩が、LiPF6を含有する、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[5]前記非水蓄電デバイス用電解液の25℃でのイオン伝導度が4mS/cm以上、かつ40mS/cm以下である、上記非水蓄電デバイス用電解液。
[6]正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極と、上記非水蓄電デバイス用電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池。
[7]前記正極活物質は、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する、上記リチウムイオン二次電池。
[8]前記正極活物質は、下記一般式(1):
LiMn2-xMaxO4 (1)
(式中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.2≦x≦0.7である。)
で表される化合物、下記一般式(2A):
Li2McO3 (2A)
(式中、Mcは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物と、下記一般式(2B):
LiMdO2 (2B)
(式中、Mdは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物との複合酸化物であって、下記一般式(2):
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (2)
(式中、Mc及びMdは、それぞれ前記一般式(2A)及び(2B)におけるものと同義であり、0.1≦z≦0.9である。)
で表される化合物、下記一般式(3):
LiMb1-yFeyPO4 (3)
(式中、Mbは、Mn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、0≦y≦0.9である。)
で表される化合物、並びに、下記一般式(4):
Li2MePO4F (4)
(式中、Meは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である、上記リチウムイオン二次電池。
本発明により、高電圧で作動し、かつ、高いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池及びそれに用いる電解液を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態における非水蓄電デバイス用電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)は、非水溶媒とリチウム塩とを含む。
本実施形態における非水蓄電デバイス用電解液に用いられる非水溶媒としては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート;γ−プチロラクトン及びγ−バレロラクトンなどのラクトン;スルホランなどの環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンなどの鎖状エーテルカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本明細書において、ビニレンカーボネートは非水溶媒に含まれないものとする。
非水溶媒としては、イオン伝導性の観点から、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどのカーボネート溶媒を用いることがより好ましい。また、カーボネート溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせて用いることが更に好ましい。環状カーボネートとしては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートが好ましく、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートがより好ましい。鎖状カーボネートとしては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートが好ましい。
カーボネート溶媒が、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含む場合、本実施形態の電解液における環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比は、イオン伝導性の観点から、(環状カーボネート):(鎖状カーボネート)の体積比で1:10〜5:1であることが好ましく、1:5〜3:1であることがより好ましい。
本実施形態の電解液がカーボネート溶媒を含む場合、電池物性を改善する観点から、必要に応じて、アセトニトリル及びスルホラン等の別の非水溶媒を更に含んでもよい。ここで、本実施形態の電解液に含まれる非水溶媒中のカーボネート溶媒の含有割合は、イオン伝導性の観点から、非水溶媒の全質量に対して、50質量%以上、かつ100質量%以下であると好ましく、より好ましくは、60質量%以上、かつ100質量%以下である。
本実施形態における電解液に含まれる非水溶媒は、フッ素原子を有しない非水溶媒を含有することが好ましく、その非水溶媒の全質量に対して、フッ素原子を有しない非水溶媒を40質量%以上含有することがより好ましい。分子構造中にフッ素原子を有しない非水溶媒を用いることにより、電解液の製造コストをより低コストに抑えることが可能となり、かつ一層高いイオン伝導性を担保することができ、これらの効果は、フッ素原子を有しない非水溶媒の含有割合が40質量%以上であることにより、より有効かつ確実に奏される。同様の観点から、フッ素原子を有しない非水溶媒の含有割合は、非水溶媒の全質量に対して、60質量%以上、かつ100質量%以下であると更に好ましく、80質量%以上、かつ100質量%以下であると特に好ましく、90質量%以上、かつ100質量%以下であると極めて好ましい。
フッ素原子を有しない非水溶媒としては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。また、フッ素原子を有しない非水溶媒は、カーボネート溶媒であってもよく、カーボネート溶媒以外の溶媒であってもよい。フッ素原子を有しない非水溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート及び2,3−ペンチレンカーボネートなどの環状カーボネート;γ−プチロラクトン及びγ−バレロラクトンなどのラクトン;スルホランなどの環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンなどの鎖状エーテルカーボネートが挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
