JP2014108623A - 積層フィルム、太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび積層フィルムの製造方法 - Google Patents

積層フィルム、太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび積層フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、太陽電池モジュール用バックシートとEVAフィルムの密着性を確保しつつも、リワーク性に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物とを含むポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に積層される易接着層とを有する積層フィルムであって、前記ポリエステルに対する前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%であり、前記易接着層の厚さは10〜500nmであり、前記易接着層の厚みの変動は1〜30%であることを特徴とする積層フィルムに関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルム、太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび積層フィルムの製造方法に関する。具体的には、本発明は、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含むポリエステルフィルムに、一定の膜厚と膜厚変動を有する易接着層を積層した積層フィルム、該積層フィルムを有する太陽電池モジュール用バックシート、該太陽電池モジュール用バックシートを搭載した太陽電池モジュールに関する。さらに、本発明は、積層フィルムの製造方法に関する。
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光が入射する受光面側からガラスまたはフロントシート/透明な充填材料(封止材)/太陽電池素子/封止材/バックシート(BS)がこの順に積層された構造を有している。バックシート(BS)は、太陽電池モジュールの最外層に設けられ、太陽電池素子を保護する働きをする。太陽電池モジュールが屋体に設置された場合、バックシート(BS)は、風雨に曝されたり、高温多湿環境下に長期間置かれることが想定されるため、優れた耐候性が求められる。
太陽電池モジュール用バックシートには、従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムが使用されている。ポリエステルフィルムは、優れた耐熱性、機械特性及び耐薬品性などを有しているため、太陽電池モジュール用バックシートに好ましく用いられている。しかし、これらのフィルムは、耐加水分解性に乏しいため、加水分解により分子量が低下し、脆化が進行して機械的性質が低下してしまうため、太陽電池用のバックシートとして長期間に渡り実用的な強度を保持することができなかった。
そこで、ポリエステルフィルムの機械的性質を高めるために、特許文献1では、ポリエステルの分子量と末端カルボキシ濃度を規定し、製造時に特定の熱処理条件を採用することが行われている。特許文献1では、ポリエステルフィルムの構成を上記構成とすることにより、ポリエステルフィルムがデラミネーション(層間剥離)することを抑制することができる。
また、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めるために、特許文献2および3では、ポリエステルフィルムにポリカルボジイミド化合物や環状カルボジイミド化合物を末端封止剤として含有している。さらに、特許文献4には、ケテンイミン化合物を末端封止剤として用いることができる旨が記載されている。特許文献2〜4は、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させることによってポリエステルフィルムの機械的性質を高めることを目的としている。
太陽電池モジュール用バックシートは、ポリエステルフィルムの上に易接着層を積層し、この易接着層を介してEVAフィルム等の封止材に接合される。このように、太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用バックシートとEVAフィルムを貼り合わせることによって組み立てられる。しかし、太陽電池モジュール用バックシートとEVAフィルムの貼り合わせ工程は、熟練が必要とされる工程であるため、貼り合わせ工程では、貼付位置を誤る等の貼付ミスが生じることが多い。太陽電池モジュールの各部材には高価な部材が使用されているため、太陽電池モジュール用バックシートの貼付ミスが生じた際は、一旦、太陽電池モジュール用バックシートをEVAフィルムから剥がして、再度貼り付けるという作業(リワーク)が行われることがある。
特開2011−192790号公報 特開2011−222580号公報 特開2011−258641号公報 米国特許3692745号公報
しかしながら、従来の太陽電池モジュール用バックシートに用いられる積層フィルムをEVAフィルム等の被着物に接合した場合、リワーク作業をスムーズに行うことができないという問題があった。一般的に、積層フィルムとEVAフィルムは過酷環境下に長期間置かれるため、高い密着性を有すること求められる。一方で、リワーク作業をする際に、積層フィルムをEVAフィルムから剥離する際には、適度な剥離性を有することが求められる。すなわち、リワーク作業をスムーズに行うために、積層フィルムには、優れた密着性を有しつつも剥離性を有することが求められているが、従来の積層フィルムは、EVAフィルムに対して、適度な密着性と剥離性を兼ね揃えておらず、リワーク作業をスムーズに行うことができないという問題があった。
また、太陽電池モジュール用バックシートをEVAフィルム等の被着物から剥離する際には、ポリエステルフィルムと易接着層の積層フィルムに大きな剥離応力がかかる。このような剥離応力が積層フィルムに加えられた場合、ポリエステルフィルムにデラミネーション(層間剥離)が生じたり、ポリエステルフィルムと易接着層間の剥離が生じるという問題があった。
そこで、本願発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、太陽電池モジュール用バックシートとEVAフィルムの密着性を確保しつつも、リワーク性に優れた積層フィルムを提供することを目的として検討を進めた。さらに、リワーク作業において太陽電池モジュール用バックシートをEVAフィルム等の被着物から剥離する際に、ポリエステルフィルムにデラミネーション(層間剥離)が生じたり、ポリエステルフィルムと易接着層間の剥離が生じることのない積層フィルムを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本願発明者らは、ポリエステルフィルムと易接着層を積層した積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムに含有されるカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物の含有率を一定範囲内とし、易接着層の厚みおよび厚みの変動を一定範囲内とすることにより、易接着層の密着性を確保しつつも、リワーク性に優れた積層フィルムを得ることができることを見出した。さらに、本願発明者らは、リワーク作業において、積層フィルムをEVAフィルム等の被着物から剥離する際に、ポリエステルフィルム自体の層間剥離が生じないこと、およびポリエステルフィルムと易接着層間の剥離が生じることがないことを見出し、本願発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物とを含むポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に積層される易接着層とを有する積層フィルムであって、前記ポリエステルに対する前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%であり、前記易接着層の厚さは10〜500nmであり、前記易接着層の厚みの変動は1〜30%であることを特徴とする積層フィルム。
[2]前記ケテンイミン化合物は下記一般式(1)で表されることを特徴とする[1]に記載の積層フィルム。
Figure 2014108623
(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表し、R3はアルキル基またはアリール基を表す。)
[3]前記ケテンイミン化合物は下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]に記載の積層フィルム。
Figure 2014108623
(一般式(2)中、R1はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2は置換基としてL1を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3はアルキル基またはアリール基を表す。nは1から4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
[4]前記一般式(2)における、nが3または4であることを特徴とする[3]に記載の積層フィルム。
[5]前記ケテンイミン化合物は下記一般式(3)で表されることを特徴とする[1]に記載の積層フィルム。
Figure 2014108623
(一般式(3)中、R1およびR5はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2およびR4は置換基としてL2を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3およびR6はアルキル基またはアリール基を表す。L2は単結合または二価の連結基を表す。)
[6]前記ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量が320以上であることを特徴する[1]〜[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記カルボジイミド化合物は、環骨格にカルボジイミド基を1つ含み、その第一窒素と第二窒素が結合基により結合されている環状構造を分子内に少なくとも1つ有する環状カルボジイミド化合物であることを特徴とする[1]に記載の積層フィルム。
[8]前記ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均が1〜20eq/tonであり、酸価(AV)の変動は5〜30%であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]前記ポリエステルフィルムは、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを含み、前記2種類のポリエステルのうち、固有粘度(IV)が高い第1のポリエステルと、固有粘度(IV)が低い第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであり、前記ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの総量に対する前記第2のポリエステルの含有率は、5〜50質量%であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物とを含むポリエステルフィルムを製膜する工程と、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を設ける工程と、前記易接着層を設けた前記ポリエステルフィルムを延伸する工程とを含み、前記ポリエステルに対する前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%であり、前記易接着層の厚さは10〜500nmであり、前記易接着層の厚みの変動は1〜30%であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
[11]前記易接着層を設ける工程と前記延伸する工程の間に、乾燥工程をさらに含み、前記乾燥工程は、前記易接着層に乾燥風を供給する工程であり、前記乾燥風の風速には1〜20%の風速変動が付与されることを特徴とする[10]に記載の積層フィルムの製造方法。
[12]前記延伸する工程では、10〜100℃の温度変動を付与しながら延伸を行うことを特徴とする[10]または[11]に記載の積層フィルムの製造方法。
[13]前記ポリエステルフィルムを製膜する工程は、前記ポリエステルと前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物とを混合する工程を含み、
前記混合する工程では、前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物を供給する際に1〜20%の供給量変動を付与することを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
[14]前記ポリエステルフィルムを製膜する工程は、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを混合する工程を含み、
前記2種類のポリエステルのうち、固有粘度(IV)が高い第1のポリエステルと、固有粘度(IV)が低い第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであり、
前記ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの総量に対する前記第2のポリエステルの添加率は、5〜50質量%であることを特徴とする[10]〜[13]のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
[15][10]〜[14]のいずれかに記載の製造方法により製造された積層フィルム。
[16][1]〜[9]のいずれかにおよび[15]のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いた太陽電池モジュール用バックシート。
[17][16]に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いた太陽電池モジュール。
本発明によれば、適度な密着性と剥離性を兼ね揃えた積層フィルムを得ることができる。これにより、本発明の積層フィルムは、EVAフィルム等の被着物との密着性を確保しつつも、適度な剥離性を有するため、優れたリワーク性を発揮する。特に、リワーク時に積層フィルムに熱をかけることによって、優れた剥離性を発揮することができる。また、本発明によれば、積層フィルムをEVAフィルムから剥離する際に、易接着層の粘着剤の一部がEVAフィルムに剥げ残ることを防ぐことができる。
また、太陽電池モジュール用バックシートをEVAフィルムから剥離する際には、ポリエステルフィルムと易接着層の積層フィルムに大きな剥離応力がかかるが、このような場合であっても、ポリエステルフィルム自体にデラミネーション(層間剥離)が生じたり、ポリエステルフィルムと易接着層間の剥離が生じることがない。すなわち、本発明の積層フィルムはポリエステルフィルム自体の層間、およびポリエステルフィルムと易接着層は高い密着性を有する。
図1は、本発明の積層フィルムの一例を示す断面図である。 図2は、本発明の積層フィルムがEVAフィルム等の被着物と接合した状態を示す断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(積層フィルム)
本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を積層した積層フィルムに関する。本発明に係る積層フィルムは、ポリエステルフィルムと易接着層を含むフィルムであり、これらの層以外に他の機能層等を含むものであってもよい。ただし、ポリエステルフィルムと易接着層は隣接して積層されることが好ましい。
ポリエステルフィルムはカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含有し、ポリエステルに対するカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%である。さらに、易接着層の厚さは10〜500nmであり、易接着層の厚みの変動は1〜30%である。
図1には、本発明に係る積層フィルム10の一例を示している。図1に示されている積層フィルム10は、ポリエステルフィルム2とポリエステルフィルム2の一方面に易接着層3を積層した2層構造である。なお、図1では、好ましい態様として2層構造を示しているが、易接着層3は、ポリエステルフィルム2の両面に設けられても良いし、他の層が設けられてもよい。
積層フィルム10は、易接着層3を介して、太陽電池モジュールの他の部材等に接着される。図2には、積層フィルム10が太陽電池モジュールの部材であるEVAフィルム4に接着された状態を示している。積層フィルム10の易接着層3は、図示した通り、厚みの変動を有しており、EVAフィルム4との接着面も緩やかな凹凸形状面となっている。
本発明では、上記構成とすることにより、積層フィルムとEVAフィルムとの密着性を確保しつつも、良好な剥離性を有することができる。これにより、本発明の積層フィルムは、優れたリワーク性を発揮する。
通常、積層フィルムに設けられている易接着層とEVAフィルムは、高い密着性を有しており、積層フィルムとEVAフィルムは剥離することはない。また、高い密着性を有するため、積層フィルムをEVAフィルムから剥がす際に、易接着層の粘着剤がEVAフィルムに残ったり、積層フィルムが破損するという不具合が生じる。
しかし、本発明では、ポリエステルフィルムにカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含有させ、易接着層の厚みを一定範囲とし、さらに厚みの変動を与えることにより、リワーク作業時に積層フィルムをEVAフィルムからスムーズに剥離することができる。これは、ポリエステルフィルムに含有されるカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物の一部が易接着層の表面に拡散することによって実現する。易接着層の厚みを10〜500nmとすることにより、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物の一部は易接着層の表面にまで効率よく到達することができる。また、易接着層に1〜30%の厚みの変動を与えることにより、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物が易接着層の表面に拡散する量を増やすことができ、よりスムーズに剥離を行うことができる。
通常、積層フィルムをEVAフィルムから剥離する際には、太陽電池セルに貼り付けた面の反対側から100〜200℃の熱をかけ、剥離しやすい状態で剥離作業を行うことが好ましい。熱をかけることによって、ポリエステルフィルムに含有されるカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物の一部が易接着層の表面に拡散することを促進することができる。また、熱をかけることによって、EVAフィルムは軟化するためよりスムーズに積層フィルムを剥離することができる。
このような効果は、リワーク時の高温(100〜200℃)が与えられた時にのみ発現し、通常の使用時には表面に拡散せず密着力は低下しない。これにより、剥離作業をするときのみに優れた剥離性を発揮することができ、密着性と剥離性を兼ね揃えることができる。
また、積層フィルムをEVAフィルムから剥離する際には、積層フィルムに大きな剥離応力がかかる。このような剥離応力が積層フィルムにかかった場合、ポリエステルフィルム自体が層間で剥離する場合がある。
本発明では、ポリエステルフィルムがカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含むことによって、ポリエステルフィルムの層間剥離を抑制することができる。カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物はポリエステルフィルム中で末端封止剤として機能するため、ポリエステル分子末端は、嵩高い基を有することとなる。このように、ポリエステル分子末端に嵩高い基を有することにより、ポリエステル分子の末端がスタックすることを防止しポリエステルフィルムの層間の密着性を高めることができる。
