<波動光学計算による光学性能予測>
従来、視差バリア方式の裸眼立体ディスプレイや2画像表示装置では、配光特性の光学設計は幾何光学計算で行われてきた。
図1には、液晶表示パネルの前面側(画像視認側)に液晶シャッタパネルを備えた裸眼立体表示装置の、左右方向の配光特性の測定値と幾何光学計算による計算結果を示しており、右眼用画像と左眼用画像に、それぞれ白画像と黒画像を表示した場合の配光特性について示している。
ここで、液晶表示パネルの画素のピッチ(配設間隔)は0.096mm、液晶シャッタパネルの開口部のピッチは0.192mmであり、液晶シャッタパネルの開口部と画素間距離は0.62mmである。
また、液晶パネルの画素発光部の幅は0.051mmであり、左眼用画素の中心は左側−0.048mmにあり、右眼用画素の中心は右側0.048mmにある。液晶シャッタパネルの開口幅は0.062mmであり、液晶パネルの右眼用画素と左眼用画素のほぼ中央に位置している。部材の屈折率は1.5である。
図1においては、横軸に左右角度(度)を、縦軸に相対輝度(a.u.:任意単位)を示しており、測定値と幾何光学計算結果とは概ね一致している。輝度プロファイルの形状は三角形状であり、輝度のピークは6.5度方向にある。視距離280mmでの輝度ピークの左右方向位置は、平均的な眼間距離65mmの半分に近く、妥当な値となっている。
ここで、図2に輝度プロファイルの裾野を詳細に示す。図2において、幾何光学計算では、−1度方向で輝度0になるのに対し、測定値では裾野を引いており、漏れ光が存在している。この不一致の原因としては、幾何光学計算では考慮していない部材の光散乱や回折の影響があるものと推定される。しかし、どの程度、回折の影響があるかは明らかではなかった。
このような状況に鑑み、表示パネルと視差バリアパネルを備える表示装置の配光特性に及ぼす回折の影響を調べるために、新たに波動光学計算モデルを作成した。計算の基本原理モデルを図3に示す。
図3においては、表示パネル10の前面側主面上に視差バリアパネル20が登載され、表示パネル10の前面側主面の表示パネル遮光部25に設けた2つの開口部が、表示パネル10の裏面側に設けたバックライト(図示せず)からのバックライト光BLを透過させることで右方向画素発光部11aおよび左方向画素発光部11bとなり、これらの発光部を透過したバックライト光BLが、視差バリアパネル20の透明ガラス基板24内を通り、視差バリアパネル20の前面側主面のバリア遮光部22に設けたバリア透過部21を介して観察面3で観察される構成となっている。
新たに考案した波動光学計算モデルは、キルヒホッフの回折理論に従い、表示パネル10の画素である右方向画素発光部11aおよび左方向画素発光部11bの微小領域から円柱面状に広がる波が視差バリアパネル20のバリア透過部21の各微小領域から2次的な要素波を発生させ、それらの要素波が観察面3の一点において干渉するという2次元モデルである。ここで、波長は550nmとした。
この波動光学計算モデルによる計算結果を、図1中に波動光学計算として実線で示す。図1に示すように、波動光学計算から得られた輝度プロファイルも、測定値や幾何光学計算結果と同様の三角形状をしており、ピークとなる角度も一致している。
輝度プロファイルの裾野を詳細に示す図2においても、実線で示す波動光学計算の結果は、測定値と同様に裾野を引いており、回折の影響が再現されていることが判る。
以上より、境界部近傍での漏れ光の挙動を解明するためには、幾何光学計算では不十分であり、新たに考案した波動光学計算モデルに基づく波動光学計算が有効であることが判った。以下においては、この波動光学計算を用いて本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<装置構成>
図4には、本発明に係る実施の形態1の観察方向により異なる画像を表示する2画像ディスプレイ100の模式的な斜視図を示す。なお、表示パネルは、有機ELパネルや、プラズマディスプレイパネル、液晶パネルでも良いが、以下では液晶パネルを例に示している。
図4に示すように、マトリクス状に複数の画素を配置した表示パネル10の前面側(画像視認側)主面上に視差バリア12が配設されている。また、表示パネル10の裏面側にはバックライト30が設けられている。
視差バリア12は、表示パネル10の前面側主面上に設けたバリア遮光部122の複数の開口部が、バリア透過部121となっている。バリア透過部121は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が並列するように配列されている。そして、それぞれの長辺に沿ってバリア半透過部123が設けられている。なお、視差バリア12の構成は図5を用いてさらに説明する。
また、表示パネル10においては、液晶層114上に設けた遮光部115の複数の開口部が、画素発光部111となっている。画素発光部111は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が並列するように配列されている。そして、右方向用画素発光部111aと、左方向用画素発光部111bとが交互に配設される構成となっている。なお、表示パネル10の構成は図5を用いてさらに説明する。
なお、図4は、バックライト、表示パネル10の画素発光部111および視差バリア12の開口121の位置関係、半透過部123を設けた位置を説明するための概略図であり、表示パネル10に設ける透明電極や透明ガラス基板等を省略した図となっている。表示パネル10の画素発光部111と、視差バリア12の開口121は所定の距離を離して配置すれば良く、空気やガラスなどの媒体が間に存在していても良い。
図5は、図4における画素発光部111の配列方向に沿った断面図である。図5に示すように、表示パネル10は液晶パネルであり、2枚の透明ガラス基板14および15に挟まれた液晶層114と、透明ガラス基板14の裏面側(光源側)主面上に設けた裏面偏光板116と、透明ガラス基板15の前面側主面上に設けた前面偏光板126とを備えている。
液晶層114の裏面側主面上には、画素ごとに分割された透明電極112が配設され、液晶層114の前面側主面上には、全面に渡って一体で設けられた対向透明電極113が配設されており、両電極間で画素ごとに電界が印加される構成となっている。
対向透明電極113上に設けられた遮光部115の開口部が画素発光部111を形成している。なお、遮光部115は、隣り合う透明電極112の境界部上を覆うように設けられ、画素境界からの漏れ光を防いでいる。
視差バリア12は透明ガラス基板15の前面側主面上に配設され、エネルギー透過率4〜64%の半透過膜122bが間隔を開けて配設され、その上に、半透過膜122bよりも幅の狭いエネルギー透過率0%の遮光膜122aが配設されることで、それぞれバリア半透過部123およびバリア遮光部122が形成され、隣り合う半透過膜122bの間がバリア透過部121を形成している。なお、前面偏光板126は視差バリア12を覆うように形成されている。
ここで、視差バリア12のバリア遮光部122は、液晶パネル10の右方向用画素発光部111aと左方向用画素発光部111bとの組の配設幅に等しいピッチで設けられている。
なお、バリア透過部121上に延在するバリア半透過部123の幅W1は0.5μm〜10μmで、透過率は振幅透過率20〜80%、エネルギー透過率で4〜64%である。
視差バリア12のバリア半透過部123は、屈折率がバリア透過部121と異なり、バリア透過部121との間に0から半波長(λ/2)のΔndの付加的位相差が生じるように構成しても良い。ここで、付加的位相差Δndは、半透過膜121と周辺部材との間の屈折率の差Δnと半透過膜の厚さdとの組み合わせにより設定することができる。
なお、バリア半透過部123を付加的位相差が生じるように構成することにより、左右の2つの画像の境界方向の輝度勾配を急峻にする効果が得られるが、これについては実施の形態3においてさらに説明する。
<波動光学計算による構造の最適化>
以上説明した2画像ディスプレイ100においては、左右30度方向にそれぞれ異なる画像を表示するものとし、その配光特性についての波動光学計算結果と測定値とを図6に示す。
ここで、液晶パネル10の画素のピッチW2は0.064mm、視差バリア12の開口部のピッチW3は0.128mmであり、視差バリア12の開口部と液晶パネル10の画素間距離Tは0.09mmとする。また、液晶パネル10から観察面31までの距離を50mmとする。
また、液晶パネルの画素発光部111の幅W4は0.032mmであり、左眼用画素の中心は左−0.032mmに右眼用画素の中心は右0.032mmにあり、視差バリア12の開口幅W5は0.032mmであり、視差バリア12の開口部は液晶パネル10の右眼用画素と左眼用画素の組のほぼ中央の上方に設けられている。また、遮光部115の幅W6は0.032mmである。
図6においては、横軸に左右角度(度)を、縦軸に相対輝度を示しており、波動光学計算で得られた右方向用画素発光部の光の計算値を計算R、測定値を測定Rとし、左方向用画素発光部の光の計算値を計算L、測定値を測定Lとし、波動光学計算に用いたバックライト30の配光特性も計算値を計算BL、測定値を測定BLとして示している。ここでは、液晶パネル10のバックライト光BLの実測された配光特性に従った平行光線が液晶パネル10の発光部に一様に入射したものとして計算している。
図6に示すように、実測された輝度プロファイルと波動光学計算から得られた輝度プロファイルは、概ね一致していることが判る。
また、図7には、縦軸を対数表示として低輝度領域(1×10−1〜1×10−4)のプロファイル示すが、低輝度領域においても実測された輝度プロファイルと波動光学計算から得られた輝度プロファイルとは、概ね一致していることが判る。
なお、左右30度よりも角度の高い方向で、測定値に比べて波動光学計算結果の輝度が低いのは、実際の装置では液晶パネル10の発光画素と視差バリア12の開口部とが横方向に複数並んでいるのに対し、波動光学計算では単一の発光画素と視差バリアの開口部のみを考慮して計算しているためである。
従って、左右30度よりも角度の高い方向の波動光学計算の結果には、他の視差バリアの開口部を通過する光が重畳されることを考慮すれば、実測値と波動光学計算の結果は良く一致することとなる。
このように、波動光学計算から得られた輝度プロファイルは実測の境界領域の輝度プロファイルを良く再現しており、境界部ならびに低輝度領域の輝度プロファイルの解析には本波動光学計算が有効であることが判る。