フッ素原子を有しない非水溶媒としては、イオン伝導性の観点から、フッ素原子を有しない環状カーボネート、フッ素原子を有しない鎖状カーボネートなどのフッ素原子を有しないカーボネート溶媒を用いることがより好ましい。また、フッ素原子を有しないカーボネート溶媒として、フッ素原子を有しない環状カーボネートとフッ素原子を有しない鎖状カーボネートとを組み合わせて用いることが更に好ましい。フッ素原子を有しない環状カーボネートとしては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。フッ素原子を有しない鎖状カーボネートとしては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートが好ましい。
本実施形態の電解液が、フッ素原子を有しないカーボネート溶媒として、フッ素原子を有しない環状カーボネートとフッ素原子を有しない鎖状カーボネートとを含む場合、本実施形態の電解液におけるそれらの環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比は、イオン伝導性の観点から、(フッ素原子を有しない環状カーボネート):(フッ素原子を有しない鎖状カーボネート)の体積比で1:10〜5:1であることが好ましく、1:5〜3:1であることがより好ましい。
本実施形態の電解液に含まれるリチウム塩としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCIO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO2CkF2k+1)2〔kは1〜8の整数〕、LiPFn(CkF2k+1)6-n〔nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiPF4(C2O4)、及びLiPF2(C2O4)2が挙げられる。これらの電解質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、リチウム塩がLiPF6を含有すると好ましい。
本実施形態の電解液に含まれるリチウム塩の含有割合は、電解液の全質量に対して、イオン伝導性の観点から、1質量%以上であると好ましく、低温での溶解性の観点から、40質量%以下であると好ましい。同様の観点から、リチウム塩の含有割合は、電解液の全質量に対して、好ましくは5質量%以上かつ35質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上かつ30質量%以下である。
本実施形態の電解液は、上記非水溶媒及びリチウム塩に加えて、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。電池のサイクル性能向上及び高電圧での安定性の付与の観点から、添加剤として、リチウムビスオキサボレート、リチウムオキサレートジフルオロボレート、シュウ酸リチウム、コハク酸リチウム、テトラフルオロコハク酸リチウム、アジピン酸リチウム及びグルタル酸リチウムに代表されるリチウム塩構造の添加剤、トリメトキシホスフェート及びトリス(ヘキサフルオロイソプロポキシ)ホスフェートに代表されるリン酸エステル類、トリメトキシホスファイト及びトリス(トリフルオロエトキシ)ホスファイトに代表される亜リン酸エステル類、ビニレンカーボネートを挙げることができる。添加剤の含有割合は特に限定されないが、サイクル性能向上の観点から、電解液の全質量に対して0.001質量%以上が好ましく、イオン伝導性の観点から20質量%以下が好ましい。添加剤の含有割合は、電解液の全質量に対して、より好ましくは0.01質量%以上、かつ10質量%以下であり、更に好ましくは、0.1質量%以上、かつ8質量%以下である。
本実施形態の電解液は、電池の出力性能の観点、及び安全性の観点から、25℃でのイオン伝導度が4mS/cm以上、かつ40mS/cm以下であることが好ましい。そのイオン伝導度は、より好ましくは、5mS/cm以上、かつ40mS/cm以下であり、更に好ましくは、6mS/cm以上、かつ40mS/cm以下である。電解液のイオン伝導度は、公知の電気伝導度計を用いて測定することができる。測定方法の一例として、東亜DKK(株)製の電気伝導度計「CM−21P」(商品名)に接続した東亜DKK(株)製の電気伝導度測定用セル「CT−57101B」(商品名)を、電解液が収容されたサンプル瓶に挿入し、25℃での電解液のイオン伝導度を測定する方法を挙げることができる。
電解液の25℃でのイオン伝導度は、例えば、非水溶媒の種類及び組成を変更することにより、調整することができる。例えば、フッ素原子を有しないカーボネート溶媒を非水溶媒として用いたり、環状カーボネート溶媒と鎖状カーボネート溶媒とを一定の割合で混合したりすることにより、電解液の25℃でのイオン伝導度を高めることができる。
本実施形態の電解液は、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である。収束電流値を0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上とすることにより、特に4.4V(vsLi/Li+)以上で作動する正極活物質を含有する正極を用いた高電圧リチウムイオン二次電池において、サイクル寿命を改善することが可能となる。ただし、その要因(作用機序)は詳細には明らかになっていない。上記収束電流値は、電解液に含まれる非水溶媒、電解質塩、及び、添加剤の種類と量の適宜設定することにより調整することができる。例えば、正極表面に皮膜を形成する添加剤を0.001質量%〜20質量%程度の割合で電解液中に含有させたり、電解液の酸化分解を抑制する添加剤を0.001質量%〜20質量%程度の割合で電解液中に含有させたりすることにより、上記収束電流値を低くすることができる。収束電流値は、特に高電圧のリチウムイオン二次電池のサイクル寿命を向上させる観点から、0.013mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上であると好ましく、0.012mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上であるとより好ましく、0.011mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上であると更に好ましい。
ここで、収束電流値は、下記のようにして測定される。まず、下記のようにして電解液を備えるリチウムイオン二次電池を作製し、その電池に対して、下記のようにして前処理としての充放電を行う。その後、50℃の恒温槽中で、4.9V(vsグラファイト負極)になるまで1Cで電池を充電し、その後、4.9V(vsグラファイト負極)での定電圧充電を6時間行う。この際、6時間の4.9V(vsグラファイト負極)での定電圧充電において、最後の5分間で充電電流値の平均値(mA)を求め、その平均値を正極面積(cm2)で除することにより、収束電流値を測定することができる。
