(A)第1の実施形態
以下では、本発明の定着制御装置、定着制御方法及び画像形成装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)画像形成装置の内部構成
図2は、第1の実施形態に係る画像形成装置の概略的な内部構成を示す構成図である。図2において、第1の実施形態の画像形成装置1Aは、用紙カセット2、用紙搬送路4、給紙ローラ70、搬送ローラ41a及び41b、書き出しセンサ8、搬送ローラ42a及び42b、露光部としてのLEDヘッド3、画像形成手段としてのトナー像形成部5、定着器6、排出ローラ43a及び43b、排出ローラ44a及び44bを有する。
画像形成装置1Aにおいて、用紙搬送路4は、媒体としての用紙を搬送する搬送経路であり、概ねS字状のものである。用紙カセット2には用紙が収容されており、給紙ローラ70が用紙カセット2から用紙を取り出す。給紙ローラ70により取り出された用紙は、搬送ローラ41a及び41b、搬送ローラ42a及び42bにより用紙搬送路4に送り出される。
書き出しセンサ8は、搬送ローラ41a及び41bと搬送ローラ42a及び42bとの間に配置されており、用紙搬送路4に送り出された用紙の搬送位置を検知する媒体位置検知手段である。書き出しセンサ8は、用紙の搬送位置を検知すると、その検知信号を後述する印刷制御部100に与える。
LEDヘッド3は、トナー像形成部5に隣接して配置されており、取得した画像データに基づく記録光を感光体ドラム51の表面を露光するものである。なお、第1の実施形態では、露光部として複数のLED素子から構成されるLEDヘッドを適用する場合を例示するが、既存の露光装置を適用することができる。
トナー像形成部5は、感光体ドラム51の表面に形成されたトナー像を、搬送される用紙に転写するものである。トナー像形成部5は、既存の画像形成手段を広く適用することができる。
トナー像形成部5は、感光体ドラム51を有して構成される。感光体ドラム51はLEDヘッド3により露光され、感光体ドラム51の表面に静電潜像が形成される。また、トナー像形成部5は、感光体ドラム51表面の静電潜像に、トナーカートリッジに収容されるトナーを吸着させ、感光体ドラム51表面にトナー像を形成する。そして、トナー像形成部5は、感光体ドラム51と感光体ドラム51と対向する転写ローラ52との間を通過するように、感光体ドラム51の表面上のトナー像を転写する。これにより、用紙上にトナー像が移され、その用紙は定着器6に搬送される。
定着器6は、対向する2個の回転体を有し、対向する2個の回転体間を通過する媒体を挟持しながら熱と圧力をかけて現像剤像を定着するものである。
ここで、定着器6による定着方式としては、対向する2個の回転体として2個のローラを配置し、少なくとも1個のローラをヒータで加熱し圧力を加えながら回転させるローラ方式や、ローラ方式の2個の回転体のうち少なくとも1個の回転体としてフィルムを配置し、該フィルムをヒータで加熱し、加熱した該フィルムと接触する媒体に圧力を加えながら回転させる定着フィルム方式等がある。この実施形態では、定着器6が定着フィルム方式を採用する場合を例示する。
(A−1−2)画像形成装置の制御系の内部構成
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置1Aの制御系の内部構成を示す構成図である。
図1において、第1の実施形態に係る画像形成装置1Aは、制御手段として、ビデオコントローラ1001、印刷制御部100、LEDヘッド3、トナー像形成部用電源部7、モータ電源部20、モータ電源部17、書き出しセンサ8、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69、ヒータ電源部16、トナー像形成部5、定着器モータ21、用紙搬送モータ18、定着器6、定着ヒータ61を有する。
なお、図1において、画像形成装置1Aは、外部装置1002と接続しており、外部装置102から取得した画像データに基づいて印刷動作を行う場合を例示している。
外部装置1002は、例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ等が該当し、画像データを画像形成装置1Aに与えるものである。
ビデオコントローラ1001は、画像処理手段の一例である。ビデオコントローラ1001は、外部装置1002から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて画像展開をして、例えばドットマップデータであるビデオ信号を印刷制御部100に与えるものである。ビデオコントローラ1001は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース部等を有して構成される装置であり、CPUがROMに格納される処理プログラムを実行することによりビデオコントローラ1001の処理を実現する。
図3は、ビデオコントローラ1001の内部構成を示す内部構成図である。図3に示すように、ビデオコントローラ1001は、制御信号出力部1010と、画像処理部1020とを有する。
制御信号出力部1010は、印刷制御部100に対して印刷動作に係る制御信号SG1を出力するものである。制御出力部1010は、プレヒートコマンド指示部1011と、印刷開始コマンド指示部1011とを有する。
プレヒートコマンド指示部1011は、外部装置1002から取得した画像データに基づき画像展開を開始すると同時に、印刷制御部100に対してプレヒートコマンドを出力するものである。
ここで、プレヒートコマンドは、後述する定着器6の定着ヒータ61を立ち上げると共に、定着器6の上加圧ローラ63と下加圧ローラ65との間にある定着接触部(定着ニップ部)が過剰に高い温度とならないように定着器モータ21の回転駆動を指示するコマンドである。
また、プレヒートコマンドは、後述する印刷開始コマンドよりも前に印刷制御部100に出力されるものであり、プレヒートコマンド指示部1011は、画像展開の開始前にプレヒートコマンドを出力するようにしてもよい。
