JP2014105662A - 機関制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
筒内噴射式内燃機関にノッキングが発生したとき、その発生原因が何であれ低オクタン価の燃料を使用したことに因るとみなし、トルクの減少量を小さくしながらノッキング回避制御を行う。
【解決手段】
本発明の実施形態に係る筒内噴射式内燃機関10は、圧縮工程内に燃料噴射を行う、ノッキングセンサ64及び制御装置70を含む自動車用エンジンである。制御装置70は、オクタン価の異なる燃料を使用したときの、それぞれの燃料に適した噴射時期及び点火時期のマッピング情報を保持し、ノッキングが発生したとき、オクタン価の低い燃料を使用したときのマッピング情報を参照して噴射時期及び点火時期を設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は筒内噴射・火花点火式内燃機関に適用され、ノッキングを抑制するために前記機関の噴射時期及び点火時期を制御する機関制御装置に関する。
火花点火式内燃機関の点火時期は、その機関が「燃料を筒内に直接噴射する筒内噴射式」であるか「燃料を吸気ポート内に噴射するポート噴射式」であるかに拘わらず、一般に、機関の発生トルクが最大となる時期に設定される。機関の発生トルクが最大となる点火時期は、「最大トルク点火位置」又は「MBT」(Minimum advance for Best Torque)とも称呼される。一般に、MBTは「機関の回転速度及び負荷により定まる運転状態」のそれぞれに対して一つに定まるので、実際の点火時期とMBTとの偏差が大きくなるに従って、機関発生トルクは減少する。
一方、特定の運転状態においてMBTにて点火を行うと、燃料のオクタン価が十分に高くない場合にはノッキングが生じる場合がある。ノッキングは機関の劣化を招く虞があるので、従来の制御装置はノッキングが検知されたときには点火時期を遅角し、以って、ノッキングの発生を回避している。ところが、この点火時期の遅角により機関発生トルクが低下する。そこで、筒内噴射火花点火式機関に適用される従来の制御装置の一つ(以下、「従来装置」とも称呼する。)は、ノッキング発生時に点火時期のみでなく噴射時期も併せて変更することにより、機関発生トルクの低下量を小さくしながらノッキングの発生を回避している(例えば、特許文献1を参照。)。
より具体的には、上記従来装置は、燃料の気化により吸気温度を低下させて吸気の充填効率を向上することを目的として、吸気行程において燃料を筒内に噴射している。一方、上記従来装置は、ノッキングが発生すると、圧縮行程の前半において燃料を筒内に噴射するように噴射時期を遅角するとともに点火時期を進角し、ノッキングの発生を回避しながらトルク低下が大きくなることを回避している。上記公報には、噴射時期を圧縮行程前半となるように遅角したときに点火時期を進角することができるのは、圧縮行程前半の燃料噴射によって燃料の混合状態が悪化するのでノッキングが発生し難くなるからである、と記載されている。
特開2002−339848号公報
ところで、吸気行程中の燃料噴射は、燃料の気化潜熱を吸入空気の冷却に用い、それによって吸入空気量を増大させて機関発生トルクの向上を図ることができるが、圧縮行程中の燃料噴射に比べて熱効率の低下をもたらす。換言すると、圧縮行程中における噴射時期と、点火時期と、を適切に設定することができれば、燃料の気化潜熱をノッキング回避のために用いることができるので、点火時期をMBTに近い時期に設定することができ、その結果、機関の熱効率が向上する。上記従来装置は、係る点(圧縮行程中の噴射時期と、点火時期と、の適切化)について全く考慮していない。
本発明の目的の一つは、筒内に(直接)燃料噴射して形成された混合気を点火栓からの火花により点火する筒内噴射火花点火式内燃機関に適用され、圧縮行程中の噴射時期と、点火時期と、を適切な時期に設定することにより、機関発生トルクが大きく低下しないようにしながらノッキングを回避することが可能な機関制御装置を提供することにある。なお、本明細書において、本発明に係る機関制御装置は「本発明装置」とも称呼され、本発明装置がノッキング回避のために実行する「噴射時期及び点火時期の制御」は、「ノッキング回避制御」とも称呼される。
ここで、本発明装置によるノッキング回避制御の基本的な考え方について述べる。本発明装置は、ノッキング検出時に、点火時期のみならず噴射時期も変更する。圧縮行程中の噴射時期が遅角側に変更されると、噴射時期から点火時期までの時間が短くなるから、シリンダ内壁から混合気へと熱が伝えられている時間が短くなる。その結果、噴射された燃料の気化潜熱によって低下した混合気温度が、混合気が点火されるまで低い温度に維持され得る。よって、噴射時期が遅角されない場合と比較してノッキングが起こり難くなる。
一方、混合気が圧縮されてから燃焼するまでの間、混合気中の燃料は、高温高圧の環境に晒されることによって、その一部が分子量の低い物質に分解し、より自着火しやすい(即ち、ノッキングが起こりやすい)状態になる。これに対し、噴射時期が遅角側に変更されると、燃料が燃焼を開始するまでに高温高圧の環境に晒されている時間が短くなるので、燃料の分解が抑えられる。よって、ノッキングが起こり難くなる。
以上の理由により、圧縮行程中における噴射時期をノッキングが発生した場合に更に遅角することによって点火時期を大きく遅角しなくても、ノッキングの発生を抑制することが可能となる。この結果、ノッキング回避制御中の点火時期とMBTとの偏差を小さくできるので、ノッキング回避制御中の機関発生トルクの減少量を小さくすることができる。以上が、本発明の採用するノッキング回避制御の基本的考え方である。
ところで、ノッキングが発生するか否かは燃料のオクタン価に強く依存する。ノッキングが発生すると機関発生トルクが低下し熱効率も低下する。従って、燃料のオクタン価毎に、ノッキングを回避し且つ機関の熱効率が最大となる「噴射時期及び点火時期」が存在する。一方、ある運転状態においてノッキングが発生するか否かは、燃料のオクタン価のみでは決まらず、「シリンダ内壁、吸気弁及び排気弁等」へのデポジットの付着量、吸気温度、並びに、冷却水温度等にも依存する。しかし、ノッキングがどのような発生要因により生じていても、そのノッキングは燃料のオクタン価が想定しているオクタン価よりも低下したことにより生じていると見做すことができる。
このような知見に基いてなされた本発明装置は、ノッキングの発生を検知するノッキング検知部と、噴射時期及び点火時期を制御する制御部と、を備える。
より具体的に述べると、前記制御部は、
(1)第1のオクタン価の燃料に対して適合された「第1噴射時期及び第1点火時期」にて「燃料噴射及び点火」をそれぞれ行い、且つ、
(2)前記ノッキング検知部により前記ノッキングの発生が検知されたとき「前記第1のオクタン価よりも小さい第2のオクタン価」の燃料に対して予め適合された「第2噴射時期及び第2点火時期」、のそれぞれに基いて定まる「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」にて「燃料噴射及び点火」をそれぞれ行う。
これによれば、第1のオクタン価の燃料に対して適合された(例えば、ノッキングが発生せず熱効率が最大となるように予め定められた)「第1噴射時期及び第1点火時期」にて「燃料噴射及び点火」を行なっている場合にノッキングが発生すると、「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」にて「燃料噴射及び点火」がそれぞれ行なわれる。
「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」は、第1のオクタン価よりも低いオクタン価(第2のオクタン価)の燃料に対して適合された(例えば、ノッキングが発生せず熱効率が最大となるように予め定められた)「第2噴射時期及び第2点火時期」のそれぞれに基いて定められる。
例えば、「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」は、「第2噴射時期及び第2点火時期」のそれぞれと一致していてもよい。更に、ノック抑制噴射時期は、「第1オクタン価と第2オクタン価との間の特定オクタン価」に対する噴射時期であって第1噴射時期と第2噴射時期とに基いて求められる噴射時期であり、ノック抑制点火時期はその特定オクタン価に対する点火時期であって第1点火時期と第2点火時期とに基いて求められる点火時期であってもよい。更に、この場合、ノック抑制噴射時期は、第1噴射時期と第2噴射時期とをオクタン価に関して直線補間することにより求められ、ノック抑制点火時期は、第1点火時期と第2点火時期とをオクタン価に関して直線補間することにより求められてもよい。
このように、本発明装置によれば、ノッキングが発生したとき、その時点で想定されていたオクタン価(第1オクタン価)よりも低いオクタン価(第2オクタン価)の燃料に対して適合されている「第2噴射時期及び第2点火時期」に基づいて定まる「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」にて「燃料噴射及び点火」がそれぞれ行なわれる。その結果、ノッキング発生時における噴射時期及び点火時期を「熱効率を高い値に維持し得る適切な値」に近づけることができるので、ノッキングの発生を回避しながらトルクの低下量も小さくすることができる。
前記制御部は、