収束電流値の測定に用いるリチウムイオン二次電池は下記のようにして作製されるが、詳細には、実施例に記載の方法に準拠して作製される。まず、LiNi0.5Mn1.5O4正極活物質を正極面積に対して8.8mg/cm2含有した正極(電極面積2.0cm2)と、グラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製、OMAC1.2H/SS)を含有したグラファイト負極と、電解液0.4gと、ポリオレフィン製のセパレータを準備する。これらの正極、負極、電解液及びセパレータをステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に挿入して、電解液を備えるリチウムイオン二次電池を作製することができる。
収束電流値の測定前において、リチウムイオン二次電池の前処理としての充放電は、下記のようにして行われる。まず、上述のようにして作製したリチウムイオン二次電池を25℃で20時間静置する。次いで、静置後の電池に対して、0.2Cの定電流充電で4.9V(vsグラファイト負極)になるまで充電を行い、その後、4.9Vの定電圧充電を8時間行い、更に、3.0V(vsグラファイト負極)になるまで0.2Cの定電流放電を行う。この充放電を、3回繰り返す。その後、50℃の恒温槽中で、電池に対して、1.0Cの定電流充電で4.9V(vsグラファイト負極)になるまで充電を行い、その後、4.9Vの定電圧充電を3時間行い、3.0V(vsグラファイト負極)になるまで1.0Cの定電流放電を行う。この充放電を3回繰り返すことにより、収束電流値の測定前のリチウムイオン二次電池の前処理が完了する。そして、この後に、上述の方法により収束電流値を測定する。
本実施形態の電解液は、非水蓄電デバイス用電解液として好適に用いられる。ここで非水蓄電デバイスとは、蓄電デバイス中の電解液に水溶液を用いない蓄電デバイスであり、一例として、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが挙げられる。この中でも、実用性及び耐久性の観点から、非水蓄電デバイスとしてはリチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)は、上記電解液とを備えていれば特に限定されず、その電解液と、正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極とを備えると好ましい。この電池は、上述の電解液を備える以外は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していてもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極を備えることが好ましい。正極は、リチウムイオン二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
本実施形態の電池は、より高い電圧を実現する観点から、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質を含有する正極を備えることがより好ましい。かかる正極を備えた場合であっても、本実施形態の電池は、リサイクル寿命の向上を可能にする点で有用である。ここで、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質とは、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位でリチウムイオン二次電池の正極として充電及び放電反応を起こし得る正極活物質であり、0.1Cの定電流放電時の放電容量が活物質の質量1gに対して10mAh以上であるものである。よって、正極活物質が、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量(以下、「特定放電容量」という。)を有するか否かの判断において、該正極活物質を含有する正極を備えるリチウムイオン二次電池の満充電時に、4.4V(vsLi/Li+)以上であれば、その正極活物質は特定放電容量を有すると判断できる。そのような正極活物質について、容量が、充電初期又は放電末期において4.4V(vsLi/Li+)以下となることは何ら差し支えない。リチウムイオン二次電池の高容量化の観点から、4.5V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する正極活物質が、より好ましい。
特定放電容量を有する正極活物質は、正極活物質の構造安定性の観点から、好ましくは、下記一般式(1):
LiMn2-xMaxO4 (1)
で表される化合物であるスピネル型酸化物、下記一般式(2A):
Li2McO3 (2A)
で表される化合物と、下記一般式(2B):
LiMdO2 (2B)
で表される化合物との複合酸化物であって、下記一般式(2):
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (2)
で表される化合物であるLi過剰層状酸化物正極活物質、下記一般式(3):
LiMb1-yFeyPO4 (3)
で表される化合物であるオリビン型正極活物質、及び下記一般式(4):
Li2MePO4F (4)
で表される化合物であるフッ化オリビン型正極活物質からなる群より選ばれる1種以上の正極活物質が挙げられる。
ここで、上記各式中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.2≦x≦0.7であり、Mc及びMdは、それぞれ独立に、遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.1≦z≦0.9であり、MbはMn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、0≦y≦0.9であり、Meは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。
LiMn2-xMaxO4 (1)
で表される化合物であるスピネル型酸化物、下記一般式(2A):
Li2McO3 (2A)
で表される化合物と、下記一般式(2B):
LiMdO2 (2B)
で表される化合物との複合酸化物であって、下記一般式(2):
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (2)
で表される化合物であるLi過剰層状酸化物正極活物質、下記一般式(3):
LiMb1-yFeyPO4 (3)
で表される化合物であるオリビン型正極活物質、及び下記一般式(4):
Li2MePO4F (4)
で表される化合物であるフッ化オリビン型正極活物質からなる群より選ばれる1種以上の正極活物質が挙げられる。