印刷開始コマンド指示部1012は、外部装置1002からの画像データに基づく画像展開が終了すると、印刷制御部100に対して印刷動作を開始させる印刷開始コマンドを出力するものである。
画像処理部1020は、外部装置1002から取得した画像データに基づいて、画像処理を行うものである。画像処理部1020は、取得した画像データを画像展開する画像展開部1021と、画像展開部1021による画像展開終了後に、画像展開した、一次元的に配列させたドットマップデータをビデオ信号SG2として印刷制御部100に出力するビデオ信号出力部1022とを有する。
印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001からの制御信号SG1に基づいて印刷動作を制御するものである。なお、印刷制御部100は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力インタフェース部、タイマ等を有して構成される装置である。マイクロプロセッサがROMに格納される処理プログラムを実行することにより、印刷制御部100の各機能が実現される。
印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001、LEDヘッド3、トナー像形成部用電源部7、モータ電源部20、モータ電源部17、書き出しセンサ8、定着フィルム温度検知部としての定着サーミスタ62、加圧ローラ温度検知部としての加圧サーミスタ69、ヒータ電源部16に接続しており、これら各構成要素の動作を制御する。
また、印刷制御部100により実現される機能として、図2に示すように、モータ制御部101、加熱制御部102を有する。
モータ制御部101は、ビデオコントローラ1001からの制御信号SG1に基づいて、トナー像形成部電源部7、モータ電源部20、モータ電源部17の動作を制御する回転制御手段である。
図4は、第1の実施形態に係るモータ制御部101の機能構成を示すブロック図である。図4において、モータ制御部101は、トナー像形成部制御部111、用紙搬送モータ制御部112、定着器モータ制御部113を有する。
トナー像形成部制御部111は、ビデオコントローラ1001から印刷開始コマンドを取得すると、トナー像形成部電源部7を起動させ、トナー像形成部5への電力供給を開始させる。
用紙搬送モータ制御部112は、印刷準備完了後に、給紙ローラ70により用紙カセット2から用紙を取り出させ、書き出しセンサ8からの用紙搬送位置の検知信号を取得すると、モータ電源部17を制御して用紙搬送モータ18を駆動させるものである。
定着器モータ制御部113は、ビデオコントローラ1001からの制御信号SG1に基づいて、モータ電源部20を起動させ、定着器モータ21への電力供給を制御するものである。つまり、定着器モータ制御部113は、定着モータ21を駆動制御して、後述する定着器6の下加圧ローラ65(2個のローラのうちの駆動側のローラ、図5参照)の回転速度を調整する。
ここで、定着器モータ制御部113は、プレ加熱制御部1131と、印刷加熱制御部1132とを有する。
プレ加熱制御部1131は、ビデオコントローラ1001からプレヒートコマンドを取得すると、予め設定された低速の回転速度で、定着器6の下加圧ローラ65を回転駆動させるようにするものである。
印刷加熱制御部1132は、ビデオコントローラ1001から印刷開始コマンドを取得し、印刷準備完了後、予め設定された高速の回転速度で定着器6の下加圧ローラ65を回転させるものである。
このように、印刷開始前に、プレ加熱制御部1131が低速の回転速度で定着器6のローラを回転させ、印刷実行時に、印刷加熱制御部1132が高速の回転速度で定着器6のローラを回転させることで、定着器6のローラの定着ニップ部の温度が過剰に高くなることを防止することができる。
なお、第1の実施形態では、プレ加熱制御部1131、印刷加熱制御部1132が、予め設定された低速、高速の回転速度で制御する場合を例示する。つまり、プレ加熱制御部1131が、予め設定された低速の回転速度で下加圧ローラ65を回転させる場合を例示する。
しかし、プレ加熱制御部1131が、印刷実行時の回転速度よりも低い、2種類以上の回転速度で下加圧ローラ65を回転させるようにしても良い。この場合、例えば、プレ加熱制御部1131が、それぞれ異なる2種類以上の回転速度で段階的に回転制御するようにしても良いし、又時間に応じて回転加速度を徐々に上げるように制御しても良い。
加熱制御部102は、ビデオコントローラ1001からプレヒートコマンドを取得すると、ヒータ電源部16を起動させ、定着器6の定着ヒータ61への電力供給させるものである。
また、加熱制御部102は、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69により検知された検知温度情報を受け取り、これら定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69からの検知温度情報を用いて、ヒータ電源部16に対する温度制御を行うものである。
トナー像形成部用電源部7は、印刷制御部100の制御の下、トナー像形成部5に対して電源電力を供給するものである。
モータ電源部20は、印刷制御部100の制御の下、定着器6を駆動する定着器モータ21に対して電源電力を供給するものである。
モータ電源部17は、印刷制御部100の制御の下、用紙搬送路4上の各種搬送ローラや搬送ベルト等を駆動する用紙搬送モータ18に対して電源電力を供給するものである。
定着サーミスタ62は、後述する定着器6の定着フィルム64(図5参照)の表面温度を検知する温度検知部材である。定着サーミスタ62は、検知した定着フィルム64の検知温度情報を印刷制御部100に与える。
加圧サーミスタ69は、後述する定着器6の下加圧ローラ65(図5参照)の表面温度を検知する温度検知部材である。加圧サーミスタ69は、検知した下加圧ローラ65の検知温度情報を印刷制御部100に与える。
(A−1−3)定着制御装置の構成
図5は、第1の実施形態に係る定着制御装置の構成を示す構成図である。図5の定着器6は、定着フィルム方式の定着器を例示する。