一般的に2画像ディスプレイでは、以下の2つの特性が重要である。第一は、2つの画像が混在して見える境界領域をなるべく狭くすることであり、第二は、観察方向の画像に暗い画像を表示した場合にも他方向への画像の映り込みをなくすため、漏れ光の本来の表示画像のピーク輝度に対する比率を1/1000以下程度に抑制することである。
図7に示されるように、表示光のピーク付近である左右30度方向でも他方向画像の回折によるリーク光輝度はピーク輝度の1/1000程度あり、リーク光輝度の抑制を図るためには回折を抑制することが必要であることが判明した。
図8には、波動光学計算による本発明の実施の形態1の2画像ディスプレイ100の配光特性の計算結果を示す。図8は、視差バリア12の開口部の幅を32.2μmとし。バリア透過部121の左右にエネルギー透過率16%のバリア半透過部123を設けるとして、バリア半透過部123の幅を種々変えて計算した輝度プロファイルを示している。
図8においては、横軸に左右角度(度)を、縦軸に漏れ光輝度を示しており、バリア半透過部123の幅が0の場合、0.5μmの場合、1.0μmの場合、2.5μmの場合、5.0μmの場合、7.5μmの場合および10μmの場合の輝度プロファイルをそれぞれ示している。
図8より、実線で示すバリア半透過部123がない場合に比べ、バリア半透過部123の幅が0.5μm以上あれば、左右30方向の漏れ光強度は半減していることが判る。
また、図9には左右の境界部の拡大図を示す。図9より、左右の境界部の輝度勾配はバリア半透過部123の幅が大きくなるにつれて急峻になり、幅が5μmで最大なる。バリア半透過部123の幅がさらに大きくなると、最大輝度勾配は次第に低下し、同時に最大輝度勾配の発生する角度が他画像の表示方向にシフトし、正面方向の輝度勾配は低下することが判る。
このため、バリア半透過部123の幅が5μmよりも広い場合に、正面方向での輝度勾配を大きくするためには、バリア透過部121の幅をバリア半透過部123の幅程度に縮小することが必要になる。
次に、図10にバリア半透過部123の幅を5μmに固定し、エネルギー透過率を種々変えた場合の波動光学計算による輝度プロファイルの計算結果を示す。
図10においては、横軸に左右角度(度)を、縦軸に漏れ光輝度を示しており、バリア半透過部123のエネルギー透過率が0の場合、0.04(4%)の場合、0.16(16%)の場合、0.36(36%)の場合および0.64(64%)の場合の輝度プロファイルをそれぞれ示している。
図10より、エネルギー透過率が16%と36%の間付近で左右30度方向の漏れ光輝度は最小になり、また、境界方向の最大輝度勾配は16%付近で最も急峻になっていることが判る。
以上のように、実施の形態1の2画像ディスプレイ100においては視差バリア12にバリア半透過部123を設け、バリア半透過部123としては、幅0.5μm以上で、エネルギー透過率4〜64%とすることで、左右30度方向の漏れ光輝度を抑制でき、かつ、左右の2つの画像の境界方向の輝度勾配を急峻にすることができる。このため、輝度の変化やクロストークによる2重像の発生する境界領域を狭めることができ、観察者の観察位置が左右に動いた場合でも、広い範囲で輝度の変化やクロストークによる2重像の発生のない良好な画像を視認できる。なお、バリア半透過部123は、幅2.5〜5μm、エネルギー透過率16〜36%とした場合が最も好適である。
<バリア半透過部の製造方法1>
次に、図11を用いてバリア半透過部の製造方法について説明する。まず、図11の(a)部に示すように、透明ガラス基板15の主面上方にスパッタリングマスク151を配置する。そして、スパッタリングマスク151の上方から、バリア半透過部123の材料となる酸化クロムやグラファイトをスパッタリング法により飛ばして透明ガラス基板15の主面上に付着させることで半透過膜122bを形成する。半透過膜122bのエネルギー透過率は4〜64%である。なお、エネルギー透過率の制御は半透過膜122bの膜厚を制御することによりなされる。
ここで、スパッタリングマスク151は、透明ガラス基板15のバリア透過部121となる部分の上がマスクされ、半透過膜122bを形成する部分が開口部となったパターンを有している。
次に、スパッタリングマスク151を除去した後、図11の(b)部に示すように、透明ガラス基板15の主面上方にスパッタリングマスク152を形成する。そして、スパッタリングマスク152の上方から、バリア遮光部122の材料となる酸化クロムをスパッタリング法により飛ばして半透過膜122b上に付着させることでエネルギー透過率0%の遮光膜122aを形成する。ここで、スパッタリングマスク152は、遮光膜122aを形成する部分のみが開口部となり、他の部分がマスクされたパターンを有している。
以上の工程を経て、バリア半透過部123およびバリア遮光部122が形成され、隣り合うバリア半透過部123の間がバリア透過部121となる。なお、ここで、遮光膜122aと半透過膜122bの成膜方法として、マスクスパッタ法を例に説明したが、これに限るものではなく、パッド印刷法などにより、形成することも可能である。
<バリア半透過部の製造方法2>
図11を用いて説明したバリア半透過部の製造方法では、バリア半透過部123の形成のために2枚のスパッタリングマスクを用いる例を示したが、この場合は、スパッタリングマスクの位置合わせに精度が要求される。
そこで、バリア半透過部の製造方法の他の例として、1枚のスパッタリングマスクでバリア半透過部123を形成する方法について図12を用いて説明する。
まず、図12の(a)部に示すように、透明ガラス基板15の主面上にスパッタリングマスク153を形成する。そして、スパッタリングマスク153の斜め上方から、バリア半透過部123の材料となる酸化クロムをスパッタリング法により飛ばして透明ガラス基板15の主面上に付着させることで半透過膜122cを形成する。半透過膜122cのエネルギー透過率は4〜64%である。なお、エネルギー透過率の制御は半透過膜122cの膜厚の制御によりなされる。
この場合、半透過膜122cは、スパッタリング材の飛来方向においてスパッタリングマスク153の端縁部の下方まで延在することとなる。一方で、スパッタリング材の飛来方向とは反対の方向においては半透過膜122cは、スパッタリングマスク153の端縁部下方には延在しない。
次に、スパッタリングマスク153の反対側の斜め上方から、バリア半透過部123の材料となる酸化クロムをスパッタリング法により飛ばして透明ガラス基板15の主面上に付着させることで半透過膜122dを形成する。半透過膜122dのエネルギー透過率は半透過膜122cと同じ4〜64%である。なお、エネルギー透過率の制御は半透過膜122dの膜厚の制御によりなされる。
この場合、半透過膜122dは半透過膜122c上に形成されるとともに、スパッタリング材の飛来方向においてスパッタリングマスク153の端縁部の下方まで延在することとなる。一方で、スパッタリング材の飛来方向とは反対の方向においては半透過膜122dは、スパッタリングマスク153の端縁部下方には延在しない。
この結果、半透過膜122cと半透過膜122dとが重なった中央部分と、半透過膜122cあるいは半透過膜122dのみが形成された端縁部とを有することとなる。この、中央部がバリア遮光部122となり、端縁部がバリア半透過部123となる。
このように、方向を変えた斜め方向からの2回のスパッタリングにより、1枚のスパッタリングマスクで、バリア遮光部122およびバリア半透過部123を形成できる。
この場合、スパッタリングマスク153は共通であるので、位置合わせ精度の問題が解消されるとともに、マスクの種類を減らせて製造コストを削減することができる。
ただし、バリア半透過部123の膜厚は遮光部122の膜厚の半分にしかならないという制約が生じるため、遮光部122の透過率はバリア半透過部123の2乗にしかならない。例えば、バリア半透過部123の透過率が0.1(10%)の場合、遮光部122の透過率は0.01(1%)となる。
<バリア半透過部の製造方法3>
以上説明したバリア半透過部の製造方法は、ストライプ状のバリア透過部121の長辺に沿ってバリア半透過部123が設けられた構成についての製造方法であり、バリア半透過部123の形状もストライプ状であった。
しかし、図13に示すように、微細開口部とバリア遮光部122とが交互に配置されたバリア半透過部124を採用しても良い。
図13において、バリア遮光部122を形成する遮光膜において、バリア透過部121の配列方向を左右方向とした場合に、それと直交する上下方向に配列される複数の微細開口部125をバリア透過部121の2つの長辺に沿って形成する。これにより、微細開口部125が凹部となりバリア遮光部122が突部となった構造が交互に繰り返すバリア半透過部124が得られる。
このとき、微細開口部125のピッチPが充分小さければ、半透過部の実効的なエネルギー透過率を遮光面積と開口面積の平均値に調整できる。
ここで、図14を用いて、必要なピッチPの大きさについて説明する。図14に示すように、表示パネル10の画素点Gから出た光がZ軸方向(鉛直方向)に進んで視差バリア12の地点Bに到達するモデルを考えると、鉛直方向に対して直行するX軸方向にピッチPだけずれた点B’に到達する場合の光路差dLは、液晶表示パネル10の画素点Gと視差バリア12間の距離をT、光路の屈折率をnとした場合、以下の数式(1)で近似的に表される。
dL=4×P×P/T・・・(1)
ここで、バリア半透過部124が均一な透過率の領域とみなせるためには、位相差が少ないこと、すなわち、この光路差dLが光の波長よりも充分小さい(例えば1/10程度)ことが必要である。これを満たすには、以下の数式(2)を満たす必要がある。
P<2×(波長/屈折率/10×T)0.5・・・(2)
上式において、例えば波長を550nm(0.55μm)とし、T=80μm、n=1.5を代入とすると、以下の数式(3)となる。
P<2×(0.55/1.5/10×80)0.5=3.4μm・・・(3)
すなわち、微細開口部125のピッチPは2μm以下であれば、バリア半透過部124が実効的に透過率の均一な半透過部として機能することとなる。同様に液晶表示パネル10の画素点Gと視差バリア12間の距離Tが720μmと厚い場合には、微細開口部125のピッチPは10μm以下であれば、バリア半透過部124が実効的に透過率の均一な半透過部として機能することとなる。
