JP2014110193A - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】空気極にプラセオジムを含む材料を用いても、発電性能の劣化などがない状態で、固体酸化物型燃料電池の単セルをより大きな面積に形成できるようにする。
【解決手段】空気極103は、電解質101の他方の面の側に形成された活性層104、および活性層104の上に接して形成された集電層105を備え、活性層104は、セリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611を含むイオン伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、集電層105は、ランタン系ペロブスカイト型酸化物からなる電子伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成されている。加えて、活性層104は、複数の島状部分141から構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ペロブスカイト型の金属酸化物を含んで構成された空気極を用いる固体酸化物形燃料電池に関するものである。
固体酸化物形燃料電池(SOFC:solid oxide fuel cells)は、他の燃料電池より高い電気変換効率・出力密度を有するため、分散電源として積極的に開発が進められている。燃料電池は、電解質と、電解質の一方の面の上に形成された燃料極と、電解質の他方の面に形成された空気極を基本的な構成要件とする単セルから構成され、複数の単セルを積層したスタック構造とし、実用的な電圧を得るようにしている。
固体酸化物形燃料電池の一般的な構成材料として、電解質には安定化ジルコニアが用いられ、空気極には希土類をドープしたランタンマンガナイトが用いられ、燃料極にはニッケルージルコニアサーメットが用いられている。固体酸化物形燃料電池は、すべての構成部がセラミックス材料である。また、固体酸化物形燃料電池は、異なる材料の積層構造となっている。
固体酸化物形燃料電池の運転温度は、単セルを構成する材料の抵抗や電極の活性により決定される。固体酸化物形燃料電池は、当初、動作温度が900〜1000℃と高く、全ての部材がセラミックスで構成されていた。このため、セルスタックの製造コストの低減が容易ではなかった。ここで、動作温度を800℃以下まで低下させることができれば、スタック構造の単セル間に配置するインターコネクタを、耐熱合金材料から構成することが可能となり、製造コストの低減が可能となる。
ところが、動作温度を低下させると、空気極における電気化学的な抵抗(過電圧)が、急激に増大して出力電圧の低下を招くという問題がある。この問題を解消するために、空気極に、低温でも高い電極活性(電気化学反応の性能)を発揮するペロブスカイト型の金属酸化物(ペロブスカイト酸化物)を用いる技術がある。このような材料として、La1-XSrXFe1-YCoY3(LSFC:X=0.1〜0.3,Y=0.1〜0.6,X+Y<0.7)、La1-XSrXCoO3(X=0.1〜0.5)、LaNi1-XFeX3(LNF:X=0.3〜0.8)などの、高い電極活性(電気化学反応の性能)を有するペロブスカイト型の金属酸化物(ペロブスカイト酸化物)がある。
しかしながら、空気極はジルコニアを含む電解質と接した状態で焼成することで製造されるため、空気極に上述した材料を用いると、電解質と接触している部分にLa2Zr27などの高抵抗反応生成物が形成され、この生成物が、空気極における特性を低下させる原因の一つとなることが報告されている。この問題を防ぐために、空気極と電解質との間に、Ce0.9Gd0.12,Ce0.8Sm0.22などの、希土類を添加したセリウム酸化物(セリア化合物)からなる層を設け、空気極側のペロブスカイト酸化物と電解質側のジルコニアとの接触を断つ方法が提案されている(非特許文献1参照)。
また、上述したセリア化合物は、還元雰囲気では電子伝導性も現れる。この特性を生かし、燃料極の電極活性を向上させるためにNiに上述のセリア系の材料を混合して用いる試みもある。ただし、空気雰囲気では、主にイオン導電性のみであり、上述した還元性雰囲気における効果は小さい。
一方、セリア化合物としてPrをドープした材料を用いると、高酸素分圧下でも電子伝導性を示す。Prドープセリア(セリウムとプラセオジムとの酸化物)は、空気極の雰囲気においても、イオン伝導性に加えて電気伝導性も発現する混合導電性を示すため、空気極に適用することで電極反応場である三相界面を増大し電極活性が大きく向上することが確認されている(特許文献1,非特許文献2参照)。
特開2011−119178号公報
堀田 照久 他、「熱力学的解析によるSOFC劣化機構の解析と耐久性向上」。第19回燃料電池シンポジウム講演予稿集 B2、79〜82頁、2012年。 R. Chiba, H. Taguchi, T.Komatsu, H. Orui, K. Nozawa, H. Arai, "High temperature properties of Ce1-xPrxO2-δ as an active layer material for SOFC cathodes", Solid State Ionics, vol.197, pp.42-48, 2011.