図5において、第1の実施形態の定着制御装置10は、印刷制御部100、ヒータ電源部16、定着器6、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69を有するものである。
図5において、印刷制御部100、ヒータ電源部16、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69は、図1、図4を用いて説明した構成要素である。
定着器6は、下加圧ローラ65、上加圧ローラ63、定着フィルム64、定着ヒータ61、ヒータ指示部材70を有する。
上加圧ローラ63及び下加圧ローラ65は、圧力により、搬送される用紙上に画像を定着させる加圧部材の一例である。上加圧ローラ63及び下加圧ローラ65は、それぞれ対向して配置されており、上加圧ローラ63及び下加圧ローラ65の間を通過する用紙に対して圧力を加えることで、画像を用紙上に定着させる。
下加圧ローラ65は、定着器モータ21(図1参照)から回転力を受けるギアと接続されており、定着器モータ21からの回転力により回転駆動する駆動側のローラである。駆動側のローラを第1の回転部材ともいう。
下加圧ローラ65は、定着フィルム64を介して上加圧ローラ63と当接しており、上加圧ローラ65との間に定着接触部(定着ニップ部)を形成している。
例えば、下加圧ローラ65は、外形が40mmのローラである。例えば、下加圧ローラ65は、金属製(例えば鉄製)の金属中実シャフト等でなる基体としての芯金651と、この芯金651を被覆する耐熱多孔質スポンジ製の厚さ4mmの弾性層652とを有して構成される。
上加圧ローラ63は、当接する駆動側の下加圧ローラ65の回転駆動により、回転駆動するものである。例えば、上加圧ローラ65は、ばね等の弾性体により下加圧ローラ65に圧接する向きに押し付けられている。駆動側のローラの回転を受けて回転するローラを第2の回転部材ともいう。
なお、第1の実施形態では、下加圧ローラ65が駆動側であり、上加圧ローラ63が、圧接する下加圧ローラ65に連動して回転駆動する被駆動側とする場合を例示する。しかし、上加圧ローラ63が駆動側であり、下加圧ローラ65が被駆動側としても良い。
定着フィルム64は、搬送される用紙に熱を供給すると共に、用紙を搬送するための無端部材である。定着フィルム64は、加熱部材の一例である。
定着フィルム64は、定着ヒータ61、上加圧ローラ63、ヒータ指示部材70に張架されており、定着ヒータ61から熱が加えられ、上加圧ローラ63及び下加圧ローラ65の回転に連動して回転する。上加圧ローラ63及び下加圧ローラ65は定着フィルム64を介して接触しているため、用紙が通過する定着ニップ部において、トナー像が担持されている用紙に対して熱を加えることができる。
例えば、定着フィルム64は、耐熱性の高いポリイミド樹脂でなる厚さ100/μmの基体の表層上に、200μmのシリコンゴム製の離型層が形成されたものを用いることができ、熱容量が小さく、熱応答性を良好のものを用いることができる。なお、定着フィルム64の基体は、ステンレス製、ニッケル製の金属製のものを用いるようにしても良いし、又はゴム製のものを用いるようにしても良い。
なお、第1の実施形態では、上加圧ローラ63の外周に沿って定着フィルム64が張架される場合を例示するが、定着フィルム64は、下加圧ローラ65の外周に沿って張架される構成であってもよい。この場合、定着ヒータ61及びヒータ支持部材70は、下加圧ローラ65付近に配置され、定着フィルム64を張架する位置に配置される。
定着サーミスタ62は、上述したように、定着フィルム64の表面温度を検知する温度検知部材である。
また、加圧サーミスタ69も、上述したように、下加圧ローラ65の表面温度を検知する加圧部材温度検知部材である。
例えば、定着サーミスタ62及び加圧サーミスタ69は、温度に応じて自身の抵抗値が変化する素子を用いることができる。これにより、印刷制御部100は、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69からの抵抗値を検知して、それぞれ定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69の検知温度を認識する。第1の実施形態では、定着サーミスタ62及び加圧サーミスタ69として、温度の増加に従って抵抗値が減少する特性の素子を用いている。
また例えば、定着サーミスタ62は、定着フィルム64の長手方向中央部表面に接触している場合を例示する。しかし、定着サーミスタ62が配置される位置はこれに限定されるものではない。また、定着サーミスタ62は、定着フィルム64の内面に接触するものであっても良いし、又定着フィルム64の表面に接触しない非接触であっても良い。
同様に、加圧サーミスタ69は、下加圧ローラ65の長手方向中央部表面に接触している場合を例示するが、配置される位置は限定されるものでなく、又下加圧ローラ65の表面に非接触であっても良い。
定着ヒータ61は、ヒータ電源部16からの電力供給に応じて発熱して、定着フィルム64を加熱する加熱部材である。なお、定着ヒータ61は、張架する定着フィルム64と接触して加熱するものであっても良いし、又は非接触で定着フィルム64を加熱するものであっても良い。
図6は、第1の実施形態の定着ヒータ61の構成を示す構成図である。図6において、定着ヒータ61は、基板611、電気絶縁層612、抵抗発熱体613、電極614、保護層615を有する。
例えば、定着ヒータ61は、ステンレス鋼材(例えばフェライト系ステンレス鋼材SUS430等)の基板611上に、電気絶縁層612として薄くガラス膜を形成し、そのガラス膜上に、ニッケル−クロム合金あるいは銀パラジウム合金等の金属粉末をスクリーン印刷によってペースト状に抵抗発熱体613を塗布する。また、定着ヒータ61の端部に銀などの化学的に安定で電気抵抗の小さい金属やタングステンなどの高融点金属によって電極614を形成する。さらに、抵抗発熱体613及び電極614の上に、例えば、ガラス、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)などの代表的なフッ素系樹脂による保護層615で保護する。