このようなバリア半透過部124であれば、透明ガラス基板15上に半透過膜を形成する必要がなくなり、バリア遮光部122を形成するだけで済むので、半透過膜の厚さやマスクの位置合わせに高い精度が不要となり、製造工程を簡略化できる。
なお、微細開口部125のピッチPは上記数式(1)〜(3)を満たせば良く、均一である必要はなくランダムであっても良い。さらに、開口部はお互いに孤立した水玉模様状でも良い。
<実施の形態2>
<装置構成>
図15には、本発明に係る実施の形態2の裸眼立体ディスプレイ200の断面構成を示す。図15に示すように、裸眼立体ディスプレイ200は、表示パネル210と、表示パネル210の前面側(画像視認側)主面上に配置された視差バリアシャッタパネル220と、表示パネル210の裏面側(光源側)に配設したバックライト23を備えている。
表示パネル210はマトリクス型表示パネルであるが、表示パネル210は、有機ELパネルや、プラズマディスプレイパネル、液晶パネルでも良いが、以下では液晶パネルを例に示している。
図15に示すように、表示パネル210は液晶パネルであり、2枚の透明ガラス基板204と透明ガラス基板205とに挟まれた液晶層214と、透明ガラス基板204の裏面側(光源側)主面上に設けた裏面偏光板216と、透明ガラス基板205の前面側主面上に設けた中間偏光板217とを備えている。
また、液晶層214の裏面側主面上には、全面に渡って一体で設けられた対向透明電極215が配設され、液晶層114の前面側主面上には、画素ごとに分割されたサブ画素透明電極212が配設されており、両電極間で画素ごとに電界が印加される構成となっている。
サブ画素透明電極212は、遮光壁218によって分割されており、サブ画素透明電極212上にはカラーフィルタ219が設けられているが、カラーフィルタ219も遮光壁218によって分割されている。
遮光壁218によって分割されたサブ画素透明電極212に対応して、横方向(水平方向)にサブ画素2110〜2114が形成される。そして、例えば、隣り合うサブ画素2111とサブ画素2112の2つのサブ画素を組み合わせることで、右方向と左方向に異なる視差画像をそれぞれ表示するサブ画素ペア241を構成している。また、隣り合うサブ画素2113とサブ画素2114の2つのサブ画素を組み合わせることで、右方向と左方向に異なる視差画像をそれぞれ表示するサブ画素ペア242を構成している。
視差バリアシャッタパネル220は、透明ガラス基板222(第1透明基板)と透明ガラス基板226(第2透明基板)とに挟まれた液晶層224と、透明ガラス基板222の前面側主面上に設けた表示面偏光板228とを備えている。なお、透明ガラス基板226の表示パネル210側の主面にも偏光板を備えるが、ここでは中間偏光板217で兼用するものとして省略している。
ここで、液晶層224のモードはツイストネマテック(TN)、スーパーツイストネマテック(STN)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリ−コンペンセイティドベンド(OCB)などが利用可能である。
また、液晶層224の裏面側主面上には、全面に渡って一体で設けられた透明電極225(第2透明電極)が配設され、液晶層214の前面側主面上には、透明電極223が配設されている。
各サブ画素ペアの配設幅に対応する長さで基準視差バリアピッチが規定され、透明電極223は、基準視差バリアピッチ内で、複数の電気的に絶縁された状態に分割されている。図15では8分割した例を示しているが、これに限定されるものではなく、分割数はさらに多くても良い。この分割された透明電極223のそれぞれがサブ開口部301となり、このサブ開口部301の幅がサブ開口ピッチとなる。
ここで、サブ画素ペア241を構成するサブ画素2111と2112の中間にある遮光壁218の中央から出て、対応する基準視差バリアピッチ内の中央点を通過した仮想の光LOが、本表示装置の正面前方に設定した設計視認点Qに集まるように、基準視差バリアピッチが設定されている。
このように構成された視差バリアシャッタパネル220では、透明電極223と透明電極225を用いて液晶層224に電界をかけることにより、複数のサブ開口部301を交互に光透過状態と遮光状態ならびに半透過状態に切り替えることができる。
図16を用いて、視差バリアシャッタパネル210の動作状態の例を説明する。なお、図16は、図15に示した裸眼立体ディスプレイ200をさらに模式的に示している。
図16においては、基準視差バリアピッチ内の8つのサブ開口部301のうち4つを透過状態として透過部321を形成し、その両側の2つを半透過状態にして半透過部323を形成し、残りの2つを遮光状態にして遮光部322を形成するように、それぞれの透明電極223を用いて液晶層224に電界をかけることで液晶を制御している。なお、表示パネル210における液晶層214での発光部を表示画素発光部211として示している。なお、液晶層214上には図示されない遮光部が間隔を開けて配設されており、当該遮光部からは光は発せられないので、表示画素発光部211は飛び飛びに存在している。
ここで、半透過部323の液晶層の配向状態による複屈折に加え、屈折率の変化Δnと液晶層の厚さdを適宜選べば、半透過部323の透過率を下げるとともに、透過部321を通過した光との間の位相差としてΔnd分の位相差(付加的位相差)を生じさせることもできる。
次に、図17〜図19を用いて視差バリアシャッタパネル220のサブ開口部301の動作パターンの例を説明する。
図17〜図19においては、複数のサブ開口部301の一部として12個のサブ開口部301の配列を示しており、図に向かって左側から順に1〜8までの符号を付しており、8番目のサブ開口部301の右隣のサブ開口部301からは符号が繰り返される。
図17は、全てのサブ開口部301が透過状態となっているパターンである。図18の(a)部には、パターン1として、基準視差バリアピッチ内の8個のサブ開口部301のうち連続した1〜4の4つを光透過状態とし、5と8を半透過状態に、6と7を遮光状態にすることにより左右に透過部321を備えたパターンを形成している。
また、図18の(b)部には、パターン2として、7と8を遮光状態とし、1と6を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図18の(c)部には、パターン3として、8と1を遮光状態とし、7と2を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図18の(d)部には、パターン4として、1と2を遮光状態とし、8と3を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図19の(a)部には、パターン5として、2と3を遮光状態とし、1と4を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図19の(b)部には、パターン6として、3と4を遮光状態とし、5と2を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図19の(c)部には、パターン7として、4と5を遮光状態とし、6と3を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
また、図19の(d)部には、パターン8として、5と6を遮光状態とし、4と7を半透過状態とし、残りを透過状態としたパターンを示している。
以上説明したパターン2〜8のように、光透過状態と半透過状態にするサブ開口部301を選択することにより透過部321の位置をサブ開口部301のピッチで移動させることが可能になる。
<一般的な裸眼立体ディスプレイにおける配光特性>
視差バリアを用いた一般的な裸眼立体ディスプレイにおいて、右眼用画像と左眼用画像に、それぞれ白画像と黒画像を表示した場合の配光特性についての幾何光学計算結果と波動光学計算結果を図20に示す。
ここで、液晶パネルの画素のピッチは0.069mm、液晶シャッタパネルの開口部のピッチは0.138mmであり、液晶シャッタパネルの開口部と画素間距離は1.224mmである。
また、液晶パネルの左眼用画素の中心は左−0.034mmにあり、右眼用画素の中心は右0.034mmにあり、液晶シャッタパネルの開口幅は0.069mmであり、当該開口部は液晶パネルの右眼用画素と左眼用画素の組のほぼ中央の上方に位置している。
図20においては、表示パネルの画素の開口幅を種々変えて、配光特性を計算した結果を示しており、透明ガラス部材の屈折率は1.5であり、波動光学計算の際の波長は550nmとしている。なお、計算結果は液晶シャッタパネルから設計観察距離750mm離れた位置にあるスクリーン上での相対輝度分布である。図中、幾何光学計算結果は直線で現れており、波動光学計算結果は曲線で現れている。
図20では、横軸にスクリーン上での観察位置(mm)を、縦軸に相対輝度を示しており、表示パネルの画素の開口幅が34.2μmの場合、27.3μmの場合、20.5μmの場合、13.7μmの場合および6.8μmの場合のそれぞれについて、幾何光学計算結果と波動光学計算結果を示している。
図20より、幾何光学計算結果では、表示パネルの画素の開口幅が小さくなるにつれて輝度ピークは低下して輝度の平坦部は広くなり、輝度均一な視認域が拡大すると期待される。さらに、境界部分の左側の他方向画像表示域への光の漏れ域は狭くなり、境界領域が縮小すると期待される。
しかし、波動光学計算の結果は、これとは異なっている。表示パネルの画素の開口幅が小さくなるにつれて輝度ピークは低下するが、複数のピークが表れるため大きな分布が生じており、輝度ピーク域の幅も幾何光学計算結果よりも狭い。
ここで、図21には、図20における輝度プロファイルをピーク輝度で規格化したプロファイルを示しており、縦軸は規格化相対輝度である。
図21より、境界部分の左側の他方向画像表示域への光の漏れる範囲は、画素の開口幅を6.8μmに狭くしても幾何光学計算から期待されるほどには違わないことが判明した。