一方、ポリエステルの分子末端以外の部分には、末端封止剤の効果が及ばないため、ポリエステル分子の高配向が保たれることとなる。これにより、積層フィルムは優れた耐熱性を有することとなる。本発明の積層フィルムは、耐熱性を有するため、上述したように剥離作業時に積層フィルムに熱をかけた場合であっても、その性能が低下することがない。
さらに、積層フィルムをEVAフィルムから剥離する際に剥離応力がかかることによって、ポリエステルフィルムと易接着層の間が剥離する場合がある。
本発明では、ポリエステルフィルムがカルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含むことによって、ポリエステルフィルムと易接着層の間が剥離することを抑制することができる。これは、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物がポリエステルフィルムから易接着層内に跨るように存在することによって、投錨効果を発揮するためである。このように、本発明では、ポリエステルフィルムと易接着層の間の密着性も良好に保つことができる。
(ポリエステルフィルム)
本発明に係るポリエステルフィルムは、ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を含有する。ポリエステルフィルム中において、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物は、ポリエステルの末端カルボキシル基と反応し、ポリエステルの加水分解を抑制する末端封止剤として機能する。
末端封止剤としては、環状カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物を用いることが好ましく、特にケテンイミン化合物を用いることが好ましい。環状カルボジイミド化合物やケテンイミン化合物は、ポリエステルフィルムから易接着層の表面への拡散性に優れるため、好ましく用いられる。さらに、ケテンイミン化合物は、拡散性の高さに加えて、優れた耐熱性を有するため、特に好ましく用いられる。
なお、ポリエステルフィルムには、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物のいずれか1つが含まれれば上述したような効果を発揮することができるが、カルボジイミド化合物およびケテンイミン化合物の両方が含まれることとしても良い。
ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均は、1〜20eq/tonであることが好ましい。酸価(AV)の平均は、1〜20eq/tonであることが好ましく、2〜15eq/tonであることがより好ましく、3〜10eq/tonであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均が上記下限値以上とすることにより、カルボジイミド化合物やケテンイミン化合物といった末端封止剤との反応性を高めることができる。また、ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均が上記上限値以下とすることにより、未反応のポリエステル末端を少なくすることができ、ポリエステルの結晶性や耐熱性を低下させることがない。
ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、5〜30%であることが好ましい。ここで、酸価(AV)の変動は、ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均値に対する変化率を指す。具体的には、本発明に係るポリエステルフィルムは、製膜フィルムを全幅に亘り、MDを長手にし、A4サイズに裁断し、このフィルムをMD、TD方向に各5等分し、25分割したフィルムの中央部25点におけるポリエステルフィルムの酸価(AV)を測定し、最大酸価と最小酸価の差を平均供給量で割り百分率で表したものである。
ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、5〜30%であることが好ましく、7〜25%であることがより好ましく、10〜20%であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動を上記範囲内とすることで、優れた耐熱性と密着性を有することができる。
ポリエステルフィルムにおいて、AV値が高い箇所では、ポリエステル分子の末端基の残存量が多く、末端封止剤の効果が得られ難い。このため、AV値が高い箇所では、密着力は低下しやすいが、ポリエステル分子の配向が乱れないため高い耐熱性を有する。一方、AV値が低い箇所では、ポリエステル分子の末端基の残存量が少なく、末端封止剤の効果が得られ易い。このため、AV値が低い箇所では、密着力は高いが、ポリエステル分子の配向が乱れやすく耐熱性が低下する傾向にある。本発明では、ポリエステルフィルムに5〜30%の範囲内で酸価(AV)の変動を付与することにより、密着性と耐熱性の高低を相補することができる。これにより、本発明の積層フィルムは、優れた密着性と耐熱性を兼ね揃えることができる。
また、ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、ポリエステルフィルム中で層分離している。具体的には、ポリエステルフィルム中では、高AV層と低AV層に分布している。これらの層は拡散しやすいため、末端封止剤は、ポリエステルフィルムの表面に拡散しやすくなる。末端封止剤がポリエステルフィルムの表面に拡散すると、易接着層との投錨効果を発揮することができ、ポリエステルフィルムと易接着層の密着性を高めることができる。また、末端封止剤がEVAフィルムと易接着層の界面にまでさらに拡散することにより、リワーク時の剥離性を高めることができる。
上述したようなポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、ポリエステルフィルムの製膜時にカルボジイミド化合物やケテンイミン化合物といった末端封止剤の供給量に変動を付与することによって達成することができる。例えば、ポリエステルとケテンイミン化合物等の末端封止剤を押出し機で混練する際、末端封止剤の供給量に変動を与えることができる。ここで、供給量の変動とは、供給量を10分間計測し、各1分毎の供給量を求め、最大供給量と最小供給量の差を平均供給量で割り百分率で表したものである。供給量の変動は、末端封止剤を押出し機に投入する際のフィーダーの供給速度を変えることで付与することができる。
末端封止剤の供給量の変動は、1〜20%であることが好ましく、2〜18%であることがより好ましく、3〜15%であることがさらに好ましい。末端封止剤の供給量の変動を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの酸価(AV)に5〜30%の変動を付与することができる。
また、ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを混合することによっても達成できる。本発明では、ポリエステルフィルムは、固有粘度(IV)が高い第1のポリエステルと、固有粘度(IV)が低い第2のポリエステルを含むことが好ましい。ここで、第1のポリエステルと第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであることが好ましく、0.02〜0.09g/dlであることがより好ましい。また、ポリエステルに対する第2のポリエステルの含有率は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。ポリエステルに対する第1のポリエステルの含有率は、50〜95質量%、より好ましくは55〜90質量%であることが好ましい。なお、本発明では、第1のポリエステルと第2のポリエステル以外にさらに固有粘度が異なるポリエステルを含有しても良い。
本発明では、固有粘度(IV)の差を上記範囲とし、異なる固有粘度を有するポリエステルの含有率を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの酸価(AV)に5〜30%の変動を付与することができる。
固有粘度(IV)が高いことは、ポリエステルの分子量が大きいことを意味する。すなわち、固有粘度(IV)が高いほど、ポリエステルの分子量が大きく、単位重量あたりのポリエステル末端数が減少することを意味する。なお、固有粘度(IV)が高いポリエステルは、固相重合時間を長くすることなどによって達成できる。
なお、ポリエステルフィルムの酸価(AV)の変動は、カルボジイミド化合物やケテンイミン化合物といった末端封止剤の添加量を調節することによっても付与される。末端封止剤の添加量が多い場合、ポリエステル末端のカルボキシル基との反応が促進され、AV値が下がる。一方、末端封止剤の添加量が少ない場合、ポリエステル末端のカルボキシル基との反応が進まず、AV値が上がる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、用途によって異なるが、太陽電池モジュール用バックシートの部材として用いる場合には、25〜300μmであることが好ましく、120〜300μmであることがより好ましい。厚みを上記下限値以上とすることにより、十分な力学強度が得られ、上記上限値以下とすることにより、コスト上のメリットが得られる。
本発明のポリエステルフィルムは延伸されていることが好ましく、2軸延伸されていることがさらに好ましく、平面2軸延伸されていることがチューブラーなどの延伸と比較して特に好ましく、逐次2軸延伸されていることがより特に好ましい。
なお、ポリエステルフィルムは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の添加剤を含んでいてもよく、添加剤としては、酸化防止剤や紫外線防止剤が例示される。
<ポリエステル>
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを含む。ポリエステルの種類は特に制限されるものではなく、ポリエステルとして公知のものを使用することができる。
原料樹脂となるポリエステルとしては、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを用いて合成してもよいし、市販のポリエステルを用いてもよい。
ポリエステルを合成する場合は、例えば、(A)ジカルボン酸成分と、(B)ジオール成分とを、周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
(A)ジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類;アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸;などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
(B)ジアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール、1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオール類;等のジオール化合物が挙げられる。
(A)ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、(B)ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種を用いることが好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
例えば、エステル化反応工程は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合する。このエステル化反応工程では、触媒であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いると共に、工程中に少なくとも、有機キレートチタン錯体と、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を設けて構成される。
まず初めに、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する。有機キレートチタン錯体等のチタン化合物は、エステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよいし、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
上記ポリエステルの重合に際し、下記の化合物を加えることも好ましい。
[リン化合物]
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられる。例えば、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)3−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が挙げられ、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50〜90ppmの範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60〜80ppmとなる量であり、さらに好ましくは60〜75ppmとなる量である。
[マグネシウム化合物]
ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色が生じることがあるが、本発明の構成とすることにより、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50〜100ppmの範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60〜90ppmの範囲となる量であり、さらに好ましくは70〜80ppmの範囲となる量である。
エステル化反応工程においては、触媒成分であるチタン化合物と、添加剤であるマグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が特に好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング及び添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)0≦Z≦5.0
これは、リン化合物はチタンに作用のみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、このようなリン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステルを得ることができる。
式(ii)において、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、1.0≦Z≦4.0を満たす場合が好ましく、1.5≦Z≦3.0を満たす場合がより好ましい。
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、1〜30ppmのクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加する。その後、キレートチタン錯体の存在下に、また、60〜90ppm(より好ましくは70〜80ppm)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、60〜80ppm(より好ましくは65〜75ppm)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加することが好ましい。
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cm2が好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cm2である。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm2、より好ましくは1.0〜3.0kg/cm2である。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、前記第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10-3〜1.3×10-3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10-3〜2.67×10-3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10-3〜1.33×10-4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10-3〜4.0×10-4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10-3〜1.33×10-5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10-4〜6.67×10-5MPa)である態様が好ましい。
上記のようにして合成されたポリエステルには、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)、結晶化阻害剤などの添加剤を更に含有させてもよい。
ポリエステルフィルム基材の原料樹脂として用いるポリエステル樹脂は、エステル化反応により重合した後に、固相重合を行うことが好ましい。固相重合することにより、ポリエステルの含水率、結晶化度、ポリエステルの酸価、すなわち、ポリエステルの末端カルボキシル基の濃度、固有粘度を制御することができる。
特に、固相重合開始時のエチレングリコール(EG)ガス濃度を固相重合終了時のEGガス濃度よりも200〜1000ppmの範囲で高くすることが好ましく、より好ましくは250〜800ppm、さらに好ましくは300〜700ppmの範囲で高くして固相重合することが好ましい。この時、平均EGガス濃度(固相重合開始時と終了時のガス濃度の平均)を添加することでAVを制御できる。即ちEG添加により末端COOHと反応させAVを低減できる。EGは100〜500ppmが好ましく、より好ましくは150〜450ppm、さらに好ましくは200〜400ppmである。
また、固相重合の温度は180〜230℃が好ましく、より好ましくは190〜215℃、さらに好ましくは195〜209℃である。
また、固相重合時間は10〜80時間が好ましく、より好ましくは15〜60時間、さらに好ましくは20〜45時間である。
本発明では、ポリエステル原料に、固有粘度(IV)が異なるものを少なくとも2種類用いることが好ましい。この場合、固有粘度が高い第1のポリエステルの固有粘度(IV1)および、固有粘度が低い第2のポリエステルの固有粘度(IV2)は、0.65〜1g/dlであることが好ましく、0.68〜0.9g/dlであることがより好ましく、0.7〜0.85g/dlであることがさらに好ましい。特に、第1のポリエステルの固有粘度(IV1)は、0.7〜1.1g/dlであることが好ましく、第2のポリエステルの固有粘度(IV2)は、0.75〜0.9g/dlであることが好ましい。第1のポリエステルの固有粘度(IV1)および第2のポリエステルの固有粘度(IV2)を上記範囲内とすることにより、末端封止剤の効果が発現しやすくなり、密着性を高めることができる。第1のポリエステルの固有粘度(IV1)および第2のポリエステルの固有粘度(IV2)が上記下限値未満であると、ポリエステルの末端が多すぎケテンイミンと反応しすぎ、ポリエステルの配列を低下させすぎるため結晶性が低下し耐熱性が低下する。一方、上記範囲を超えるとポリエステル末端が少なすぎ、上述のケテンイミンの効果が発現し難く密着性が低下する。
また、第1のポリエステルの固有粘度をIV1とし、第2のポリエステルの固有粘度をIV2とした場合、IV1−IV2は、0.01〜0.1g/dlであることが好ましく、0.02〜0.08であることがより好ましく、0.02〜0.06であることがさらに好ましい。
IV値が大きなポリエステルは、分子長が長いためポリエステルの層状構造の間に跨って存在する。このため、層間を繋ぎ合わせる働きをする。一方、IV値が小さなポリエステルは、分子長が短いため易接着層内やEVAフィルム側の表面に拡散しやすい。このため、ポリエステル原料として固有粘度(IV)がこのなるものを少なくとも2種類用いることによって、ポリエステルフィルムの層間剥離を抑制し、かつポリエステルフィルムと易接着層の密着性を高めつつもリワーク性も高めることができる。