定着ヒータ61の電極は、ヒータ電源部16に接続され、ヒータ電源部16から電圧が印加されることで発熱する。例えば、電圧は100Vであり、定着ヒータ61の出力は1200Wとする。
ヒータ支持部材70は、定着ヒータ61を指示する部材である。また、ヒータ支持部材70は、その表面で、定着フィルム64を張架する機能も有する。
例えば、ヒータ支持部材70は、アルミニウム製の熱伝導率の高い金属が用いられる。また、ヒータ支持部材70は、定着ヒータ61の反り等による定着フィルム64との接触状態を良好に保ち、かつ高熱伝導率によりヒータ裏面からの熱を定着フィルム64へ伝達する伝熱部材としての機能も持つ。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る画像形成装置1Aにおける処理動作を、図面を参照しながら説明する。
(A−2−1)画像形成処理の全体的な流れ
図7は、画像形成装置1Aにおける外部装置1002の画像形成指示から画像形成終了までの流れを示すフローチャートである。図7に示す処理は、ビデオコントローラ1001及び印刷制御部100が、ROMに格納される制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。
まず、外部装置1002は、プリント出力指示と共に、例えば文章や図等を含む画像データを画像形成装置1Aに向けて出力する。画像形成装置1Aでは、ビデオコントローラ1001が、外部装置1002からのプリント出力指示と、画像データとを受信する(S11)。
ビデオコントローラ1001は、外部装置1002から取得した画像データに基づいて画像処理(画像展開)を開始する(S12)。このとき、ビデオコントローラ1001は、画像展開の開始と同時に、定着器6を予め温めるために、プレヒートコマンドを印刷制御部100に出力する(S13)。これにより、印刷制御部100は、モータ電源部20に対して定着器6の立ち上げ制御を行う(S14)。つまり、印刷制御部100は、定着ヒータ61の立ち上げ制御及び定着器モータ21のプレ加熱制御を行う。
ビデオコントローラ1001において、画像データに基づく画像展開が終了すると、ビデオコントローラ1001は、印刷動作を開始させる印刷開始コマンドとビデオ信号SG2とを印刷制御部100に出力する(S15)。
印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001から印刷開始コマンドを取得すると、トナー像形成部5及びLEDヘッド3の立ち上げ制御を行う(S16)。特に、印刷制御部100は、定着器6については、定着サーミスタ62及び加圧サーミスタ69からの検知温度情報に基づいて、目標温度に達しているか否かを確認し、定着ヒータ61の温度制御を行う。
そして、画像形成動作の準備が整うと(S17)、印刷制御部100は、取得したビデオ信号SG1を用いて画像形成処理の動作を実行し(S18)、印字された用紙を出力する(S19)。
すなわち、上記画像形成処理の動作を開始するには、定着器6が定着可能な温度まで温まっていること、高圧準備が完了していることなどの条件を満たした時点で可能となる。
また、印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001からの印刷開始コマンド、ビデオ信号SG2等に基づいて、画像形成装置1A全体の印刷シーケンスを制御し、印刷動作を行う。
つまり、印刷制御部100がプリントコマンドを受信すると、印刷制御部100は、モータ電源部20を制御し、定着器モータ21の駆動力をギアを介して下加圧ローラ65に伝達し、下加圧ローラ65、上加圧ローラ63、定着フィルム64を回転させる。
また、印刷制御部100は、定着サーミスタ62によって定着ヒータ61を内蔵した定着器6が使用可能な温度範囲にあるか否かを検出する。そして、定着器6の温度が所定の温度範囲になければ、印刷制御部100は、定着ヒータ61に通電し、使用可能な温度まで定着器6を加熱する。
定着器6の温度が使用可能な温度範囲にまで加熱されると、印刷制御部100は、用紙搬送部4によって用紙搬送を開始する。
印刷制御部100は、書き出しセンサ8の検出結果に基づいて、用紙の搬送位置が印刷可能位置まで到達したと判断すると、ビデオコントローラ1001に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む信号)を出力する。
ビデオコントローラ1001は、ビデオ信号SG2をページ毎に編集しており、各ページのビデオ信号SG2を印刷制御部100に出力する。
印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001からのビデオ信号SG2を印字データ信号として、LEDヘッド3に転送する。
ここで、LEDヘッド3は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印字のために設けられたLEDを複数個線状に配列したものである。従って、LEDヘッド3が感光体ドラム51に対して露光すると、LEDヘッド3が発光した情報は、マイナス電位に帯電させられた感光体ドラム51の表面電位が上昇したドットとして潜像化される。
そして、現像部において、マイナス電位に帯電させられたトナーが、電気的に吸引力によって各ドットに吸引され、感光体ドラム51の表面上にトナー像が形成される。
その後、用紙搬送部4によって定着器6へ用紙が搬送されると、定着器6の熱と圧力によって用紙上の画像が定着された後、用紙は排出される。
(A−2−2)定着制御処理
次に、第1の実施形態の定着制御装置10の定着制御処理を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図7のS12では、ビデオコントローラ1001が、画像展開等の画像処理を行うことを説明した。
ここで、ビデオコントローラ1001での画像展開等の画像処理時間が長い場合でも、画像展開終了時点で、すぐに印刷動作に入れるようにするため、事前に印刷準備をしておくことが望まれる。印刷準備が整った後で、すぐに印刷を開始でき、生産性を向上させることができるからである。