ここで、上記各式中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.2≦x≦0.7であり、Mc及びMdは、それぞれ独立に、遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.1≦z≦0.9であり、MbはMn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、0≦y≦0.9であり、Meは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。
上記一般式(1)で表される化合物であるスピネル型酸化物としては、安定性の観点から、下記一般式(1a):
LiMn2-xNixO4 (1a)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、0.2≦x≦0.7である。上記一般式(1)で表される化合物は、より好ましくは、下記一般式(1b):
LiMn2-xNixO4 (1b)
で表される化合物であり(ここで、0.3≦x≦0.6である。)、更に好ましくは、LiMn1.5Ni0.5O4及びLiMn1.6Ni0.4O4である。ここで、上記一般式(1)で表されるスピネル型酸化物は、正極活物質の安定性、電子伝導性等の観点から、Mn原子のモル数に対して10モル%以下の範囲で、上記構造以外に、更に遷移金属又は遷移金属酸化物を含有してもよい。上記一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
LiMn2-xNixO4 (1a)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、0.2≦x≦0.7である。上記一般式(1)で表される化合物は、より好ましくは、下記一般式(1b):
LiMn2-xNixO4 (1b)
で表される化合物であり(ここで、0.3≦x≦0.6である。)、更に好ましくは、LiMn1.5Ni0.5O4及びLiMn1.6Ni0.4O4である。ここで、上記一般式(1)で表されるスピネル型酸化物は、正極活物質の安定性、電子伝導性等の観点から、Mn原子のモル数に対して10モル%以下の範囲で、上記構造以外に、更に遷移金属又は遷移金属酸化物を含有してもよい。上記一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記一般式(3)で表される化合物であるオリビン型正極活物質としては、安定性、電子伝導性の観点から、下記一般式(3a):
LiMn1-yFeyPO4 (3a)
及び、下記一般式(3b):
LiCo1-yFeyPO4 (3b)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、式(3a)及び(3b)において、それぞれ独立に0.05≦y≦0.8である。上記一般式(3)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
LiMn1-yFeyPO4 (3a)
及び、下記一般式(3b):
LiCo1-yFeyPO4 (3b)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、式(3a)及び(3b)において、それぞれ独立に0.05≦y≦0.8である。上記一般式(3)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記一般式(4)で表される化合物であるフッ化オリビン型正極活物質は、安定性の観点から、Li2FePO4F、Li2MnPO4F及びLi2CoPO4Fであることが好ましい。上記一般式(4)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記一般式(2)で表される化合物であるLi過剰層状酸化物正極活物質としては、安定性の観点から、下記一般式(2a):
zLi2MnO3−(1−z)LiNiaMnbCocO2 (2a)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、式中、0.3≦z≦0.7、a+b+c=1、0.2≦a≦0.6、0.2≦b≦0.6、0.05≦c≦0.4である。中でも、上記式(2a)において、0.4≦z≦0.6、a+b+c=1、0.3≦a≦0.4、0.3≦b≦0.4、0.2≦c≦0.3である化合物がより好ましい。
zLi2MnO3−(1−z)LiNiaMnbCocO2 (2a)
で表される化合物であることが好ましい。ここで、式中、0.3≦z≦0.7、a+b+c=1、0.2≦a≦0.6、0.2≦b≦0.6、0.05≦c≦0.4である。中でも、上記式(2a)において、0.4≦z≦0.6、a+b+c=1、0.3≦a≦0.4、0.3≦b≦0.4、0.2≦c≦0.3である化合物がより好ましい。
上記特定放電容量を有する正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、正極活物質として、特定放電容量を有する正極活物質と、特定放電容量を有しない正極活物質とを組み合わせて用いることもできる。特定放電容量を有しない正極活物質の代表例としては、LiFePO4が挙げられる。
正極活物質は、一般的な無機酸化物の合成方法と同様の方法で合成できる。例えば、所定の割合で金属塩(例えば硫酸塩及び/又は硝酸塩)を混合した混合物を、酸素を含む雰囲気環境下で焼成することで無機酸化物を含む正極活物質を得ることができる。あるいは、金属塩を溶解させた液に炭酸塩及び/又は水酸化物塩を作用させて難溶性の金属塩を析出させ、それを抽出分離したものに、リチウム源として炭酸リチウム及び/又は水酸化リチウムを混合した後、酸素を含む雰囲気環境下で焼成することで、無機酸化物を含む正極活物質を得ることができる。
ここで、正極の作製方法の一例を以下に示す。まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤を含有するペーストを調製する。次いで、このペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚さを調整することによって、正極が作製される。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、負極を備えることが好ましい。負極は、リチウムイオン二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。すなわち、負極は、負極活物質として、炭素負極活物質、ケイ素合金負極活物質及びスズ合金負極活物質に代表されるリチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質;ケイ素酸化物負極活物質;スズ酸化物負極活物質;及びチタン酸リチウム負極活物質に代表されるリチウム含有化合物;からなる群より選ばれる1種以上の負極活物質を含有することが好ましい。これらの負極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