また、IV1−IV2を上記範囲内とすることにより、分子長の分布を所望の範囲とすることができ、より効果的にポリエステルフィルムの層間剥離の抑制と、ポリエステルフィルムと易接着層の密着性の向上を実現することができる。IV1−IV2が上記範囲未満では、上記効果が得られず密着力を高めることができず、上記範囲を超えると、ポリエステル同士の相溶性が低下し凝集破壊が発生し密着不良を引き起こすこととなる。
固有粘度が低い第2のポリエステルは、ポリエステル中に5〜50質量%含まれていることが好ましい。第2のポリエステルの含有率は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜48質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることがさらに好ましい。第2のポリエステルの含有率を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの層間の密着性を高め、ポリエステルフィルムと易接着層の密着性も高めることができる。第2のポリエステルの含有率が上記下限値未満では上記混合の相乗効果が得難く密着性が向上し難い。一方、上記上限値を超えると相溶性が得難く密着が向上し難くなることに加え、低IV成分は熱で分子量が低下し易く耐熱性が低下し易くなる。
上述したような固有粘度(IV)の異なるポリエステルは、ポリエステル重合条件を調整することで達成することができる。例えば、縮重合反応の時間を通常かかる時間よりも5〜50%長くすることで所望の固有粘度(IV)を有するポリエステルを得ることができる。
また、ポリエステルの固相重合条件を調整することによっても達成することができる。例えば、固相重合時間を通常かかる時間よりも5〜50%長くすることで所望の固有粘度(IV)を有するポリエステルを得ることができる。
さらに、固相重合に使用するポリエステルのペレットサイズを小さくすることでIV値を大きくできる。固相重合に伴い発生するエチレングリコール(EG)がペレット表面に拡散し系外に出ることで重合が進行し、IVが増加するが、ペレットが小さいとEGがペレット表面に出易く、重合が進行しIVが増加し易い。ポリエステルペレットのサイズを5%〜50%小さくすることで所望の固有粘度(IV)を付与できる。
(末端封止剤)
ポリエステルフィルムは、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物といった末端封止剤を含む。カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物は単独で用いても良く、両社を併用して用いても良い。
末端封止剤は、ポリエステルに対して、0.1〜10質量%含有されていることが好ましく、0.1〜4質量%含有されていることがより好ましく、0.1〜2質量%含有されていることがさらに好ましい。環状カルボジイミド化合物の含有率を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの層間の密着性およびポリエステルフィルムと易接着層間の密着性を高めることができる。また、ポリエステルフィルムの耐熱性を高めることができる。
なお、カルボジイミド化合物とケテンイミン化合物が併用される場合は、2種類の化合物の含有率の合計が、上記範囲内であることが好ましい。
<カルボジイミド化合物>
カルボジイミド化合物としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)が挙げられ、具体的には、モノカルボジイミド化合物として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが例示される。ポリカルボジイミド化合物としては、その重合度が、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、30以下であるものが使用され、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造されたものが挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートなどが例示される。
工業的に入手可能な具体的なポリカルボジイミドとしては、カルボジライトHMV−8CA(日清紡製)、カルボジライト LA−1(日清紡製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)、スタバクゾールP400(ラインケミー社製)、スタビライザー9000(ラシヒケミ社製)などが例示される。カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
<環状カルボジイミド化合物>
本発明の芳香族ポリエステルフィルムは、環状カルボジイミド化合物を含有する。環骨格にカルボジイミド基を1つ含み、その第一窒素と第二窒素が結合基により結合されている環状構造を分子内に少なくとも1つ有する環状カルボジイミド化合物は、環状封止剤として機能する。
環状カルボジイミド化合物は、国際公開2011/093478号パンフレットに記載された方法によって調製することができる。
本発明で使用する環状カルボジイミド化合物は、環状構造を有する。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していても良い。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15である。
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
環状カルボジイミド化合物としては、下記一般式(O−1)または一般式(O−2)で表される環状カルボジイミド化合物を用いることが好ましい。
以下、本発明の環状カルボジイミド化合物の好ましい構造について、下記一般式(O−1)と一般式(O−2)の順に説明する。
まず、一般式(O−1)で表される環状カルボジイミド化合物について説明する。
Figure 2014108623
一般式(O−1)中、R1およびR5は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R2〜R4およびR6〜R8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R1〜R8は互いに結合して環を形成してもよい。X1およびX2は、それぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−NH−または−CH2−を表す。L1は2価の連結基を表す。
上記一般式(O−1)中、R1およびR5は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましく、2級もしくは3級アルキル基またはアリール基を表すことがポリエステルの末端に連結したイソシアエネートとポリエステルの水酸基末端の反応を抑制し、増粘を抑制する観点からより好ましく、2級アルキル基を表すことが特に好ましい。
1およびR5が表すアルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルキル基であることが特に好ましい。R1およびR5が表すアルキル基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよいが、分枝または環状であることが、ポリエステルの末端に連結したイソシアエネートとポリエステルの水酸基末端の反応を抑制し、増粘を抑制する観点から好ましい。R1およびR5が表すアルキル基は2級または3級アルキル基であることが好ましく、2級アルキル基であることがより好ましい。R1およびR5が表すアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができ、その中でもiso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、iso−ペンチル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましく、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基がより好ましく、iso−プロピル基およびシクロヘキシル基が特に好ましい。
1およびR5が表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限されるものではない。但し、R1およびR5が表すアルキル基は、カルボン酸との反応性の観点から、さらに置換基を有さないことが好ましい。
1およびR5が表すアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6のアリール基であることが特に好ましい。R1およびR5が表すアリール基は、R1とR2が縮合またはR5とR6が縮合して形成されたアリール基であってもよいが、R1およびR5は、それぞれR2およびR6と縮合して環を形成しないことが好ましい。R1およびR5が表すアリール基は、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基がより好ましい。
1およびR5が表すアリール基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限されるものではない。但し、R1およびR5が表すアリール基は、カルボン酸との反応性の観点から、さらに置換基を有さないことが好ましい。
1およびR5が表すアルコキシ基は、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルコキシ基であることが特に好ましい。R1およびR5が表すアルコキシ基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよいが、分枝または環状であることが、ポリエステルの末端に連結したイソシアエネートとポリエステルの水酸基末端の反応を抑制し、増粘を抑制する観点から好ましい。R1およびR5が表すアルコキシ基の好ましい例は、R1およびR5が表すアルキル基の末端に−O−が連結した基を挙げることがあり、好ましい範囲も同様にR1およびR5が表す好ましいアルキル基の末端に−O−が連結した基である。
1およびR5が表すアルコキシ基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限されるものではない。但し、R1およびR5が表すアルコキシ基は、カルボン酸との反応性の観点から、さらに置換基を有さないことが好ましい。
1およびR5は、同じであっても異なっていてもよいが、コストの観点から同じであることが好ましい。
上記一般式(O−1)中、R2〜R4およびR6〜R8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
2〜R4およびR6〜R8が表すアルキル基、アリール基またはアルコキシ基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限されるものではない。
本発明の環状カルボジイミド化合物は、上記一般式(O−1)中、R2およびR6がともに水素原子であることが、R1およびR5に嵩高い置換基を導入しやすい観点から好ましい。ここで、WO2010/071211号公報には、上記一般式(O−1)においてR2およびR6に相当する部位(カルボジイミド基に対してメタ位)にアルキル基やアリール基が置換した化合物が例示されているが、これらの化合物はポリエステルの末端に連結したイソシアネートとポリエステルの水酸基末端との反応を抑制することができない上、前記一般式(O−1)においてR2およびR6に相当する部位(カルボジイミド基に対してオルト位)に置換基を導入することが困難である。
上記一般式(O−1)中、R1〜R8は互いに結合して環を形成してもよい。このときに形成される環は特に制限はないが、芳香族環であることが好ましい。例えば、R1〜R4の2以上が互いに結合して縮合環を形成してもよく、R1〜R4が置換しているベンゼン環とともに炭素数10以上のアリーレン基やヘテロアリーレン基を形成してもよい。このときに形成される炭素数10以上のアリーレン基としては、ナフタレンジイル基などの炭素数10〜15の芳香族基が挙げられる。
同様に、例えば、R5〜R8の2以上が互いに結合して縮合環を形成してもよく、R5〜R8が置換しているベンゼン環とともに炭素数10以上のアリーレン基やヘテロアリーレン基を形成してもよく、そのときの好ましい範囲はR1〜R4が置換しているベンゼン環とともに炭素数10以上のアリーレン基やヘテロアリーレン基を形成するときの好ましい範囲と同様である。
但し、本発明の環状カルボジイミド化合物は、上記一般式(O−1)中、R1〜R8は互いに結合して環を形成しないことが好ましい。
上記一般式(O−1)中、X1およびX2は、それぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−NH−および−CH2−から選択される少なくとも1種を表し、その中でも−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−NH−であることが好ましく、−O−、−S−であることが合成容易性の観点からより好ましい。
上記一般式(O−1)中、L1は2価の連結基を表し、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいても良く、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、2価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであることが好ましく、2価の炭素数1〜20の脂肪族基であることがより好ましい。
1が表す2価の脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。これらの脂肪族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
1が表す2価の脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基が挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
1が表す2価の芳香族基として、へテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基が挙げられる。炭素数5〜15のアリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
上記一般式(O−1)中、カルボジイミド基を含む環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15である。
ここで、カルボジイミド基を含む環状構造中の原子数とは、カルボジイミド基を含む環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より前記一般式(O−1)中、環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
次に、前記一般式(O−2)で表される環状カルボジイミド化合物について説明する。
Figure 2014108623
一般式(O−2)中、R11、R15、R21およびR25は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R12〜R14、R16〜R18、R22〜R24およびR26〜R28は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R11〜R28は互いに結合して環を形成してもよい。X11、X12、X21およびX22は、それぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−NH−または−CH2−を表す。L2は4価の連結基を表す。
上記一般式(O−2)中、R11、R15、R21およびR25の好ましい範囲は、上記一般式(O−1)中のR1およびR5の好ましい範囲と同様である。
11、R15、R21およびR25が表すアリール基は、R11とR12が縮合、R15とR16が縮合、R21とR22が縮合またはR25とR26が縮合して形成されたアリール基であってもよいが、R11、R15、R21およびR25は、それぞれR12、R16、R22およびR26と縮合して環を形成しないことが好ましい。
11、R15、R21およびR25は、同じであっても異なっていてもよいが、コストの観点から同じであることが好ましい。
上記一般式(O−2)中、R12〜R14、R16〜R18、R22〜R24およびR26〜R28の好ましい範囲は、上記一般式(O−1)中のR2〜R4およびR6〜R8の好ましい範囲と同様である。
12〜R14、R16〜R18、R22〜R24およびR26〜R28中、R12、R16、R22およびR26がともに水素原子であることが、R11、R15、R21およびR25に嵩高い置換基を導入しやすい観点から好ましい。
このようにカルボジイミド基の近傍に、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基のように嵩高い基を導入することで、カルボジイミド基とポリエステルの末端カルボン酸が反応した後に生成するイソシアネート基とポリエステルの末端水酸基の反応を抑制できる。この結果、ポリエステルの高分子量化を抑制でき、上述のようなポリエステルの粘性増加による切り屑の発生を抑制できる。
上記一般式(O−2)中、R11〜R28は互いに結合して環を形成してもよく、好ましい環の範囲は上記一般式(O−1)中、R1〜R8が互いに結合して形成する環の範囲と同様である。
上記一般式(O−2)中、X11、X12、X21およびX22の好ましい範囲は、上記一般式(O−1)中のX1およびX2の好ましい範囲と同様である。
上記一般式(O−2)中、L2は4価の連結基を表し、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、4価の炭素数1〜20の脂肪族基、4価の炭素数3〜20の脂環族基、4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであることが好ましく、4価の炭素数1〜20の脂肪族基であることがより好ましい。
2が表す4価の脂肪族基として、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。炭素数1〜20のアルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられ、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基がより好ましく、エタンテトライル基が特に好ましい。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
2が表す4価の脂環族基として、脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
2が表す4価の芳香族基として、へテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。炭素数5〜15のアレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
上記一般式(O−2)中、4価の連結基であるL2を介して、カルボジイミド基を含む環状構造が2つ含まれる。
上記一般式(O−2)中における各カルボジイミド基を含む環状構造中の原子数の好ましい範囲はそれぞれ、上記一般式(O−1)中におけるカルボジイミド基を含む環状構造中の原子数の好ましい範囲と同様である。
本発明の環状カルボジイミド化合物は、分子内に2つ以上のカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが連結基により結合した環構造を有さない芳香族カルボジイミドであること、すなわち本発明の環状カルボジイミド化合物は単環であり、上記一般式(O−1)で表されることが、増粘し難い観点から好ましい。
但し、揮散を抑制でき、製造時のイソシアネートガスの発生を抑制できる観点からは、本発明の環状カルボジイミド化合物は環状構造を複数有し、上記一般式(O−2)で表されることも好ましい。
本発明に用いる環状カルボジイミド化合物の分子量が、400以上であると、揮散性が小さく、製造時のイソシアネートガスの発生を抑制できるため好ましい。また、環状カルボジイミド化合物の分子量の上限は本発明の効果を損なわない限り特に限定はないが、カルボン酸との反応性の観点から、1500以下が好ましい。
本発明に用いる環状カルボジイミド化合物の分子量は、500〜1200であることがより好ましい。