しかし、画像展開中等の早い段階で、印刷制御部が、従来のように定着ヒータ61への通電や定着ローラの回転駆動を行ってしまうと、ビデオコントローラ1001による画像展開時間よりも短時間で定着可能な温度に達してしまい、定着器6は、その後のビデオコントローラ1001の画像展開終了を待つことになる。
よって、画像展開終了までに、印刷制御部100が高温で温調し続けることになり、下加圧ローラ65の表面温度が通常よりも高くなる。その結果、定着ニップ部の温度が必要以上に高くなる。
この場合の不具合として、下加圧ローラ65と定着フィルム64とが接している定着ニップ部を用紙が通過するとき、用紙に含まれている水分が蒸発し、水蒸気となって外部に放出される。この水蒸気によって、下加圧ローラ65と用紙との間に層ができ、用紙と下加圧ローラ65との間の摩擦力が小さくなる。用紙は前記摩擦力によって従動搬送されるため、摩擦力が小さくなれば滑ってしまい用紙を搬送できなくなり、スリップ現象が発生する。これは用紙のジャム発生の原因となる。
しかしながら、スリップ防止のために、画像展開終了後、画像形成部の準備を開始するのでは印刷完了までの時間が長くなってしまい迅速な印刷動作を実施できない。
そこで、第1の実施形態では、定着制御装置10が図8のような定着制御処理を行う。
図8は、第1の実施形態に係る定着制御装置10による定着制御処理の詳細な動作を説明する説明図である。
まず、上述したように、外部装置1002から印刷出力指示と、文章や図等を含む画像データとが、ビデオコントローラ1001に与えられると、ビデオコントローラ1001は、プレヒートコマンドを印刷制御部100に出力する。
ここで、従来の画像形成装置の場合、ビデオコントローラが、印刷開始コマンドの出力前に、プレコマンドを出力していない。そのため、画像展開終了後、印刷開始コマンドが発生された後でも、従来の画像形成装置は、印刷準備を完了させることが必要であり、印刷準備完了後でなければ、印字動作を開始することはできない。これに対して、第1の実施形態によれば、ビデオコントローラ1001が、印刷開始コマンドの出力前にプレヒートコマンドを出力することで、印刷制御部100が、印刷準備完了前に、定着器6の温度制御を行うことができる。
印刷制御部100は、ビデオコントローラ1001からのプレヒートコマンドの受信の有無を検知する(S101)。
印刷制御部100がプレヒートコマンドを受信すると、印刷制御部100は、ヒータ電源部16及びモータ電源部20を立ち上げ、定着ヒータ61及び定着器モータ21の制御を開始して、定着器6の温度制御を開始する(S102)。
このとき、印刷制御部100において、加熱制御部102は、定着器6の温度制御、すなわち定着フィルム64の表面温度の制御を行う。また、モータ制御部101は、定着器モータ21を駆動制御するプレ加熱制御を行う。つまりモータ制御部101は、予め設定された低速の回転速度で、定着器モータ21の回転駆動を開始する(S103、S104)。
ここでは、モータ制御部101のプレ加熱制御による回転駆動制御と、加熱制御部102による定着器6の温度制御とを説明する。
例えば、A4横(297mm)サイズの用紙を搬送する場合、プレ加熱制御を行うモータ制御部101は、下加圧ローラ65が10ppm(Page Per Minute)相当の低速回転で駆動するように、定着器モータ21を制御する。つまり、定着ニップ部における用紙搬送速度が45mm/sとなるように、モータ制御部101は、定着器モータ21を制御する。
また、加熱制御部102は、定着サーミスタ62からの検知温度が、予め定めた印刷可能温度範囲内であるかを判断する。検知温度が印刷可能温度範囲内であれば、加熱制御部102は用紙搬送を開始する。
ここで、印刷可能温度範囲とは、トナーを用紙に定着させることができる温度範囲であり、下限温度としてのT1と上限温度としてのT2とを持つ。例えば、第1の実施形態では、T1が175℃であり、T2が205℃である場合を例示するが、印刷可能温度範囲の設定は、これに限定されるものではない。
定着サーミスタ62の検知温度が上限温度T2よりも高い温度である場合、加熱制御部102は、ヒータ電源部16から定着ヒータ61への電力供給を停止して、定着フィルム64の表面温度を低下させる(以下、これをクールダウンともいう)。
定着サーミスタ62の検知温度が下限温度T1よりも低い温度である場合、加熱制御部102は、ヒータ電源部16から定着ヒータ61への電力供給を行うことで(供給電力値を上昇させることで)、定着フィルム64の表面温度を上昇させる(以下、これをウォームアップともいう)。
以上のようにして、加熱制御部102が、定着フィルム64の表面温度を印刷可能温度範囲内に制御することができる。なお、必要に応じて、加熱制御部102は、クールダウンとウォームアップとを繰り返し制御するようにしても良い。
次に、ビデオコントローラ1001における画像展開が終了するまで、印刷制御部100はプレ加熱制御を行う(S105)。このとき、定着器6は低速のまま回転駆動し、加熱制御部102による定着ヒータ61の制御も継続したままで印刷準備完了を待つ。
画像展開が終了し(S105)、印刷制御部100が、ビデオコントローラ1001から印刷開始コマンドを受信すると印刷準備を開始する(S106)。
そして、印刷準備が完了すると(S107)、印刷制御部100は、印刷加熱制御により、定着器モータ21を駆動制御する(S108)。すなわち、印刷制御部100において、モータ制御部101は、印刷速度に応じた、プレ加熱制御時よりも高速の回転速度で、定着器モータ21の回転駆動を開始する(S109)。
例えば、A4横(297mm)サイズの用紙を搬送する場合、印刷加熱制御を行うモータ制御部101は、印刷速度に応じた速度、すなわち下加圧ローラ65が50ppm相当の高速回転で駆動するように、定着器モータ21を制御する。この場合、定着ニップ部における用紙搬送速度が225mm/sとなるように、モータ制御部101は、定着器モータ21を制御する。