図22に、波動光学計算と幾何光学計算の差が構造寸法によりどのように異なるかを調べた計算結果を示す。図20で計算したように、液晶パネルの画素のピッチは0.069mm、液晶シャッタパネルの開口部のピッチは0.138mm、液晶シャッタパネルの開口部と画素間距離は1.224mmであり、液晶パネルの左眼用画素の中心は左−0.034mmにあり、右眼用画素の中心は右0.034mmにあり、液晶シャッタパネルの開口幅は0.069mmとし、当該開口部は液晶パネルの右眼用画素と左眼用画素の組のほぼ中央の上方に位置するものとし、表示パネルの画素の開口幅が34.2μmの場合を基準構造とする。図22では、この基準構造を相似的に1/2倍、2倍、4倍に変えた場合の計算結果を示す。
図22においては、透明ガラス部材の屈折率は1.5であり、光の波長は550nmとしている。なお、計算結果は液晶シャッタパネルから設計観察距離750mm離れた位置にあるスクリーン上での相対輝度分布(a.u.)である。図中、幾何光学計算結果は直線で現れており、波動光学計算結果は曲線で現れている。
図22に示すように、相似的に4倍拡大した構造では、波動光学計算の結果は、実線の直線で示す幾何光学計算の結果と比べ、0mm点での輝度やピークの平坦度に関して大きな差はないが、相似的に寸法が小さくなるにつれて、波動光学計算の結果と幾何光学計算の結果の違いが大きくなることが判る。相似的に2倍に拡大した構造では、波動光学計算の結果は、ピーク輝度の変動が10%を超え、幾何光学計算で輝度が0となる−10mm地点での輝度がピークの10%を超えている。従って、相似的に4倍拡大した構造では幾何光学計算と差がなくなり、波動光学計算を用いるメリットはなくなる。換言すれば、相似的な寸法が4倍より小さい場合は波動光学計算を用いるメリットがあると言える。具体的な寸法で言えば、波動光学の原理からより影響の大きい光路後方にある液晶シャッタパネル開口幅0.069mmの2倍である0.138mmから鑑みて、観察者に近い方の開口幅が0.138mmよりも小さい場合には、波動光学計算を用いた輝度プロファイルの調整が有効である。
そこで、上記に鑑み、回折を考慮した輝度プロファイルの調整方法について以下に説明する。
<本発明に係る裸眼立体ディスプレイにおける配光特性>
次に、図23を用いて本発明に係る実施の形態2の裸眼立体ディスプレイ200における配光特性の波動光学計算結果について説明する。
以下では、サブ開口部301のピッチは基準視差バリアピッチを16分割(図15,16では8等分の場合を示した)した場合について計算を行った。液晶表示パネル210の画素のピッチW12は0.069mm、液晶シャッタパネル220の透過部321のピッチは0.138mmであり、液晶シャッタパネル220の透過部321と液晶パネル210の画素との距離DBは1.224mmである。
液晶パネル210の表示画素発光部211の幅は20.5μmであり、左眼用画素の中心は左端−0.034mmに右眼用画素の中心は右0.034mmにある。
液晶シャッタパネル220の透過部321の幅W13(バリア開口幅)は8個のサブ開口部301の幅の和である0.069mm(68.5μm)であり、その両側に1サブ開口部分の8.5μmの半透過部323が存在し、液晶パネル210の右眼用画素と左眼用画素の組のほぼ中央の上方に位置している。
図23においては、半透過部323の透過率と付加的位相を種々変えて、配光特性を計算した結果を示しており、透明ガラス部材の屈折率は1.5であり、波動光学計算の際の波長は550nmとしている。そして、右眼用画像と左眼用画像に、それぞれ白画像と黒画像を表示した場合の配光特性を示しており、計算結果は液晶シャッタパネル220から設計観察距離DS=750mm離れた位置にあるスクリーン上での相対輝度分布である。
図23では、横軸にスクリーン上での観察位置(mm)を、縦軸に相対輝度を示しており、図中、半透過部323(幅8.5μm)を通過する光の位相が透過部321(幅68.5μm)を通過する場合に比べ付加的位相差として1/4波長分長い距離を進むものとして、エネルギー透過率を6%、25%、56%とした場合の計算結果を各種鎖線で示している。また、半透過部323がなく、その分透過部321が広い場合(バリア開口幅が85.6μm)の場合を太い鎖線で示し、半透過部323がなく透過部321は68.5μmのままの場合のプロファイルを実線で示している。
図23において、実線で示す半透過部323がない場合に比べて、半透過部323がある場合は何れの場合も輝度勾配が急峻になっており、−10mm地点での漏れ光が抑制できていることが判る。ただし、透過率が56%の場合は−30mm地点での漏れ光が増加しており、この条件の場合は、透過率25%程度が好適であることが判る。
また、図24には、半透過部323のエネルギー透過率25%とした場合の半透過部323を通過する際に生じる付加的位相差による影響を示す計算結果を、付加的位相差がない場合(0の場合)とともに示している。
図24では、横軸にスクリーン上での観察位置(mm)を、縦軸に相対輝度を示しており、透過部321を通過する場合に比べて1/4波長分多く進む場合(−λ/4)、1/2波長分多く進む場合(−λ/2)、3/4波長分多く進む場合(−λ3/4)および位相差0の場合を示している。
図24より、透過部321を通過する場合(位相差0の場合)に比べてλ/4分進む場合には、境界部の勾配が急峻でしかも20度方向の漏れ光の輝度も低いことが判る。
以上のように、実施の形態2の裸眼立体ディスプレイ200においては液晶シャッタパネル220に半透過部323を設け、半透過部323の透過率を25%程度とし、また、透過部321を通過する場合に比べてλ/4分進むように半透過部323を構成することで、左右20度方向の漏れ光輝度を抑制でき、かつ、境界方向の輝度勾配を急峻にすることができる。このため、輝度の変化やクロストークによる2重像の発生する境界領域を狭めることができ、観察者の観察位置が左右に動いた場合に、広い範囲で輝度の変化やクロストークによる2重像の発生のない良好な画像を視認できる。
なお、以上の計算では波長550nmの緑色光を対象にサイズの好適を議論したが、赤色光(波長650nm)や青色光(波長450nm)の場合は波長が異なり、漏れ光を制御するのに好適なサイズは異なる。従って、対象とする画素の色に応じて視差バリアの半透過部の寸法を変えることにより漏れ光の着色をなくすことも可能になる。
また、以上の説明では、視差バリアの形状は細長いストライプ状とし、長辺が一列に並列するように配列された構成を示したが、千鳥配列(チェッカーフラグパターン状)にも適用できることは言うまでもない。千鳥配列の場合は、立体画像の解像度感が向上する。
また、方向別画像の数は2つの場合を例に採って説明したが、これに限らず、視差画像が3つや、さらに複数の場合でも、それぞれの画像の境界において、漏れ光の輝度を抑制する効果がある。
<実施の形態3>
<装置構成>
以上説明した本発明に係る実施の形態1においては、マトリクス状に画素を配置した表示パネルと、表示パネルの前面側(画像視認側)に形成した視差バリアから構成された表示装置を例に説明したが、表示パネルが液晶表示パネルの場合は、視差バリアが表示パネルの背面側にある装置にも応用できる。
図25には、本発明に係る実施の形態3の観察方向により異なる画像を表示する2画像ディスプレイ300の模式的な斜視図を示す。
図25に示すように、マトリクス状に複数の画素を配置した表示パネル41の裏面側に視差バリア42が配設されている。また、視差バリア42の裏面側にはバックライト43が設けられている。
また、表示パネル41においては、液晶層410上に設けた遮光部412の複数の開口部が、画素透過部411となっている。画素透過部411は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が並列するように配列されている。そして、それぞれの長辺に沿って半透過部413が設けられている。
視差バリア42は、バリア遮光部422の複数の開口部が、バリア透過部421となっている。バリア透過部421は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が並列するように配列されている。
なお、図25は、バックライト43、表示パネル41の画素透過部411および視差バリア透過部421の位置関係を説明するための概略図であり、表示パネルに設ける透明電極や透明ガラス基板等を省略した図となっている。また、表示パネル41の画素透過部411と視差バリア透過部421はそれぞれ所定の距離を離して配置されており、空気やガラスなどの媒体が間に存在していても良い。
また、図25は、バックライト43、表示パネル41および視差バリア42の位置関係、表示パネル41の画素透過部411に半透過部413を設けた位置を説明するための概略図であり、表示パネルに設ける透明電極や透明ガラス基板等を省略した図となっている。また、バックライト43、表示パネル41、視差バリア42はそれぞれ密着していても良いし、空気やガラスなどの媒体が間に存在していても良い。
液晶表示パネル41の半透過部413の幅は0.5μm〜10μmで、透過率は振幅透過率20〜80%、エネルギー透過率で4〜64%程度である。さらに半透過部413には屈折率が透過部411と異なり、透過部411との間に0から半波長のΔndの位相差が生じるように構成されている。
このように、マトリクス状に画素を配置した表示パネル41と、表示パネル41の裏面側に視差バリア42を形成した表示装置においても、表示パネル41の透過部411の長辺に半透過部413を設けることにより、画像の境界部での輝度勾配を急峻にすることができる。
図26に本発明に係る実施の形態3の2画像ディスプレイ300における配光特性の波動光学計算結果を示す。
以下では、表示パネル41の画素のピッチを0.069mm、視差バリア42のバリア透過部421のピッチは0.138mmであり、表示パネル41の透過部411と視差バリア42のバリア透過部421との間の距離は1.224mmである。
表示パネル41の透過部411の中心位置は左眼用画素が−0.034mmに右眼用画素が右0.034mmにある。また、視差バリア42のバリア透過部421の幅は0.069mmである。
図26では、透過部411の左右に設けた半透過部413のエネルギー透過率と、半透過部413を通過する光の位相が透過部411を通過する場合に比べて付加される付加的位相差Δndとを種々変えた場合の配光特性を計算しており、透明ガラス部材の屈折率は1.5であり、波動光学計算の際の波長は550nmとしている。なお、計算結果は液晶シャッタパネルから設計観察距離750mm離れた位置にあるスクリーン上での相対輝度分布である。また、図27には、それぞれの輝度プロファイルをピーク輝度で規格化した規格化相対輝度プロファイルを示している。