前記第1噴射時期と前記第2噴射時期との間の噴射時期であって前記第1のオクタン価と前記第2のオクタン価との間の特定オクタン価の燃料に対する噴射時期を同第1噴射時期と同第2噴射時期とに基づいて算出するとともに同算出された噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し、
前記第1点火時期と前記第2点火時期との間の点火時期であって前記特定オクタン価の燃料に対する点火時期を同第1点火時期と同第2点火時期とに基づいて算出するとともに同算出された点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する、
ように構成され得る。
これによれば、第1のオクタン価と第2のオクタン価との差が大きい場合であっても、ノッキング発生時の噴射時期及び点火時期を適切に設定することができる。換言すれば、第1のオクタン価と第2のオクタン価との差を小さくすると多くの実験を必要として開発工数が膨大となるが、上記構成は係る問題を回避することができる。
この場合、前記制御部は、
前記ノック抑制噴射時期を、前記第1噴射時期と前記第2噴射時期とをオクタン価に関して直線補間することにより取得し、
前記ノック抑制点火時期を、前記第1点火時期と前記第2点火時期とをオクタン価に関して直線補間することにより取得する、
ように構成され得る。
特定オクタン価に対して適切な噴射時期は、「第1オクタン価に対する第1噴射時期」と「第2オクタン価に対する第2噴射時期」とをオクタン価に関して直線補間することによって得られる噴射時期と極めて近しいと考えられる。同様に、特定オクタン価に対して適切な点火時期は、「第1オクタン価に対する第1点火時期」と「第2オクタン価に対する第2点火時期」とをオクタン価に関して直線補間することによって得られる点火時期と極めて近しいと考えられる。従って、上記構成によれば、簡単な手法により、適切な「ノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期」を得ることができる。
なお、本発明は、上記筒内噴射火花点火式内燃機関及び上記筒内噴射火花点火式内燃機関を含む車両にも係り、更に、上記筒内噴射火花点火式内燃機関にて使用される方法でもある。
本発明の各実施形態に係る内燃機関の概略構成図である。 本発明の第1実施形態においてノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期を段階的に設定する様子を説明するための模式図である。 本発明の第1実施形態に係るノッキング回避制御の作動を説明するための模式図である。 本発明の第1実施形態に係るノッキング回避制御の作動を説明するためのフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るノッキング回避制御の作動を説明するための模式図である。 本発明の第2実施形態に係るノッキング回避制御の作動を説明するためのフローチャートである。
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る機関制御装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)について説明する。第1装置は、図1に示した内燃機関10に適用される。機関10は筒内噴射火花点火式の多気筒(本例において4気筒)内燃機関である。機関10は、ガソリンを燃料として用いる。なお、図1には特定の1つの気筒のみの構成が示されているが、他の気筒もこれと同じ構成を備えている。
機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20、並びに、シリンダブロック部20上に固定されるシリンダヘッド部30、シリンダブロック部20に空気を供給するための吸気通路40、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気通路50、及び、制御装置70を備える。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランクシャフト24を備える。ピストン22はシリンダ21内で往復動し、このピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランクシャフト24に伝達され、これによってクランクシャフト24が回転する。また、シリンダ21の内壁面、ピストン22の上壁面、及び、シリンダヘッド部30の下壁面によって燃焼室25が形成されている。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通する吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、及び、吸気弁32を駆動する吸気弁駆動機構32aを備える。シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通する排気ポート33、排気ポート33を開閉する排気弁34、及び、排気弁34を駆動する排気弁駆動機構34aを備える。シリンダヘッド部30は、点火プラグ35、及び、点火プラグ35に与える高電圧を発生する点火コイルを含むイグナイタ36を備える。シリンダヘッド部30は、燃料を燃焼室25内に噴射する燃料噴射弁37、燃料噴射弁37に燃料を高圧で供給する蓄圧室37a、及び、蓄圧室37aに燃料を圧送する燃料ポンプ37bを備える。吸気弁駆動機構32a及び排気弁駆動機構34aは、駆動回路38に接続されている。なお、吸気弁駆動機構32aは、周知のインテークカムシャフトでも良く、排気弁駆動機構34aは、周知のエキゾーストカムシャフトでも良い。
吸気通路40は、吸気ポート31に接続された吸気枝管41、吸気枝管41に接続されたサージタンク42、及び、サージタンク42に接続された吸気ダクト43を備える。吸気ダクト43には、その上流端から順にエアフィルタ44及びスロットル弁48が配置されている。スロットル弁48は、吸気ダクト43に回転可能に取り付けられており、スロットル弁駆動用アクチュエータ48aによって駆動される。
排気通路50は、排気ポート33に接続された排気枝管49、及び、排気枝管49に接続された排気管51を備える。排気管51には排気ガスを浄化するための三元触媒装置52が配置されている。
機関10は、吸気ダクト43内を流れる空気の流量を検出するエアフローメータ61、クランクシャフト24の回転位相(即ち、クランク角度)を検出するクランクポジションセンサ62、燃焼室25内の圧力を検出する筒内圧センサ63、燃焼室25内のノッキング発生を検知するノッキングセンサ64、及び、アクセルペダル65の踏込量を検出するアクセル開度センサ66を備える。
制御装置70は、双方向性バスによって互いに接続されたCPU71と、ROM72と、RAM73と、バックアップRAM74と、及び、A/D変換器を含むインターフェース75とを備えるマイクロコンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)である。制御装置70は、イグナイタ36、燃料噴射弁37、燃料ポンプ37a、駆動回路38、スロットル弁駆動用アクチュエータ48a、エアフローメータ61、クランクポジションセンサ62、筒内圧センサ63、ノッキングセンサ64及びアクセル開度センサ66と信号線で結ばれている。
次に、第1装置が実行するノッキング回避制御について説明する。第1装置は、上述したようにノッキング発生時に点火時期のみでなく噴射時期も併せて変更する。しかし、噴射時期の補正量が多すぎた場合(噴射時期が遅角され過ぎた場合)は燃料噴射から点火までの間の時間が短くなることによって、その燃料がシリンダ内に拡散するための十分な時間が確保されなくなる場合が生じ得る。その結果、混合気が効率的に燃焼せず、発生トルクが減少する虞がある。換言すれば、前述した混合気の温度上昇等の抑制、及び、燃料噴射から点火までの間の燃料拡散時間の確保の両方を考慮して、ノッキング回避制御を行う際の噴射時期及び点火時期が設定される必要がある。
そのため、制御装置70は、オクタン価の異なる燃料に対して、ノッキングの発生を抑え、且つ、トルクの減少量を小さくすることができる噴射時期FI及び点火時期SAの組合せに関するデータを保持している。具体的には、制御装置70は、噴射時期FI及び点火時期SAについて、通常時に使用する「噴射時期FI1(第1噴射時期)及び点火時期SA1(第1点火時期)を規定するデータ」、並びに、ノッキング回避制御において使用する「噴射時期FI2(第2噴射時期)及び点火時期SA2(第2点火時期)を規定するデータ」をROM72内に保持している。
噴射時期FI1及び点火時期SA1は、リサーチオクタン価(以下、「RON」とも称呼する。)が「第1オクタン価(本例において、95)」である燃料が使用されたとき、機関10のノッキングの発生を抑え且つ高いトルクが得られる噴射時期FI及び点火時期SAのそれぞれである。換言すると、噴射時期FI1及び点火時期SA1は、RONが第1オクタン価である燃料が使用されたときに機関10の熱効率が最大となるように予め実験により適合されている。第1オクタン価は一般に市場において流通している燃料のオクタン価のうちの最も高い値の近傍値に設定されている。
噴射時期FI2及び点火時期SA2は、RONが「第2オクタン価(本例において、85)」である燃料が使用されたとき、機関10のノッキングの発生を抑え且つ高いトルクが得られる噴射時期FI及び点火時期SAのそれぞれである。換言すると、噴射時期FI2及び点火時期SA2は、RONが第2オクタン価である燃料が使用されたときに機関10の熱効率が最大となるように予め実験により適合されている。第2オクタン価は第1オクタン価よりも小さく、一般に市場において流通している燃料のオクタン価のうちの最も低い値よりも低い値に設定されている。