その後、印刷準備が完了すると、印刷制御部100は印刷を開始する。また、加熱制御部102による定着ヒータ21の制御は継続したままとする。
以上の一連の処理を行うことで、ビデオコントローラ1001での画像展開に長い時間がかかっても、下加圧ローラの過度の温度上昇を抑えることができるため、スリップの発生を防止することができる。
次に、第1の実施形態の画像形成装置1Aの動作例を、従来の画像形成装置の動作例と比較して説明する。
図9は、従来の画像形成装置の動作例を説明する説明図である。図9では、従来の印刷制御部が、印刷開始コマンドを受信後、定着ヒータ61及び定着器モータ21を立ち上げ制御する場合を例示している。
図10及び図11は、第1の実施形態の画像形成装置1Aの動作例を説明する説明図である。図10は、プレヒートコマンド受信時の定着フィルム64、下加圧ローラ65の温度が比較的低い場合の動作結果であり、図11は、プレヒートコマンド受信時の定着フィルム64、下加圧ローラ65の温度が比較的高温の場合の動作結果である。
図9、図10、図11において、(A)は、定着器6の定着フィルム温度と加圧ローラ温度を示す。2点差線は、これ以上下加圧ローラ温度が上昇するとスリップが発生する温度を示している。
図9、図10、図11において、(B)はモータ制御部101による定着器モータの回転速度を示し、(C)は、書き出しセンサ8の検知結果を元に求めた、定着器での通紙状態(定着器通紙状態)を示す。
図9において、「期間1」は、ビデオコントローラが画像展開と同時に印刷開始コマンドを出力し、印刷制御部が、印刷開始コマンド受信後に、定着器の印刷準備としての加熱を行っている期間である。
このとき、定着器モータは印刷要求のある速度(例えば50ppm相当)に応じた回転速度で回転を行っている。そのため、下加圧ローラの温度は非常に早い速度で上昇していくことがわかる。
次に、「期間2」は、画像展開完了から印刷準備完了までの期間である。印刷制御部が画像展開完了信号を受信すると、印刷制御部は印刷準備を開始するが、印刷制御部は、定着器の制御を変えず、印刷準備完了を待機する。
そのため、図9(A)の「期間2」で、下加圧ローラ温度がスリップ発生温度を超えてしまうことがわかる。図9において、「期間1」の画像展開時間が長くなればなるほど、下加圧ローラ温度が更に上昇する。
従って、「期間3」において、印刷開始時には、下加圧ローラ温度が高い状態で印刷がなされるため、スリップが発生し得る。
次に、図10の「期間1」では、定着器モータ21は、低速(例えば10ppm相当)で回転する。つまり、定着器モータ21は、印刷要求のある速度(例えば50ppm相当)ではなく、これよりも低速で回転する。そのため、下加圧ローラ65の温度は、図9の場合よりも緩やかに上昇する。
次に、「期間2」において、画像展開後、印刷制御部100が印刷開始コマンドを受信すると、印刷制御部100は印刷準備を開始する。このとき、印刷制御部100は、定着器6の制御を変えず、印刷準備完了を待機する。
また、画像展開時間が長い場合でも、下加圧ローラ65の回転速度が低速であるため、下加圧ローラ温度はスリップ発生温度を超えることはない。
ここで、定着器6の回転速度と下加圧ローラ65の温度との関係について、図12を参照して説明する。
図12は、定着器6の回転速度と下加圧ローラ65の表面温度との関係を説明する説明図である。図12において、横軸は駆動時間、縦軸は下加圧ローラ65の表面温度である。また、図12において、実線は高速で回転駆動させた場合を示し、点線は低速で回転駆動させた場合を示す。
図12において、同一駆動時間で、高速回転の場合と低速回転の場合とを比較すると、高速回転の場合の方が、より下加圧ローラ65の温度が高いことが分かる。
これは、回転速度が速くなることで、温度の高い定着フィルム64と温度の低い下加圧ローラ65とが接触する頻度が高まり(接触時間が長くなり)、その結果、定着フィルム64の熱がより頻繁に下加圧ローラ65へと移動するためである。
つまり、図10のように、回転速度を低速(例えば10ppm相当)に設定することで、下加圧ローラ65の温度上昇を抑えることができる。
その後、図10の「期間3」において、印刷準備が完了し、印刷開始時点で、印刷制御部100が、印刷速度に対応した高速(例えば50ppm相当)の回転駆動に切り替えると、下加圧ローラ65は急激に上昇する。しかし、定着器6に用紙が到達する時点でもスリップ発生温度を超えることはないため、その後通紙してもスリップの発生を防止できる。
さらに、図11は、印刷制御部100がプレヒートコマンド受信時の定着器6の各構成要素の温度が、図10の場合よりも高温である場合である。
この場合でも、図10の場合と同様に、「期間1」、「期間2」において、定着器モータ21の回転速度を低速(例えば10ppm相当)に設定することで、下加圧ローラ65の温度の上昇速度を低くおさえることができる。そのため、図10の場合と同様に、「期間3」における定着器6に用紙が到達する時点でも、スリップ発生温度を超えることはないため、その後通紙してもスリップの発生を防止できる。
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、印刷準備完了前に、ビデオコントローラからのプレヒートコマンドに基づいて、印刷制御部が、印刷開始時の下加圧ローラ温度をスリップ発生温度よりも低く制御することができるため、スリップの発生を防止することができる。例えば、ビデオコントローラでの画像展開に長い時間がかかる場合でも、第1の実施形態によればスリップ発生を防止できる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明の定着制御装置、定着制御方法及び画像形成装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の画像形成装置及び定着制御装置は、印刷制御部の機能が第1の実施形態と異なる。そのため、第2の実施形態では、第1の実施形態の図2、図3、図5及び図6を用いて説明するものとし、第2の実施形態の印刷制御部の構成及び動作を詳細に説明する。