上記一般式(O−1)または一般式(O−2)で表されることを特徴とする環状カルボジイミド化合物の具体例、すなわち本発明の環状カルボジイミド化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は以下の具体例により限定されるものではない。
Figure 2014108623
Figure 2014108623
本発明の環状カルボジイミド化合物は、芳香環に隣接して−N=C=N−で表される構造(カルボイジイミド基)を少なくとも1つ有する化合物であり、例えば、適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、特開2011−256337号公報に記載の方法などを参考にして合成することができる。
本発明の環状カルボジイミド化合物を合成するにあたり、カルボジイミド基の第一窒素と第二窒素に隣接するアリーレン基のオルト位に特定の嵩高い置換基を導入する方法としては特に制限はないが、例えば既知の方法でアルキルベンゼンをニトロ化することで、アルキル基が置換されたニトロベンゼンを合成することができ、それを元にWO2011/158958に記載の方法で環状カルボジイミドを合成することができる。
<ケテンイミン化合物>
本発明の芳香族ポリエステルフィルムは、ケテンイミン化合物を含有する。ケテンイミン化合物は単独で用いても良く、上記環状カルボジイミド化合物と併用しても良い。
ケテンイミン化合物としては、下記一般式(1)で表されるケテンイミン化合物を用いることが好ましい。以下、下記一般式(1)で表されるケテンイミン化合物について説明する。
Figure 2014108623
ここで、一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表し、R3はアルキル基またはアリール基を表す。
ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量は320以上であることが好ましい。すなわち、上記一般式(1)では、R1−C(=C)−R2基の分子量は320以上であることが好ましい。ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量は、320以上であることが好ましく、500〜1500であることがより好ましく、600〜1000であることがさらに好ましい。このように、窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムと易接着層の密着性を高めることができる。これは、窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分が一定範囲の分子量を有することで、ある程度の嵩高さをもったポリエステル末端が易接着層に拡散し投錨効果を発揮するためである。
1およびR2で表されるアルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましい。R1およびR2が表すアルキル基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R1およびR2が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、シクロヘキシル基とすることがより好ましい。
1およびR2が表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されることはなく、上記の置換基を同様に例示することができる。なお、R1およびR2が表すアルキル基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。
1およびR2で表されるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。R1およびR2が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。
アリール基にはヘテロアリール基が含まれるものとする。ヘテロアリール基とは、芳香族性を示す5員、6員又は7員の環又はその縮合環の環構成原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されたものをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
1およびR2が表すアリール基またはヘテロアリール基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。なお、R1およびR2が表すアリール基またはヘテロアリール基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。
1およびR2で表されるアルコキシ基は、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルコキシ基であることが特に好ましい。R1およびR2が表すアルコキシ基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R1およびR2が表すアルコキシ基の好ましい例としては、R1およびR2が表すアルキル基の末端に−O−が連結した基を挙げることができる。R1およびR2が表すアルコキシ基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。なお、R1およびR2が表すアルコキシ基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。
1およびR2で表されるアルコキシカルボニル基は、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であることが好ましく、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基であることが特に好ましい。R1およびR2が表すアルコキシカルボニル基のアルコキシ部としては、上述したアルコキシ基の例を挙げることができる。
1およびR2で表されるアミノカルボニル基は、炭素数1〜20のアルキルアミノカルボニル基、炭素数6〜20のアリールアミノカルボニル基であることが好ましい。アルキルアミノカルボニル基のアルキルアミノ部の好ましい例としては、R1およびR2が表すアルキル基の末端に−NH−が連結した基を挙げることができる。R1およびR2が表すアルキルアミノカルボニル基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。
炭素数6〜20のアリールアミノカルボニル基のアリールアミノ部の好ましい例としては、R1およびR2が表すアリール基の末端に−NH−が連結した基を挙げることができる。R1およびR2が表すアリールアミノカルボニル基のアリール部としては、上述したアリール基またはヘテロアリール基の例を挙げることができる。R1およびR2が表すアリールアミノカルボニル基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。なお、R1およびR2が表すアルキルアミノカルボニル基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。
1およびR2で表されるアリールオキシ基は、炭素数6〜20のアリールオキシ基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリールオキシ基であることがより好ましい。R1およびR2が表すアリールオキシ基のアリール部としては、上述したアリール基またはヘテロアリール基の例を挙げることができる。
1およびR2で表されるアシル基は、炭素数2〜20のアシル基であることが好ましく、炭素数2〜12のアシル基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアシル基であることが特に好ましい。R1およびR2が表すアシル基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。なお、R1およびR2が表すアシル基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。
1およびR2で表されるアリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であることが好ましく、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であることがより好ましいR1およびR2が表すアリールオキシカルボニル基のアリール部としては、上述したアリール基またはヘテロアリール基の例を挙げることができる。
3はアルキル基またはアリール基を表す。アルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましい。R3が表すアルキル基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R3が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、シクロヘキシル基とすることがより好ましい。
3が表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されることはなく、上記の置換基を同様に例示することができる。
アリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。R3が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。
アリール基にはヘテロアリール基が含まれるものとする。ヘテロアリール基とは、芳香族性を示す5員、6員又は7員の環又はその縮合環の環構成原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されたものをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
3が表すアリール基またはヘテロアリール基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されない。
なお、一般式(1)は、繰り返し単位を含んでいてもよい。この場合、R1またはR3の少なくとも一方が繰り返し単位であり、この繰り返し単位には、ケテンイミン部が含まれることが好ましい。
また、ケテンイミン化合物としては、下記一般式(2)で表されるケテンイミン化合物を用いることが好ましい。以下、下記一般式(2)で表されるケテンイミン化合物について説明する。
Figure 2014108623
ここで一般式(2)中、R1はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2は置換基としてL1を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3はアルキル基またはアリール基を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。(R1−C(=C)−R2−)n−L1基の分子量は320以上であることが好ましい。
一般式(2)中、R1は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)中、R2は、n価の連結基であるL1を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
1はn価の連結基を表し、ここで、nは1〜4の整数を表す。中でも、nは2〜4であることが好ましい。
二価の連結基の具体例としては、例えば、−NR8−(R8は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、水素原子が好ましい)で表される基、−SO2−、−CO−、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、アルキニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、−O−、−S−および−SO−ならびにこれらを2つ以上組み合わせて得られる基が挙げられる。
三価の連結基の具体例としては、例えば、二価の連結基の例として挙げた連結基のうち置換基を有するものから1つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
四価の連結基の具体例としては、例えば、例えば、二価の連結基の例として挙げた連結基のうち置換基を有するものから2つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
本発明では、nを2〜4とすることにより、ケテンイミン部を一分子中に2以上有する化合物とすることができ、より優れた末端封止効果を発揮することができる。また、ケテンイミン部を一分子中に2以上有する化合物とすることにより、ケテンイミン基当たりの分子量を低くすることができ、効率良くケテンイミン化合物とポリエステルの末端カルボキシル基を反応させることができる。さらに、ケテンイミン部を一分子中に2以上有することにより、ケテンイミン化合物やケテン化合物が揮散することを抑制することができる。
一般式(2)中、nは3または4であることがより好ましい。nを3または4とすることにより、ケテンイミン部を一分子中に3または4有する化合物とすることができ、より優れた末端封止効果を発揮することができる。また、nを3または4とすることにより、一般式(2)中のR1またはR2の置換基のモル分子量を小さくした場合であっても、ケテンイミン化合物の揮散を抑制することができる。
ケテンイミン化合物としては、下記一般式(3)で表されるケテンイミン化合物を用いることが好ましい。以下、下記一般式(3)で表されるケテンイミン化合物について説明する。
Figure 2014108623
一般式(3)中、R1およびR5はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2およびR4は置換基としてL2を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3およびR6はアルキル基またはアリール基を表す。L2は単結合または二価の連結基を表す。R1−C(=C)−R2−L2−R4―C(=C)−R5基の分子量は320以上であることが好ましい。
一般式(3)中、R1は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。また、R5は、一般式(1)におけるR1と同意であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)中、R2は、一般式(2)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。また、R4は、一般式(2)におけるR2と同意であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。また、R6は、一般式(1)におけるR3と同意であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)中、L2は、単結合または二価の連結基を表す。二価の連結基の具体例としては、一般式(2)のL1で例示した連結基を挙げることができる。
本発明では、ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量は320以上であることが好ましい。ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量は320以上であれば良く、400以上であることが好ましく、500以上であることがさらに好ましい。また、一分子中のケテンイミン部の数に対するケテンイミン化合物のモル分子量(モル分子量/ケテンイミン部の数)は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。本発明では、ケテンイミン化合物のケテンイミン部炭素上の置換基の分子量及びケテンイミン部の数に対するケテンイミン化合物のモル分子量を上記範囲内とすることにより、ケテンイミン化合物自体の揮散を抑制し、ポリエステルの末端カルボキシル基を封止する際に生じるケテン化合物の揮散を抑制し、さらにポリエステルの末端カルボキシル基の封止を低添加量のケテンイミン化合物にて行うことができる。
本発明のケテンイミン化合物は、ケテンイミン基を少なくとも1つ有する化合物であり、例えば、J. Am. Chem. Soc., 1953, 75 (3), pp 657−660記載の方法などを参考にして合成することができる。
下記に一般式(1)の好ましい具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2014108623
Figure 2014108623
Figure 2014108623
上記例示化合物に示されているように、本発明では、ケテンイミン化合物は、3官能または4官能であることがより好ましい。これにより、末端封止効果をより高めることができ、ケテンイミン化合物やケテン化合物の揮散を効果的に抑制することができる。
また、例示化合物(6)のようにケテンイミン部を環骨格として環状構造を有する場合、R1とR3は連結して環状構造を形成し、R3は、環骨格のアルキレン基またはアリーレン基からなる。この場合、R1はケテンイミン部を含む連結基を有する。
例示化合物(10)は繰り返し数nの繰り返し単位を示し、nは3以上の整数を表す。例示化合物(10)に示される左末端は水素原子であり、右末端はフェニル基である。
(易接着層)
易接着層は、ポリエステルフィルムとEVAフィルムを接着するために、ポリエステルフィルムの面上に設けられる。ポリエステル末端が末端封止剤と反応したものは、末端が嵩高く、これが易接着層に浸入し投錨効果を発現し、密着を改良することができる。末端封止剤は、特にケテンイミン化合物を用いることが好ましく、この場合、良好な投錨効果を発揮する。
ポリエステルフィルムに設ける易接着層は、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、又はポリアミド系の樹脂等を含むことが好ましい。これらの樹脂は極性がポリエステルに近く密着力を得やすいため好ましく用いられる。
易接着層を構成する樹脂としては、例えば、特開2006−152013号公報、特開2006−332091号公報、特許第4457322号公報、特開2006−175764号公報、特開2006−253565号公報、特許4547644号公報、特許3777725号公報、特許3731286号公報、特開2009−269301号公報、特開2006−335853号公報等に記載されている易接着層等、ポリエステルフィルム基材の表面に塗布形成するための塗布液に用いる樹脂が挙げられる。さらに具体的には、例えば以下の樹脂が挙げられる。
イ)ウレタン系樹脂
ウレタン系樹脂としては、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックともいう)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基を親水性基で封鎖するためのブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、スルホン酸基を含有したアルコール類、スルホン酸基を含有したラクタム類、スルホン酸基を含有したオキシム類及びスルホン酸基を含有した活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。上記ポリウレタン樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記ポリウレタン樹脂は自己架橋した編み目に、混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに、上記共重合ポリエステル樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調製中の樹脂は、親水性であるために耐水性が悪いが、塗布、乾燥して熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水性基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。上記ブロック化剤の内、フィルム製造工程における熱処理温度、熱処理時間でブロック化剤がイソシアネート基からはずれる点、及び工業的に入手可能な点から、重亜硫酸塩類が最も好ましい。