より具体的には、制御装置70は、RON=95及びRON=85のそれぞれについて、機関10の回転速度及び負荷の組合せにより定まる噴射時期FI(FI1及びFI2)及び点火時期SA(SA1及びSA2)のマッピング情報(ルックアップテーブル、マップ)を保持している。
RONの低い燃料が使用された場合、ノッキングが起こりやすくなるため、一般に噴射時期FI及び点火時期SAのそれぞれはRONが高い燃料が使用された場合と比較して遅角側の値となる。即ち、何れの回転速度及び負荷の組合せにおいても、噴射時期FIは、FI2がFI1よりも遅角側に設定され、点火時期SAは、SA2がSA1よりも遅角側に設定される。
制御装置70は、ノッキングセンサ64から受けた信号に基づいて機関10におけるノッキング発生の有無を検知する。制御装置70は、ノッキング発生を検出したときノッキング回避制御、即ち、噴射時期FI及び点火時期SAの補正によってノッキングの発生を抑制しようとする。この際、制御装置70は、「噴射時期FIをFI1からFI2に直ちに変更し、且つ、点火時期SAをSA1からSA2に直ちに変更する」のではなく、ノッキング発生が抑制されたか否かを確認しながら、噴射時期FI及び点火時期SAを段階的に設定する。
噴射時期FI及び点火時期SAを段階的に設定する様子を図2に示す。具体的には、制御装置70は、ノッキングの発生を検知したとき、第1オクタン価(RON=95)よりも小さく、且つ、第2オクタン価(RON=85)よりも大きい、特定オクタン価(RON=a)を選択し、「そのオクタン価(RON=a)の燃料を使用した場合に機関10の熱効率が最大となる噴射時期FIa及び点火時期SAa」を「噴射時期FI(ノック抑制噴射時期)及び点火時期SA(ノック抑制点火時期)」としてそれぞれ設定する。
制御装置70は、RON=aの場合の噴射時期FIaを、第1噴射時期FI1と第2噴射時期FI2とをオクタン価に関して直線補間することにより算出する。この算出方法を説明するために、ここでは便宜的に「補間係数α」を用いるが、図4のフローチャートを用いて後述する制御装置70によって実行される処理では補間係数αが実際に算出されることはない。
具体的には、制御装置70は、RON=aに係る補間係数αを求める。補間係数αは、RON=aとRON=95(第1オクタン価)の差分(=95−a)を、RON=95とRON=85(第2オクタン価)の差分(=95−85)で除することにより算出される。即ち、補間係数αは、(95−a)/(95−85)によって求められる。
制御装置70は、更に、補間係数αに対応する噴射時期FIaを算出する。噴射時期FIaと補間係数αの関係は、α=(FI1−FIa)/(FI1−FI2)である。即ち、噴射時期FIaは、FIa=FI1−α(FI1−FI2)によって求められる。
制御装置70は、同様に、RON=aの場合の点火時期SAaを、第1点火時期SA1と第2点火時期SA2とをオクタン価に関して直線補間することにより算出する。具体的には、制御装置70は、上記の補間係数αに対応する点火時期SAaを、SAa=SA1−α(SA1−SA2)より算出する。
制御装置70は、「噴射時期FIa及び点火時期SAa」を「噴射時期FI及び点火時期SA」としてそれぞれ設定する。その結果ノッキングの発生が抑制されていれば、制御装置70は、ノッキング回避制御を一旦終了する。
一方、ノッキングの発生が継続していた場合、制御装置70は、ノッキング回避制御を継続する。具体的には、制御装置70は、RON=aよりも小さく、且つ、第2オクタン価(RON=85)よりも大きい、新たな特定オクタン価(RON=b)を選択し、そのオクタン価(RON=b)の燃料を使用した場合に機関10の熱効率が最大となる噴射時期FIb及び点火時期SAbを、RON=aの場合(噴射時期FIa及び点火時期SAa)と同様に算出する。
「噴射時期FIb及び点火時期SAb」が「噴射時期FI及び点火時期SA」としてそれぞれ設定されることによってノッキングの発生が抑制されていれば、制御装置70は、ノッキング回避制御を一旦終了する。一方、ノッキングの発生が継続していた場合、制御装置70は、「第2オクタン価の燃料に適合された噴射時期FI2及び点火時期SA2」を「噴射時期FI及び点火時期SA」としてそれぞれ設定することによってノッキング回避制御を継続する。
なお、制御装置70は、上述した直線補間の他に、図2(a)の破線に示すように、噴射時期FI1及び噴射時期FI2並びに関数f1に基づいて噴射時期FIa及び噴射時期FIbを算出してもよい。或いは、図2(a)の一点鎖線、同図(b)の破線及び一点鎖線に示すように、制御装置70は、関数f2乃至関数f4に基づいて、噴射時期FIa及び噴射時期FIb、並びに、点火時期SAa及び点火時期SAbを算出してもよい。
以上説明したように、制御装置70は、ROM72内にマッピング情報として保持している噴射時期FI(FI1及びFI2)及び点火時期SA(SA1及びSA2)に基づいて、オクタン価が第1オクタン価と第2オクタン価との間にある燃料(本例では、RON=a及びRON=b)を用いた場合に機関10の熱効率が最大となる噴射時期FI及び点火時期SA(即ち、機関10のノッキングの発生を抑え且つ高いトルクが得られる噴射時期FI及び点火時期SA)を算出できるようになっている。
しかしながら、制御装置70は、最小分解能の関係から噴射時期FI及び点火時期SAを任意の値に設定することはできないため、RON=a及びRON=b等の特定オクタン価を無数には設定できない。具体的には、制御装置70は、噴射時期FIを最小設定量FImin毎にのみ設定可能であり、点火時期SAを最小設定量SAmin毎にのみ設定可能である。機関10では、制御装置70は、噴射時期FIをクランク角度(クランクシャフト24の回転位相)1°毎に設定可能であり(即ち、最小設定量FImin=1°)、点火時期SAをクランク角度0.5°毎に設定可能である(即ち、最小設定量SAmin=0.5°)。
換言すれば、制御装置70は、噴射時期FIをFI1からFI2へと段階的に設定するにあたって、最小設定量FImin単位で遅角させることが可能である。同様に、制御装置70は、点火時期SAをSA1からSA2へと段階的に設定するにあたって、最小設定量SAmin単位で遅角させることが可能である。
そして、制御装置70は、噴射時期FIをFI1からFI2へと段階的に設定する際に、最大何回の設定が可能であるかを示す噴射時期ステップ数FIstp(=(FI2−FI1)/FImin))、及び、点火時期SAをSA1からSA2へと段階的に設定する際に、最大何回の設定が可能であるかを示す点火時期ステップ数SAstp(=(SA2−SA1)/SAmin)を算出することが可能である。
制御装置70は、噴射時期ステップ数FIstp及び点火時期ステップ数SAstpを比較して、ステップ数が少ない方(噴射時期及び点火時期のいずれか)を最小設定単位で段階的に設定し、他方をそれに追随させる。
具体的な作動を、図3の例を参照しながら説明する。点火時期s1乃至s5は、それぞれRON=r1乃至r5の燃料が使用されたときに設定されるべき点火時期SAである。噴射時期f1乃至f5は、それぞれRON=r1乃至r5の燃料が使用されたときに設定されるべき噴射時期FIである。
この例においては、点火時期SAは、点火時期の最小設定量SAminとの関係から、SA1からSA2まで変化する間に点火時期s1乃至s5及びSA2(合計6ステップ)を経ることが可能である。一方、噴射時期FIは、噴射時期の最小設定量FIminとの関係から、FI1からFI2まで変化する間に噴射時期f3及びFI2(合計2ステップ)にのみ設定可能である。そのため、制御装置70は、ステップ数の少ない噴射時期FIを最小設定量単位で段階的に設定することによってノッキング回避制御を行う。
噴射時期f3はRON=r3の燃料が使用されたときに設定されるべき噴射時期FIである。即ち、RON=r3の燃料が使用されたとき、噴射時期f3及び点火時期s3が、ノッキングを抑制し且つトルク低下を最小限に抑えられる噴射時期FI及び点火時期SAそれぞれの値である。
機関10にノッキングが発生していないとき、制御装置70は、噴射時期FIをFI1に設定し、点火時期SAをSA1に設定する。機関10にノッキングが発生したとき、制御装置70は噴射時期FIをFI1からf3へと変更する。このとき、噴射時期f3が基準としているオクタン価はRON=r3であり、このRONに対応する点火時期SAはs3である。そこで制御装置70は点火時期SAをSA1からs3へと変更する。この時点でノッキング発生が抑えられていれば、制御装置70はノッキング回避制御を一旦終了する。
一方、ノッキング発生が継続していた場合、制御装置70は噴射時期FIをf3からFI2へと変更し、点火時期SAをs3からSA2へと変更する。以上説明したように、制御装置70は噴射時期FI及び点火時期SAのうち、最小設定量によって定まるステップ数が少ない方(図3の例では噴射時期FI)を最小設定量(図3の例ではFImin)毎に遅角させ、それに合わせて他方(本例では点火時期SA)を遅角させる。