しかしながら、空気極にセリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611などのプラセオジムを含む材料を用いて大きな面積の単セルを形成した場合、発電性能の劣化が発生する場合が確認された。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、空気極にプラセオジムを含む材料を用いても、発電性能の劣化などがない状態で、固体酸化物型燃料電池の単セルをより大きな面積に形成できるようにすることを目的とする。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、電解質、この電解質の一方の面の上に形成された燃料極、および電解質の他方の面に形成された空気極を備え、空気極は、電解質の他方の面の側に形成された活性層、および活性層の上に接して形成された集電層を備え、活性層は、セリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611を含むイオン伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、集電層は、ランタン系ペロブスカイト型酸化物からなる電子伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、活性層は、複数の島状部分から構成され、集電層は、活性層を構成する複数の島状部分を覆って形成されている。
上記固体酸化物形燃料電池において、空気極と電解質との間に配置され、セリウムとサマリウムとの酸化物もしくはセリウムとガドリニウムとの酸化物からなる反応抑制層を備えるようにしてもよい。なお、活性層は、集電層を構成しているランタン系ペロブスカイト型酸化物を含んで形成されていてもよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、空気極にプラセオジムを含む材料を用いても、発電性能の劣化などがない状態で、固体酸化物型燃料電池の単セルをより大きな面積に形成できるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態における固体酸化物形燃料電池の一部構成を示す断面図である。 図2は、本発明の実施の形態における他の固体酸化物形燃料電池の一部構成を示す断面図である。 図3は、単セルの構成を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における固体酸化物形燃料電池の一部構成を模式的に示す断面図である。この固体酸化物形燃料電池は、まず、電解質101、電解質101の一方の面の上に形成された燃料極102、および電解質101の他方の面に形成された空気極103を備える。
空気極103は、電解質101の他方の面の側に形成された活性層104、および活性層104の上に接して形成された集電層105を備え、活性層104は、セリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611を含むイオン伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、集電層105は、ランタン系ペロブスカイト型酸化物からなる電子伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成されている。
例えば、活性層104は、CexPr1-xOの粉体の焼結体、Pr611の粉体の焼結体、CexPr1-xOの粉体とLaNi1-XFeX3(LNF)の粉体との混合粉体の焼結体、または、Pr611の粉体とLNFの粉体との混合粉体の焼結体である。また、集電層105は、LNFの粉体の焼結体である。このように、活性層104は、集電層105を構成しているランタン系ペロブスカイト型酸化物を含んで形成されていてもよい。
加えて、活性層104は、複数の島状部分141から構成され、集電層105は、活性層104を構成する複数の島状部分141を覆って形成されている。隣り合う島状部分141は、各々離間して形成されている。従って、複数の島状部分141からなる活性層104は、平面視で空気極103形成領域の100%未満の部分を占めた状態となっている。また、個々の島状部分141は、電解質101側の電解質101との接触面以外の側面および上面が、集電層105に接触していることになる。
なお、電解質101は、例えば、酸化スカンジウム(Sc23)および酸化アルミニウム(Al23)安定化ZrO2(SASZ),イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)などのジルコニア材料の粉体(粉末)の焼結体から構成されていればよい。また、燃料極102は、例えば、ニッケル−イットリア安定化ジルコニアサーメット(Ni−YSZ),ニッケル−スカンジア安定化ジルコニア(Ni−ScSZ)などの、電解質101を構成する酸化物材料に金属ニッケルが混合された電子伝導性を有する金属−酸化物混合体(サーメット)の粉体の焼結体から構成されていればよい。