炭素負極活物質としては、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド及びカーボンブラックが挙げられる。コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。
リチウムと合金を形成可能な元素を含む負極活物質は、金属又は半金属の単体であっても、合金や化合物であってもよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。なお、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。また、合金には、全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素が含まれていてもよい。
金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素及びスズである。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤を含有するペーストを調製する。次いで、このペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が作製される。負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
正極及び負極の作製において、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどのカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えることが好ましい。セパレータとしては、公知のリチウムイオン二次電池に備えられるものと同様のものを用いることができ、中でも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、及び合成樹脂製微多孔膜が挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含有する微多孔膜、又はこれらのポリオレフィンを共に含有する微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製などの耐熱樹脂製の多孔膜が用いられる。セパレータは、1種の微多孔膜を単層又は複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、例えば、セパレータと、そのセパレータを両側から挟む正極と負極と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体(正極の外側に配置)と、負極集電体(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装とを備える。正極とセパレータと負極とを積層した積層体は、本実施形態の電解液に含浸されている。
図1は、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の一例を概略断面図で示すものである。図1に示されるリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120と負極130と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体140(正極の外側に配置)と、負極集電体150(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装160とを備える。正極120とセパレータ110と負極130とを積層した積層体は、本実施形態の電解液に含浸されている。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、正極、負極及び必要に応じてセパレータを用いて、公知の方法により作製することができる。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形し、次いで、電池ケース(外装)内にその積層体を収容して、本実施形態の電解液をケース内部に注液し、上記積層体をその電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を作製することができる。本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
[実施例1]
<正極活物質の合成>
(LiNi0.5Mn1.5O4の合成)
遷移金属元素のモル比として1:3の割合となる量の硫酸ニッケルと硫酸マンガンとを水に溶解し、金属イオン濃度の総和が2mol/Lになるようにニッケル−マンガン混合水溶液を調製した。次いで、このニッケル−マンガン混合水溶液を、70℃に加温した濃度2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液3000mL中に、12.5mL/minの添加速度で120分間滴下した。なお、滴下中は、攪拌の下、200mL/minの流量の空気を水溶液中にバブリングしながら吹き込んだ。これにより、析出物質が発生し、得られた析出物質を蒸留水で十分洗浄し、乾燥して、ニッケルマンガン化合物を得た。得られたニッケルマンガン化合物と粒径2μmの炭酸リチウムとを、リチウム:ニッケル:マンガンのモル比が1:0.5:1.5になるように秤量し、1時間乾式混合した後、得られた混合物を酸素雰囲気下において1000℃で5時間焼成し、LiNi0.5Mn1.5O4で表される正極活物質を得た。
<正極活物質の合成>
(LiNi0.5Mn1.5O4の合成)
遷移金属元素のモル比として1:3の割合となる量の硫酸ニッケルと硫酸マンガンとを水に溶解し、金属イオン濃度の総和が2mol/Lになるようにニッケル−マンガン混合水溶液を調製した。次いで、このニッケル−マンガン混合水溶液を、70℃に加温した濃度2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液3000mL中に、12.5mL/minの添加速度で120分間滴下した。なお、滴下中は、攪拌の下、200mL/minの流量の空気を水溶液中にバブリングしながら吹き込んだ。これにより、析出物質が発生し、得られた析出物質を蒸留水で十分洗浄し、乾燥して、ニッケルマンガン化合物を得た。得られたニッケルマンガン化合物と粒径2μmの炭酸リチウムとを、リチウム:ニッケル:マンガンのモル比が1:0.5:1.5になるように秤量し、1時間乾式混合した後、得られた混合物を酸素雰囲気下において1000℃で5時間焼成し、LiNi0.5Mn1.5O4で表される正極活物質を得た。
上述のようにして得られた正極活物質と、導電助剤としてグラファイトの粉末(TIMCAL社製、商品名「KS−6」)とアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、商品名「L#7208」)とを、固形分比で80:5:5:10の質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分35質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極を得た。