次に、上述したノッキング回避制御に関する制御装置70の詳細な作動について、図4に示したフローチャートを参照しながら説明する。制御装置70のCPU71(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、所定のタイミングにて図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405に進む。ステップ405にてCPUは、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、機関10にノッキングが発生しているか否かを判定する。
ノッキングが発生していない場合、制御装置70がノッキング回避制御を行う必要はないため、CPUはステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合CPUは、噴射時期FIをFI1に設定し、且つ、点火時期SAをSA1に設定する。
一方、ノッキングが発生していた場合、CPUはステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410に進み、ノッキング回避制御を実行する。ステップ410にてCPUは、ノッキング回避制御に必要な各種の情報、具体的には、その時点の機関10の回転速度及び負荷の組合せにより定まる噴射時期FI(FI1及びFI2)及び点火時期SA(SA1及びSA2)、並びに、噴射時期の最小設定量FImin及び点火時期の最小設定量SAminをROM72から取得する。
次にCPUは、ステップ415に進み、噴射時期FIを噴射時期FI1から噴射時期FI2へと遅角させる間に、最大何段階(ステップ)の遅角補正が可能であるかを表す噴射時期ステップ数FIstpを算出する。具体的には、噴射時期ステップ数FIstpは、噴射時期FI2と噴射時期FI1の偏差(=FI2−FI1)を噴射時期の最小設定量FIminで除することにより得られる。即ち、FIstpは、(FI2−F11)/FIminにより求められる。
次にCPUは、ステップ420に進み、噴射時期FIと同様に、点火時期SAを点火時期SA1から点火時期SA2へと遅角させる間に、最大何段階の遅角補正が可能であるかを表す点火時期ステップ数SAstpを算出する。具体的には、点火時期ステップ数SAstpは、点火時期SA2と点火時期SA1の偏差(=SA2−SA1)を点火時期の最小設定量SAminで除することにより得られる。即ち、SAstpは、(SA2−SA1)/SAminにより求められる。次いで、CPUは、ステップ425に進み、噴射時期FI及び点火時期SAの補正回数を記憶するカウンタcntの値を「1」に設定する。
次にCPUは、ステップ430に進み、噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstpよりも大きいか否かを判定する。噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstpよりも大きければ、CPUは点火時期SAを点火時期の最小設定量SAmin毎に段階的に遅角補正し、それに合わせて(即ち、基準とするオクタン価が点火時期SAと噴射時期FIとで等しくなるように)噴射時期FIを遅角補正する。即ち、この場合、CPUはステップ430にて「Yes」と判定してステップ435に進む。
一方、噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstp以下であれば、CPUは噴射時期FIを噴射時期の最小設定量FImin毎に段階的に遅角補正し、それに合わせて点火時期SAを遅角補正する。即ち、この場合、CPUはステップ430にて「No」と判定してステップ460に進む。
ステップ435にてCPUは、点火時期SAを最小設定量SAminだけ遅角補正する。具体的には、CPUは、点火時期SA1に「最小設定量SAminに補正回数cntを乗じて得られる値」を加えた値を、補正後の点火時期SAとして設定する。即ち、点火時期SAは、SA1+SAmin*cntによって算出される。或いは、点火時期SAは、SA2を基準にして、SA=SA2−SAmin*(SAstp−cnt)によっても算出される。このようにして算出される点火時期SAが、ノック抑制点火時期となる。
次にCPUは、ステップ440に進み、噴射時期FIを点火時期SAに合わせて補正する。即ち、CPUは、点火時期SAが基準としているオクタン価と等しいオクタン価に基づく噴射時期FIを設定する。より具体的に説明すると、「噴射時期の最小設定量FImin」に、「噴射時期のステップ数FIstpを点火時期のステップ数SAstpで除して得られる両者の比(即ち、FIstp/SAstp)」と「点火時期SAの補正回数cnt」とを乗じて得られる値を、FI1に加えることで補正後の噴射時期FIが理論的には得られる。即ち、噴射時期FIは、FI1+FImin*(FIstp/SAstp)*cntによって算出され得る。
しかし、実際には、ステップ数の比率(即ち、FIstp/SAstp)が少数部分を含む場合があるため、最小設定量FIminと「この比率にカウンタcntを乗じた値(即ち、(FIstp/SAstp)*cnt)の少数部分(小数点第1位)を四捨五入して得られる値」とを乗じて得られる値を、FI1に加えた値を補正後の噴射時期FIとする。即ち、噴射時期FIは、
FI=FI1+FImin*[(FIstp/SAstp)*cnt+0.5]
によって求められる。なお、ガウス記号([x])は、xを超えない最大の整数を表すために用いられている。或いは、噴射時期FIは、FI2を基準にして、
FI=FI2−FImin*[(FIstp/SAstp)*(SAstp−cnt)+0.5]
によっても算出される。このようにして算出される噴射時期FIが、ノック抑制噴射時期となる。
このときの補間係数αは、噴射時期FIについて、α=(FI1−FI)/(FI1−FI2)であり、点火時期SAについてα=(SA1−SA)/(SA1−SA2)である。即ち、CPUは、補間係数αを介して、噴射時期FIに基づいて点火時期SAを算出することが可能で、逆に、点火時期SAに基づいて噴射時期FIを算出することも可能である。なお、このときのオクタン価(例えば、aとする。)を、補間係数α=(95−a)/(95−85)を介して算出することが可能である。即ち、このときの噴射時期FI及び点火時期SAは、このオクタン価aの燃料を使用した場合に機関の熱効率が最大となる値である。
次にCPUは、ステップ445に進み、補正回数cntの値に「1」を加える。次いでCPUは、ステップ450に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、機関10にノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングの発生が既に抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ450にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAを更に補正する必要がある。そのため、CPUはステップ450にて「Yes」と判定し、ステップ455に進む。
ステップ455にてCPUは、これ以上ノッキング回避制御を続けられるか否かを判定する。即ち、噴射時期FI及び点火時期SAが補正された結果、それぞれ噴射時期FI2及び点火時期SA2に等しくなっていた場合、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAをこれ以上補正することができない。そのため、ステップ455にてCPUは、「ステップ445にて『1』を加算された補正回数のカウンタcnt」が、点火時期ステップ数SAstpを超えているか否かを判定する。
補正回数cntが点火時期ステップ数SAstp以下である場合、CPUは更に噴射時期FI及び点火時期SAを補正することができる。そのため、CPUはステップ455にて「No」と判定してステップ435に進む。
一方、補正回数cntが点火時期ステップ数SAstpより大きい場合、CPUはステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、たとえノッキング発生が継続していたとしても、CPUは、ノッキング回避制御を一旦終了する。
ステップ460乃至ステップ480の処理は、点火時期ステップ数SAstpが噴射時期ステップ数FIstp以下であるとき、即ち、点火時期SAが噴射時期FIよりも細かいステップで調整可能であるとき、又は、両ステップ数が等しいときに実行される処理である。この場合、上述したように、CPUは噴射時期FIを噴射時期の最小設定量FImin毎に遅角補正し、それに合わせて(即ち、基準とするオクタン価が噴射時期FIと点火時期SAとで等しくなるように)点火時期SAを遅角補正する。
ステップ460にてCPUは、ステップ435と同様の処理により、噴射時期FIを最小設定量FIminだけ遅角補正する。具体的には、CPUは、噴射時期FI1に「最小設定量FIminに補正回数cntを乗じて得られる値」を加えた値を、補正後の噴射時期FIとして設定する。即ち、噴射時期FIは、FI1+FImin*cntによって算出される。或いは、噴射時期FIは、FI2を基準にして、
FI=FI2−FImin*(FIstp−cnt)によっても算出される。このようにして算出される噴射時期FIが、ノック抑制噴射時期となる。
次にCPUは、ステップ465に進み、ステップ440と同様の処理により、点火時期SAを噴射時期FIに合わせて補正する。即ち、点火時期SAは、
SA=SA1+SAmin*[(SAstp/FIstp)*cnt+0.5]
によって求められる。或いは、点火時期SAは、SA2を基準にして、