また、これらの各層は、よく知られているように、粉体もしくは混合粉体のスラリーを作製し、ドクターブレード法による成形やスクリーン印刷法による塗布で、スラリーの膜(層)を形成し、これを1000〜1400℃で焼成することで作製することができる。ここで、よく知られているように、電解質101は、粉体の粒径などの制御,スラリーにおける粉体の割合,バインダーの選択などにより、ガスが通過しない緻密な構造の焼結体とする。一方、燃料極102および空気極103は、上記スラリーにおける粉体の粒径の制御およびカーボン粉末(造孔材)などの添加により、多孔体である焼結体の平均細孔径,気孔率などを所望の状態とし、ガスが透過するものとする。
上述した実施の形態における固体酸化物形燃料電池によれば、空気極103を、上述した材料による複数の島状部分141からなる活性層104と、これらを覆うように形成した集電層105とから構成したので、後述する実験の結果にも示すように、固体酸化物型燃料電池の単セルを直径110mm程度とより大きな面積に形成しても、発電性能の劣化が抑制できるようになる。
この効果については、プラセオジムを含まない層より大きな熱膨張率を備えるプラセオジムを含む層の、熱変化を受けたときの体積変化の影響が、複数の島状部分141から構成することで抑制できたことによるものと考えられる。
プラセオジムを含む材料から構成した層は、他の層に比較して熱膨張率が高い。このような特性を持つ材料で大きな面積の空気極を形成すると、セル形成時の焼成や、発電動作時の単セルの温度上昇・温度下降において、剥離や破損が発生しやすい状態となる。このような剥離や破損が発生すると、発電性能が劣化する。
これに対し、活性層104は、複数の島状部分141から構成しているので、熱変化時に体積変化が発生しても、これが、個々の島状部分141で発生するため、大面積に一体に形成した場合に比較して、他の層との間の剥離や破損が抑制されるものと考えられる。この結果、本実施の形態によれば、大面積な単セルを形成しても、発電性能の劣化が抑制できたものと考えられる。また、活性層104を複数の島状部分141から構成することで、燃料電池の電極反応場である三相界面の増大が見込める。
ところで、図2に示すように、空気極103と電解質101との間に、セリウムとサマリウムとの酸化物もしくはセリウムとガドリニウムとの酸化物からなる反応抑制層106を設けるようにしてもよい。図1を用いて説明した構成では、集電層105が電解質101に接触する部分が発生するが、反応抑制層106を用いることで、集電層105と電解質101との接触が防げ、高抵抗反応生成物の形成がより防げるようになり、より高い電極性能が得られるようになる。
なお、実使用では、電解質101,燃料極102,および空気極103から構成された複数の単セルが、インタコネクタ(セパレータ)を介して積層されて実用的な電圧を取り出すように構成されている。また、都市ガスなどの炭化水素ガスを改質して得られた水素を含む燃料ガスが燃料極102に供給され、酸化剤ガスとしての酸素を含む空気が空気極103に供給されることで、発電動作が行われる。
[実施例]
次に、実施例を用いてより詳細に説明する。以下では、実際に単セルを作製して行った実験の結果について説明する。
はじめに、試料となる固体酸化物形燃料電池の単セルの作製について説明する。作製した単セルは、燃料極支持型とし、支持体となる燃料極は直径120mmの円板形状とし、空気極は直径110mmの円板形状とした。
まず、支持体となる燃料極基板を作製する。平均粒径が3.0μmのニッケル粉末と電解質に用いる平均粒径が約0.2〜0.4μmのジルコニア粉末とを6:4の重量比で混合した混合粉体のスラリーを作製する。ジルコニア粉末は、8mol%Y23が添加された安定化ZrO2(YSZ)、または、Al23を少量ドープしたスカンジア安定化ジルコニア(Zr(Sc,Al23)O2 ;SASZ)である。また、上記混合粉末に、バインダー,可塑剤,分散剤などを加えてスラリーとし、このスラリーを、ドクターブレード法により厚さ300〜600μmのシート状に成形し、乾燥させて燃料極シートとする。また、形成した燃料極シートを積層して所望とする厚さとし、これらをホットプレスし、燃料極基板シート積層体を作製する。
次に、上述した燃料極基板シート積層体の上(表面)に電解質スラリーを塗布する。電解質スラリーは、平均粒径0.2〜0.4μmの8mol%Y23が添加された安定化ZrO2(YSZ)粉末、または、Al23を少量ドープしたスカンジア安定化ジルコニア(Zr(Sc,Al23)O2 ;SASZ)粉末に、バインダー,可塑剤,分散剤などを加えて作製したものである。電解質スラリーを、スクリーン印刷法により塗布して乾燥させ、厚さ7〜20μmの電解質塗布層を、燃料極基板シート積層体の表面に形成する。このようにして作製した電解質塗布層が形成された燃料極基板シート積層体を、適宜に切り出して直径120mmの円板形状に成型し、これを1300〜1350℃の温度条件で焼成し、電解質が形成されている燃料極基板を作製する。
以上のように形成した燃料極基板の電解質の上に、以下に説明する各条件で、空気極(活性層および集電層)を形成する。はじめに、比較対象となる比較試料セルの作製について説明する。
[比較試料セル:1−0−0]