上記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する有機ポリイソシアネート、又は分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基又はメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド類、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン等を重合した化合物、又はそれら2種以上をランダム共重合若しくはブロック共重合した化合物、あるいはそれらと多価アルコールとの付加重合を行って得られた化合物がある。
ロ)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体とから形成される。すなわち、多塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これらの酸成分を好ましくは2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量であれば不飽和多塩基酸成分としてマレイン酸、イタコン酸等や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が挙げられる。
ハ)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、以下に例示するようなアクリルモノマーを重合してなるアクリル樹脂が挙げられる。このアクリルモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基、スルホキシ基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N、N−ジアルコキシアクリルアミド、N、N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。
これらのなかで、水酸基を含むモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが2〜20モル%、好ましくは4〜15モル%含まれていることが好ましい。
易接着層形成用の塗布液には、さらに濡れ剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。濡れ剤を含有する場合、その含有量は例えば固形分に対し1〜20質量%である。
また、易接着層には、ポリオレフィン系、例えばSBR等のゴム系樹脂を用いることも好ましい。このようなポリオレフィン系を含む易接着層であれば、柔軟な構造のために剥離応力を吸収し易く密着力を高めることができる。例えば特開昭61−60424号公報、特許2583455号公報、特許3626305号公報、特許3783989号公報、特許4041784号公報、特許4505402号公報の各公報に記載のものを使用できる。
ニ)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を用いることも好ましい。これは、本発明により製造されるポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いる場合、PVA系樹脂を含む易接着層を設けておけば、易接着層上に積層するポリビニルアルコール系樹脂と親和性が高いためである。
また、PVA以外のポリオレフィン樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン共重合体が好ましい。前記ポリオレフィン樹脂としては上市されている市販品を用いてもよく、例えば、アローベースSE−1013N、SD−1010、TC−4010、TD−4010(ともにユニチカ(株)製)、ハイテックS3148、S3121、S8512(ともに東邦化学(株)製)、ケミパールS−120、S−75N、V100、EV210H(ともに三井化学(株)製)などを挙げることができる。その中でも、本発明では、低密度ポリエチレン、アクリル酸エステル、無水マレイン酸の三元共重合体である、アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製を用いることが密着性を向上させる上で好ましい。
これらのオレフィン樹脂に、ポリエステル樹脂(例えば、バイロナールMD−1245(東洋紡(株)製))を好ましく用いることができる。またポリウレタン樹脂を加えることも好ましく、例えば、カーボネート系ウレタン樹脂が好ましく、例えば、スーパーフレックス460(第一工業製薬(株)製)を好ましく用いることができる。
これらのポリオレフィン樹脂は単独で用いても2種以上併用して用いてもよく、2種以上併用する場合は、アクリル樹脂とポリオレフィン樹脂の組合せが好ましい。
易接着層に架橋剤を含有させると、ポリエステルとの密着性を向上することができ、より好ましい。架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。その中でも本発明では、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることが好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等を利用することができる。
架橋剤の添加量は、易接着層を構成するバインダーに対して0.5〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%であり、特に好ましくは3質量%以上15質量%未満である。特に架橋剤の添加量は、0.5質量%以上であると、易接着層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、30質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保て、15質量%未満であると塗布面状を改良できる。
このオレフィン系易接着層には、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤を含有することが好ましい。中でもノニオン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜10mg/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜3mg/m2である。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m2以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、10mg/m2以下であると、ポリマー支持体前記白色層との接着を良好に行なうことができる。
ニ)その他添加剤
これらの易接着層には、架橋剤に加えて、他のエポキシ基を有する化合物も併用してもよい。これらの化合物の例としては、ソルビトトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどのポリエポキシ化合物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のジエポキシ化合物、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのモノエポキシ化合物を挙げることができる。
これらのエポキシ化合物を架橋剤と併用する場合、架橋剤とこれらのエポキシ化合物との合計量が、塗布液の固形分に対し5〜20質量%の範囲で用いられることが好ましい。
なお、塗布液に含有される微粒子や架橋剤、場合によりさらに濡れ剤を比較的多く含有する場合にはポリマーバインダーの量を相対的に少なくすることで固形分の合計量が100質量%となるようにすればよい。
易接着層の厚みは10〜500nmである。易接着層の厚みは10〜500nmであればよく、20〜300nmであることが好ましく、30〜120nmであることがより好ましい。なお、易接着層の厚みとは、易接着層の平均の膜厚をいう。易接着層の厚みを上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムと易接着層の密着性を十分に高めることができる。また、このように易接着層を薄い層とすることで封止剤の易接着層表面への拡散を促し、EVAとの密着性を低下させリワーク性を向上させる。
易接着層の厚みが上記範囲未満では層が薄すぎ、均一な層がポリエステル上に形成できず密着力が低下する。また、易接着層の厚みが上記範囲未満ではリワーク性が低下する、これは、易接着層の膜強度が低下するため、リワーク中に塗布層内が凝集破壊し、剥げ残りが生じるためである。一方、上記範囲を超えると、ポリエステル末端が拡散できず上記投錨効果が得られず密着力が低下したり、サーモ経時中に易接着層が経時劣化し易接着層内で破壊が進行し易く、密着力が低下し易くなるおそれがある。
易接着層の厚みは1〜30%の変動を有する。ここで、易接着層の厚みの変動は、易接着層の厚みの平均値に対する変化率を指す。厚みの変動とは、易接着層の厚みの平均値を求め、最大厚みと最小厚みの差を平均値で割り百分率で表したものである。易接着層の厚みの変動は1〜30%であればよく、2〜25%であることが好ましく、3〜20%であることがより好ましい。このように、上記範囲内で易接着層の厚みに変動を持たせることにより、積層フィルムを剥離する際に積層フィルムにかかる剥離応力が、ポリエステルフィルムの全面にかかることを防ぐことができる。すなわち、厚みの薄い層が密着時に破壊することで、剥離応力を吸収し、層全体に剥離応力がかかることを防止する効果を有する。この易接着層の厚みの変動が上記下限値未満では効果は得られず、上記上限値を超えると、薄層部の破壊が強く発生しすぎ層全体の破壊を引き起こし好ましくない。また、易接着層の厚みの変動を上記範囲内とすることにより易接着層とEVAフィルムの密着性を高めることができる。
さらに、このような易接着層の厚み変動により、表面は凹凸となり表面積が増加する。このため、本発明では、表面への封止剤の拡散量が増加することにより、リワーク性が向上する。
本発明における易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法があるが、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、易接着性層を塗布により形成する場合は、熱処理後の乾燥ゾーンにおいて易接着層の乾燥と熱処理を兼ねることが好ましい。なお、後述する着色層やその他の機能性層を塗布により形成する場合も同様である。
本発明では、易接着層を形成する塗布液を塗布した後に、延伸工程が設けられることが好ましい。このように易接着層を設ける際、塗布後に延伸することでポリエステル末端の易接着層への拡散を促し投錨効果を促す。これは、延伸に伴いポリエステル分子が大きく動き、表面近傍のポリエステル分子も易接着層中に拡散するためと推定される。
また、このような延伸中のポリエステルの大きな運動は、封止剤の易接着層表面への拡散を促し、リワーク性を向上させる効果も有する。
易接着層形成用の塗布液を塗布した後には、易接着層を乾燥させる工程を設けることが好ましい。乾燥工程は、易接着層に乾燥風を供給する工程である。乾燥風の風速には1〜20%の風速変動が付与される。ここで、風速変動とは、乾燥ゾーン内を分割してノズル出口の風速を測定し、最高風速と最低風速の差を平均風速で割り百分率で示した値である。
乾燥風の風速変動は、1〜20%であることが好ましく、2〜15%であることがより好ましく、3〜12%であることがさらに好ましい、風速変動を与えて乾燥した後に延伸工程を設けることで、易接着層に所望の厚みの変動を付与することができる。これは、乾燥速度に差を付けることで、乾燥の遅い(未乾燥)の部分の塗布液が乾燥部に流れることで厚み分布が形成されるためである。
このような風速変動は、乾燥ゾーン上に乾燥風吹き出しノズルを設け、各ノズルの開口度を調整することで上記風速変動を付与できる。なお、乾燥風は熱風であることが好ましい。吹き出しノズルから供給される乾燥風の平均風速は、5〜30m/秒であることが好ましく、7〜25m/秒であることがより好ましく、9〜20m/秒以下であることがさらに好ましい。平均風速を上記範囲内とすることにより、易接着層に所望の範囲の厚みの変動付与することができる。
また、延伸工程では、10〜100℃の温度変動を付与しながら延伸を行うことが好ましい。ここで、温度変動とは、延伸ゾーン内を分割してフィルム温度を測定し、最高温度と最低温度の差を平均温度で割り百分率で示した値である。温度変動は、10〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましく、30〜80℃であることがさらに好ましい。上記範囲内の温度変動を付与しながら延伸を行うことによりポリエステル末端の拡散を促すことができる。すなわち、延伸に伴い分子が伸長し運動性が低下し拡散し難くなるため、延伸中に徐々に温度を上げることで拡散を促す効果が得られる。上記下限値未満では拡散効果が得られず密着不良が発生し、上記上限値を超えると高温領域において延伸配向し難く、耐熱性が低下し易くなる。このような延伸温度の上昇に伴う拡散の増加は、封止剤を易接着層表面に析出させ易くする効果を発揮するだけではなく、リワーク性を向上させる効果も発揮する。
延伸工程において温度変動を付与するためには、延伸ゾーンの搬送方向に3基以上の熱風吹き出しノズルを設置し、それぞれに温度の異なる熱風を吹き込むことで、温度分布を形成できる。設置数は3〜20基であることが好ましく、4〜15基であることがより好ましい。熱風吹き出しノズルの設置数を上記範囲内とすることにより、所望の温度変動を付与することができる。
また、温度変動を付与するためには、延伸ゾーンに輻射熱源(例えばパネルヒーター、IRヒーター、ハロゲンヒーター等)を3〜20基設置し、これらの温度に分布を付与ことによっても達成できる。設置数は3〜20基であることが好ましく、4〜15基であることがより好ましい。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
<ポリエステルフィルム形成工程>
ポリエステルフィルム形成工程においては、本発明に係るポリエステルフィルムを製膜する。ポリエステルフィルムを製膜する工程では、樹脂組成物に含まれるポリエステルおよびケテンイミン化合物等の末端封止剤を溶融させた溶融体をギアポンプや濾過器を通し、その後、ダイを介して冷却ロールに押出し、これを冷却固化させることで(未延伸)フィルムを形成することができる。溶融は押出し機を用いて行なうが、単軸押出し機を用いても良く、2軸押出し機を用いても良い。
ポリエステルフィルムを製膜する工程では、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを混合する工程を含むことが好ましい。異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルのうち、固有粘度(IV)が高い方を第1のポリエステルとし、固有粘度(IV)が低い方を第2のポリエステルとすると、第1のポリエステルと第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであることが好ましく、0.02〜0.09g/dlであることがより好ましい。第1のポリエステルと第2のポリエステルは、マスターバッチを形成する際に混合されることが好ましい。
異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを混合する工程では、第2のポリエステルの含有率を5〜50質量%となるように混合することが好ましい。含有率は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。ポリエステルに対する第1のポリエステルの含有率は、50〜95質量%、より好ましくは55〜90質量%であることが好ましい。
ポリエステルフィルムの製膜時には、カルボジイミド化合物やケテンイミン化合物といった末端封止剤の供給量に変動を付与することが好ましい。例えば、ポリエステルとケテンイミン化合物等の末端封止剤を押出し機で混練する際、末端封止剤の供給量に変動を与えることができる。ここで、供給量の変動とは、供給量を10分間計測し、各1分毎の供給量を求め、最大供給量と最小供給量の差を平均供給量で割り百分率で表したものである。供給量の変動は、末端封止剤を押出し機に投入する際のフィーダーの供給速度を変えることで付与することができる。
末端封止剤の供給量の変動は、1〜20%であることが好ましく、2〜18%であることがより好ましく、3〜15%であることがさらに好ましい。末端封止剤の供給量の変動を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの酸価(AV)に5〜30%の変動を付与することができる。
ケテンイミン化合物は直接これらの押出し機に添加しても良いが、予めポリエステルとマスターバッチを形成し押出し機に投入することが、押出し安定性の観点から好ましい。マスターバッチを形成する場合は、ケテンイミン化合物を含むマスターバッチの供給量に上記変動を与えることが好ましい。なお、マスターバッチケテンイミンの濃度は濃縮したものを使用することが好ましく、製膜後のフィルム中の濃度の2〜100倍、より好ましくは5〜50倍にすることがコストの観点から好ましい。
押出しは真空排気や不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。これによりでケテンイミン等の末端封止剤の分解を抑止できる。押出し機の温度は使用するポリエステルの融点から融点+80℃以下で行なうことが好ましく、より好ましくは融点+10℃以上、融点+70℃以下、さらに好ましくは融点+20℃以上、融点+60℃以下である。この範囲未満では充分に樹脂が融解せず、一方この範囲を超えるとケテンイミン化合物が分解し好ましくない。なお、この押出しの前に、ポリエステルやケテンイミン化合物、マスターバッチを乾燥しておくことが好ましく、好ましい含水率は10〜300ppm、より好ましくは20〜150ppmである。
なお、押出された溶融体は、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させることができる。この際、冷却ロールの表面温度は、おおよそ10℃〜40℃とすることができる。
<延伸工程>
フィルム形成工程によって形成された(未延伸)フィルムは、延伸工程において、延伸処理を施すことができる。延伸は縦方向(MD)、横方向(TD)の少なくとも一方に行なうことが好ましく、より好ましくは、MD、TDの両方延伸を行なうことが、フィルムの物性にバランスが取れ好ましい。このような2方向延伸は、縦、横逐次におこなっても良く、同時に実施しても良い。延伸工程においては、冷却ロールで冷却固化させた(未延伸)フィルムに1つまたは2つの方向に延伸されることが好ましく、2つの方向に延伸されることがより好ましい。2つの方向への延伸(二軸延伸)は、長手方向(MD:Machine Direction)の延伸(以下「縦延伸」ともいう)及び幅方向(TD:Transverse Direction)の延伸(以下、「横延伸」ともいう)であることが好ましい。当該縦延伸、横延伸は各々1回で行っても良く、複数回に亘って実施しても良く、同時に縦、横に延伸してもよい。
延伸処理は、フィルムのガラス温度(Tg)℃〜(Tg+60)℃で行うのが好ましく、より好ましくはTg+3℃〜Tg+40℃、さらに好ましくはTg+5℃〜Tg+30℃である。この時、上述のように温度分布を付与することが好ましい。
好ましい延伸倍率は少なくとも一方に280%〜500%、より好ましくは300%〜480%、さらに好ましくは320%〜460%である。二軸延伸の場合、縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×(延伸後の長さ)/(延伸前の長さ)
二軸延伸処理は、例えば、フィルムのガラス転移温度である(Tg1)℃〜(Tg1+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上、合計の倍率が3〜6倍になるよう延伸し、その後、(Tg1)℃〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるよう施すことができる。
縦二軸延伸処理は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸することができ(縦延伸)、またチャックで幅方向を把持した後、このチャック間の長手方向の間隔を広げることで延伸しても良い。
横延伸はフィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げておこなうことができる(横延伸)。
同時延伸は、チャックで把持したあと、長手方向にチャック間隔を拡げる操作と、幅方向にチャック間隔を拡げる操作を組み合わせることで実施できる。
これらの延伸工程に、後述する易接着層の塗布工程を組み合わせることが好ましい。易接着層は、このような延伸工程の前や延伸工程の間の工程において、塗布によりポリエステルフィルムの表面に形成される。すなわち、本発明では、塗布液を塗布し接着層を形成したポリエステルフィルム基材を少なくとも1回延伸することが好ましい。