SA=SA2−SAmin*[(SAstp/FIstp)*(FIstp−cnt)+0.5]
によっても算出される。このようにして算出される点火時期SAが、ノック抑制点火時期となる。
次にCPUは、ステップ470に進み、ステップ445と同様の処理により、補正回数のカウンタcntの値に「1」を加える。次いでCPUはステップ475に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、機関10にノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキング発生が抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ475にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAを更に補正する必要がある。そのため、CPUはステップ475にて「Yes」と判定し、ステップ480に進む。
ステップ480にてCPUは、ステップ455と同様の処理により、これ以上ノッキング回避制御を続けられるか否かを判定する。具体的には、噴射時期FI及び点火時期SAが補正された結果、それぞれ噴射時期FI2及び点火時期SA2に等しくなっていた場合、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAをこれ以上補正することができない。そのため、ステップ480にてCPUは、「ステップ470にて『1』を加算された補正回数のカウンタcnt」が、点火時期ステップ数SAstpを超えているか否かを判定する。
補正回数cntが噴射時期ステップ数FIstp以下である場合、CPUは更に噴射時期FI及び点火時期SAを補正することができる。そのため、CPUはステップ480にて「No」と判定してステップ460に進む。
一方、補正回数cntが噴射時期ステップ数FIstpより大きい場合、CPUはステップ480にて「Yes」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、たとえノッキング発生が継続していたとしても、CPUは、ノッキング回避制御を一旦終了する。
以上説明したように、第1装置は、
筒内に燃料噴射して形成された混合気を点火栓からの火花により点火する筒内噴射火花点火式内燃機関に適用される機関制御装置であって、
ノッキングの発生を検知するノッキング検知部(ノッキングセンサ64)と、
第1のオクタン価の燃料に対して予め定められた第1噴射時期(噴射時期FI1)及び第1点火時期(点火時期SA1)にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行い、且つ、前記ノッキング検知部により前記ノッキングの発生が検知されたとき(図4のステップ405)、前記第1のオクタン価よりも小さい第2のオクタン価の燃料に対して予め定められた第2噴射時期(噴射時期FI2)及び第2点火時期(点火時期SA2)のそれぞれに基いて定まるノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期にて前記燃料噴射(図4のステップ440及びステップ460)及び前記点火(図4のステップ435及びステップ465)をそれぞれ行う制御部(制御装置70)と、
を備える。
更に、制御部(制御装置70)は、
前記第1噴射時期(噴射時期FI1)と前記第2噴射時期(噴射時期FI2)との間の噴射時期であって前記第1のオクタン価と前記第2のオクタン価との間の特定オクタン価の燃料に対する噴射時期を同第1噴射時期と同第2噴射時期とに基づいて算出するとともに同算出された噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し(図4のステップ440及びステップ460)、
前記第1点火時期(点火時期SA1)と前記第2点火時期(点火時期SA2)との間の点火時期であって前記特定オクタン価の燃料に対する点火時期を同第1点火時期と同第2点火時期とに基づいて算出するとともに同算出された点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する(図4のステップ435及びステップ465)、
ように構成されている。
更に、制御部(制御装置70)は、
前記ノック抑制噴射時期を、前記第1噴射時期と前記第2噴射時期とをオクタン価に関して直線補間(図4のステップ440及びステップ460)することにより取得し、
前記ノック抑制点火時期を、前記第1点火時期と前記第2点火時期とをオクタン価に関して直線補間(図4のステップ435及びステップ465)することにより取得する、
ように構成されている。
更に、制御部(制御装置70)は、噴射時期FI及び点火時期SAの遅角補正を、機関10に発生したノッキングが抑制されるまで繰り返し、その結果として「噴射時期FI及び点火時期SA」は、「第2噴射時期及び第2点火時期」のそれぞれと一致する場合がある。
従って、この第1装置は、ノッキングの発生を検知したとき、噴射時期FI及び点火時期SAを段階的に遅角補正することにより、トルクの低下を抑えながらノッキング回避制御を行うように構成されている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る機関制御装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。第1装置は、噴射時期及び点火時期それぞれのステップ数を比較し、ステップ数の少ない方(噴射時期及び点火時期のいずれか)を最小設定量単位で段階的に設定し、他方をそれに追随させていた。これに対し、第2装置は、噴射時期と点火時期とのステップ数を比較し、ステップ数の多い方(噴射時期及び点火時期のいずれか)を最小設定量単位で段階的に設定し、他方をそれに追随させる点において第1装置と相違する。
即ち、第2装置に係る制御装置70は、ノッキングセンサ64から受けた信号に基づいてノッキング発生を検知したとき、噴射時期FIをFI1からFI2まで変更する際に設定可能な噴射時期FIの最大値(噴射時期ステップ数FIstp)と、点火時期SAをSA1からSA2まで変更する際に設定可能な点火時期SAの最大値(点火時期ステップ数SAstp)とを比較して、設定可能なステップ数が多い方(噴射時期及び点火時期のいずれか)を最小設定量単位で段階的に設定し、他方をそれに追随させることによってノッキング回避制御を行う。
具体的な作動を、図5の例を参照しながら説明する。第1実施形態に係る図3の例と同様に、点火時期SAは、SA1からSA2まで変化する間に点火時期s1乃至s5及びSA2(合計6ステップ)を経ることが可能である。一方、噴射時期FIは、FI1からFI2まで変化する間に噴射時期f3及びFI2(合計2ステップ)にのみ設定可能である。そのため、第2装置の制御装置70は、ステップ数の多い点火時期SAを最小設定量単位で段階的に設定することによってノッキング回避制御を行う。
ノッキングが発生したとき、第2装置の制御装置70は点火時期SAをSA1からs1へと変更する。このとき点火時期SAが基準としているオクタン価(特定オクタン価)はRON=r1である。このRON=r1を基準とする噴射時期FIは、計算上は、f1であるが、制御装置70は噴射時期をf1に設定することができない。そのため制御装置70は、噴射時期をFI1のままとする。この時点でノッキング発生が抑えられていれば、制御装置70はノッキング回避制御を一旦終了する。
一方、この時点でノッキングの発生が抑えられていなければ、制御装置70は点火時期SAをs1からs2へと変更する。このときの基準オクタン価はRON=r2である。制御装置70は噴射時期FIをこのRON(RON=r2)に対応するf2に設定することができないため、噴射時期FIをFI1のままとする。
この時点でノッキングの発生が抑えられていなければ、制御装置70は更に点火時期SAをs2からs3へと変更する。この時の基準オクタン価はRON=r3であり、このRONに対応する噴射時期FIはf3である。制御装置70は、噴射時期FIをRON=r3に対応するf3に変更する。即ち、この時点で、点火時期SAがs3であり、且つ、噴射時期FIがf3に設定される。
この時点でノッキングの発生が抑えられていなければ、制御装置70は、更に点火時期SAをs3からs4へと変更する。一方、制御装置70は、噴射時期FIをf3のままとする。制御装置70は、ノッキングの発生が抑えられていなければ、このノッキング回避制御を、点火時期SAがSA2となり、且つ、噴射時期FIがFI2となるまで、繰り返す。
以上説明したように、制御装置70は噴射時期FI及び点火時期SAのうち、最小設定量によって定まるステップ数が多い方(図5の例では点火時期SA)を最小設定量(図5の例では最小設定量SAmin)毎に遅角させ、それに合わせて他方(図5の例では噴射時期FI)を遅角させる。
次に、上述したノッキング回避制御に関する制御装置70の詳細な作動について、図6に示したフローチャートを参照しながら説明する。制御装置70のCPU71(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、所定のタイミングにて図6のステップ600から処理を開始し、ステップ610に進む。ステップ610にてCPUは、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、ノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングが発生していない場合、制御装置70がノッキング回避制御を行う必要はないため、CPUはステップ610にて「No」と判定し、ステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合CPUは、噴射時期FIをFI1に設定し、且つ、点火時期SAをSA1に設定する。