平均粒径が1.0μmのLaNi0.6Fe0.43(LNF)粉末と粒径0.2μmのCe0.9Gd0.12(GDC)粉末とを混合し(GDCが50wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により平面的に塗布して活性層塗布膜を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLaNi0.6Fe0.43(LNF)粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布膜の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。各塗布膜は、平面視で直径110mmの円形に形成する。この状態で、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。
[比較試料セル:1−1−0]
平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのCe0.2Pr0.82(PDC)粉末とを混合し(PDCが50wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により塗布して活性層塗布膜を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布膜の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。各塗布膜は、平面視で直径110mmの円形に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。
[比較試料セル:1−2−0]
この比較試料セル1−2−0は、空気極と電解質との間に、反応抑制層を備える構成とする。まず、平均粒径0.2μmのCe0.9Gd0.12(GDC)のスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により塗布して反応抑制層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に反応抑制層を形成する。
次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのPDC粉末とを混合し(PDCが50wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次いで、作製した混合粉末のスラリーを既に形成してある反応抑制層上にスクリーン印刷法により塗布・乾燥して活性層塗布膜を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布膜の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。各塗布膜は、平面視で直径110mmの円形に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、反応抑制層を介して活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。
次に、試料セルの作製について説明する。試料セルでは、活性層を、複数の島状部分から構成する。各島状部分は、平面視略六角形の形状とし、六角形の径の最大値は1mmとした。
[試料セル:1−1−1]
平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのPDC粉末とを混合し(PDCが50wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを用いたスクリーン印刷法により、燃料極基板の電解質上に、複数の島パターンからなる活性層塗布層を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。活性層塗布層および集電層塗布膜は、平面視で直径110mmの円形の空気極領域内に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、複数の島状部分からなる活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層(島状部分)の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。また、複数の島状部分は、直径110mmの空気極の円形領域において、占有する領域の割合(被覆率)を70%とした。
[試料セル:1−1−2]
試料セル1−1−2は、空気極と電解質との間に、反応抑制層を備える構成とする。まず、平均粒径0.2μmのGDCのスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により塗布して反応抑制層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に反応抑制層を形成する。