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製、商品名「OMAC1.2H/SS」)及び別のグラファイト粉末(TIMCAL社製、商品名「SFG6」)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合した。得られた混合物を、固形分濃度が45質量%となるように、分散溶媒としての水に添加して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極を得た。
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製、商品名「OMAC1.2H/SS」)及び別のグラファイト粉末(TIMCAL社製、商品名「SFG6」)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合した。得られた混合物を、固形分濃度が45質量%となるように、分散溶媒としての水に添加して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極を得た。
<電解液の調製>
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した非水溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解し、コハク酸リチウムを電解液に対して1質量%になるよう添加し、撹拌することで電解液Aを得た。
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した非水溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解し、コハク酸リチウムを電解液に対して1質量%になるよう添加し、撹拌することで電解液Aを得た。
<電池の作製>
上述のようにして作製した正極と負極とをポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液Aを0.5mL注入し、積層体を電解液Aに浸漬した後、電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池を作製した。
上述のようにして作製した正極と負極とをポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液Aを0.5mL注入し、積層体を電解液Aに浸漬した後、電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池を作製した。
<収束電流値測定>
(前処理充放電)
得られたリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で8時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。この充放電を3回繰り返した後、恒温槽を50℃に設定し、1.0Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で3時間充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電を3回行った。
(前処理充放電)
得られたリチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で8時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。この充放電を3回繰り返した後、恒温槽を50℃に設定し、1.0Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で3時間充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電を3回行った。
(収束電流値測定)
上記前処理充放電後の電池を、50℃に設定した恒温槽中で、1.0Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で6時間充電した。その6時間の充電のうち、最後の5分間の充電電流値の平均値(mA)を求め、正極面積(2cm2)で除することにより収束電流値を測定した。結果、電解液Aの収束電流値は、0.0107mA/cm2と低い値であった。
上記前処理充放電後の電池を、50℃に設定した恒温槽中で、1.0Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で6時間充電した。その6時間の充電のうち、最後の5分間の充電電流値の平均値(mA)を求め、正極面積(2cm2)で除することにより収束電流値を測定した。結果、電解液Aの収束電流値は、0.0107mA/cm2と低い値であった。
<電池性能評価>
上述の<電池の作製>に記載の方法と同様にして、電池性能評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で8時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。その後、50℃に設定した恒温槽中で、その電池を1.0Cの定電流で4.9Vまで充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電した。この一連の充放電を1サイクルとし、更に29サイクル充放電を繰り返し、全体で30サイクルのサイクル充放電を行った。1サイクル目及び30サイクル目の正極活物質質量当たりの放電容量を確認した。結果、電解液Aを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、112mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、87mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、78%と高い値を示した。
上述の<電池の作製>に記載の方法と同様にして、電池性能評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名「PLM−73S」)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名「ACD−01」)に接続し、20時間静置した。次いで、その電池を0.2Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧で8時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。その後、50℃に設定した恒温槽中で、その電池を1.0Cの定電流で4.9Vまで充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電した。この一連の充放電を1サイクルとし、更に29サイクル充放電を繰り返し、全体で30サイクルのサイクル充放電を行った。1サイクル目及び30サイクル目の正極活物質質量当たりの放電容量を確認した。結果、電解液Aを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、112mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量は、87mAh/gと高く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、78%と高い値を示した。