ここで、付加的位相差Δndは、屈折率の変化Δnと液晶層の厚さdとの組み合わせにより設定することができる。なお、液晶層の厚さdは固定されているので半透過部413の屈折率を透過部411と異なった値とするには、屈折率が液晶に比べ大きなITO(Indium Tin Oxide)電極の厚さを半透過部413と透過部411で異なった値とするという構成を採れば良い。
図26および図27では、横軸にスクリーン上での観察位置(mm)を、縦軸に相対輝度を示しており、図中、半透過部413がなく、透過部411が34.3μm)の場合を太い鎖線で示し、半透過部413がなく透過部411が27.4μmの場合を実線で示し、半透過部413の幅が5μmで、透過率が25%で付加的位相差(Δnd)がλ/4の場合を破線で、および半透過部413の幅が5μmで、透過率が25%で付加的位相差(Δnd)が0の場合を鎖線で示している。
図27において、透過率が25%で付加的位相差(Δnd)がλ/4の場合、実線で示す半透過部413がない場合に比べ、ピーク輝度の大きな低下もなく境界部での輝度勾配が急峻になっており、−10mm地点での漏れ光が抑制できていることが判る。
また、半透過部413の透過率が25%で付加的位相差(Δnd)が0の場合は、実線で示す半透過部413がない場合に比べ、ピーク輝度の大きな低下もなく−30mm地点での漏れ光が抑制できていることが判る。
このように、表示装置の構成に応じて、半透過部413の透過率と付加的位相差(Δnd)を適宜設定することにより、好適な漏れ光特性が得られる。
<実施の形態4>
本発明に係る実施の形態4では、実施の形態3で説明した、表示パネルが液晶表示パネルであり、視差バリアが表示パネルの背面側にある装置において、液晶表示パネルの具体的な構成を説明する。
図28は、図25に示した表示パネル41の透過部411の具体的構成の一例を示す図であり、図28の(a)部には平面図を、図28の(b)部には、平面図におけるA−A線での断面図を示す。
図28の(a)部に示すように、透過部411の平面形状は縦長の矩形状であり、その2つの長辺に沿って半透過膜1413が設けられている。半透過膜1413を含めた透過部411の周囲は遮光膜1412が形成されている。
また、図28の(b)部に示すように、液晶層1422は、下側透明基板1400と上側透明基板1450との間に挟持され、下側透明基板1400上には画素電極1423が配設され、上側透明基板1450上には対向電極1421が配設され、両者は液晶層1422を間に介して対向して配置されている。画素電極1423は、透過部(上部開口とも呼称)411ごとに独立して設けられ、少なくとも上部開口411の下方に対応する領域に設けられている。また、対向電極1421は上側透明基板1450上全体に設けられている。また、下側透明基板1400の下主面(画素電極1423が設けられた側とは反対側の主面)上には、視差バリア42のバリア遮光部422とバリア透過部(下バリア開口とも呼称)421が設けられている。
このような構成を採ることで、画素電極1423に適宜電圧を印加し対向電極1421との間で電界を形成することができ、当該電界により液晶層1422の配向を制御し、上部開口411ごとに光の透過率を変えることができる。
ここで、通常の画素電極1423は、屈折率が2.1程度のITO等の透明導電膜で形成され、厚さの均一な薄膜で構成されるが、本実施の形態では画素電極1423の上に、断面形状が透過部411の中央で最も厚く、端縁部に向けて薄くなる曲線形状を有した高屈折率膜1424を備えている。この高屈折率膜1424もITOで形成されており画素電極として機能する。
なお、画素電極1423は、下側透明基板1400上に形成されるが、その形成方法としては、下側透明基板1400上にITO等の透明導電膜を全面に渡って形成し、当該透明導電膜をフォトリソグラフィでパターニングして画素電極1423を設ける方法を採ることができる。なお、パターニングされた画素電極1423は、透明絶縁膜1401で覆い、透明絶縁膜1401を画素電極1423の厚さまで平坦化する。
対向電極1421の形成方法も同様であり、上側透明基板1450上に、透過部411に対応する部分が開口部となった半透過膜1413および遮光膜1412を形成した後、それらを開口部ごと透明絶縁膜1402で覆い、透明絶縁膜1402を半透過膜1413および遮光膜1412の厚さまで平坦化し、透明絶縁膜1402、半透過膜1413および遮光膜1412の上に透明導電膜を全面に渡って形成することで対向電極1421を得る。なお、半透過膜1413および遮光膜1412の形成方法は、図11および図12を用いて説明した方法を採ることができる。
そして、画素電極1423上に高屈折率膜1424を形成した後、上側透明基板1450と下側透明基板1400とを、画素電極1423と対向電極1421とが向かい合うように対向配置し、間に液晶材料を封入することで液晶層1422を形成する。
次に、図29を用いて高屈折率膜1424の厚さ分布について説明する。図29は、図25に示した表示パネル41の画素透過部411(上部開口411)と、視差バリア42のバリア透過部421(下バリア開口421)とを通過する光の光路を模式的に示した図であり、下バリア開口421の観察方向に上部開口411が距離D0離れて対向している状態を示している。
下バリア開口421内の点Pから発した光は、上部開口411に向けて放射状に伝播する。このとき、上部開口411内の位置x地点を通過する光Lxには、点Pから真上に進む光L0に比べ、光路差ΔDx=(Dx−D0)と周囲の屈折率naで決まる位相の遅れ(ΔDx−D0)・naが発生する。
ここで、下バリア開口421内の点Pから発し、上部開口411を通過した光が観察者の位置で集光され結像するためには、上部開口411を通過した直後の位相を揃えることが有効である。この光L0に対する光Lxの位相遅れを補償するために、開口内の中央部に屈折率が周囲の屈折率naよりも大きい屈折率nhの高屈折率膜1424を配設し、その厚さtが下記の数式(4)を満たすように形成することが有効である。
ΔDx・na=(nh−na)・t ・・・(4)
図30において、横軸に高屈折率膜1424の幅方向(左右方向)の中心軸からの位置を表す左右位置(mm)を取り、縦軸に膜厚t(mm)を取って、高屈折率膜1424の膜厚分布を示している。そして、上記数式(4)を満たす高屈折率膜1424の理想的な膜厚分布を破線で示している。
ここで、上部開口411と下バリア開口421の距離D0=0.9mm、上部開口411の幅0.030mm、下バリア開口421の幅0.050mm、周囲の屈折率naは液晶層1422の屈折率na=1.5とし、高屈折率膜1424の屈折率はITOの屈折率nh=2.1とする。この場合、理想的な高屈折率膜1424の膜厚分布は、上部開口411の端で0μm、上部開口411の中央部の最大厚さは0.35μm程度であり、一般的な液晶層1422の厚さ3〜5μmに比べて薄いので、液晶パネルの光遮蔽作用への影響は無視できる。
高屈折率膜1424の膜厚分布が理想的な場合について、波動光学計算による配光特性の計算結果を図31に示す。図31において、横軸に配光角度を左右角度(度)として示し、縦軸に相対輝度(a.u.:任意単位)を示しており、白抜きの円でプロットされる特性が膜厚分布が理想的な場合の計算結果であり、これを「位相補償理想的分布」と呼称する。この条件では、半透過領域はないとしている。
図31において、画素電極1423のITO膜厚が均一で、高屈折率膜1424を有さず、半透過領域もない場合の計算結果を「従来開口」として示しており、これと比べると位相補償理想的分布は、−2.5度方向に現れる最小漏れ光輝度、−1度方向の漏れ光輝度ともに減少している。これは、観察者が、より広い範囲でクロストークによる二重像のない立体画像を、より広い視認域で観察することができることを表している。
さらに、この位相保障理想的分布の状態で、開口部の端部に振幅透過率50%の半透過領域を4μm幅で形成した場合の計算結果を、「位相保障理想的分布+半透過領域4μm」として、塗りつぶしの菱形でプロットされる特性として示している。この特性では、−2.5度方向に現れる最小漏れ光輝度、−1度方向の漏れ光輝度ともに、さらに減少することが判る。
以上より、上部開口411近傍に、周囲よりも屈折率が高い膜を膜厚(t)が数式(4)を満たす分布となるように形成することで、クロストークが大きな境界領域の幅を狭め、かつ最小リーク輝度が低い配光特性を実現することができ、さらに、上部開口411の幅方向(左右方向)の端部に半透過領域を設けることで、クロストークが大きな境界領域の幅をさらに狭め、かつ、最小リーク輝度がさらに低い配光特性を実現することができることが判る。
ただし、このような、漏れ光輝度分布の改善は高屈折率膜1425の膜厚分布が数式(4)を満たす理想的な分布の場合に限られるものではない。すなわち、複数の均一な厚さの高屈折率薄膜を積層して、位相保障理想的分布に近似した膜厚分布を有する多層高屈折率膜を形成しても良い。図32には、多層高屈折率膜の一例を示す。
図32は、図28に対応する図であり、図32の(a)部には平面図を、図32の(b)部には、平面図におけるB−B線での断面図を示す。なお、図28と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図32では、画素電極1423の上に、断面形状が上部開口411の中央で最も厚い第1の厚さを有し、それ以外の部分では第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する、2段形状の高屈折率膜1425を備えている。高屈折率膜1425は、上部開口411の中央に、開口の長辺に沿って設けられた高屈折率膜14251と、高屈折率膜14251を覆うように設けられた高屈折率膜14252とを有して形成され、中央の高屈折率膜14251と14252とで第1の厚さとなり、高屈折率膜14252の厚さが第2の厚さに相当する。
図30には、多層高屈折率膜の例として、上述した2段形状の高屈折率膜の他に、3段形状の高屈折率膜および1段形状の高屈折率膜を用いた場合の膜厚分布も併せて示している。すなわち、1段形状の高屈折率膜は0.2μmの均一な厚さを有し、2段形状の高屈折率膜は、中央部が0.3μmの厚さを有し、その両側が0.2μmの厚さを有し、3段形状の高屈折率膜は、中央部が0.3μmの厚さを有し、その両側が0.2μmの厚さを有し、さらに外側が0.1μmの厚さを有している。