次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのPDC粉末とを混合し(PDCが50wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを用いたスクリーン印刷法により、反応抑制層の上に、複数の島パターンからなる活性層塗布層を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。活性層塗布層および集電層塗布膜は、平面視で直径110mmの円形の空気極領域内に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、反応抑制層を介して複数の島状部分からなる活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層(島状部分)の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。また、複数の島状部分の被覆率は、70%とした。
[試料セル:1−1−3]
試料セル1−1−2と同様に作製し、試料セル1−1−3では、活性層を構成する複数の島状部分の被覆率を51%とした。
[試料セル:1−1−4]
試料セル1−1−2と同様に作製し、試料セル1−1−4では、活性層を構成する複数の島状部分の被覆率を80%とした。
[試料セル:1−1−5]
試料セル1−1−5は、空気極と電解質との間に、反応抑制層を備える構成とする。まず、平均粒径0.2μmのGDCのスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により塗布して反応抑制層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に反応抑制層を形成する。
次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのPDC粉末とを混合し(PDCが80wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを用いたスクリーン印刷法により、反応抑制層の上に、複数の島パターンからなる活性層塗布層を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。活性層塗布層および集電層塗布膜は、平面視で直径110mmの円形の空気極領域内に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、反応抑制層を介して複数の島状部分からなる活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層(島状部分)の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。また、複数の島状部分の被覆率は、70%とした。
[試料セル:1−1−6]
試料セル1−1−6は、空気極と電解質との間に、反応抑制層を備える構成とする。まず、平均粒径0.2μmのGDCのスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを、燃料極基板の電解質上にスクリーン印刷法により塗布して反応抑制層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に反応抑制層を形成する。
次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末と粒径0.2μmのPDC粉末とを混合し(PDCが20wt%)、この混合粉末のスラリーを作製する。次に、作製した混合粉末のスラリーを用いたスクリーン印刷法により、反応抑制層の上に、複数の島パターンからなる活性層塗布層を形成する。次に、平均粒径が1.0μmのLNF粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを、活性層塗布層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。活性層塗布層および集電層塗布膜は、平面視で直径110mmの円形の空気極領域内に形成する。この状態で、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質の上に、反応抑制層を介して複数の島状部分からなる活性層および集電層の積層構造からなる空気極を形成し、単セルとする。なお、活性層(島状部分)の厚さは約5μm,集電層の厚さは60μmである。また、複数の島状部分による被覆率は、70%とした。
以上の各比較試料および試料を用い、ガスの分配と集電の機能を備えた耐熱合金製のセパレータ内に設置し、800℃の電気炉内で発電試験を行い、出力電圧0.8Vにおける出力密度を測定した。各比較試料および試料に対する測定結果を以下の表1に示す。
Figure 2014110193
表2に示すように、活性層を直径110mmの大面積一体に形成した比較例1−1−0,1−2−0では活性層にPDCを用いているにもかかわらず、比較例1−0−0に対して出力の向上は見られなかった。一方、試料セル(1−1−1〜1−1−6)では、いずれも比較試料セル(1−0−0〜1−2−0)に比べて出力密度が向上している。