図13は、第2の実施形態に係る画像形成装置1Bの制御系の内部構成を示す構成図である。
図13において、第2の実施形態に係る画像形成装置1Bは、制御手段として、第2の実施形態の印刷制御部200と、ビデオコントローラ1001、LEDヘッド3、トナー像形成部用電源部7、モータ電源部20、モータ電源部17、書き出しセンサ8、定着サーミスタ62、加圧サーミスタ69、ヒータ電源部16、トナー像形成部5、定着器モータ21、用紙搬送モータ18、定着器6、定着ヒータ61とを有する。
なお、図13において、画像形成装置1Bは、第1の実施形態と同様に、外部装置1002と接続している。
印刷制御部200は、第1の実施形態の印刷制御部100と同様に、ビデオコントローラ1001からの制御信号SG1に基づいて印刷動作を制御するものである。なお、印刷制御部200は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力インタフェース部、タイマ等を有して構成される装置である。マイクロプロセッサがROMに格納される処理プログラムを実行することにより、印刷制御部100の各機能が実現される。
図13に示すように、印刷制御部100により実現される機能として、モータ制御部201、加熱制御部102を有する。
加熱制御部102は、第1の実施形態と同様に、プレヒートコマンドを取得すると、定着ヒータ61の温度制御を行うものである。
モータ制御部201は、第1の実施形態と同様に、ビデオコントローラ1001からの制御信号SG1に基づいて、トナー像形成部電源部7、モータ電源部20、モータ電源部17の動作を制御するものである。
図14は、第2の実施形態に係るモータ制御部201の機能構成を示すブロック図である。
図14において、モータ制御部201は、トナー像形成部制御部111、用紙搬送モータ制御部112、定着器モータ制御部213を有する。トナー像形成部制御部111及び用紙搬送モータ制御部112は、第1の実施形態と同様のものであるため、ここでの詳細な説明を省略する。
定着器モータ制御部213は、プレヒートコマンドを取得すると、定着器モータ21を低速で回転駆動させると共に、少なくともプレヒートコマンド受信後印刷開始時までの間に、下加圧ローラ65の表面温度がカール発生温度を下回らないように、定着器モータ21の回転速度を可変調整するものである。
ここで、カールとは、定着後の用紙の変形(反り)をいう。カール発生の基準は、印刷動作又は排出された用紙の変形の程度等により、種々のものを適用できる。例えば、この実施形態では、定着後の用紙の端部の反り上がりが15mm程度以上となる場合をカール発生とする等の基準を適用できる。勿論、前記用紙の端部の反り上がりの程度は特に限定されるものではない。
カールは、実験的に、定着ニップ部における定着ローラ間の温度差(すなわち、定着フィルム64と下加圧ローラ65との温度差)が大きいほど、変形量が大きいことが分かっている。そのため、カール発生防止のためには、定着ローラ間の温度差を小さくすることが望まれる。
第2の実施形態では、定着フィルム64の表面温度が所定の定着可能温度とする場合を例示している。そのため、第2の実施形態では、下加圧ローラ65の表面温度がカール発生温度を下回らないように制御する。
図14に示すように、定着器モータ制御部213は、プレ加熱制御部1131と、印刷加熱制御部2132とを有する。
プレ加熱制御部1131は、ビデオコントローラ1001からプレヒートコマンドを取得すると、予め設定された低速の回転速度で、定着器6の下加圧ローラ65を回転駆動させるようにするものである。
印刷加熱制御部2132は、ビデオコントローラ1001から印刷開始コマンドを取得すると、印刷要求に応じた速度に定着器モータ21を回転駆動制御するものであり、加熱制御部102からの加圧サーミスタ69の検知温度情報に基づいて、下加圧ローラ65の回転速度を可変調整するものである。
つまり、印刷加熱制御部2132は、下加圧ローラ65の温度に応じて、定着器モータ21を可変的に制御するものである。
(B−2)第2の実施形態の動作
図15は、第2の実施形態に係る定着制御装置10による定着制御処理の詳細な動作を説明する説明図である。図15において、図8と同様の処理には図8に記載の番号と同様の番号を付している。
まず、第1の実施形態と同様に、印刷制御部200は、ビデオコントローラ1001からプレヒートコマンドを受信すると、印刷制御部200は、ヒータ電源部16及びモータ電源部20を立ち上げ、定着ヒータ61及び定着器モータ21の制御を開始して、定着器6の温度制御を開始する(S101、S102)。
このとき、印刷制御部200において、モータ制御部201は、予め設定された低速の回転速度で、定着器モータ21の回転駆動を開始する(S103、S104)。
画像展開の終了後(S105)、印刷制御部200が、印刷開始コマンドを受信すると(S106)、印刷制御部200において、モータ制御部201は、加熱制御部102を通じて、加圧サーミスタ69による検知温度情報を取得し、検知温度に基づいて回転速度を設定し(S201)、その回転速度で下加圧ローラ65を回転させる(S202)。
このとき、モータ制御部201は、加圧サーミスタ69の検知温度と、予め設定された判定温度(カール発生温度)とを比較する。
検知温度(下加圧ローラ65の表面温度)≧判定温度の場合、モータ制御部201は、下加圧ローラ65の回転速度が低速となるように、定着器21を駆動制御する。
一方、検知温度(下加圧ローラ65の表面温度)<判定温度の場合、モータ制御部201は、下加圧ローラ65の回転速度が高速になるように、定着器21を駆動制御する。
ここで、第2の実施形態では、下加圧ローラ65の低速の速度が10ppm相当とし、高速の速度として50ppm相当とし、低速の速度がプレ加熱制御の際の速度と同じとする場合を例示する。しかし、下加圧ローラ65の低速の速度は、プレ加熱制御の場合と同一速度である必要はない。例えば、低速の速度が、低速の速度10ppmと高速の速度50ppmとの間の20ppm、30ppm等であっても良い。