そして、図31には、1段形状の高屈折率膜を用いた場合の配光特性を、位相補償1段0.2μmとして塗りつぶしの円でプロットされる特性として示し、2段形状の高屈折率膜を用いた場合の配光特性を、位相補償2段0.2μm&0.3μmとして白抜き三角形でプロットされる特性として示し、3段形状の高屈折率膜を用いた場合の配光特性を、位相補償3段0.1μm&0.2μm&0.3μmとして塗りつぶし三角形でプロットされる特性として示している。いずれの条件でも、半透過領域はないとしている。
これらの特性より、何れの場合も、理想的な膜厚分布の場合に比べて漏れ光輝度の低減効果は劣るが、「従来開口」の場合に比べて−1度方向の漏れ光輝度を低減することができることが判る。
すなわち、上部開口411近傍に周囲よりも屈折率が高い膜を、開口中央部で厚く、端部で薄くなる膜厚分布で形成することにより、漏れ光の減少する勾配を大きくすることができる。すなわち、観察域境界に近いクロストークが大きい境界領域の幅を狭め、3次元視認域を広げることができる。
さらに、上部開口411近傍に、周囲よりも屈折率が高く、中央部が両端よりも厚い膜を形成した高屈折率膜と、上部開口411の幅方向の端部に半透過領域を設けることで、クロストークが大きい境界領域の幅を狭め、かつ最小リーク輝度の低い配光特性を実現することができる。
<変形例>
図33および図34に、上部開口411近傍に、周囲よりも屈折率が高く、開口中央部で厚く、端部では薄い膜厚分布を有する高屈折率膜の他の構成を示す。すなわち、図28に示した高屈折率膜1424および図32に示した高屈折率膜1425は、液晶層1422内に設けられていたが、図33および図34にそれぞれ示す高屈折率膜1426および1427は、下側透明基板1400上に配設された透明絶縁膜1401の中に形成されている。ここで、一般的な液晶層1422の厚さは3〜5μm、基板1400上の薄膜層のの厚さは1〜3μm程度であり、1mm程度の下バリア開口421と上部開口411の間の距離DOに比べて薄いので、高屈折率層1427は液晶層1422の近傍にあるといえる。
より具体的には、図33に示す高屈折率膜1426は、シリコン窒化膜(SiN、nh=1.8〜2.2)で構成される高屈折率膜14262の上に、それよりも幅の狭いシリコン窒化膜で構成される高屈折率膜14261を積層した2段形状を有しており、高屈折率膜1426は画素電極1423の下方に配設されている。ここで、透明絶縁膜1401をシリコン酸化膜(SiO2、na=1.5)とすると、高屈折率膜1426の方が屈折率が高くなるので、条件を満たすこととなる。
また、図34に示す高屈折率膜1427は、シリコン窒化膜で構成される高屈折率膜14272の上方に、それよりも幅の狭いシリコン窒化膜で構成される高屈折率膜14271が配設され、両者の間には透明絶縁膜1401が介在するが、両者の間は狭いので、通過する光の位相遅れは高屈折率膜1427内での遅れと高屈折率膜14272内での遅れの和になるため、実質的には2段形状の場合と同じである。
ここで、高屈折率膜1426および1427の位置が、液晶層1422から数μm以内の位置にあれば、上部開口411の幅に比べて1/10程度であるので、液晶層1422内に設けた場合と同じ効果を奏する。
なお、一般的なTFT(薄膜トランジスタ)駆動の液晶ディスプレイでは、TFTやカラーフィルタを形成するために、透明導電膜(ITO)、シリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(SiN)、酸化物半導体など、複数の透明で屈折率の異なる薄膜を堆積し、これらを写真製版工程でパターニングする工程を有している。
したがって、高屈折率膜1426および1427は、これら複数の材料のうち、屈折率が比較的低い(1.5〜1.6)材料(液晶、シリコン酸化膜、有機膜)の中に、屈折率が比較的高い(1.9以上)材料(シリコン窒化膜、ITO、酸化物半導体)を従来のマスクのパターン形状を変更して残すことにより形成が可能であるので、プロセスコストの増加なしに高屈折率膜を形成することができる。
なお、実施の形態4およびその変形例は、以下のように言い換えることができる。すなわち、液晶層1422とその周囲の電極、および基板上絶縁膜を含めて、光透過部411の平均屈折率が、幅方向(左右方向)の中央部で高く、端部側で低い(中央部よりも端部側で低い)構成とすることにより、配光特性において漏れ光の減少する勾配を大きくすることができ、観察域境界に近いクロストークが大きい境界領域の幅を狭め、3次元視認域を広げることができる。
<実施の形態5>
本発明に係る実施の形態5では、実施の形態3で説明した、表示パネルが液晶表示パネルであり、視差バリアが表示パネルの背面側にある装置において、液晶表示パネルとしてFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶表示パネルを用いた場合の具体的な構成を説明する。
図35は、図25に示した表示パネル41の透過部(上部開口とも呼称)411直下の具体的構成の一例を示す図である。図35に示すように、透過部411の平面形状は縦長の矩形状であり、その外側には遮光膜2412が形成されている。
液晶層2422は、平板上の共通電極2421と、共通電極2421の上方に設けられ、上部開口411の幅方向に延在する櫛歯状の画素電極2423との間で発生する電界により駆動される。画素電極2423は、上部開口411ごとに独立して設けられ、少なくとも上部開口411の下方に対応する領域に設けられている。
このような構成を採ることで、画素電極2423に適宜電圧を印加し共通電極2421との間で電界を形成することができ、当該電界により液晶層2422の配向を制御し、上部開口411ごとに光の透過率を変えることができる。
ここで、液晶層2422内には上部開口411の幅方向の2つの端部に対応する領域にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜で構成される液晶層内絶縁膜2424が配設され、当該2つの端部に対応する領域では、液晶層2422の厚さが中央部よりも薄くなっている。すなわち、図35に示すように、画素電極2423の上方に1対の液晶層内絶縁膜2424が配設され、液晶層内絶縁膜2424は上部開口411の中央側で厚みが薄く、端部側で厚い形状となっているので、上部開口411の幅方向端部において、液晶層2422の厚みが実質的に薄くなっている。
すなわち、液晶層内絶縁膜2424の最大厚さは、液晶層2422の厚さの半分程度であるので、液晶層2422の厚さは上部開口411の幅方向端部において中央部の半分程度に薄くなっていると言える。
次に、上記構成を有する場合の液晶層2422の動作について、図36に示す断面図を用いて説明する。FFSモードの液晶表示パネルは、電圧を印加しない状態で透過率が0となるノーマリーブラックのパネルである。従って、図36の(a)部に示すように、画素電極2423に電圧を印加しない状態では偏光板2400、下側透明基板2401を通過してきた光は、上側透明基板2450を介して全て偏光板2300で吸収されてしまうように液晶層2422のラビング方向、偏光板2400および2300の偏光方向が決められている。
ここで、上部開口411の透過率を最大にする際には、図36の(b)部に示すように、画素電極2423に電圧を印加し共通電極2421との間で電界を形成して、液晶層2422の液晶分子の配向角度を回転させる。そして上部開口411の中央を通過する入射光の偏光の向きがちょうど90度回転する電圧を印加することで、入射した偏光光は偏光板2300で吸収されることなく大部分が透過することとなり、上部開口411の透過率は最大になる。
このような液晶分子の配向角度の制御を可能とするのが液晶層内絶縁膜2424である。すなわち、液晶層内絶縁膜2424の存在により、液晶層2422の厚さは上部開口411の幅方向端部において中央部の半分程度になっているため、通過する入射光の偏光の向きの回転が90度よりも小さくなり、偏光板2300での透過率は中央部に比べ低下する。これにより、上部開口411の幅方向両端部に、透過率が中央部に比べて低い領域、すなわち半透過領域を実現することができる。これにより、図31に示すような低い漏れ光輝度分布が実現できる。
また、液晶層内絶縁膜2424を画素電極2423寄りの位置に配置することで、液晶層2422にかかる電界が緩和される効果もある。このため液晶分子の配向角度の変化も小さくなるため、入射光の偏光の向きの回転はより小さくなり偏光板2300による吸収が増加する。
なお、液晶層内絶縁膜2424は、遮光膜2412寄りの位置に設けても良いが、画素電極2423寄りの位置に配置することで、より薄い液晶層内絶縁膜2424の厚さで効果的に透過率を下げることができ、液晶層2422内の段差が小さくなりラビング工程が容易になるという効果もある。
また、液晶層2422の厚さを上部開口411の幅方向端部において中央部の半分程度にすることができれば、この方法に限らず、上部開口411の幅方向両端部に、透過率が中央部に比べて低い領域、すなわち半透過領域を実現することができるのは同様である。
なお、図35では、画素電極2423は、上部開口411の幅方向に延在する櫛歯状の形状としているが、このような配置ではなく、図37に示すように上部開口411の長手方向に延在する配置とした場合には、以下のような問題生じる。
すなわち、図37においては櫛歯状の画素電極2423aが上部開口411の長手方向に対して傾斜して配置されている。画素電極2423aは通常厚さ0.1μm程度のITO膜で形成されているので、その厚み分が液晶層2422内に0.1μm程度突出することになる。ITO薄膜の屈折率は1.9〜2.1であり、液晶層2422の屈折率(1.5〜1.6)よりも大きいため、上部開口411内の幅方向に凹凸状の位相遅れ分布(Δnd位相遅れ分布)が発生することになる。
図38には、横軸に上部開口411内の幅方向位置(mm)を取り、縦軸に膜厚(mm)を取っており、画素電極2423aの配置の周期で画素電極2423aの厚み(0.0001mm)分の位相遅れが生じることが示されている。
これは、図30に示した高屈折率膜の理想的な膜厚分布に比べて無視できない凹凸であり、幅方向へ回折が生じ幅方向でのリーク光が増加してしまう。