上述した結果は、以下に示すことによるものと考えられる。まず、比較試料の結果は、Pr系材料による層の熱膨張率が他の層の構成材料に比べて大きいことにより、各層間に応力が発生し、部分的な剥離などが生じていることによるものと考えられる。これに対し、Pr系材料を用いた活性層を複数の島状部分から構成することにより熱膨張率差に起因する応力の問題が抑制され、部分的な剥離や亀裂および破損などが抑えられ、試料においては、Pr系材料を用いたことによる本来の高い電極特性が発現するためと考えられる。
また、表1に示すように、反応抑制層を用いた試料1−1−2に示すように、反応抑制層を用いることで、より高い電極特性が得られるようになる。また、活性層被覆率が高く、電極活性層におけるPDC混合比が多いほど、高い電極特性が得られる傾向がある。
また、試料セル1−1−2について、1000時間の連続発電試験を行い、この間に「室温⇔800℃」のヒートサイクル試験を2回行ったが、初期の特性に比べて顕著な出力低下は見られなかった。このことから、Pr系材料を用いても、本実施の形態によれば、高い信頼性が得られることが分かる。更に、試料セル1−1−3について、活性層を構成するPDCの組成を、Ce0.9Pr0.12からPr611まで変更して出力密度の測定を実施したが、いずれも0.50W/cm2以上の出力密度を示した。また、試料セル1−1−3の反応抑制層をCe0.8Sm0.22に変更した単セルを作製し、この単セルの出力特性を測定したが、試料セル1−1−3とほぼ同等の0.51W/cm2の出力密度を示した。従って、反応抑制層は、セリウムとサマリウムとの酸化物もしくはセリウムとガドリニウムとの酸化物から構成されていればよいことが分かる。
ここで、空気極(集電層)に、セリア化合物としてPrをドープした材料を用いることによる効果について、単セルを作製して行った実験結果を基に説明する。
[単セルの作製]
まず、Sc23,Al23添加ジルコニア(0.89ZrO2−0.10Sc23−0.01Al23:SASZ)からなる電解質基板を用意する。上記材料の粉体によるスラリーを、よく知られたドクターブレード法によりシート状に成形し、これを焼成することで電解質基板が形成できる。電解質基板は、厚さ0.2mmに形成する。
次に、平均粒径が約0.3μmの8mol%Y23添加ジルコニア粉末に平均粒径が約0.8μmのNiO粉末(60wt%)を混合したNiO−8YSZ(0.92ZrO2−0.08Y23)のスラリーを作製し、このスラリーを上述した電解質基板の一方の面にスクリーン印刷法により塗布して燃料極塗布膜を形成する。加えて、形成した燃料極塗布膜の上に白金のメッシュよりなる集電体を配置する。この後、これらを、1400℃・4時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、上記混合材料(粉末)の焼結体からなる厚さ60μmの燃料極を形成する。
次に、平均粒径0.2μmのCe0.9Gd0.12(GDC)粉末のスラリーを作製し、このスラリーを電解質基板の他方の面にスクリーン印刷法で塗布して活性層塗布膜を形成する。次いで、活性層塗布膜を乾燥した後、これらを、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質基板の他方の面に活性層を形成する。
次に、平均粒径が1.0μmのLaNi0.6Fe0.43(LNF)粉末のみでスラリーを作製し、このスラリーを活性層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成し、また、形成した集電層塗布膜を乾燥する。次いで、活性層の上に集電層塗布膜を形成した電解質基板を、1150℃・2時間の熱処理条件で空気中で焼成し、活性層の上に集電層を形成して単セルとする。この後、白金メッシュ集電体を集電層の上に配置し、これらを1000℃・2時間の熱処理条件で加熱する。なお、活性層の厚さは3〜7μm,集電層の厚さは40〜60μmとする。
上述した単セルの構成について、図3に示す。図3に示すように、単セルは、直径30mmの円板状の電解質基板301の一方の面に、直径10mmの円板状の燃料極302が形成され、電解質基板301の他方の面に、直径10mmの円板状の空気極303が形成された状態となる。空気極303は、電解質基板301の側に上述した活性層および活性層の上に接する集電層を備えている。また、この単セルは、電解質基板301の他方の面に、空気極303とは所定の間隔を開けて離間した箇所(周辺付近)に白金からなる参照電極304を備える。参照電極304は、電気的な測定を行うために用いる。
上述した単セルを比較試料2−0−0とし、試料2−0−1〜2−0−6として、以下に示す材料を活性層に用いる。
試料2−0−1〜2−0−6においては、Ce1-xPrx2(PDC)の粉末によるスラリーを作製し、このスラリーを電解質基板301の他方の面にスクリーン印刷法で塗布して活性層塗布膜を形成する。次いで、活性層塗布膜を乾燥した後、活性層の上に集電層を塗布・乾燥し、これらを、1000〜1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、電解質301の他方の面に空気極303を形成する。試料2−0−1は、上記PDCのPr組成xを0.1とし、試料2−0−2は、上記PDCのPr組成xを0.3とし、試料2−0−3は、上記PDCのPr組成xを0.5とし、試料2−0−4は、上記PDCのPr組成xを0.8とし、試料2−0−5は、上記PDCのPr組成xを0.9としている。また、試料2−0−6は、上記PDCのPr組成xを1としたPr611の粉体によるスラリーで活性層を形成している。