また例えば、第2の実施形態では、モータ制御部201が、低速と高速の2段階の速度を切り替える場合を例示する。しかし、モータ制御部201は、印刷指示コマンド受信時から印刷準備完了までの期間で、定着器モータ21の回転加速度を時間的に徐々に上げていき、低速(例えば10ppm相当)から高速(例えば50ppm相当)になるように制御するようにしても良い。
また、判定温度とは、印刷開始コマンド受信時点で、下加圧ローラ65の回転速度を低速にしたときに、印刷開始後の下加圧ローラ65の温度をカール発生温度よりも高温とすることができる最低温度である。判定温度は、実験的に設定するものであってよい。この実施形態では、例えば80℃とする場合を例示する。
つまり、検知温度が判定温度よりも低温である場合、そのまま低速で印刷準備を継続すると、印刷準備が完了して印刷を開始した後に、スリップ発生温度は超えないがカール発生温度を下回ってしまい、カールが発生してしまう。
そのため、第2の実施形態では、検知温度が判定温度よりも低温である場合、下加圧ローラ65の回転速度を高速に設定して、下加圧ローラ65へ与える熱量を増やすことで、印刷後の下加圧ローラ65の温度をカール発生温度よりも高く設定することができる。
さらに画像展開期間において、下加圧ローラ65の回転速度を低速にしているため、印刷開始後においてもスリップ発生温度を超えないように制御することができる。
S107以降の動作は、第1の実施形態と同様である。すなわち、印刷制御部200は、印刷準備完了後、印刷速度に応じた回転速度で下加圧ローラ65を回転駆動させて印刷を実行させる(S107〜S109)。
次に、第2の実施形態の画像形成装置1Bの動作例を、図面を用いて説明する。
図16及び図17は、第2の実施形態の画像形成装置1Bの動作例を説明する説明図である。図16は、プレヒートコマンド受信時の定着フィルム64、下加圧ローラ65の温度が比較的低い場合の動作結果であり、図17は、プレヒートコマンド受信時の定着フィルム64、下加圧ローラ65の温度が比較的高温の場合の動作結果である。
図16の「期間1」では、定着器モータ21は、低速(例えば10ppm相当)で回転する。つまり、定着器モータ21は、印刷要求のある速度(例えば50ppm相当)ではなく、これよりも低速で回転する。そのため、下加圧ローラ65の温度は、図16の場合よりも緩やかに上昇する。
次に、印刷開始コマンドが受信されると、印刷制御部200は、印刷準備を開始する。このとき、印刷制御部200は加圧サーミスタ69の検知温度と判定温度とを比較する。ここでは、検知温度<判定温度であるとする。
この場合、下加圧ローラ65の温度がカール発生温度よりも低温であるため、印刷制御部200は、定着器6の回転速度を高速に設定して、印刷準備完了を待機する。そのため、「期間2」の印刷準備期間では、下加圧ローラ温度の上昇速度が速くなる。
ここで、「期間1」の画像展開時に、下加圧ローラ65は低速で回転していたために、その後印刷準備が完了して「期間3」にて印刷を開始する時点でも、下加圧ローラ65の温度はスリップ発生温度を超えることはない。
さらに、「期間2」の印刷準備中に、下加圧ローラ65は高速で回転しているため、定着フィルム64から必要十分な熱量が下加圧ローラ65へ与えられるため、下加圧ローラ65の温度は、カール発生温度を下回ることもない。
その結果、スリップの発生とカールの発生を防止することができる。
なお、図16(A)の点線は、下加圧ローラ65の回転速度を低速のままとしたときの下加圧ローラ温度の変化である。この場合、「期間3」の印刷後の下加圧ローラ65の温度がカール発生温度を下回ってしまっている。これは、定着フィルム64から下加圧ローラ65に供給される熱量が不十分であったため、カールが発生してしまった。
図17の場合、下加圧ローラ温度が高温である。従って、プレヒートコマンドの受信時の加圧サーミスタ69の検知温度は、検知温度≧判定温度であるとする。
この場合、印刷制御部200は、「期間1」、「期間2」での下加圧ローラ65の回転速度を低速に設定する。そのため、下加圧ローラ65の温度上昇速度を低くおさえることができ、かつ、下加圧ローラ65の温度は十分に高温であるため、カール発生温度を下回ることもない。
その結果、定着器6に用紙が到達する時点でもスリップ発生温度を超えることはなく、かつ、カール発生温度よりも高く制御できる。そのため、その後通紙してもスリップ、カールの発生を防止できる。
なお、第2の実施形態では、下加圧ローラ65の回転速度は低速と高速の2種類として説明したが、下加圧ローラの温度に応じて可変とすることで、より精度良く下加圧ローラ65の温度を制御することができる。
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、下加圧ローラの表面温度を、スリップ発生温度よりも低温にすることができ、かつ、カール発生温度よりも高温に制御することができる。そのため、スリップの発生防止と同時に、カールの発生も防止することができる。
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態においても種々の変形実施形態を説明したが、その他に、本発明は、以下の変形実施形態も適用することができる。
上述した第1及び第2の実施形態は、画像形成装置が、プリンタである場合を例示したが、プリンタ以外に、MFP、ファクシミリ、複写機等に広く適用することができる。
上述した第1及び第2の実施形態では、定着器が、定着フィルム方式を採用する場合を例示したが、定着器が有する2個のローラのうち、いずれかのローラを加熱する熱ローラ方式にも適用することができる。この場合、ローラの内部から加熱する内部加熱方式、ローラの外部を加熱する外部加熱方式などに広く適用することができる。
なお、上述した第1及び第2の実施形態において、装置が低温下にある等、定着フィルム温度が充分低い場合(例えば、予め実験で求めたスリップが発生しやすくなる温度又はカール発生温度より低い温度の場合など)は、定着フィルム温度が所定値(例えば、予め実験で求めたスリップが発生しやすくなる温度又はカール発生温度)を超えた場合より定着フィルムの回転速度を速くするように調整しても良い。