例えば、延伸工程と塗布工程は、下記のような組合せで実施することができる。
(a)縦延伸→塗布→横延伸
(b)塗布→縦延伸→横延伸
(c)塗布→縦、横同時延伸
(d)縦延伸→横延伸→塗布→縦延伸
(e)縦延伸→横延伸→塗布→横延伸
この中で好ましいのが(a)、(b)、(c)であり、さらに好ましいのが(a)である。この手法が最も密着力が高く、設備もコンパクトとなり好ましい。
延伸工程では、10〜100℃の温度変動を付与しながら延伸を行うことが好ましい。ここで、温度変動とは、延伸ゾーン内を分割してフィルム温度を測定し、最高温度と最低温度の差を平均温度で割り百分率で示した値である。温度変動は、10〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましく、30〜80℃であることがさらに好ましい。上記範囲内の温度変動を付与しながら延伸を行うことによりポリエステル末端の拡散を促すことができる。すなわち、延伸に伴い分子が伸長し運動性が低下し拡散し難くなるため、延伸中に徐々に温度を上げることで拡散を促す効果が得られる。上記下限値未満では拡散効果が得られず密着不良が発生し、上記上限値を超えると高温領域において延伸配向し難く、耐熱性が低下し易くなる。このような延伸温度の上昇に伴う拡散の増加は封止剤を易接着層表面に析出させ易くする効果を有し、リワーク性を向上させる効果も有する。
延伸工程において温度変動を付与するためには、延伸ゾーンの搬送方向に3基以上の熱風吹き出しノズルを設置し、それぞれに温度の異なる熱風を吹き込むことで、温度分布を形成できる。設置数は3〜20基であることが好ましく、4〜15基であることがより好ましい。熱風吹き出しノズルの設置数を上記範囲内とすることにより、所望の温度変動を付与することができる。
また、温度変動を付与するためには、延伸ゾーンに輻射熱源(例えばパネルヒーター、IRヒーター、ハロゲンヒーター等)を3〜20基設置し、これらの温度に分布を付与ことによっても達成できる。設置数は3〜20基であることが好ましく、4〜15基であることがより好ましい。
延伸工程においては、延伸処理の前又はその後、好ましくは延伸処理後に、フィルムに熱処理を施すことができる。熱処理を施すことによって、微結晶を生成し、力学特性や耐久性を向上させることができる。180〜210℃程度(更に好ましくは、185〜210℃)で1〜60秒間(更に好ましくは2〜30秒間)の熱処理をフィルムに施してもよい。
延伸工程においては、熱処理後、熱緩和処理を施すことができる。熱緩和処理とは、フィルムに対して応力緩和のために熱を加えて、フィルムを収縮させる処理である。熱緩和処理は、フィルムのMD及びTDの両方向に施すことが好ましい。熱緩和処理における諸条件は、熱処理温度より低い温度で処理することが好ましく、130℃〜205℃が好ましい。また、熱緩和処理は、フィルムの熱収縮率(150℃)がMD及びTDがいずれも1〜12%であることが好ましく、1〜10%が更に好ましい。尚、熱収縮率(150℃)は、測定方向350mm、幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの長手方向の両端近傍300mm間隔に標点を付け、150℃の温度に調整されたオーブンに一端を固定、他端をフリーで30分間放置し、その後、室温で標点間距離を測定し、この長さをL(mm)とし、かかる測定値を用いて、下記式にて熱収縮率を求めることができる。
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
<塗布工程>
上記のようにポリエステルフィルム基材を作製した後、ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に易接着層を設ける。押出しから熱固定の間に塗工を行い、この後に少なくとも1回の延伸をおこなうことが好ましい。これにより、フィルム基材と易接着層との密着性を向上させることができる。これは、延伸中にフィルム基材の表面の分子が切断して発生したラジカルにより塗布成分と化学結合を発現させ、密着をより効果的に発現できる効果も有すると考えられる。
フィルム基材の表面に易接着層を設ける方法としては、例えば、バーコート法、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。また、易接着層の塗設に先立ち、ポリエステルフィルム基材に表面処理を行うことも好ましく、例えばコロナ処理、火炎処理、紫外線処理、グロー処理、大気圧プラズマ処理等を挙げることができる。
<乾燥工程>
易接着層は、ポリエステルフィルム上に層状に適用した後であって、延伸工程の前に乾燥させることによって硬化させる。易接着層は2層構造としてもよく、この場合は、第2層目を塗布した後に乾燥させて硬化させることが好ましい。乾燥工程は、易接着層に乾燥風を供給する工程である。
乾燥工程において、乾燥風の風速には1〜20%の風速変動が付与される。ここで、風速変動とは、乾燥ゾーン内を分割してノズル出口の風速を測定し、最高風速と最低風速の差を平均風速で割り百分率で示した値である。
乾燥風の風速変動は、1〜20%であることが好ましく、2〜15%であることがより好ましく、3〜12%であることがさらに好ましい、風速変動を与えて乾燥した後に延伸工程を設けることで、易接着層に所望の厚みの変動を付与することができる。これは、乾燥速度に差を付けることで、乾燥の遅い(未乾燥)の部分の塗布液が乾燥部に流れることで厚み分布が形成されるためである。
このような風速変動は、乾燥ゾーン上に乾燥風吹き出しノズルを設け、各ノズルの開口度を調整することで上記風速変動を付与できる。なお、乾燥風は熱風であることが好ましい。吹き出しノズルから供給される乾燥風の平均風速は、5〜30m/秒であることが好ましく、7〜25m/秒であることがより好ましく、9〜20m/秒以下であることがさらに好ましい。平均風速を上記範囲内とすることにより、易接着層に所望の範囲の厚みの変動付与することができる。
[太陽電池モジュール用バックシート]
本発明の積層フィルムの用途は特に限定されないが、太陽電池モジュール用バックシート、バリアフィルム基材等の用途に好適である。
太陽電池モジュール用バックシートには、ポリエステルフィルム上に、上記易接着層に加えて、以下の層を設けることも好ましい。
1.着色層
本発明のポリエステルフィルムには、着色層を設けることができる。着色層は、ポリエステルフィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。第二の機能は、太陽電池モジュールをオモテ面側から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させることができる。
(1)顔料
本発明における着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。顔料は、2.5〜8.5g/m2の範囲で含有されるのが好ましい。より好ましい顔料含有量は、4.5〜7.5g/m2の範囲である。顔料の含有量が2.5g/m2以上であることで、必要な着色が得られやすく、光の反射率や装飾性をより優れたものに調整することができる。顔料の含有量が8.5g/m2以下であることで、着色層の面状をより良好に維持することができる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。これら顔料のうち、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からは、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが好ましい。
顔料の平均粒径としては、0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度が好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、光の反射効率が低下する場合がある。
入射した太陽光を反射する反射層として着色層を構成する場合、顔料の反射層中における好ましい添加量は、用いる顔料の種類や平均粒径により変化するため一概には言えないが、1.5〜15g/m2が好ましく、より好ましくは3〜10g/m2程度である。添加量は、1.5g/m2以上であることで必要な反射率が得られやすく、15g/m2以下であることで反射層の強度をより一層高く維持することができる。
(2)バインダー
本発明における着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。バインダーを含む場合の量としては、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持することができ、200質量%以下であることで反射率や装飾性が低下する。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものが挙げられる。
ポリオレフィンの例としては、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)などが挙げられる。アクリル樹脂の例としては、ジュリマーET−4
10、SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)などが挙げられる。アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
(3)添加剤
本発明における着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の着色剤中における添加量は、着色層のバインダーあたり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を高く維持することができ、また50質量%以下であることで、塗布液のポットライフをより長く維持することができる。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができる。界面活性剤の添加量は、0.1〜15mg/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/m2が好ましい。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m2以上であることでハジキの発生が効果的に抑制され、また、15mg/m2以下であることで接着性に優れる。
さらに、着色層には、上記の顔料とは別に、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。フィラーの添加量は、着色層のバインダーあたり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーを含むことにより、着色層の強度を高めることができる。また、フィラーの添加量が20質量%以下であることで、顔料の比率が保てるため、良好な光反射性(反射率)や装飾性が得られる。
(4)着色層の形成方法
着色層の形成方法としては、顔料を含有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法、ポリエステルフィルム成形時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等がある。このうち、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いられる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。しかし、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
(5)物性
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましい。反射層である場合の550nmの光反射率としては、75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に使用されなかった太陽光をセルに戻すことができ、発電効率を上げる効果が高い。
白色層(光反射層)の厚みは、1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、更に好ましくは1.5〜10μm程度である。膜厚が1μm以上である場合、必要な装飾性や反射率が得られやすく、20μm以下であると面状が悪化する場合がある。
2.下塗り層
本発明のポリエステルフィルムには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層とポリエステルフィルムとの間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
下塗り層中に含有するバインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。下塗り層には、バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
下塗り層を塗布形成するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用することができる。溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
塗布は、二軸延伸した後のポリエステルフィルムに塗布してもよいし、一軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布してもよい。この場合、塗布後に初めの延伸と異なる方向に更に延伸してフィルムとしてもよい。さらに、延伸前のポリエステルフィルムに塗布した後に、2方向に延伸してもよい。
下塗り層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1.5μm程度の範囲が好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで必要な接着性が得られやすく、2μm以下であることで、面状を良好に維持することができる。
3.防汚層(フッ素系樹脂層・ケイ素系樹脂層)
本発明のポリエステルフィルムには、フッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方を防汚層として設けることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007−35694号公報、特開2008−28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系易接着層を有していることが好ましい。
また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
フッ素系樹脂層及びSi系樹脂層の厚みは、各々、1μm〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは1μm〜40μmの範囲が好ましく、更に好ましくは1μm〜10μmである。
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の積層フィルムまたは本発明の太陽電池モジュール用バックシートを含むことを特徴とする。
太陽電池モジュールへの用途では、電気を取り出すリード配線で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止材で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明のポリエステルフィルム(バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様が挙げられる。
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(1)ケテンイミン化合物
以下の構造のケテンイミン化合物を末端封止剤として、各実施例に用いた。
封止剤A:例示化合物(1)
封止剤B:例示化合物(4)
封止剤C:例示化合物(7)
封止剤D:例示化合物(9)
封止剤E:例示化合物A
封止剤F:例示化合物B
Figure 2014108623
各実施例で使用した上記の例示化合物(1)(4)(7)(9)は以下の方法によって合成した。
[合成例1]
(例示化合物1の合成)
Figure 2014108623
2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル酪酸29.1g(150mol)、無水酢酸375mlを三つ口フラスコに仕込み、還流下で3時間攪拌した。TLCにて反応終了を確認した後、過剰の無水酢酸を減圧留去した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、1N塩酸水で分液洗浄を行った。溶媒を留去することで31.0g(収率87.5%)の(1−A)を得た。構造はNMRで確認した。
(1−A)17.1g(72.4mmol)、塩化チオニル21.5g(181mmol)、トルエン50mLを三つ口フラスコに仕込み70℃で1時間攪拌した。TLCにて反応終了を確認したあと、過剰の塩化チオニルと溶媒を減圧留去した。続けてトルエン50mLを加え、生成物を溶解させた後、5℃に冷却し、アニリン14.8g(159mmol)、トリエチルアミン16.1g(159mmol)を同時にゆっくり滴下し、氷冷下で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、酢酸エチルに溶解させ、1N塩酸水で分液洗浄を行った。溶媒を留去することで16.2gの(1−B)を得た。(収率88%)
(1−B)16.2g(52mmol)、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)15.0g、メタノール50mLを三つ口フラスコに仕込み、室温下で2時間攪拌した。TLCにて反応の終了を確認した後、酢酸エチルを加え、1N塩酸水で分液洗浄を行った。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒にて晶析させることで12.2gの(1−C)を得た。(収率87%)
(1−C)10.7g(40mmol)、炭酸カリウム16.6g(120mmol)、DMF70mLを三つ口フラスコに仕込み、50℃で窒素下攪拌を行った。1,4−ジブロモブタン4.31g(20mmol)滴下し、系内温度を110℃まで昇温し、24時間反応させた。反応後、酢酸エチルを加え、1N塩酸水、次に1N炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で分液洗浄した。溶媒を減圧留去した後、2−プロパノール/ヘキサン混合溶媒にて晶析させることで8.3gの(1−D)を得た。(収率70%)
(1−D)6.0g(10.1mmol)、トリフェニルホスフィン6.9g(26.3mmol)トリエチルアミン4.08g(40.5mmol)、四塩化炭素3.12g(20.2mmol)、クロロホルム210mLを三つ口フラスコに仕込み、70℃で窒素下で8時間攪拌を行った。溶媒を減圧濃縮した後、ヘキサンで洗浄し、シリカゲルクロマトにて精製することで、2.5gの例示化合物(1)を得た。(収率:45%)
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm); 1.2(12H)、1.8−1.9(4H)、2.9(2H)、4.0(4H)、6.9−7.0(4H)、7.1(4H)、7.2−7.5(10H)
[合成例2]
(例示化合物4の合成)
Figure 2014108623
ベンゾフェノン15.1g(76mmol)、ペンタエリスリトールテトラブロミド6.08g(16mmol)、炭酸カリウム31.1g(225mmol)、DMF130mlを三つ口フラスコに仕込み、130℃で10時間攪拌した。溶媒を減圧留去して得られた固体を、蒸留水で1回、エタノールで1回洗浄し、酢酸エチルで晶析して(4−A)13.0g得た(収率95%)。構造はNMRで確認した。
(4−A)10.9g(12.7mmol)、アニリン7.08g(76.2mmol)、DABCO22.96g(154.6mmol)、クロロベンゼン390mlを三つ口フラスコに仕込み125℃で1時間攪拌し、続けてテトラクロロチタン9.9g(51mmol)加えて4時間攪拌した。得られた反応液を減圧濾過、続けて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄して(4−B)13.5g得た(収率92%)。構造はNMRで確認した。