次に、実験で行った電極性能の指標としての測定について説明する。この測定では、燃料極302には室温(23℃程度)において加湿した水素ガスを燃料ガスとして供給し、空気極303には酸素を供給し、800℃の発電状態において、0.2A/cm2における空気極303の電圧降下量を空気極303と参照極304との間の電位差から求めている。また、空気極303と参照電極304との電位差をデジタルボルトメータで測定している。以下では、測定した測定値を「電圧」としている。なお、開放起電力としては、800℃で1.10V以上の値が得られる。測定結果を、以下の表2に示す。
Figure 2014110193
表2に示すように、活性層にGDCではなくPDCを用いることで、空気極における過電圧が小さく抑えられていることが分かる。
以上に説明したように、本発明によれば、セリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611を含むイオン伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成した活性層を、複数の島状部分から構成したので発電性能の劣化などがない状態で、固体酸化物型燃料電池の単セルをより大きな面積に形成できるようになる。
従来、固体酸化物形燃料電池の空気極は運転温度が低くなると電極反応抵抗が増大しセル特性が低下するという問題があった。これに対し、空気極を構成する活性層にPrを含む材料を適用することにより電極活性が改善され、低温での運転が可能となる。しかしながら、実使用レベルの大面積な単セルにPrを含む材料を適用すると、発電性能の劣化が発生していたが、本発明によりこれが解消できる。
Prを含む材料は他のセル構成材料に比べて熱膨張率が大きいため、単セルを構成する層間の熱膨張率差に起因して剥離や破損などが発生することが、上記問題の原因と考えられる。本発明の適用により、熱膨張率差による応力を抑制することができ、電極の剥離が抑制される結果、大面積セルとしても電極特性の低下が抑制されるものと考えられる。
また、本発明によれば、実使用レベルの大面積セルを用いた固体酸化物形燃料電池の運転温度の低下が図れるため、単セルの接続部材に比較的安価な耐熱性合金を使用することが可能となり低コスト化が可能となる。また、運転温度が低温化されることにより単セル周辺部に用いられる金属部材の腐食が抑制されるため信頼性が向上する。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、活性層を構成する複数の島状部分は、平面形状が六角形状に限るものではなく、他の多角形状,円形であればよく、ドット形状であってもよい。また、島状部分の平面視の径(最も長いところ)は、0.5〜10mmの範囲であれば特に限定されない。また、島状部分や各層の厚さは、適宜に設定すればよい。また、単セルは、燃料極支持型としてもよく、電解質支持型としてもよい。
101…電解質、102…燃料極、103…空気極、104…活性層、105…集電層、106…反応抑制層、141…島状部分。

Claims (3)

  1. 電解質、前記電解質の一方の面の上に形成された燃料極、および前記電解質の他方の面に形成された空気極を備え、
    前記空気極は、前記電解質の他方の面の側に形成された活性層、および前記活性層の上に接して形成された集電層を備え、
    前記活性層は、セリウムとプラセオジムとの酸化物またはPr611を含むイオン伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、
    前記集電層は、ランタン系ペロブスカイト型酸化物からなる電子伝導性を有する材料から構成された粉体の焼結体から構成され、
    前記活性層は、複数の島状部分から構成され、
    前記集電層は、前記活性層を構成する複数の前記島状部分を覆って形成されている
    ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  2. 請求項1記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記空気極と前記電解質との間に配置されて、セリウムとサマリウムとの酸化物もしくはセリウムとガドリニウムとの酸化物からなる反応抑制層を備えることを特長とする固体酸化物形燃料電池。
  3. 請求項1または2記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記活性層は、前記集電層を構成しているランタン系ペロブスカイト型酸化物を含んで形成されていることを特長とする固体酸化物形燃料電池。
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