一方、ノッキングが発生していた場合、CPUはステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ611に進み、ノッキング回避制御を実行する。ステップ611にてCPUは、ノッキング回避制御に必要な各種の情報、具体的には、その時点の回転速度及び負荷の組合せにより定まる噴射時期FI(FI1及びFI2)及び点火時期SA(SA1及びSA2)、並びに、噴射時期の最小設定量FImin及び点火時期の最小設定量SAminをROM72から取得する。
次にCPUは、ステップ612に進み、ステップ415と同様に噴射時期ステップ数FIstpを算出する。次にCPUは、ステップ613に進み、ステップ420と同様に点火時期ステップ数SAstpを算出する。
次にCPUは、ステップ614に進み、噴射時期FIの補正回数を記憶するカウンタcntFIの値を「1」に設定する。また、CPUは、点火時期SAの補正回数を記憶するカウンタcntSAの値を「1」に設定する。
次にCPUは、ステップ615に進み、噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstpよりも大きいか否かを判定する。噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstpよりも大きければ、CPUはステップ620以降に進み噴射時期FIを噴射時期の最小設定量FImin毎に段階的に遅角補正し、それに合わせて(即ち、基準とするオクタン価が噴射時期FIと点火時期SAとで等しくなるように)点火時期SAを遅角補正する。即ち、この場合、CPUはステップ615にて「Yes」と判定してステップ620に進む。
一方、噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstp以下であれば、CPUはステップ630以降に進み点火時期SAを点火時期の最小設定量SAmin毎に段階的に遅角補正し、それに合わせて噴射時期FIを遅角補正する。即ち、この場合、CPUはステップ615にて「No」と判定してステップ630に進む。
ステップ620にてCPUは、噴射時期FIを最小設定量FIminだけ遅角補正する。具体的には、CPUは、第1噴射時期FI1に「最小設定量FIminに噴射時期の補正回数cntFIを乗じて得られる値」を加えた値を、補正後の噴射時期FIとして設定する。即ち、噴射時期FIは、FI1+FImin*cntFIによって算出される。或いは、噴射時期FIは、FI2を基準にして、
FI=FI2−FImin*(FIstp−cntFI)によっても算出される。このようにして算出される噴射時期FIが、ノック抑制噴射時期となる。
次にCPUは、ステップ621に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、ノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングの発生が既に抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ621にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、ノッキング回避制御を継続する必要がある。そのため、CPUはステップ621にて「Yes」と判定し、ステップ622に進む。
ステップ622にてCPUは、点火時期SAの補正が必要であるか否かを判定する。即ち、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAのそれぞれが基準とするオクタン価が近似しているか否かを判定する。それぞれのオクタン価が近似していない場合、CPUは、点火時期SAを補正することによって(両者のオクタン価が近似するように)調整する。
より具体的に説明すると、両者のオクタン価が等しいとき、「点火時期のステップ数SAstpに対する点火時期の補正回数の比」(=cntSA/SAstp)と「噴射時期のステップ数FIstpに対する噴射時期の補正回数の比」(=cntFI/FIstp)とが等しくなっている。
例えば、ノッキング回避制御が開始され最初にステップ622の処理が実行されたとき、補正回数のカウンタcntFI及びcntSAはいずれも「1」である。更に、
FIstp>SAstpであるから、
cntSA/SAstp>cntFI/FIstp
となる。噴射時期FIの補正が繰り返されることによって、噴射時期の補正回数cntFIの値が増加し、その結果cntFI/FIstpの値が大きくなり、cntSA/SAstp以上(即ち、cntSA/SAstp≦cntFI/FIstp)となったとき、CPUは、点火時期SAも補正し、噴射時期FI及び点火時期SAのそれぞれが基準とするオクタン価が近似するように調整する。
即ち、cntSA/SAstp≦cntFI/FIstpであれば、CPUはステップ622において「Yes」と判定し、ステップ623に進んで点火時期SAを補正する。一方、cntSA/SAstp>cntFI/FIstpであれば、CPUはステップ622にて「No」と判定し、ステップ626に進む。この場合、点火時期SAを補正する処理(ステップ623乃至ステップ625)がスキップされる。
ステップ623にてCPUは、点火時期SAに最小設定量SAminを加える補正する。具体的には、CPUは、第1点火時期SA1に「最小設定量SAminに点火時期の補正回数cntSAを乗じて得られる値」を加えた値を、補正後の点火時期SAとして設定する。即ち、点火時期SAは、SA1+SAmin*cntSAによって算出される。或いは、点火時期SAは、SA2を基準にして、
SA=SA2−SAmin*(SAstp−cntSA)によっても算出される。このようにして算出される点火時期SAが、ノック抑制点火時期となる。
更に、CPUは、ステップ624に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、ノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングの発生が既に抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ624にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、ノッキング回避制御を継続する必要がある。そのため、CPUはステップ624にて「Yes」と判定し、ステップ625に進む。ステップ625にてCPUは、(ステップ623にて)点火時期SAの補正を行ったため、点火時期の補正回数のカウンタcntSAに「1」を加える。
次にCPUは、ステップ626に進み、(ステップ620にて)噴射時期FIの補正を行ったため、噴射時期の補正回数のカウンタcntFIに「1」を加える。
次にCPUは、ステップ627に進み、これ以上ノッキング回避制御を続けられるか否かを判定する。具体的には、噴射時期FI及び点火時期SAが補正された結果、それぞれ噴射時期FI2及び点火時期SA2に等しくなっていた場合、CPUは、噴射時期FI及び点火時期SAをこれ以上補正することができない。そのため、CPUは、「ステップ626にて『1』を加算された噴射時期の補正回数のカウンタcntFI」が、噴射時期ステップ数FIstpを超えているか否かを判定する。
補正回数cntFIが噴射時期ステップ数FIstp以下である場合、CPUは更に噴射時期FIを補正することができる。そのため、CPUはステップ627にて「No」と判定してステップ620に進む。
一方、補正回数cntFIが噴射時期ステップ数FIstpより大きい場合、CPUはステップ627にて「Yes」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、たとえノッキングが継続していたとしても、CPUは、ノッキング回避制御を一旦終了する。
ステップ630乃至ステップ637の処理は、点火時期ステップ数SAstpが噴射時期ステップ数FIstp以下であるとき、即ち、点火時期SAが噴射時期FIよりも細かいステップで調整可能であるとき、又は、両ステップ数が等しいときに実行される処理である。この場合、上述したように、CPUは点火時期SAを点火時期の最小設定量SAmin毎に段階的に遅角補正し、それに合わせて(即ち、基準とするオクタン価が点火時期SAと噴射時期FIとで等しくなるように)噴射時期FIを遅角補正する。
ステップ630にてCPUは、ステップ620と同様の処理により、点火時期SAを最小設定量SAminだけ遅角補正する。具体的には、点火時期SAは、SA1+SAmin*cntSAによって算出される。或いは、点火時期SAは、SA2を基準にして、
SA=SA2−SAmin*(SAstp−cntSA)によっても算出される。このようにして算出される点火時期SAが、ノック抑制点火時期となる。