これに対し、図35に示す画素電極2423のように上部開口411の幅方向に延在する形状の場合は、回折光は上部開口411の長手方向には広げるが幅方向には広げられないため、幅方向でのリーク光が増加することはない。
ここで、IPSモードやFFSモードでは櫛歯状の電極細線を、開口の幅方向、あるいは長手方向に対して±5〜10度程度傾けて配置する。これは、分子配向の回転の方向を揃えるためである。従って、画素電極2423を幅方向に延在する櫛歯状の形状とする場合にも、幅方向に対して±5〜10度程度の傾きを持たせて配置することが考えられる。 図39の(a)部には、櫛歯状の画素電極2423bが上部開口411の幅方向に対して傾斜して配置された構成を示している。このような構成を採る場合、画素電極2423bによる回折光は、上部開口411の長手方向に対して±5〜10度傾いた方向に進むので、開口の幅方向からのリーク光が増えることは抑制される。
なお、図39の(a)部に示す構成を採る場合、遮光膜2412aの平面形状は図39の(b)部に示すような形状となる。すなわち、上部開口411の幅方向両端部には、凹凸構造が形成され、ITO膜で形成された画素電極2423bに対応する部分では光を遮断する凸部となり、画素電極2423bの間では光を透過する凹部となっている。これにより、上部開口411の幅方向端部には、平均透過率が上部開口411の中央部よりも低い領域が形成される。
また、上部開口411の幅方向端部では、ITO膜で形成された画素電極2423bに対応しない部分のみが透過部となっており、そこでは画素電極2423bの高い屈折率の影響を受けないため、平均透過率は上部開口411の中央部よりも低くなる。このため、図30に示すような高屈折率膜の膜厚分布の実現が容易となる。
また、図35では図示は省略しているが、図28に示した高屈折率膜1424、図32に示した高屈折率膜1425、図33に示した高屈折率膜1426、図34に示した高屈折率膜1427を設け、光透過部の平均屈折率が、光透過部の左右方向の中央部よりも端部側で低い構成としても良い。
<実施の形態6>
本発明に係わる実施の形態6は、実施の形態3、4、5において説明した、マトリクス状に画素を配置した液晶表示パネルと、その背面側のバックライトとの間に配置された視差バリアとを組み合わせた構成であって、液晶表示パネルの光透過部の透過率が幅方向(左右方向、または水平方向とも呼称)の中央部で高く端部側で低い(中央部よりも端部側で低い)、あるいは、液晶表示パネルの光透過部の平均屈折率が幅方向(左右方向)の中央部で高く端部側で低い(中央部よりも端部側で低い)構成の表示装置において、視差バリアの光透過部の透過率を制御することにより、表示装置の配光特性におけるピーク輝度の平坦な領域をさらに広げるものである。
<装置構成>
図40には、本発明に係る実施の形態6の観察方向により異なる画像を表示する2画像ディスプレイ600の模式的な斜視図を示す。2画像ディスプレイ600は、液晶表示パネル61、視差バリア62、及びバックライト63が、この順番で配置された構成の表示装置である。
図40に示すように、マトリクス状に複数の画素を配置した表示パネル61の裏面側に視差バリア62が配設されている。また、視差バリア62の裏面側にはバックライト63が設けられている。
また、表示パネル61においては、遮光部612に設けられた複数の開口部が、画素透過部611となっている。画素透過部611は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が左右方向に並列するように配列されている。そして、それぞれの長辺に沿って屈折率が中央部よりも低い、あるいは、透過率が中央部よりも低い領域613が設けられている。表示パネル61の構成は図41を用いてさらに説明する。
視差バリア62は、バリア遮光部622に設けられた複数の開口部が、バリア透過部621となっている。バリア透過部621は何れも平面視形状がストライプ状をなし、長辺が左右方向に並列するように配列されている。視差バリア62のバリア透過部621の幅は、バリア透過部621の左右方向のピッチの半分程度であり、左右方向の中央部には左右方向の端よりも光の透過率が低い領域623が存在している。視差バリア62の構成は図41を用いてさらに説明する。
なお、図40は、バックライト63、表示パネル61の画素透過部611および視差バリア透過部621の位置関係を説明するための概略図であり、表示パネルに設ける透明電極や透明ガラス基板等を省略した図となっている。また、表示パネル61の画素透過部611と視差バリア透過部621はそれぞれ所定の距離を離して配置されており、空気やガラスなどの媒体が間に存在していても良い。
図41は、図40におけるバリア透過部621の配列方向に沿った断面図である。図41には、表示装置600が裸眼立体ディスプレイの場合における、左右方向の断面構成を示すが、表示装置600は観察方向ごとに異なる画像を表示する多画像ディスプレイであっても良い。
図41に示すように、裸眼立体ディスプレイ600は、表示パネル6610と、表示パネル6610の背面側(光源側)に配置された視差バリアシャッタパネル6620と、視差バリアシャッタパネル6620の背面側に配置されたバックライト63を備えている。
図41に示すように、表示パネル6610は液晶パネルであり、2枚の透明ガラス基板6604と透明ガラス基板6605とに挟まれた液晶層6614と、透明ガラス基板6605の表面側(観察者側)主面上に設けた表面偏光板6618と、透明ガラス基板6604の背面側主面上に設けた中間偏光板6617とを備えている。
また、液晶層6614の裏面側主面上には、全面に渡って一体で設けられた対向透明電極6615が配設され、液晶層6614の前面側主面上には、画素ごとに分割されたサブ画素透明電極6612が配設されており、両電極間で画素ごとに電界が印加される構成となっている。ここで、サブ画素透明電極6612の上にはカラーフィルタ6619が配設されており、サブ画素透明電極6612ならびにカラーフィルタ6619の端は、遮光壁612によって遮光されている。
遮光壁612によって分割されたサブ画素透明電極6612に対応して、横方向(水平方向)にサブ画素6110〜6113が形成される。そして、例えば、隣り合うサブ画素6110とサブ画素6111の2つのサブ画素を組み合わせることで、右方向と左方向に異なる視差画像をそれぞれ表示するサブ画素ペア6641を構成している。また、隣り合うサブ画素6112とサブ画素6113の2つのサブ画素を組み合わせることで、右方向と左方向に異なる視差画像をそれぞれ表示するサブ画素ペア6642を構成している。つまり、サブ画素ペア6641,6642とは、異なる方向から観察される画像をそれぞれ表示する2つのサブ画素を1組とする画素セットである。
さらに、液晶層6614の裏面側主面側の対向透明電極6615の上には、遮光壁612によって分割されたサブ画素の透過領域ごとに、高屈折率膜6611が形成されている。高屈折率膜6611は、表示パネル6610の液晶層6614と比較して屈折率の高い薄膜であって、サブ画素の光透過領域の水平方向の中央部に形成されている。また、高屈折率膜6611は、透明導電性膜(ITO)で形成されており、透過部の左右方向の中央で厚く端で薄い(中央部よりも端部側で薄い)形状をしている。透明導電性膜(ITO)の屈折率は1.8〜2.0であり、液晶層6614の屈折率(1.5〜1.7)と比べて高いため、サブ画素6110〜6113の光透過領域には、サブ画素透明電極6612から、液晶層6614、高屈折率膜6611、対向透明電極6615にわたり、光の透過方向である上下方向に平均化した平均屈折率が光透過領域の左右方向の中央で高く端で低い分布がそれぞれ形成されている。
視差バリアシャッタパネル6620は、透明ガラス基板6622(第1透明基板)と透明ガラス基板6626(第2透明基板)とに挟まれた液晶層6624と、透明ガラス基板6626の背面側主面上に設けた裏面偏光板6628とを備えている。なお、透明ガラス基板6622の表示パネル6610側の主面にも偏光板を備えるが、ここでは中間偏光板6617で兼用するものとして省略している。
ここで、液晶層6624のモードはツイストネマテック(TN)、スーパーツイストネマテック(STN)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリ−コンペンセイティドベンド(OCB)などが利用可能である。
また、液晶層6624の裏面側主面上、つまり透明ガラス基板6626の液晶層6624側には、全面に渡って一体で設けられた透明電極6625(第2透明電極)が配設され、液晶層6624の前面側主面上、つまり透明ガラス基板6622の液晶層6624側には、透明電極6623が配設されている。
各サブ画素ペアの配設幅に対応する長さで基準視差バリアピッチP1が規定され、透明電極6623は、基準視差バリアピッチP1内で、複数の電気的に絶縁された状態に分割されている。図41では8分割した例を示しているが、これに限定されるものではなく、分割数はさらに多くても良い。この分割された透明電極6623のそれぞれがサブ開口部601となり、このサブ開口部601の幅がサブ開口ピッチP2となる。
ここで、サブ画素ペア6641を構成するサブ画素6110と6111と、これに対応する基準視差バリアピッチP1内サブ開口部601の位置関係は、基準視差バリアピッチP1内の中央点を出て、サブ画素6110と6111の中間にある遮光壁612の中央を通過する仮想の光LOが、本表示装置の正面前方に設定した設計視認点Qに集まるように、設定されている。表示パネル6610から設計視認点Qまでの距離を設計観察距離DSとする。
このように構成された視差バリアシャッタパネル6620では、透明電極6623と透明電極6625を用いて液晶層6624に電界をかけることにより、複数のサブ開口部601をそれぞれ独立に光透過状態と遮光状態ならびに半透過状態に切り替えることができる。言い換えると、視差バリアシャッタパネル6620では、分割されたサブ開口部601を個別に制御して液晶層6624に電界を印加する、つまり、サブ開口部601ごとに液晶層6624の透過率を制御してバリア透過部621を形成している。
図42を用いて、視差バリアシャッタパネル6620の動作状態の例を説明する。