(4−B)10.2g(8.7mmol)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド6.0g、クロロホルム90mlを三つ口フラスコに仕込み、十分に攪拌しながら50%水酸化ナトリウム水溶液60gを一気に加え、40〜45℃で1時間攪拌した。純水120ml、クロロホルム180mlを加えて2回純水で洗浄し、溶媒を減圧留去し(4−C)を12.9g(8.7mmol)得た(収率100%)。構造はNMRで確認した。
(4−C)12.9g(8.7mmol)、ヨウ化ナトリウム39g、アセトン210mlをフラスコに仕込み、75℃で2時間還流した。3.5%チオ硫酸ナトリウム水溶液に反応溶液をゆっくり滴下し、1時間攪拌した後、減圧濾過して固体を得た。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製し、例示化合物(4)を7.2g(6.0mmol)得た(収率69%)。構造はNMRで確認した。
1H−NMR(CDCl3) δ(ppm); 4.32(8H)、7.05(8H)、7.20(20H)、7.36(20H)、7.45(8H)
[合成例3]
(例示化合物7の合成)
Figure 2014108623
2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル酪酸32.0g(165mmol)、1N水酸化ナトリウム水溶液450mLを三つ口フラスコに仕込み、室温下で攪拌した。テレフタロイルクロリド16.9g(83mmol)のトルエン100mL溶液を室温下で滴下した。滴下終了後、2N水酸化ナトリウム水溶液450mLを加えた。4時間反応させた後、3N塩酸水450mLを加えて、系内のpHを2にし、固体を析出させた。有機層をろ過し、39.0gの(7−A)を得た。(収率88%)
(7−A)16.0g(30mmol)、THF180mLを三つ口フラスコに仕込み、氷水化で攪拌しながら、メタンスルホン酸クロリド4.61mL(30mmol)、ついでN,N−ジイソプロピルエチルアミン11.5mL(66mmol)を滴下した。5時間攪拌し、TLCにて反応終了を確認した後、アニリン5.04g(54mmol)のTHF50mL溶液、N,N−ジイソプロピルエチルアミン11.5mL(66mmol)を続けて滴下し、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンを少量添加した。室温下で3時間攪拌し、TLCにて反応終了を確認した後、飽和塩化ナトリウム水溶液、1N塩酸水、飽和塩化ナトリウム水溶液、ついで水で分液洗浄した。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶を行い11.7gの(7−B)を得た。(収率60%)
(7−B)5.73g(9.1mmol)、トリフェニルホスフィン6.18g(23.7mmol)、トリエチルアミン3.68g(36.4mmol)、四塩化炭素2.80g(18.2mmol)、クロロホルム190mLを三つ口フラスコに仕込み、70℃で窒素下で8時間攪拌を行った。溶媒を減圧濃縮した後、ヘキサンで洗浄を行うことで。3.7gの例示化合物(7)を得た。(収率83%)
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm); 0.6(6H)、0.9(6H)、2.1−2.3(m、2H)、6.7(4H)、6.9(2H)、7.0−7.2(4H)、7.2−7.3(4H)、7.3−7.4(4H)、7.7(4H)
[合成例4]
(例示化合物9の合成)
Figure 2014108623
ピバロイルアセト酢酸エチル17.2g(0.1mol)、ペンタエリスリトール2.7g(20mmol)、パラトルエンスルホン酸0.3g(1.5mmol)を窒素雰囲気下、180℃にて攪拌した。TLCにて原料の消失を確認した後、系の温度を室温まで下げ、酢酸エチルに溶解させた。水を加えて分液し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィーにて精製を行うことで、9.7gの(9−A)を得た。(収率76%)
(9−A)9.0g(14mmol)、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカー7―エン9.2ml(62mmol)のテトラヒドロフラン30ml溶液を氷冷却下、2,6−ジメチル−フェニルチオイソシアネート10.1g(62mmol)のテトラヒドロフラン10ml溶液をゆっくりと滴下した。反応系の温度を室温まで昇温し、TLCにて原料の消失を確認した後、水/酢酸エチルを加えて分液した。有機層を食塩水、水にて洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行うことで、16.5gの(9−B)を得た。(収率91%)
(9−B)10.0g(7.7mmol)のクロロホルム100ml溶液に、氷冷下、2−クロロー1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド2.0g(11.8mmol)のクロロホルム50ml溶液を添加し、トリエチルアミン4.3ml(30.8mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、攪拌しながら反応系の温度をゆっくりと室温まで昇温した。TLCにて原料の消失を確認した後、クロロホルム/水を加えて分液し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトにて精製を行うことで、5.6gの例示化合物(9)を得た。(収率63%)
1H−NMR(CDCl3−d) δ(ppm); 1.3(36H)、2.1(24H)、4.2(8H)、7.0−7.2(12H)
さらに、ケテンイミン系の末端封止剤として、以下の化合物を実施例に用いた。なお、下記の例示化合物A及び例示化合物Bは米国特許3692745号公報の実施例に記載のmonoおよびbisで表される化合物である。
Figure 2014108623
(2)カルボジイミド化合物
以下のカルボジイミド化合物を末端封止剤として、各実施例に用いた。
封止剤G:環状カルボジイミドA(特開2011−258641号公報に記載のカルボジイミド化合物([化37]モル分子量=918))
封止剤H:環状カルボジイミドB(WO2011/093478,178〜180ページの参考例6に記載のカルボジイミド化合物:モル分子量=516)
封止剤I:環状カルボジイミドC(WO2011/093478,177〜178ページの参考例5に記載のカルボジイミド化合物:モル分子量=252)
封止剤J:鎖状封止剤(ラインケミー社製スタバクゾールP400)
(3)その他の封止剤
封止剤K:エポキシ系封止剤(特開2010−116560[0115]記載の化合物Joncryl 4380)
(実施例1〜58、及び比較例1〜10)
<1>ポリエステル樹脂の製造
下記種類のポリエステルを重合し、この中から表1に示すように選択し用いた。
(1−1)ポリエステルの重合
(A)Ti触媒PET(Ti−PET)
特開2007−70462の実施例1に従って以下のようにポリエステルを重合した。
(B)Sb触媒PET(Sb−PET)
国際公開公報WO2010/110119A1の段落0054に記載されている「原料PET−1」に従い、下記のようにポリエステルを得た。
ジメチルテレフタレート100質量%、およびエチレングリコール60質量%の混合物を、酢酸カルシウム0.08質量%、三酸化アンチモン0.03質量%を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。
次いで、このエステル交換反応生成物に、酢酸リチウム0.16質量%、リン酸トリメチル0.11質量%を添加した後、重合反応槽に移行し、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重合し、固有粘度が0.52のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
(C)Al触媒PET(Al−PET)
以下に示す方法に準じて、PETサンプルを得た。
攪拌機付の熱媒循環式(2リットル)ステンレス製オートクレーブに、高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコール及びトリエチルアミンを、酸成分に対して0.3mol%になるように加え、0.25MPaの加圧下245℃にて、水を系外に留去しながらエステル化反応を120分間実施して、オリゴマー混合物を得た。このオリゴマー混合物に、重縮合触媒として塩基性酢酸アルミニウム(Aldrich製)水溶液及びエチレングリコールを加えて還留し、結果として15g/l塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.014mol%、リン化合物としてIrganox1425(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02 mol%を加えた。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間攪拌した。その後、60分間をかけて275℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに275℃、13.3Paで所望のIVが得られるまで、重縮合反応を実施した。所定の攪拌トルクに到達した時点でオートクレーブに窒素を導入して常圧に戻し、重縮合反応を停止させた。
(D)PEN
特開2011−258641[0120]実施例3に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)を用いた。
(1−2)固相重合
上記樹脂(ペレット)を180℃で5時間乾燥し、結晶化させた。なお、ペレットのサイズは直径3mm、長さ5mmの円柱状のものを用いた。
乾燥後、205℃の固相重合槽にペレットを移し、固相重合槽にN2ガスを、樹脂1kgあたり1Nm3/hr流した。この固相重合の時間を変えることで、表1記載のIVの異なるポリエステル樹脂を得た。
<2>マスターバッチの製造
上記合成例のケテンイミン化合物と、上記固相重合後(高IV)のポリエステル樹脂を用いて、マスターバッチを調製した。なお、低IVのポリエステルについても同様に調整した。ケテンイミン化合物とポリエステル樹脂を150℃で乾燥し含水率を100ppm以下とした後、これらを2軸押出し機に投入し、真空排気しながら280℃で混練した。これをノズルからストランド状に押し出し、水中で冷却固化しを、直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットを得た。なお、マスターバッチ中のケテンイミンの含有量はポリエステルの30wt%になるように調整した。
上記ポリエステルペレット(固相重合したもの、あるいは固相重合しないもの)および上記マスターバッチを2軸押出し機に投入し、窒素気流下、280℃で溶融混練し、この溶融体(メルト)をギアポンプ、ろ過器、ダイを通して30℃のチルロール上に押出し、未延伸フィルムを作製した。この際、上記高IVのポリエステルと低AVのポリエステルを押出しに投入した。さらに、押出し機にはケテンミン化合物を含んだマスターバッチも添加するが、この際、これを添加するフィーダーの供給量(単位時間あたりの供給量)に表1記載の変動を付与した。なお、高IV、低IV、マスターバッチのポリエステルは同じ種類(触媒種)のものを用いた。
(ポリエステルフィルムの物性評価)
<末端カルボン酸基量(AV)および変動>
AVはポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全に溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その滴定量から算出した値である。
製膜フィルムを全幅に亘り、MDを長手にし、A4サイズに裁断し、このフィルムをMD、TD方向に各5等分し、25分割したフィルムの中央部を上記手法でAV測定した。平均値をAV値とし、最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で示したものを「変動」とした。
<固有粘度(IV)および変動>
IVは溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr−1)を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒中の30℃での溶液粘度から求めた。
製膜フィルムを全幅に亘り、MDを長手にし、A4サイズに裁断し、このフィルムをMD、TD方向に各5等分し、25分割したフィルムの中央部を上記手法でIV測定した。平均値をIV値とし、最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で示したものを「変動」とした。
末端封止剤の種類、ポリエステルフィルムの組成および物性等は表1に示した。
Figure 2014108623
<3>延伸及び易接着層の形成
得られた未延伸フィルムに対して、周速差の異なるニップロールを用い、90℃で3.4倍に縦延伸を実施した。これに下記条件でコロナ放電処理をおこなった。
・電極と誘電体ロールギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m2
この後、下記組成の易接着層塗布液から選択し(表1に記載)バーコーターを用い塗布した。塗布量は、乾燥、延伸後の厚みが表2に記載の厚みになるようフィルムの両片面に塗布した(両面とも同様に塗布)。この後、表1に記載の乾燥風分布を付与して110℃で乾燥した。この後、平均温度120℃で表1器際の温度変動を与えながら横方向に3.8倍延伸した。
なお、上記のように縦延伸と横延伸の間に塗布を行い、「塗布後に延伸」をしたものを表2中の「塗布後の延伸」の列に「有」と記載した。一方上記縦延伸と横延伸の間の塗布を実施せず、横延伸、熱固定終了後に実施したものを「なし」と記載した。
(易接着層塗布液)
下記に記載した各樹脂を用いて易接着層塗布液を調整した。
・アクリル系樹脂:A−1
・メチルメタクリレート …55モル%
・エチルアクリレート …40モル%
・N−メチロールアクリルアミド …3モル%
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート …2モル%
以上の成分で構成されているアクリル樹脂(Tg=27℃)
・ウレタン系樹脂:U−1
・ポリエステル系主剤+(イソホロンジイソシアネート/キシリレンジイソシアネート)系硬化剤
・ウレタン系樹脂:U−2
・水 …51.00質量%
・イソプロパノール …30.00質量%
・ポリウレタン樹脂 …12.58質量%
(以下の方法で調製されたポリウレタン樹脂)
・オキサゾリン基を有する樹脂 …4.72質量%
(以下の方法で調製されたオキサゾリン系樹脂)
・粒子 …1.57質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
・粒子 …0.08質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
・界面活性剤 …0.05質量%
(信越シリコーン社製KF6011、シリコーン系界面活性剤、固形分濃度100質量%)
<ポリウレタン樹脂の調製>
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート43.75質量%、ジメチロールブタン酸12.85質量%、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量%、ジブチルスズジラウレート0.03質量%、及び溶剤としてアセトン84.00質量%を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量%を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移点温度は−30℃であった。
<オキサゾリン基を有する樹脂の調製>
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量%とイソプロパノール58質量%との混合物、および、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量%を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16質量%、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学社製)32質量%、およびメタクリル酸メチル32質量%の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂を得た。
・ウレタン系樹脂:U−4
下記の化合物の固形分が下記部数となるように水を媒体とする塗布液(濃度10%)を調整した。
・ポリウレタン …60質量%
(大日本インキ化学工業社製ハイドラン AP−40)
・ポリウレタン …10質量%
(三洋化成社製パーマリンUA310
・ポリエステル …20質量%
(大日本インキ化学工業社製ファインテックス ES−670
・アルキロールメラミン …10質量%
・ポリエステル系樹脂:E−1
・架橋剤:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されているオキサゾリン基を有する重合体(Tg=50℃) …15質量%
・樹脂成分:酸成分がテレフタル酸80モル%/イソフタル酸15モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール60モル%/ジエチレングリコール40モル%で構成された共重合ポリエステル(Tg=43℃)…75質量%
・フィラー:平均粒径60nmのシリカ粒子 …4質量%
・濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル …6質量%
・ポリエステル系樹脂:E−2
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。粒子Aは屈折率2.1のSnO2、粒子Bは平均1次粒径約500nmのシリカ粒子である。
・水 …40.16質量%
・イソプロパノール …30.00質量%
・ポリエステル水分散液 …18.19質量%
(以下の方法で調製されたポリエステル水分散液)
・ブロックポリイソシアネート水分散液 …2.08質量%
(第一工業製薬社製エラストロンE−37)
・粒子A …9.37質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
・粒子B …0.17質量%
(日本触媒製シーホスターKEW50、固形分濃度15質量%)
・シリコン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング社製DC57、固形分濃度100%)
(ポリエステル水分散液の調製)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に下記のポリエステル樹脂(a−1)30質量%、エチレングリコールn−ブチルエーテル15質量%を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量%をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散液を作製した。
(上記ポリエステル樹脂(a−1)の調製)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量%、ジメチルイソフタレート184.5質量%、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量%、ジエチレングリコール233.5質量%、エチレングリコール136.6質量%、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.2質量%を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(a−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(a−1)は、淡黄色透明であった。得られた共重合ポリエステル樹脂(a−1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
・ポリエステル系樹脂:E−3
日本化工塗料社製の変性ポリエステル高分子結着剤FS−44、イソシアネート系架橋結合剤TD硬化剤、及び綜研化学(株)製の滑剤MP−300からなる塗布液
・ポリエステル系樹脂:E−5
‐酸成分‐
・テレフタル酸 …32.8質量%
・イソフタル酸 …10.5質量%
・トリメリット酸 …14.7質量%
・セバシン酸 …4.3質量%
‐グリコール成分‐
・エチレングリコール …6.5質量%