次にCPUは、ステップ631に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、ノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングの発生が既に抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ631にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、ノッキング回避制御を継続する必要がある。そのため、CPUはステップ631にて「Yes」と判定し、ステップ632に進む。
ステップ632にてCPUは、ステップ622と同様の処理により、噴射時期FIの補正が必要であるか否かを判定する。具体的には、CPUは、「噴射時期のステップ数FIstpに対する噴射時期の補正回数の比」(=cntFI/FIstp)と「点火時期のステップ数SAstpに対する点火時期の補正回数の比」(=cntSA/SAstp)との大小関係を比較し、cntFI/FIstp≦cntSA/SAstpとなっていれば、ステップ632にて「Yes」と判定し、ステップ633に進む。この場合、CPUは、噴射時期FIの補正を行う。
一方、cntFI/FIstp>cntSA/SAstpとなっていれば、CPUは、ステップ632にて「No」と判定し、ステップ636に進む。この場合、噴射時期FIを補正する処理(ステップ633乃至ステップ635)がスキップされる。
ステップ633にてCPUは、ステップ623と同様の処理により、噴射時期FIを最小設定量FIminだけ遅角補正する。具体的には、CPUは、噴射時期FI1に「最小設定量FIminに噴射時期の補正回数cntFIを乗じて得られる値」を加えた値を、補正後の噴射時期FIとして設定する。即ち、噴射時期FIは、
FI+FImin*cntFIによって算出される。或いは、噴射時期FIは、FI2を基準にして、FI=FI2−FImin*(FIstp−cntFI)によっても算出される。このようにして算出される噴射時期FIが、ノック抑制噴射時期となる。
次にCPUは、ステップ634に進み、ノッキングセンサ64の検出結果に基づいて、ノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングの発生が既に抑えられている場合、これ以上のノッキング回避制御は必要無いため、CPUはステップ634にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、ノッキングが引き続き発生している場合、CPUは、ノッキング回避制御を継続する必要がある。そのため、CPUはステップ634にて「Yes」と判定し、ステップ635に進む。CPUは、(ステップ633にて)噴射時期FIの補正を行ったため、ステップ635にて噴射時期の補正回数のカウンタcntFIに「1」を加える。
次にCPUは、ステップ636に進み、(ステップ630にて)点火時期SAの補正を行ったため、噴射時期の補正回数のカウンタcntFIに「1」を加える。
CPUは、ステップ637に進み、ステップ627と同様の処理により、これ以上ノッキング回避制御を続けられるか否かを判定する。具体的には、CPUは、「ステップ636にて『1』を加算された点火時期の補正回数のカウンタcntSA」が、点火時期ステップ数SAstpを超えているか否かを判定する。
補正回数cntSAが点火時期ステップ数SAstp以下である場合、CPUは更に点火時期SAを補正することができる。そのため、CPUはステップ637にて「No」と判定してステップ630に進む。
一方、補正回数cntSAが点火時期ステップ数SAstpより大きい場合、CPUはステップ637にて「Yes」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、たとえノッキングが継続していたとしても、CPUは、ノッキング回避制御を一旦終了する。
以上説明したように、第2装置は、
筒内に燃料噴射して形成された混合気を点火栓からの火花により点火する筒内噴射火花点火式内燃機関に適用される機関制御装置であって、
ノッキングの発生を検知するノッキング検知部(ノッキングセンサ64)と、
第1のオクタン価の燃料に対して予め定められた第1噴射時期(噴射時期FI1)及び第1点火時期(点火時期SA1)にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行い、且つ、前記ノッキング検知部により前記ノッキングの発生が検知されたとき(図6のステップ610)、前記第1のオクタン価よりも小さい第2のオクタン価の燃料に対して予め定められた第2噴射時期(噴射時期FI2)及び第2点火時期(点火時期SA2)のそれぞれに基いて定まるノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期にて前記燃料噴射(図6のステップ620及びステップ633)及び前記点火(図6のステップ623及びステップ630)をそれぞれ行う制御部(制御装置70)と、
を備える。
更に、制御部(制御装置70)は、
前記第1噴射時期(噴射時期FI1)と前記第2噴射時期(噴射時期FI2)との間の噴射時期であって前記第1のオクタン価と前記第2のオクタン価との間の特定オクタン価の燃料に対する噴射時期を同第1噴射時期と同第2噴射時期とに基づいて算出するとともに同算出された噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し(図6のステップ620及びステップ633)、
前記第1点火時期(点火時期SA1)と前記第2点火時期(点火時期SA2)との間の点火時期であって前記特定オクタン価の燃料に対する点火時期を同第1点火時期と同第2点火時期とに基づいて算出するとともに同算出された点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する(図6のステップ623及びステップ630)、
ように構成されている。
更に、制御部(制御装置70)は、
前記ノック抑制噴射時期を、前記第1噴射時期と前記第2噴射時期とをオクタン価に関して直線補間(図6のステップ620及びステップ633)することにより取得し、
前記ノック抑制点火時期を、前記第1点火時期と前記第2点火時期とをオクタン価に関して直線補間(図6のステップ623及びステップ630)することにより取得する、
ように構成されている。
更に、制御部(制御装置70)は、噴射時期FI及び点火時期SAの遅角補正を、ノッキングが抑制されるまで繰り返し、その結果として「噴射時期FI及び点火時期SA」は、「第2噴射時期及び第2点火時期」のそれぞれと一致する場合がある。
従って、第2装置は、ノッキングの発生を検知したとき、噴射時期FI及び点火時期SAを段階的に遅角補正することにより、トルクの低下を抑えながらノッキング回避制御を行うように構成されている。
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、制御装置70は、噴射時期ステップ数FIstpと点火時期ステップ数SAstpとが等しい場合、点火時期ステップ数SAstpが噴射時期ステップ数FIstpよりも大きい場合と同じ処理を実行していた(図4のステップ430及び図6のステップ615)。しかし、噴射時期ステップ数FIstpと点火時期ステップ数SAstpとが等しい場合、制御装置は、噴射時期ステップ数FIstpが点火時期ステップ数SAstpよりも大きい場合と同じ処理を実行しても良い。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、制御装置70は、噴射時期FI又は点火時期SAをその最小設定量ずつ補正していた。しかし、制御装置は、噴射時期及び/又は点火時期の補正量はオクタン価に応じて変更しても良い。例えば、オクタン価が低い領域(オクタン価が第2オクタン価に近い場合)では、制御装置は、オクタン価が高い領域と比較して、噴射時期及び/又は点火時期の補正量を大きくしても良い。或いは、制御装置70は、オクタン価が高い領域(オクタン価が第1オクタン価に近い場合)ではオクタン価が低い領域と比較して、噴射時期FI及び/又は点火時期SAの補正量を大きくしても良い。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、制御装置70は、噴射時期FI1及び噴射時期FI2並びに点火時期SA1及び点火時期SA2に関するマッピング情報を保持していた。しかし、制御装置は、オクタン価のそれぞれ異なる噴射時期及び点火時期に関する更に多くのマッピング情報を保持しても良い。この場合、内燃機関にノッキングが発生したとき、制御装置はオクタン価が次第に小さくなる順にてマッピング情報を参照して噴射時期及び点火時期を設定しても良い。更に、制御装置は、オクタン価の近い2つマッピング情報を参照して、その2つのオクタン価の間の特定オクタン価の燃料を使用したときの噴射時期及び点火時期を、例えば、オクタン価に関して直線補間にて算出しても良い。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、制御装置70は、ノッキングの発生を検知する度(つまり、ノッキング回避制御を開始する度)に噴射時期FI及び点火時期SAを最小設定量毎に段階的に補正していた。しかし、制御装置は、ノッキング回避制御によってノッキングの発生が抑制されたときの噴射時期及び点火時期を、そのときの機関の回転速度及び負荷の組合せと共にRAM内又はバックアップRAM内に学習情報として保持しても良い。この場合、機関の運転状態が同様の回転速度及び負荷の組合せにあるとき、再度ノッキングが発生した場合、制御装置は、その学習情報を取得し、噴射時期及び点火時期として設定しても良い。