<電解液のイオン伝導度測定>
25℃の恒温室中に設置したアルゴングローブボックス中で、東亜DKK(株)製の電気伝導度計「CM−21P」(商品名)に接続した東亜DKK(株)製の電気伝導度測定用セル「CT−57101B」(商品名)を、電解液Aが10g収容されたポリプロピレン製サンプル瓶に挿入して、25℃での電解液Aのイオン伝導度を測定した。結果、電解液Aのイオン伝導度は9.4mS/cmと高かった。
25℃の恒温室中に設置したアルゴングローブボックス中で、東亜DKK(株)製の電気伝導度計「CM−21P」(商品名)に接続した東亜DKK(株)製の電気伝導度測定用セル「CT−57101B」(商品名)を、電解液Aが10g収容されたポリプロピレン製サンプル瓶に挿入して、25℃での電解液Aのイオン伝導度を測定した。結果、電解液Aのイオン伝導度は9.4mS/cmと高かった。
[比較例1]
電解液として、電解液Aの代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した非水溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解して得た電解液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、収束電流値測定を行った。結果、電解液Bの収束電流値は、0.0171mA/cm2と高い値であった。
電解液として、電解液Aの代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した非水溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解して得た電解液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、収束電流値測定を行った。結果、電解液Bの収束電流値は、0.0171mA/cm2と高い値であった。
また、実施例1と同様にして、電解液Bを備えるリチウムイオン二次電池の電池性能評価を行った。結果、電解液Bを備えるリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量は、89mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は、53mAh/gと低く、30サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した放電容量維持率は、60%と低い値を示した。
また、実施例1と同様にして、25℃での電解液Bのイオン伝導度を測定したところ、電解液Bのイオン伝導度は9.3mS/cmと高かった。
本発明の非水蓄電デバイス用電解液、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池は、各種民生用機器用電源、自動車用電源への産業上利用可能性を有する。
100…リチウムイオン二次電池、110…セパレータ、120…正極、130…負極、140…正極集電体、150…負極集電体、160…電池外装。
Claims (8)
- 非水溶媒とリチウム塩とを含む非水蓄電デバイス用電解液であって、50℃で4.9V(vsグラファイト負極)の定電圧充電における収束電流値が、0.015mA/cm2以下、かつ0.0001mA/cm2以上である、非水蓄電デバイス用電解液。
- 前記非水溶媒が、カーボネート溶媒を含有する、請求項1に記載の非水蓄電デバイス用電解液。
- 前記非水溶媒が、その非水溶媒の全質量に対して、フッ素原子を有しない非水溶媒を40質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の非水蓄電デバイス用電解液。
- 前記リチウム塩が、LiPF6を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水蓄電デバイス用電解液。
- 前記非水蓄電デバイス用電解液の25℃でのイオン伝導度が4mS/cm以上、かつ40mS/cm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水蓄電デバイス用電解液。
- 正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水蓄電デバイス用電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池。
- 前記正極活物質は、4.4V(vsLi/Li+)以上の電位で10mAh/g以上の放電容量を有する、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記正極活物質は、下記一般式(1):
LiMn2-xMaxO4 (1)
(式中、Maは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示し、0.2≦x≦0.7である。)
で表される化合物、下記一般式(2A):
Li2McO3 (2A)
(式中、Mcは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物と、下記一般式(2B):
LiMdO2 (2B)
(式中、Mdは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される酸化物との複合酸化物であって、下記一般式(2):
zLi2McO3−(1−z)LiMdO2 (2)
(式中、Mc及びMdは、それぞれ前記一般式(2A)及び(2B)におけるものと同義であり、0.1≦z≦0.9である。)
で表される化合物、下記一般式(3):
LiMb1-yFeyPO4 (3)
(式中、Mbは、Mn及びCoからなる群より選ばれる1種以上を示し、0≦y≦0.9である。)
で表される化合物、並びに、下記一般式(4):
Li2MePO4F (4)
(式中、Meは遷移金属からなる群より選ばれる1種以上を示す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6又は7に記載のリチウムイオン二次電池。
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