・ネオペンチルグリコール …13.1質量%
・1,4−ブタンジオール …18.1質量%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体を得た。
・ポリエステル系樹脂:E−6
・水系ポリエステル …30質量%
(東洋紡績社製、バイロナール)
・水系ポリブロックイソシアネート化合物B …33質量%
(第一工業製薬社製、亜硫酸塩ブロック型)
・水系ポリブロックイソシアネート化合物C …3質量%
(第一工業製薬社製、エラストロンBN11)
・帯電防止剤として半極性有機ホウ素化合物 …34質量%
(ボロンインターナショナル社製、ハイボロン)
上記酸成分と溶剤質量比率が水/イソプロパノール=93/7の溶媒により、固形分濃度14.6質量%の塗布液を得た。
・PVA系樹脂:V−1
・ポリビニルアルコール(ケン化度86〜89mol%のポリビニルアルコール)…20質量%
・微粒子(平均粒径100nmの球状シリカ粒子)…0.2質量%
・架橋剤(下式に示す化合物)…1質量%
上記構成の水性塗布液を得た。
Figure 2014108623
・ポリオレフィン系樹脂:O−1
・ポリオレフィンバインダー … 24.12質量%
(アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、濃度20質量%)
・オキサゾリン系架橋剤 … 3.90質量%
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、濃度25質量%)
・フッ素系界面活性剤 … 0.19質量%
(ナトリウム=ビス(3、3、4、4、5、5、6、6−ノナフルオロ)=2−スルホナイトオキシスクシナート、三協化学(株)製、濃度1質量%)
・蒸留水 … 71.80質量%
<4>熱固定、巻取り
上記塗布工程、横延伸工程の後、205℃で15秒間の熱固定を行い、195℃でMD、TDに各々5%ずつ緩和処理を行った。次いで、両端を10cmずつトリミングし、両端にナーリングを付与した後2000m巻き取った。このようにして得たフィルムの易接着層の厚みを表2に記載した。なお、全水準とも巻取り幅は2.5mであった。
(易接着層物性等評価)
<易接着層の厚みおよび変動>
易接着層の厚みは、製膜フィルムを全幅に亘り、MDを長手にし、A4サイズに裁断し、このフィルムをMD、TD方向に各5等分し、25分割したフィルムの中心部の厚みを測定することにより求めた。厚みの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、まず、ミクロトームを用いスライスしたサンプルフィルムの厚さを測定した。透過型電子顕微鏡(TEM)の測定では、下塗り層の厚みが5mmから20mmになるように倍率を調整し観察した。上記手法で10等分したフィルムの中心部の厚みを求め、平均値を易接着層の厚みとし、最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で示したものを「変動」とした。
<延伸温度分布>
フィルムが実質的に延伸されるゾーンをMD、TD方向に各5等分し、これらの交点のフィルム表面の温度を測定した。測定には、非接触式温度計(例えばキ−エンス(株)製デジ
タル放射温度センサーFT−H30)を用いた。
全測定点の最高温度(℃)と最低温度の差を平均値で割り百分率で示したものを「温度変動」とした。
<乾燥風速変動>
フィルムが実質的に延伸されるゾーンをMD、TD方向に各5等分し、これらの交点において、ノズル出口の風速を測定した。測定には、風速計(例えばアネモマスター風速計)を用いた。
全測定点の最高風速と最低風速の差を、全測定点の平均風速で割り百分率で示したものを「風速変動」とした。
易接着層物性評価、乾燥工程条件および延伸工程条件を表2に示した。
Figure 2014108623
<5>太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールの作製
易接着層を設けた一方の易接着層のポリエステルフィルム上に下記方法によって白色層を塗設し、120℃で3分間乾燥した後、170℃で3分間乾燥した反対面に白色層を塗設した。その後、160℃で3分間1m幅あたりの張力を80Nで搬送しながら熱処理した。
−白色層−
まず初めに、下記組成の諸成分を混合し、ダイノミル型分散機により1時間分散処理して顔料分散物を調製した。
<顔料分散物の処方>
・二酸化チタン …39.9部
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100%)
・ポリビニルアルコール …8.0部
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分10%)
・界面活性剤 …0.5部
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25%)
・蒸留水 …51.6部
次いで、得られた顔料分散物を用い、下記組成の諸成分を混合することにより白色層形成用塗布液を調製した。
<白色層形成用塗布液の処方>
・上記の顔料分散物 …71.4部
・ポリアクリル樹脂水分散液 …17.1部
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬工業(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル …2.7部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) …1.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 …7.0部
上記より得られた白色層形成用塗布液をサンプルフィルムにバーコーターにより塗布し、180℃で1分間乾燥して、二酸化チタン塗布量が6.5g/m2の白色層を形成した。
上記白色層を塗布した反対面の易接着層に、EVAフィルムに包埋した太陽電池モジュールを貼り付けた。EVAフィルムには、三井化学ファブロ(株)製のEVAシート(SC50B)を用いた。貼り付け条件は、加熱温度が140℃で、加熱時間が20分とした。このようにして、太陽電池モジュールを得た。
(積層フィルム評価)
巻き取った積層フィルムまたはバックシートに対し、各評価項目における評価を実施し表3に記載した。
<密着性>
サンプルフィルム(MD20cm、TD3cm)を2枚用意し、両方の易接着層塗布側に厚み2mm、幅3cm、長さ10cmのEVAフィルムをサンドイッチした。この時ポリエステルフィルムを揃え、両フィルムの片端にEVAフィルムを置いた。すなわち、ポリエステルフィルムは同じ側に10cmずつEVAフィルムからはみ出している構成となる。
EVAフィルムは、両方のポリエステルフィルムの、1気圧の圧力をかけながら140℃で5分加熱処理した後、室温で一日放置した。その後、両端のポリエステルフィルムを引張り試験機に掛け、30mm/分で両端を180度方向に引張り、最大応力を測定し、単位幅あたりに直し(サンプルが3cmのため30で割り1mmあたりの力に変換)表1に示した。
<耐熱性>
サンプルフィルム(MD2.5cm、TD20cm)を60℃で24時間乾燥した後、直ちに空気恒温槽中で180℃500時間熱処理した。これを室温で1日放置した後、引っ張り試験機で30mm/分で引張り最大応力(Ft)を求めた。
上記と同一条件で未熱処理品を測定し、引張り最大応力(Ff)を求めた。
なお、最大応力の低下率(%)=100×Ft/Ffを、耐熱性の指標とした。最大応力の低下率(%)が大きなものは耐熱性が高いことを示す。
<リワーク性>
太陽電池モジュールから太陽電池からバックシートを剥がす操作(リワーク)を行った。太陽電池からバックシートを剥がす際には、バックシート側から、加熱温度が150℃とあるように熱をかけた。その後、剥離応力が4N/mm幅となるように、剥がす操作を行った。剥離応力は、バックシートを剥がす際に加える力を、剥がす方向の幅あたりで割った値である。剥離に伴い、モジュール上に粘着剤が剥げ残ったものを剥離不良品とし、その個数を百分率で示したものを「剥離不良率」とした。
Figure 2014108623
実施例1〜6は、末端封止剤であるケテンイミン化合物の添加量を0.1〜10質量%としている。実施例1〜6では、優れた耐熱性および密着性を示している。さらに、リワーク作業後の剥離不良率が低く、リワーク性にも優れていることがわかる。一方、比較例1および2では、ケテンイミン化合物の添加量が0.1〜10質量%の範囲内にない。このため、耐熱性および密着性が実施例と比較して劣る。また、リワーク作業後の剥離不良率が高く、リワーク性が悪いことがわかる。
実施例7〜11は、易接着層の厚みを10〜500nmとしている。実施例7〜11では、優れた耐熱性および密着性を示している。さらに、リワーク作業後の剥離不良率が低く、リワーク性にも優れていることがわかる。一方、比較例3および4では、易接着層の厚みが10〜500nmの範囲内にない。このため、密着性が実施例と比較して劣る。また、リワーク作業後の剥離不良率が高く、リワーク性が悪いことがわかる。
実施例12〜16は、乾燥風の変動に伴う易接着層の厚み変動の効果を検証したものである。実施例12〜16は、易接着層の厚みの変動を1〜30%としている。実施例12〜16では、優れた耐熱性および密着性を示している。さらに、リワーク作業後の剥離不良率が低く、リワーク性にも優れていることがわかる。一方、比較例5および6では、易接着層の厚みの変動が1〜30%の範囲内にない。このため、密着性が実施例と比較して劣る。また、リワーク作業後の剥離不良率が高く、リワーク性が悪いことがわかる。
実施例17〜23は、混合するポリエステルのIV差の効果を検証したものである。実施例24〜30は、低IVポリエステルの混合率の効果を検証したものである。実施例31〜37は、添加するケテンイミンの添加量の変動、これに伴うポリエステルフィルムのAV変動の効果を検証したものである。実施例38〜44は、横延伸温度分布の効果を検証したものである。これらの実施例では、優れた耐熱性および密着性を示しており、リワーク性にも優れていることがわかる。
実施例45〜48はケテンイミンの窒素原子および窒素原子に結合している置換基を除いた部分の分子量の効果を検証したものであり、実施例49〜52は、末端封止剤としてカルボジイミド化合物を用いたものである。一方、比較例7は、エポキシ系の末端封止剤を用いている。比較例7と比較し、実施例45〜52では、優れた耐熱性および密着性を示しており、リワーク性にも優れていることがわかる。中でも、実施例45〜48は特に優れた耐熱性とリワーク性を示しており、好ましい実施例であることがわかる。
実施例53〜55は、ポリエステルの種類(PEN、PET)、塗布後の延伸の有無の効果を検証したものである。ポリエステルの種類はPEN、PETのいずれでも良いことがわかる。また、塗布後に延伸工程を設けることにより、より高い密着性とリワーク性を得られている。
実施例56と比較例8は、先行技術(特開2011−258641)との対比を示す。比較例8は、特開2011−258641の実施例1に準じて実施。但し環状カルボジイミド化合物は[化37]のものを用いた。特開2011−258641の実施例1では優れた耐熱性が得られているが、これは「破断伸度保持率」で評価したものであり、本発明の「最大強度保持率」よりも緩い評価である。破断伸度はポリエステル分子が切断しないと低下しないが、破断強度は分子の高次構造(配向や結晶)が低下すると低下する。高次構造の変化は分子切断より早い時間で発生するため、特開2011−258641を本願の方法で評価すると耐熱性の評価は悪くなる。すなわち、実施例56では、比較例8と比較して、より高い密着性、耐熱性およびリワーク性が得られている。
実施例57と比較例9は、先行技術(特開2011−258641)との対比を示す。比較例9は、先行技術(US−3692745)のexample3 Experiment No.3を紡糸から製膜に置き換えて実施したものである。
また、実施例58、比較例10は、先行技術(US−3692745)のexample3 Experiment No.8を紡糸から製膜に置き換えて実施したものである。比較例9および10では固有粘度が異なる2種類のポリエステルを使用していないため、リワーク性が非常に悪い。
なお、本発明の実施例で得られた積層フィルムを有する太陽電池用バックシートを太陽電池モジュールに貼り付け使用した結果、良好な性能が得られた。
本発明によれば、密着性とリワーク性を両立することができる。このため、本発明の積層ポリエステルフィルムを用いれば、耐久性、取り扱い性に優れたバックシートを提供することができる。このため、本発明は太陽電池効果的に利用することができ、産業上の利用可能性が高い。
2 ポリエステルフィルム
3 易接着層
4 EVAフィルム
10 積層フィルム

Claims (17)

  1. ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物とを含むポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に積層される易接着層とを有する積層フィルムであって、
    前記ポリエステルに対する前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%であり、
    前記易接着層の厚さは10〜500nmであり、前記易接着層の厚みの変動は1〜30%であることを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記ケテンイミン化合物は下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
    Figure 2014108623
    (一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表し、R3はアルキル基またはアリール基を表す。)
  3. 前記ケテンイミン化合物は下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
    Figure 2014108623
    (一般式(2)中、R1はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2は置換基としてL1を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3はアルキル基またはアリール基を表す。nは1から4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
  4. 前記一般式(2)における、nが3または4であることを特徴とする請求項3に記載の積層フィルム。
  5. 前記ケテンイミン化合物は下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
    Figure 2014108623
    (一般式(3)中、R1およびR5はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R2およびR4は置換基としてL2を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アリールオキシ基、アシル基またはアリールオキシカルボニル基を表す。R3およびR6はアルキル基またはアリール基を表す。L2は単結合または二価の連結基を表す。)
  6. 前記ケテンイミン化合物のケテンイミンを構成する窒素原子と該窒素原子に結合している置換基を除く部分の分子量が320以上であることを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  7. 前記カルボジイミド化合物は、環骨格にカルボジイミド基を1つ含み、その第一窒素と第二窒素が結合基により結合されている環状構造を分子内に少なくとも1つ有する環状カルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  8. 前記ポリエステルフィルムの酸価(AV)の平均が1〜20eq/tonであり、酸価(AV)の変動は5〜30%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  9. 前記ポリエステルフィルムは、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを含み、
    前記2種類のポリエステルのうち、固有粘度(IV)が高い第1のポリエステルと、固有粘度(IV)が低い第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであり、
    前記ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの総量に対する前記第2のポリエステルの含有率は、5〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  10. ポリエステルと、カルボジイミド化合物またはケテンイミン化合物とを含むポリエステルフィルムを製膜する工程と、
    前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を設ける工程と、
    前記易接着層を設けた前記ポリエステルフィルムを延伸する工程とを含み、
    前記ポリエステルに対する前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物含有率は、0.1〜10質量%であり、
    前記易接着層の厚さは10〜500nmであり、前記易接着層の厚みの変動は1〜30%であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  11. 前記易接着層を設ける工程と前記延伸する工程の間に、乾燥工程をさらに含み、
    前記乾燥工程は、前記易接着層に乾燥風を供給する工程であり、前記乾燥風の風速には1〜20%の風速変動が付与されることを特徴とする請求項10に記載の積層フィルムの製造方法。
  12. 前記延伸する工程では、10〜100℃の温度変動を付与しながら延伸を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の積層フィルムの製造方法。
  13. 前記ポリエステルフィルムを製膜する工程は、前記ポリエステルと前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物とを混合する工程を含み、
    前記混合する工程では、前記カルボジイミド化合物または前記ケテンイミン化合物を供給する際に1〜20%の供給量変動を付与することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
  14. 前記ポリエステルフィルムを製膜する工程は、異なる固有粘度(IV)を有する少なくとも2種類のポリエステルを混合する工程を含み、
    前記2種類のポリエステルのうち、固有粘度(IV)が高い第1のポリエステルと、固有粘度(IV)が低い第2のポリエステルの固有粘度(IV)の差は、0.01〜0.1g/dlであり、
    前記ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの総量に対する前記第2のポリエステルの添加率は、5〜50質量%であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
  15. 請求項10〜14のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層フィルム。
  16. 請求項1〜9および請求項15のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いた太陽電池モジュール用バックシート。
  17. 請求項16に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いた太陽電池モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104311496A (zh) * 2014-09-15 2015-01-28 天津师范大学 季戊四醇四三氮唑化合物及其制备方法与应用
WO2015115395A1 (ja) * 2014-01-28 2015-08-06 富士フイルム株式会社 樹脂組成物及びポリエステルフィルム
JPWO2016013656A1 (ja) * 2014-07-24 2017-06-15 凸版印刷株式会社 積層フィルム及び積層体、並びに、波長変換シート、バックライトユニット及びエレクトロルミネッセンス発光ユニット

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