図42においては、基準視差バリアピッチP1内の8つのサブ開口部601のうち連続する4つを透過状態としてバリア透過部621を形成し、残りの4つを遮光状態にしてバリア遮光部622を形成するように、それぞれの透明電極6623を用いて液晶層6624に電界をかけることで液晶を制御している。さらに、バリア透過部621を形成する4つのサブ開口部601の中で内側、つまり水平方向の中央部の2つのサブ開口部601の透過率を両側、つまり水平方向の端部のサブ開口部601の透過率に比べ2%〜20%低く設定している。言い換えると、バリア透過部621を形成するサブ開口部601のうち、水平方向の中央部に配置されたサブ開口部601は、水平方向の端部に配置されたサブ開口部601で駆動された液晶層6624より透過率が低くなるよう液晶層6624を駆動する。
なお、視差バリアシャッタパネル6620のバリア透過部621の位置をサブ開口部601のピッチで左右方向に移動できるのは、実施の形態2で図18,19を用いて説明した動作原理と同様である。
図43には、横軸に観察位置を、縦軸に相対輝度を示しており、視差バリアを用いた実施の形態6の裸眼立体ディスプレイにおいて、右眼用画像と左眼用画像に、それぞれ黒画像と白画像を表示した場合の配光特性についての波動光学計算結果を示している。透明ガラス部材の屈折率は1.5であり、波動光学計算の際の波長は550nmとしている。なお、計算結果は、視差バリアシャッタパネルから設計観察距離800mm離れた位置にあるスクリーン上での相対輝度分布である。
ここで、液晶パネルの画素のピッチは0.076mm、視差バリアシャッタパネルの基準視差バリアピッチP1は0.152mmであり、基準視差バリアピッチP1内は12個のサブ開口部に分割されている。視差バリアシャッタパネルのバリア透過部は、基準視差バリアピッチP1内の12個のサブ開口部の内の半分の6個のサブ開口部を透過状態にし、残りの半分を遮光状態にして形成する。透過状態、つまりバリア透過部となる6個のサブ開口部は、連続して配置されている。よって、視差バリアシャッタパネルの開口幅は0.076mmである。さらに、バリア透過部を形成する6個のサブ開口部の内の中央の4個のサブ開口部の透過率を両端の2個のサブ開口部の透過率の90%にしている。
また、液晶パネルの左眼用画素の中心は左−0.038mmにあり、右眼用画素の中心は右0.038mmにあり、視差バリアシャッタパネルの開口幅は0.076mmであり、当該開口部は液晶パネルの右眼用画素と左眼用画素の組のほぼ中央の下方に位置している。液晶シャッタパネルの開口部と画素間距離は1.3mmである。
図43においては、本実施の形態6の表示装置のように、バリア透過部を形成する6個のサブ開口部の内の中央の4個のサブ開口部の透過率を両端のサブ開口部の透過率の90%とした場合の配光分布を実線(透過率調整)で示している。また、その他に、従来のように、バリア透過部を形成する6個のサブ開口部の透過率が均一な場合の配光分布を長一点鎖線(透過率均一)で示して比較している。さらに、参考として、本実施の形態6の表示装置において、バリア透過部を形成する6個のサブ開口部の内の1個のサブ開口部が100%の透過率を持ち、残りの5個のサブ開口部が遮光状態となるようにした場合の配光特性を破線(1サブ開口)で示している。長破線(従来1サブ開口)は、他の3つとは異なり、液晶パネルの透過部の左右方向の中央部に高屈折率膜が無い場合の配光特性を示しており、詳細は後述する。
図43に長一点鎖線で示すように、バリア透過部の6個のサブ開口部の透過率が均一な場合は、輝度ピークは緩やかな山形をしており、観察位置−63mmと−7mm(図43中に一点鎖線で示した位置)付近では、輝度がピークに対して10%程度低下している。これに対し、バリア透過部の6個のサブ開口部の内の中央の4個のサブ開口部の透過率を両端のサブ開口の透過率の90%に設定した場合の配光分布は、図43に実線で示すように平坦になっており、観察位置−63mmと−7mm付近でも、ピーク輝度に対する輝度の低下はない。
一般的に、5%程度以上の空間的な輝度段差や瞬間的な輝度変化は、人間の目にとっては充分に視認される量であり、観察者の位置の移動に対してバリア透過部の位置を最適位置に変更する制御を行う際に、表示画面内の輝度のチラツキ変化や輝度段差の発生として、障害になると懸念される。本実施の形態6の表示装置によれば、輝度差が5%を超える領域が減り、輝度差が5%以内の領域が広がるので、観察者の位置の移動に対してバリア透過部の位置を最適位置に変更する制御を行う際に、表示画面内の輝度のチラツキ変化や輝度段差の発生の頻度が低くなり、制御が容易になる。
なお、ここで、図43には、視差バリアシャッタパネルの透過部の6個のサブ開口部の内の端から2番目の1個のサブ開口部のみが100%の透過率を持ち、残りが遮光状態の場合の配光特性を破線(1サブ開口)で示している。この輝度プロファイルは急峻であり、観察位置−7mm付近の輝度においてピーク輝度の10%程度の寄与しかない。よって、このように急峻な輝度変化が、視差バリアシャッタパネルのサブ開口部単位の透過率の調整により配光分布を制御できる要因であることがわかる。これは、実施の形態3で説明したように、液晶パネルの透過部に設けられた高屈折率膜6611の働きにより、輝度配光のプロファイルが急峻になる効果によるものである。
図43中には、液晶パネルの透過部の左右方向の中央部に高屈折率膜が無い場合において、バリア透過部の6個のサブ開口の内の端から2番目の1個のサブ開口部が100%の透過率を持ち残りが遮光状態の場合の配光特性を長破線(従来1サブ開口)で示している。この場合の配光分布も、図中に長一点鎖線で示した透過部の6個のサブ開口部の透過率が均一な場合の緩やかな山形をした輝度ピークの内部に輝度分布のピークを持っており、バリア透過部の中央部のサブ開口部の透過率を、バリア透過部の端部のサブ開口部の透過率よりも下げることにより、配光特性の平坦性を改善できる。
ただし、液晶パネルの透過部の左右方向の中央部に高屈折率膜が無い場合の配光特性(従来1サブ開口)は、液晶パネルの透過部の左右方向の中央部に高屈折率膜がある場合(1サブ開口)と比較して広くなだらかであるため、観察位置−7mm付近の輝度においてピーク輝度の20%程度の寄与がある。このため、バリア透過部の中央部のサブ開口部の透過率を下げると−7mm付近の輝度が下がる。したがって、液晶パネルの透過部の中央部に高屈折率膜が無い構成とする場合には、高屈折率膜がある構成の場合と比較して、バリア透過部の中央部の透過率を大幅に下げることにより、必要がある。つまり、液晶パネルの透過部の中央部に高屈折率膜がない場合であっても、高屈折率膜がある構成の場合と比較して、バリア透過部の中央部の透過率を大幅に下げることにより、配光特性の平坦性を改善することができる。
なお、液晶パネルの透過部の中央部に高屈折率膜がある場合には、高屈折率膜が無い場合と比較して、サブ開口部の透過率の下げ幅を小さくすることができるので、輝度効率の低下を抑制することができる。
以上のように、複数の画素をマトリクス状に配置した表示パネルの裏面側にストライプ状の開口を持つ視差バリアが配設され、視差バリアの裏面側にバックライトが配設された方向別2画像表示装置において、バリア透過部の左右方向の中央部に透過率が左右方向の端部よりも低い領域を形成することにより、配光ピークの輝度平坦域を広げることが出来る。これにより、観察者の観察位置が左右に動いた場合でも、観察者は、広い範囲で輝度の変化のない良好な画像を視認することができる。
また、複数の画素をマトリクス状に配置した表示パネルの裏面側にストライプ状の開口を持つ視差バリアが配設され、視差バリアの裏面側にバックライトが配設された方向別2画像表示装置において、画素に対応する領域ごとに分割して形成された複数のサブ開口部を個別に制御してバリア透過部を形成し、バリア透過部の左右方向の中央部に左右方向の端部よりも透過率が低い領域を形成するように液晶層を駆動することにより、配光ピークの輝度平坦域を広げることが出来る。これにより、観察者の観察位置の左右の動きに対応して視差バリアシャッタパネルの開口位置を変える際に、画像の輝度の変化のないバリア開口位置の移動制御を行うことができる。
さらに、複数の画素をマトリクス状に配置した表示パネルの裏面側にストライプ状の開口を持つ視差バリアが配設され、視差バリアの裏面側にバックライトが配設された方向別2画像表示装置において、バリア透過部の左右方向の中央部に透過率が左右方向の端部よりも低い領域を形成し、さらに、表示パネルの画素透過部の左右方向の端部に、屈折率が左右方向の中央部よりも低い、あるいは、透過率が左右方向の中央部よりも低い領域を形成することにより、輝度効率の低下を抑えながら、配光ピークの輝度平坦域を広げることが出来る。
なお、実施の形態6では、視差バリアの開口がストライプ状に複数配置された例を用いて説明したが、これに限るものではなく、視差バリアの開口がマトリクス状に複数配置された場合においても、同様の効果がある。
また、図27や図43に示すように、バリア透過部の6個のサブ開口部の透過率が均一な場合も、透過部の6個のサブ開口部の内の中央の4個のサブ開口部の透過率を両端のサブ開口部の透過率の90%に設定した場合も、0mm位置の左右の画像の中間点の相対輝度はピークの50%程度である。これにより、左右の画像に白と白を表示した場合には中間点の輝度もピークと同程度になり3Dモアレが現れないことが示されている。3Dモアレは裸眼立体ディスプレイの品位を下げる要因の一つであり、3Dモアレが解消されることで品位を高める効果が得られる。この0mm位置の左右の画像の中間点の相対輝度がピークの50%程度になっている要因は、幾何光学的には、バリアの開口の幅がバリアのピッチの50%であることにある。ただし、回折の影響により、中間点の輝度は多少変化するが、表示パネルの裏面側に視差バリアが配設され、視差バリアの裏面側にバックライトが設けられた方向別2画像表示装置において、表示パネルの画素透過部の左右端部に屈折率が中央部よりも低い、あるいは、透過率が中央部よりも低い領域が設けられることにより境界部の輝度分布が直線的になるため幾何光学から予測されるプロファイルに近づく。
上述した実施の形態は例示であって、本発明は例示した実施形態の範囲に限定されない。例えば、上述した形態では、方向別に表示する画像の数は2つの例を用いて説明を行ったが、これに限るものではなく、3画像、4画像の多画像の場合にも同様に成り立つことは言うまでもない。
本発明は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。