更に、本発明の実施形態に係る機関制御装置は、
前記第1噴射時期及び前記第1点火時期にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行っている場合に前記ノッキングの発生が検知された場合、
前記第1噴射時期から前記第2噴射時期まで前記噴射時期を設定可能な最小単位の噴射時期変化分(噴射時期の最小設定量)ずつ変化させた場合に要する噴射時期変更回数(噴射時期ステップ数)と、前記第1点火時期から前記第2点火時期まで前記点火時期を設定可能な最小単位の点火時期変化分(点火時期の最小設定量)ずつ変化させた場合に要する点火時期変更回数(点火時期ステップ数)と、を算出し(図4のステップ415及びステップ420)、
前記噴射時期変更回数が前記点火時期変更回数よりも大きいとき、前記第1点火時期から前記第2点火時期に向けて前記最小単位の点火時期変化分だけ変化させた点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する(図4のステップ435)とともに、前記噴射時期変更回数を前記点火時期変更回数で除した値に最も近い整数を前記最小単位の噴射時期変化分に乗じた値だけ前記第1噴射時期から前記第2噴射時期に向けて変化させた噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し(図4のステップ440)、
前記点火時期変更回数が前記噴射時期変更回数よりも大きいとき、前記第1噴射時期から前記第2噴射時期に向けて前記最小単位の噴射時期変化分だけ変化させた噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定する(図4のステップ460)とともに、前記点火時期変更回数を前記噴射時期変更回数で除した値に最も近い整数を前記最小単位の点火時期変化分に乗じた値だけ前記第1点火時期から前記第2点火時期に向けて変化させた点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する(図4のステップ465)、
ように構成されている、と言うこともできる。
更に、本発明の実施形態に係る機関制御装置は、
前記ノック抑制噴射時期及び前記ノック抑制点火時期にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行っている場合に前記ノッキングの発生が検知された場合、
前記噴射時期変更回数が前記点火時期変更回数よりも大きいとき、前記ノック抑制点火時期から前記第2点火時期に向けて前記最小単位の点火時期変化分だけ変化させた点火時期を新たな前記ノック抑制点火時期として設定する(図4のステップ435)とともに、前記噴射時期変更回数を前記点火時期変更回数で除した値に最も近い整数を前記最小単位の噴射時期変化分に乗じた値だけ前記ノック抑制噴射時期から前記第2噴射時期に向けて変化させた噴射時期を新たな前記ノック抑制噴射時期として設定し(図4のステップ450)、
前記点火時期変更回数が前記噴射時期変更回数よりも大きいとき、前記ノック抑制噴射時期から前記第2噴射時期に向けて前記最小単位の噴射時期変化分だけ変化させた噴射時期を新たな前記ノック抑制噴射時期として設定する(図4のステップ460)とともに、前記点火時期変更回数を前記噴射時期変更回数で除した値に最も近い整数を前記最小単位の点火時期変化分に乗じた値だけ前記ノック抑制点火時期から前記第2点火時期に向けて変化させた点火時期を新たな前記ノック抑制点火時期として設定する(図4のステップ465)、
ように構成されていると、言うこともできる。
また、上記機関制御装置は、
前記第1噴射時期及び前記第1点火時期にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行っている場合に前記ノッキングの発生が検知された場合、
前記第1噴射時期から前記第2噴射時期まで前記噴射時期を設定可能な最小単位の噴射時期変化分ずつ変化させた場合に要する噴射時期変更回数と、前記第1点火時期から前記第2点火時期まで前記点火時期を設定可能な最小単位の点火時期変化分ずつ変化させた場合に要する点火時期変更回数と、を算出し(図6のステップ612及びステップ613)、
前記噴射時期変更回数が前記点火時期変更回数よりも大きいとき、前記第1噴射時期から前記第2噴射時期に向けて前記最小単位の噴射時期変化分だけ変化させた噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定する(図6のステップ620)とともに前記第1点火時期又は前記第1点火時期から前記第2点火時期に向けて前記最小単位の点火時期変化分だけ変化させた点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定し(図6のステップ622及びステップ623)、
その後前記ノッキングが検知される毎に各ノッキングが検知された時点の点火時期から前記第2点火時期に向けて前記最小単位の点火時期変化分ずつ変化させた点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定し(図6のステップ623)、
前記噴射時期変更回数を前記点火時期変更回数で除した値の整数部に対応する回数だけ前記点火時期が変更された状態にて前記ノッキングが検知されたとき、その時点の噴射時期から前記第2噴射時期に向けて前記最小単位の噴射時期変化分だけ変化させた噴射時期を新たな前記ノック抑制噴射時期として設定する(図6のステップ620)、
ように構成された機関制御装置であると言うこともできる。
更に、上記機関制御装置は、
前記ノック抑制噴射時期が変更された後、前記ノッキングが検知される毎に各ノッキングが検知された時点の点火時期から前記第2点火時期に向けて前記最小単位の点火時期変化分ずつ変化させた点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定し(図6のステップ623)、
前記噴射時期変更回数を前記点火時期変更回数で除した値の整数部に対応する回数だけ前記点火時期が変更された状態にて前記ノッキングが検知されたとき、その時点の噴射時期から前記第2噴射時期に向けて前記最小単位の噴射時期変化分だけ変化させた噴射時期を新たな前記ノック抑制噴射時期として設定する(図6のステップ620)、
ように構成されていると、言うこともできる。
10…内燃機関、20…シリンダブロック部、30…シリンダヘッド部、40…吸気通路、50…排気通路、64…ノッキングセンサ、70…制御装置。

Claims (4)

  1. 筒内に燃料噴射して形成された混合気を点火栓からの火花により点火する筒内噴射火花点火式内燃機関に適用される機関制御装置であって、
    ノッキングの発生を検知するノッキング検知部と、
    第1のオクタン価の燃料に対して予め定められた第1噴射時期及び第1点火時期にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行い、且つ、前記ノッキング検知部により前記ノッキングの発生が検知されたとき前記第1のオクタン価よりも小さい第2のオクタン価の燃料に対して予め定められた第2噴射時期及び第2点火時期のそれぞれに基いて定まるノック抑制噴射時期及びノック抑制点火時期にて前記燃料噴射及び前記点火をそれぞれ行う制御部と、
    を備える機関制御装置。
  2. 請求項1に記載の機関制御装置において、
    前記制御部は、
    前記第1噴射時期と前記第2噴射時期との間の噴射時期であって前記第1のオクタン価と前記第2のオクタン価との間の特定オクタン価の燃料に対する噴射時期を同第1噴射時期と同第2噴射時期とに基づいて算出するとともに同算出された噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し、
    前記第1点火時期と前記第2点火時期との間の点火時期であって前記特定オクタン価の燃料に対する点火時期を同第1点火時期と同第2点火時期とに基づいて算出するとともに同算出された点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する、
    ように構成された機関制御装置。
  3. 請求項2に記載の機関制御装置において、
    前記制御部は、
    前記ノック抑制噴射時期を、前記第1噴射時期と前記第2噴射時期とをオクタン価に関して直線補間することにより取得し、
    前記ノック抑制点火時期を、前記第1点火時期と前記第2点火時期とをオクタン価に関して直線補間することにより取得する、
    ように構成された機関制御装置。
  4. 請求項1に記載の機関制御装置において、
    前記制御部は、
    前記第2噴射時期を前記ノック抑制噴射時期として設定し、
    前記第2点火時期を前記ノック抑制点火時期として設定する、
    ように構成された機関制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113915039A (zh) * 2021-10-11 2022-01-11 宁波吉利罗佑发动机零部件有限公司 爆震自适应方法及系统
JP7585770B2 (ja) 2020-12-22 2024-11-19 マツダ株式会社 エンジンの制御装置

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